ロボット物SS総合スレ 3号機at MITEMITE
ロボット物SS総合スレ 3号機 - 暇つぶし2ch236:創る名無しに見る名無し
09/06/23 01:45:32 AMCoAB9g
最近ココに流れ着いたんだけど、ss投下してもいいですか?
何か、クロスオーバー企画やってるみたいだけど、参戦する意志無しの方向なんで、どうしたもんかと…

237:創る名無しに見る名無し
09/06/23 01:52:40 p8syjYBh
ばっちこい

238:創る名無しに見る名無し
09/06/23 01:58:29 vdq/SUaN
>>236
参戦は別に全員やるってわけじゃないから全然OK

239:創る名無しに見る名無し
09/06/23 02:01:17 AMCoAB9g
了解、サンクスです
今日にでもまとまったらその分投下させてもらいます

240:創る名無しに見る名無し
09/06/23 05:11:35 TVERJCcY
>>218
>>200で初李さんの機体がナナになってますけど、ハチでいいんですよね?

241: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/23 16:32:35 5k0K+jNa
スパロボでよくある冒頭の3D戦闘シーンを想像して書いてみた。
全部書くと七月になっちゃいそうだから書けた最初の方だけ投下。

242:スーパー創作ロボット大戦OP映像風
09/06/23 16:33:39 5k0K+jNa





多元世紀元年、世界は崩壊した。
多元世紀一年。幾多の異なる次元の世界が交わり合って一年が経ち、世界の混迷は極限にまで達していた。

歪んだ闇の世界を破滅から救う為戦い続ける者達がいる。
本当に世界を救えるのか、最後は誰にも分からない。
未来は誰にも見えず、ただ目の前だけを見つめて突き進む。
限界知らずの戦いで、未来を阻む敵をブチのめし切り開く。





Si Vis Pacem, Para Bellum―汝、平和を欲さば、戦への備えをせよ

243:スーパー創作ロボット大戦OP映像風
09/06/23 16:36:19 5k0K+jNa
かつて百万人は住んでいたであろう都市は、廃墟となったビルが墓標のように林立するゴーストタウンになっていた。日々数え切れない程の車が行き交っていた道路は荒れ果てていた。縦横無尽に亀裂が走り、クレーターが幾つもあり、底の見えない穴が点在している。
在りし日の活気を全く感じない都市の荒れ果てた道路に、四体の鉄の巨人が静かに立っていた。
強固な装甲に包まれた無骨なデザインの巨人の名は「対鋼獣用人型兵器」……通称ヴァドル。地球上に蔓延る鋼獣という異形の怪物に対抗する為に開発された、戦闘用ロボットである。
骨組みとなる強化金属フレームを人工筋肉と擬似神経で覆い、ソコにパイロットの神経をダイレクトに接続する事で、あたかも自分の肉体を操るように機体を操縦出来る。
ダイレクトに神経を接続する仕様の為に以前は操縦時の負担や接続を切った後の疲労感など問題もあったが、別の世界の兵器に使用されている思考制御+コンピュータ補助操縦技術を一部導入した事で大幅に改善された。
モーターやエンジンを積まない最新の動力システムを搭載している為に、ヴァドルは全体的にシャープなシルエットをしている。
ヴァドルは全長10メートル程で、やや足が短く、逆に手が少し長い。流線型の装甲タイルが人口筋肉を覆っており、甲冑を纏っているというよりは直接体に鉄板を打ち付けたような容姿をしている。
加えて、僅かな手足のバランスを覗けば殆ど人間に近い造型をしている事や、駆動が静かで滑らかな事から、ヴァドルからはロボットという機械っぽさがあまり感じられない。
隊長機を意味する「00」とプリントされたヴァドルは、砲身だけで4メートルはあるシールド付きの大型ライフルを手に、腰には鉈に近い形状のブレードを装着していた。
四機は何処から攻めてきても対応可能な菱形の陣形で敵を待ち構えていた。隊長である瀬名龍也を先頭に、右後方に一号機を駆る副隊長のディーネ、左後方に二号機のリート、三機の後方、隊長機の真後ろにエルツの三号機という配置。
荒野から都市へ野獣型の鋼獣の大群が迫ってくる。龍也達の世界における人類最大の天敵。人類の生存を脅かす幾多の脅威が存在するこの多元世界において人類最大の天敵とまでは呼べないかもしれないが、今でも脅威に変わりはなかった。
ヴァドルの胸部前面に位置する、衝撃を吸収するゲル状の液体に満たされたコクピット内で、無数のコードが繋がったパイロットスーツとヘルメットを身に着けた男―瀬名龍也は告げた。
「各機へ。作戦を開始する」
『一号機了解』
『フン……。二号機、了解』
『さ、三号機了解です』

244:スーパー創作ロボット大戦OP映像風
09/06/23 16:38:08 T8/tTHT1
それぞれの返事と共に各機との通信が切れ、一斉に攻撃を開始。隊長機と一号機のライフル、二号機と三号機のマシンガンが火を吹く。放たれた砲弾は二足歩行あるいは四足歩行、個体によって姿形が大きく異なる野獣型を次から次へ屠っていく。
四機の巧みな連携攻撃に接近すら出来ず野獣型は一方的に殺戮されていく。優勢でありながらも油断など全くしない。鋼獣の恐ろしさは彼らが最も骨身に染みて理解している。足元に響く微少かつ異常な聞き慣れた音。
「散開!」
龍也の叫びに三号機のみが少し遅れてその場から飛び跳ねる。ヴァドルの足元が盛り上がったかと思うと、地面から巨大な黒い柱が四つ立ち上り宙に舞った。 全長20メートルを越える黒色のソレは、体の大半が口で出来た奇妙な生物だった。
巨大で禍々しい顎を持つ、太く短い胴の、バランスの悪い魚のような容姿をした怪物、土竜型の鋼獣。他の三機は回避と同時に至近距離で攻撃を浴びせられたが、動作が遅れた三号機は持っていたマシンガンを食われてしまった。
魚の様に水中から飛び出した土竜型の一体、三号機を襲った個体は、空中で身を捻り、三号機のヴァドル目掛けて急降下した。
他の三機が攻撃しようとするが間に合わない。三号機の回避も既に遅い。
彼ら四人に手立ては無く、どうする事も出来なかった。だが、戦っているのは彼ら四人だけではない。土竜型が巨大な口を開き、ヴァドルに喰らい付く。その寸前。土竜型の側面に強烈な一撃が撃ち込まれた。
バターに熱したナイフを沈み込ませるように土竜型の体を容易く貫いた砲弾は体の中心で爆発。絶大な振動波と特殊熱によって、三号機を襲おうとした土竜型は塵すら残さず分解蒸発した。
四機の顔が同時に同じ方向を向く。時速150kmで凸凹の荒れた道路を整地された地面のように滑走する、ヴァドルより遥かに小さい人型兵器。
全高4m、基本重量2トン。海上都市姫路守備隊重歩兵小隊隊長、清水静の駆る清水静専用超重装甲強化服改。
土竜型を葬った左肩の50mm折り畳み式狙撃砲を元に戻し、右手に持った主兵装である25mm重機関砲をエルツの三号機に放り投げながら、無駄の無い流水の如き動作で背中の鞘から300cm超振動極熱刀を抜刀する。

245: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/23 16:38:48 T8/tTHT1
取り敢えずここまで。

246:創る名無しに見る名無し
09/06/23 19:54:40 TVERJCcY
精力的だなあ・・・

細かい議論は参戦作品が出揃ってからにするとして
今は議題をまとめつつ俺も妄想に励んでおくか

247:瞬転のスプリガン(6) ◆46YdzwwxxU
09/06/24 05:00:53 hp4ula9q

「あれは……」
 成層圏の果てから徐々に高度を下げ、地上からも視認できるようになった浮遊物がある。
 半天の水色を塗り変える、ぞっとするような白。不可思議なことに、地上側を向いた底面には薄っすらとも陰
が生じていない。光を透く幽霊のようだった。
 一体の生物としては到底信じられない巨大さ。それが歴とした鳥影だということにも、ことねはしばらく気づ
けなかった。
 羽毛は群雲、炯眼は肥えた月。
 先に目撃した甲属魔族達はまだしも分かり易い怪物だったが、これはもはやその存在じたいが一種の異常気象
に等しい。
 岩から削り出したような手でひさしを作り、延加拳の天農は空を仰いだ。遮光器を常用する彼には意味がない
はずだったが、遠くを見渡す仕草として体が覚えていたのだろう。
「禽属の魔族か。それも大物だ」
「とりぞく」
 ことねは意味を察しながらも、何とはなしに鸚鵡返しに呟いた。強力なエーテルブラストの影響で鳥肌が浮い
ていたが、今度は気にするようすはない。
 魔族を大別する四大属の一、禽属の「禽」の正確な読みは「キン」である。天農がここで敢えて「トリ」とい
う言い回しをしたのは、先刻の反省がまだ辛うじて心に残っていたからだった。
「魔界の生き物である魔族には、ケモノ、トリ、ウロコ、コウラの四つのグループがある。このうち鳥の仲間に
似た姿をしているのが、禽属だ」
 そこで自分自身を納得させるように、「中身は全くの別物だがな」と付け加えた。
「数が少ないが一体一体が恐ろしく強力で、音速の数倍から十数倍というスピードで空を飛ぶ、敵に回すと一番
厄介なグループでもある」
 説明に不安を煽られ、ことねは不安げに視線を遠くへやった。
 昆虫の魔族らが激戦の末に総崩れになったらしいことは、天農から聞いていた。そこに出現したのが、恐らく
は彼らよりも強いという、あの鳥の魔族である。
 連戦にでもなればと思うと、気が気ではない。
「スプリガンさん、だいじょうぶでしょうか」
「今のスプリガンでは勝てない」
 天農はきっぱりと断じた。
「互いに攻撃が当たらず引き分けか、やられるだけのワンサイドゲームになるだろうな。だいたい、禽属とは相
性が悪すぎる」
 禽属魔族の攻撃は、もっぱら超高空もしくは高空からの広域エーテルブラストに限られる。戦闘中において降
下するという状況が有り得ないため、徒手空拳では攻撃が届かない。
 流派超重延加拳としては、極超音速という速さを乗せた機体そのものを砲弾と化して射ち出す対空の技“昇車
(のぼりぐるま)”が考案されてはいる。
 しかし、地形に恵まれなければ照準合わせすら困難を極め、発動できたとしても足場のない空中では直線的な
動きにならざるを得ない。同等以上の速度で自在に空を舞うことのできる禽属魔族にはまず命中しないだろう。
実戦で使用するには、大幅な改良が必要だった。
(エーテルドライブの出力がもう少し上がれば、あるいは空を飛ぶこともできるだろうが……)
 銃火器もなく飛行能力もない現状のスプリガンには、最初から勝ちの目がないのだ。
「そんな……」
 ことねは胸の奥から漏れそうになる絶望を閉じ込めようというのか、小さな手で口許を覆った。この世の終わ
りのような顔だった。
(果報者だな、スプリガンさん)
 自分がひとまずの安全圏にいることは彼女も分かっているはずで、気にしているのはむしろスプリガンの安否
なのだろう。それが天農には微笑ましい。
(さぁて。それで、どうするかね?)
 雲行きの怪しさを肌に感じながらも、天農はにやにやと締まりなく笑うばかりだった。


248:瞬転のスプリガン(6) ◆46YdzwwxxU
09/06/24 05:02:23 hp4ula9q
今回はここまで。短すぎですねすみません。
しかし、いつも場面転換で切っている都合上、ここできります。

ネクソンの方は・・・難航しています。
ただ、珍しく真面目にやった戦闘シーンがようやく終わったので、
前半だけは来週中までに投下できそうな感じ?

249:創る名無しに見る名無し
09/06/24 16:17:16 zdyZ+WxY
>>248
乙であります
全く人をじらすのが得意なお方だぜ。ネクソン共々続きに期待しております
しかしいつまで経ってもスプリガンがその内合体するんじゃないかと思ってしまう俺は生粋の合体フェチ

250: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/24 16:24:18 5Ypz0jSa
>>248
ネクソンクロガネ、あの苦境をどうやって凌ぐのか、今から楽しみです。

OPの続き、投下します。

251:スーパー創作ロボット大戦OP風2
09/06/24 16:25:19 5Ypz0jSa
清水静の超重装甲強化服改が装備している頭部両側の長針弾発射機と左腰の10連装6.25mm機関銃は、本来は放たれた敵弾を迎撃する為の間接防御専用兵器。
主兵装である25mm重機関砲をヴァドル三号機に渡したので、針の穴を射抜く精密さと高度な情報解析と計算で迫り来る高速の多目標へ同時迎撃が可能な間接防御専用兵器を攻撃に使用。
鋼獣に浴びせられる横殴りの豪雨同然の猛射撃は一発一発が急所を貫く必殺の一撃。高い防御力を持つ鋼獣だが、体の全てがそうではない。
弾丸自体に誘導機能があると思わせる程の正確無比な精密射撃で、振動熱効果を伴う長針弾の急所への滅多刺し、6.25mm振動熱徹甲弾が脆い箇所から進入し貫通、口径の十倍以上の穴を穿つ。
ヴァドル隊のライフルとマシンガン、25mm重機関砲から放たれる25mm振動熱徹甲榴弾が加わり、地獄への片道切符大配布は更に果て無く激しくなる。
清水静は射撃を行いながら全速前進し、右手に構えた300cm超振動極熱刀で次から次へ鋼獣を流し斬る。生身の人間ならかすっただけで全身が消滅する刀身を全力で叩き込まれた鋼獣の全てが原型を留めず体積の半分以上を失い、
薄い緑と紫色の蒸気を立ち昇らせる固体とも液体ともつかぬぐちゃぐちゃな泥状の残骸と化す。
地面を覆い尽くすように鋼獣の死骸が散らばり、見渡す限りに生きた敵の姿は無い。
攻撃が止みわずかな静寂、先頭に立ち戦った清水は後ろへ振り返ると300cm超振動極熱刀を構え直し、全速のローラーダッシュで一直線に向かう。ヴァドル隊の隊長、瀬名龍也へ。
一号機から三号機全てがライフルとマシンガン、25mm重機関砲の砲口を隊長機に向ける。高く跳躍した超重装甲強化服改の握る刀の切っ先が真下を向く。
龍也のヴァドルが全力で飛び跳ねる。同時に龍也のヴァドルが立っていた地面に大きな亀裂が走り大きく盛り上がり、特大の土竜型鋼獣が姿を現す。
全体の全てが地表に出る前に、全体重とフルパワーを込めた過負荷出力の300cm超振動極熱刀を頭蓋に根元まで突き刺し、周囲を取り囲むヴァドル四機の十字砲火が叩き込まれる。
巨大土竜は上半身が消滅して下半身が乾いた砂のように崩れ去った。地面に着地した清水静は過負荷出力に耐えられずボロボロになった刀身を柄から取り外し、予備刀身と交換。鋼獣は全て倒した。しかし、休む間も無く新たなる敵が現れる。
空を飛ぶ獣を模した機械兵器、鋼獣(メタルビースト)。十体と数は少ないが、極めて高い戦闘力を持つ恐るべき敵。ヴァドルが砲口を向け、清水は刀を構え直す。その時、鋼獣(メタルビースト)を討つべく一体のロボットが現れた。
悪魔的なフォルムを持つ10m超の漆黒の鎧。黒峰潤也が駆る黒い謎の鋼機(メタルアーマー)リベジオン。その肩に黒髪赤眼、黒衣を纏った外見年齢二十歳程の男、魔王ラウディッツ・バルディウスが両腕を組み仁王立ちになっている。
一機と一人、二つの魔王は鋼機(メタルアーマー)に対して尋常ではない殺気を込めた視線で睨み据えていた。

252: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/24 16:27:59 5Ypz0jSa
以上。
この後、スプリガン、タウエルン、パラベラム、ネクソンクロガネを出演させる予定です。

253: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/24 16:33:57 5Ypz0jSa
間違えた。最後の行、鋼機(メタルアーマー)じゃなくて鋼獣(メタルビースト)。

254:創る名無しに見る名無し
09/06/24 23:00:47 zdyZ+WxY
人、いないな。どうしたんだろう?

255:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/24 23:30:21 xcBPEcQL
いますよwただまだちょっと投下には時間が掛かりますorzごめんなさい
>>247
スプリガンがどう行動を起こすか気になりますね……
投下乙です
>>251
上のレスから凄いっす!
描写が細かいから脳内に映像が浮かびますねー。wkwkしますよ

256:創る名無しに見る名無し
09/06/24 23:35:32 iD1UkPO/
>>236です。話の導入部分がなかなか纏まらずに四苦八苦…
とりあえず絵でも描いてイメージ先行でのらりくらりと進めてますが、初投下は週末くらいになりそう;

257:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/25 00:33:06 lsIg/ufd
>>247
乙であります
上空からの広域エーテルブラスト……なんていやらしい攻撃なのかしら
次回も楽しみに待ってますw


>>251
ウヒョー!
二つの魔王って何か痺れますね!
そしてついにパラベラムの出番が……他の二作とどう絡むのか、楽しみで仕方ありませんw

あ、おせっかいかもしれませんが、段落の初めは一文字分空けたほうがいいですよ


>>256
ゆっくり、満足できるまで書き込むのもアリですよ



とか言ってる自分も、邂逅篇は次で終わりなのになかなか纏まらない……

258: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/25 22:28:59 Mc4VvR18
>>255
どうもありがとうございます。
タウエルンは次の次くらいで出せそうです。

>>257
パラベラムの人達は次の次、タウエルン+ショウイチと一緒に出す予定です。
オートマタと自動人形をバッタバッタブチ倒しまくるつもりなので、御期待下さい。

自分の妄想設定ですが、このOP風ではタウエルン本編の話で既にパラベラムの人達が合流していて、村の人達は一人も死なずシュワルツ一味を撃退してます。
しかし、死んだと思っていたシュワルツが彼らの前に現れ……。
一条 遥「げぇっ、あの最低野郎、生きてたんだ!?」

259: ◆46YdzwwxxU
09/06/26 04:34:39 o2sxwX8Q
レスどうもです
うまいこと進んだのでネクソンの第六話前半は今日明日中に投下します。
いろいろと期待に添えそうもないことだけは謝っておこう・・・。

>>249
最終回仕様としてトレーラーと合体する「大スプリガン」の設定を作ったことがありましたが、
きれーに没りました……。劇場版でもやらない限りお蔵入りだろうなー。

>>252
おつかれさまです。
私以外がスプリガンをどうするのかは興味ありますね。
でも、どうせなら参戦表明したのは全作品出して欲しいな!

>>256
絵もお描きになるんですかー

260:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ ◆46YdzwwxxU
09/06/26 14:41:18 o2sxwX8Q


 ※

 紺色の靴下を履いた足を恐る恐ると伸ばして、悪山エリスは廊下の暗がりをまた一歩だけ前進した。
 進めば進むほど闇が濃度を増していく、窓のない通路だ。
 もっともエリスの慎重さは、見通しの利かない足元を不安に思ってのことではなかった。そこは彼女が幼少の頃から出入りしている
悪山研究所の内部であり、その気になりさえすれば目を瞑っていても行き来できる。
 仰々しい言い方をすれば、悪山エリスは今、隠密行動中なのだった。
(抜き足、差し足、忍び足……)
 その足どりからは、わずかな物音も立てまいと神経を尖らせているようすと、また歩行という連続した動作を細分化して相手にそれ
と認識させまいという徹底振りが窺えた。多くの肉食動物が狩りで用いる戦法でもある。
(抜き足、差し足、忍び足……)
 魔法の呪文のように心の中で繰り返すと、少しだけ動悸が楽になった気がする。古びた床が立てる軋みの音さえ、今の彼女には恐ろ
しい。こうしてこそこそとしていることじたいが、ある種の裏切りのようで後ろ暗い。なけなしの勇気でもう一歩。
(抜き足、差し足、忍び足……)
 白磁のような両腕が大事そうに抱えているのは、料理の載ったトレイだった。ラップを押し上げる直角二等辺三角形は、手製のサン
ドウィッチである。具には彼女なりに趣向を凝らしてあった。
 悪山エリスの向かう先には、木製の扉一枚を隔てて、彼女の祖父が築き上げた“男の城”が広がっている。大雑把に資料の収集や設
計図の作成などを行う書斎と、さらに奥にはさまざまの機械の唸る研究開発室、そのまた向こうに巨大ロボットの保管や整備などを司
る格納庫などが存在する。
 その男の名は、悪山悪男。毎週毎週大型肉食恐竜型のロボットを手作りしては、ロボヶ丘市を恐怖のどん底に突き落とす、悪のマッ
ドサイエンティストだ。
 細心の注意を払って足音を忍ばせ、エリスはようやく地獄に通じる門に辿り着いた。
 そこで困り顔になる。
 ここまでの静粛性は完璧だという自負がある。これが潜水艦同士の海中戦なら、もう敵は死んでいるも同然だ。ましてや最近少し耳
の遠くなった悪山悪男が、接近に気づけるはずはなかった。溺愛する孫娘のこととなると彼はしばしば人類の限界を越えるため、絶対
とまでは言い切れないにせよだ。
 だが、ここに来て、今回のミッションにおける最難関が立ちはだかった。
 建てつけの悪さから、よく開け閉めに難儀する引き戸である。祖父が巻き起こす爆風のせいで歪んでいるのではないかとエリスは見
ているが、それは今はどうでもいい。
 経験上、その戸板はびくともしないか大きく動くかの極端で、開くときは必ずそれと分かる音を立てるのである。
(どうしよう……)
 しばらく途方に暮れて呆然と扉を眺めるうちに、エリスは端から光が漏れていることに気づいた。
 真正面からでは分からなかったが、角度をつけると数ミリメートルほどの隙間が生じている。
(中、見えるかな?)
 悪山エリスは桜色の唇をわずかに窄めて息を吸ってから、ぴたりと潔く止めた。
 そのまま青み掛かった瞳を壁に寄せて、そっと中を覗き見る。

261:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ6 ◆46YdzwwxxU
09/06/26 14:44:22 o2sxwX8Q
 戦慄した。
(深夜に包丁を砥ぐ鬼婆を目撃した旅人の気分です……)
 他者の共感が得られるかはともかく、我ながらなかなか的確な比喩だとエリスは思う。ざんばらと白髪を振り乱し、三白眼を血走ら
せた祖父のようすには、まさしく鬼気迫るものがあった。エリスにとっては、優しい祖父が“悪のマッドサイエンティスト”であるこ
とを改めて思い知らされる光景でもある。
 予想よりもずっとひどそうな状態に、エリスは聞こえよがしに溜め息を漏らした。ありのままを確かめられれば、もう存在に気づか
れようと構いはしない。もっとも切羽詰まった彼はそれにも気づいていない。
 ここ数日の悪山悪男は、まるで何か悪いものにとり憑かれたように、自らの“城”に篭っていた。ちょうど悪山研究所に珍しい訪問
者があり、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネがシロガネ四天王と戦いを繰り広げた、その翌日からだ。
 そこでの悪山悪男の活動内容はエリスが訪問する度に違ったが、今回は書斎の隅の古びた学習机に黄ばんだ大学ノートを広げ、何や
ら書き殴っていた。まるで別種の生物のように背中を丸め、洟を擦りつけんばかりに紙面に顔を近づけるのは、彼のいつもの流儀だ。
握り締めるような鉛筆の持ち方も、行き詰まると上端を齧る悪癖も、もう矯正のしようがない。
 悪山悪男は試行錯誤に没頭するあまり、寝食を忘れていた。愛孫であるエリスの手料理は欠かさず平らげていたが、どこか燃料を補
給するような作業的な食事だった。睡眠時間にいたっては、まるごと削っている節がある。
 とはいっても、それだけならば、悪山悪男にとっては別段珍しいことでもない。エリスとしても、毎度のことに呆れながら世話を焼
いていればよかったのだ。
 しかしエリスは、祖父のようすにいつもと違う雰囲気を嗅ぎとっていた。
(おじいちゃん、ちっとも楽しそうじゃない……)
 趣味人に特有の熱意も、明朗さも、今の悪山悪男からは感じられないのだ。エリスにとっては、そんな祖父は見るに堪えない。それ
では彼女が悪山悪男の悪行を黙認する“共犯者”でいる意味がないではないか。
 サンドウィッチのトレイを片手に持ち替え、それなりの勢いをつけてノックを鳴らす。反応を待たずに戸を引くが、すぐにつかえて
しまった。こうなると手渡しは難しい。エリスはそのことに心のどこかで安堵していた。
「おじいちゃん? お昼ご飯、ここに置いていきますから」
「おう」
 差し入れには生返事を返しておいて、悪山悪男は顔も向けずに言葉を継いだ。
「今日も、街へ行くのか」
「はい」
 悪山悪男は渋い顔をした。
 今のロボヶ丘市は明らかな“危険地帯”だ。下手に外を出歩こうものなら、それこそ命の保証はできない。
 エリスがそれを承知の上で、市街にある住居と郊外の悪山研究所を往復し、また暇を見つけては中央商店街などにも足を運んでいる
ことを悪山悪男は知っていた。
 命をどぶに捨てるような行為だ。言語道断だとは思うが、何を言ってもエリスは聞く耳を持たない。
「……気をつけてな」
 結局は、今日もそう言い含めることしかできなかった。
 こんなこともあろうかと悪山悪男が贈った謹製のリボン・護身用自動伸縮装飾帯は、10メートル級の戦闘用ロボットくらいなら八
つ裂きにできるはずだった。油断はできないが、今はそれに頼むしかない。

262:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ6 ◆46YdzwwxxU
09/06/26 14:46:31 o2sxwX8Q
 遠ざかっていく愛孫の足音を寂しがりながら、悪山悪男は唇を震わせるように独白した。
「……あの子は、がっかりしとるじゃろうなぁ……」
 彼女がわざわざ危険を冒す理由に、彼はうすうす勘づいていた。ずいぶんと婉曲的に“お願い”をするものだと思う。
「しかし、しかし。この保険だけは間違うわけにいかんのだ」
 悪山悪男は筆を置き、今し方ようやく出来上がったばかりの図面に目を通す。
 鉛筆の硬さは2Bで、筆圧は強い。消しゴムも下敷きも使わない彼のノートは、ひどく黒ずんで汚らしい。
 古今東西の文字を彼自身にしか分からない法則に従って崩し、また複雑な設計図を脈絡もなく挿入するために、そこに踊るものの正
体は判別不可能。世界第九位の狂博士である悪山悪男本人か、かつてワルサシンジケートを震撼させたというかの巨大頭脳以外には。
 悪山悪男は息を吐く。休んでいる時間はない。サンドウィッチを摘まんだら研究開発室に直行だ。
 ワルサシンジケートの魔手がエリスに及ぶであろう、あと数日のうちには完成させなくてはならないのだから。
「ワルレックス系列最凶最悪の機体となる、この“ダイノスワルイド”だけは……!!」
 悪のマッドサイエンティスト・悪山悪男の嗄れ声には、悪魔に魂を売り渡さんばかりの切実さが篭っていた。
 それは、まだ影も形もないはずだというのに。
 機械仕掛けの暴君竜の咆哮が遠雷のように聞こえたのは、果たして気のせいだったのかどうか。




 第6話  戦慄! シロガネ四天王再び現る!



