09/06/05 07:25:24 OyOQShVw
な、なんというペースなんだ! ◆46YdzwwxxU氏は化物か!?
相変わらずのノリとテンポ、惚れてしまいます
そしてカッコマンエビルがテッカマンエビルに見え(PAM!
65: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/05 15:52:33 wRvo0pen
今まで自分が書いた文が、海上都市姫路守備隊戦記39KB。
ネクソンクロガネは調べてみたら78KBで二倍も差がある。
追いつけるようにもっと頑張らないとな。
66:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(後編)
09/06/06 11:41:08 ZAeNiEjt
投下させていただきます
前編からそのまま続きます
67:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(後編)
09/06/06 11:43:22 ZAeNiEjt
ネクソンクロガネパンチは、確実に神速飛翔ロボ・シロガネソニックの腹を打突する軌道に乗っていたはずだった。
しかし直後に、田所カッコマンは瞠目することになる。
振り抜かれた最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの腕は、拳ひとつ分ほどシロガネソニックから逸れ、空を切ったのだ。
もっとも、田所カッコマンの驚愕の理由はそれではない。どうして打点がずれたのかは明白だった。それはカッコマンエビルの緊急回
避が間に合ったからではない。
殴打する動作じたいに干渉があったからだ。
超特急新幹線などよりも桁違いに重く速いネクソンクロガネパンチに横殴りに衝撃を与えて、その弾道を捻じ曲げた者がいる!
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの前腕に、凹みが生じていた。直径50センチメートルばかりのそれは、隕石が落下したクレーター
を思わせる。砲弾の痕だった。
『馬鹿な!? 最強無敵を謳われた超ネクソン黒鋼の装甲に!?』
司令室のはぐれ研究員・龍聖寺院光の悲鳴。それほどの異常事態だった。これまでの激戦を通して、内部機構に不具合は生じたことは
あっても、装甲が損傷したことは一度たりともなかったというのに!
「こんなことができるのは……!」
田所カッコマンは右方を向いた。これが本職の狙撃手ならば、不用意に誰かに姿を晒すような真似はすまいが。
果たしてそこにあったのは、月からの逆光に浮かび上がる三つのシルエット。
一夜にして新たに建造された高層ビルか。馬鹿な。
それこそが敵影。夜空に食いこんだ銃弾にも似て禍々しき。
「ちぇっ! もう来た」
カッコマンエビルが唇を尖らせる。台詞とは裏腹に、声調には安堵の響きがあった。
神速飛翔ロボ・シロガネソニックが羽ばたき、大きく弧を描いて彼らに合流。
そうして、四体の超級巨大ロボットが遂に、月夜のロボヶ丘に揃い踏みした―!!
『なんてことだ……』
龍聖寺院光の呆然とした声が届く。気丈な彼女にも、今にも崩れ落ちそうな気配があった。
「こいつらがそうなのか……?」
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの操縦桿を握る田所カッコマンの手には、じっとりと汗が滲んでいた。内臓の機能に異常を来たし、
吐き気を催すほどのプレッシャーを感じる。
ネクソンクロガネストームの閃光に眩んでいた瞳が暗順応。次第に彼らの正体が明らかになる。
体型や武器の差はあっても、銀の粒を表面にまぶしたような、美麗な白色だけは違いがない。
神速飛翔ロボ・シロガネソニックと同じ、超ネクソン白鋼の質感だった。
彼らこそは、白銀に統一された無法の戦士。悪の総本山によって送り込まれた刺客。恐怖の巨大ロボット軍団。
すなわち―
「忍耐とはスナイパーの美徳だ」
四人のうちの一人、向かって左端に立つ、細長い影が口火を切った。
長大な銃身のライフルを手にした彼は、巨大ロボットを狩る猟兵。
猟銃をくるくるとステッキのように回し、銃把を下にして大地に突き立てる。天を指す銃口からは、白煙が靡いていた。ネクソンクロ
ガネパンチを射ち抜いたのもそれか。
「たとえ飢え死にしようとも、糞尿を垂れ流そうとも、藪蚊に刺されようとも。じっと好機を待ち、決して外さない……。それ故に我が
名はスナイパーガマン。シロガネ四天王いちのスナイパーだ」
左目には無骨な眼帯、恐らくは照準器に類する装置を当てていた。
全身の模様は、シロガネマッスルは赤、シロガネソニックは青だったが、この機体は黄であった。ヤドクガエルの警戒色のように鮮や
かで、白色の強い装甲にも埋没しない。眼帯のない右カメラアイを中心として爪先まで、一定の間隔を置きながら拡大していく同心円の
パターン。自分自身をターゲットと見立てたような、ひどく奇異な装いだった。
「私の愛銃を紹介しよう。百発百中ロボ・シロガネスナイパー」
操縦席で叫ぶのは、厚手の防弾服に似たパイロットスーツを着た壮年の男。
胡麻色の髪をオールバックに纏め、左目には巨大ロボットと同じくスコープを装着していた。
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネを前にしての余裕ある態度からは、豊富な経験に裏打ちされた自信が見て取れる。
四天王いちのスナイパー・スナイパーガマン、百発百中ロボ・シロガネスナイパー。それが一人目。
68:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(後編)
09/06/06 11:45:03 ZAeNiEjt
「前から思っていたんだけど」
右隣。気だるげな声で、やや蕩の立った女が続く。
芸術的な曲面を繋ぎ合わせた西洋甲冑だ。前方に張り出した胸甲の滑らかなラインは、その巨大ロボットが女騎士の特注品であること
を如実に表していた。
何より目を引くのは、それが携える剣か。取り回しの楽そうな適度な長さ。両刃が放つ光沢は鎧のものよりも一層強く、凄絶な切れ味
を予想させる。
「四天王いちじゃあ、凄いんだか凄くないんだか分からないんじゃないかしら。四人ぽっちの中で一番だから何なの?って思ってるわよ、
カレ、きっとね。世界いちとは言わないけど、シンジケートいちくらいは名乗りたいものだわ」
「身も蓋もないな」
スナイパーガマンが失笑する。
騎士鎧の優美さを損なわないよう配慮された板金の継ぎ目に、不気味な緑の光が嗤うように蠢く。ヤコウタケという茸が夜に発するも
のに似ていた。兜の頭頂から伸びた、馬の尾のような毛髪の飾りも同じく。総じて亡霊じみてもいた。
「そう言うアタシは四天王いちのテクニシャン・切り裂きジャンヌ。で、この子は一騎当千ロボ・シロガネブレード。たぶん、この一夜
限りの付き合いだけれど、よろしくね」
地味なライダースーツで強調された豊満な胸を反らし、女は蕩かすような声を発した。白い肌に浮いた口許には妖艶な微笑み。色の濃
い紅を引いた唇が吐くのは、炎か毒か。
四天王いちのテクニシャン・切り裂きジャンヌ、一騎当千ロボ・シロガネブレード。これで二人目。
セイギベース4を強襲し、海老原カッコウーマンの一撃必殺ロボ・ネクソンアカガネを捻じ伏せた巨大ロボットもいる。
「ふむ。まだまだ幼いが、無限の可能性を秘めた、よい筋肉だ」
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネを評しながら、次々にマッスルポージング。興奮のためか、筋繊維の入れ墨がより赤味を増している
ような気がした。
機械仕掛けでありながら、それの特徴を端的に表すのに「筋肉質」以上に相応しい言葉は存在しないだろう。ボディビルダーを思わせ
る重厚な体躯は、距離の隔たりを越えて田所カッコマンを威圧する。
「そしてカッコマンエビル。きみはもう少し筋肉をつけた方がいい。その方がいい」
パイロットである禿頭の巨漢は、穏やかな教師のような声で隣人に忠告する。
「だから、あそこからボクの華麗な逆転劇が始まる予定だったんだって」
言い訳がましく返す声は、先ほど最強無敵ロボ・ネクソンクロガネと死闘を繰り広げた魔鳥の巨大ロボットからだった。吹き抜ける青
い風を象った紋様に曇りはない。
彼らの名前ならば、田所カッコマンにも覚えがある。忘れるはずもない。
四天王いちのマッシブ・ニック・W・キム、剛力無双ロボ・シロガネマッスル。
四天王いちのスピード・カッコマンエビル、神速飛翔ロボ・シロガネソニック。
彼らが三人目、四人目となり、これで全員が確認された。
「ひとついいことを教えてやろう。我々は結成以来、一度も四名揃ったことがない」
「私達は強すぎる」
「エージェントがどうしてもっていうから特別に参戦させてやるけど、残り三人はいらなかったな」
「光栄に思いなさいな、最強無敵ロボ」
四人が好き勝手に叩く軽口は、苛烈な戦場の兵士が口にするようなユーモアとは違う。そもそも緊張感など微塵もないのだ。
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネですら敵ではないというのか。国際犯罪組織ワルサシンジケートにより製造された超級の巨大ロボッ
ト、そのために選び抜かれた最高のパイロット達の前には!
「剛力無双ロボ・シロガネマッスルのニック・W・キム。四天王いちのマッシブ!」
「一騎当千ロボ・シロガネブレードの切り裂きジャンヌ。四天王いちのテクニシャン!」
「百発百中ロボ・シロガネスナイパーのスナイパーガマン。四天王いちのスナイパー!」
「神速飛翔ロボ・シロガネソニックのカッコマンエビル。四天王いちのスピード!」
筋肉隆々たる巨漢が、妖艶な女騎士が、眼帯の狙撃手が、嗤う鳥人が、高らかに名乗りを上げる。
「四人揃ってッ!!」
69:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(後編)
09/06/06 11:46:29 ZAeNiEjt
『シロガネ四天王現る!』
作詞・作曲/ドクトルポイズン
歌/シロガネ四天王&ワルサ音楽隊
1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 無法の戦士
ヤツらが通ったあとには ぺんぺん草も残らない
根こそぎ奪うぜ お宝 スマイル 生きてく希望
シロガネ四天王 誰か止めてくれ
1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 悪逆非道
ヤツらが踏み締めた大地からは 愛と平和の歌も消え
一切合財奪うぜ 金銀 財宝 お前の貯金
シロガネ四天王 誰が止められる
1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 無銭暴食
ヤツらが渡った海では 赤潮青潮流れる血潮
まるごと奪うぜ 食べ物 飲み物 三時のおやつ
シロガネ四天王 誰かが止めなくちゃ
1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 悪党好色
ヤツらが現れた街では ヤツらが王様 逆らうな
とにかく奪うぜ 恋人 花嫁 気になるあのコ
シロガネ四天王 誰も止められない
シロガネ四天王 シロガネ四天王 シロガネ四天王 悪さしてんのう
シロガネ四天王 シロガネ四天王 シロガネ四天王 あしたキミのもとへ
「シロガネ四天王ッ!!」
背後で謎の大爆発が発生。
思い思いのポーズを決める巨大ロボット軍団は壮観だった。
「か、勝てる気がしない……ッ」
『……ッ! 呑まれるな!! しっかりしろ!! 田所カッコマン!!』
はぐれ研究員の鼓舞もどこか遠い。田所カッコマンの頬を冷や汗が伝い落ちた。
彼を蝕むものそれは……恐怖……!
シロガネ四天王、ロボヶ丘に集結―!
単独でも最強無敵ロボ・ネクソンクロガネをあれほど苦しめた神速飛翔ロボ・シロガネソニック。
それと同等の性能を誇ること間違いなしの四天王ロボ全員を一度に相手どり、果たして田所カッコマン達はこの戦いに勝機を見出せ
るのであろうか!?
さらにシロガネ四天王には、まだとんでもない秘密が……!?
かつてない窮地に、みんなの熱い声援が必要だ!
ここが正念場だ! 田所カッコマン!
踏ん張ってみせろ! 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ!
つづく
70:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(後編)
09/06/06 11:47:46 ZAeNiEjt
以上!!!!!
思ったより大した量じゃなくてよかった。
レス大感謝です。
>>63
どうもです。そこんとこ結構不安だったので安心しました。
>>64
実はこっそり意識してました。ボルカッコォォォッ!!とか言わせる予定だったのですが、さすがに没に。
>>65
恐縮です。まあでも長ければいいというものでは
71:創る名無しに見る名無し
09/06/06 22:44:49 Wt5toEH4
そういやこのスレで今までボリュームが一番多かったのってロボものって何なんだろう?
72:創る名無しに見る名無し
09/06/07 22:43:41 OIC7lTWb
◆gD1i1Jw3kk氏に質問
超振動極熱~という用語が付く武装は具体的にどういったものなの?
