09/06/10 20:43:33 SDZIF8i7
「君、大丈夫か?」
突然現れた男に話し掛けられたのは。
髪は赤く、顔立ちは精悍。年齢は一見すると十代後半から二十代前半だが----油断の無い物腰と鋭い目つきのせいだろうか----見ようによってはそれ以上にも見える。
「……はえ?」
次から次へと襲い掛かる非日常に、遥の頭はパンク寸前。まともな返事を返す事ができず、首を傾げた。
「大丈夫じゃあなさそうだな……」
「あ、いえ、大丈夫です!」
慌てて表情を取り繕う。
「……とにかく、ここは危ない。彼女がアイツを食い止めている間に逃げよう」
男が手を差し延べる。
「彼女……?」
一体誰の事だろうか、と混乱する頭で考える。彼女とはおそらく、あの白い----
「ま、待ってください!」
差し延べられた手をがしりと掴む。
「あなたの」
「名前はリヒト・エンフィールド」
「あ、失礼しました」
突然名を名乗る男。何故このタイミング……?
「リヒトさんは、あの白」
「そう、正解だ」
何故このタイミング……!? いや、そんな事より、今は、
「ならお願いです、今すぐ戦闘を止めさせてください!」
♪ ♪ ♪
繰り出された、不意打ちの貫手。これは……直撃コースか。
黒い騎士----M-12は素早く、そして冷静な判断ですぐさま左の肘と膝で相手の腕を挟み込む。そしてそのまま首を掴み、白いオートマタを壁に叩き付けた。
<ぐむっ……!>
<キングとは……何の事だ>
空いている右手にマナを集め、それを相手の下腹部に突き付ける。
<あなたの事じゃないですか。手下を使って女の子を襲うとは、神経腐ってますね>
ウサギは気丈だった。生殺与奪の権を握られているというのに。
<何の事だ……>
<壊れかけのレディオですかあなたは>
ウサギは気丈だった。しかしそれは無感情な機械的なものではなく、意地だとか、覚悟だとかいう類の人間的なもののように感じられた。
<わかりました、ならこちらから質問させていただきます>
やれやれ、と呆れた声で質問する白いオートマタ。何故この状況で。
101:パラベラム! 4/4 ◆1m8GVnU0JM
09/06/10 20:45:39 SDZIF8i7
<それは許可できな>
<あなたの目的は何ですか>
……何故この状況で?
<私の目的は>
「そこまでだ、ヘーシェン。戦闘行動を中止しろ。彼は敵ではないそうだ」
いつの間にここにいたのだろう、おそらくはこの白いオートマタのマスターであろう男が割り込みを入れてきた。タイミングが最悪だ。
<あの穀潰し、タイミングが最悪ですね……。構いません、続けてください>
間が悪いのはそちらも同じだと思うのだが……口には出さない。
<私の目的は、彼女の>
「お願い、手を離して!」
今度は女性の声。マスターだ。ああ、間が悪い。
<イエス・マイマスター>
しかし素直に従い、手を離す。そしてしばらくの間を置き、改めて、
<私の目的は>
<あ、いいです。今ので大体わかりました>
おお、なんと間が悪----
<……これは>
アラーム。
敵だ、それも近い。
黒い騎士は主の前に素早く移動し、マナの防壁を展開した。
「え、な、何!?」
<敵です、マスター>
閃光が瞬く。
その閃光は防壁を突破して黒騎士の装甲の一部を溶かし、変形させた。防壁によって威力は減衰していたが、これは、
<荷電粒子砲……>
マナを加速し、撃ち出す兵器だ。その威力は絶大で、防壁、装甲を易々と貫通し、目標を溶解させる。
どうやら今のは威力を加減して撃ったようだが……一体どこから。
<乱入してくるとはとんでもないやつだ。……高額な光学兵器を装備しているとは、とんだブルジョアジーですね。死ねばいいのに>
「まったくだ」
無駄口を叩きながら戦闘態勢に以降する白いオートマタと、赤髪の男。
「ええ!? まだ来るの!?」
べそをかきながら辺りを見回す三つ編みの少女。
そして----
<まさか、こんなに早く君が現れるとはね。リヒター……リヒター・ペネトレイター>
先程の機体よりも遥かにクリアな声、流暢な言葉。
ゴーグル状のカメラ・アイをオレンジ色に光らせながら、蒼いそいつは現れた。
次回へ続く!
102:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/10 20:50:18 SDZIF8i7
今回はここまで!
ふぅ……携帯だとどこでも書けるのがメリットですが、慣れていないと面倒ですね。
103:創る名無しに見る名無し
09/06/11 14:05:39 wpX3YbLj
前回までより分かりやすくなってる
リヒターってリヒトが命名するとか、なんか関係があるのかと思ってたけどそうでもないのか・・・
104:創る名無しに見る名無し
09/06/13 20:14:22 URY4wTRd
パラベラムの荷電粒子砲はまた一風変わっているらしいが
どんなもんなんだろう
105:創る名無しに見る名無し
09/06/13 20:18:46 Eb/a+zHq
荷電粒子砲なのに光学兵器なのか?
あんまり揚げ足とるようなことはしたくないけどさ。
106:創る名無しに見る名無し
09/06/13 20:36:57 GWhRzTd3
厳密に言えばレーザーの類だけだろうけど
現実で実用化された訳でないし
実弾兵器よりは光学兵器っぽいからって理由で
光学兵器に分類されてるって世界観なら
何も問題はないな
107:創る名無しに見る名無し
09/06/13 21:14:00 NrRbP3Aj
ま、厳密にいうなら指向エネルギー火器だわね。
どうでもいいけど、「実弾兵器・実体弾」って表現に違和感あるのって俺だけ?
よく対比とされてるビーム火器だって、レーザーだって光には粒子性もあるし、粒子ビームならもろ物質をブチ当ててるワケで。
「実弾兵器とは呼び得ないもの、実体弾と対比されるべきもの」と言われると、
風力砲みたいなゲテモノ(あと強いて言えばトールボーイか。ま、これもゲテモノよりか)が浮かんじゃうんだよ。
それで個人的には指向エネルギー火器って言い方にこだわってるんだけど。
荷電粒子砲を光学兵器と呼んでも問題無くなる裏ワザ……電荷を帯びた光子を撃っていると……いや何でもない。
108:創る名無しに見る名無し
09/06/13 21:19:14 URY4wTRd
>実弾
たまにいるよね、そういうの気にする人。
俺もいざ文中で使うとなると「あれ? これって・・・?」と尻込みする方
でもぶっちゃけ気にしすぎてもしょうがないような気もする。
109:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/13 21:32:54 iN8wo+aW
何だろう……妙に申し訳ない気分にwファンタジーすぎるかも知んない…タウエルン
遅くなりましたがレスありがとうございます
>>102
リヒター…一体どれほどの実力の持ち主なのか気になりますね
続きを待ってますです
>>94-95
魔法というか得体の知れない物として書きたかったのですが結局ファンタジーにw
中々リアルに、というかリアリティを出そうとして書けないですね…orz
>>96
三段変形というかリミッター解除というか。本来のタウエルンに戻るって感じです
出来るだけカッコ良く書きたいですね。要なので
110:107
09/06/13 22:39:49 NrRbP3Aj
>>108
まあ、俺も「自分ではそうは書かない」レベルで、いちいち他の人の書いたものにケチ付けたりはしない方ではあります
(>>107で書いたのは、その上で用語の使い方の話になってたから)
ぶっちゃけ、呼び方なんかより、よく指向エネルギー火器が高威力火器として描かれてる(特に装甲目標に対して)ことの方が
気になる人間だし。
111:創る名無しに見る名無し
09/06/13 22:50:37 +wqtBBb0
そのエネルギー別のことに使えって話か
まぁいいじゃない。ヴィジュアル的には格好いいし。
112:創る名無しに見る名無し
09/06/13 22:52:52 QdZKdHKr
ビーム兵器が自分の頭脳だと使いきれる気がしないので不思議兵器として扱ってるなー
とりあえず不思議なモノなの、なんか凄いものなの、で通そうとか思ってる
しかし、書いて削ってを繰り返してると中々完成しない…途中のキリのいい所で切って前編として投稿した方がいいんだろうか…
113:創る名無しに見る名無し
09/06/13 22:59:31 URY4wTRd
>>112
1シーン単位でやってる人(荒野、スプリガン)もいるし、
一話をわりと短くしている人(パラベラム)もいるし
いいんじゃないか?
114:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/13 23:03:07 iN8wo+aW
>>112
良いと思いますよー。自分自身区切りの良い所で
確かに推敲してると長くなっちゃいますよね…
115:創る名無しに見る名無し
09/06/13 23:05:13 URY4wTRd
タウエルンもだった。ごめんごめん。
けっこうボリュームがあるんで短いという気がしなかった
116:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/13 23:28:00 ggXt1eOI
深夜のガンダムに備えて寝ている間に盛り上がっている、だと!?
てか、鯖、復活していたんですね
>>103
ゲインとゲイナーみたいなノリで(ry
一応関係はある……ような、無いような
>>104
単純にメガ粒子やGN粒子をマナに置き換えたものだと思っていただければ
>>105-108
単純に自分の知識が足りなかっただけです、はい。
そうか……。荷電粒子砲って、光学兵器じゃないのか……
>>109
むしろそのファンタジックな光景、Yesだね!
117:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/13 23:43:21 iN8wo+aW
>>115
いえいえw毎回書いてて思うんですよねー、詰め込みすぎだってw
短く書くのを目標にはしてるんですけど、心理描写云々入れるとどうしても長くw
>>116
えぇ、これからもファンタジックを目指しますよ。キーが一ミクロンも打てないですがorz
ふと思ったんですけど、設定って作った方がやっぱ良いですかね
他の作者さん達が結構緻密な設定を投下しているので、自分だけが物語だけ投下してるのもアレかなと
118:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/13 23:52:29 ggXt1eOI
>>117
今のところは2~3つぐらいでいいと思いますよ、設定
設定が少ないと、かなり自由にできますから
119:創る名無しに見る名無し
09/06/13 23:53:56 +wqtBBb0
あんま設定つめると意地悪な人に突っ込まれる件
120:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/14 00:03:41 ufA+lWuK
>>118-119
そうですね……取り合えず物語に重要そうな所は作っておきます。上手くできるか自信ないけど
助言どうもです。それではおやすみなさい
121: ◆klsLRI0upQ
09/06/14 03:21:38 DChI8kQc
設定作ってるように見せかけて、実はあんまり作ってない人ですw
プロットも…オチだけ決めてそこに突っ走ってる感じなので、結構思いつきで書いてることも多々
背中押してもらいましたのでとりあえず現在、誤字脱字と矛盾無いかの確認作業に入ってます
今日の夜には落とせるかな
122:CR 第一章 SIDE C前編1/3 ◆klsLRI0upQ
09/06/14 22:11:59 DChI8kQc
それは一瞬の出来事だった。
大地に舞い降りた漆黒の鋼機は腰から引き抜いた大きな黒槍をその場にいた天狼の喉元に突き刺したのだ。
機体から紅い閃光が走り、その閃光は軌跡となって、天狼の機体になだれ込み、黒槍の矛先に収束していく…。
矛先の空間が歪みはじめる。
その歪みは紅の光を通し、一点の大きな光となっていく…。
そうして集められた光を漆黒の鋼機は黒槍にあるトリガーを引く事で解放した。
閃光。
それは指向性を持った強大なエネルギーとなって黒槍の矛先から解放され天狼の巨躯を体の中から蝕む。
それは貯蓄した力の全てを放出するように天狼の体の中を駆け巡り、その肉体を陵辱し、その存在を蹂躙し、それがそこにいたという事実を消滅させていく…。
そうして天狼は塵芥残さず消滅した。
この間、漆黒の機体がこの大地に舞い降りてから、わずか5秒の出来事である。
なんという威力か―
その黒槍は超振動により対象の装甲を削り裂く鋼機のナイフですら受け付けぬ天狼の装甲をあっさりと貫き、それを一瞬で対象を消滅させたのだ。
その場に居合わせたものがいたのならば、その光景に余りの理不尽さを感じただろう。
漆黒の機体は足元に両腕を破壊され倒れている蒼白の機体の全身全霊を賭した戦いを茶番だと言わんばかりにいとも容易く一蹴したのだ。
自らの機体が半壊しながらも執念で戦い続けた蒼白の鋼機がそれでも届かない圧倒的な差を示された前にそれを圧倒的な能力で一瞬で消滅させてしまった。
漆黒の鋼機は肩、膝、背の各部を展開しはじめる。
展開した部分から紅い光りが迸る。
そうして放出された光りは周囲に降り注ぐ。
周囲にあった草木はその光りを浴び、色を落とし、枯れていく……そして、それはそんな中にそびえ立っていた。
漆黒の御身に紅蓮の光を纏う機械仕掛けの悪魔。
まるでそれはこの世に破滅をもたらす魔王のように見えた。
そう、これこそが世界政府から現在指名手配を受けている謎の漆黒の鋼機、通称:ブラックファントムである。
ブラックファントムは背中にある機械仕掛けの大きな黒翼を広げ飛び立とうとする。
その時、怒号のような銃声が鳴り響いた。
それとほとんど同時に漆黒の鋼機の周囲に大きな爆発が起こる。
ブラックファントムの機体がその爆発で揺らぐ。
そこに空から三機の蒼白の鋼機がパラシュートで降下してくる。
蒼白の鋼機、つまりは三機のS-21 アインツヴァインは着地後にすぐさまブラックファントムを包囲するような陣形を取った。
そしてアインツヴァインは自身の持つ、アサルトライフルの銃口を全てブラックファントムに向けた。
123:CR 第一章 SIDE C前編2/3 ◆klsLRI0upQ
09/06/14 22:14:55 DChI8kQc
「けっ、本当にあの化け物を破壊しちまうとはな、こいつ本当に鋼機なのか?」
オープンチャンネルで蒼白の鋼機のスピーカーから人声が流れ始めた。
声の硬さからして男だろうか…発言の軽さからか若干、ぶっきらぼう人柄が感じられる。
それに同調するようにもう1機の鋼機もチャンネルを開く。
「データ上1世紀前の鋼機、S-16と類似している点は多い。例えばあの背部の翼に使われているブーストユニットは当時実験中だったフライトシステムの可動ブースターそのものだ。
鋼機とフライトユニットの一体化を狙ったものだったそうだが、僕から言わせてもらえれば、フライトユニットの一体化なんて無駄に機体の重量を重くするだけで愚考でしかないよ。
今ではフライトユニットは使い捨てのモノが当たり前になっているが、なんで最初からそうしなかったんだろうねと僕は思わざる終えない。」
その男の声にはヒヤリとするような冷たさがある。
「でも、今の見ただろう?あんな事できる鋼機なんて聞いたことないぜ。50年前には魔法使いでもいたっていうのか?」
「馬鹿も休み休み言え。」
「だがよー。」
「α5、α6、黙れと私は言ったんだが、聞こえなかったか?」
三機目の鋼機が二人を静かに言い放つ。
「誰が勝手にチャンネルを開いて良いと言った。通信したければ、普通に話せばいいだろう?なんで、わざわざスピーカーを通す必要がある。」
三機目の鋼機から発せられた声の質からしてその鋼機に乗っているのは女性であることは間違いなかったが、その声はそれが女性だと感じさせぬほどの静かで、それでいて威圧するような物語りだった。
その女の声には静かなその他の二機の鋼機の搭乗者に対する、怒りを感じさせられる。
もし、その場に立ち会っている人間がいたのならば、誰もが彼女こそがこの二機の鋼機を統括するこの場の指揮官なのだと理解しただろう。
「そんな事を言っても―」
「α5、私は黙れと言った。」
反論しようとした、ぶっきらぼうな男を女の指揮官は臥せるように一喝する。
「申し訳ありません、隊長。」
即座にもう一人の男が女に謝罪を述べ、
「はいはい、申し訳ありませんでした!!」
それに続くようにぶっきらぼうな男もしぶしぶと投げ槍な謝罪をする。
「さて、そこの黒い鋼機、大変見苦しい所をお見せしたが、私の声が聞こえているかね?」
指揮官は、自身の部下達に言い放つのと同じ口調でブラックファントムに対して語りかける。
「…………。」
ブラックファントムは沈黙している。
ただ、その紅い瞳はその指揮官の乗るアインツヴァインを睨む様に見つめていた。
―退け、さもなければ殺す―
まるで、その相貌はそんな事を無言で語りかけているように指揮官は感じた。
それに対して指揮官は何かを頷くような素振りを見せ。
「ふむ、喋る気が無いのかね、まあ、それもいいだろう。ああ、そうかそうか、大事な事を忘れていた…自己紹介がまだだったね、私の名前はシャーリー・時峰(ときみね)という。
世界政府第7機関に所属する組織『イーグル』の構成員の一人だ。見ての通り、この馬鹿どもを率いる小隊長のようなモノをやらせて頂いている。
一応、君に銃口を向けているのは我々の恐怖心からだ非礼だとは思うが、許していただきたいと思う、それに君ならば、この程度なんの脅威にすらならないだろう?
あと、君の足元に半壊して倒れている鋼機も一応は私の部下でね、命令無視して特攻した馬鹿なんだが、それでも私の部下でね、よければ返してもらえないかな?」
声の強さを変えず、淡々と小隊の指揮官、シャーリー・時峰はブラックファントムに語りかけた。
だが、ブラックファントムは無言で返す。
ブラックファントムの黒を貴重に、紅の光を纏ったその様は人の目にはなんとも禍々しく映る。
一見するとその機体には血の通った人間が乗っているのでは無く、どこともしれない悪魔がそれを動かしているのでは無いかと思えてしまう程だ。
124:CR 第一章 SIDE C前編3/3 ◆klsLRI0upQ
09/06/14 22:15:53 DChI8kQc
だが、そうでない事をシャーリーは知っている。
「ああ、ちなみにだ、その機体に人間が乗っている事は我々は重々に承知している。S-15以降の鋼機にはパイロットが生存しているか否かを発信する機能があってね、君の機体は我々の推測によればS-16をベースに大幅に改造を行ったモノだ。
ならばだ、もしかするとまあ、その生体反応を発信する装置は生きているかもしれない…と我々は考えて行動させてもらったわけだよ。少々、古い機種だったので判別が少々大変だったがね、人間の生体反応をしっかり確認できたよ。
勿論、あのアンノウンの仲間が乗っている可能性を考えなかったわけでは無いが、送られてくる情報から君がこの地球の人間だということはしっかり確認できた。うん、だからそうなんだ、君がその機体に乗っているという事を我々は知っている。」
確認した事実をシャーリーは次々と淡々に述べていく。
「つまりはだ、まとめると私の目の前にいるどこの骨董品かもわからない一世紀前のメタルアーマーのカスタム機には地球人が乗っているという事だよ。
しかもだ、その正体不明の骨董品は、その骨董品より一世紀後に出来た最新鋭の機体でも倒せないような敵をまるでゴミ屑のように消滅させていってしまっている。
驚異的な事だと思わないかな?まさにこれは驚嘆に値する事実なんだ。だから、我々としても非常に気になるんだよ、君の機体はいかなるズルをして彼らと戦っているのかとね。それに―」
「――で、用件は何だ?」
漆黒を身にまとった機械仕掛けの悪魔がついにその閉ざしていた口を開いた。
男の声だろうか、その声にはその漆黒の機体の印象も相乗してか暗くて重いものを感じさせられる。
「ありがとう、ブラックファントム。君とコミニケーションを取るのも私の目的の一つだったんだ。ああ、そうだブラックファントムというのは私達が君に勝手につけた呼称だよ。
気に入らないかもしれないが、中々洒落ていると思うんだが君はどう思う?」
「あんたらに何と呼ばれようが興味は無い。ここで寝てる奴にさして興味も無い、勝手にもっていくといいさ…それよりさっさと本題に入れ…俺に銃口を向けておいてまでしようとする用件は何だ?」
ブラックファントムの声に少量の怒気が混じっているのをシャーリーは感じた。
「なるほど、確かにそろそろ本題に入っても良い頃かな。さて、ブラックファントム。我々は君の機体に使われている技術に大きな興味を抱いている。あの鋼獣を一蹴するほどの力をね。
いったいどんな理論で、どんな理屈で、どんな技術を持って、その機体を作られているのか?我々は知らなければならないんだ、奴らとの戦いに勝利する為には……だから、だからだ、ブラックファントム…我々が奴らに勝利する為に―君を捕獲されてくれ。」
いつもと変わらぬ口調、変わらぬ強さで、シャーリー・時峰は眼前の機械仕掛けの悪魔に対し、自身の目的を告げた。
125: ◆klsLRI0upQ
09/06/14 22:40:33 DChI8kQc
お久しぶりです
そして凄い中途半端なところで終わってしまってすいません
実はSIDE Cも引きみたいな終わり方をする予定なのでちょっと展開の過食気味になるんじゃないかとその実心配してたりします
設定に関してちょっとした説明
生命反応からブラックファントムに乗ってる人間を人だと判別する所なのですが
元々はそういった手段を使わずもうちょい長い尺を取って話を作るつもりでした
なのですが、当初のSIDECの構想が長すぎて、なんでそんな本筋でもない所に話割いてんだボケとセルフ突っ込みを繰り返した結果
強引だけど簡単な方法を取ることになってしまいました
他にも突っ込み所ありそうですが暖かい目で見て頂けると嬉しいなーと思います
126:創る名無しに見る名無し
09/06/15 12:06:04 efAZIsA7
tes
127:創る名無しに見る名無し
09/06/15 12:17:44 efAZIsA7
失礼。
「シャーリー時峰」ってなんか耳に残るネーミングw
文章がときどき怪しいけど、内容は今後に期待を持たせてくれる出来じゃないだろうか
リベジオンが遣っている赤い光の正体とかいかにも謎って感じでいいわー
128:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/15 20:15:22 AxxuQSFH
命を奪う赤い光、ですか。これは鋼機に乗ってる人達かなりヤバいんじゃ……
シャーリー時峰さん、堂々としとりますなぁ
129: ◆klsLRI0upQ
09/06/15 20:58:45 4TghtJTj
>>127
文章はキャラに視点を置かないやり方がはじめてなので結構おっかなびっくりやってます
だから、今回ものすごく遅くなりました…元々直情型な人間なので結構不慣れででも書いてて新鮮で面白いのですが
周りから少しづつ盛り上げてく予定なので大きな盛り上がりはもうちょっと先になるかもしれませんが
気長に付き合ってもらえると嬉しいです
ネーミングはなかば思い付きですw
>>128
光の正体に関しては色々想像してもらえると筆者としては凄い嬉しいです
これがリベジオンの特徴でもありますし、この辺りは結構頑張って設定作ったので
シャーリーは揺るがない女をイメージして言動を書いています
男ばっかだと面白み無いし、リーダー女にしようか、でも、○は後々出す予定だし、上に立つ人間だしなーという事で
いつでも余裕を持って話すような感じにしてみました
130:創る名無しに見る名無し
09/06/15 22:50:56 +yCgvXI/
質問だけどここってスーパーロボット系でなくてもOKだよね?
