09/07/07 22:11:00 C7IB4gYw
シャーリー意外と乙女w
「牽牛」とタウエルンて実はすごい近い? トラクターって牽引車だしっ
407:創る名無しに見る名無し
09/07/07 22:12:13 C7IB4gYw
いかん言い忘れ。
今日はRBG休載しますごめんなさいっ!
突発的に思いついたネタで再構成してたら間に合わなくなった
408: ◆gD1i1Jw3kk
09/07/07 22:18:16 skxUJjL0
清水静「戦いの無い世界が訪れますように」
ラウディッツ「ジャーク帝国を滅ぼして平和を取り戻す」
教授「重装甲強化服の改造と調整は飽きた。スーパーロボット造らせろ。
ああ、そういえば『アレ』は分類するならスーパーロボットだったか。サイズが小さい、ラスボスっぽい外見の二点が気に入らんが」
教授の言う『アレ』は仮想戦闘記録の最後で出す予定です。
?????「清水静と直接会える日が来ますように。その時は……」
409:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/07/07 22:28:59 QBxaVSYQ
とりあえずここまで出来た分をEpisode 6.5として投下しようと思います。
後にEpisode 07としてきちんと書き上げた上で投下するので、出来についてはご容赦を……。
410:創る名無しに見る名無し
09/07/07 22:29:07 XLQHv7tT
>>406
乙女というよりかは
そろそろ彼氏でもつくらんといけんかなーとか
ちょっと冗談めかして言ってるイメージですw
411:パラベラム! ◆1m8GVnU0JM
09/07/07 22:31:01 QBxaVSYQ
東の空が明るくなり始めた頃、神子・まどか・ブラウニングはベッドから緩慢な動作でもぞりと起き上がった。長い黒髪が肩から零れ落ちる。
----今日は休日だ、学校は無い。
少女は寝ぼけ眼をさすりながら、危なっかしい足取りで部屋を出た。
パラベラム!
■Episode 6.5:なんでも屋“やおよろず”へようこそ!
廊下に出ると、ベーコンの焼ける香ばしい匂いがまどかの鼻腔を刺激した。それに誘われてふらふらと階段を降りる。
「やあ、おはようまどかちゃん」
人の良さそうな微笑みを浮かべるのはルガー・ベルグマン。まどかの所属するなんでも屋“やおよろず”のマネージャーだ。
2メートル近くはあるだろう長身は筋骨隆々、鍛え抜かれた美しい逆三角形。そしてきちんとそろえられた長い金髪と知的な青い目、整った顔立ちはまさにイケてるメンズの体言者。……身につけた猫さんエプロンについてはコメントは控えるべきか。
「あいー、おあようごあいあふ」
まどか、夢現の状態で返答。少女は朝が弱かった。
「おーい、まどかちゃんしっかりー」
肩を掴んでゆさゆさと揺する。
「あい?」
「ほら、コーヒー」
ルガーが煎れたてのホットコーヒーを差し出した。少女はそれをホットコーヒーと認識する前に口に運び、
「うわー、ありあとうごらい……熱い!」
まどか、夢の世界から帰還。少女は猫舌であった。
「はっはっは。改めて……おはよう、まどかちゃん」
「お、おはようございます。びっくりした……」
舌をチロリと出す。どうやら火傷したようだ。
「……水、いるかい?」
水をとくとくとコップに注いで渡すと、
「はい、いただきます」
まどかはそれをぐいっと飲み干した。どうやら相当喉が渇いていたようだ。
「あ、コーヒー」
「これは僕が責任を取って飲み干すよ」
「すみません」
しゅんとするまどかを見て、ルガーがくつくつと笑った。
「それよりも、朝食が出来たから二人を呼んできてくれないかな」
「どこにいるんです?」
「ガレージ。シロちゃんのフレームを修理中。外装もフレームもボロボロだって」
正式名称はヴァイス・ヘーシェン。昨日昼頃に修理中にもかかわらず出撃し、夕方にボロボロの状態で帰ってきた、ヘーシェンタイプのオートマタだ。
「何かあったんでしょうか。リヒトさんも、シロちゃんも……」
そのへんの野良に襲われたにしては損傷が大き過ぎる。騎士団か傭兵団、他の神子とトラブルでもあったのだろうか。
「……主従揃って性格に難有りだからね。正直何をやらかしても不思議じゃない」
「根はいい人達なんですけどね、根は……」
二人揃ってはぁ、と深い溜め息。同時にチン、とパンの焼けた音。
「おっと、パンが焼けたみたいだ。……まあ、その話は置いといて、今は」
「はい、二人を呼んできますね」
412:パラベラム! ◆1m8GVnU0JM
09/07/07 22:32:33 QBxaVSYQ
♪ ♪ ♪
“やおよろず”のガレージは別棟となっていて、家を出てすぐ前にある。いつもは仕事が来ないせいで閑散としているが、今日は珍しくメカニック達が右に左に大忙し、
「ライディーンさんライディーンさん! 見てください! 天井に穴が!」
……というわけでもないようだ。
「あー、どうりで雨漏りが……って、ライディーンじゃねーよ! ライディースだよ!」
名前を間違えられた茶髪の男はライディース・グリセンティ、通称ライ。二人のメカニックの内の片割れだ。二年前に突然転がり込んできた少年で、軽薄そうな外見とノリで経験も浅いが、手先の器用さには定評がある。
そしてツナギを腰まで下ろして黒いタンクトップを露出させるというセクシーな出で立ちの少女はリタ・ベレッタ。身長142センチ、童顔、無乳。サラサラのプラチナブロンドと舌っ足らずな声がその幼さに拍車をかけている。
まどかやライと違い“やおよろず”創設時から所属しているリタは、創設前に傭兵をやっていたリヒトの下で長年メカニックを務めており“やおよろず”でも----こんなナリだが----その経験を買われてチーフメカニックを任されている。
「リタさーん、ライディースさーん」
そんなリタとは対象的な大人びた顔立ちにくまさんパジャマを纏ったまどかが大きく手を振って二人を呼んだ。