あとボトムズが好きなのはわかるけど、あまりにもそのまま過ぎるのはどうかと
73: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/08 00:56:12 TjJwyPfJ
>>72
質問、ありがとうございます。
自分の未来観が大きく関わっているので、人によってはおかしいと思うかもしれません。
どうしても受けられない方は適当な駄文と思って読み流して下さい。
過去から現在、そして未来へ、科学は人の夢と願い、想いを元に高性能と高効率を求めて際限無く進歩していく。
当たり前ですが、物は使えば壊れます。壊れない物などこの世に存在しません。どんなに大事に扱おうと、長年使い続ければ必ず。諸行無常、生者必滅の理……は少し違うか。
例えば目の前の液晶モニターと隣にあるパソコン、人によってはノートパソコンでしょうが、どんなに大事にしていても使い続ければいつか必ず壊れます。
生物が死ぬように、絶対に避けられない運命。子供でも理解出来る当たり前の事。ですが……
壊れないパソコンを求めた事はありませんか。どんなに酷使しようが、数十年使い続けようが絶対に壊れないパソコンを、心の中で少しでも。
絶対に壊れないパソコンなど夢物語のような物。人によっては一笑に付す妄想。ですが、本当にあったらいいと、少しでも思った事はありませんか。
ここで思うか思わないかで、自分の未来観を受け入れられるか否かが分かれると思います。
海上都市姫路守備隊戦記の時代は約22世紀~23世紀頃。現代よりも科学が遥かに発達した時代。
どのぐらい科学が遥かに発達しているかというと、パソコンやらテレビといった家電製品、自家用車などが100年酷使し続けても壊れず、修理どころか整備すら全く必要無い。そんな「物」が当たり前にどこにでもある時代。
普通の家電でも並大抵の使用では壊れないのだから、軍事兵器だと尚更。
10万トンを超える戦闘艦が大破しても、ドックに入れば修理が完全に完了するまで24時間かからない。
科学同様医療技術も発達しており、死んでなければどんな状態だろうが治せる、脳さえ無事なら大丈夫、というレベルで、大人数を短時間で心身共に完璧な治療が可能。
兵器及び兵士を襤褸雑巾同然にしてもすぐに直(治)って戦場に戻って来る。兵器は修復不可能な致命傷を与えるまで、兵士なら殺すまで何度でも続く。
昔には当然の常識とされていた、兵士を負傷させて後送し兵站に負担を与えよう、という考えは全く無かった。
戦場に存在する敵を如何にして確実に「潰す」か、それだけが考えられ、その為の思考錯誤と技術開発が進められた。
敵の兵器、兵士を塵すら残さず完全に消滅させる兵器。そんな人によっては一笑に付す御伽噺の如き代物を真剣に求め、発達した科学が応えた。
振動熱兵器。
物体を分解させる振動波と逃げも離れもせず極短時間で急速に伝播する特殊熱の相乗作用、分解蒸発で敵を撃破する革新的兵器の誕生である。
74: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/08 00:58:39 TjJwyPfJ
とまぁ、こんな感じですね。
上記の壊れない家電や振動熱兵器、あるいはそれに近い代物は、科学が発達していけばいずれは実際に作られるだろうと、自分は考えています。
振動熱兵器に関しては他作品との差別化を図りたかったのも理由の一つです。自分が思いついた、他の作品にはないオリジナルの設定を入れたかった。
自分が知ってるアニメ、マンガ、ゲーム、小説、映画などに作中の振動熱兵器を使っている作品は無かったと思います。強いて言えばガンダムのヒートホーク、ヒートサーベルぐらいでしょうか?
振動熱兵器か、それに近い物を使ってる作品があるのなら教えて下さい。
ボトムズそのままにならないよう工夫してはいるんですが……
ボトムズのATのローラーダッシュは足底に内蔵されているけど、重装甲強化服のローラーダッシュは内蔵せずに、足底に機動靴を装備して使用可能になるなど。
75:創る名無しに見る名無し
09/06/08 05:41:39 ESqCgTOR
まじめに戦闘書いてみたらすげー疲れた。もうしばらくは書きたくない。
>>74
>>72じゃないけど、よく分からん!
しかし俺はよく分からないものをよく分からないまま平気で食っちまうんだぜ
76:創る名無しに見る名無し
09/06/08 21:53:56 WKxyaqFP
物体の分子結合を解くのに一番手っ取り早い手段は熱だぜ
あと、ガンダム00のGNカタールの設定がちょっと似てる。あれの刀身に用いられてる素材は熱伝導率が異常に高いって設定で、つまり刃にとっつけたその素材を加熱して、斬り付けると即座に敵装甲に熱が転移して溶断……だったはず。俺の記憶だから間違ってるかも。
熱が特殊ってのが、何言いたいのかよく分からん。物体の分解、がどのスケールの話をしてるのかも分からん。
77:創る名無しに見る名無し
09/06/08 22:08:42 WKxyaqFP
対象物の分子構造内に瞬時に拡散し、金属が蒸発するレベルの熱を発する何らかの架空物質ってことか? 未発見の凄まじい放射線核種くらいしか思い浮かばんが。そしてその架空物質が行き渡る隙間を作るために、その振動機構で分子間結合を緩くする、と。
んなもんがあるなら、正直プラズマでもぶっ放した方が手っ取り早いような気がしないでもない。
78:創る名無しに見る名無し
09/06/08 22:37:30 WKxyaqFP
多分、直感的な理解なら「二重の極み+爆熱ゴッドフィンガーソード」、なのかな?
まぁそれはともかく、物体を分解させる振動波ってのが、熱伝播に何らかの寄与をするのか(しないんなら伝播可能な熱だけでいい)。熱に特殊もクソもないんだから、何らかの熱担体があるのか、それは伝播しうるのか。そのへんがちょっと気になった。
単なるヒートソードならそれこそガイシュツ。それに対し、別になくたって理屈の上では何の問題もない振動なんちゃらをつけてオリジナリティとしているならば、笑止千万といわざるを得ない。そこまで胸を張るなら理屈をつけてくれ。
未来観に関しては同感。アーサー・C・クラーク大好きだし。
79:創る名無しに見る名無し
09/06/08 22:49:36 qCg24k7y
振動ナイフってようは摩擦で熱起こさせて切ってるんだっけ?
80:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/08 23:17:00 x6IQfTg+
>>78
>爆熱ゴッドフィンガーソード
それはシャイニングフィンガーソードでは……? あるいは爆熱ゴッドスラッシュ
81:創る名無しに見る名無し
09/06/08 23:22:25 WKxyaqFP
>>79
摩擦熱で切る、ってのは少なくとも俺は聞いたことない(´・ω・`)
ナイフを当てて、押して引いて捻じ込んでの動作を機構の中に組み込んだもの、ってのが多い気がする。
フルメタなんかだと極微サイズのノコギリ、だっけか
>>80
すげぇヒートソードって印象が伝わればそれでいいww
82: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/08 23:36:30 zr9v7LEq
こんなに返答があるとは思ってなかったです。
振動熱兵器は>>77、>>78さんの言うような代物ですね。
例えば鍋を火にかけると中の水が沸騰するまで時間がかかるじゃないですか。通常の熱と違い急速に伝わり数十、数百倍の速度で水を沸騰させられるのが特殊熱です。
架空の物質などは全く使っておらず、必要なのは電力だけです。
正直大した科学知識は無いので、大体そういう風なモノと深く考えずに理解してもらえると助かります。
特に皇帝戦はほぼ完全に少年漫画的勢いとノリの話になる予定なので。
83:創る名無しに見る名無し
09/06/08 23:57:37 WKxyaqFP
熱とはどういう概念かを誤解している気がしないでもない。
まぁいいや。SF板に帰るわ
84:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/08 23:59:49 x6IQfTg+
>>81
ラージャ!
単分子カッターですね。
クリムゾンエッジみたいな形の武器、好きだなぁ。
さて、近い内に自分も続きを投下しようかしら。
85:創る名無しに見る名無し
09/06/09 06:00:59 jSnZRKpG
みんな近いうちにっていうから期待しているのに、
なかなか来ないのでおれはマチクタビレッタ
86:創る名無しに見る名無し
09/06/09 21:15:23 3XnZLxyR
んーじゃあ、本編出切るまでのビスケットがわりにでも、むかーしこのスレだったかでも上げた気もするが
URLリンク(ux.getuploader.com)
PASSは目欄
87:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:01:30 cVw8rVLw
>>86
おぉ、これは懐かしい!後でゆっくり読ませていただきますね!
凄く時間が掛かっちゃいました、お久しぶりですorz
取り合えずやっとタウエルンの本来の姿を書く事が出来ました
ぶっちゃけ殆どファンタジーの域ですが、生温かく読んでいただけると幸いです。ではどうぞ
88:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:03:34 cVw8rVLw
<4,変形>
ギーシュは焦っていた。それは何故かと言えば、村長である村長からの連絡が全く来ないからだ。既に1時間以上経っている。
ちらりと目線を正面に向けると、村長の女房がおぼつかない視線で時計を見つめている。その表情には明らかに不安の色が浮かんでいる。
「大丈夫ですよ、奥さん」
ギーシュは明るい音色と、出来るだけ明るい表情を浮かべて、女房に声を掛けた。
「少し話が立て込んでいるんでしょう。大丈夫ですよ。ロッファさんは無事に戻ってきます」
女性を励ましているつもりではあるが、ギーシュはその言葉を自分に言い聞かせているのだと心の底で思った。
先日の事だ。酒場からトニーを送ったギーシュが自宅に帰ると、留守番電話に村長からのメッセージが入っていた。それは……。
「夜分にすまない。どうしても伝えておくべき事があってね。……トニー君の件は聞いたよ。……すまなかった。私が彼らと契約を結んだばかりに……。
……実は昨日、彼ら、いやデイトに飛行船に来るように連絡を受けたんだ。どんな要件なのかは来てみれば分かると言われたよ。どう考えても穏やかな内容ではあるまい。
しかし私は思うんだ。もしここで断れば、恐らく私達は、かつての平穏な生活を永遠に失うのではないかと。そこで私は決心を固めた。
明日、彼らの誘いに乗る事にするよ。そして、彼らが行っている圧政を直談判しよう。彼らの暴挙を許したのは私の責任だ。私自身が動かねば何も解決しない……
そこでだ。ギーシュ君。君に頼みがある。明日、君には私の自宅に来てほしい。妻一人だけを家に残しておくのは何分不安でね。
腕っ節が強い君なら一緒に居ても安心だろうと思い、電話を掛けた次第だ。来てほしい時間は~……
事が済み次第連絡する。恐らく1時間もしないと思う。もしも都合が悪ければ悪いで折り返し連絡してくれ。それじゃ……」
村長のこのメッセージに、ギーシュは正直戸惑った。村長の決断がとてもじゃないが英断とは思えないからだ。
シュワルツがどれだけ性悪なのか、ギーシュは嫌というほど知っている。あの男が何を考えているかは分からないが、村長の言う通り穏やかな用件で呼ぶ訳が無い。
止めよう。もし村長に危うい目に合えば今度こそ、この村は終わる。留守電ボタンの明かりが消えたと同時に、ギーシュは決心を固めた。
しまった……時すでに遅し、ギーシュが村長の家に着く既に1時間前に、村長はシュワルツのアジトへと出向いたらしい。
女房がギーシュが到着した際、ドアを開けてか細い声でそう説明した。ギーシュは女房の話に耳を傾けながらも、自らの失態に頭を抱えた。
決意を固めたはずだったが、休日である事が災いしていつもより遅く起きてしまった。自分がこれではトニーの事を馬鹿とは言えないな……。
今更村長を追いかける訳にも行くまい。ギーシュは肩を落として、女房と共に村長の連絡を待つ為家に入った。
そして今、ギーシュは村長から鳴って来る筈の電話を待ち続ける。村長――ロッファが殺された事も知らずに。
「着いたぞ。これだけ荒れてるが……本当に大丈夫なのか?」
トニーが背後を歩くショウイチに声を掛けた。ショウイチは立ち止まり、後ろのタウエルンに手をかざして停車させると、周囲を見渡した。
所変わり、ここはトニーが数週間前に全く芽が出ない為、に続行不可能として判断し、耕すのを諦めたスイカ畑だ。
常々水を与え気を配ったはずだが、なぜだか全くと言っていいほど実らない。実らない以前に……ショウイチは畑に足を踏み入れた。
「種が出てこない?」
「あぁ。何というか奇妙なんだ。まるで……」
89:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:05:36 cVw8rVLw
ショウイチはしゃがむと、何処からか取り出した薄い手袋で土を掘り返した。そしてトニーに顔を向ける。
「ここ数日で、何か変わった事は無かったですか? そうですね……」
視線を宙に向けて、数秒何か考える仕草を見せると、ショウイチは言葉を続けた。
「今まで順調に実っていたのに、ある日を境に突然実らなくなったとか。天気も環境も変わり映えない……
ごめんなさい、言い方を変えます。去年と全く状況は変わらないのに、何故か今年は全く上手くいかないって感じはしませんか?」
ショウイチの表情と口調がさっきまでと全く違い、異様に静謐さを秘めている事にトニーは戸惑った。まるで、別の人間の様だ。
ショウイチの言っている事の意味がいまいち飲み込めないが、ここは真剣に答えるべきだろう。
「あぁ、ここ数カ月はとんでもない大不作だ。幸い自分たちで食っていける分は確保できているが……とても商売にならんよ」
「やっぱり……」
小さな声でショウイチはそう呟くと、手袋を脱いで、腰に両手を当てた。そして鋭い表情を柔和な表情に変えると、トニーに顔を向けた。
「大体の事情は分かりました。さてと、では耕しましょう!」
「片づけておきなさい。後々使いますから、これ以上傷は付けない様に」
シュウルツがまだ生暖かい血を流しながら息絶えたロッファを一瞥すると、そう言って踵を返した。
固まっていた研究員たちが、ハッと我に返り各々仕事に戻る。シュワルツの取り巻きである二人の男が淡々と、シュワルツの死体を片づける。
ダルナスに動きは特にない。が、シュワルツは妙な予感を抱いていた。ダルナスを見上げて思う。何かが、妙だ。
全て上手くいっている。微力ながらも村の中心となっているロッファは失せ、もうすぐダルナスが復活を遂げる。何ら不備は無い……。が、心の靄が晴れない。
その時、研究員の一人がシュワルツに声を掛けた。シュワルツはダルナスから目を逸らし、そちらへと向かった。
研究員が怪訝な表情でモニターを見、シュワルツに困惑した様子で言った。
「エネルギーの充填率が5パーセント落ちています。今までこんな事は無かったのですが……」
シュワルツはモニターを覗き見る。確かに先ほど見た時よりも、充填率を表すメーターが若干下がっている。
「……あり得んな。まさか……実るというか? 農作物が」
シュウルツはメガネを下げると、冷静に言い放った。確かに農作物が最低限のラインを越えて実る事はあり得ない……筈だ。