近いうちにちょっと作品書こうと思ってるけど
131:創る名無しに見る名無し
09/06/15 22:57:08 4TghtJTj
ロボ全ジャンルOKだと思います
アンドロイド系までもいるし
132:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/15 22:58:57 AxxuQSFH
スーパーロボット限定だなんて何処にも書いてないぜブラザー!
というか、そもそもスーパー、リアルに分けるのがナンセンs(ry
133:創る名無しに見る名無し
09/06/16 00:00:58 JoGaq+oy
>>130
期待してるぜ
ここ数日は議論もあって活発で良いな
134:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:21:25 dL+Mfs4K
投下します
135:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:22:15 dL+Mfs4K
強すぎる光によって目は潰れるというが、濃すぎる闇によってもまた同じなのではないか。
感覚の許容量を越えてしまうほどに、そこに顕現した翳は、黒く、暗く、また重たげであった。尋常の精神力
では直視できまい。まして自らがそれと敵対する身ともなれば、果たして正気を保てるかどうか。
「……素晴らしき哉、人族のスプリガン。我ら甲属魔族の進化はいつも、貴様のような強敵を超克するところか
ら始まったのだ」
漆黒の魔族ドルンドメオンの余裕ある口振りは、勝利を確信するからこそ。
スプリガンは多次元センサを総動員して、魔石のエネルギーにより変貌を遂げた魔族を分析する。
もともと頭頂高5メートルのスプリガンより二回りほど大きかったドルンドメオンの身の丈は、今や7メート
ルに達していた。重厚さを極めた積層構造の甲殻が、全体を肥大化して見せる。増大した体重で地盤が沈下。
言及を避けられないのは、四本にまで数を増やしたその腕。昆虫のような姿に似合いの肢だった。背面から伸
びていた用途不明の黒翼が遂にその正体を現したのだ。三つの節のそれぞれが異常に長尺で、発達した脛節の鉤
爪は禍々しい。日本最大の甲虫ヤンバルテナガコガネは、その名の通り前脚長が体長のおよそ1.4倍もあるが、
印象はそれに近い。
ドルンドメオン・メンタルバーストフォルム。
伝家の宝刀を抜いた、魔界の実力者がそこにいた。
「さあさ、来ませい!」
カマキリの威嚇姿勢のように長い腕を大きく拡げ、古強者は声を張る。それだけで地響きを生ずるほどの気迫
に満ちていた。
「来ませい来ませい!」
直後。ドルンドメオンの姿が、スプリガンのエーテル光学センサの視界から消滅。
そこには地表から剥がれた瓦礫だけが舞っていた。足下から伸びる影さえ置き去りにするような超高速移動。
空間に灼きつく黒色が残像となったのも、スプリガンが追いきれなかった理由のひとつ。
「来まっせぇいッ!」
言葉と裏腹に、ドルンドメオンが速攻。
新たに追加された怪腕による左右同時攻撃は、さながらクワガタムシの大顎だった。つるはしのようにスプリ
ガンを打ち据える鉤爪は、強烈な死の臭いを放つ。
スプリガンがそれを回避できたのは、“戦士の勘”とでもいうべきショートカット認識の賜物だった。天農と
の鍛練によって超一流の達人となった彼は、しばしばロボットの常識を覆す。
代わりにアスファルトの大地を掘削する黒光りの凶器。スプリガンの装甲に用いられたアンブロシア鋼とて、
直撃を受ければ耐えられまい。
トンボの幼虫ヤゴは、種によってはわずか千分の五秒という早業で下唇を伸ばして獲物を捕らえるという。甲
属魔族の雄ドルンドメオンの一連の動きは、それを思わせる電光石火。
「今のはいかんな。誘っておきながら、ついこちらから手を出してしまった。どうしてくれよう、有り余まるこ
のパワー……」
冗談めかした独り言を口にしながら、ドルンドメオンは悠然と構えをとった。関節で甲殻が擦れ、ごりごりと
生物らしからぬ軋轢音がする。二本の触覚が緩慢に旋回。
足捌きを殺して腕だけの戦いに持ち込めば競り勝てると踏んだスプリガンは、果敢に前に出る。
エーテル圧式打撃マニピュレータは、地上最強最速の運動エネルギー兵器だ。少なくともスプリガンはそれだ
けの自負を持っている。
136:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:23:11 dL+Mfs4K
二大巨人が互いの剛腕の射程圏内に突入。
拳打、掌打、手刀、手の甲での捌き、手首の返し、腕先によるいなし、爪弾き、指での圧迫、鉤爪の刺突。
足を止めての攻撃の応酬は、余波だけで周囲の地形を変える。遠目には小さな自然災害にも見えた。
スプリガンの公算に反して、実力は互角だった。速さでは確かにエーテル圧式打撃マニピュレータが圧倒的に
有利。しかしドルンドメオンにはそれ以外の武器がある。
『四本の腕……!』
「本来はもげたときのための替えなのだが、貴様に二本では足りぬようだったのでな」
肢の数的優位を得て、ドルンドメオンの猛攻の激しさは嵐のそれになっていたのだ。
上級魔族であるドルンドメオンの戦闘能力は、先に葬り去ったリクゴウなどとは次元が違うものだった。デー
タを収集しながら、スプリガンは舌を巻く。
『強い……!』
「貴様のいうことではない!」
危なげなく攻撃全てを捌いてみせるスプリガンにドルンドメオンが返し、また防御不能の鉤爪を振るう。スプ
リガンはその有効範囲を見切り、逆に“火炎車”の要領で一挙に懐に跳び込んで胴に回り蹴りを叩き込んだ。
昆虫に似た彼ら甲属魔族は、食餌や呼吸とは別に、鬼門という器官から大気中に満ちるエーテルを摂取し、体
内で燃焼させている。脇腹に開いた幾つかの孔がそれで、つまり弱点となる可能性が高い。
確かな手応えが、スプリガンの駆動系に抵抗として伝わる。
「……そんなものか?」
だが、重戦士の鎧のような殻を砕かれながらも、ドルンドメオンは平然としていた。スプリガンの目の前で、
罅割れに粘性の高い体液が滲み、わずか数秒で損傷がみるみる塞がっていく。メンタルバーストにより強化され
た即効再生能力だった。
「フンン!」
ドルンドメオンの両腕の腿節と經節を繋ぐ関節から、エーテルの奔流が迸る。
エーテルブラストは、射速こそさほどでもないが効果範囲が広い。動力炉であるエーテルドライブへの悪影響
が予想される以上、スプリガンは距離を開けるしかない。
スプリガンは流派超重延加拳の初歩“歯車”により、傍らのビルの壁面に前腕のタイヤを押し当て、逆回転を
掛けて大きく後退、さらに遮蔽物の多い複雑な地形に分け入る。
「消えた……か?」
ビル越しにも響くドルンドメオンの声には、戸惑いが含まれていた。
生命体であるならばいかに巧妙に潜伏したところで全くの無音・無動作・無温とはいかないが、スプリガンは
あくまで機械体である。最低限の機能だけを残して休眠状態に入れば、無機物にまぎれて魔族からは捕捉が困難
になる。
上級魔族の多次元感知や、禽属など一部が持つという完全空間把握までは欺けないにせよ、個体の能力を群れ
で補う甲属魔族はそれらとは趣を違えた方向に感覚器を発達させている。あらかじめ死角に入っておきさえすれ
ば、充分に姿を隠滅できた。
この状態から機を待ち、始動直後のエーテルドライブが発揮する高出力のままに飛び掛かるのが、流派超重延
加拳“朧車(おぼろぐるま)”である。
もっとも、密林の王者の狩猟に倣った奇襲戦術をもってしても、その一撃のみではメンタルバーストしたドル
ンドメオンを仕留められまい。
稼いだ時間で情報の整理を実行。出し惜しみはできない。
137:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:24:02 dL+Mfs4K
好敵手を捜し求めるドルンドメオンが立てる物音が、寂静の廃墟を揺すっていた。
魔族の戦士の足取りには、動きを隠そうという意思はなかった。事実上不死身となったために、以前よりも大
胆に攻勢を掛けることができる。
(逆にいえば、それだけ無警戒になっているということだ。そこを突くしかない)
恐らくドルンドメオンは今、「一、二発攻撃を貰ってからどう対処するか考えれば充分だ」と考えているはず
だった。事実としてスプリガンには体格という埋め難い弱点が存在する。一概に油断ともいえない。
メンタルバーストフォルムとなった難攻不落のドルンドメオンを攻略するには、対魔族戦術の基本に倣って、
治癒の暇を与えずに絶命させるしかない。とはいえ重甲殻の防御力の前では一撃必殺など望むべくもなく、同一
箇所への集中攻撃はエーテルブラストや機動力で振り切られる。これでは千日経っても勝てない。
(流派超重延加拳。その極意は、「駆使」の二文字)