「あ、おは」
「おはようございますサチエさん!」
……間が悪い。
「ちょっと、なんで割り込むんスか!?」
「あら、すみません。しかし私は謝らない!」
右手を腰に当て、左手をライに向かって突き出す。その勢いたるや、まどかには、ビシィッ! という効果音が聞こえた程だ。
「いや今謝った! 今謝ったよアンタ!」
ライも上司(一応)に対するツッコミに余念が無い。
「で、何かありましたか、まどかさん!」
「無視かよ!」
「はい、朝ごはんです。今日の当番は」
「ルガーさんですね!」
「はい、ルガーおじさまです!」
女子二人がきゃっきゃと喜んだ。
「無視かよ!!」
取り残される男子一名。
413:パラベラム! ◆1m8GVnU0JM
09/07/07 22:33:15 QBxaVSYQ
なんでも屋“やおよろず”では食事等の家事は当番制となっていて、昨日の食事当番はまどか(それなり)、今日の当番はルガー(奥様顔負け)だ。ちなみにライが当番の日は手抜きが目立ち、リヒトが当番の日は味がやたら濃く、リタが当番の日なんかは断食確定だ。
「でさ、ルガーは何作ってたの?」
ツナギのジッパーを腰まで下ろしながら、ライ。
「トーストと……あの匂いはベーコンでした」
「それ以外は?」
「すみません、確認していません」
ライが「そっか」と肩を落とす。
「まあ、たかが朝飯だし、期待するほうが馬鹿ってね」
へっ、と自嘲気味に笑うライにズビシャアッ! とモンキーレンチ----彼女は工具を常に携帯している----を向けて声を張り上げる上司。
「たかが朝飯とは何ですか! 朝ごはんは、今日一日の活力と、明るく楽しい明日のための、重要な」
くどくど、くどくど。
「あはは……馬鹿がいた」
呆れ返る部下。
「----つまり! パンよりごはんのほうが、私は好きだと、そういう事です!」
そう高らかに宣言(いつの間にパン派・ごはん派の話になったんだ)し、リタは手の中でマイナスドライバー(いつの間に持ち替えたんだ)をくるくると回しながら大腿部にあるポケットにしまった。
「あ、私もごはんのほうが好きですよ」
「参加すな!」
<お前達、何をしている!>
突如響いた、女性の声。
「あ、たまちゃんだ」
「起きてたんですか、たまちゃんさん!」
「おはようございます、たまちゃん教官」
その正体は“教官”“たまちゃん”こと玉藻・ヴァルパイン。まどか・ブラウニングと契約を交わしたオートマタだ。稼働年数が長く、博識な彼女はなんでも屋の知恵袋であり、切り札でもある。マスターが未熟なため、あまり前線には出ないのが難点だが。
<貴様らなぁ……>
ドスの効いた声からは苛立ちが垣間見える……というか丸見えだ。
<朝、顔を合わせたら、まずは挨拶だろう……?>
「しかし教官! 自分達はまだ顔は合わせていません!」
<口答えするな!>
「はいぃっ!」
物凄い剣幕で怒鳴られ、ライが裏返った悲鳴を上げて気をつけの姿勢をとった。
<……なんてな。冗談だよ、冗談だ。それより早くルガーのところに行ってやれ。飯が冷めるぞ>
「このリタ・ベレッタ、空腹の中で朝食を忘れていました……っ」
<いいからっ、早く行けっ!>
414:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/07/07 22:34:55 QBxaVSYQ
今日はここまで!
さあ、次は七夕ネタだ……
415:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/07/07 22:50:12 QBxaVSYQ
遥『早く一人前の神子になれますように』
『収入が少しは安定……しないよね、そういう職種だもんね……』
リヒター『マスターが安全でありますように』
リヒト『キョクトーに旅行に行きたい。いや、絶対行こう』
ヘーシェン『早く人間になりた----い』
『皆が無病息災でありますように(匿名で)』
まどか『テストの順位が上がりますように』
『この楽しい日がずっと続きますように』
ルガー『とりあえず筋肉』
『有名どころとのコネをつけられますように』
ライ『モテたい、モテたい』
『上司をどうにかしてほしい(匿名)』
リタ『おなかいっぱいケーキが食べたい。いや、絶対食べよう』
玉藻『少年よ、大志を抱け』
416:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/07/07 22:51:24 QBxaVSYQ
よし、色々やっつけだけど何とか間に合ったぞ!
色々、やっつけだけど……
417: ◆kNPkZ2h.ro
09/07/07 23:48:21 4DwAvq4l
『早く戦争が終わりますように』
『みんなと街を守ってください』
『家族に会いたい』
『エースパイロットになる!』
『お父さんの仇をうつ』
『夏休みをください』
『メロンが食べたい』
『誰も死なないで』
『ワームがいなくなりますように』
『みんなの願いがかないますように』
…第28連隊 第4中隊の短冊
418:創る名無しに見る名無し
09/07/08 18:33:00 t0r1dGPu
こっちのスレには初めてうかがいます。こんばんは
一応ロボット物ではあるからいいかなーと思ったりなんだり
もし畑違い、よそへどーぞということでしたら遠慮なく言ってください
ほんの5レス程度になります。投下させてくださいね。
419:あお ◆6k/dFp.sTw
09/07/08 18:34:34 t0r1dGPu
─いつしか、戦いは日常のもう一つの姿になっていた。
そこで新しい絆が生まれ、それまでの絆が壊れていった。
ARTIFACT LEGACIAM
多分ユウにとって意識を失っていた時間は数分の一秒にも満たない間だったに違いない。
ハッとしたと同時に彼は瞬間的にレバーを捻っていた。
ビシャーン!