ダルナスはこの村全体の畑の地中奥深くにある、巨大なソーラーパネルより吸収される太陽光をエネルギーとしている。
その為、農作物に必要な太陽光を根こそぎ奪ってしまうのだ。
シュワルツはそれでは面白くないと、ある程度生活できる分の農作物を作らせる為、パネルの一部を消灯させた。
やろうと思えばスグにでもダルナスは復活できるが、それでは興が無い。
トニーおよび農民達が農作物が取れないと嘆き、苦しむのを見るのがシュワルツには可笑しくて堪らない。
だが今のシュワルツには嘲笑う気分ではなかった。抱いていた予感が、今現実になろうとしている。
モニターから離れ、シュワルツは研究員の肩に手を乗せると優しい声で言った。
「どの地域で何が起きているかを早急にリサーチしておいてください。大事の前の小事です。芽はしっかり潰さないと……ね」
「モードを田植えから野菜・果物に変更……速度は低速で……よし、オッケイ!」
タウエルンの上部からパネルを引き出し、ぶつぶつ言いながら何か設定を終えたショウイチがパネルを下して、トニーにサムズアップした。
ショウイチはタウエルン押しながら畑に再度、足を踏み入れる。ショウイチが立ち止まると、タウエルンが自動で動き出す。
90:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:07:10 cVw8rVLw
「後はタウエルンが耕し終わるまでのんびり待ちましょう。時間にして……15分程度ですね」
何処からか取り出した懐中時計を見ながら、ショウイチが笑みを浮かべて畑から出る。トニーはタウエルンに目を移した。
タウエルンの前部と後部から二本のアームが延びている。そのアームの先には、クワの刃を思わせる物体がついたローラーが、のんびりと畑を耕している。
正直滅茶苦茶な事をされるのではないかと不安だったが、タウエルンに付いたそのローラーは畑を至極丁寧に耕している。
しかし……別に今の時点では、このタウエルンにショウイチが語った様な無茶苦茶な機能があるように見えない。というか、この程度なら自分自身の力で十分耕せるからだ。
まさかこのショウイチと言う男は本気で……トニーは疑念を浮かべたその時。
「所で……トニーさんは自動人形についてどんなイメージがありますか?」
ショウイチの何気ない一言に、トニーは一瞬何の事か理解が出来なかった。今、ショウイチは確かに自動人形と言った。
イメージ? そんなモノは決まっている。平和な世界を破壊した、度がし難い憎悪すべき存在。それ以上でもそれ以下でもない。
実際トニーはそう、両親から教えられた。そして自分自身、自動人形によって住んでいた場所を奪われた。戦争と言う事を配慮においても、許せる訳がない。
「……質問の意味が分かりかねるな。もう少し具体的に聞けないか?」
あくまで感情を押し殺して、トニーはショウイチに聞いた。ショウイチの返答次第では、強硬な態度に出るつもりでいる。
大体、ここまで付き合っておいて難だがどうにも信用できないのだ。これだけデかく得体の知れない物が、トラクターとはとても思えない。
それにさっきまで膨らんでいた疑問が明確になる事が……怖い。それはタウエルンが――。
「……ナノマシンを分布するには、タウエルンが変形する必要があるんです。人型の、ロボットにね」
「……それで?」
「もしも……もしも貴方が、自動人形に対して嫌悪感を抱いているのなら、僕は彼と共にここを去ります。
ですがもし、貴方が僕の話を信じてくれるのなら、その機能を使ってこの畑を蘇らせましょう。勿論目の前で」
そう言うショウイチの目には、確かな意思が宿っていた。トニーはその言葉に対し馬鹿にしているのかと一喝しようとしたが、ショウイチの目に、言葉が出ない。
しかし、だ。もしここでタウエルンに頼れば、それは自分自身の価値観を否定する事にならないか? 今だって自動人形に……。
だが、だがもし、タウエルンがショウイチが言う通り、とんでもないメカだったら、本気でこの状況から脱する事が出来るのかもしれない。
どうせこのままでは状況は変わらない。ならば一回くらい、突拍子の無い希望に掛けてみてもいいのではないか。
自動人形は憎むべき存在だ。だが、今はそんな事を言っていられるような状況じゃない。考えてみれば、今の我々には打開策が何も無いんだ。
……トニーは右手で目を覆い、天を数秒仰ぐと、ショウイチに向き直った。
「信じてやるよ。だがもし君の発言が嘘だとしたら、容赦はしないぞ」
トニーは苦笑いを浮かべて、ショウイチに返答した。ショウイチはトニーの言葉に力強く頷くと、畑を耕し終えたタウエルンに向かって大声を上げた。
「タウエルン! トランス!」
91:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:09:08 cVw8rVLw
その瞬間、タウエルンの車体が縦に割れ、ローラー部分が左右に分離する。見るも奇想天外な変形を重ねがら、タウエルンはその姿を露わにした。
さっきまでどこか鈍重で野暮な姿のトラクター姿とは似ても似つかぬ、人型のロボットがそこに立っていた。変形終了と共に、排気口の重低音が響く。
腕部と足部、そして胸部に車体の装甲が移行しプロテクターとなっており、重厚な印象を抱かせる。闘牛を思わせるヘッドパーツのデュアルアイが鈍く赤く光る。
「す、すげー……」
タウエルンの変形を見て、トニーは思わず感嘆した。するとどこからか、かわいらしい少年の声がした。
「ショウイチー。もう仕事しても良いのー?」
その声は紛れもなく……タウエルンから出ていた物だった。
何処からしゃべっているかは分からない。が、無邪気に右腕をショウイチに向かって振っている。思わずトニーは脱力した。
「あぁ、存分に働け!」
ショウイチが言うが早く、タウエルンは背中の排気口から何かを噴出した。一見ジェットの様に見えるが、それはキラキラと光る青い粒子だ。
あの重そうな自動人形が軽々飛び上がる様に、トニーは呆然とショウイチに呟いた。
「……あれもソーラーエネルギーって奴なのか?」
「ええ。詳しい事は長くなるので言えませんが」
タウエルンはしばらく昇ると、空中で静止した。すると腕部と足部がパカッと縦に二つに割れ、中からウエハースの様に薄い板で成形された部分がせり出てきた。
ゆっくりとタウエルンは降下しながら、その部分を下にする様に体をうつ伏せにした。
そして驚くべき事にその状態のまま、排気口から粒子を吹き出し、畑の上空を飛び回る。ウエハースの部分から、緑色の粒子が降り注ぐ。
「あれが例のナノマシンか……」
タウエルンから降り注がれる粒子を眺めながら、トニーは畑に目を移した。そこには驚くべき光景が広がっていた。
全く芽が出る事が無かったスイカの種が成長しているのだ。無論最初から完成している訳ではないが、これから充分育てられるほどには。
トニーには目の前の光景がまるで魔法の様だと思った。それほどあのナノマシンとやらがトンデモナイ代物なのだ。
「……で、あれほどの装置と言うか物体が、どうやってトラクターの中に収納されてるんだ?」
「詳しい事は長くなるので言えません、ごめんなさい」
次第にタウエルンから分布されていたナノマシンが、穏やかに薄くなっていき、うっすらと消えていく。
当初は荒れ果て、手の打ちようがないほど荒れていた畑が、今では立派なスイカ畑として生まれ変わっている。
ショウイチはこちらに飛んでくるタウエルンを、満足げな表情で迎えている。と、タウエルンがショウイチに近寄り、音声のボリュームを最大にまで下げた。
92:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:11:11 cVw8rVLw
「ナノマシンにショウイチが言っていた例のシステムを破壊するバグを組み込んでおいた。地中のパネルは此処に限れば、もう作動しないと思う」
「良くやった、タウ。……また争う事になるかもな。いや、既に……」
「疑ってしまってすまなかった、ショウイチ君」
トニーがショウイチにそう言って頭を下げた。ショウイチは首を横に振って、笑顔で返した。
「いえ、僕の方こそ妙な事を言ってすみませんでした。いきなりあんな事言われても引きますよね……」
ショウイチの言葉に、トニーは小さく首を振り、言葉を続けた、
「いや、私が勝手なイメージで君達を拒絶してしまったんだ。君達に非は無いよ。ホントに驚いた、まるで夢みたいだよ。
君達を雇う件、私の方から頭を下げるよ。是非ともこの村で働」
「まさか自動人形が他にあったとは……信じがたいな」
背後から声がして、トニーは振り向いた。6体ほどの黒騎士を従えた、シュワルツの取り巻きの一人である大男が数メートル先に立っていた。
そして大男は腕に意識を失っているのか、ぐったりとしたメルティを抱えていた。大男はにやりと笑うと、言葉を続けた。
「シュワルツ様の命で異常を探りに来たが、まさか他タイプの自動人形が見つかるとはな。これはとんだお宝を見つけた」
「き、貴様……メルティをどうする気だ!」
怒りと恐怖で声を震わせたトニーがそう聞くと、にやけ顔を崩さぬまま、大男は返答した。
「無論シュワルツ様に上納するんだよ。恨むなら、お前自身のふがいなさを恨め」
大男はそう言い切り、もう片方の腕で、トニーとじっとしているショウイチとタウエルンの方に向けて腕を上げると、声高らかに叫んだ。
「行け、黒騎士共! 自動人形は傷つけずに倒し、他の雑魚は叩き殺せ!」
「行けるか、タウ?」
「……これで、争い事は最後にしたいね」
<バッファローモード.起動>
続く
93:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:13:10 cVw8rVLw
投下終了です。何か凄く力技というか、強引な展開ですみません
粒子がもろにアレっぽいですがまぁ……良くあるトンデモエネルギーって事で許して下さい
夜分失礼しました
94:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/10 00:49:01 SDZIF8i7
>>93
わかった、コジマ粒子ですね(違
ついにタウエルンの殺陣が読めると思うと、ワクワクが止まりません。バッファローって事は、ハ●ケーンミ●サーが(ry
それにしても、ナノマシン……まるで神の奇跡のよう……
95:創る名無しに見る名無し
09/06/10 05:58:41 OWnem+wx
>>93
自分のテキトーな思いつき設定をここまで広げてくれるとは素直に感謝です
なんか想定してたのよりもさらに壮大になってるw
96:創る名無しに見る名無し
09/06/10 13:18:02 yc2PVVA6
タウエルンは三段変形だったのか!?
おいおい何だよそれ。ますます欲しくなったじゃないか!
97:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/10 15:47:29 SDZIF8i7
つまり1/40タウエルン発売ですな!
あるいは超合金タウエルン。
……いや、超合金はネクソンクロガネ向きか。
さて、帰宅したら投下だ!
98:パラベラム! 1/4 ◆1m8GVnU0JM
09/06/10 20:39:41 SDZIF8i7
<マスター、これは不得手なフィールドです>
リヒトを肩に乗せて疾走するハーシェンが呟いた。
無理も無い。確かにこの遺跡の中はある程度の広さはあるが、彼女が暴れるにはいささか狭すぎる。機動力が殺されては、防御力に乏しい彼女の勝算は少ない。
「やれ連戦だの不得意なフィールドだの、神様も随分と意地悪してくれるな。……そういえばお前、レーダーは使えるか?」
<本来の半分以下の性能ですが、なんとか>
きっぱり即答。わかりやすくてよろしい。
「そうか、キツいな。バリアにマナを多めに回しておけ」
<イエス、マイマスター>
マナの壁が厚みを増す。これなら強力な攻撃も一発なら止められるだろう。
<ところでマスター。早速ですが前方に反応、確認しました。降りてください>
「あいよ」
飛び降り、そして華麗に着地。
「俺は三つ編み娘の確保を優先する。……支援ができるのははその後だ」
<イエス・マイマスター。勿論危なくなったら助けてくれますよね、期待してます>
早口で言ってさっさと行ってしまう。
----抑揚は無い。が、その声は緊張を孕んでいて。
「……可能ならな」
あいよと笑って、リヒトもその場を走り去った。
パラベラム!
Episode 05:激突、黒騎士vs白ウサギ~乱入してくるとはとんでもないやつだ~
99:パラベラム! 2/4 ◆1m8GVnU0JM
09/06/10 20:41:17 SDZIF8i7
<反応、急接近。エンゲージ>
疾風。
鋭い回し蹴りが一閃。騎士がそれを受け止める。先程の野良とは明らかに違う圧倒的なプレッシャーが、物影の遥にもはっきりと伝わって来た。
いや、それよりも----
「え……?」
視界に飛び込んだ白い閃光に、遥は驚きを隠せない。
「あれ、さっきの----」
耳のように見えるレーダーと長い足、バイザー状の赤いカメラ・アイ。それは先程遥を助けた白いウサギに他ならなかった。
白と黒、互いに距離を離す。
<あなたですか、キングは>
唐突に口を開く。内容は意味不明。
<キング……何の>
ウサギが低い体勢から繰り出した、不意打ちの貫手。このままでは避けられない----!
遥が息をのんだ、その時だった。
100:パラベラム! 3/4 ◆1m8GVnU0JM
09/06/10 20:43:33 SDZIF8i7
「君、大丈夫か?」
突然現れた男に話し掛けられたのは。
髪は赤く、顔立ちは精悍。年齢は一見すると十代後半から二十代前半だが----油断の無い物腰と鋭い目つきのせいだろうか----見ようによってはそれ以上にも見える。
「……はえ?」
次から次へと襲い掛かる非日常に、遥の頭はパンク寸前。まともな返事を返す事ができず、首を傾げた。
「大丈夫じゃあなさそうだな……」
「あ、いえ、大丈夫です!」
慌てて表情を取り繕う。
「……とにかく、ここは危ない。彼女がアイツを食い止めている間に逃げよう」
男が手を差し延べる。
「彼女……?」
一体誰の事だろうか、と混乱する頭で考える。彼女とはおそらく、あの白い----
「ま、待ってください!」
差し延べられた手をがしりと掴む。
「あなたの」
「名前はリヒト・エンフィールド」
「あ、失礼しました」
突然名を名乗る男。何故このタイミング……?
「リヒトさんは、あの白」
「そう、正解だ」
何故このタイミング……!? いや、そんな事より、今は、
「ならお願いです、今すぐ戦闘を止めさせてください!」
♪ ♪ ♪
繰り出された、不意打ちの貫手。これは……直撃コースか。
黒い騎士----M-12は素早く、そして冷静な判断ですぐさま左の肘と膝で相手の腕を挟み込む。そしてそのまま首を掴み、白いオートマタを壁に叩き付けた。
<ぐむっ……!>
<キングとは……何の事だ>
空いている右手にマナを集め、それを相手の下腹部に突き付ける。
<あなたの事じゃないですか。手下を使って女の子を襲うとは、神経腐ってますね>
ウサギは気丈だった。生殺与奪の権を握られているというのに。
<何の事だ……>
<壊れかけのレディオですかあなたは>
ウサギは気丈だった。しかしそれは無感情な機械的なものではなく、意地だとか、覚悟だとかいう類の人間的なもののように感じられた。
<わかりました、ならこちらから質問させていただきます>
やれやれ、と呆れた声で質問する白いオートマタ。何故この状況で。
101:パラベラム! 4/4 ◆1m8GVnU0JM
09/06/10 20:45:39 SDZIF8i7
<それは許可できな>
<あなたの目的は何ですか>
……何故この状況で?