進退窮まった状況において、スプリガンは努めて流派の初心に帰る。天農の教えだった。
それは、人型兵器(HW)ならではの格闘術として考案された流派。HWS-03“スプリガン”は、変形に
掛かる駆動力やタイヤの回転力を利用し、人体の限界を越えた動きの足し引きをしている。
この状況で何をどう足して、どう引くのか。スプリガンは決断する。あとはタイミング。
恐ろしげな足音が最接近。まだ見つかってこそいないようだが、そこは既に目と鼻の先だった。
ドルンドメオンが、ビルの向こうから、ぬうと貌を出す。
「そこか!」
複眼のひとつひとつに鮮烈な青が映り込むより速く、スプリガンがエーテルドライブを始動。「撥条仕掛けの
巨人」という名の由来に違わぬ、驚異的な瞬発力で跳ぶ。
振り上げた右脚が弧を描いて、一動作で“朧車”の踵落とし。メンタルバースト以降に追加されたもうひとつ
の左腕を強打して内外の骨格を歪ませ、数瞬だけの麻痺を期待する。
それで下拵えは終わった。そこからの派生技こそが流派超重延加拳の真骨頂。
魔族の肩に噛みついた右下腿部のタイヤをそれじたいの摩擦力により固定、わずかに回転。密着状態から全身
を屈曲し、脇腹を狙って左の膝蹴りを放つ。
重甲殻の粉砕により、当該部位の防御力が激減。
ドルンドメオンがスプリガンを振り落とそうと超高速移動を開始するが、右脚のタイヤが根を張った宿り木の
執着心で吸いつき、引き剥がせない。
スプリガンがまた左膝による第二撃。第一撃による傷口から黄濁した体液の飛沫が滲み出すよりも早い。
間合いをとることを断念し、スプリガンを先に絞め殺そうとドルンドメオンが棘の浮いた腕を動かす。さなが
ら抱擁によって死をもたらす拷問具。だが、攻撃の役目から自由となっている二基のエーテル圧式打撃マニュピ
レータが防衛圏を築き、剛力を発揮させない。それでも過負荷で損耗し、関節が火花を散らした。
さらにスプリガンが前回までと同一の動きで第三撃。
ここまでが転瞬の出来事だった。
『終わりだ』
鋼の声が宣告。
第四撃により魔族の生命維持に関わる重要器官を完全破壊。ドルンドメオンの絶叫が響く。
微調整を行いながら敵の肩においてタイヤによる進退を繰り返し、敵の特定箇所を致命傷に達するまで幾度で
も抉り続ける。杭打ち機という大地を穿つ機械にも似た兇悪な連続攻撃。
高機動・重装甲・即効再生と三拍子揃った難敵を一点突破で破壊する、流派超重延加拳“崩山車(ほうざんぐ
るま)”、スプリガンの会得した中でも屈指の荒技が激戦を制した。
138:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:25:51 dL+Mfs4K
スプリガンの青い装甲は、緑に染まっていた。凄惨な戦いを振り返り、あの幼い娘などには見せたくないとふ
と思う。しかし生物である魔族と殺し合う以上、それは避けられないことでもあった。
「ドルンドメオンが、ドドの大戦士が、敗れるとは……」
動けるほどに回復したオルピヌスが、呆然と膝を屈した。リクゴウは死に、ドルンドメオンの命も長くない。
遊撃種の兵隊カーストの一小隊で残っているのは、赤銅色をした彼だけになってしまっていた。
「み、見事だ……! 人、族の戦士、スふッ、スプリガンンよ! 我に生じた慢心を、見抜かれたかぁっ!」
地上に横たわる瀕死ドルンドメオンが、溢れる体液を喉につかえさせて吼える。
「オオル、ピ、ヌス……」
「ここに」
「このデータタ、生きて必ず、も持ち帰る、のだ……!」
「ドルンドメオン!」
「役目を、果た、せ……」
それきり魔界の実力者ドルンドメオンは事切れた。
最期まで任務のことを考える彼に、スプリガンは敬意を禁じ得ない。魔族の戦士達と機械仕掛けの自分は似て
いると思う。
しかし、だからこそ、同じく譲れないものもある。
『オルピヌスといったな』
低い声には、魔族すら震える凄みがあった。
『魔界に生還などさせると思うな』
人類の置かれた状況は厳しい。
突発的に出現するエーテルポイントからは甲属魔族の兵隊カーストが湧き、時には獣属魔族によって大都市が
一夜にして壊滅する。世界中の空を禽属魔族が舞い、海では群れからはぐれた鱗属魔族が船舶を脅かす。
誰もがことねのように白昼に悪夢を見ているのだ。
魔族という生ける災厄が跳梁する時代。
新世代の対魔族兵器であるHWS‐03“スプリガン”は、誇張なく人類の希望となる存在だった。
データなど、断じて渡すわけにはいかない。
「ぎぃ……っ!?」
オルピヌスがしゃくるような悲鳴を上げて後退さり、びっこを引きながらのろのろと逃走を試みる。千切れて
短くなったままの触覚が力なく震えていた。
スプリガンもまた“崩山車”中の攻防でエーテル圧式打撃マニピュレータに不具合を生じており万全ではない
が、重傷のオルピヌスに止めを刺すには十二分だ。
(せめて一撃で)
スプリガンが、オルピヌスの背中に必殺技を打とうとしたときだった。
何者かが放ったエーテルブラストの疾風が、スプリガンが足を踏み出す先をごうと横薙ぎに通り過ぎ、土砂の
壁を築く。オルピヌス追撃に対する妨害の意図は明らかだった。
出鼻を挫かれたスプリガンは首だけで頭上を振り返る。
上空に敵影。
スプリガンに翳を落とし、青の鎧から輝きを奪う。それは、ガリバー旅行記の世界でもない限りは魔族でしか
有り得ない、翼を拡げるだけで天を覆う“巨鳥”だった。
139:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/06/16 00:27:10 dL+Mfs4K
今回はここまで。相変わらず分かりにくくて申し訳ないです。
「崩山車」は、1スレ目の>>992様からいただきました。ありがとうございました!
140:創る名無しに見る名無し
09/06/16 00:41:15 4WuwhOTZ
戦闘描写凄いなー
機械感が出ててメカメカしくて呼んでて凄い楽しいです
141: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/16 22:30:27 nD/2Xgke
色々と忙しかったりスクコマ2に思いっきりハマってたりで随分と遅れてます。
>>129
このまま戦闘になってしまうのか、それとも……続きがとても気になる展開です。
>>132
でもスーパーやリアル系とかの作品ばっかりの方が、後でスパロボ的作品を作りやすいかもしれない。
>>139
凄まじい戦闘、強大なる敵ドルンドメオンを仕留めたスプリガン。しかし、最後に現れた巨鳥とは……。
現在執筆中の予告編後半で一つ質問があるんですが、ネクソンクロガネの時代って20世紀後半~21世紀初頭辺りであってますか?
142:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/16 23:55:10 GOQAuutw
おお、続々と新技が。これは“轟”級の技にも期待ですね!
>>141
ロボット物総合スレ版ディケイドですナ
143: ◆46YdzwwxxU
09/06/17 05:24:00 tsEkw1gU
レスどうもです。
次で戦闘させずに最終回の予定だったけど、もうちょっとだけ続けてみようかと思ってます
>>141
時代は全然決めてないですが、たぶんそのへんじゃないですかね。・・・もっと現代に近いかも
家電とかは現代と変わらない感じで話は作ってあります
未来というよりは、どこかで一部の技術だけが変な方向に発展したパラレルワールドのような
144: ◆46YdzwwxxU
09/06/17 05:48:54 tsEkw1gU
間違えました
20世紀後半~21世紀初頭辺りだったらそのまんま現代やんか・・・orz
なので一行目二文目は撤回しますです
145:創る名無しに見る名無し
09/06/18 14:06:40 8Y3hgmIK
暇潰しに>>4に挙げられている作品でスパロボを妄想しようとしたが、すげー難しいな
ワープ抜きだとある程度は世界観を犠牲にしなきゃいかんということか
本家スパロボではどうしてたっけ・・・
146:創る名無しに見る名無し
09/06/18 14:08:45 CaJKOHMW
本家スパロボは大抵、ある程度崩してるよ
やり方が失敗してるとKみたいな感じで非難され
成功してるとスクコマ2とかWみたいな感じで絶賛される
まー大事なのは、それぞれしっかり立てておくことかなー
147:創る名無しに見る名無し
09/06/18 14:31:34 8Y3hgmIK
ふむ。
スタンダード(CR、スプリガン、ゼノ、ネクソン、姫路B)
荒廃(荒野、タウエルン)
魔界(姫路、スプリガンB)
ファンタジー(パラベラム)
砂漠地帯とか言い訳すれば荒廃をスタンダードに組み込んだり
勢力圏を分けてファンタジーと魔界を統合できるかも?