それは耳障りで、生理的に不快で、いくつものそうした音達を重ねたような形容し難い音楽だった。そのように聞こえたのだ。
『音を音と認識できてる間はまだ死んでいないッ』
死んでいないということは、まだ生きているってことだ。そう自分を奮い立たせながらユウは次々に飛んでくる熱線をレガシアムの巨体を横飛びに跳ねさせて回避する。
「ユウ、砲撃来るッ! 至近弾ふたあぁつぅ!」
黒猫の姿をしたカイアが耳元で叫ぶ頃にはユウはバリアーをピンポイントで展開させていた。
至近弾の爆発はバリアーで受け止めたものの、強烈な衝撃となってコクピットを揺らす!
体中に衝撃が走る。神経電位接続とかなんとかというシステムの影響で、機体が受けるダメージはユウ自身にも届く。
それはフィルター越しとは言え、当たり前の少年であるユウには耐え難いものだ。
「直撃よりはずっとましだけどッ」
言葉を吐き捨て、ユウはレガシアムが右手に携えたガトリング砲を無照準で乱射する。
もとより撃破を狙っての射撃ではない。E&Eの体表は強固な装甲でもあったし、その前面には強力なバリアフィールドが張られてもいる。
「よっしゃっ!」
カイアが喝采をあげる。牽制の為のガトリング乱射はE&E(ダブルイー)の体勢を大きく崩すことに成功していた。
いくらか着弾すれば儲けモノ程度でばら撒いたそれが当たりに当たり、体勢を崩してくれもしたのだから大もうけと言ってもいい。
だが、
「これ以上は銃なんて撃てない……」
いまはまだ郊外での戦闘だからまだいい。だが、戦闘空域は次第に市街地へと迫っている。
「これ以上は街に被害が出ちゃうんだよ!」
山が潰れ、川が踏み壊された。このままでは街までもが燃やされてしまう、その恐怖!
街に被害が及べば家も学校も、家族も友人も死んでしまうかもしれない。それはユウにとって恐怖以外のなにものでもなかったのだ。
「一気に決めるしかない!」
「ユウ、それは危険なことなんだよ?」
「それでも」
「やるしかないなら」
「やってみるさ!」
叫ぶと同時にユウはペダルを踏み込む。
ブーストオン。レガシアム背部のコーン状の推進器が光を発するとともに爆発的な加速がレガシアムを一直線に飛翔させる!
体勢を整え終わったE&Eがあの破壊の熱線を発する腕部をこちらに向ける!
「や、ら、せ、る、も、ん、か、ッ、!」
緊急加速にも似たその爆発的な急加速はレガシアムのコクピットシステムでも減殺しきれるものではなかった。
シートに沈み込む─というよりムリに押さえつけられているような状態のユウの声は喉を絞められた鶏にような奇妙な声色になる。
420:あお ◆6k/dFp.sTw
09/07/08 18:36:15 t0r1dGPu
レガシアムはブンっと手に携えていたガトリング砲をE&Eに向かって放り投げる。それは見事にE&Eの構えた腕部に命中してくれた。
暴発した熱線がガトリング砲と共に自らの腕さえも爆発の中に弾けさせた。
そして、ユウはレガシアムの両の手にバリアーのエネルギーを収束させる。
1000、2000とあった距離が埋まるのに必要だった時間は正に瞬きする間もないくらいの一瞬だった。
ギギギギイィィィィィンン……。
衝撃がレガシアムを襲う、だけど次に拳に感じた衝撃はさらにその何倍も鈍く、熱い代物だった。
「ユウ、真芯を捉えた!」
「オオオオアアアァァァァッッッ!!!!!」
少年の咆哮と共にレガシアムはE&Eのフィールドを破った。その光を纏った拳は生物とも無機物─金属とも定まらない不可思議な“表皮”を突き破る!
その拳が、真芯を捉えた!
「フィールドッ─」
「─全開イィィッッ!」
E&Eの真芯まで届いたレガシアムの両の拳。その拳が纏ったバリアーフィールドが急速に膨張する!