 ※

 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネのカメラアイ下に配置されたビームドライバが亜空間から転送する金属粒子は、極めて不安定な存
在であり、わずか数秒で地上から完全に消滅する。ネクソンクロガネストームが地表に施した鈍色の厚化粧も、今では薄っすらと色褪
せたものになっていた。
 未だに残留する顆粒を蹴立てながら、ぶつかり合う二体の巨大ロボット。
 それが最強無敵ロボ・ネクソンクロガネと、悪のロボット軍団・シロガネ四天王との壮絶な戦いの始まりを告げた。
「ネクソンクロガネパンチ!」
「何のッ!」
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの放った必殺パンチが、剛力無双ロボ・シロガネマッスルの分厚い胸部装甲に押し戻される。巨大
ロボット一体分はあろう重量差と、超ネクソン白鋼の強靭さのために、衝撃が伝わるより先に肩が後退してしまうのだ。
 激しい反動に痺れながらもネクソンクロガネはその場からさらに右の拳を突き出すが、今度は片手で受け止められた。追撃の左も同
じく。戦いは、両手を組んだままに互いを圧倒しようと押し合う、剛力対決の様相を呈する。
 だが、田所カッコマンは失念していた。
 敵はシロガネマッスル、“剛力無双ロボ”なのだ。
「筋肉は隆々! 仕掛けをごろうじろ!」
 拮抗できたのも一瞬のこと。シロガネマッスルの赤い入れ墨が力強く発光。重量と駆動力の差で押し負け、最強無敵ロボ・ネクソン
クロガネの踵が大地を削った。
「こんの、馬鹿力め!」
 両腕を捻り上げようとする動きを察し、田所カッコマンは真っ向勝負を放棄。ネクソンクロガネは自ら背中から倒れ込むと同時に片
脚でシロガネマッスルの胴を蹴り上げ、相手の勢いを利用して投げ飛ばす。
「男の真筋勝負に柔術まがいの受け流しとは、不粋千万ー!」
 宙を舞う四天王いちのマッシブ。
 綺麗な放物線とはいかず、後頭部から地面に激突。金属粒子のカーペットを滑って粉塵を巻き上げた。
「いや、しかしあれもまた美しき筋肉の躍動といえるか、ううむ……!?」
 仰向けに倒れたシロガネマッスルの中で、ニック・W・キムが腕組みをして唸る。声に苦痛の響きはなく、とぼけているようにさえ
聞こえた。受け身をとったようすもないというのに、大した損害も見られない。

263:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ6 ◆46YdzwwxxU
09/06/26 14:48:21 o2sxwX8Q
「寝てな、おっさん!」
 シロガネマッスルのタフさに悪態を吐く暇もなく、音速飛翔ロボ・シロガネソニックの急襲を迎える田所カッコマン。
 内蔵兵器を起動。背面装甲のハッチを左右二箇所展開し、VLS(垂直発射システム)を引き出す。
「ネクソンクロガネミサイル!」
 超音速巡航ミサイルを射出。損傷はおろか命中すら望むべくもなしと、着弾を待たずに自爆させる。
 轟音と閃光を目眩ましに身を翻し、暗躍する百発百中ロボ・シロガネスナイパーとの隔たりを踏破。ネクソンクロガネパンチの強打
を浴びせる。
 鉄拳の芯に異物感。
 陽炎のように立ち昇る薄緑の毛髪。
 狙撃手の護衛に就いていた一騎当千ロボ・シロガネブレードが割り込み、迎え火の剣を当てていたのだ。女騎士の凶刃が中指と薬指
の間に侵入し、そのまま手首、前腕と竹のように両断していく。超ネクソン黒鋼の装甲などあってなきがごとき、常軌を逸した切断力
だった。
 田所カッコマンは改めて自覚する。これまでのように頑丈さに物を言わせた戦いは、もうできないのだと。
 これは死闘。命を懸けた、本当の意味での“潰し合い”。
「許せ、ネクソンクロガネ……!」
 地獄にでも付き合うと応える巨人の聲を、確かに聞いた。
 故に最強無敵ロボ・ネクソンクロガネは止まらない。半分に割れた拳をシロガネブレードの顔面に突き刺す。鋭すぎる切れ味のため
に剣では抵抗にならず、速さはほとんど減じていなかった。斜めに斬り飛ばされた腕の半分が空中で回転するのを、田所カッコマンは
横目に見た。ロボットの痛みをパイロットが引き受けることができれば、どれだけ楽か。
 拳を振り抜くまま、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネが回し蹴りの体勢に移行。
 衝撃に頭をぐらつかせながら、切り裂きジャンヌが金切り声を上げる。
「この子、調子に乗ってッ!」
「どけ、ジャンヌ」
 シロガネスナイパーのライフルが火を噴く。狙いを過たず、閉ざす暇のなかったネクソンクロガネのミサイルVLSに銀の銃弾が滑
り込む。重装甲で跳弾し、内部機構に深刻なダメージ。それでも怯むわけにはいかない。
 まさかりを振るうがごときネクソンクロガネの蹴撃を、切り裂きジャンヌは機体を沈ませて躱す。抜け目なく関節に剣を突き入れ、
歯車を狂わせようとするが、逆に刃を折られそうな気配を察したか断念。
「中身も化け物なの!?」
「ネクソンクロガネは、アーマーとフレームが未分なのだ」
 解説しながら、スナイパーガマンが引鉄を絞る。
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの左カメラアイを狙った魔弾は、わずかに逸れて下のビームドライバに着弾、その機能を奪う。こ
れでネクソンクロガネビームの威力が半減。
(またひとつ、追い詰められたか……!)
 シロガネマッスルとシロガネソニックが復帰。超音速で飛行できるシロガネソニックが先行して到達し、衝撃波の刃を放つ。
 先読みしていた田所カッコマンが、回し蹴りの動作中に密かに振り撒いていた金属粉により、ネクソンクロガネストームが発動。シ
ロガネソニックが爆光に呑まれる。
「またかよ!?」
「学習しろ、エビル!」
 スナイパーガマンが怒鳴る。マグネシウムなどの燃焼に、あわや命にも等しい視力をやられるところだった。
「してるさ! 見た目は派手だけど、超ネクソン白鋼ならいくらでも耐えられるってね!」
「そうじゃない! お前の役目は撹乱だ! いらぬ攻撃に我々まで巻き込むんじゃない!」
「はああ!?」
 シロガネ四天王、一体一体は確かに強力だ。最強無敵ロボ・ネクソンクロガネに優るとも劣らないだろう。だが、一度も揃ったこと
がないというだけあって、彼らの連携はうまくない。
(四対一だと思うな。これは一対一の四連戦。ただの、消耗戦だ!)
 広い背中で爆風を受け、地上の帆船となったネクソンクロガネが、猛然とシロガネスナイパーに掴み掛かる。
 スナイパーガマンはゼロ距離射撃を試みるが、響いたのは銃撃音ではなく警告音。
「銃口に異物? ……ちぃっ!」
 防塵仕様でない現装備の四天王ロボに、ネクソンクロガネストームは脅威だった。
「このスナイパーガマンを一芸だけの男と思うな!」
 シロガネスナイパーがライフルを持ち替え、銃把の仕込み針で首筋を穿とうとする。死神の大鎌のように銃身が風を切る。
 田所カッコマンが内蔵兵器ネクソンクロガネバルカンを起動。空中の金属粉で暴発。同じ牽制を食うスナイパーガマンではないが、
今度は最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの側が爆発を制動に利用、躱しようのない体勢から躱してみせた。

264:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ6 ◆46YdzwwxxU
09/06/26 14:49:51 o2sxwX8Q
 動きが止まったところに、左右からシロガネブレードとシロガネマッスルが殺到。
 同士討ちさせようとネクソンクロガネが爪先で地を蹴って背後に跳ぶが、絶妙のタイミングでシロガネソニックが空襲し、激しい衝
撃波で押し戻される。
 田所カッコマンは戦術を変更。先に接地した左足底を強く踏み締めながら上半身を回転し、左のネクソンクロガネパンチ。
 ―激突!
 先に到達したシロガネブレードが、体重を乗せた刺突でネクソンクロガネの胴体を背から腹へと串刺しにする。難攻不落のシロガネ
マッスルに押しつけるような、逃げ場のない必殺の挟撃。両者の思いきりのよさは、多少の損傷は覚悟の上のものらしかった。
 切り裂きジャンヌの毒々しい唇は嗜虐の笑みに歪んでいた。シロガネブレードは貫通した剣を掻き回し、ネクソンクロガネを抉る。
 けれど。
「馬鹿な……。この私の、アツい胸板……が……」
 この局面で真っ先に苦しげな呻きを漏らしたのは、四天王いちのマッシブ、ニック・W・キムだった。
 剛力無双ロボ・シロガネマッスルの山のような巨体がぐらりと傾ぐ。
 鍛え抜かれた大胸筋に似た胸部装甲は、弾性の限界を越えて陥没していた。穿つは最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの鋼の拳。そん
な芸当は、通常のネクソンクロガネパンチでは不可能。同等の硬度と、如何ともし難い本体の体重差で弾かれるためだ。
 だが、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネはそれを、“衝突の瞬間にシロガネブレードの突進力を借りる”ことで補ったのだ!
 衝撃のエネルギーが完全に伝導されたネクソンクロガネパンチの前には、超ネクソン白鋼の積層装甲すら鉄壁の防御とはいかない。
「ニック!」
「呆けるな、ジャンヌ!」
 どうと崩れ落ちるシロガネマッスル。
 自然に引き抜かれた左手を、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネは今度はシロガネブレードの右腕に伸ばす。背後を手探りする無理な
動作で、決して素早くはなかった。
 シロガネブレードは退避しようとするが、ネクソンクロガネの背に埋もれた白刃が抜けない。そこで愛剣を手離すことを躊躇したの
が、切り裂きジャンヌの不覚。最強無敵ロボ・ネクソンクロガネがシロガネブレードの利き腕を鷲掴みにし、全握力を費やした圧迫行
動を開始。女騎士自慢の白銀の腕甲が悲鳴を上げた。
「乱暴な男だ!」
 シロガネスナイパーが回復したライフルを連射。ネクソンクロガネの五指に全弾命中させ、その手先の感覚を一時的に麻痺させる。
神業めいた援護を活かし、シロガネブレードはネクソンクロガネの背中に足を掛けて強引に剣を引き抜き、どうにか武器を失うことな
く窮地を脱した。
 仕切り直し。
 台風の目のように激戦の最中にぽっかりと生まれた小休止を、戦士達は彼我の残存戦力の分析に費やす。
 状況はシロガネ四天王の圧倒的有利。
 たとえシロガネ三羽烏になろうが、カッコマンエビルが役に立たなかろうが。遠近をカバーできるシロガネスナイパーとシロガネブ
レードのコンビネーションが決まれば最強無敵ロボ・ネクソンクロガネは手も足も出まい。これまで最強無敵を誇った超ネクソン黒鋼
の装甲も、よりネクソニウムの純度を高めた専用武器の前にはボール紙も同然。
 有利なはずだというのに。
(勝てる気がしないのは、何故……?)
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネは満身創痍。
 引き裂かれた右前腕の半面が脱落。十のうち八本の指の動作に不具合がある。肩口と背面腰部の内蔵兵器回りは、四箇所とも再起不
能だ。背面から正面までを刺し貫かれ、破損箇所からは火花混じりの黒煙が止めどなく噴き出す。二基あるビームドライバも片方は機
能を喪失し、攻撃力に不安を抱えている。至近距離で繰り返し爆発を浴び、装甲の光沢も今は曇天のように鈍い。
 胸部中央の操縦室に籠るのは、手負いの獣の息遣い。パイロットである田所カッコマンの疲労もまた、心身ともにピークに達してい
た。ヘルメットに縦横の亀裂が走り、頭のどこかから垂れた赤色が顎骨と鼻筋を滑り落ちていく。はぐれ研究員・龍聖寺院光の必死の
呼び掛けも、耳に入らなくなって久しい。
 勇姿を知る誰もが目を背けるであろう、惨憺たる状態だった。身構える動作も、どこか精彩を欠いて見える。

265:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ6 ◆46YdzwwxxU
09/06/26 14:54:33 o2sxwX8Q
 それでも、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネには、たったひとつだけ変わらないものがあった。それが百戦錬磨の切り裂きジャンヌ
をして、捉えどころのない弱気を生じせしめたのだった。
 たったひとつ。
 悪の心胆を寒からしめるカメラの眼の凄み。
 それだけが!
「これが最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ……!」
 四天王いちのテクニシャン・切り裂きジャンヌが発した声には、かつてない感情が篭められていた。シロガネ四天王がこれまで敵味
方を問わず与えてきた、“恐怖”などとは似て非なるもの。
 ―“畏怖”。
 切り裂きジャンヌは、無意識にシロガネブレードを一歩、後退させていた。
「武御雷光華流姐さんのおめがねに適っただけのことはある、かもね。……田所とかいったっけ?」
 手持無沙汰に上空を旋回していた四天王いちのスピード・カッコマンエビルも、徐々に愛機の高度を下げていた。敵味方入り乱れて
の接近戦には、シロガネソニックでは混ざりづらいのだ。
「だがもう限界だ。そろそろ仕留める」
 四天王いちのスナイパー・スナイパーガマンは、その洞察力で最強無敵ロボ・ネクソンクロガネが気力だけで立っている状態だと見
抜いていた。手の中のライフルが鎌首をもたげる。
 今にも最終ラウンドのゴングが打ち鳴らされようかという、そのときだった。
『やれやれ……何をしているのです?』
 四天王ロボの画像通信に割り込みを掛ける男がいた。奇病に冒されたような痩身に黒いスーツ。殺人をも厭わぬ冷酷な性を眼鏡が強
調する、それは危険なかほりの男。
 シロガネ四天王のメンバーに、稲妻のような緊張が走った。
「これはこれは。最上級エージェント、イッツァ・ミラクル」
 悪の総本山・ワルサシンジケートでも屈指の魔人。
 シロガネ四天王をロボヶ丘に派遣した張本人でもある。
『四対一でやっと勝てました!では、コマーシャルにならないではないですか』
「猛省しております」
 悄然とわずかに顎を引くスナイパーガマン。
 イッツァ・ミラクルは激情を顕わにすることがない。しかし、たしなめるような口調に、どこか逆らいがたい迫力があった。
『こうなれば一対一です。つい先日、悪の巨大頭脳・ドクトルポイズンからレクチャーがあったでしょう、“あれ”をおやりなさい。
シロガネマッスルは動けないようですから、こちらで遠隔操作します』
「いや。それには及ばないよ……」
 地に倒れ伏していた金属塊が、熊のようにむくりと上体を起こす。
『お目覚めですか、ニック・W・キム』
「鍛え抜かれた筋肉がなければ危なかった」
 暑苦しく微笑んでみせるシロガネ四天王いちのマッシブ。
 まさかの復活に、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの勝利の可能性がいっそう低下する。
 田所カッコマンは悔しげに歯噛みするが、それでも戦意だけは失くさない。シロガネ四天王が盛んに暗号通信を交わし、とんでもな
いことを実行しようとしているとも知らずに!
「では、やるか。……みんな、準備はいいか?」
「まさかぶっつけ本番とはね」
「ハハハ。ぼやくなぼやくな。未知なる筋肉と、さらなる筋肉だ」
「ちぇっ。こんな展開じゃ、悪のカッコマンどころかカッコワルイマンじゃないか」
 御伽噺の三銃士さながらに銃と剣と拳とを交差させる、シロガネスナイパー、シロガネブレード、シロガネマッスル。
「イチ!」
「ニ!」
「サン!」

266:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ6 ◆46YdzwwxxU
09/06/26 14:58:34 o2sxwX8Q
「シロガネ! 四身一体!」
 音速飛翔ロボ・シロガネソニックが彼らの腕先を飛び越えたかと思うと、巨大な独楽となって回転し始める。翼端からは飛行機雲の
ように無限の白煙が放出され、見る見るうちに全員を覆い隠していった。
 ネクソンクロガネビーム同様に亜空間から転送した荷電粒子によるバリアフィールドだ。吹き荒ぶ電磁竜巻は半径およそ七十メート
ルに及び、十数秒間に渡って外部からのあらゆる干渉を拒む。
 わずかに青色を帯びた雷雲の向こう側は、千里眼をもってしても見通すことは不可能。無謀にも侵入を企てようものなら、流体の螺
旋運動に弾き飛ばされ、また電磁気の嵐に電子機器を狂わされるだろう。二重三重にシールドを施された最強無敵ロボ・ネクソンクロ
ガネですら、どうか。
 ネクソンクロガネパンチを跳ね返し、ネクソンクロガネビームをも遮断する電磁竜巻の渦中。
 地上に聳え立つ三機が散開する。
「ヤツらが手と手を合わせたらァ! 正義の味方は皆殺ぉしぃっ!!」
 こんなときにもマッスルポージングを決めるシロガネマッスルから、傷ついた前面重装甲が剥離。頭が横倒しになって胴体に沈む。
 首無しの全身が左右に分離し、腕を背後に回しながら再接近。下腿が折れて大腿と同一化し、内股にあるジョイントだけで再結合を
果たす。半回転して上下と腹背を入れ替えれば、シロガネマッスルの剛腕を脛に装備した、大巨人の下半身が完成する。
「何もかも奪うぜッ! 形のあるものッ! 形のないものッ!」
 ヤケクソじみたパイロットの歌に乗り、シロガネスナイパーが跳躍。ライフルを手離した両腕を上空に伸ばし、上腕の狭間に頭を隠
す。両脚を合わせながら角度にして90°腰を屈曲、下半身をまるごと肩に、上半身を上肢として形態を移行。投げ出されていたライ
フルを、先端の二つの掌で掴む。銃の向きから、大巨人の左腕であることが知れた。
「シロガネ四天王! 誰か止めてみよ!」
 シロガネブレードも同様に、こちらは胸甲を優美な手甲とした右腕をなす。握り締める武器はもちろん剣だ。
 シロガネソニックが急降下。自慢の銀翼は、後方にそれぞれ45°展開していた。
「シロガネ四天王! シロガネ四天王! シロガネ四天王! 悪さしてんのう!」
 翼の付け根から出現したジョイントを目掛けて、両側からシロガネスナイパーとシロガネブレードが飛来。青と黄と緑の火花を激し
く散らしながら、シルエットをひとつにする。イッツァ・ミラクルの手配で新品に交換されたシロガネマッスルの胸部装甲が、恐ろし
く巨大な前面を封印。大巨人の上半身の準備が整う。
「シロガネ四天王! シロガネ四天王! シロガネ四天王! もうホラ! キミの隣!」
 金属塊が衝突する轟音を響かせながら、遂に大巨人の上下が合わさり、そして―!!
『全世界の皆様に、重大発表がございます!』
 魔窟Mk-Ⅱから、イッツァ・ミラクルは朗々と声を張った。
『この度、我ら悪の総本山・ワルサシンジケートの戦力貸出プランに、空前絶後の超大型ロボットが新規参戦いたします! 正義の味
方にあと一歩のところで勝てず、大願を果たせないとお嘆きのアナタ! 自分達を弾圧する国家権力を根絶やしにして、自由と尊厳を
勝ちとりたいと理想に燃えるアナタ! あるいはムカつく上司の家をぺしゃんこにして困らせたい陰険なアナタも!』
 どこかのコメディ番組のように、下手くそなジョークにサクラの笑声と喝采が沸く。
『今なら皆様の見果てぬ夢を、ワタクシどもがミラクル特価で実現させていただきます!』
 内外を隔絶する絶対不可侵の超電磁竜巻を、古城の尖塔のような四本角が突き破る!
 その尖端から放たれる尋常ならざる殺気に、田所カッコマンは戦慄した。
 夕陽色をした眼が視ている! 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネを睨み返すように!
「こいつは!?」
 田所カッコマンは、正体不明の微振動に気づく。ネクソンクロガネが震えているのだ。はぐれ研究員・龍聖寺院光の言葉が届いたな
ら、あるいは一種の共鳴現象であることが分かったかもしれない。ネクソニウムの共鳴だ。
 敵は世界最新鋭機にして、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネと同じ出自を持っている!
 イッツァ・ミラクルによって、その名が明らかになるとき。
 正義にとっての暗黒時代が始まる。
『とくとご覧あれ!! これが“真最強無敵ロボ・ネクソンシロガネ”であるのです!!』

267:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ6 ◆46YdzwwxxU
09/06/26 15:03:01 o2sxwX8Q


 ※

 掛け布団を跳ね上げた田所カッコマン、いや田所正男の顔色は真っ青だった。
 シーツに湿気が染み透るほど汗を掻いており、だぶついたTシャツが肌に貼りついて気味が悪い。
「ぐ……うっ!?」
 胸元に痺れるような鈍痛。身動ぎの度に、長らく油を差していない機械人形のようにぎしぎしと体が軋む。
 田所正男はそこで初めて、自分の全身に包帯が巻かれていることに気がついた。ところどころが緩かったりきつかったりで、処置は
お世辞にも上手くない。もっとも、手当てをしてもらっておいて不満に思うほど、田所正男は図々しくもなかったが。
(ここは……どこだ?)
 田所正男が寝かされていたのは、まるで見覚えのない、木目張りの小さな部屋だった。
 見上げるにつれて徐々に狭まっていく天井が、いかにも屋根裏といった風情である。裸電球が蜘蛛のように垂れ下がっていたが、日
中は四角いガラス窓から採光できる設計になっており、今は点灯しないでも充分に隅々までを見渡せる。
 簡素なベッドのほかには家具調度もない、殺風景な空間。
 いや、枕元に緑茶の入った200ミリリットルのペットボトルと、子どもっぽい目覚まし時計が置いてあった。
 目覚まし時計は、ステゴサウルスという恐竜をモチーフにしたと思しき、モスグリーンの一風変わった品だった。山なりの背に並ぶ
大きな骨板のうちの三本が、三針となって時を刻んでいく。機巧の動くカチコチという音が、静寂にやけに大きい。
 現在時刻は午前十一時半。寝坊もここまでくれば笑うしかない。ただしそれも、今が平時であるならばの話ではある。
「俺は、いったい……」
 少し喉につかえたが、ちゃんと声は出せる。
 “昨夜”の記憶は、ひどくあいまいだった。
 シロガネ四天王という恐怖のロボット軍団と戦ったことまでは何となく覚えている。恐らくはその戦いで全身に大小の傷を負い、意
識を失ったと思われるのだが、ここは自宅でも病院でも、ましてセイギベース3でもない。
 腑に落ちないことが多すぎた。
「む?」
 よくよく見れば、ステゴザウルスの時計は、白い紙きれを尻に敷いていた。
 田所正男がずきずきと痛む腕を伸ばして抜きとってみると、きっちりと四分の一に折り畳まれたメモ用紙だった。
 部屋の主の残した置き手紙らしいが署名はない。切れ味のよい丁寧な書体だった。性別は恐らく女だが、あのはぐれ研究員は意外に
まるっこい字を書くので、彼女ではない。
 日付を三度ほど更新した跡があり、これまでの経緯とロボヶ丘市の近況とが綴られていた。
 もろもろの疑問が氷解していく。しかし明らかにされた事実は、田所正男を愕然とさせるに足るものだった。
「馬鹿な……!!」
 手紙を残した謎の人物は言うのだ。
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネが、完膚なきまでに敗北し。
 現在のロボヶ丘市は、ロボット犯罪者達が跳梁跋扈する、無法地帯となっていると!




268:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ6 ◆46YdzwwxxU
09/06/26 15:04:30 o2sxwX8Q
今回はここまで。お楽しみいただければ幸いです。
対四天王戦は正直この作品らしくないので迷ったのですが、せっかくの機会なのでやっちまいました。
どうでもいいけど「シロガネ」という四文字、今回だけでいくつ書いたかな・・・もう見たくもねぇよ・・・

269:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ6 ◆46YdzwwxxU
09/06/26 15:22:52 o2sxwX8Q
あ、ペットボトルの容量がおかしいですね・・・orz
500くらいか・・・

270:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/26 17:48:11 FvqXMZf/
>>268
熱い! いつにも増して熱い! 火傷するくらい熱い!

それにしてもシロガネ四天王が合体してネクソンシロガネになるとは……不覚にも「おお!」と感嘆の声を上げてしまいました

次回からロボヶ丘世紀末救世主伝説の始まりですね! 楽しみにしております!

「汚物は消毒だー!!」

271:創る名無しに見る名無し
09/06/26 17:59:02 a6oF8Hdf
>>268
乙です
よもやロボスレ初(ですよね?)の合体ロボが敵側とは。にしてもやっぱり合体ロボは強いなぁ……
続きを楽しみにしてます

272:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/26 22:35:01 FvqXMZf/
>>271
志村ー、ゼノライファー

273:>>256 第一話『霧』
09/06/27 00:38:03 eF6tEF/d
 ――『それ』は、霧の中から現れた。

数センチ先すらも見えない濃霧の中、先日の“一件”の事後調査のために派遣されたZILCH(ジルチ)の一個機動小隊。
最新鋭機L11“Imitated(イミテイテッド)”8機で構成されたその部隊は、たとえその半数が本来の戦闘用ユニットではなく、“残骸”などを運ぶためのカーゴユニットを装備していたとしても、十二分な戦力を誇るものであった。
そう、間違っても、生身の人間になど負けることなどあるはずも無い。
そのはずだった――

最初の異変、コックピット内ディスプレイに映る複合式レーダーの探索域、そこに一瞬だけ映った大型の機影にZILCHのパイロットたちが気付いたのは、ほぼ同時だった。
「…っ!機影確認、各員―」
一瞬の動揺の後、隊長機のパイロットがとっさに各機へ通信を繋ぐ。
しかし、それが終わるよりも早く、ギュリッ…!っという歪な金属音が外部スピーカーを通じ、全ての機体のコックピット内に響いた。
「……………。」
一瞬の沈黙。
ゴゥンッ…!
二度目の金属音が鈍く響き、その沈黙を破る時、小隊の先頭を行くイミテイテッドの頭部が、地を転がった。
首を失いながら立ち尽くす躰。
その切り口から、数瞬遅れて、どす黒い駆動系の潤滑油が噴出す。
「なっ…!?」
繋がったままの通信から、隊員の絶句する声が流れる。
「…………。」
首をなくした機体は動かず、反応もない。今の一撃で操縦者が気でも失ったのだろうか。
「…なんだ、今のは…いや、それよりも…」
隊長機のパイロットは眉をひそめた。
映っていない。
レーダーに、何も表示されない。
“敵”は確かにそこにいるはずだ、この白い闇のどこかに。
「…戦闘ユニットは配置につけ、カーゴユニットはコンテナをパージ、装備Bで索敵を最大にしろ」
状況の把握を続けながら、隊長機のパイロットは隊員達に指示を出した。


274:>>256
09/06/27 00:43:04 eF6tEF/d
え~…とりあえず、本当に頭の頭だけですが;
ちなみに小説書くのは初めてなのでお手柔らかにお願いします…
>>257
ありがとうございます。ゆっくりやってみました。ゆっくり過ぎますがw
>>258
絵はイメージを纏めるのに便利なので落書き程度に走り描きで
小説を書いてて矛盾が出てくると怖いので…

275:創る名無しに見る名無し
09/06/27 01:03:05 BYamPffp
>>274
うん、さすがに情報不足過ぎて何とも言えない
とりあえず続きに期待。後ネタバレにならない程度に設定もプリーズ

276:>>256
09/06/27 01:32:01 VfK36UZZ
>>275
やっぱり短すぎますか、でも今日は流石に眠いのでここまででご勘弁を…
明日から本格的に投下できればと

設定も現在未定の箇所が多いので、明日の休日を使って纏めて行きます
一応世界観だけ行っておくと、パラレルワールドですが、ほぼ実際の世界と同じです。国などもほぼそのままですが、所々地名が違ったり架空の街が出てきたりはします。時代としては現在から10年程度未来、という感じです。
まぁいずれにせよ明日以降という感じです;

277:創る名無しに見る名無し
09/06/27 01:47:01 9Avg2Nof
>>274
現在までの書き込みで感想を述べるとすれば、
「生身の人間に負けるはずはない」という、
機動小隊が生身の人間との接触を予期しており、かつ兵器との接触は予期していなかったであろうことを示唆する文があったのに対し、
実際には何らかの機体が現れた点が気になるなあと。
引きとして効果を発揮してると思う。

>矛盾が出るのが怖いので絵を描く
わかる。俺も某スレで出したオリジナルメカで、一応機構のレイアウト考えたし(絵には起こさなかったけど)。

278:創る名無しに見る名無し
09/06/27 03:21:09 /AJMSJLo
むしろタイトルの方が知りたい

279:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/27 09:41:29 z/+6sUdJ
>>274
生身で人型巨大兵器を破壊……もしや通りすがりのガンダムファイター!?

という冗談は置いといて。

いやぁ、自分が初めてパラベラムを投稿した時を思い出しました。自分も短すぎると突っ込まれたものですw

という思い出話も置いといて。

人間のサイズで兵器を破壊できる(それも一撃で)というのはかなり厄介ですね。
小隊は全滅してしまうのか、それともこのピンチを切り抜けるのか……続きが気になるところです。


絵は自分もよく描きますよ……上手いか下手かは別として、ですが;

280:ゼノライファーの中の人 ◆.dMD1axI32
09/06/27 10:23:41 Asdskexy
どうも、ご無沙汰です
ようやっと続きがキリの良いところまで書けたので投下させてもらいます

281:電光石火ゼノライファー ◆.dMD1axI32
09/06/27 10:24:41 Asdskexy
 三体の球体人形へ向けて飛翔するライファーのコクピット内で、頼斗と希美は短いやりとりを交わす。
「武器はサイファーの時と変わってないよな?」
「はい。サポートユニットとの合体機構はサイファーより簡略化されていますが、それ以外は基本的に変化ありません」
 それを聞いて、頼斗がニヤリと笑う。
「おーし、だったらあの団子三兄弟に先制攻撃で一発ぶちかましてやるか!」
 頼斗は右腕を向かってくる人形へ向け、左手でそれを支える。
 トレースシステムで動くライファーも、それに倣って右手を人形に向けた。
「食らえ、アームバスター!」
 そして何か武器を使おうとしたのかそう叫ぶ頼斗。しかし、機体には何の変化も起きない。
「……あれ? アームバスター!!」
 もう一度叫ぶ。当然何も発射されない。
 今度は何も出ない右手をプラプラと振る頼斗。ライファーもそれを忠実にトレースするが、無論手には何の変化も起きはしなかった。
「……希美、音声入力システムは採用されなかったのか?」
 訝しげに尋ねる頼斗。
 彼の言うように本来人体には存在していない内部火器を使用する場合、サイファーは音声入力を行っていたのだ。
「えっと、音声入力は採用されてるよ。頼斗君が名前を間違えてるだけ。腕の武器はアームバスターじゃなくてアームブラスター」
 彼の問いに、希美は申し訳なさげに答えた。
「だったらすぐに教えてくれ。俺が馬鹿みたいじゃないか」
 脱力する頼斗。と、
「敵からビーム攻撃が発射されました! 直撃コースです!」
「へっ……何ぃ!?」
 頼斗は咄嗟に回避運動をとるが、間に合わずにビームが左肩に命中した。
 衝撃でコクピット内が小さく揺れる。それと同時に、頼斗の左肩に軽く痛みが走った。
 ロボットとパイロットの神経をリンクさせ全く同じ動きを取らせることのできるトレースシステムではあるが、このように機体の受けたダメージをパイロットにフィードバックしてしまうという弊害も併せ持っていた。
「くそっ、被害状況は?」
「衝撃はありましたが損傷は軽微です。あの程度の威力なら同じ箇所に七、八発当たらなければどうと言うことはありません」
「よし、じゃあさっさとお返ししてやるか!」
 三体の黒い人形から連続で放たれるビームを回避しながら、頼斗は再び右腕を敵の一体に向けて構える。
「アームブラスター!」
 すると今度こそライファーの腕に変化が起き、神経リンクのカットされた右拳が腕の中に収納される。
 そして銃口となった右腕から一条のビームが人形に向けて放たれた。
 ビームの直撃に耐えきれず、黒い人形の腹部に大きな穴が空く。と同時に、人形は炎に包まれ爆散した。
「よし、このまま残りも片づけるぞ!」
「はい!」
 頼斗は次の敵に狙いを定めた。