最低二つの世界なら割とまとまっているはず
・・・っつっても、キャラ把握できるまで進んでる作品はそんなに多くないから
実際始めるのは無理だろうが。あとはクロスオーバー妄想くらいが関の山か
148: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/18 16:32:23 yDskUWHJ
>>146
K、まだやってないけどそんなにストーリーひどいのか。
作品の続きを書けないのはスクコマ2のせいだ!と言い訳しておく。
>>147
実際にクロスオーバーやろうとしてる人間がここにいますよ。
こっちの姫路は特に理由も無く異世界に召喚された、という設定なので他作品とのクロスはやりやすいかと。
海上都市姫路は自走可能なので基地兼母艦代わりとしても使えます。
荒廃系とは気が合うと思いますよ、一度地獄を見てますから。自分の脳内の一次創作他作品(ロボット物ではない)ですが、全面核戦争で北斗の拳状態になった事がありますから。
死に物狂いで復興して、究極の統治システム完全管理社会を築いたまでは良かったが、自分達の創造した子供達に本土から追い出されてしまった、というのが本編開始数十年前の状況です。
149:創る名無しに見る名無し
09/06/18 18:08:37 8Y3hgmIK
同類項をまとめてみた
アンノウン(CR、ゼノ)
鋼獣(荒野、CR)
魔族(スプリガン、姫路)
悪人(タウエルン、ネクソン)
マナ・エーテル・魔法(パラベラム、スプリガン、姫路)
自動人形(タウエルン、パラベラム)
軍事組織系(荒野、CR、姫路、スプリガン?)
民間組織系(ゼノ、ネクソン)
無頼(パラベラム、タウエルン)
・CRのように主人公だけ浮いてる作品もあり、これだという分類は難しい
学校いってるキャラ(ゼノ、ネクソン)
ただ、同じアンノウンでも、CRの場合パイロット寄りで、ゼノの場合ユニット寄りなんだよなー。
魔族や鋼獣もそうだけど、なまじ同じ名前なだけにかえってクロスさせにくい。
下手に格差つけて勢力組み込むのもうまくないしなー。
現状、あまり面白いクロスというものが思いつかない。
もう二作品ほど新作が出るか、各作品の謎が解明されていけば糸口が見つかるか(チラッ)
ま、暇潰しのネタとしてはまあまあだった。
>>148
荒廃チームに入れれば序盤のバランスがちょうどいい感じになるか
でもさー、原作のままだと静はいきなり魔界チームいっちゃうんだよね
居残り組の守備隊の同僚とかはあまり描写されてないし。教授は出しやすそうだけど
戦艦不足は確かだからありがたいことはありがたいか
ついでに今だから忠告するが、アンタは書き方が露骨すぎるときがある
ウザがられる前に自重を心がけた方がいい
ま、気持ちは痛いほどわかるし、作者たるものそれくらいプライドがあったほうがいいのかも判らんけど
150:創る名無しに見る名無し
09/06/18 18:42:47 CaJKOHMW
CRクロス用に参考資料欲しいなら簡単な方針と設定まとめたの作るよー
結構、流れや資料が分散してるから、まとめるのに少し時間かかるけどw
>>149
>魔族や鋼獣もそうだけど、なまじ同じ名前なだけにかえってクロスさせにくい。
むしろここが一番の頑張り所だと思う
こういう名前似かよってる所になんだってー!というクロス設定考えるのがスパロボ流クロスオーバー
スパロボWに例えるとガオガイガーとゴライオンの獅子つながりで設定色々クロスさせたり
テッカマンとオーガンはビジュアル似てるからそれつながりで始祖アイバとかやらかしたりと
難しいかもしれんがこういう所は最もおいしいネタだと思うなー
151:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/18 18:49:18 kfTOqhXr
何か凄く面白そうな流れ……
私事が結構忙しく、まだ投下には時間が掛かりそうですorzすみません
152:創る名無しに見る名無し
09/06/18 19:31:35 8Y3hgmIK
>>150
設定よりむしろ本編を一段落するまで進めて欲しいキブン。先を楽しみにしてるぶん、ネタバレが来そうで怖ぇーし。
CRとか複雑化しそうなのは特に、とりあえずの方向性が決まらないとクロスさせようもないからぁー
そりゃー言うは易しってやつだよ
・俺たちは鋼獣(C)をこれまで鋼獣(荒)と同一視してたけど、全くの別のバックボーンがあったんだよ!
・実は鋼獣(荒)もまたアンノウン(C)操る兵器だったんだよ!
・鋼獣(荒)は、アンノウン(C)の命令を聞かなくなった、いわゆるはぐれ鋼獣(C)だったんだよ!
後ろの二つはどう考えても角が立つよなぁ・・・できればやりたくないね。
鋼獣(荒)に公式の黒幕がいて、それがアンノウン(C)と関わりがあるとかできればいいけど、分かんないし。
「あれがゴライオンか。噂どおりだな」みたいな敵のリアクション芸に留めるという手もあるが。
153:創る名無しに見る名無し
09/06/18 19:44:07 CaJKOHMW
>>152
>設定よりむしろ本編を一段落するまで進めて欲しいキブン。先を楽しみにしてるぶん、ネタバレが来そうで怖ぇーし。
それはごもっともな意見だw、頑張ります(´・ω・`)
でも方向性がガチっとするのは結構時間がかかりそう
俺のは扱いに困ったら踏み台にしても良いよーとだけ一応言っておく
154:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/18 20:01:58 gw018Afa
>>149
こうして見ると、拙作とタウエルンって結構共通点あるんですな
しかし、こういう面白い話が出ると気合い入っちまいますねw
155:創る名無しに見る名無し
09/06/18 23:59:39 8Y3hgmIK
・・・といっておいてなんだが、原作再現は必ずしも必要というわけじゃないんだよな
最低限キャラやロボの把握さえできれば、散発的に原作の敵と戦いながらその決着は「これからだ」エンドにして
スパロボ用にでっち上げたオリ敵を倒す方向で話を収束させるなんて手も使える。
いつ完成するかも分からん作品のクロスなら、そっちの方がいいかもしれん
ただ、それでもまだ参戦できない作品も>>4にはあるけどな
156:創る名無しに見る名無し
09/06/19 00:19:06 EefDTgjy
>>155
スパロボでもいるだけ参戦なんてしょっちゅうだしね
参戦できない作品…
シスターズですね、わかります
アイディアはかなり出てきてるんだけどとりあえずCR書かないとw
157:創る名無しに見る名無し
09/06/19 06:46:42 dTOMMqdG
シスターズも非戦闘シーンの癒しとしてサイドストーリーくらいには関われそうだが
キャラの情報や会話のサンプルが圧倒的に少ないとか、どういうロボットがどういう戦闘をするのか未明なのとか、そういう方が厄介。
CRなら「主人公はしばらく無所属のまま、人類軍にマークされつつも勝手にアンノウンを狩っていきます」程度にでも明らかにされれば割と楽に参戦できる。
そういう条件でいくと、
パラベラムも出会い編の後、旅に出るとか金を稼ぐとか当面の方針が決まれば充分
タウエルンやゼノライファーは戦闘待ち
荒野が三人娘の残り一人の把握と会話サンプルがあれば書けなくはない
直後に急展開が控えていて、「その再現なくして作品なし!」というならまた別だけど
158:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:07:56 QxJd/8MC
そろそろ正式名称決めないと……。
以下数レス頂きます。
今回は前回投下分含めて、1章全部を投下。
早くもかなり修正されて居たりします。すいません。(ボクには良くある事)
159:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:08:40 QxJd/8MC
1章 鋼の体を持つ獣
(0)
暗闇。
暖かな液体に包まれている感覚。
聞こえる音は、心音と小さなモーター音。
目は開かない。
いや、開けたくない。
開けてしまえば、また、あの光景が目に映る。
恐怖。
ここに居る限りは安全な筈。ココは世界で一番安全な場所。
でも、同時に、死と隣り合わせの場所。
何故ワタシはココに居る?
何故ココに生まれた?
エメラルドグリーンの培養液が緩やかに対流する中、脳裏に電気信号が走る。
ああ、イヤだ。
目が開く。
恐怖が視界に広がる。
痛い、苦しい、熱い―。
脳ミソが鷲掴みにされ、捏ね繰り回されているかのようだ。
ココは子宮と同じ筈。
世界で一番安全な場所の筈。
なのに何故、ココにはこんなにも苦痛で溢れている?
160:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:11:52 QxJd/8MC
(1)
エルツは汗と埃に塗れた栗色の前髪を片手でかき上げながら空を見た。
日はまだ高い所にあり、その日差しは熱く鋭い。
瀬名龍也率いるヴァドル部隊の初陣―鋼獣土竜型との戦闘に勝利してから2時間。彼女は丁度、
仲間達と無事に第十六都市へと帰還を果たした所だった。
エルツはパイロットスーツの胸元を大きく開き、バタバタと仰いで涼を取っていた。
ゴム質のパイロットスーツは厚手で異様なまでの伸縮性を持っており、着心地は悪くないが、高い防寒性の為に、
この様な直射日光の下では直ぐに蒸し暑くなってしまうのだ。
エルツがスーツの内側に風を送る度に、彼女の二つの未成熟な膨らみがチラチラと覗く。
しかし、彼女はソレを気にする様子は無い。
エルツはハンガールームと呼ばれるヴァドル専用の格納庫の前に腰掛けている。巨大なシャッターは半分ほど
閉じているが、それでも、エルツがジャンプをしたくらいでは手が届かない高さまで開いていた。
ハンガールームの中は慌しく、特に半壊している二号機の修理が最優先で行われていた。
メカニックは人間が7割、ヒューマニマルが3割と言った所で、その先頭ではヴァドル部隊の隊長である瀬名龍也が、
50人近いメカニック達にそれぞれ的確な指示を出している。
「瀬名さん、疲れて居ないのかな……」
龍也の後姿をボンヤリと見つめながら、エルツはポツリと呟いた。
ヒューマニマルの自分でさえ、ヴァドルとの接続を切った後に時間差で襲ってきた疲労感に参っているというのに、
目の前の男は一切その様な素振りを見せないのだ。
龍也はパイロットスーツを半分だけ脱ぎ、上半身裸の状態でいる。
高温多湿のハンガールーム内を何度も右往左往し、指示を出している彼は、頭から滝の様に汗を流していた。
鍛え抜かれた逞しい筋肉が汗によって輝やいている。
そんな龍也を眺めて居る内に、エルツはいつの間にか自分の尾が嬉しそうに振られている事に気付いた。
自分の気持ちを素直に代弁してくれる尻尾に対し、エルツは少しばかり困ったような表情を浮かべた。
エルツ自信は全く自覚していないが、彼女はどうやらこの瀬名龍也という男に好意を持っているらしい。
龍也の傍に居たい、あるいは龍也に触れてみたいと考えている時に限ってこのように尻尾が振れているのだから、
人を好きになるという事は、この様な思考状態にある事を指すのだろうとエルツは客観的に考えている。
通常ならば、感情を抑制されたヒューマニマルは”好き嫌い”の概念が希薄だ。
戦争をするに当たっての不要な感情を持たないからこそ、冷静で的確な判断が下せる。戦争をする為に生み出され、
荒野で死ぬ事が運命のヒューマニマルにとって、その様な感情は元より必要ないのだ。
しかし、エルツは、珍しい事に”好き”という感情が制御されきれて居ないらしい。
もっとも、その事自体に意味は無い。生まれてくる際に、何らかの要因があって制御し切れなかっただけの事だ。
他のヒューマニマルには無いモノを持っているという事に、エルツは負い目を感じていない。
ソレは確かにヒューマニマルという種には不要なものかもしれないが、持っているからと言って、戦えなくなる訳ではない
と彼女は考えている。
そして、胸の奥で静かに鼓動するソレは不快では無く、むしろ心地良さすらあるのだ。
龍也の背中をボンヤリと眺めている間、彼女の尻尾は常に左右に振られていた。
161:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:13:34 QxJd/8MC
(2)
「くそっ!」
頭から熱いシャワーを浴びながら、リートは腹立たしげ声を上げて壁を殴りつけた。
ミシリと重く鈍い音を立て、シャワー室の壁のタイルにヒビが入る。
シャワー室には彼女以外に誰も居なかった。
つい先程までディーネが一緒だったが、彼女は「用事がある」と言い残し、シャワーを浴びると早々に出て行った。
俯いたリートの鼻先や顎から滴り落ちる水滴が、彼女の大きく膨らんだ胸で跳ねる。
その胸の内側で渦巻く理解不能の何かが、彼女の苛立ちの原因だった。
自分が何に悔しがっているのかすら解らない。
しかし、自分がこうなった要因は分かっている。
(アイツだ。あの、瀬名龍也という人間―)
思い起こせば、あの男とであった瞬間からこの苛立ちは始まっていた、とリートは考える。
この不快感、苛立ちの原因は分からないが、あの男との接触によるものなのは間違いが無い。
リートは人間を嫌っている。
偶然な事に、リートもまた、エルツと同様に感情の抑制がされていない。
しかも彼女の場合は、エルツの様に”一部の感情”が抑制状態に無いのではなく、”ほぼ全ての感情”が抑制状態に無い。
その感受性は、殆ど人間と変わらない。
(何故自分達ヒューマニマルが、人間の言いなりにならなければならないのか)
(何故自分達ヒューマニマルが、人間の代わりに戦い、死なねばならないのか)
(何故人間は、無能の癖に、ヒューマニマルに対し傲慢な態度を取るのか)
(何故人間は、ヒューマニマルと共に荒野に出て戦わないのか)
(何故―)
再生暦119年にヒューマニマルが生み出されて以来、現在までに構築された、人間とヒューマニマルとの関係が、リートには理不尽で仕方が無い。
リートが人間を嫌うのは、人間の、ヒューマニマルを物として見ている言動と、自分はリスクを背負おうとしないその態度にある。
(ああ、そうか……)
リートは気付いた。
あの男は、”人間でありながら荒野に出て、鋼獣と戦っている”。リートの中の「人間」という存在に当てはまらないのだ。
今日の鋼獣土竜型との戦闘だってそうだ。
リートの独断での行動により、二号機は中破。
彼自身も土竜型に喰われかけたというのに、あの男はリートに一切の処罰与えないどころか、ソレを気にした様子すらない。
彼女の知る人間ならば、真っ先に嫌味を吐き、ここぞとばかりに普段の彼女の単独行動癖を叩いてくるに違いない。
しかし、彼は違った。
ただ無言でリートの瞳を覗きこみ、全てを見透かしたように小さく鼻を鳴らしただけだ。
今の所、ヴァドルを中破させた事も、命令無視の上の単独行動も、一切の処罰を与えられていない。
そして、あの目―。
(幾つだ? 幾つの感情が混ざっている?)
瞳を覗きこまれた時に感じた、背筋に寒気が走るほどの強烈な”何か”。
考えるほどに、胸の内側の何かが刺激され、激しく渦を巻き、不快な思いをさせる。
リートはシャワーを止め、ノロノロとした動作で水を吸って重くなった尻尾を絞る。
普段ならば、炎の様に赤い毛の尻尾からボダボダと水滴が滴り落ちる度に、自分の中にある不純物が零れ落ちていくような心地良さがあるのに、
この日に限ってソレが無かった。
「判らない……」
この思考の末に、自分がどの様な答えを求めているのかが。
瀬名龍也という男が何を考えているのかが知りたい?
彼を理解する事で、彼自身と何かを共有したい?
彼は人間なのに?
いや、人間だから故か?
彼にしてもらいたい?
何を?
物理的接触?
それとも、ただ単に、自分の望む言葉をかけてもらいたいだけ?
(わからない……)
正体不明の苛立ちの中、リートはゼンマイの切れかけた人形の様にゆっくりと天井を仰ぎ見た。
162:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:14:44 QxJd/8MC
(3)
ハンガールームの喧騒が落ち着いた頃、外では既に日が沈み、冷たい風の吹く漆黒の闇に包まれていた。
メカニックはその殆どが引き上げ、ハンガールームには人影が殆ど無い。
巨大な鉄製の台座<ハンガー>に鉄の巨人が5機、吊るされる形固定されている。
その内の1機、02とプリントされた機体だけは、上半身と下半身が分断された姿をしていた。
ハンガールームの片隅に設置されたプレハブの中に、1人の男がコンピューターを無表情で操作していた。
男の名は瀬名龍也。ここに吊るされている鉄の巨人ヴァドルのパイロットの1人であり、部隊の隊長である。
プレハブは6畳ほどの広さであるが、敷き詰めるように並べられた机とコンピューター類によって、その大半が埋められていた。
おそらく、4人もパイプ椅子に腰を下ろせば身動きが取れなくなるであろう。
龍也はコンピューターのスロットに挿入していた携帯端末を抜き取り、自分の懐に戻した。
仕事に一区切り付いたこともあり、彼は無意識の内に深い溜息をついていた。
プレハブの窓からハンガールームの様子を窺うと、最後のメカニックが各点検を終えてシャッターを潜って出て行くところであった。
これから6時間の休憩を挟み、再び修理メンテナンスを再開する予定である。
プレハブ内は狭かったが、エアコンが取り付けられている為に室内は快適な温度に設定されている。
横になれずとも、このまま目を閉じていれば、午前中から激務であった龍也は直ぐに深い眠りに落ちてしまうだろう。
「ココならば、あと5時間は誰も来ないか……」
小さく呟き、龍也はゆっくりと目を閉じた。
途端にドロリとした感覚が首筋を伝い、全身を包み込んでいく。
五感が殆ど効かなくなり、ズブズブと溶けた鉛に飲み込まれてゆく様な感覚だけが脳に伝わってくる。
龍也はこの感覚が好きではなかった。
まるで自分が死んでいるのだと錯覚するからだ。
しかし、彼の思いとは裏腹に、肉体はソレを喜んで受け入れていた。極限まで疲労した肉体は、数十時間ぶりの睡眠に狂喜している。
(5時間……5時間だけだ……)
何度も自分にそう言い聞かせながら、龍也の意識は暗闇に飲み込まれた。
163:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:19:34 QxJd/8MC
(4)
ディーネは第十六都市自衛軍本部の二十五階の廊下を歩いていた。
毛足の長いカーペットが敷き詰められた廊下には他の人影は無い。
長官室と書かれたプレートの掛けられた部屋の前に立つと、程無くしてドアのロックが開く音がする。
「失礼します」丁寧に頭を下げ、ディーネは入室した。
「いらっしゃい、待っていたわ」
部屋の奥のデスクに腰掛けていたこの部屋の主である女性は、ディーネを笑顔で迎えた。
彼女の名は天沢香織。
この第十六都市を管理する自衛軍のトップに立つ人間であり、同時に『新人類派』と呼ばれる、ヒューマニマルに人権を求める立場の数少ない人間でもある。
日本には現在全部で十六の都市があり、それぞれの都市を長官が纏めていが、無論、彼女以外に長官という立場でありながら新人類派の人間は存在しない。
本来ならばヒューマニマルを道具として扱う立場の自衛軍に、新人類派は存在してはならない筈なのだ(組織の言動に矛盾が生じる為)。
しかし、天沢香織という人物はソレを堂々と公言している。
三十代半ばの、まだ若々しい容姿をした(美人というよりも)可愛らしいその長官は、部屋に入ってきたディーネの姿を見て少しばかり驚いた様子を見せた。
ディーネは、スカートタイプの軍服に身を包み、髪を一切縛らずにいた。
普段の彼女は有事の際に即行動出来るように都市迷彩の軍服を纏い、髪を後頭部で纏めている事から、現在のこの姿は非常に珍しいと言える。
「どうしたの、その格好」ニヤニヤと目を細めながら香織はディーネに訊ねた。
「瀬名隊長の命令……というと少々語弊がありますが」