通常兵器には強固な盾として機能するバリアーも、強靭な装甲も、内部からの攻撃には無意味だった。
・
・
・
「目標、爆散しました。エネルギー反応0、消滅を確認! レガシアムは健在ですっ」
長門通信士のその宣言は司令室の中に安堵の吐息の連鎖を生み出したのだった。
「よろしい。状況をイエローに移行。関係各所への連絡を行ってくれ」
大和孝和の落ち着いた声にもやはりホっとした色は表れている。クスリと笑って、今だにティーンエイジャーの癖の抜け切らない長門通信士は「了解です」と連絡作業に入った。
「今回もなんとかしのげたか」
確かにホッとはした。したけれども部下たちのようには安堵の気持ちに浸れない大和だった。
『敵の侵攻は明らかにその間隔を狭めている。今回はしのげた─これまでもしのげた。だがこれからは?』
連邦評議会の反応は鈍い。まして実際に侵攻の標的となってるはずの日本政府の動きはさらに鈍かった。
それを思うと気楽にはしゃげない気分の大和なのだ。
「それに、結局今回も優作君に頼る……丸投げしちまう結果になっちまったもんなぁ」
指揮卓にふんぞり返ったままの信濃丈史がポツンと言う。
「信濃、人の思考を読むなと何度言えば聞いてくれるんだ」
「わかりやすい顔してるてめェが悪ィんだよう」
やっと大和の顔に少しだけ笑みが浮かんだ。その瞬間だった。
「大和長官、日本政府からのコールです。……その、いつもの」
長門通信士の一言が、彼の笑みを一瞬で消し飛ばした。大和の顔にみるみるうちに苦いものが浮かんでくる。
『あぁ、そうか。いつもの、なぁ』
ニヤニヤしつつも、友人であり上司でもある大和の心労を想像するに、出来る事ならば代わってやりたいとも思う信濃である。
もちろん本当に代わってやるつもりはないのだが。
「わかった、私の部屋の方に回してくれたまえ。50秒後にとる」
ハァとため息をつく大和に信濃は一応同情の視線を向けた。
「気苦労がたえないな。長官殿」
なあに、と大和は力なさげに胸を張ってみせる。
「優作君は命をはってくれている……。彼を守ることは我々を、ひいてはこの星を守ることにもなるのさ。これくらいはな」
そうして彼は彼にしか出来ない戦いに向かっていく。
「守り守られる絆、か。お前のそういう生真面目なとこ、嫌いじゃないぜ。多分……優作君もな」
その言葉は大和が司令室を出た後にこぼれたものだったから、当然彼には届いてはいなかった。
421:あお ◆6k/dFp.sTw
09/07/08 18:37:20 t0r1dGPu
「三番から四番、コンタクト!」
格納庫におさまったレガシアムに整備員たちが群がる様子は、まるで童話のガリバーと小人たちのように見える。
コンタクト完了の報告を受けると同時に笠置はキャットウォークで待機する分隊員たちに指示を飛ばした。
「よぉし、各部強制開放!」
その声がレガシアムが鎮座しているせいで手狭な印象を与えるこのだだっ広い格納庫に広がる切るころには、その装甲がいっせいに展開していった。
同時に展開した装甲と本体の間から蒸気にも似た熱が放出されていく。
「冷却作業急げよ。後の作業が詰まってんだからな」
腕組みをする姿は正に職人。その周りを整備員たちが忙しなく、しかし統一された意思の下にとでも形容できるメリハリのある動きで行き交っている。
損害は皆無というわけではなく、深刻というわけでもなく……といったところだった。
大和が日本政府との折衝という戦いに挑んでいるころ、この研究所兼格納庫においての戦いも始まっていた。
「おらあ、トロトロしてんじゃねぇぞ! とんまな奴にゃあ整備部名物重油入りシチューを食わせるからなっ」
そんな風に檄を飛ばすのは主任に抜擢されたばかりの生駒だ。『野郎、調子にのってやがるな』笠置は嘆息する。
どうやらまだまだ引退はできなさそうな現状だった。
「どうですかオヤジさん」
かけられた声に笠置は振り返る。
「おぉ、鞍馬か」
鞍馬と呼ばれたひょろっとしたメガネと白衣の優男は笠置の横に立ってレガシアムを見上げる。
「ダメージは内臓にまで達しちゃいねぇ。最初の頃にくらべりゃ上手くケガするようになってきたぜ」
「そうですか」
「まぁ装甲板だってタダじゃねぇんだ。きっちり避けて損害が出ねぇようにしてもらえりゃ楽だけどよ。欲を言いだしたらきりがねェな」
それに……とヘルメットをぽんと叩いて視線を落とす。
「レガシアムはオーバーテクノロジーの産物よ。一回出撃すりゃあほとんど全部手直しだからな、損害の大小はあんまり関係ねェよ」
「そうですね」
「なんとか……なんとか、坊主の負担を軽くできるような、何かがありゃあいいんだけどなァ……」
「……」
鞍馬は答えない。笠置の方も返事を求めての発言ではなかった。
「あいつは、あの坊主はよくやってくれてるよ」
「えぇ、本当に」
初めて鞍馬の視線がレガシアムから笠置の方へと向いた。
「彼は、不破君はわかってくれています」
「だったら」
頷いて再び鞍馬はレガシアムを見上げる。
「世界を守ってくれる彼を、僕たちが守らなければなりません。知恵と力を振り絞って─全力で」
それが自分たち大人とユウ─不破優作をつなぐ絆だと信じて。
二人は拳を握り締めていた。
422:あお ◆6k/dFp.sTw
09/07/08 18:38:46 t0r1dGPu
時刻はもう10時を過ぎていた。
『やばいよなぁ。約束破っちゃって』
戦闘が終って、基地に戻って、でも意識を失っていたユウはほんのさっきまで医務室で眠っていたのだ。
「しょうがないよ、今日だって戦闘はハードだったんだしさ」
「カイアは僕が戦っているのを知ってるからいいよ。けどさ、基地の人以外で僕の事を知ってるのって伊吹だけなんだよ?」
背負ったリュックから顔だけ出しているカイアにユウはちゃんと隠れておいてよと言うのだが、
「隠れてたら一人で会話する危ない人に思われちゃうじゃん」
と反論されてしまう。
「どっちにしろ猫と会話してるヤバイ人に思われちゃうよ」
ため息をつくものの、カイアはまるで気にしたふうもない。
「伊吹ってあの子だよね、あのおっぱいでっかい子。流行りのツンデレっ子ってヤツでしょ。あんたのことが気になってる訳じゃないンだからネッ! ってヤツ」
「カイアってホント変なことばっか覚えるよね」
自宅近くまではSARFの車で送ってもらえた、その残りのいくらかの道でのことだ。
住宅街の道に他にあるのは心許ない明滅を繰り返す街灯くらいのもの。
動くもの、喋る者はユウとカイア以外に皆無だった。
だけど、