282:電光石火ゼノライファー ◆.dMD1axI32
09/06/27 10:27:00 Asdskexy
 時を同じくして、春風荘。
 避難を指示するアナウンスなどどこ吹く風といった様子で、善司は部屋の窓から空を眺めていた。
 目をこらせば、遠くに戦っているライファーと謎の敵の姿が確認できる。
「……」
 無言でその一点を見つめ続ける善司。と、不意にドアの方から「善司……」と声をかけられた。
「どうした、蘭?」
 窓から目を離し、善司は部屋のドアの方を向く。そこには、携帯を握りしめた蘭の姿があった。
「頼斗が携帯に出ないの……」
 そう告げる彼女の声は震えていた。よく見れば携帯を握る手もまた震えている。
 五年前にアンノウンによって家族を失った彼女にとって、この状況で不安に駆られるのも無理はない。
「……私、頼斗を探してくる!」
 普段の明るい彼女からは想像も付かないような声音で彼女は叫び、玄関に向かって駆け出そうとする。
 が、善司が彼女の腕を掴んでそれを引き留めた。
「待て、この状況で探しに出てもまず見つからない。それどころかお前だって危険だ」
「何でそんなに落ち着いてるの!? 頼斗が心配じゃないの!?」
 激しい剣幕で善司を睨みつけ蘭は必死になって腕を振り払おうとするが、予想以上の力で腕を掴まれておりそれも叶わない。
「俺だって心配はしている。だが幸い戦闘は上空で行われているし、命に関わる危険にはそう見舞われないはずだ。
それにこの状況では携帯に出ないのもそれ程不思議な話ではない。戦闘が終わってからもう一度電話をかけてみて、探すのはそれからでも遅くはないはずだ」
 努めて冷静に、そして真剣に語る善司の言葉を受けて、やがて蘭は小さく頷いた。
「……わかった。ごめん、大声上げちゃって」
「いや……」
 善司は蘭の腕から手を離し視線を再び窓の外、戦闘が行われている場所に向けて口を開いた。
「心配するな。あいつなら大丈夫なはずだ」



「アームブラスター、発射!」
 ライファーのアームブラスターが二体目に向けて放たれる。
 だが、敵は完全に胴体部を捉えた筈の一撃を体をいくつもの球体に分裂させることで回避した。
「野郎、分裂しやがった」
「伊達や酔狂で体を球体で構成しているわけではないということですね。敵球体群、エネルギー反応増大。こちらに対してビーム攻撃を仕掛けてくるつもりのようです」
 希美の言ったとおり、分裂した球体一つ一つがそれぞれライファーに向けてビームを放ってきた。
「ちっ、一つ一つ潰してる余裕はないか……」
 アームブラスターで一体ずつ落とすのはリスクが大きいと判断し、頼斗は別の武装を使用することにした。
「ラピッドフィンガーショット!」
 頼斗のかけ声と共に、収納されていた右拳が再び姿を現す。
 そして両手の指先に内蔵された機関砲が球体群に向かって火を噴いた。
 威力はアームブラスターに比べて数段劣るものの、広範囲の敵に対応するには有効な武装である。
 無数に降りかかる銃弾の嵐を受け、球体群が一つ、また一つと撃墜されていく。
 と、希美がライファーに向かって急接近するエネルギー反応を感知した。
「左から攻撃が来ます! 回避して下さい!」
「何っ!?」
 ライファーが攻撃を中止して回避運動を取る。直後、先程までライファーのいた地点を高出力のビームが通過していく。
 ビームの放たれた方に目を向けるライファー。そこには、今までのものよりも二回り程巨大な黒い球体人形が存在していた。
「新手か!」
「妙ですね。データでは飛来した物体に大きさの差異はなかったはずなのに……」
 希美のその疑問の答えは、目の前で敵が身をもって解答してくれた。
 今まで戦っていた球体の残り、そして残るもう一体の人形が分裂し新たに現れた大型の人形に結合したからだ。
「一体一体じゃ勝てないから合体か。どこも考えることは同じなんだな」
「解析の結果、あの敵を構成している球体は今までのものの約八倍と測定されました。恐らく地上に降りた機体の全てが結合していると推測されます」
「つまりアレを片づければ万事解決ってわけか。丁度良い」
 頼斗は右腕を敵に向ける。

283:電光石火ゼノライファー ◆.dMD1axI32
09/06/27 10:28:36 Asdskexy
「アームブラスター!」
 ライファーの右腕からビームが放たれ、人形の左肩に直撃して爆発が起きる。
 だが、人形に動じる様子は全くない。それどころか地面に転がっていた球体の残骸が再び左肩に集結し、破損部が即座に復元されてしまう。
「効いてないのか!」
「確かに相手の肩部は破損していました。敵の構造から考えて、心臓部を破壊しない限り球体を再結合して破損部を復元できるのだと思われます」
 希美がコンソールを操作しながら口を紡ぐ。
「よし、なら俺がもう一回攻撃するからエネルギーの流を調べて心臓部の位置を特定してくれ」
「了解です」
 再びアームバスターを発射するライファー。それに対して、敵は頭部の球体から放つビームで対抗してきた。
 ライファーと大型人形の丁度中間辺りの空間で二つのビームが直撃する。同時に辺り一面がまばゆい光に包まれた。
「野郎、味な真似してくれるじゃねえか」
 左手で光を遮断しながら、頼斗は悪態をつく。
「合体した分、ビームに使用できるエネルギーが増えたのでしょうね。出力はアームブラスターとほぼ互角でした」
「そりゃ、やっかいだな……」
 と、ライファーのセンサーがエネルギーの反応をキャッチした。
「攻撃、来ます!」
 希美の言葉を受けて頼斗はすぐにその場から離れた。それと同時に、ビームが今までライファーのいた場所に向けて放たれる。
「にゃろっ!」
 すかさずそこにアームブラスターによる攻撃を加える。狙いは頭部の球体、ここを潰せば復元するまでビーム攻撃は行えないだろうと考えたからだ。
 そして狙い通り頭部に命中、爆発が起きる。
「よっしゃ! これで少しの間攻撃は出来ないだろ」
 一気に大型人形との距離を詰めようとする頼斗。
 それを希美の叫び声が阻んだ。
「敵の両腕にエネルギー反応!」
「っ!?」
 直後、人形の両腕から放たれたビームを紙一重でかわす。
「危ねぇ……そういやついさっきまで分離してビーム撃ってたんだよなあいつ」
 額の汗を拭う頼斗。そんな動きまでライファーは忠実に再現する。
「敵機、頭部の復元を終えました」
「心臓部は?」
「ビーム攻撃の際のエネルギーの流れと合わせてほぼ特定できました。やはりと言っては何ですが、胴体の中央部です」
「よし、だったら隙を突いてアームブラスターを叩き込んでやるぜ」
 頼斗の言葉に希美が首を横に振る。
「無駄です。アームブラスターの火力では心臓部まで攻撃は届きません」
「だったら……」
「はい、ブラストナックルファイヤーです」

284:電光石火ゼノライファー ◆.dMD1axI32
09/06/27 10:29:25 Asdskexy
 ブラストナックルファイヤー。それはエネルギーを炎の塊にに変換し敵にぶつけるという、サイファーの武装中最大の火力を誇った武装である。
 頼斗はその必殺武器を使用するべく、右腕を腰に据えた。
「ナックル、エネルギーチャージ!」
 音声入力を受け、腰に据えられたライファーの右腕にエネルギーが収束し始める。
 無論そんな隙を見逃すはずもなく、大型人形がライファーに向かってビームを放ってきた。
 それに対して、ライファーは左腕を正面に突き出す。
「サークルプロテクション!」
 瞬間、ライファーの左腕から円形の防御フィールドが出現、ライファーの正面を覆うように展開された。
 そしてビームがサークルプロテクションに接触し、頼斗の左腕に衝撃が直に伝わってくる。
「グッ……エネルギー充填率は!?」
「97……98……99……行けます!」
 その言葉を受け、敵の攻撃が止むと同時に頼斗は機体を急上昇させる。
 そして人形を見下ろせる位置で静止すると、右腕を天に向かって突き上げた。
「右腕アーマー、展開!」
 頼斗の言葉を受け、突き上げられたライファーの右腕装甲の一部がスライド展開する。そして、スライドした装甲の隙間から炎が吹き出す……と頼斗と希美は疑いもなく思っていた。
 だが、装甲の隙間からは炎など微塵も噴き出さず、その代わりに溢れんばかりの電流が流れ出始めた。
「なっ……!?」
「何ですか……これは……」
 予想外の事態に戸惑う二人。機体の故障かとも思ったが、右腕のリンクは正常に行われている上、頼斗の右腕は特に痛みも感じていない。
 と、突然モニターに『BLAST KNUCKLE SPARK』の文字が浮かぶ。
「ブラストナックルスパーク? こんな武装、取り付けた記憶は……?」
 戸惑う希美を余所に頼斗は天に突き上げられ、電撃を纏ったライファーの右腕を一度見て、アバウトに結論を出した。
「ま、どの道炎だろうが電撃だろうが結局ぶちかますことには変わりないか。行くぜぇぇぇっ、ブラストナックル、スパァァァァァクッ!!」
 頼斗は天を向いていた拳を人形に向けて突き出す。
 同時に、ライファーの右腕から凄まじい勢いの電撃が放たれた。
 自らに向けて放たれたブラストナックルスパークに、大型人形は頭部と両腕からビームを放って対抗しようとする。だが、その攻撃は電撃の奔流に触れた途端、あっさりと飲み込まれ消え失せてしまう。
 そして電撃の矢は見事に人形の胴体を捉え、一瞬にして人形の腹に大きな風穴が形成された。
 一瞬の静寂の後、人形は大爆発を起こし、黒煙が周囲に広がっていく。
「やったのか?」
 間違いなく倒したのだと確認するまで気を抜かず、頼斗は身構えながらそう尋ねる。
「敵機の反応、完全に消失しました。撃破したと考えて間違いないです」
 希美がはっきりとそう言いきった所で、頼斗はようやく肩の力を抜いた。
「ふぅ、どうにかこうにか片づいたな」
「お疲れ様でした」
「ああ……」
 短くそれだけ言葉を交わすと、二人とも何を話すべきか分からず顔を見合わせたまま黙り込んでしまう。
 コクピット内に微妙に気まずい空気が流れ始め、そんな空気に耐えられなくなった頼斗がとりあえず口を開いた。
「……そういやさっきの電撃の事、お前も知らなかったんだよな?」
「えっ? はい、これっぽっちも知りませんでした。……よくよく考えてみれば開発仲間の私に内緒で変な武装を追加しているなんて、ちょっと許せませんよね」
 フフフフフと、とても良い笑顔を浮かべる希美。それは彼女を知っているものが見たらすぐさま全速力で逃げ出すだろうと思わせる程の、とっても良い笑顔だった。
 頼斗は心の中で顔も知らないメカニックの皆さんに合掌を送る。
 何となく頼斗の考えていることが分かったのか、希美は小さく微笑んだ。
 が、すぐに人形が爆発した地点に目を移し、今度は険しい顔で何事かを考え始める。
(それにしても、思っていた以上に簡単に勝つことが出来た。人工物であるのは確実として、送り主が私たちの戦力を見誤っていたんでしょうか? それとも試されていた? こちらの戦力を……)

285:電光石火ゼノライファー ◆.dMD1axI32
09/06/27 10:30:19 Asdskexy
 戦闘の終了と同時刻、戦闘の起きた場所から遠く離れたとある町。そこに、黒人形との戦闘を終え空中に佇むライファーに向けて拍手を送る壮年の男がいた。
 黒い紳士服で身を包んだその男は、常人では決して見ることができない筈の距離から今の戦闘を余すところなく観察していたのだ。
 男の不可思議な点はそれだけではない。彼は建設中のビルの天辺に、まるで蝙蝠のように逆向きに立っているのである。
「ブラボー、流石に殲滅プログラムの第一段階を退けただけのことはある。中々良い戦闘兵器じゃないか」
 男は懐からシガレットケースを取り出し、煙草のようなものを一本口にくわえる。
 そして左手の人差し指からまるでライターのように火を灯し、煙草に火をつけた。
「……でも、残念だったね。僕が来てしまった以上君たちには滅亡という未来しか残されていないんだ」
 男はスーツの襟元を正す。と、それまで磁石のように鉄骨に吸い付いていた足が唐突に離れ、男は重力に従って地面に落下を始めた。
 だが、地面に激突する寸前に男は足を下に向け、何事もなかったかのように地面に着地する。
 これまた不可思議なことに、周囲の人間で男の今の行動に気が付いた者は誰一人として存在しなかった。
「さてと、仕事の前に少し町を歩いてみようかな。何か僕の琴線に触れるものが有るかも知れないし」
 男は小さく微笑み、人混みに紛れて消えていった。



『電光石火ゼノライファー』――To be continued

286:ゼノライファーの中の人 ◆.dMD1axI32
09/06/27 10:35:49 Asdskexy
今回は以上です。
戦闘シーンって難しい……
もうすぐゼノライファーには合体出来そうです

スパロボ企画の方ですが本編の方でゼノライファーを出せるまでは参戦は控えさせて貰います

287:創る名無しに見る名無し
09/06/27 10:52:09 /AJMSJLo
待った待った!
>>274の「生身の人間」と「大型の機影」ってどっちがどう話に関わってるのか俺には判断つかないぞ
これだけなら何かの伏線かミスにしか見えない

>>286
おお内蔵兵器がいっぱいだー!
けっこうな激戦っぽいのに「結構簡単」なのは合体を残しているからか
そして一人称が「僕」の壮年男性ってなんか素敵・・・!
来たついでに>>4も修正してくれると嬉しいんだけど

288:創る名無しに見る名無し
09/06/27 11:17:07 /AJMSJLo
ちょ、今気づいたのだがwikiがちょっと更新されている!
超乙です!

289:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/27 11:31:44 z/+6sUdJ
>>286
お久しぶりですw
ひゃっほう! バリバリスーパーロボットしてるぜぇ!!
ライファーでこれなら、ゼノライファーは一体……。

さて、自分もそろそろ----今日明日には投下できそうです。上手くいけば、ですが。

290:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/27 13:59:26 NW6aaBLd
まさか規制に巻き込まれるとは……orz一応話は出来ているので、規制が解け次第投下できると思います
>>256
オォウクロガネ…
これから田所はどうするのか、ロボヶ丘市はどうなってしまうのか、wktkしますな
>>273
初投稿乙です
確かに情報がまだ少ないですね。それだけに先の展開を早く知りたい所。
続きを待っています
>>286
おぉ、お久しぶりです!
相変わらずの熱い展開で良いっすなー。最後に出てきた男の正体は如何に

こう良い作品が投下されると、早く書きたい衝動がw規制恨むで

291:創る名無しに見る名無し
09/06/28 03:37:21 gaQr2snb
おのれ規制

292:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ作者 ◆46YdzwwxxU
09/06/28 06:03:20 gaQr2snb
失礼します
当方、無法地帯となったロボヶ丘市で悪行の限りを尽くすロボット犯罪者の設定(特にロボットの名称)を募集中・・・
雑魚メカなので活躍は約束できませんが、第6話(後半)、最終章に掛けて複数採用します。
あなたも自慢のロボットで、腐りきったロボヶ丘を鮮やかに駆け抜けてみませんか?

規定/
機体名のみ必須。大雑把な外見やスペック、パイロット設定もあれば助かりますが、それは自由ということで。
いずれもワルサシンジケートの製品ということで、「ドルンドメオン」のような完全造語のネーミングだけ避けていただければ、あとは自由です。
犯罪者が個人的に愛称をつけていたりするのもありです。
(事情によって設定を多少いじったり、部分的に採用したりといったこともあるかもしれませんが、ご容赦ください)

期限/
未定。また報告いたします。だいたい1週間くらいになるものと思います。

ご応募お待ちしております!

293: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/28 14:50:42 NTkQosxW
ショードクダー。
火炎放射器を装備した、頭がモヒカン形状の雑魚ロボット。
火炎放射器をあっさり奪われて火炎放射でやられるとディモールトベネ。
「汚物は消毒だ~!!」

294:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/28 21:38:29 Pcy+/bMn
規制中ではありますが、完成した作品をこのままにしておくはどうもムズムズするので投下します
かなり長いので前編と後編で分けて投下します。

デスク上の受話器を置き、シュワルツは椅子に腰を下ろした。両手を組み、思考に耽る。
正直驚いていた。ライトが死んだ事にではない。所詮雇った用心棒の命など取るに足らない物。
シュワルツが驚いているのは、黒騎士達が全滅したという事実にだ。村人達に、黒騎士に対して抗える手段は持っていない。
持っていない……筈だ。黒騎士の防御力は伊達ではない。粗悪な短機関銃程度では傷など付く訳が無い。

だがレフトの報告によると、黒騎士達は例の「自動人形」によって、原形を残さないほど破壊されたらしい。
そうだ……「自動人形」だ。レフトは興奮した口調でそう言った。黒騎士達が、「自動人形」によって完膚無きほどの叩きのめされたと。
正直信じられない。黒騎士を圧倒する程の実力のある「自動人形」がこの村に居るなんて。それもレフトによると軍の紋章も無かったようだ。

つまり、その「自動人形」は少なくとも、我々の味方では無いという事だ。そして、恐るべき敵であるという事。
当り前の事実だが、今のシュワルツには不愉快極まりない。
まさか村人達が「自動人形」を発掘したのだろうか。いや、それなら村を徘徊している黒騎士が事前に察知し、知らせてくるはずだ。
と、シュワルツの思考を断ち切る様にもう一度受話器が鳴った。シュワルツは舌を打って、受話器を取った。どうやら外部からの様だ。

295:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/28 21:39:10 Pcy+/bMn
「私です。計画の進行はいかがですかな、ミスターシュワルツ」
「特に不調は無い。だが聞きたい事がある」
「何です? 私で良ければお答えしますよ。無論答えられる範 疇でね」
「ダルナスの起動を早めたい。村人達は既に立ち去ったと思うのでね。まぁ……立ち去ろうが残ろうが構わないのだが」
「ん? あぁ、構いませんよ。ただ、絶対に傷を付けないでくださいね。もしもの場合……御存知かと思いますが」
「分かっている。事が済み次第連絡する。切るぞ」
「それではより良い返事を期待しております。世界に美しき花を……」

「下衆が……」
シュワルツは受話器を叩きつける様に戻し、手を組みなおした。しばし熟考すると、ゆっくりと顔を上げた。眼鏡の奥の目が鈍く不気味に光る。
受話器に手を伸ばし、ボタンを押す。

「レフト、お前に任務を課す。好きなだけ黒騎士を使っても構わん。その自動人形とやらを捕らえてこい。
 
 どんな手を、使ってでもな」

296:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/28 21:40:14 Pcy+/bMn
<6,反旗(前篇)>

この空気は一言でいえば、悲痛だ。大声を上げて泣く者、声を潜めすすり泣く者、ただただ呆然とする者etc。皆に共通しているのは一つ。
例え微力だったとしても、村人達の心の支えとなっていた村長、ロッファが無残な死体となって帰ってきた事に対して、各々が感情を爆発させているのだ。
昨日、トニーがシュワルツ達と一悶着を起こした酒場に、村人達が集まっていた。召集を掛けたのは怪我を負い、頭に包帯を巻いたギーシュだ。
ギーシュが呼んだ村人達の中には、家族を持つ者や、妻帯者もいる。皆、ギーシュからの連絡に戸惑った。こんな夜に全員酒場に集まれとは何事かと。

ギーシュは伝えた。ロッファが殺されたと。証拠はという者には、丁重に包んだロッファの遺体を見せて。
そして、村人達の中にはトニーもいる。未だに泣きやまぬクレフと、事態を察し気を落としたメルティを連れて。ショウイチはというと。

「……僕は行かない方がいいですよね」
落ち着いたクレフから事情を聴いたトニーに、ショウイチは怪訝な表情でそう聞いた。トニーは悩んだ。
もしもショウイチを連れていけば、恐らく槍玉に上げられる事だろう。部外者を村の事情に巻き込むなと。
しかしそれ以上に危惧すべき事がある。それはだ。

ショウイチはタウエルンという名の自動人形を連れている事だ。これがトニーの頭を悩ましている理由である。
トニー自身は完全に払拭してはいないものの、タウエルン、および自動人形に嫌悪感を抱く事は少なくなった。だが、今の村人達はどうだ。
ロッファを殺された事によって、自動人形に対していつも以上に憎悪を滾らせている筈だ。もしもショウイチが自動人形を所持してると知ったら……。

297:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/28 21:41:39 Pcy+/bMn
「……すまないね、ショウイチ君。多分すぐ戻るから、自由にくつろいでてくれ」
トニーはショウイチにそう伝え、起床したメルティとクレフを連れて、酒場へと向かった。ショウイチはひらひらと手を振って見送った。
ドアが閉まり、ショウイチは一呼吸置くと、踵を返して窓の方へと近づいた。

「どう思う、タウ。想像以上に根が深そうだぞ」
何処からともなく、人型状態のタウエルンが空中で一回転して地上に降りた。戦闘時に見せたバッファローモードは解除されている。
「どうするもこうするも……一番悪い奴を倒すんだろう。ショウイチが何時もやってる事じゃないか」
呆れたような口調でそう言うタウエルンに、ショウイチはワザとらしくため息を吐いた。

「そうじゃないよ。その一番悪い奴がトンデモないド外道でな。村の人達の神経をこれ以上無いほど逆撫でしたみたいなんだ。
 おそらく……黒騎士、いや、自動人形をこれ以上無いほどに憎んでると思う。つまりだ、皆まで言わなくても分かるよな。
 俺だって早く行動したいのは山々なんだけどな、もし下手に動いてトニーさんやメルティさんが責められでもしたら、やり切れないだろ?」
「……ごめん、無神経だった。確かに僕達を迎え入れてくれたトニーさん達に迷惑は掛けられないね……」

しょんぼりとヘッドパーツを項垂れるタウエルンに、ショウイチは髪を掻きあげるとニコッと笑った。
「お前は優しいな、タウ。しかし困った。いつもみたいに俺達だけなら直に終わるだがなぁ」
その時だ。タウエルンが突如、素早い動きで空に体を向けた。ショウイチがその動きに合わせるように、目線を空に向ける。

「ショウイチ……」
「タウ、俺に考えがある。上手くいけば村人達と協力できるかもしれない。その前に」

298:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/28 21:42:21 Pcy+/bMn
瞬間、ショウイチの頬を斬る様に巨大な槍が、窓の隣の壁を貫いた。綺麗に開いた穴にミシミシ亀裂が走り、数秒後にはあっという間に壁が崩れ去る。
ショウイチの目前には、すでに武器を構え戦闘態勢を取った黒騎士達が待ち構えている。それもかなりの数だ。
良く良く観察するが、さっきの大男(ライト)の様に黒騎士に対し命令を行う人間はいない。まずい事が起きそうだ。それも厄介な。
まぁ、後々それは何とかするとして、今は目の前の敵、だ。

「タウ、のんびりは戦ってられんぞ。ナノマシンを使う」
背後を向いたまま、タウエルンはバッファローモードへと移行し、ショウイチに返答した。
「分かった。すぐに終わらせよう」

一通り時間が経ち、ギーシュが村人達を座らせる。ギーシュは皆に話が行き届くように、中央に座る。皆、不安な表情を浮かべている。
張り詰めた空気の中、ギーシュが静かに口火を切った。
「突然召集を掛けてすまなかった。今回皆を呼んだのは他でもない」

「今見て貰ったように、俺達の支えとなってくれた村長が亡くなった。何故か? 遂にシュワルツが本性を露わにしたからだ。
 俺は今日、村長の伝言で奥さんと共に、村長の帰りを待った。だが村長は帰ってこなかった。代わりに奴らが……黒騎士が今の村長を連れてきた。
 奴らは村長を殺した事で、完全に俺達の村を掌握したと言ったよ。そして俺もこのざまだ。奥さんは村長が死んだ事で完全に寝込んじまった」

一気にまくし立てた為言葉が詰まる。慌ててトニーがギーシュに水を差しだした。ギーシュはそれをグイッと飲み干すと、言葉を続けた。

「すまない、上手く話が纏まらなくて、今でも少し混乱してるんだ。……でだ。奴らは村長の遺体を届けに来ただけじゃない。もう一つ。
 明日、この村で得体の知れない実験をするらしい。その実験の為に、俺達にこの村から出ていけと言った」

299:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/28 21:43:04 Pcy+/bMn
ギーシュの言葉にザワザワと、村人達が反応を示す。無論トニー達もだ。
「出ていけってそんな……まるで俺達が邪魔みたいじゃないか」
トニーの憮然とした言葉に、泣きすぎて呼吸が整わないクレフの背中を擦りながら、メルティが答える。
「邪魔みたいじゃなくて邪魔なんでしょ。すっごく悔しいけど……」

ギーシュがゴホンと咳払いをして、村人達を静かにさせる。再び話しを続ける。
「信じられないだろ? だがこれだけ非道な行為をされたんだ。奴らは冗談でも何でも無く、本気で俺達を追い出そうと考えていると、俺は確信している。
 正直悔しいって感情じゃ収まらないぜ。突然この村を乗っ取られた揚句、俺達が出ていく事になるとはな。……ここから本題だ」

一方、黒騎士達の襲来により、修羅場と化したトニー宅。
黒騎士達はタウエルンにジリジリと近寄る。タウエルンはというと、背中を向けたまま動く気配が無い。
ショウイチがタウエルンに触れると、収納された半透明のタッチパネルが、ショウイチの前に出てきた。
パネルを見、ショウイチは素早い動作でタッチパネルを弾き、ENTERと刻まれたボタンを押す。

パネルが閉じ、タウエルンのデュアルアイが赤く発光する。背後で、黒騎士達が意を決し、一斉に飛びかかってきた。
次の瞬間、タウエルンの排気口から白い煙が放出される。
その煙は襲いかかってきた黒騎士達と、その後ろで待ち構える黒騎士を巻き込んで膨大に膨れ上がった。

300:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/28 21:43:46 Pcy+/bMn
「悪いが時間が無いのでな……苦痛は無い」
ショウイチが周囲の黒騎士達に、憐みを込める口調でそう言った。
その煙に巻かれた黒騎士達の動きが次第に硬直し始める。すると、黒騎士達の外部装甲が少しずつ剥がされていく。

剥がされるというより、溶けていく様だ。その内、その攻撃――ナノマシンによる浸食はは黒騎士達の内部まで達する。
黒騎士達のヘッドパーツが地面に落ち、そのまま水たまりが地面に吸収されるように消えていく。
他の機体も続く様に崩れ落ちていく。やがて、白い煙が収まっていき、曇っている周囲が晴れていく。

そこには、群がっていた黒騎士達の姿は既に無かった。奇妙な静寂が漂う。
タウエルンがバッファローモードから通常の状態に移行する。ショウイチはタウエルンの背中に飛び乗った。

「タウ、黒騎士達が何処に行ったか分かるか?」
「何となく! しっかり掴まっててよ、ショウイチ!」

ブースターを吹かし、タウエルンが飛翔する。ふと、ショウイチはタウエルンに声を掛ける。
「タウ、粒子残量は大丈夫か?」
「たぶんまだ持つと思う……。けど、太陽熱のエネルギーが少し危ないかもしれない」
「……まぁ、何とかなるか」

続く

投下終了です。尻切れとんぼで申し訳ない

301: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/29 00:55:17 S1lrivF5
タウエルン強えぇー!ナノマシンが極悪過ぎる。
けど、これならOP風で思いっきり無双出来ます。

302:創る名無しに見る名無し
09/06/29 05:49:40 oHYZVw4R
ターンエーターン!
しかしエネルギー切れでダルナス相手には苦戦必至?
強力だけど分かりやすい弱点があるっていうのはいいな。

303:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/29 13:25:00 lP/f214g
タウエルンは今回も絶好調でぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁる!!

圧倒的じゃないか……。
前回から物語が急激にスピードアップし始めましたね! こいつは次回も楽しみだっぜ!


久々に1スレ目を読み返したんですが、火炎車の名付け親こと1スレ目の>>995がまさか自分だったとは思わなんだ。
◆46YdzwwxxUさん、採用してくださってありがとうございます!