ディーネは第十六都市に帰還してからの出来事を簡潔に説明した。
「提出した報告書の通り、二号機が中破しました。フレームは無事でしたが、人工筋肉と擬似神経が駄目になったので、新しいパーツと取り替えている最中です。
ソレに伴い、二号機の修理と他のヴァドルのメンテナンスが完了するまでの間、休養を取れと隊長に命令された訳です」
「なるほど、それでその格好……」
香織はもう一度「なるほど」と呟き、腕を組んだ。
要は暇な訳である。
それも、あえて出撃まで時間がかかる服装に着替えてしまった程に。
ヒューマニマルは連続で6時間以上の休養を与えられる事が無い。
彼女達は人間よりも短い時間で体力の回復が可能であるし、荒野に出て鋼獣を狩らずとも、都市を防衛するという重大な任務を抱えている。
人権を持たない彼女達は、それこそ家畜同様に扱われているのである。
もっとも、ヒューマニマル自信も、ストレスに強く、不満などの感情を強く持たない事もあり、その事自身に問題はないようだ。
香織からすれば、この様な現状が認められていること事態が異常なのであるが、鋼獣との戦況がやや劣勢であり、慢性的な人員不足にある現状を考えれば、
仕方のない事だと渋々耐えている。
故に、香織はヒューマニマル達の一番の娯楽である食事に関しては、特に力を入れている。
一般市民からは「ヒューマニマルの食事にしては豪華すぎる」との不満の声が度々上がるが、都市を守っているのは他でもない彼女達なのだからと、
その不満に対応している。
「隊長には、この休養自体も任務の一環なのだと言われまして」
「普段なら待機中にする細かな仕事も禁止されていると」
「はい」ディーネは苦笑しながら頷いた。
「それじゃあ、仕方ないわね。隊長の命令に従わないと」
悪戯っぽく笑う香織に、ディーネは困ったような表情を浮かべて唸った。
164:荒野に生きる(仮) ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:23:43 QxJd/8MC
「ところで……」
他愛の無い話を一通り済ませた所で、香織が真面目な顔で切り出した。
普段は笑みを絶やさない、軽いノリの彼女ではあるが、こういった際の切り替えは驚くほどに早く、きっちりしている。
まるでスイッチが切り替わったかのような香織の雰囲気の変化に、何年もの付き合いで慣れたディーネですら、偶に戸惑う時がある。
「瀬名龍也くんの事だけどね」
香織はデスクの隅を叩き、エアディスプレイ(空気中に投影されたホログラムのディスプレイ)を出すと、デスクに内蔵してあるキーボードを
操作して一つのファイルを開いて見せた。
「新第一都市自衛軍の総合データベースから調べてみたんだけど、怪しい点は無し」
「戸籍も、ですか?」眉を顰め、ディーネが訊ねる。
「ええ、戸籍も。実在するわ。勿論、DNAチェックも問題無し。彼は正真正銘、瀬名龍也って事になる」
「……そう、ですか」
「納得いかない?」
「……わかりません」ディーネは首を横に振った。「ただ、なんと言うか、納得できない事が多すぎるんです」
「ソレについては私も同感よ」
香織は自ら淹れた紅茶を啜りながら頷く。
「貴女達ヒューマニマルが鋼獣と戦うようになって以来、人間は種を絶やさない事を第一にするようになった。
ソレは40年ほど前、丁度ヒューマニマルが荒野に出るようになった少し後の事。
諸外国との連絡が一切取れなくなり、コレを”日本以外の国が滅びた”と自衛軍は考えたから。
人間はもう、日本にしか存在しない。人間は例え一人でも数を減らしてはならない。
その考えが強まり過ぎ、歪になって、今のヒューマニマルを軽視している悲しい現状を作り上げた訳ね」
「ですが、瀬名隊長は荒野に出て、自ら鋼獣と戦っています。それも、自らを囮にするという危険な作戦まで立案して―」
ソレは酷く不自然な話である。
自衛軍の思想では、ヒューマニマルに「人間の代わりに戦い、死ぬ事」を任せて居る人間は「絶対に死んではならない」義務を負っているらしい。
ならば何故、瀬名龍也という人間が荒野に出向き、鋼獣と戦うなど以ての外だ。
「しかし、総官は彼をココに送ってきた。ヴァドルを正規採用するか否かの試験運用部隊の隊長として……」
それに何の意味があるのだろうか?
(考えるとするならば、荒野に”何か”あるのか、彼が荒野で戦う事に意味があるのか。
前者の場合は、ヒューマニマルに触れさせたくない物、あるいは動かせない程に大きくて人間にしか扱えない何かが、この第十六都市付近の
荒野に存在する事を意味する。
後者の場合、意味を成すのは”荒野で彼が死ぬ事”かしら? でも、彼が死ぬ事で何が変わる?)
香織はカップで揺れる紅茶を眺めながら、思考の海に深く潜っていく。
無数に浮かび上がる可能性を一つ一つ吟味し、選り分けて、自分の仮説と関係のありそうなワードを幾つか掴んで、水面へと上昇する。
(やはり、彼自身よりも、”上”の方を調べるべきかしらね……。気は進まないけど、もう一度あの狸親父と腹の探り合いをするしかないか)
考えを纏めた香織は紅茶を一気に飲み干し、ディーネに向き直った。
「ディーネ、貴女にはコレまで通り副隊長として瀬名くんを補佐してもらいます」
「はい」
「彼に気取られない程度でいいから、目を光らせていて。もし何か気付いても、私に報告するまでは彼の指示に背く事はないようにね」
何かあった場合は後手になるけれど、と彼女は心の中で付け加えた。
それでもなお現状維持を決めたのは、エルツ同様、香織自身もまた、瀬名龍也が悪人でない様に思えて仕方が無いからだ。
今、香織がすべき事は、瀬名龍也の……あるいは瀬名龍也を背後から操る存在の真意を掴む事なのだ。
ソレがハッキリするまでは慎重に行こうと香織は考えている。
165: ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:40:41 QxJd/8MC
以上です。
ココは覗く度に面白い展開になっている気がするw
荒野~は僕自身も手探りなくらい伏線張りまくってる(ケモ耳への愛と伏線の練習の為に書き始めた)作品なんで、
ボクはともかく読者には設定が訳解らないだろうなぁと思うんで、協力(?)ついでに幾つか設定を書いて見ます。
・都市
(新)第一~第十六の16からなる、日本で人間が唯一生活していく空間。
日本以外の国の状況は一切不明になっており(コレは後に判明するけど)、現在は日本以外は絶滅したと考えられている。
・鋼獣
彼?等自身に黒幕は居ません。
あくまでも異常発生・進化した存在で、彼等の正体が実は―とかいう展開は残念ながら存在しません。
・瀬名龍也
がっちりした体系の無表情な男。伏線のメインだから語ること無いw
・エルツ
チームで一番小さな娘。それでもスペックは成人男性に並ぶ。
素直で一途で龍也ラブな設定。
・リート
ある意味一番人間臭い、真っ直ぐな娘。体格は龍也とよりやや背が高く、細い位。
思春期といえばいいか、そんな精神状態。
・ディーネ
容姿も性格も一番大人な娘。リートとディーネはヒューマニマルの中ではイレギュラーなほどの長生き。
それだけ腕と運があるといえる。
ヒューマニマルの模範的な感性や従順度。
こんな感じかしら?
解りにくい本編の補佐程度に捕らえてくれれば。ネタバレはしてないはずなんで。
<投下ココまで>
166: ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:42:15 QxJd/8MC
あれ?
トリまちがえちゃってる?
167: ◆9MC6FR8UMj7S
09/06/19 19:44:13 QxJd/8MC
プレビューじゃあ間違ってないんだけど、書き込むとトリが変わってるなぁ。
コレは一体何事か!?
168:創る名無しに見る名無し
09/06/19 21:12:20 dTOMMqdG
>>165
なんとなく、ファフナーとかの世界観を思い出した
主人公の不自然さが語られていてかなり興味を引かれる。
獣耳娘ズにはもっと惹かれるけどw
えーっと話が大きくなってきたが
本気でスパロボやる気があるなら、参戦作品の条件が揃うのを待って音頭とってもいいけど
ただ、参戦を表明した作者には、世界観を含む設定の刷り合わせを許容してもらうし、SSの一部は請け負ってもらおうよ。
極端なこというと、>>152の下二つみたいなこともあるかもしれん。あるいは「ここだけは絶対に譲れない」というとこを明確にしておいて欲しい。
キャラクターが同じだけの寄り道シナリオとか、「スパロボではこうなってるけど、原作ではもっと強いし、全く別の謎や裏があるんだよ」
ってことにして無礼講にお祭りするのが一番いいんだけどな。
・・・個人的にはキャラ立ちもまだのうちに動かさなくちゃならんので、だいぶ時期尚早って気がするが、
逆に作者のモチベーションが上がるということもあるかもしれん。ダメ元でやってみるか?
169:創る名無しに見る名無し
09/06/19 21:36:27 EefDTgjy
空白入ってるとか?
170:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/20 01:13:46 O7L3Qa3M
やっと出来た……お待たせしましたorz
正直今までの雰囲気と違って凄く……バイオレンスです
それと世界観と主人公、そしてタウエルンについて簡単な設定も作りました。あわせてどうぞ
171:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/20 01:14:39 O7L3Qa3M
<5,本性>
何者かがドアを叩いている。ギーシュは立ち上がり、ドアの付近まで歩み寄った。ロッファの妻が怯えた表情でギーシュを見つめる。
ギーシュは妻が声を出さぬように口元に人差し指を立てるジェスチャーをし、振り返ってドアの前に立った。
「俺だ、ギーシュだ。今ちょっと村長の代わりで留守番しててな。何か用があるなら、俺が村長に伝えておくよ」
ドアの前の何者かに、ギーシュはそう言った。すると、その何者かは低い声で返答した。
「その村長を返しに来た」
「なっ……」
その瞬間、ドアを吹き飛ばすほどの衝撃波がギーシュを襲った。ギーシュは両腕で防ごうとするが、抗えずに背中から壁にぶつかった。
妻は驚愕し、椅子から転げ落ちた。完全に腰が抜けたらしく、両膝を付いて震えている。ドアとその周りの壁は、衝撃波によってガラガラと崩れ巨大な穴を開けていた。
何者か――否、シュワルツの取り巻きである二人組の大男、その片方が、1機の黒騎士を携えてロッファの自宅へと踏み入った。
ちなみにもう片方はタウエルンと対峙中である。
「シュワルツ様からの配達だ。受け取れ」
大男が指を鳴らすと、背後から黒騎士が手で吊り下げた何かを、妻の前にボトリと落とした。それは……。
「あ、貴方……」
妻はその何かに目を見開き、両手を口元で覆った。そこには額に穴を開け、目から光を失ったロッファの亡骸が転がっていた。
大男は壁にぶつかった際に頭を打ち、その痛みで意識が朦朧としているギーシュの方へ歩み、ギーシュの耳元にしゃがむと、用件を伝えた。
「見ての通り、お前達を束ねていた村長は死んだ。これでもう、お前達の支柱は無くなった訳だ。
薄々感じてはいただろうが、この村は我々が掌握している。ここで村長の死により、この村は完全に我々が掌握した。俺が言っている意味が分かるな?