シンと静まり返った住宅地であっても、家々には明かりが灯っている。人が住んで、人が暮らしている証がそこにある。
「ユウ……」
唐突に、でも静かにカイアが声をあげた。
「君の守った街だ。君が守った人たちなんだよ」
返事はない。
声は必要なかった。
リュック越しでもカイアには分かっていた、芽生えた絆がそれを伝え合っていた。
「ただいま~」
鍵を開けて家に入るが、明かりは何一つついていない。
「千歳? もう寝ちゃったのかな」
カイアに喋るなよと言いながらリュックから下ろす。
「誕生日会してくれるってのにすっぽかしちゃったからな。怒っているだろうな」
そうしてリビングに入って明かりを点けた時だった。
「……」
テーブルと、卓上のご馳走と、そして、
「ち、千歳?」
待ち続けていたのだろう妹が座っていた。
「お、お前……」
眠っているわけではない。椅子に座って、俯いたまま、そうして待っていたのだ、ずっと。
「……ずっと待っていたのか? もしかして戦闘があった間も?!」
答えはない。
千歳はユウと目を合わせようとしなかった。
いや、ユウの方こそ千歳と─誕生日の約束を守らなかった妹と目を合わせなかったのかもしれない。
快活で明るい、誰とでも仲良くなれるといった太陽のような少女がいま、深く沈んで光を失っている。
だけど、ユウは逆に怒っていた。誕生日の約束を破ってしまったという負い目からそのように感情を発してしまったのだ。
「どうしてだよ! 避難命令は出ていたんだろ? 逃げなきゃダメじゃないか!」
「……」
無言の苦痛がよりいっそうユウに気持ちと裏腹の言葉を並べさせる。
「今日は良かったよ、こっちまで戦闘の被害は及ばなかったからさ。でももしこっちにまで飛び火してたらって……そう思わなきゃダメじゃないかッ」
しかし千歳は俯いたまま答えない。
─大丈夫だよ、千歳は僕が守るからね。
いつか自分が言った言葉が胸に蘇る。
423:あお ◆6k/dFp.sTw
09/07/08 18:39:30 t0r1dGPu
「……千歳」
それ以上いたたまれなくってユウは妹に背中を向けた。
「今日は、その、ごめん」
ガタンっと椅子が倒れる音。次の瞬間ユウは後ろから抱きしめられていた。
「千歳?!」
「……と、いたの」
小さなか細い声。それは「今まで誰といたの」と聞こえた。
今度はユウの方が黙る番だった。
レガシアムのこと、SARFのこと、誰にも言えない、自分だけの秘密。
「伊吹さん? 伊吹さんといたの? そうなの?」
違うよという言葉はいかにも力なく、それは確かに事実ではあったけど、真実であるという説得力には欠けている。
「イヤだよ…。そんなのイヤだよぉ」
その言葉は段々と湿り気を帯びてきて、やがてすすり泣く声へと変わっていった。
「なんだよ、そんな……泣くことなんて、ないだろ?」
「だって、だって、怖かったんっだよ、とても怖かったんだよ!」
すがりつく妹にユウはただ、その背中を好きにさせている。
「伊吹とはなんでもないよ。それに……ごめん、今日は一緒にいてやれなくって。でも本当に危ない時は絶対側にいて守ってみせるから」
声が、止まった。
「だって、この世に二人だけの兄妹なんだもんな」
「違う」
それは暗い、暗くて深い……深淵から響いてきたような声。
「千歳?」
次の瞬間ユウは突き飛ばされていた。
「わたし、わたしだって知っているんだからあッ!!」
絶叫はユウの心に突き刺さる。
千歳の左目に涙が浮かんでいた。
─本当の涙は左の瞳に浮かんで、左の瞳から零れるの。
そう言ったのは、はたして誰だったろう。
「何を、言って、いるんだよ……。千歳」
それは、女だった。ユウの知ってる妹の顔ではなかった。妹は、千歳は“女”の顔をしていた。
「お兄ちゃん、好き。愛してるの」
だから─とユウも告げる。
「僕だって好きさ、兄妹なんだもの」
左の瞳から、涙が零れた。
「違う」
それは絶望的な響きが込められた言葉。
「わたしは、わたしはお兄ちゃんの妹じゃないッ! ホントは……ホントは兄妹じゃないって─」
これは夢なのかもしれないと少年は思った。夢であってほしいと少年は思った。
「─知っているんだからァッッ!!」
走り出す妹を見ながら、彼の瞳は何も見ていなかった。
白い巨大なロボット、異形の“敵”。戦い、そして……そして……。
日常と一緒に絆も壊れていってしまうのか?
わずかな達成感も粉々に消し飛んでしまった。何をする気力も湧き上がらず、
─不破優作は今日、17歳の誕生日を迎えた─
424:あお ◆6k/dFp.sTw
09/07/08 18:41:20 t0r1dGPu
■次回予告■
生まれる絆、壊れゆく絆
17歳の誕生日、その夜に少年は『はじまりの日』を思う
それは、あの夏の日
爆音、熱風、そして巨大な異形のモノ達が飛び交うソラ
逃げ惑う人々の中、出会ったのは、黒と白
白いマシンと黒い猫
次回 アーティファクト・レガシアム
猫とマシン
むかーし“ちゅーがくせー”の頃に書いていたロボット物をちょっと書き直してみました。
レガシアムっていうのが主人公ロボなんですが、イメージはEX-Sガンダムとガイアギアを足して二で割ったスーパーロボットみたいな感じ
敵メカのE&Eはエンジョイ&エキサイティング─ではなくてエクストラインテリジェンス&エネミーシングの略です
イメージとしてはメカメカしいラーゼフォンのドーレムってとこですか。
謎の侵略者E&Eから世界を守る地球連邦評議会直轄の防衛組織SARFと彼らにコンタクトしてきた謎の黒猫カイア、
カイアによって目覚め、少年不破優作とリンクすることによって力を発揮するロボットレガシアム。
やがて物語は18年前の火星開発の為におくられた開拓団の壊滅事件にまで及び・・・というストーリーでした。
まぁ話は最後まで考えていたものの、完結するまで書き上げはしなかった代物なんですが。
もし気に入ってもらえたら幸いです。
ちなみにいまのところ続く予定はねーです。次回予告なんてまぎらわしいことしてすんません。
よかったら、また何か投下させてください。では~
425:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/07/08 21:48:34 0brep9js
>>424
新しい……惹かれるな
>EX-Sガンダムとガイアギアを足して二で割ったスーパーロボット
すごく……好みです……。
でも線が多くて描きにくそうw
てか全然畑違いじゃないじゃないですか、どストライクですよw
続編にせよ新作にせよ、次期待してますぜ!