<私の目的は>
「そこまでだ、ヘーシェン。戦闘行動を中止しろ。彼は敵ではないそうだ」
いつの間にここにいたのだろう、おそらくはこの白いオートマタのマスターであろう男が割り込みを入れてきた。タイミングが最悪だ。
<あの穀潰し、タイミングが最悪ですね……。構いません、続けてください>
間が悪いのはそちらも同じだと思うのだが……口には出さない。
<私の目的は、彼女の>
「お願い、手を離して!」
今度は女性の声。マスターだ。ああ、間が悪い。
<イエス・マイマスター>
しかし素直に従い、手を離す。そしてしばらくの間を置き、改めて、
<私の目的は>
<あ、いいです。今ので大体わかりました>
おお、なんと間が悪----
<……これは>
アラーム。
敵だ、それも近い。
黒い騎士は主の前に素早く移動し、マナの防壁を展開した。
「え、な、何!?」
<敵です、マスター>
閃光が瞬く。
その閃光は防壁を突破して黒騎士の装甲の一部を溶かし、変形させた。防壁によって威力は減衰していたが、これは、
<荷電粒子砲……>
マナを加速し、撃ち出す兵器だ。その威力は絶大で、防壁、装甲を易々と貫通し、目標を溶解させる。
どうやら今のは威力を加減して撃ったようだが……一体どこから。
<乱入してくるとはとんでもないやつだ。……高額な光学兵器を装備しているとは、とんだブルジョアジーですね。死ねばいいのに>
「まったくだ」
無駄口を叩きながら戦闘態勢に以降する白いオートマタと、赤髪の男。
「ええ!? まだ来るの!?」
べそをかきながら辺りを見回す三つ編みの少女。
そして----
<まさか、こんなに早く君が現れるとはね。リヒター……リヒター・ペネトレイター>
先程の機体よりも遥かにクリアな声、流暢な言葉。
ゴーグル状のカメラ・アイをオレンジ色に光らせながら、蒼いそいつは現れた。
次回へ続く!
102:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/10 20:50:18 SDZIF8i7
今回はここまで!
ふぅ……携帯だとどこでも書けるのがメリットですが、慣れていないと面倒ですね。
103:創る名無しに見る名無し
09/06/11 14:05:39 wpX3YbLj
前回までより分かりやすくなってる
リヒターってリヒトが命名するとか、なんか関係があるのかと思ってたけどそうでもないのか・・・
104:創る名無しに見る名無し
09/06/13 20:14:22 URY4wTRd
パラベラムの荷電粒子砲はまた一風変わっているらしいが
どんなもんなんだろう
105:創る名無しに見る名無し
09/06/13 20:18:46 Eb/a+zHq
荷電粒子砲なのに光学兵器なのか?
あんまり揚げ足とるようなことはしたくないけどさ。
106:創る名無しに見る名無し
09/06/13 20:36:57 GWhRzTd3
厳密に言えばレーザーの類だけだろうけど
現実で実用化された訳でないし
実弾兵器よりは光学兵器っぽいからって理由で
光学兵器に分類されてるって世界観なら
何も問題はないな
107:創る名無しに見る名無し
09/06/13 21:14:00 NrRbP3Aj
ま、厳密にいうなら指向エネルギー火器だわね。
どうでもいいけど、「実弾兵器・実体弾」って表現に違和感あるのって俺だけ?
よく対比とされてるビーム火器だって、レーザーだって光には粒子性もあるし、粒子ビームならもろ物質をブチ当ててるワケで。
「実弾兵器とは呼び得ないもの、実体弾と対比されるべきもの」と言われると、
風力砲みたいなゲテモノ(あと強いて言えばトールボーイか。ま、これもゲテモノよりか)が浮かんじゃうんだよ。
それで個人的には指向エネルギー火器って言い方にこだわってるんだけど。
荷電粒子砲を光学兵器と呼んでも問題無くなる裏ワザ……電荷を帯びた光子を撃っていると……いや何でもない。
108:創る名無しに見る名無し
09/06/13 21:19:14 URY4wTRd
>実弾
たまにいるよね、そういうの気にする人。
俺もいざ文中で使うとなると「あれ? これって・・・?」と尻込みする方
でもぶっちゃけ気にしすぎてもしょうがないような気もする。
109:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/13 21:32:54 iN8wo+aW
何だろう……妙に申し訳ない気分にwファンタジーすぎるかも知んない…タウエルン
遅くなりましたがレスありがとうございます
>>102
リヒター…一体どれほどの実力の持ち主なのか気になりますね
続きを待ってますです
>>94-95
魔法というか得体の知れない物として書きたかったのですが結局ファンタジーにw
中々リアルに、というかリアリティを出そうとして書けないですね…orz
>>96
三段変形というかリミッター解除というか。本来のタウエルンに戻るって感じです
出来るだけカッコ良く書きたいですね。要なので
110:107
09/06/13 22:39:49 NrRbP3Aj
>>108
まあ、俺も「自分ではそうは書かない」レベルで、いちいち他の人の書いたものにケチ付けたりはしない方ではあります
(>>107で書いたのは、その上で用語の使い方の話になってたから)
ぶっちゃけ、呼び方なんかより、よく指向エネルギー火器が高威力火器として描かれてる(特に装甲目標に対して)ことの方が
気になる人間だし。
111:創る名無しに見る名無し
09/06/13 22:50:37 +wqtBBb0
そのエネルギー別のことに使えって話か
まぁいいじゃない。ヴィジュアル的には格好いいし。
112:創る名無しに見る名無し
09/06/13 22:52:52 QdZKdHKr
ビーム兵器が自分の頭脳だと使いきれる気がしないので不思議兵器として扱ってるなー
とりあえず不思議なモノなの、なんか凄いものなの、で通そうとか思ってる
しかし、書いて削ってを繰り返してると中々完成しない…途中のキリのいい所で切って前編として投稿した方がいいんだろうか…
113:創る名無しに見る名無し
09/06/13 22:59:31 URY4wTRd
>>112
1シーン単位でやってる人(荒野、スプリガン)もいるし、
一話をわりと短くしている人(パラベラム)もいるし
いいんじゃないか?
114:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/13 23:03:07 iN8wo+aW
>>112
良いと思いますよー。自分自身区切りの良い所で
確かに推敲してると長くなっちゃいますよね…
115:創る名無しに見る名無し
09/06/13 23:05:13 URY4wTRd
タウエルンもだった。ごめんごめん。
けっこうボリュームがあるんで短いという気がしなかった
116:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/13 23:28:00 ggXt1eOI
深夜のガンダムに備えて寝ている間に盛り上がっている、だと!?
てか、鯖、復活していたんですね
>>103
ゲインとゲイナーみたいなノリで(ry
一応関係はある……ような、無いような
>>104
単純にメガ粒子やGN粒子をマナに置き換えたものだと思っていただければ
>>105-108
単純に自分の知識が足りなかっただけです、はい。
そうか……。荷電粒子砲って、光学兵器じゃないのか……
>>109
むしろそのファンタジックな光景、Yesだね!
117:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/13 23:43:21 iN8wo+aW
>>115
いえいえw毎回書いてて思うんですよねー、詰め込みすぎだってw
短く書くのを目標にはしてるんですけど、心理描写云々入れるとどうしても長くw
>>116
えぇ、これからもファンタジックを目指しますよ。キーが一ミクロンも打てないですがorz
ふと思ったんですけど、設定って作った方がやっぱ良いですかね
他の作者さん達が結構緻密な設定を投下しているので、自分だけが物語だけ投下してるのもアレかなと
118:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/13 23:52:29 ggXt1eOI
>>117
今のところは2~3つぐらいでいいと思いますよ、設定
設定が少ないと、かなり自由にできますから
119:創る名無しに見る名無し
09/06/13 23:53:56 +wqtBBb0
あんま設定つめると意地悪な人に突っ込まれる件
120:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/14 00:03:41 ufA+lWuK
>>118-119
そうですね……取り合えず物語に重要そうな所は作っておきます。上手くできるか自信ないけど
助言どうもです。それではおやすみなさい
121: ◆klsLRI0upQ
09/06/14 03:21:38 DChI8kQc
設定作ってるように見せかけて、実はあんまり作ってない人ですw
プロットも…オチだけ決めてそこに突っ走ってる感じなので、結構思いつきで書いてることも多々
背中押してもらいましたのでとりあえず現在、誤字脱字と矛盾無いかの確認作業に入ってます
今日の夜には落とせるかな
122:CR 第一章 SIDE C前編1/3 ◆klsLRI0upQ
09/06/14 22:11:59 DChI8kQc
それは一瞬の出来事だった。
大地に舞い降りた漆黒の鋼機は腰から引き抜いた大きな黒槍をその場にいた天狼の喉元に突き刺したのだ。
機体から紅い閃光が走り、その閃光は軌跡となって、天狼の機体になだれ込み、黒槍の矛先に収束していく…。
矛先の空間が歪みはじめる。
その歪みは紅の光を通し、一点の大きな光となっていく…。
そうして集められた光を漆黒の鋼機は黒槍にあるトリガーを引く事で解放した。
閃光。
それは指向性を持った強大なエネルギーとなって黒槍の矛先から解放され天狼の巨躯を体の中から蝕む。
それは貯蓄した力の全てを放出するように天狼の体の中を駆け巡り、その肉体を陵辱し、その存在を蹂躙し、それがそこにいたという事実を消滅させていく…。
そうして天狼は塵芥残さず消滅した。
この間、漆黒の機体がこの大地に舞い降りてから、わずか5秒の出来事である。
なんという威力か―
その黒槍は超振動により対象の装甲を削り裂く鋼機のナイフですら受け付けぬ天狼の装甲をあっさりと貫き、それを一瞬で対象を消滅させたのだ。
その場に居合わせたものがいたのならば、その光景に余りの理不尽さを感じただろう。
漆黒の機体は足元に両腕を破壊され倒れている蒼白の機体の全身全霊を賭した戦いを茶番だと言わんばかりにいとも容易く一蹴したのだ。
自らの機体が半壊しながらも執念で戦い続けた蒼白の鋼機がそれでも届かない圧倒的な差を示された前にそれを圧倒的な能力で一瞬で消滅させてしまった。
漆黒の鋼機は肩、膝、背の各部を展開しはじめる。
展開した部分から紅い光りが迸る。
そうして放出された光りは周囲に降り注ぐ。
周囲にあった草木はその光りを浴び、色を落とし、枯れていく……そして、それはそんな中にそびえ立っていた。
漆黒の御身に紅蓮の光を纏う機械仕掛けの悪魔。
まるでそれはこの世に破滅をもたらす魔王のように見えた。
そう、これこそが世界政府から現在指名手配を受けている謎の漆黒の鋼機、通称:ブラックファントムである。
ブラックファントムは背中にある機械仕掛けの大きな黒翼を広げ飛び立とうとする。
その時、怒号のような銃声が鳴り響いた。
それとほとんど同時に漆黒の鋼機の周囲に大きな爆発が起こる。
ブラックファントムの機体がその爆発で揺らぐ。
そこに空から三機の蒼白の鋼機がパラシュートで降下してくる。
蒼白の鋼機、つまりは三機のS-21 アインツヴァインは着地後にすぐさまブラックファントムを包囲するような陣形を取った。
そしてアインツヴァインは自身の持つ、アサルトライフルの銃口を全てブラックファントムに向けた。
123:CR 第一章 SIDE C前編2/3 ◆klsLRI0upQ
09/06/14 22:14:55 DChI8kQc
「けっ、本当にあの化け物を破壊しちまうとはな、こいつ本当に鋼機なのか?」
オープンチャンネルで蒼白の鋼機のスピーカーから人声が流れ始めた。
声の硬さからして男だろうか…発言の軽さからか若干、ぶっきらぼう人柄が感じられる。
それに同調するようにもう1機の鋼機もチャンネルを開く。
「データ上1世紀前の鋼機、S-16と類似している点は多い。例えばあの背部の翼に使われているブーストユニットは当時実験中だったフライトシステムの可動ブースターそのものだ。
鋼機とフライトユニットの一体化を狙ったものだったそうだが、僕から言わせてもらえれば、フライトユニットの一体化なんて無駄に機体の重量を重くするだけで愚考でしかないよ。
今ではフライトユニットは使い捨てのモノが当たり前になっているが、なんで最初からそうしなかったんだろうねと僕は思わざる終えない。」
その男の声にはヒヤリとするような冷たさがある。
「でも、今の見ただろう?あんな事できる鋼機なんて聞いたことないぜ。50年前には魔法使いでもいたっていうのか?」
「馬鹿も休み休み言え。」
「だがよー。」
「α5、α6、黙れと私は言ったんだが、聞こえなかったか?」
三機目の鋼機が二人を静かに言い放つ。
「誰が勝手にチャンネルを開いて良いと言った。通信したければ、普通に話せばいいだろう?なんで、わざわざスピーカーを通す必要がある。」
三機目の鋼機から発せられた声の質からしてその鋼機に乗っているのは女性であることは間違いなかったが、その声はそれが女性だと感じさせぬほどの静かで、それでいて威圧するような物語りだった。
その女の声には静かなその他の二機の鋼機の搭乗者に対する、怒りを感じさせられる。
もし、その場に立ち会っている人間がいたのならば、誰もが彼女こそがこの二機の鋼機を統括するこの場の指揮官なのだと理解しただろう。
「そんな事を言っても―」
「α5、私は黙れと言った。」
反論しようとした、ぶっきらぼうな男を女の指揮官は臥せるように一喝する。
「申し訳ありません、隊長。」
即座にもう一人の男が女に謝罪を述べ、
「はいはい、申し訳ありませんでした!!」
それに続くようにぶっきらぼうな男もしぶしぶと投げ槍な謝罪をする。
「さて、そこの黒い鋼機、大変見苦しい所をお見せしたが、私の声が聞こえているかね?」
指揮官は、自身の部下達に言い放つのと同じ口調でブラックファントムに対して語りかける。
「…………。」
ブラックファントムは沈黙している。
ただ、その紅い瞳はその指揮官の乗るアインツヴァインを睨む様に見つめていた。
―退け、さもなければ殺す―
まるで、その相貌はそんな事を無言で語りかけているように指揮官は感じた。
それに対して指揮官は何かを頷くような素振りを見せ。
「ふむ、喋る気が無いのかね、まあ、それもいいだろう。ああ、そうかそうか、大事な事を忘れていた…自己紹介がまだだったね、私の名前はシャーリー・時峰(ときみね)という。
世界政府第7機関に所属する組織『イーグル』の構成員の一人だ。見ての通り、この馬鹿どもを率いる小隊長のようなモノをやらせて頂いている。
一応、君に銃口を向けているのは我々の恐怖心からだ非礼だとは思うが、許していただきたいと思う、それに君ならば、この程度なんの脅威にすらならないだろう?