さてさて、今日こそ投下……できるかなぁ、できるといいなぁ

304:創る名無しに見る名無し
09/06/29 15:31:15 1Z+upu8O
>>292
ザコダ1010(せんとう)印
金魚鉢のような頭部と骨のペイントが特徴的な機体
いっちょまえにマシンガンと刀で武装している。恐ろしく弱い

>>300
乙であります
なんというエネルギー切れフラグ……
確かにタウさん燃費悪そうだもんなぁ……
ともあれ続き楽しみにしてます





所で◆gD1i1Jw3kkさんってスパロボに参加しない作品に対して割りと冷たいですよね。こういうこと言っちゃ悪いとは思いますけど

305:パラベラム! ◆1m8GVnU0JM
09/06/29 17:25:40 lP/f214g
さて、これより投下を開始しようかと思います


それにしても今回はいつになく長くなってしまった……

306:パラベラム! ◆1m8GVnU0JM
09/06/29 17:27:41 lP/f214g
 両手に持った二挺のレーザーライフルでウサギと黒騎士それぞれにピタリと狙いを付けながら、そのオートマタは言った。
<まさか、こんなに早く君が現れるとはね。リヒター……リヒター・ペネトレイター>
 猫を彷彿とさせるしなやかな蒼いボディ、男とも女ともつかない中性的な声。長い尻尾が落ち着き無く揺れる。

パラベラム!
Episode 06:----それでは諸君、慎ましくいこう。

<……誰だ、貴様は>
 唸るような低い声で、黒騎士。戸惑いを隠し切れていないのか、声が少し震えている。
<へぇ、メモリーを消したのか。……あるいは、消されたか。……まあいいや。私の名前はフェーレス。以後お見知り置きを>
 クスッ。小馬鹿にしたような笑いを漏らす、蒼い猫。相変わらずその長い砲身はピクリとも動かない。
<何の事だ……!>
<だから壊れかけのレディオですか、あなたは。ほら、落ち着いて深呼吸してください。ひっ、ひっ、ふー>
 ……ラマーズ法?
 遥が首を傾げたその時だ。
「お嬢さん」
 リヒトが遥を呼び止めたのは。


 ♪  ♪  ♪


<面白い子だね、キミ。やられるかもしれないのにそういう事が言えるなんて>
<そんなに褒めないでください、惚れてしまいます>
 ウサギが演技がかった動作で頬に手を当てる。
「いやお前、ありゃ馬鹿にされてんだ」
<ですよねー。……さてと、ひとつ質問してもいいですよね>
 断定口調。ウサギはどうにも強引だった。
<許可しよう>
 同じく余裕たっぷりのフェーレス。
<そこにいるのは、誰ですか……!>
<嘘だ! 反応なんて無かっ>
 しかしその余裕はすぐに消滅した。振り返れどもそこには何も無い、誰もいない。
<しまった!?>
 気付いた時には、もう遅い。
「よし、行け! ゴー!」
「は、はいっ! GO Ahead!」
 すぐさま指示を飛ばす。
<イエス・マイマスター>
「ハーシェン、お前も!」
<合点承知の助!>
 黒騎士と白ウサギの二機が同時に飛び掛かった。
<かかったなアホが!>
 狙いは長い、その砲身。がっしとつかんで、ブン投げる。くるりくるりとレーザー砲が宙を舞った。

307:パラベラム! ◆1m8GVnU0JM
09/06/29 17:28:51 lP/f214g
<やったね……!>
 飛びすさり、距離を離す。その声音に、先程の余裕は無し。
<……形勢逆転だ>
<でも、まだだ、まだだよ。レーザーを取られたぐらいじゃ>
 フェーレスのマニピュレーターから、五本の光刃が飛び出した。
<私に勝ったとは言えない!>
 鋭い眼光、揺れる尻尾。四脚で立つその姿、それはまさに猫そのもの。
<……所謂本気モードですか。まあ、勝たなくてもいいんですけどね>
 幼い声で嘲笑うウサギ。
<……まさか!>
「黒騎士さん、ウサギさん、下がって!」
<イエス、マイマスター>
<では、ごきげんよう>
 遥が、大きく振りかぶって、円筒状の物体を----
「とーんーでーけぇぇぇぇぇぇ!!」
 投擲。結構な速度で弧を描いて飛んでいく、その物体は本日二つ目の白燐超高熱(中略)発煙化学爆弾。またの名を、煙幕という。
<閉所でこんな物を!?>
「駄目押しだ、こいつも持っていけ!」
 ロッドを地面に突き立てて、ライフルを召喚。フェーレスがスモークグレネードに気を取られているところに特製のペイント弾を叩き込む。
<ああ! 目が! 目が!>
 命中。カメラ・アイが塗料によって朱に染まる。それと同時に白燐(中略)焼夷弾頭型(後略)が破裂、部屋中に煙が広がった。
「よし、逃げるぞヘーシェン! お嬢さんも!」
 ライフルを捨てながらリヒトが促す。ライフルは光の粒子となって消えた。
<言われなくても脱兎の如く。光の速さでスタコラサッサですよ>
「はい! 行こう、黒騎士さん!」
<イエス、マイマスター>
 走り出す、各々マスターを背に乗せて。
 フェーレスがこちらを追い掛けてくる気配はない。

 ミッション、コンプリート。


 ♪  ♪  ♪


 走り続けて数十分、流石にもう大丈夫だろうと街道に出て歩を休める。
「落ち着いたところで、改めて自己紹介タイムといこうか。俺はリヒト・エンフィールド。見ての通り、通りすがりの神子様だ」
 近くにあった手頃な岩に腰掛け、腕を組みながら、リヒト。
<とんだ不良神子の穀潰しですけどね>
「お前は黙ってろ。こいつはヘーシェン、俺のパートナーだ」
<ヴァイス・ヘーシェンです。……謝って済む事ではないかもしれませんが、先程は壮大な勘違い、失礼いたしました>
 ゆっくりと、丁寧に頭を下げる。
「いえ、こちらこそありがとうございました。……もし黒騎士さんとあなたがたの助けが無かったら私きっと殺されてました。あ、私 一条 遥 といいます」
「いや、当然の事をしたまでさ、遥ちゃん」
 爽やかな笑みでサムズアップ。
<あ、剃り残し>

308:パラベラム! ◆1m8GVnU0JM
09/06/29 17:32:26 lP/f214g
 ぶちっ。ヘーシェンの、見かけとは裏腹に細やかな作業を可能とするマニピュレータが、リヒトの剃り残しを根本から引っこ抜いた。
「へあ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!」
 爽やかスマイル台無し。服が汚れるのも構わず、地面をのたうちまわる。
「何すんだテメー!!」
 しかし復活は早かった。無駄の無い動作で起き上がり、
「ここまでカッコ良くキメてたのに台無しじゃねーか!」
 びしりとヘーシェンを指差す。
<所詮は三枚目という事ですよ>
「せめて二枚目半と言え!」
「ぷっ……ふふっ」
 目の前で進行する台本の無いコントに、遥が思わず噴き出した。
「今、誰か俺を笑ったか?」
<あげゃげゃげゃげゃげゃ!!>
「笑うなぁぁぁ!!」
 手近に転がっていた小石をヘーシェンに向かって全力で投擲。カチンと虚しい音を立ててそれは弾かれる。余りにも情けない光景に、遥は笑いを隠し切れない。
「ふふっ。いつもこんな感じなんですか?」
「いんや」
<ここにさらに五人加わります>
「五人も!」
 遥が驚きの声を上げる。それだけの人数がいたら、どれだけ賑やかな事だろう。二人でこれなのだ、きっと毎日が楽しいに違いない。
「すっごく楽しそうですね。いいなぁ」
「君にもいるじゃないか、相棒が」
 リヒトの向ける視線の先、おいてけぼりを食らっていたリヒターがぴくりと反応した。
<何かご用でしょうか、マスター>
 それはまるで「待て」を命じられていた犬のようで。
「あ、今は」
<現在自己紹介タイム、あなたのターンです>
 ……間が悪い。
<了解いたしました。私はM-12>
「型式番号ジャネーヨ、名前聞イテンダヨ」
 青筋を立ててメンチを切るリヒト。何故かひどく片言だ。
<名前はまだ>
「リヒター・ペネトレイター……だよね?」
 名前はまだ無い、そう言おうとした黒騎士を遮る遥。
<……イエス・マイマスター>
 黒騎士はそれを静かに肯定した。


 ♪  ♪  ♪


「リヒター……ウーン、いい名前じゃないか。俺の名前と似てるところとか特に」
<あまり縁起のいい名前ではありませんね、改名を推奨します。もっとカッコイイ名前にしましょう、ネオブラックドラゴンとか>
「待てやコラ」
 そんなやり取りを遠い目で見ていた黒騎士改めリヒター、指の触覚センサーに反応を確認。頭部を巡らせると、
「あの、リヒターさん」
 三つ編みの少女がこちらを見上げていた。
<リヒターで構いません。……何でしょうか、マスター>
「じゃあ、リヒター。色々聞きたい事があるけれど、今はひとつだけ質問します」
<はい>
「私には神子としての素質はありません。このまま私と契約を結んでも、待っているのは穏やかな死です。……それでもいいの?」

309:パラベラム! ◆1m8GVnU0JM
09/06/29 17:33:55 lP/f214g
<私の目的はマスター、あなたの護衛です。それにお言葉ですが、マナの使役は不可能ではありません>
 リヒターは言った。まだ芽吹く前の種子であるというだけだ、と。
「その根拠は?」
<“賢者の石”です>
「賢者の石……」
 そういえば。遥は細身の襲撃者が言っていた事を思い出す。

 ----ソレサエアレバ、忌マ忌マシイ神子共ニ尻尾ヲ振ル必要モ無イ----

<賢者の石はマナを無限に生み出し続ける永久機関だという情報があります。真偽は定かではありませんが、それが本当だとしたら>
 本来、神子がマナを使役する時は各地に散らばる“管理者”の端末装置にアクセス、許可を貰ってマナを提供してもらう必要がある。しかし自分でマナを作り出せるのなら、許可を貰う必要は無い。才能だって、必要無い。
「でもそれってズルなんじゃ」
<はい。それに管理者にアクセスできない以上、本来得られる管理者からのバックアップを得られない、一度に大量のマナの供給ができない等の様々な制限が科せらせます。しかしマナの使役に慣れれば、そのうち管理者へのアクセスも可能になるでしょう>
「……そういうものなの?」
<はい、データによるとそういうものだそうです>
「……はあ、さいですか」
 なーんか胡散臭い。
<ただ、いくつか問題があります。ひとつは、アクセスが可能になるまで----つまり神子になるまで時間がかかる事。もうひとつは、インストラクターが必須だという事です>
「ははぁ、インストラクター……」
 つまり誰かに弟子入りしなければならないという事だ。しかし、
「いるかなぁ、そんな人……」
<お手数をおかけします>
 リヒター、謝罪。平淡だがどこか沈んだ声は、まるで叱られた犬のようだった。
「あ、いいのいいの。いつまたああいう類の奴らが“賢者の石”とかいうのを狙って襲い掛かってくるかわからないし」
 ----前から欲しかった相棒もできたしね。と、胸中で付け加える。
「でも、インストラクターなんてどこに……あ」
「君達、何をコソコソしとるんだね? ウン?」
<えっちなほんですか? 先生にも見せなさい>
 白ウサギとそのマスター、来襲。白ウサギはいつの間にかその姿を金属性のロッドに変えていたが。
 そこで遥は気付いたのだ。
 そういえば、彼……リヒトは神子じゃないか、と。
 いっその事彼に弟子入りしてしまうのもアリかもしれない。が、向こうがOKを出してくれるかはわからない。……そんな事を考えていると、予想外のチャンスが舞い降りてきた。
「そういえば遥ちゃん、君はこれからどうするんだ? 少なくとも、元の生活には戻れないとは思うけれど……。リヒターの事もあるし、なんならウチに来るかい?」
 今度こそ爽やかスマイル成功。もう剃り残しは抜かせない、触らせない。
<うわ、こんな可愛い娘を身ぐるみ剥いで売りに出す気ですか。最悪ですね>
<その場合は実力で排除します>
<なら安心ですね、その時は私も協力します>
<感謝します、ヴァイス・ヘーシェン>
「うっせーぞ外野。……で、どうかな。きっと俺の仲間達も歓迎してくれると思うんだよ」
 遥に向かって右手を差し出す。
<今なら漏れなく不良神子の自堕落な本性も付いてきますよ。夜な夜な部屋に入って来て破廉恥な事されます>
<その場合は実力で排除します>
<なら安心ですね、その時は私も協力します>
<感謝します、ヴァイス・ヘーシェン>
「お前ら海に沈めるぞコラ。……さて、気を取り直して。どうする?」
 聞かれずとも、遥の答えは決まっている。
「よろしくお願いします、リヒト・エンフィールドさん」
 その手を握り、朗らかに笑う。心中で「やった」と小躍りしながら。
「ああ、こちらこそよろしく」
 リヒトも同じく笑みを返した。心中で「計画通り」とニヤつきながら。

310:パラベラム! ◆1m8GVnU0JM
09/06/29 17:35:07 lP/f214g


 ♪  ♪  ♪


<ああ、くそっ!>
 カメラに付着した塗料を洗浄液とワイパーが自動で洗い流す。カメラは回復したが、視界は真っ白だ。
<しかし私に勝ったと思ったら大間違いだぞ!>
 ----視界が晴れたと同時に切り刻んでやる。
 低く構える、視界が晴れる。
 が、
<----あれ?>
 目の前には、誰もいない、何もない。という事は、つまり、
<に、逃げた! 私から! 私から逃げた! 逃げられた!>
 悔しさにわなわなと震える。フェーレスはドジなくせにプライドが高いのだ。
<はっ。あんな嘘に引っ掛かるなんて、とんだおバカさんね>
 頭上から響く、人を小馬鹿にしたような笑い声。その声は高くて、幼い。
<だ、黙れシュヴァルツ!>
<黙るのはそっち! これはあんたのミスでしょうが!>
<や、奴が……機械人形殺しが来たのかと思ったんだ! 機械人形殺しは貴様だって怖いだろう! 貴様だって!>
<近付かれる前に気付けるもん、あたしなら。それに、結局何もいなくて、目標には逃げられて、戦力も失ったじゃない。これをバカと言わずして何と言うのよ?>
<ぐっ……>
 言い返せずに歯噛みする。
<……いつの間にここは動物園になったんだ>
 また新たな声。今度の声は低く、唸るような、大型の肉食獣を彷彿とさせる声だ。
<レオンは黙ってて!>
 幼い声----シュヴァルツが低音ヴォイスのレオンに噛み付いた。
<喧嘩をしとる場合ではないだろう>
 またまた新たな声響く。次の声は老獪さを感じさせる、老人の声。
<そうそう、過ぎた事でウジウジしてても仕方ないじゃない?>
 続いて悪戯っぽい妙齢の女性の声。
<虎徹のじーさんとムジナちゃんの言う通りだ。喧嘩はよくない>
 さらに飄々とした若人の声。
<むっ……。わかったわよ、トゥグリル>
 シュヴァルツが渋々引き下がる。その声音から、むすっとふてくされているであろうという事は想像に難くない。
 フェーレスがほっと溜息をついた。
<皆、いるようだな>
 その時響いた、キザっぽい男の声。
<遅かったな、フラガラッハ>
<私も暇ではないのでな、レオン>
 フッ、とフラガラッハがキザっぽく笑う。
<さて、フェーレス>
<あ、ああ>
 緊張で、尻尾が固まった。
<貴様のドジは今に始まった事ではないので良しとしよう。そもそも今回は顔見せだ。多少ナメられた感があるのは否めないが>
<すまない……>
<それよりも、だ!>
 声を張り上げる。
<“彼”が目覚め、賢者の石のありかのひとつが判明した。状況は新たな局面を迎えたと言えよう。……だが、まだ大規模な行動を起こすには戦力が足りない。よってしばらく諸君らには耐えてほしい。今までの通り、散発的なゲリラ活動を頼む。以上だ>
 最後に少しの間を置いて、フラガラッハは悠然とした態度でこう締め括った

<----それでは諸君、慎ましくいこう>

 地下で暗躍する、その組織の名はアンサラー。メンバーの大半が機械人形で構成された、正体不明の反動勢力である。


次回へ続くッ!

311:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/29 17:42:25 lP/f214g
 今日はここまで!

 まだ味方のレギュラーキャラが5人出ていませんが、今回で序章となる『邂逅篇』は終了です。ここまでお付き合いいただいて、ありがとうございました。
 次回から、まったりゆるゆるな(そうでもない)『神子見習い篇』が始まります、そちらのほうもお付き合いいただければ幸いです。


 しかし、けっこう書いたと思ったら、そうでもなかったですね。意外だわ……。

312:創る名無しに見る名無し
09/06/29 21:27:01 oHYZVw4R
どもっす

>>303
こちらこそありがとうございました
火炎車は名前決めてから「どうやって熱くしよう」とか考えてました
それまではあまり特殊機能は使わない方向で技を作っていたので
いい意味でふっきれたきっかけになった技でもあります

パラベラムはこれまで以上に物語が大きく動き出して期待大です
ときどき童話的?というか独特なリズムがあって私好み

313:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/30 01:44:28 91CNUjdt
>>312
自分、まさかああいう形で熱を発生させるとは思いませんでした。アイデアの勝利ですね!

そういえば、没になったという『大スプリガン』
スパロボに出すってぇのはどうでしょう。……いやまあスパロボ企画そこまで進んでませんけど。


というか今まで物語が動いてなかっただけなんですけどね! まさに今始まったばかりです、はい。
リズムに関しては、けっこう無意識のうちにああいう感じになります。幼い頃によく絵本を読んでいたせいかもしれません。

314: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/30 03:36:03 LV/t84MO
企画が進んでないなら進めればいいじゃない!
という訳で(?)OP風3、投下です。

315:スーパー創作ロボット大戦OP風3
09/06/30 03:36:54 LV/t84MO
鋼獣(メタルビースト)へ全速で迫るリベジオンの肩を蹴り、魔王ラウディッツは放たれた砲弾の如き凄まじい勢いで天高く飛び立つ。
生身の人間なら確実に死ぬ音速を超える速度で飛翔しながらも、外見は人と変わらぬ彼は苦痛を感じる所か穏やかな微笑を浮かべている。顔以外の首から下を完全に覆う黒衣が翼のように広がりはためく。
一気に懐へ入り込んだリベジオンは腰から引き抜いた大きな黒槍を鋼獣(メタルビースト)の喉元に突き刺す。機体から走る紅い閃光が軌跡となってなだれ込み、黒槍の矛先に収束していく。
矛先の空間が歪み始める。 歪みは紅の光を通し、一点の大きな光となっていく。 そうして集められた光をリベジオンは黒槍にあるトリガーを引く事で解放した。
閃光。
それは指向性を持った強大なエネルギーとなって黒槍の矛先から解放され鋼獣(メタルビースト)の巨躯を体の中から蝕む。
貯蓄した力の全てを放出するように体の中を駆け巡り、肉体を陵辱し、存在を蹂躙し、それがそこにいたという事実を消滅させていく。 そうして鋼獣(メタルビースト)は塵芥残さず消滅した。
仲間を一瞬で葬ったリベジオンを敵と見なし向き直る九体の鋼獣(メタルビースト)だが動きが遅過ぎた。既にリベジオンは別の鋼獣(メタルビースト)の体を黒槍で貫き、先程のように容易く消滅させる。
同じやり方で六体の鋼獣(メタルビースト)を滅ぼした所でリベジオンは黒槍を腰に戻す。残り二体の内一体が突撃してくる。
リベジオンは再び黒槍を取り出しもしなければ回避もせず、向かってくる鋼獣(メタルビースト)に全速飛行、凄まじい相対速度によって一気に距離を詰めると大きく広げた右手を突き出し、腕を鋼獣(メタルビースト)の体にめり込ませた。
鋼獣(メタルビースト)の弱点である胸元の装甲の奥にあるコアを掴んで引きずり出し、血管のように繋がっている十数本の配線を力尽くで無理矢理引き千切り、握り潰す。
コアを取り出され潰された鋼獣(メタルビースト)は糸が切れた人形のように停止し、地表へ落ちていく。
リベジオンの肩、膝、背が展開して各部から紅い光りが迸る。漆黒の御身に紅蓮の光を纏う機械仕掛けの悪魔。まるでそれはこの世に破滅をもたらす魔王のように見えた。
だがリベジオンは、黒峰潤也は理由はどうあれ確かに人類を救う為に戦っていた。もう一人の魔王も。
上空から降り注ぐ炎が最後の鋼獣(メタルビースト)を覆い尽くす。ラウディッツの放った大魔法である。
「地獄の炎だけでは満足してはもらえないだろうな」
もがき苦しむ鋼獣(メタルビースト)を覆い尽くす炎が氷に変わり、炎状の氷に包まれる。
「心を凍てつかせる終焉の氷結でもまだ足りない」
ラウディッツの手から放たれた雷が氷に包まれた鋼獣(メタルビースト)を撃つ。氷が砕け散り周囲に飛び散る。
「魂を打ち砕く神の怒槌(いかずち)、遠慮無く受け取りたまえ」
ラウディッツは腕を掲げ、指を鳴らす。同時に鋼獣(メタルビースト)の全身が粉々に砕け散った。
「満足して頂けたようで何よりだ」
鋼獣(メタルビースト)の全てが二人の魔王によって殲滅された。しかし、戦いはまだ終わらない。

316:スーパー創作ロボット大戦OP風3
09/06/30 03:37:51 LV/t84MO
廃墟となったビルが墓標のように林立するゴーストタウンに、身の丈五m程はある昆虫の姿をした敵が次から次へと来襲する。
魔族。
ヴァドル隊、清水静の超重装甲強化服改、黒峰潤也のリベジオンが迎撃に出る。魔王ラウディッツも。
姿形が全く異なるとはいえ同じ魔族に遠慮も情けも無く大魔法を連発し、塵へと変える。戦闘を続け、十体程滅ぼした所で、ラウデッィツは見知った姿を目撃する。
攻撃の手を止め、空中から地表のズタズタになった道路へ降り立つ。相手も同じように、静かに降り立ち対峙する。ラウディッツは自分より遥かに大きな相手を見上げる。
幾つもの節に分かれた胴体は、縦長の楕円立体。空気を弾き飛ばせそうな肉厚な二本腕には、兇悪な棘がびっしりと並ぶ。正面から見て体幹をはみ出すほどに大きい、翼とも脚ともつかぬ何かを背負っていた。
更に仰げば、太陽を食らうように、昆虫のカミキリムシを思わせる奇妙な貌がある。禍々しい重甲殻で全身を覆った、漆黒の巨体。巨大にして頑強極まる異形の体躯に、人類の修めた物理から遥かに隔絶した異能の力を宿す。
「御久し振りで御座います、ラウディッツ殿」
昆虫の姿をした異形の怪物は、彼らが見下す人間には決して行わない丁寧な口調で静かに語る。
「ドルンドメオンか、久し振りだな」
敵意の全く無い穏やかな口調でラウディッツは呟く。黒の瘴気を纏った魔族ドルンドメオンは禍々しい外見には似合わぬ丁寧な口調で続ける。
「ラウディッツ殿、お戯れはもうお止めになってはいかがですか。貴方程の御方が人族などの味方をするなど、貴方様の品位を下げるだけで御座います」
「戯れ、か」
ラウディッツは目を閉じ、小さく呟く。
「確かに、姿形が全く異なる種族とはいえ、同じ魔族同士。戦いたくない気持ちはこちらも変わらぬ。人間がどうなろうが知った事ではないしな。だが、日出ずる国に手を出すなら話は別だッ!」
ラウディッツは閉じた目を開き、赤眼がドルンドメオンを射抜く。実体化した黒と赤の禍々しい濃縮な魔力がオーラのように全身から噴き出す。魔王の覇気に晒されたドルンドメオンは脚を後ろへ下げそうになり、こらえる。

317:スーパー創作ロボット大戦OP風3
09/06/30 03:39:31 LV/t84MO
「ならば、ラウディッツ殿。答えは一つですな」
「そういう事だ」
ラウディッツは拳を固く握り、ドルンドメオンを睨む。ドルンドメオンの体は細かく震えていた。恐怖、否、歓喜の武者震いであった。魔王と戦うなど一生に一度あるかないかである。自身が尊敬の念を抱くラウディッツが相手となれば尚更。
互いに隙を伺い合い、両者が同時に踏み込もうとした、その瞬間。
「ラウディッツ殿。申し訳ありませんが、貴方と戦う前に勝敗を決しなければならない相手がおります」
ドルンドメオンは構えを解き、ラウディッツの後ろを見ている。ラウディッツは後ろを振り向き、微笑を浮かべる。
「そうか、先約がいたか。ならば仕方が無い」
そう言うと、ラウディッツは空へ飛びその場から離れる。入れ替わるように、ボロボロの道路をスーパーカーが駆け抜けてくる。流麗なフォルムをした超高性能乗用車、透き通る空のような鮮烈な青。
『フォルムチェンジッ、ロボットフォルム』
それは、スーパーカーが放った声であった。青い車体が前転するように起き上がる。屋根側は、変形後の背面に相当する。変形を終えたスーパーカーは、正しく機械仕掛けの巨人。スーパーロボットと言えた。
車輌形態の美麗な曲面と目映い青色を受け継いだ、芸術のような機体。目鼻口の揃った精悍な貌には光があった。 巨人は自然体に構える。前腕と下腿に移動したタイヤを、慣らすようにわずかに回転。
「待っていたぞ、人族のカースト。否、瞬転のスプリガン!」
ドルンドメオンの歓喜の叫びが、荒廃した都市に響き渡る。
「ドルンドメオン、今日こそ決着を着ける」
極超音速という神速の挙動と、ミクロン単位という極微の制動とを可能とする、エーテル圧式打撃マニュピレータの油断も隙も無い完璧な構え。スプリガンとドルンドメオンは同時に踏み込み、両者の拳が激突。
青い稲妻と化した生ける鋼鉄スプリガンと、黒の瘴気を纏った魔族ドルンドメオン。二大巨人の想像を絶する激戦に、一帯の次元と空間さえ歪んで見えた。

318: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/30 03:41:18 LV/t84MO
以上!
次がタウエルンとパラベラム、その次がネクソンクロガネで終わりの予定です。

319:tauerun
09/06/30 09:09:41 /LUYZZkw
ちょっとした事情で酉を付けられませんorz
感想の程、ありがとうございます
まだまだタウエルンにはビックリ機能があったりなかったり。期待しないで待っててください
後ガス欠フラグですがこちらもまぁ……w
>>311
乙です!掛け合い良いですね~
リヒトが良いキャラしてます。敵組織の今後も含め次回にwktk
>>318
乙です!巨人同士の激戦にビリビリ来ますよ
雌雄を決するまでが凄く激しそうな戦いだなぁ…

今回は前回の後編ということで
戦闘シーン自体はありません。ごめんなさい


320:tauerun
09/06/30 09:11:05 /LUYZZkw
<6,反旗(後編)>


「俺はこのまま、シュワルツの思うがままには絶対にならない。このままこの村から出ていくくらいなら、一矢報いてやる。
 今日の深夜、俺は持てるだけの武装をして、シュワルツのアジトへと乗り込む。もしシュワルツに一矢報いる事が出来なくても……」
 そう言いながら、ギーシュは懐から何かを取りだした。それは紛れもなく……。

「……ちょっとギーシュ、それって!」
メルティの甲斐もあり、調子を取り戻したクレフが、ギーシュが握っている物に声を出した。
ギーシュの手には、警告マークが記された、赤色のダイナマイトが握られていた。無論導火線を完全に切ってはあるが。

「俺はこいつを身に纏って、奴の飛行船に風穴を空けるか、もしくはたかって来た黒騎士共をあいつの目の前で木っ端みじんにしてやるんだ。
 既に俺の計画に賛同してくれている奴がいる。立ち上がってくれ」

ギーシュがそう言うと、1人、また1人が立ち上がり、延べギーシュ含めた12人が立った。
そのメンバーは皆、恋人も家族もいない。だが、ある共通点を持つ男たちだった。共通点に気付いたクレフが驚嘆する。
「……なんで、何であんた達が賛同してるの!?」

ギーシュ含めたメンバーは皆、クレフと同じ炭鉱業で働く男達だ。筋骨隆々な男達で、戦力にはなりそうだがそれとこれと話が別だ。
ギーシュの悲痛な面持ちから分かる通り、どう考えてもこの戦いに勝ち目など無い。クレフは激哮する。

「ギーシュ! 今すぐこんな事やめてよ! 死んじゃったら……死んじゃったら何の意味もないじゃない!
 また別の土地で皆で暮らしていこうよ! 生きていれば……生きていればきっと」
言葉に詰まり、目に涙をためるクレフの肩に、ギーシュは両手を乗せ目を合わせる。そしてゆっくりと諭すように語りかける。

「クレフ、俺達は死にに行くんじゃない。男として、全てを奪った悪漢を倒しに行くんだ。
 男にはな、どうしても立ち向かわないといけない時がある。今はその時なんだ。分かってくれ」
ギーシュの言葉にクレフは足から崩れ落ちる様にその場にしゃがみこんだ。メルティがすかさず寄り添う。


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