気分転換にリヒターを描いてみたけれど、なんだかロボ描くの下手になったなぁ……
426: ◆46YdzwwxxU
09/07/08 23:28:06 gTF5tuvj
>>416
新キャラ続々ゾクゾクですね。にしても濃いメンツ。
一番真人間そうなのがリヒターというのがまた
>>424
緊張感とノリ、そして妹が絶妙ですね
ぜひ続きが見たいのですが
427:ザ・シスターズ 第二話 「シスターズの定義」 1/5
09/07/09 02:54:01 hwkTLQVU
母さん、お久しぶりです。俺の事を覚えていますか?
長期旅行満喫中で俺の事なんて頭の片隅にもいないだろうけれど、俺です、大野啓介です。
あなたのお腹の中から生まれた子供です。こうやって言うとオレオレ詐欺みたいですね。
ここ最近、嫌な夢ばかりを見ます。
昔よく話したあの夢の話ではありません。
テスト前日の一夜漬けをしていたら、いきなり、妹を名乗るミナという女性アンドロイドがテスト前にダンボール箱に入ってやってきて、涙目になって俺の脳天にベアナックルかましていったのです。
おかげで俺はテストでまったくいい点を取れずに単位を落としてしまう羽目になってしまいました。
酷い悪夢です。
しかもその後、勝手に居座ると言い張って、この家から出て行こうとしません。
親父公認らしいので、法的にも追い出すのは無理みたいです。
本当に酷い悪夢です。
まったくもって、本当に…
「お兄ちゃん、何を書いてるの?」
本当にこれが夢ならば良いのに…。
メールを打っているのを小柄でエプロン姿な女性アンドロイド、ミナが興味津々にやってきたのを見て俺はそう思った。
高嶺町3丁目 大野家。
2×××年8月1日。
キッチンの前にエプロン姿でミドルへアーな少女がいる。
一昨日までのこの家には無かった光景だ。
少女は俺の方に振り向いて笑顔で尋ねてきた。
「お兄ちゃんは今日の朝御飯何が良い?」
「――カツ丼。」
俺はそう即答する。
その回答に少女は不満そうな顔をする。
「えー、朝からそんなの食べちゃダメだよー、朝はご飯に納豆に味噌汁、それにダシ巻き卵が一番だよ。」
少女の名前はミナという、正式名称は1M―010 ミナなんとかとかだと自分で名乗っている。自称、俺の妹でアンドロイドなんだそうだ。
「そこまで明確に決めてあるのならば、俺に聞くなよな。というかそういう話をロボットのお前がどういう所から仕入れてるんだ?」
「んー?ネットにアクセスして、おいしそうな献立探して、栄養価を計算して、お兄ちゃんに喜んでもらえるようにと…。」
そのおいしそうなという基準は一体どこから来てるんだと内心、俺は突っ込んだ。
「じゃあ、俺はアスパラガスと蓮根が嫌いだからそれ考えて献立してくれれば良い。」
そういうとミナはぷくーっっと怒ったフグみたいに顔を膨らませて
「お兄ちゃん、好き嫌いしてると大きくなれないんだよ!」
とどっかの小学生の好き嫌いを怒る母親みたいな事を言って来た。
428:ザ・シスターズ 第二話 「シスターズの定義」 2/5
09/07/09 02:57:02 hwkTLQVU
「あのなぁー、見りゃわかるだろうが、俺は既に成長期は終わってるの、これからは小さくなる事があっても大きくなることはほぼ無わけ。ロボットの癖にはそんな事もわからんのか?ちょっとは合理的に考えろよ。」
「ロボットじゃないよ、アンドロイド、体の7割は有機物質で出来てるからそれなりに人間に近い体なんだよ。」
俺の発言を不服そうな顔をして、この自称:妹は言ってくる。
「へぇー。」
なんかあんまり非現実的な話が始まりそうだ。それに人間の体に近いからといわれても…中身は…なわけだしなぁー。
「機能的には人間と違いなんてのは三つぐらいしかなくて、一つ目は私の頭の中に無線が組み込まれれていつでもネットワークに接続できるという事、これは知識の収集をするというだけじゃなくて、プロジェクトへの自動返信も行っているの。」
「へぇー。」
「二つ目は-」
「へぇー。」
「もう、お兄ちゃん、聞いてないでしょ。」
というよりかは―
「興味がない。」
そう言うとしゅんと首をうな垂れて…少し涙目になって
「お兄ちゃん!これは大事な話なんだからちゃんと聞いてよね!!」
こうして言われると相手がロボット、いやアンドロイドだっけか、まあ、それだとわかっていてもちょっと可哀想になってくる。
昔から女性の扱いには慣れないのだ、それがアンドロイドだとしても外見はどう見ても少女な為、つい心が動いてしまう。
「大事といわれても、俺、正直、お前がなんだろうとなんつーか知りたくないというか、知ってどうなるって事でも無いだろう?」
「違うよ、知らないと駄目な事があるの、お兄ちゃんはミナのお兄ちゃんなんだから、知らないといけないの!」
必死に抗議するような目でミナは俺を見つめてくる。
こうしてみると、人間と何も変わらなく見える。きっと外に連れて出ても誰もこいつが中身は機械だなんて信じないだろう。
だが、自分はこいつが機械なのを知っている。
こいつが我が家にやってきた時、俺はこいつが人間じゃない事を散々に思い知らされた。
「お兄ちゃん、聞いてる?」