あと、君の足元に半壊して倒れている鋼機も一応は私の部下でね、命令無視して特攻した馬鹿なんだが、それでも私の部下でね、よければ返してもらえないかな?」
声の強さを変えず、淡々と小隊の指揮官、シャーリー・時峰はブラックファントムに語りかけた。
だが、ブラックファントムは無言で返す。
ブラックファントムの黒を貴重に、紅の光を纏ったその様は人の目にはなんとも禍々しく映る。
一見するとその機体には血の通った人間が乗っているのでは無く、どこともしれない悪魔がそれを動かしているのでは無いかと思えてしまう程だ。
124:CR 第一章 SIDE C前編3/3 ◆klsLRI0upQ
09/06/14 22:15:53 DChI8kQc
だが、そうでない事をシャーリーは知っている。
「ああ、ちなみにだ、その機体に人間が乗っている事は我々は重々に承知している。S-15以降の鋼機にはパイロットが生存しているか否かを発信する機能があってね、君の機体は我々の推測によればS-16をベースに大幅に改造を行ったモノだ。
ならばだ、もしかするとまあ、その生体反応を発信する装置は生きているかもしれない…と我々は考えて行動させてもらったわけだよ。少々、古い機種だったので判別が少々大変だったがね、人間の生体反応をしっかり確認できたよ。
勿論、あのアンノウンの仲間が乗っている可能性を考えなかったわけでは無いが、送られてくる情報から君がこの地球の人間だということはしっかり確認できた。うん、だからそうなんだ、君がその機体に乗っているという事を我々は知っている。」
確認した事実をシャーリーは次々と淡々に述べていく。
「つまりはだ、まとめると私の目の前にいるどこの骨董品かもわからない一世紀前のメタルアーマーのカスタム機には地球人が乗っているという事だよ。
しかもだ、その正体不明の骨董品は、その骨董品より一世紀後に出来た最新鋭の機体でも倒せないような敵をまるでゴミ屑のように消滅させていってしまっている。
驚異的な事だと思わないかな?まさにこれは驚嘆に値する事実なんだ。だから、我々としても非常に気になるんだよ、君の機体はいかなるズルをして彼らと戦っているのかとね。それに―」
「――で、用件は何だ?」
漆黒を身にまとった機械仕掛けの悪魔がついにその閉ざしていた口を開いた。
男の声だろうか、その声にはその漆黒の機体の印象も相乗してか暗くて重いものを感じさせられる。
「ありがとう、ブラックファントム。君とコミニケーションを取るのも私の目的の一つだったんだ。ああ、そうだブラックファントムというのは私達が君に勝手につけた呼称だよ。
気に入らないかもしれないが、中々洒落ていると思うんだが君はどう思う?」
「あんたらに何と呼ばれようが興味は無い。ここで寝てる奴にさして興味も無い、勝手にもっていくといいさ…それよりさっさと本題に入れ…俺に銃口を向けておいてまでしようとする用件は何だ?」
ブラックファントムの声に少量の怒気が混じっているのをシャーリーは感じた。
「なるほど、確かにそろそろ本題に入っても良い頃かな。さて、ブラックファントム。我々は君の機体に使われている技術に大きな興味を抱いている。あの鋼獣を一蹴するほどの力をね。
いったいどんな理論で、どんな理屈で、どんな技術を持って、その機体を作られているのか?我々は知らなければならないんだ、奴らとの戦いに勝利する為には……だから、だからだ、ブラックファントム…我々が奴らに勝利する為に―君を捕獲されてくれ。」
いつもと変わらぬ口調、変わらぬ強さで、シャーリー・時峰は眼前の機械仕掛けの悪魔に対し、自身の目的を告げた。
125: ◆klsLRI0upQ
09/06/14 22:40:33 DChI8kQc
お久しぶりです
そして凄い中途半端なところで終わってしまってすいません
実はSIDE Cも引きみたいな終わり方をする予定なのでちょっと展開の過食気味になるんじゃないかとその実心配してたりします
設定に関してちょっとした説明
生命反応からブラックファントムに乗ってる人間を人だと判別する所なのですが
元々はそういった手段を使わずもうちょい長い尺を取って話を作るつもりでした
なのですが、当初のSIDECの構想が長すぎて、なんでそんな本筋でもない所に話割いてんだボケとセルフ突っ込みを繰り返した結果
強引だけど簡単な方法を取ることになってしまいました
他にも突っ込み所ありそうですが暖かい目で見て頂けると嬉しいなーと思います
126:創る名無しに見る名無し
09/06/15 12:06:04 efAZIsA7
tes
127:創る名無しに見る名無し
09/06/15 12:17:44 efAZIsA7
失礼。
「シャーリー時峰」ってなんか耳に残るネーミングw
文章がときどき怪しいけど、内容は今後に期待を持たせてくれる出来じゃないだろうか
リベジオンが遣っている赤い光の正体とかいかにも謎って感じでいいわー
128:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/15 20:15:22 AxxuQSFH
命を奪う赤い光、ですか。これは鋼機に乗ってる人達かなりヤバいんじゃ……
シャーリー時峰さん、堂々としとりますなぁ
129: ◆klsLRI0upQ
09/06/15 20:58:45 4TghtJTj
>>127
文章はキャラに視点を置かないやり方がはじめてなので結構おっかなびっくりやってます
だから、今回ものすごく遅くなりました…元々直情型な人間なので結構不慣れででも書いてて新鮮で面白いのですが
周りから少しづつ盛り上げてく予定なので大きな盛り上がりはもうちょっと先になるかもしれませんが
気長に付き合ってもらえると嬉しいです
ネーミングはなかば思い付きですw
>>128
光の正体に関しては色々想像してもらえると筆者としては凄い嬉しいです
これがリベジオンの特徴でもありますし、この辺りは結構頑張って設定作ったので
シャーリーは揺るがない女をイメージして言動を書いています
男ばっかだと面白み無いし、リーダー女にしようか、でも、○は後々出す予定だし、上に立つ人間だしなーという事で
いつでも余裕を持って話すような感じにしてみました
130:創る名無しに見る名無し
09/06/15 22:50:56 +yCgvXI/
質問だけどここってスーパーロボット系でなくてもOKだよね?
近いうちにちょっと作品書こうと思ってるけど
131:創る名無しに見る名無し
09/06/15 22:57:08 4TghtJTj
ロボ全ジャンルOKだと思います
アンドロイド系までもいるし
132:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/15 22:58:57 AxxuQSFH
スーパーロボット限定だなんて何処にも書いてないぜブラザー!
というか、そもそもスーパー、リアルに分けるのがナンセンs(ry
133:創る名無しに見る名無し
09/06/16 00:00:58 JoGaq+oy
>>130
期待してるぜ
ここ数日は議論もあって活発で良いな
134:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:21:25 dL+Mfs4K
投下します
135:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:22:15 dL+Mfs4K
強すぎる光によって目は潰れるというが、濃すぎる闇によってもまた同じなのではないか。
感覚の許容量を越えてしまうほどに、そこに顕現した翳は、黒く、暗く、また重たげであった。尋常の精神力
では直視できまい。まして自らがそれと敵対する身ともなれば、果たして正気を保てるかどうか。
「……素晴らしき哉、人族のスプリガン。我ら甲属魔族の進化はいつも、貴様のような強敵を超克するところか
ら始まったのだ」
漆黒の魔族ドルンドメオンの余裕ある口振りは、勝利を確信するからこそ。
スプリガンは多次元センサを総動員して、魔石のエネルギーにより変貌を遂げた魔族を分析する。
もともと頭頂高5メートルのスプリガンより二回りほど大きかったドルンドメオンの身の丈は、今や7メート
ルに達していた。重厚さを極めた積層構造の甲殻が、全体を肥大化して見せる。増大した体重で地盤が沈下。
言及を避けられないのは、四本にまで数を増やしたその腕。昆虫のような姿に似合いの肢だった。背面から伸
びていた用途不明の黒翼が遂にその正体を現したのだ。三つの節のそれぞれが異常に長尺で、発達した脛節の鉤
爪は禍々しい。日本最大の甲虫ヤンバルテナガコガネは、その名の通り前脚長が体長のおよそ1.4倍もあるが、
印象はそれに近い。
ドルンドメオン・メンタルバーストフォルム。
伝家の宝刀を抜いた、魔界の実力者がそこにいた。
「さあさ、来ませい!」
カマキリの威嚇姿勢のように長い腕を大きく拡げ、古強者は声を張る。それだけで地響きを生ずるほどの気迫
に満ちていた。
「来ませい来ませい!」
直後。ドルンドメオンの姿が、スプリガンのエーテル光学センサの視界から消滅。
そこには地表から剥がれた瓦礫だけが舞っていた。足下から伸びる影さえ置き去りにするような超高速移動。
空間に灼きつく黒色が残像となったのも、スプリガンが追いきれなかった理由のひとつ。
「来まっせぇいッ!」
言葉と裏腹に、ドルンドメオンが速攻。
新たに追加された怪腕による左右同時攻撃は、さながらクワガタムシの大顎だった。つるはしのようにスプリ
ガンを打ち据える鉤爪は、強烈な死の臭いを放つ。
スプリガンがそれを回避できたのは、“戦士の勘”とでもいうべきショートカット認識の賜物だった。天農と
の鍛練によって超一流の達人となった彼は、しばしばロボットの常識を覆す。
代わりにアスファルトの大地を掘削する黒光りの凶器。スプリガンの装甲に用いられたアンブロシア鋼とて、
直撃を受ければ耐えられまい。
トンボの幼虫ヤゴは、種によってはわずか千分の五秒という早業で下唇を伸ばして獲物を捕らえるという。甲
属魔族の雄ドルンドメオンの一連の動きは、それを思わせる電光石火。
「今のはいかんな。誘っておきながら、ついこちらから手を出してしまった。どうしてくれよう、有り余まるこ
のパワー……」
冗談めかした独り言を口にしながら、ドルンドメオンは悠然と構えをとった。関節で甲殻が擦れ、ごりごりと
生物らしからぬ軋轢音がする。二本の触覚が緩慢に旋回。
足捌きを殺して腕だけの戦いに持ち込めば競り勝てると踏んだスプリガンは、果敢に前に出る。
エーテル圧式打撃マニピュレータは、地上最強最速の運動エネルギー兵器だ。少なくともスプリガンはそれだ
けの自負を持っている。
136:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:23:11 dL+Mfs4K
二大巨人が互いの剛腕の射程圏内に突入。
拳打、掌打、手刀、手の甲での捌き、手首の返し、腕先によるいなし、爪弾き、指での圧迫、鉤爪の刺突。
足を止めての攻撃の応酬は、余波だけで周囲の地形を変える。遠目には小さな自然災害にも見えた。
スプリガンの公算に反して、実力は互角だった。速さでは確かにエーテル圧式打撃マニピュレータが圧倒的に
有利。しかしドルンドメオンにはそれ以外の武器がある。
『四本の腕……!』
「本来はもげたときのための替えなのだが、貴様に二本では足りぬようだったのでな」
肢の数的優位を得て、ドルンドメオンの猛攻の激しさは嵐のそれになっていたのだ。
上級魔族であるドルンドメオンの戦闘能力は、先に葬り去ったリクゴウなどとは次元が違うものだった。デー
タを収集しながら、スプリガンは舌を巻く。
『強い……!』
「貴様のいうことではない!」
危なげなく攻撃全てを捌いてみせるスプリガンにドルンドメオンが返し、また防御不能の鉤爪を振るう。スプ
リガンはその有効範囲を見切り、逆に“火炎車”の要領で一挙に懐に跳び込んで胴に回り蹴りを叩き込んだ。
昆虫に似た彼ら甲属魔族は、食餌や呼吸とは別に、鬼門という器官から大気中に満ちるエーテルを摂取し、体
内で燃焼させている。脇腹に開いた幾つかの孔がそれで、つまり弱点となる可能性が高い。
確かな手応えが、スプリガンの駆動系に抵抗として伝わる。
「……そんなものか?」
だが、重戦士の鎧のような殻を砕かれながらも、ドルンドメオンは平然としていた。スプリガンの目の前で、
罅割れに粘性の高い体液が滲み、わずか数秒で損傷がみるみる塞がっていく。メンタルバーストにより強化され
た即効再生能力だった。
「フンン!」
ドルンドメオンの両腕の腿節と經節を繋ぐ関節から、エーテルの奔流が迸る。
エーテルブラストは、射速こそさほどでもないが効果範囲が広い。動力炉であるエーテルドライブへの悪影響
が予想される以上、スプリガンは距離を開けるしかない。
スプリガンは流派超重延加拳の初歩“歯車”により、傍らのビルの壁面に前腕のタイヤを押し当て、逆回転を
掛けて大きく後退、さらに遮蔽物の多い複雑な地形に分け入る。
「消えた……か?」
ビル越しにも響くドルンドメオンの声には、戸惑いが含まれていた。
生命体であるならばいかに巧妙に潜伏したところで全くの無音・無動作・無温とはいかないが、スプリガンは
あくまで機械体である。最低限の機能だけを残して休眠状態に入れば、無機物にまぎれて魔族からは捕捉が困難
になる。
上級魔族の多次元感知や、禽属など一部が持つという完全空間把握までは欺けないにせよ、個体の能力を群れ
で補う甲属魔族はそれらとは趣を違えた方向に感覚器を発達させている。あらかじめ死角に入っておきさえすれ
ば、充分に姿を隠滅できた。
この状態から機を待ち、始動直後のエーテルドライブが発揮する高出力のままに飛び掛かるのが、流派超重延
加拳“朧車(おぼろぐるま)”である。
もっとも、密林の王者の狩猟に倣った奇襲戦術をもってしても、その一撃のみではメンタルバーストしたドル
ンドメオンを仕留められまい。
稼いだ時間で情報の整理を実行。出し惜しみはできない。
137:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:24:02 dL+Mfs4K
