09/11/10 16:25:09 eI1I8PIM
海岸沿いにある小さな漁村の話。
漁村の人々は遥か昔から、連綿と広がる海と、それが産み出す豊富な海産物の恩恵を受けて暮らしてきた。
朝も早くから海へと漁に出かけ、夕方には歌を歌ったり、踊ったり。そんなゆったりとした毎日を過ごしていた。
しかし、ちょうど五年前のこと。村にある変化が訪れた。
ある漁師が妙なことを言い始めた。
「昨日の夜、光る魚を釣ったんだ」
最初の内は、村中がその漁師のことをほら吹きと笑った。光る魚なんて、長年漁をしていても捕れたことがなかったからだ。
けれどしばらくすると、その漁師が言っていたことが嘘では無いことが分かった。
夜中に漁に出かけた船で、何匹かの光る魚が捕れたのだ。神秘的な青白い光を全身から放ち、見るものを魅了した。
その光は朝が来ると消えてしまい、そのことが尚一層、魚の神秘を際立たせた。
ついには、村の古老たちはこの光る魚を『海神からの使い』だと言い、祭り上げた。
それと同時に、光る魚についていろいろな『ご利益』が噂された。
光る魚が捕れたらその日は大漁だとか、万病を治す霊薬になるだとか、骨は魔よけになるだとか。
どれも迷信染みたものだったが、村の人々は皆その『ご利益』を固く信じていた。光る魚を一目見ようと夜に漁に出かけるものも少なくなかった。
ある晩のこと、村中を驚かせる出来事が起こった。海が光ったのだ。
海が放つ青白い光が辺りを照らし、周囲は白昼のように明るく、眩しかった。
その光景に誰もが息をのみ、今にも海の底から海神が現れてくるのではないかと言うほどの神々しさだった。
その晩は急遽、村を挙げてお祭りを開き、海神に毎日の感謝を込めて祈りを捧げた。古老たち曰く、
「この村は海神様のご寵愛を受けておる。これでこの村もますます栄えるじゃろて」
と信じて疑わなかった。誰も、海を行く1艘の船のことなど気にするはずも無かった。
この漁村は地図から消え失せた。光る海の底には大漁の核廃棄物が眠っていたのだ。
生命は汚染され死に絶えたが、海だけは今でも煌煌と青白い光を湛えて無言のままたたずんでいる。
批評お願いします。ちょっと淡白質すぎるかなと気になってます。