「あー、知らないと駄目な事があるとかそういってた所までは…。」
そういうとミナは少し目に涙を浮かべる。
うるうるした涙目で俺を見つめる。そんな顔をするミナに俺は不本意ながら可愛い等と思ってしまう。親父め、俺はロリコンじゃないんだぞ…。
「悪かった、ごめん、ちゃんと話を聞くから許してくれ?」
そういう俺の発言を信じられなそうな顔をしてみる。
まー今までが今までだから仕方ない。
「本当?」
「本当だ。」
「ちゃんと話を聞く?」
「ああ、聞くよ。」
「指きりしてくれる?」
「ああ、するよ。」
俺はそういって小指をミナの前に突き出した。
そうするとミナは無邪気に笑ってどこからともなく包丁を取り出し、振りかぶって――
429:ザ・シスターズ 第二話 「シスターズの定義」 3/5
09/07/09 02:58:32 hwkTLQVU
「おおぅぅぅぃぃぃぃぃ!!!!」
間一髪だった。
即座に指を引き振り下ろされた包丁を回避することが出来た。
もし、あとコンマ1秒でもミナの右手に握られているそれが何なのかを認識するのが遅れたら確実に俺の小指は切り落とされていただろう。
「お、お前、俺を殺す気か!!」
殺すというのは言葉の綾だ。
「え…だってお兄ちゃん指きりしてくれるって言ったし、お兄ちゃんの言葉を信じて指きりしようと思ったのに…お兄ちゃん避けちゃうし、やっぱりお兄ちゃんミナの事、嫌いなんだ。」
そういってミナは泣き出した。
このミナの反応に俺はいやーな悪寒が背筋を走る。
「いや、あのなお前、指きりの意味知ってるのか?」
「ぐす…うん、知ってるよ、お父さんが人と約束をするときは指切りをするもんなんだって、言ってた。
だから指きりの意味をNASAのデータベースから調べたもん。自分の小指の第一関節から上を切って相手に渡す事で約束を絶対守るという決意を表す日本古来の風習なんだってそこに書いてあったから、それ信じてやったのに…。」
一体、何時の時代の人ですか、あなたは…。
いや、人じゃなくてアンドロイドか…というか微妙に間違ってるのも仕様ですか、というかなんでNASAなんだよ!!
だが、そんな事を知らずにミナは泣きやまない。
俺は記憶を呼び起こすようにしてミナに言った。
「いや、あのな、それは江戸時代ぐらいに遊女が意中の人に自分の愛が本物なのを示す為にやっていた事でな、原義はそんなんだが、今の指切りはそういうものじゃないの。」
ちょっと自信が無いがこれで合っていた筈。
そんな俺の発言にミナは心底驚いたような顔をする。
「え…嘘。」
「嘘じゃないよ、何でNASAが出てくるのかわからんが、俺の事が信じられなかったら他のデータベースでも調べてみるといいさ、あくまで現代的な意味でな。俺の口から説明すると指切りというのはだな―」
ミナに向かって指切りとは何をする事なのかを説明する。
「ミナ、わかったか?」
「うん、わかった!お兄ちゃんを信じる!」
笑顔一杯でミナは答えてくる。
「んじゃ、実践してみようか。」
と俺はミナの目の前に小指を付きだす。
正直に言うとさっきのことが脳裏をかすめてちょっと怖い。
ミナは先ほどと同じように無邪気に笑って―小指を自分の小指に絡めてきた。
指に体温を感じ、ふぅーっと俺は安堵のため息をついた。
「んじゃ、あとはわかるな?」
俺はミナに確認する。
「うん。」
「じゃあ、せーのの合図でやるぞ。」
「うん。」
ミナが快活に応答する。
「ゆびきり~げんまん~うそついたら~はりせんぼんの~ます、ゆびきった。」
そうして俺とミナは絡めた小指を離す。
430:ザ・シスターズ 第二話 「シスターズの定義」 4/5
09/07/09 03:00:50 hwkTLQVU
ミナはその後、自分の小指を見つめ、嬉しそうな顔をしていた。
そんなミナを見て、俺はまたため息をついた。
一つ、わかった事がある。このミナという女性アンドロイドはまだ生まれたばかりの赤ん坊なのだと言う事だ。
インターネットにアクセスする事で、いわゆる知識自体はたくさん持っているのだが、それは知識だけでしかない。
いうなれば、普通の人間ならば持っている常識が欠如している。たとえば、先ほどの指切りは原義はそういった意味を持っていたかもしれないが時代を経るにつれて今のような意味に変わってしまっている。
普通ならば人はそれを経験から知っているのだけれど、この前にいるミナにはそれが無いのだ。
つまり知識だけはある赤子といっても差し支えない。データでしかモノを知らないから、そのデータ自体を信じてしまう。その言葉に別の意味が含まれているなんて知る由も無い。
おそらくは最初、俺の小指を切り落とそうとした時、彼女にはなんの悪気も無かったのだろう。
彼女単に、指切りは指を切って約束を守る事の決意を相手に見せるという行為だと認識していたのでそれをそのまま実行に移しただけなのだ。
ミナが俺の家にやってきたあの日、親父の手紙にはこんな事が書いてあった。
ミナを育てて、一人前にしてやってくれ。
俺には最初その意味がわからなかった。
だが、今ならその意味がわかる。つまり、これは俺がこいつに普通の分別がつくような奴にしてやってくれという事なんだろう。