好敵手を捜し求めるドルンドメオンが立てる物音が、寂静の廃墟を揺すっていた。
魔族の戦士の足取りには、動きを隠そうという意思はなかった。事実上不死身となったために、以前よりも大
胆に攻勢を掛けることができる。
(逆にいえば、それだけ無警戒になっているということだ。そこを突くしかない)
恐らくドルンドメオンは今、「一、二発攻撃を貰ってからどう対処するか考えれば充分だ」と考えているはず
だった。事実としてスプリガンには体格という埋め難い弱点が存在する。一概に油断ともいえない。
メンタルバーストフォルムとなった難攻不落のドルンドメオンを攻略するには、対魔族戦術の基本に倣って、
治癒の暇を与えずに絶命させるしかない。とはいえ重甲殻の防御力の前では一撃必殺など望むべくもなく、同一
箇所への集中攻撃はエーテルブラストや機動力で振り切られる。これでは千日経っても勝てない。
(流派超重延加拳。その極意は、「駆使」の二文字)
進退窮まった状況において、スプリガンは努めて流派の初心に帰る。天農の教えだった。
それは、人型兵器(HW)ならではの格闘術として考案された流派。HWS-03“スプリガン”は、変形に
掛かる駆動力やタイヤの回転力を利用し、人体の限界を越えた動きの足し引きをしている。
この状況で何をどう足して、どう引くのか。スプリガンは決断する。あとはタイミング。
恐ろしげな足音が最接近。まだ見つかってこそいないようだが、そこは既に目と鼻の先だった。
ドルンドメオンが、ビルの向こうから、ぬうと貌を出す。
「そこか!」
複眼のひとつひとつに鮮烈な青が映り込むより速く、スプリガンがエーテルドライブを始動。「撥条仕掛けの
巨人」という名の由来に違わぬ、驚異的な瞬発力で跳ぶ。
振り上げた右脚が弧を描いて、一動作で“朧車”の踵落とし。メンタルバースト以降に追加されたもうひとつ
の左腕を強打して内外の骨格を歪ませ、数瞬だけの麻痺を期待する。
それで下拵えは終わった。そこからの派生技こそが流派超重延加拳の真骨頂。
魔族の肩に噛みついた右下腿部のタイヤをそれじたいの摩擦力により固定、わずかに回転。密着状態から全身
を屈曲し、脇腹を狙って左の膝蹴りを放つ。
重甲殻の粉砕により、当該部位の防御力が激減。
ドルンドメオンがスプリガンを振り落とそうと超高速移動を開始するが、右脚のタイヤが根を張った宿り木の
執着心で吸いつき、引き剥がせない。
スプリガンがまた左膝による第二撃。第一撃による傷口から黄濁した体液の飛沫が滲み出すよりも早い。
間合いをとることを断念し、スプリガンを先に絞め殺そうとドルンドメオンが棘の浮いた腕を動かす。さなが
ら抱擁によって死をもたらす拷問具。だが、攻撃の役目から自由となっている二基のエーテル圧式打撃マニュピ
レータが防衛圏を築き、剛力を発揮させない。それでも過負荷で損耗し、関節が火花を散らした。
さらにスプリガンが前回までと同一の動きで第三撃。
ここまでが転瞬の出来事だった。
『終わりだ』
鋼の声が宣告。
第四撃により魔族の生命維持に関わる重要器官を完全破壊。ドルンドメオンの絶叫が響く。
微調整を行いながら敵の肩においてタイヤによる進退を繰り返し、敵の特定箇所を致命傷に達するまで幾度で
も抉り続ける。杭打ち機という大地を穿つ機械にも似た兇悪な連続攻撃。
高機動・重装甲・即効再生と三拍子揃った難敵を一点突破で破壊する、流派超重延加拳“崩山車(ほうざんぐ
るま)”、スプリガンの会得した中でも屈指の荒技が激戦を制した。
138:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:25:51 dL+Mfs4K
スプリガンの青い装甲は、緑に染まっていた。凄惨な戦いを振り返り、あの幼い娘などには見せたくないとふ
と思う。しかし生物である魔族と殺し合う以上、それは避けられないことでもあった。
「ドルンドメオンが、ドドの大戦士が、敗れるとは……」
動けるほどに回復したオルピヌスが、呆然と膝を屈した。リクゴウは死に、ドルンドメオンの命も長くない。
遊撃種の兵隊カーストの一小隊で残っているのは、赤銅色をした彼だけになってしまっていた。
「み、見事だ……! 人、族の戦士、スふッ、スプリガンンよ! 我に生じた慢心を、見抜かれたかぁっ!」
地上に横たわる瀕死ドルンドメオンが、溢れる体液を喉につかえさせて吼える。
「オオル、ピ、ヌス……」
「ここに」
「このデータタ、生きて必ず、も持ち帰る、のだ……!」
「ドルンドメオン!」
「役目を、果た、せ……」
それきり魔界の実力者ドルンドメオンは事切れた。
最期まで任務のことを考える彼に、スプリガンは敬意を禁じ得ない。魔族の戦士達と機械仕掛けの自分は似て
いると思う。
しかし、だからこそ、同じく譲れないものもある。
『オルピヌスといったな』
低い声には、魔族すら震える凄みがあった。
『魔界に生還などさせると思うな』
人類の置かれた状況は厳しい。
突発的に出現するエーテルポイントからは甲属魔族の兵隊カーストが湧き、時には獣属魔族によって大都市が
一夜にして壊滅する。世界中の空を禽属魔族が舞い、海では群れからはぐれた鱗属魔族が船舶を脅かす。
誰もがことねのように白昼に悪夢を見ているのだ。
魔族という生ける災厄が跳梁する時代。
新世代の対魔族兵器であるHWS‐03“スプリガン”は、誇張なく人類の希望となる存在だった。
データなど、断じて渡すわけにはいかない。
「ぎぃ……っ!?」
オルピヌスがしゃくるような悲鳴を上げて後退さり、びっこを引きながらのろのろと逃走を試みる。千切れて
短くなったままの触覚が力なく震えていた。
スプリガンもまた“崩山車”中の攻防でエーテル圧式打撃マニピュレータに不具合を生じており万全ではない
が、重傷のオルピヌスに止めを刺すには十二分だ。
(せめて一撃で)
スプリガンが、オルピヌスの背中に必殺技を打とうとしたときだった。
何者かが放ったエーテルブラストの疾風が、スプリガンが足を踏み出す先をごうと横薙ぎに通り過ぎ、土砂の
壁を築く。オルピヌス追撃に対する妨害の意図は明らかだった。
出鼻を挫かれたスプリガンは首だけで頭上を振り返る。
上空に敵影。
スプリガンに翳を落とし、青の鎧から輝きを奪う。それは、ガリバー旅行記の世界でもない限りは魔族でしか
有り得ない、翼を拡げるだけで天を覆う“巨鳥”だった。
139:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:27:10 dL+Mfs4K
今回はここまで。相変わらず分かりにくくて申し訳ないです。
「崩山車」は、1スレ目の>>992様からいただきました。ありがとうございました!
140:創る名無しに見る名無し
09/06/16 00:41:15 4WuwhOTZ
戦闘描写凄いなー
機械感が出ててメカメカしくて呼んでて凄い楽しいです
141: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/16 22:30:27 nD/2Xgke
色々と忙しかったりスクコマ2に思いっきりハマってたりで随分と遅れてます。
>>129
このまま戦闘になってしまうのか、それとも……続きがとても気になる展開です。
>>132
でもスーパーやリアル系とかの作品ばっかりの方が、後でスパロボ的作品を作りやすいかもしれない。
>>139
凄まじい戦闘、強大なる敵ドルンドメオンを仕留めたスプリガン。しかし、最後に現れた巨鳥とは……。
現在執筆中の予告編後半で一つ質問があるんですが、ネクソンクロガネの時代って20世紀後半~21世紀初頭辺りであってますか?
142:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/16 23:55:10 GOQAuutw
おお、続々と新技が。これは“轟”級の技にも期待ですね!
>>141
ロボット物総合スレ版ディケイドですナ
143: ◆46YdzwwxxU
09/06/17 05:24:00 tsEkw1gU
レスどうもです。
次で戦闘させずに最終回の予定だったけど、もうちょっとだけ続けてみようかと思ってます
>>141
時代は全然決めてないですが、たぶんそのへんじゃないですかね。・・・もっと現代に近いかも
家電とかは現代と変わらない感じで話は作ってあります
未来というよりは、どこかで一部の技術だけが変な方向に発展したパラレルワールドのような
144: ◆46YdzwwxxU
09/06/17 05:48:54 tsEkw1gU
間違えました
20世紀後半~21世紀初頭辺りだったらそのまんま現代やんか・・・orz
なので一行目二文目は撤回しますです
145:創る名無しに見る名無し
09/06/18 14:06:40 8Y3hgmIK
暇潰しに>>4に挙げられている作品でスパロボを妄想しようとしたが、すげー難しいな
ワープ抜きだとある程度は世界観を犠牲にしなきゃいかんということか
本家スパロボではどうしてたっけ・・・
146:創る名無しに見る名無し
09/06/18 14:08:45 CaJKOHMW
本家スパロボは大抵、ある程度崩してるよ
やり方が失敗してるとKみたいな感じで非難され
成功してるとスクコマ2とかWみたいな感じで絶賛される
まー大事なのは、それぞれしっかり立てておくことかなー
147:創る名無しに見る名無し
09/06/18 14:31:34 8Y3hgmIK
ふむ。
スタンダード(CR、スプリガン、ゼノ、ネクソン、姫路B)
荒廃(荒野、タウエルン)
魔界(姫路、スプリガンB)
ファンタジー(パラベラム)
砂漠地帯とか言い訳すれば荒廃をスタンダードに組み込んだり
勢力圏を分けてファンタジーと魔界を統合できるかも?
最低二つの世界なら割とまとまっているはず
・・・っつっても、キャラ把握できるまで進んでる作品はそんなに多くないから
実際始めるのは無理だろうが。あとはクロスオーバー妄想くらいが関の山か
148: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/18 16:32:23 yDskUWHJ
>>146
K、まだやってないけどそんなにストーリーひどいのか。
作品の続きを書けないのはスクコマ2のせいだ!と言い訳しておく。
>>147
実際にクロスオーバーやろうとしてる人間がここにいますよ。
こっちの姫路は特に理由も無く異世界に召喚された、という設定なので他作品とのクロスはやりやすいかと。
海上都市姫路は自走可能なので基地兼母艦代わりとしても使えます。
荒廃系とは気が合うと思いますよ、一度地獄を見てますから。自分の脳内の一次創作他作品(ロボット物ではない)ですが、全面核戦争で北斗の拳状態になった事がありますから。
死に物狂いで復興して、究極の統治システム完全管理社会を築いたまでは良かったが、自分達の創造した子供達に本土から追い出されてしまった、というのが本編開始数十年前の状況です。
149:創る名無しに見る名無し
09/06/18 18:08:37 8Y3hgmIK
同類項をまとめてみた
アンノウン(CR、ゼノ)
鋼獣(荒野、CR)
魔族(スプリガン、姫路)
悪人(タウエルン、ネクソン)
マナ・エーテル・魔法(パラベラム、スプリガン、姫路)
自動人形(タウエルン、パラベラム)
軍事組織系(荒野、CR、姫路、スプリガン?)
民間組織系(ゼノ、ネクソン)
無頼(パラベラム、タウエルン)
・CRのように主人公だけ浮いてる作品もあり、これだという分類は難しい
学校いってるキャラ(ゼノ、ネクソン)
ただ、同じアンノウンでも、CRの場合パイロット寄りで、ゼノの場合ユニット寄りなんだよなー。
魔族や鋼獣もそうだけど、なまじ同じ名前なだけにかえってクロスさせにくい。
下手に格差つけて勢力組み込むのもうまくないしなー。
現状、あまり面白いクロスというものが思いつかない。
もう二作品ほど新作が出るか、各作品の謎が解明されていけば糸口が見つかるか(チラッ)
ま、暇潰しのネタとしてはまあまあだった。
>>148
荒廃チームに入れれば序盤のバランスがちょうどいい感じになるか
でもさー、原作のままだと静はいきなり魔界チームいっちゃうんだよね
居残り組の守備隊の同僚とかはあまり描写されてないし。教授は出しやすそうだけど
戦艦不足は確かだからありがたいことはありがたいか
ついでに今だから忠告するが、アンタは書き方が露骨すぎるときがある
ウザがられる前に自重を心がけた方がいい
ま、気持ちは痛いほどわかるし、作者たるものそれくらいプライドがあったほうがいいのかも判らんけど
150:創る名無しに見る名無し
09/06/18 18:42:47 CaJKOHMW
CRクロス用に参考資料欲しいなら簡単な方針と設定まとめたの作るよー
結構、流れや資料が分散してるから、まとめるのに少し時間かかるけどw
>>149
>魔族や鋼獣もそうだけど、なまじ同じ名前なだけにかえってクロスさせにくい。
むしろここが一番の頑張り所だと思う
こういう名前似かよってる所になんだってー!というクロス設定考えるのがスパロボ流クロスオーバー
スパロボWに例えるとガオガイガーとゴライオンの獅子つながりで設定色々クロスさせたり
テッカマンとオーガンはビジュアル似てるからそれつながりで始祖アイバとかやらかしたりと
難しいかもしれんがこういう所は最もおいしいネタだと思うなー
151:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/18 18:49:18 kfTOqhXr
何か凄く面白そうな流れ……
私事が結構忙しく、まだ投下には時間が掛かりそうですorzすみません
152:創る名無しに見る名無し
09/06/18 19:31:35 8Y3hgmIK
>>150
設定よりむしろ本編を一段落するまで進めて欲しいキブン。先を楽しみにしてるぶん、ネタバレが来そうで怖ぇーし。
CRとか複雑化しそうなのは特に、とりあえずの方向性が決まらないとクロスさせようもないからぁー
そりゃー言うは易しってやつだよ
・俺たちは鋼獣(C)をこれまで鋼獣(荒)と同一視してたけど、全くの別のバックボーンがあったんだよ!
・実は鋼獣(荒)もまたアンノウン(C)操る兵器だったんだよ!
・鋼獣(荒)は、アンノウン(C)の命令を聞かなくなった、いわゆるはぐれ鋼獣(C)だったんだよ!
後ろの二つはどう考えても角が立つよなぁ・・・できればやりたくないね。
鋼獣(荒)に公式の黒幕がいて、それがアンノウン(C)と関わりがあるとかできればいいけど、分かんないし。
「あれがゴライオンか。噂どおりだな」みたいな敵のリアクション芸に留めるという手もあるが。
153:創る名無しに見る名無し
09/06/18 19:44:07 CaJKOHMW
>>152
>設定よりむしろ本編を一段落するまで進めて欲しいキブン。先を楽しみにしてるぶん、ネタバレが来そうで怖ぇーし。
それはごもっともな意見だw、頑張ります(´・ω・`)
でも方向性がガチっとするのは結構時間がかかりそう
俺のは扱いに困ったら踏み台にしても良いよーとだけ一応言っておく
154:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/18 20:01:58 gw018Afa
>>149
こうして見ると、拙作とタウエルンって結構共通点あるんですな
しかし、こういう面白い話が出ると気合い入っちまいますねw
155:創る名無しに見る名無し
09/06/18 23:59:39 8Y3hgmIK
・・・といっておいてなんだが、原作再現は必ずしも必要というわけじゃないんだよな
最低限キャラやロボの把握さえできれば、散発的に原作の敵と戦いながらその決着は「これからだ」エンドにして
スパロボ用にでっち上げたオリ敵を倒す方向で話を収束させるなんて手も使える。
いつ完成するかも分からん作品のクロスなら、そっちの方がいいかもしれん
ただ、それでもまだ参戦できない作品も>>4にはあるけどな
156:創る名無しに見る名無し
09/06/19 00:19:06 EefDTgjy
>>155
スパロボでもいるだけ参戦なんてしょっちゅうだしね
参戦できない作品…
シスターズですね、わかります
アイディアはかなり出てきてるんだけどとりあえずCR書かないとw
157:創る名無しに見る名無し
09/06/19 06:46:42 dTOMMqdG
シスターズも非戦闘シーンの癒しとしてサイドストーリーくらいには関われそうだが
キャラの情報や会話のサンプルが圧倒的に少ないとか、どういうロボットがどういう戦闘をするのか未明なのとか、そういう方が厄介。
CRなら「主人公はしばらく無所属のまま、人類軍にマークされつつも勝手にアンノウンを狩っていきます」程度にでも明らかにされれば割と楽に参戦できる。
そういう条件でいくと、
パラベラムも出会い編の後、旅に出るとか金を稼ぐとか当面の方針が決まれば充分
タウエルンやゼノライファーは戦闘待ち
荒野が三人娘の残り一人の把握と会話サンプルがあれば書けなくはない
直後に急展開が控えていて、「その再現なくして作品なし!」というならまた別だけど
158:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:07:56 QxJd/8MC
そろそろ正式名称決めないと……。
以下数レス頂きます。
今回は前回投下分含めて、1章全部を投下。
早くもかなり修正されて居たりします。すいません。(ボクには良くある事)
159:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:08:40 QxJd/8MC
1章 鋼の体を持つ獣
(0)
暗闇。
暖かな液体に包まれている感覚。
聞こえる音は、心音と小さなモーター音。
目は開かない。
いや、開けたくない。
開けてしまえば、また、あの光景が目に映る。
恐怖。
ここに居る限りは安全な筈。ココは世界で一番安全な場所。
でも、同時に、死と隣り合わせの場所。
何故ワタシはココに居る?
何故ココに生まれた?
エメラルドグリーンの培養液が緩やかに対流する中、脳裏に電気信号が走る。
ああ、イヤだ。
目が開く。
恐怖が視界に広がる。
痛い、苦しい、熱い―。
脳ミソが鷲掴みにされ、捏ね繰り回されているかのようだ。
ココは子宮と同じ筈。
世界で一番安全な場所の筈。
なのに何故、ココにはこんなにも苦痛で溢れている?
160:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:11:52 QxJd/8MC
(1)
エルツは汗と埃に塗れた栗色の前髪を片手でかき上げながら空を見た。
日はまだ高い所にあり、その日差しは熱く鋭い。
瀬名龍也率いるヴァドル部隊の初陣―鋼獣土竜型との戦闘に勝利してから2時間。彼女は丁度、
仲間達と無事に第十六都市へと帰還を果たした所だった。
エルツはパイロットスーツの胸元を大きく開き、バタバタと仰いで涼を取っていた。
ゴム質のパイロットスーツは厚手で異様なまでの伸縮性を持っており、着心地は悪くないが、高い防寒性の為に、
この様な直射日光の下では直ぐに蒸し暑くなってしまうのだ。
エルツがスーツの内側に風を送る度に、彼女の二つの未成熟な膨らみがチラチラと覗く。
しかし、彼女はソレを気にする様子は無い。
エルツはハンガールームと呼ばれるヴァドル専用の格納庫の前に腰掛けている。巨大なシャッターは半分ほど
閉じているが、それでも、エルツがジャンプをしたくらいでは手が届かない高さまで開いていた。
ハンガールームの中は慌しく、特に半壊している二号機の修理が最優先で行われていた。
メカニックは人間が7割、ヒューマニマルが3割と言った所で、その先頭ではヴァドル部隊の隊長である瀬名龍也が、
50人近いメカニック達にそれぞれ的確な指示を出している。
「瀬名さん、疲れて居ないのかな……」
龍也の後姿をボンヤリと見つめながら、エルツはポツリと呟いた。
ヒューマニマルの自分でさえ、ヴァドルとの接続を切った後に時間差で襲ってきた疲労感に参っているというのに、
目の前の男は一切その様な素振りを見せないのだ。
龍也はパイロットスーツを半分だけ脱ぎ、上半身裸の状態でいる。
高温多湿のハンガールーム内を何度も右往左往し、指示を出している彼は、頭から滝の様に汗を流していた。
鍛え抜かれた逞しい筋肉が汗によって輝やいている。
そんな龍也を眺めて居る内に、エルツはいつの間にか自分の尾が嬉しそうに振られている事に気付いた。
自分の気持ちを素直に代弁してくれる尻尾に対し、エルツは少しばかり困ったような表情を浮かべた。
エルツ自信は全く自覚していないが、彼女はどうやらこの瀬名龍也という男に好意を持っているらしい。
龍也の傍に居たい、あるいは龍也に触れてみたいと考えている時に限ってこのように尻尾が振れているのだから、
人を好きになるという事は、この様な思考状態にある事を指すのだろうとエルツは客観的に考えている。
通常ならば、感情を抑制されたヒューマニマルは”好き嫌い”の概念が希薄だ。
戦争をするに当たっての不要な感情を持たないからこそ、冷静で的確な判断が下せる。戦争をする為に生み出され、
荒野で死ぬ事が運命のヒューマニマルにとって、その様な感情は元より必要ないのだ。
しかし、エルツは、珍しい事に”好き”という感情が制御されきれて居ないらしい。
もっとも、その事自体に意味は無い。生まれてくる際に、何らかの要因があって制御し切れなかっただけの事だ。
他のヒューマニマルには無いモノを持っているという事に、エルツは負い目を感じていない。
ソレは確かにヒューマニマルという種には不要なものかもしれないが、持っているからと言って、戦えなくなる訳ではない
と彼女は考えている。
そして、胸の奥で静かに鼓動するソレは不快では無く、むしろ心地良さすらあるのだ。
龍也の背中をボンヤリと眺めている間、彼女の尻尾は常に左右に振られていた。
161:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:13:34 QxJd/8MC
(2)
「くそっ!」
頭から熱いシャワーを浴びながら、リートは腹立たしげ声を上げて壁を殴りつけた。
ミシリと重く鈍い音を立て、シャワー室の壁のタイルにヒビが入る。
シャワー室には彼女以外に誰も居なかった。
つい先程までディーネが一緒だったが、彼女は「用事がある」と言い残し、シャワーを浴びると早々に出て行った。
俯いたリートの鼻先や顎から滴り落ちる水滴が、彼女の大きく膨らんだ胸で跳ねる。
その胸の内側で渦巻く理解不能の何かが、彼女の苛立ちの原因だった。
自分が何に悔しがっているのかすら解らない。
しかし、自分がこうなった要因は分かっている。
(アイツだ。あの、瀬名龍也という人間―)
思い起こせば、あの男とであった瞬間からこの苛立ちは始まっていた、とリートは考える。
この不快感、苛立ちの原因は分からないが、あの男との接触によるものなのは間違いが無い。
リートは人間を嫌っている。
偶然な事に、リートもまた、エルツと同様に感情の抑制がされていない。
しかも彼女の場合は、エルツの様に”一部の感情”が抑制状態に無いのではなく、”ほぼ全ての感情”が抑制状態に無い。
その感受性は、殆ど人間と変わらない。
(何故自分達ヒューマニマルが、人間の言いなりにならなければならないのか)
(何故自分達ヒューマニマルが、人間の代わりに戦い、死なねばならないのか)
(何故人間は、無能の癖に、ヒューマニマルに対し傲慢な態度を取るのか)
(何故人間は、ヒューマニマルと共に荒野に出て戦わないのか)
(何故―)
再生暦119年にヒューマニマルが生み出されて以来、現在までに構築された、人間とヒューマニマルとの関係が、リートには理不尽で仕方が無い。
リートが人間を嫌うのは、人間の、ヒューマニマルを物として見ている言動と、自分はリスクを背負おうとしないその態度にある。
(ああ、そうか……)
リートは気付いた。
あの男は、”人間でありながら荒野に出て、鋼獣と戦っている”。リートの中の「人間」という存在に当てはまらないのだ。
今日の鋼獣土竜型との戦闘だってそうだ。
リートの独断での行動により、二号機は中破。
彼自身も土竜型に喰われかけたというのに、あの男はリートに一切の処罰与えないどころか、ソレを気にした様子すらない。
彼女の知る人間ならば、真っ先に嫌味を吐き、ここぞとばかりに普段の彼女の単独行動癖を叩いてくるに違いない。
しかし、彼は違った。
ただ無言でリートの瞳を覗きこみ、全てを見透かしたように小さく鼻を鳴らしただけだ。
今の所、ヴァドルを中破させた事も、命令無視の上の単独行動も、一切の処罰を与えられていない。
そして、あの目―。
(幾つだ? 幾つの感情が混ざっている?)
瞳を覗きこまれた時に感じた、背筋に寒気が走るほどの強烈な”何か”。
考えるほどに、胸の内側の何かが刺激され、激しく渦を巻き、不快な思いをさせる。
リートはシャワーを止め、ノロノロとした動作で水を吸って重くなった尻尾を絞る。
普段ならば、炎の様に赤い毛の尻尾からボダボダと水滴が滴り落ちる度に、自分の中にある不純物が零れ落ちていくような心地良さがあるのに、
この日に限ってソレが無かった。
「判らない……」
この思考の末に、自分がどの様な答えを求めているのかが。
瀬名龍也という男が何を考えているのかが知りたい?
彼を理解する事で、彼自身と何かを共有したい?
彼は人間なのに?
いや、人間だから故か?
彼にしてもらいたい?
何を?
物理的接触?
それとも、ただ単に、自分の望む言葉をかけてもらいたいだけ?