なんつーめんどくさい事を押し付けるんだ、まったく…。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。」
そう俺を呼びながら、ミナが俺の肩を叩く。
「ん?なんだミナ。」
「またボーっとしてたでしょ、話を始めるよ。」
「ああ、悪い悪い。」
ミナは胸に手を当ててすぅーっと息を吸う動作をする。
「じゃあ・・・あっ!」
ミナは何かに気づいたように口に手をあてた。
「ん、どうした?俺はしっかり聞いてるぞ。」
「大事なこと忘れてた、お兄ちゃんが約束破った時の為の針千本買ってこないと!で、でもお兄ちゃん、針なんて千本もどこ行けば売ってるかな?」
悪意なく無邪気に聞いてくるこの女性アンドロイドとの共生に俺はこの先、すごーーーーい不安を感じるのだった。
こいつが来る前に戻れないかなー本当に…。
シスターズ第二話「シスターズの定義」 了
431:ザ・シスターズ 第二話 「シスターズの定義」 5/5
09/07/09 03:02:15 hwkTLQVU
けーちんとミナっちの次回予告~
ミナ「二話はバトルものになる筈だったのに、なんの心境の変化か、こんな感じになっちゃったシスターズ!!」
啓介「バトルものって…俺、バトルとか嫌いなんだけれど…。」
ミナ「そもそも前回告知したサブタイトルは何処いったのか?それは神のみぞ知る!!!」
啓介「正直、このままでも十分辛いんでこれ以上は俺の心労増やさないでくれると嬉しいなぁー。」
ミナ「だが、ついに次回からはバトルものになる確率60%!!!」
啓介「なんか高いのか低いのかわからん数値だな。」
ミナ「ついに明かされるシスターズの宿命、裏に隠れるNASAの陰謀、ついに始まる超展開!!」
啓介「なんか嬉しそうに超展開って言っているがそれあんまり良い意味で使われるてること無いぞ。」
ミナ「現れた巨悪に裸で立ち向かうお兄ちゃん、それを公衆猥褻罪で捕まえようと追う警察!!」
啓介「また、俺裸かよ!!」
ミナ「警察の数の暴力により、窮地に追い込まれるお兄ちゃん!そのとき、お兄ちゃんの体が金色に輝きだしたのだ!」
啓介「いや、正直きもいよね(´・ω・`) 」
ミナ「これぞ、裸になることによりオーラーを高め、絶対無敵の超人になる大野家秘伝の奥義、スーパーゼンラ!!」
啓介「ネーミングが安直すぎるよ…。」
ミナ「次々と襲い掛かる警察をバッタバッタなぎ倒すお兄ちゃんはついに指名手配犯となって世界を敵に回すのだった。」
啓介「巨悪どこいったよ!巨悪!!」
ミナ「大丈夫、安心して!ミナはいつでもどこでもお兄ちゃんの味方だよ!」
啓介「一人にしてください、お願いですから…。」
ミナ「次回!ザ・シスターズ第三話『新たなる脅威 PNはパ○なしの略』」
啓介「一体、この次回予告からどうやってそのタイトルにたどり着くんだ…。」
ミナ「さー、次回もサービス、サービス!」
啓介「最後だけ思いっきり時事ネタなのな…。」
432: ◆klsLRI0upQ
09/07/09 03:16:12 hwkTLQVU
というわけでシスターズ第二話です。
俺の中でシスターズは駄菓子みたいな感じで書いているので、そんなものぱりぽり食べる感じで読んでもらえると嬉しいです。
当初はもっと動のある話だったんだけど、あんなことがあったせいかなんかぼけーっとした応答を書きたくなって
急遽シナリオを変更する羽目になってしまいました。
といっても元々短くすませる予定だった部分だったんだけど、設定もある程度これでわかりやすくなったかな
ちょっと補足説明すると、ミナの赤子という意味に関してですが、ロボットもの好きにわかりやすく説明すると
例としては黒歴史という言葉がありますよね
この言葉の本来の意味は∀ガンダムにおける、かつてあった災厄を内包した過去の歴史であり
テーマとしての意味はそういった過去があった上でそれをしっかり認めて同じ過ちを繰り返さないようにしようという意味であり
それがネットスラングとして意味が暴走して、無かった事にしたい作品という意味を持つ言葉になってしまいました
ミナは例えば黒歴史という言葉の意味を知ろうとすると、テーマやネットスラングなどが候補に挙がっても原義こそが正しいのだと認識してしまいます
つまりはミナにとっての黒歴史とはかつてあった災厄を内包した過去の歴史という意味を黒歴史だと思ってしまうわけです
なのであの作品って黒歴史だよなーなんて発言をするとその作品を大層とんでもないものだと理解しちゃうことに…
というのが現状でのミナの思考です
包丁持ってるからヤンデレとかじゃないんですよ…
んーたとえとしてはわかりづらいなw
本当ならば、次の話までまとめて書いて二話とするのが理想だったのですが、あんまりこっちにかまけてると
中途で投げ出し状態になってるリベジオンがアレになるので、区切りの良いこの辺りで切りました
シスターズはリベジオンと違って気楽に書いてる話でもあります、どんなシスターズが読みたいかというのを言ってもらえると
もしかするとその方針で書くこことになるかも…(あんまり先のこと考えず書いてるんですよねー)
433:創る名無しに見る名無し
09/07/09 13:58:45 79W9AREb
age