(わからない……)
正体不明の苛立ちの中、リートはゼンマイの切れかけた人形の様にゆっくりと天井を仰ぎ見た。
162:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:14:44 QxJd/8MC
(3)
ハンガールームの喧騒が落ち着いた頃、外では既に日が沈み、冷たい風の吹く漆黒の闇に包まれていた。
メカニックはその殆どが引き上げ、ハンガールームには人影が殆ど無い。
巨大な鉄製の台座<ハンガー>に鉄の巨人が5機、吊るされる形固定されている。
その内の1機、02とプリントされた機体だけは、上半身と下半身が分断された姿をしていた。
ハンガールームの片隅に設置されたプレハブの中に、1人の男がコンピューターを無表情で操作していた。
男の名は瀬名龍也。ここに吊るされている鉄の巨人ヴァドルのパイロットの1人であり、部隊の隊長である。
プレハブは6畳ほどの広さであるが、敷き詰めるように並べられた机とコンピューター類によって、その大半が埋められていた。
おそらく、4人もパイプ椅子に腰を下ろせば身動きが取れなくなるであろう。
龍也はコンピューターのスロットに挿入していた携帯端末を抜き取り、自分の懐に戻した。
仕事に一区切り付いたこともあり、彼は無意識の内に深い溜息をついていた。
プレハブの窓からハンガールームの様子を窺うと、最後のメカニックが各点検を終えてシャッターを潜って出て行くところであった。
これから6時間の休憩を挟み、再び修理メンテナンスを再開する予定である。
プレハブ内は狭かったが、エアコンが取り付けられている為に室内は快適な温度に設定されている。
横になれずとも、このまま目を閉じていれば、午前中から激務であった龍也は直ぐに深い眠りに落ちてしまうだろう。
「ココならば、あと5時間は誰も来ないか……」
小さく呟き、龍也はゆっくりと目を閉じた。
途端にドロリとした感覚が首筋を伝い、全身を包み込んでいく。
五感が殆ど効かなくなり、ズブズブと溶けた鉛に飲み込まれてゆく様な感覚だけが脳に伝わってくる。
龍也はこの感覚が好きではなかった。
まるで自分が死んでいるのだと錯覚するからだ。
しかし、彼の思いとは裏腹に、肉体はソレを喜んで受け入れていた。極限まで疲労した肉体は、数十時間ぶりの睡眠に狂喜している。
(5時間……5時間だけだ……)
何度も自分にそう言い聞かせながら、龍也の意識は暗闇に飲み込まれた。
163:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:19:34 QxJd/8MC
(4)
ディーネは第十六都市自衛軍本部の二十五階の廊下を歩いていた。
毛足の長いカーペットが敷き詰められた廊下には他の人影は無い。
長官室と書かれたプレートの掛けられた部屋の前に立つと、程無くしてドアのロックが開く音がする。
「失礼します」丁寧に頭を下げ、ディーネは入室した。
「いらっしゃい、待っていたわ」
部屋の奥のデスクに腰掛けていたこの部屋の主である女性は、ディーネを笑顔で迎えた。
彼女の名は天沢香織。
この第十六都市を管理する自衛軍のトップに立つ人間であり、同時に『新人類派』と呼ばれる、ヒューマニマルに人権を求める立場の数少ない人間でもある。
日本には現在全部で十六の都市があり、それぞれの都市を長官が纏めていが、無論、彼女以外に長官という立場でありながら新人類派の人間は存在しない。
本来ならばヒューマニマルを道具として扱う立場の自衛軍に、新人類派は存在してはならない筈なのだ(組織の言動に矛盾が生じる為)。
しかし、天沢香織という人物はソレを堂々と公言している。
三十代半ばの、まだ若々しい容姿をした(美人というよりも)可愛らしいその長官は、部屋に入ってきたディーネの姿を見て少しばかり驚いた様子を見せた。
ディーネは、スカートタイプの軍服に身を包み、髪を一切縛らずにいた。
普段の彼女は有事の際に即行動出来るように都市迷彩の軍服を纏い、髪を後頭部で纏めている事から、現在のこの姿は非常に珍しいと言える。
「どうしたの、その格好」ニヤニヤと目を細めながら香織はディーネに訊ねた。
「瀬名隊長の命令……というと少々語弊がありますが」
ディーネは第十六都市に帰還してからの出来事を簡潔に説明した。
「提出した報告書の通り、二号機が中破しました。フレームは無事でしたが、人工筋肉と擬似神経が駄目になったので、新しいパーツと取り替えている最中です。
ソレに伴い、二号機の修理と他のヴァドルのメンテナンスが完了するまでの間、休養を取れと隊長に命令された訳です」
「なるほど、それでその格好……」
香織はもう一度「なるほど」と呟き、腕を組んだ。
要は暇な訳である。
それも、あえて出撃まで時間がかかる服装に着替えてしまった程に。
ヒューマニマルは連続で6時間以上の休養を与えられる事が無い。
彼女達は人間よりも短い時間で体力の回復が可能であるし、荒野に出て鋼獣を狩らずとも、都市を防衛するという重大な任務を抱えている。
人権を持たない彼女達は、それこそ家畜同様に扱われているのである。
もっとも、ヒューマニマル自信も、ストレスに強く、不満などの感情を強く持たない事もあり、その事自身に問題はないようだ。
香織からすれば、この様な現状が認められていること事態が異常なのであるが、鋼獣との戦況がやや劣勢であり、慢性的な人員不足にある現状を考えれば、
仕方のない事だと渋々耐えている。
故に、香織はヒューマニマル達の一番の娯楽である食事に関しては、特に力を入れている。
一般市民からは「ヒューマニマルの食事にしては豪華すぎる」との不満の声が度々上がるが、都市を守っているのは他でもない彼女達なのだからと、
その不満に対応している。
「隊長には、この休養自体も任務の一環なのだと言われまして」
「普段なら待機中にする細かな仕事も禁止されていると」
「はい」ディーネは苦笑しながら頷いた。
「それじゃあ、仕方ないわね。隊長の命令に従わないと」
悪戯っぽく笑う香織に、ディーネは困ったような表情を浮かべて唸った。
164:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:23:43 QxJd/8MC
「ところで……」
他愛の無い話を一通り済ませた所で、香織が真面目な顔で切り出した。
普段は笑みを絶やさない、軽いノリの彼女ではあるが、こういった際の切り替えは驚くほどに早く、きっちりしている。
まるでスイッチが切り替わったかのような香織の雰囲気の変化に、何年もの付き合いで慣れたディーネですら、偶に戸惑う時がある。
「瀬名龍也くんの事だけどね」
香織はデスクの隅を叩き、エアディスプレイ(空気中に投影されたホログラムのディスプレイ)を出すと、デスクに内蔵してあるキーボードを
操作して一つのファイルを開いて見せた。
「新第一都市自衛軍の総合データベースから調べてみたんだけど、怪しい点は無し」
「戸籍も、ですか?」眉を顰め、ディーネが訊ねる。
「ええ、戸籍も。実在するわ。勿論、DNAチェックも問題無し。彼は正真正銘、瀬名龍也って事になる」
「……そう、ですか」
「納得いかない?」
「……わかりません」ディーネは首を横に振った。「ただ、なんと言うか、納得できない事が多すぎるんです」
「ソレについては私も同感よ」
香織は自ら淹れた紅茶を啜りながら頷く。
「貴女達ヒューマニマルが鋼獣と戦うようになって以来、人間は種を絶やさない事を第一にするようになった。
ソレは40年ほど前、丁度ヒューマニマルが荒野に出るようになった少し後の事。
諸外国との連絡が一切取れなくなり、コレを”日本以外の国が滅びた”と自衛軍は考えたから。
人間はもう、日本にしか存在しない。人間は例え一人でも数を減らしてはならない。
その考えが強まり過ぎ、歪になって、今のヒューマニマルを軽視している悲しい現状を作り上げた訳ね」
「ですが、瀬名隊長は荒野に出て、自ら鋼獣と戦っています。それも、自らを囮にするという危険な作戦まで立案して―」
ソレは酷く不自然な話である。
自衛軍の思想では、ヒューマニマルに「人間の代わりに戦い、死ぬ事」を任せて居る人間は「絶対に死んではならない」義務を負っているらしい。
ならば何故、瀬名龍也という人間が荒野に出向き、鋼獣と戦うなど以ての外だ。
「しかし、総官は彼をココに送ってきた。ヴァドルを正規採用するか否かの試験運用部隊の隊長として……」
それに何の意味があるのだろうか?
(考えるとするならば、荒野に”何か”あるのか、彼が荒野で戦う事に意味があるのか。
前者の場合は、ヒューマニマルに触れさせたくない物、あるいは動かせない程に大きくて人間にしか扱えない何かが、この第十六都市付近の
荒野に存在する事を意味する。
後者の場合、意味を成すのは”荒野で彼が死ぬ事”かしら? でも、彼が死ぬ事で何が変わる?)
香織はカップで揺れる紅茶を眺めながら、思考の海に深く潜っていく。
無数に浮かび上がる可能性を一つ一つ吟味し、選り分けて、自分の仮説と関係のありそうなワードを幾つか掴んで、水面へと上昇する。
(やはり、彼自身よりも、”上”の方を調べるべきかしらね……。気は進まないけど、もう一度あの狸親父と腹の探り合いをするしかないか)
考えを纏めた香織は紅茶を一気に飲み干し、ディーネに向き直った。
「ディーネ、貴女にはコレまで通り副隊長として瀬名くんを補佐してもらいます」
「はい」
「彼に気取られない程度でいいから、目を光らせていて。もし何か気付いても、私に報告するまでは彼の指示に背く事はないようにね」
何かあった場合は後手になるけれど、と彼女は心の中で付け加えた。
それでもなお現状維持を決めたのは、エルツ同様、香織自身もまた、瀬名龍也が悪人でない様に思えて仕方が無いからだ。
今、香織がすべき事は、瀬名龍也の……あるいは瀬名龍也を背後から操る存在の真意を掴む事なのだ。
ソレがハッキリするまでは慎重に行こうと香織は考えている。
165: ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:40:41 QxJd/8MC
以上です。
ココは覗く度に面白い展開になっている気がするw
荒野~は僕自身も手探りなくらい伏線張りまくってる(ケモ耳への愛と伏線の練習の為に書き始めた)作品なんで、
ボクはともかく読者には設定が訳解らないだろうなぁと思うんで、協力(?)ついでに幾つか設定を書いて見ます。
・都市
(新)第一~第十六の16からなる、日本で人間が唯一生活していく空間。
日本以外の国の状況は一切不明になっており(コレは後に判明するけど)、現在は日本以外は絶滅したと考えられている。
・鋼獣
彼?等自身に黒幕は居ません。
あくまでも異常発生・進化した存在で、彼等の正体が実は―とかいう展開は残念ながら存在しません。
・瀬名龍也
がっちりした体系の無表情な男。伏線のメインだから語ること無いw
・エルツ
チームで一番小さな娘。それでもスペックは成人男性に並ぶ。
素直で一途で龍也ラブな設定。
・リート
ある意味一番人間臭い、真っ直ぐな娘。体格は龍也とよりやや背が高く、細い位。
思春期といえばいいか、そんな精神状態。
・ディーネ
容姿も性格も一番大人な娘。リートとディーネはヒューマニマルの中ではイレギュラーなほどの長生き。
それだけ腕と運があるといえる。
ヒューマニマルの模範的な感性や従順度。
こんな感じかしら?
解りにくい本編の補佐程度に捕らえてくれれば。ネタバレはしてないはずなんで。
<投下ココまで>
166: ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:42:15 QxJd/8MC
あれ?
トリまちがえちゃってる?
167: ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:44:13 QxJd/8MC
プレビューじゃあ間違ってないんだけど、書き込むとトリが変わってるなぁ。
コレは一体何事か!?
168:創る名無しに見る名無し
09/06/19 21:12:20 dTOMMqdG
>>165
なんとなく、ファフナーとかの世界観を思い出した
主人公の不自然さが語られていてかなり興味を引かれる。
獣耳娘ズにはもっと惹かれるけどw
えーっと話が大きくなってきたが
本気でスパロボやる気があるなら、参戦作品の条件が揃うのを待って音頭とってもいいけど
ただ、参戦を表明した作者には、世界観を含む設定の刷り合わせを許容してもらうし、SSの一部は請け負ってもらおうよ。
極端なこというと、>>152の下二つみたいなこともあるかもしれん。あるいは「ここだけは絶対に譲れない」というとこを明確にしておいて欲しい。
キャラクターが同じだけの寄り道シナリオとか、「スパロボではこうなってるけど、原作ではもっと強いし、全く別の謎や裏があるんだよ」
ってことにして無礼講にお祭りするのが一番いいんだけどな。
・・・個人的にはキャラ立ちもまだのうちに動かさなくちゃならんので、だいぶ時期尚早って気がするが、
逆に作者のモチベーションが上がるということもあるかもしれん。ダメ元でやってみるか?
169:創る名無しに見る名無し
09/06/19 21:36:27 EefDTgjy
空白入ってるとか?
170:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/20 01:13:46 O7L3Qa3M
やっと出来た……お待たせしましたorz
正直今までの雰囲気と違って凄く……バイオレンスです
それと世界観と主人公、そしてタウエルンについて簡単な設定も作りました。あわせてどうぞ
171:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/20 01:14:39 O7L3Qa3M
<5,本性>
何者かがドアを叩いている。ギーシュは立ち上がり、ドアの付近まで歩み寄った。ロッファの妻が怯えた表情でギーシュを見つめる。
ギーシュは妻が声を出さぬように口元に人差し指を立てるジェスチャーをし、振り返ってドアの前に立った。
「俺だ、ギーシュだ。今ちょっと村長の代わりで留守番しててな。何か用があるなら、俺が村長に伝えておくよ」
ドアの前の何者かに、ギーシュはそう言った。すると、その何者かは低い声で返答した。
「その村長を返しに来た」
「なっ……」
その瞬間、ドアを吹き飛ばすほどの衝撃波がギーシュを襲った。ギーシュは両腕で防ごうとするが、抗えずに背中から壁にぶつかった。
妻は驚愕し、椅子から転げ落ちた。完全に腰が抜けたらしく、両膝を付いて震えている。ドアとその周りの壁は、衝撃波によってガラガラと崩れ巨大な穴を開けていた。
何者か――否、シュワルツの取り巻きである二人組の大男、その片方が、1機の黒騎士を携えてロッファの自宅へと踏み入った。
ちなみにもう片方はタウエルンと対峙中である。
「シュワルツ様からの配達だ。受け取れ」
大男が指を鳴らすと、背後から黒騎士が手で吊り下げた何かを、妻の前にボトリと落とした。それは……。
「あ、貴方……」
妻はその何かに目を見開き、両手を口元で覆った。そこには額に穴を開け、目から光を失ったロッファの亡骸が転がっていた。
大男は壁にぶつかった際に頭を打ち、その痛みで意識が朦朧としているギーシュの方へ歩み、ギーシュの耳元にしゃがむと、用件を伝えた。
「見ての通り、お前達を束ねていた村長は死んだ。これでもう、お前達の支柱は無くなった訳だ。
薄々感じてはいただろうが、この村は我々が掌握している。ここで村長の死により、この村は完全に我々が掌握した。俺が言っている意味が分かるな?
明日、我々はこの村をある実験に使う。
そこでだ、シュワルツ様は、お前達が明日までにこの村から立ち去ればお前達には一切干渉しないという慈悲を与えて下さった。
俺の言っている言葉の意味が分かるならどうするべきか、よく考えろよ。まぁ……お前達が心中しても、我々は痛くも痒くもないがな」