明日、我々はこの村をある実験に使う。
そこでだ、シュワルツ様は、お前達が明日までにこの村から立ち去ればお前達には一切干渉しないという慈悲を与えて下さった。
俺の言っている言葉の意味が分かるならどうするべきか、よく考えろよ。まぁ……お前達が心中しても、我々は痛くも痒くもないがな」
172:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/20 01:16:09 O7L3Qa3M
大男は立ち上がり、踵を返して外へと向かう。黒騎士はその後ろを幽霊の様にゆったりと浮遊して付いていく。
がらんとした空間には、二度と起き上がらないロッファに寄り添いすすり泣く妻と、壁に寄り掛かり、頭から流血するギーシュしかいない。
朦朧とする頭をどうにか支えながら、ギーシュは立ち上がり、テーブルの上の受話器に手を掛けた。
大男の発言は朦朧とした意識の中ではっきりと聞こえた。一つはっきりしている事は――もはやこの村で生きていく事は出来ないという事だ。
突如、タウエルンの動きが静止した。ショウイチはその様子をじっと見ているだけで、全く黒騎士達に意を示さない。
トニーはショウイチとタウエルンが微動だにしない事に、凄まじい不安を抱いた。距離がまだ遠いとはいえ、黒騎士達は背中にマウントしていた槍を構えて突進してくる。
というより、黒騎士達が扇型に一斉に突っ込んでくる。トニーはあわててタウエルンの背後に隠れ、ショウイチに声を掛けた。
「ショ、ショウイチ君! どうする!?」
「ショウイチ……君?」
返事を返さないショウイチに、トニーは首を傾げた。ショウイチはタウエルンの方を向いて何かぼそぼそと唱えている。
黒騎士達が目前まで迫ってくる。トニーが焦ってショウイチに取りすがる。が、ショウイチはトニーの事を忘れているようにタウエルンに何かを呟いている。
「ショウイチ君! もう敵が迫って……」
「ソーラーキャノン、展開」
ショウイチがそう呟いた瞬間、タウエルンの胸部が両端にスライドし、黒光りする武骨な砲口が姿を現した。
その砲口は上下左右すると、黒騎士達へと狙いを定めた。驚くべき事は、この武装が展開するまでの時間は――僅か0.59秒である。
砲口より繰り出された眩い光のそれに、黒騎士達は巻き込まれた。ショウイチ達に向けていた槍が見る見るうちに融解していく。
レーザーともビームとも違うその攻撃は、まるでバーナーの様に黒騎士達を炙ると、ゆっくりと収束していった。
危険を察知したのか、攻撃範囲に至らなかったのか、2機が素早い動きで後方へとバックステップした。攻撃の余波を受けたのか、持っていた槍の先端が溶けている。
そこには上半身を失い、機能を停止した黒騎士達の脚部が一機、二機と倒れていく。得体の知れないパーツ群が露出したその姿は、どこかグロテスクである。
「ば、馬鹿な……な、何なんだ、おい!」
大男が驚愕と言った表情でタウエルンを見、そう叫んだ。トニーはと言うと、目の前で起こった事が理解できず、ポカンと口を開けている。
「あ……えっと」
首を振って呆けを覚まし、トニーはショウイチとタウエルンに目を向けた。何が何だか正直理解できないが、凄い。
タウエルンはあの黒騎士を一瞬で数機葬ったのだ。その証拠に、上半身を失った黒騎士達が地面に突っ伏している。その時だ。
173:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/20 01:17:23 O7L3Qa3M
「ショウイチ君! 上だ!」
空から黒騎士が、タウエルンに向かって襲いかかってきた。タウエルンを危険な存在と認知した事で、大男の命令より、破壊を優先する様だ。
タウエルンは黒騎士に対して顔さえ向けず、右腕を上げた。すると右腕の装甲が大きくスライドし、中からウエハース状の物体が飛び出した。
瞬間、ウエハースの隙間から、先程の光と同じ物質が黒騎士を貫いた。巨大な板の様に成形されたそれが、黒騎士を蒸発させるのに数秒掛からなかった。
連携攻撃のつもりか、正面から最後の黒騎士が小細工なしでぶつかってくる、が、タウエルンはただ空いている左腕を正面に向けただけだ。
そして、タウエルンは装甲を元の状態に戻し、上げていた右腕を下げると、左腕と同じく、黒騎士に向かって正面に向けた。
黒騎士が両手を広げ、タウエルンの両腕とぶつかる。黒騎士の腕部分が軋む音がする、がタウエルンは微動だにせず、反応もしない。
すると、タウエルンは体勢を低くし、一気に黒騎士の拳を叩き潰した。黒騎士が拳を失い、バランスが揺らいだ瞬間。
タウエルンは一気に黒騎士に接近し、密着すると、展開状態であるソーラーキャノンを押しつけた。そしてタウエルンは呟く。
「……許してくれ。君達に、罪は無い」
一瞬の閃光――そこには黒騎士の姿は無く、ソーラーキャノンを露出させたままのタウエルンが立っていた。
「ま、マジかよ……」
大男は目の前の光景にただただ青ざめるしかなかった。ソーラーキャノンを収納したタウエルンが、一歩、二歩と大男に近づいてくる。
「来るな……来るんじゃない!」
腰元から大きなナイフを取り出し、大男はメルティの頬に当てた。自らを奮い立出せる為でも、最終的な自己防衛でもある。
「もしもこれ以上近づいてみろ。この女の顔に、一生物の傷が付くぞ」
「や、やめろ! メルティに手を出すな!」
トニーは慌てて、大男にそう叫んだ。が、大男は興奮状態で今にもメルティを斬りつけてしまいそうだ。
「ショウイチ君……」
トニーはショウイチに対して、タウエルンを元の状態に戻してほしいと言おうとした瞬間、大男のナイフが、宙に舞った。
気づけば、ショウイチの右手に拳銃が握られている。そしてショウイチは続いて、大男の肩に向かってトリガーを引いた。
大男が呻き声をあげて、抱えていたメルティを話す。ショウイチはトニーに向かって叫んだ。
「トニーさん、今です!」
174:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/20 01:18:46 O7L3Qa3M
ショウイチの言葉に、トニーはハッとすると、直にバランスを崩した大男からメルティを抱きかかえてその場から逃げだした。
「やった……」
黒騎士がいなくなった事で安心したのか、信じられないくらいに軽いフットワークで、トニーはメルティを救い出せた。
メルティはまだ気絶している様だ。早く家に、と言うより安全な場所に避難したい。……そうだ、先ずショウイチに礼を言わねばならない。そう思ってトニーは振り向いた。
そこには、拳銃を構えて、大男の体を足で踏みつけながら、冷徹な表情を浮かべるショウイチがいた。
ショウイチ……いや、あそこに居るのはショウイチという青年だが、ショウイチに見えない。まるで、別の人間が乗り移ったかのようだ。
大男は撃たれた傷口が痛むのか息を荒くしている。が、ショウイチはお構いなく、大きな図体を踏みつけて問答する。
「誰からの命令だ? 黒騎士を所有してるって事はそこらのチンピラじゃないよな?」
「……何者だ、お前……あの自動人形と良い……射撃の……精密さと……」
ショウイチが大男の耳元を威嚇射撃する。その目、雰囲気、全てがさっきまでのショウイチと違う。
「俺は褒めろとは一言も言ってない。死にたくなきゃ吐け。お前をここに送り込んだのは誰だ?」
大男は息を荒げながらも、ショウイチに目を合わせた。その表情には何故だか、穏やかさが漂っていた。まるで死を待っていたかのように。
「……俺は、ただの、雇われた用心棒、だ。クライ、アントの事、何か、知らねえ……」
ショウイチは無言で大男に視線を合わせる。大男は観念したようため息をつくと、言葉を続けた。
「シュ……シュワルツっていう……元、帝国、軍人の野郎、だ。あんたと、同じように……な。場所は……」
その瞬間、大男の頭に風穴が開いた。ショウイチは銃弾が飛んできた方向に目をやると、何者かが逃げていくのが見えた。
大男は完全に撃ち抜かれた様だ。非常に凄惨な光景である。ショウイチは大男から足をどけた。
と、タウエルンがショウイチの肩に手をのせた。ショウイチは疲れたそぶりで、タウエルンの手に、自分の手を重ねた。
「ショウイチ……」
「悪いな、タウ……昔の癖が出ちまったみたいだ」
破壊された黒騎士達と、横たわる大男の死体。戦いはひとまず終わったようだ。
「取りあえず……トニーさん、メルティさんと一緒に家に帰りましょう。ここに居ると危ない」
「あ、あぁ……そうだな」
なるべく、大男の姿を見ない様に、トニーはメルティをおんぶし、自宅へと足を進めた。ショウイチもそれに続く。
と、ショウイチは振り向き、タウエルンに言った。
「タウ、悪いけど……頼むな」
ショウイチの言葉に、タウエルンは無言で背部のブースターを吹かし、あの機能を作動させた。
175:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/20 01:20:25 O7L3Qa3M
森の中を、もう一人の大男が疾走している。肩に狙撃用のライフルを引っ提げて。
「信じられん……あれほど、あれほど強力な自動人形だったとは……」
走りながら大男は腰のホルスターに引っかかっている無線機を取り、通信を入れた。
「レフトだ。シュワルツ様に繋げ。
……失礼します、シュワルツ様。異変の原因が分かりました。それと、ライトが……」
トニーは自宅のカギを開けた。幸運な事にこの家に危害は及んでいないようだ。
メルティを寝室に寝かせ、トニーは居間の椅子に座った。何故だが偉く疲れた。一気に疲労感が襲ってくる。
だが、妙な突っかかりが頭の中をぐるぐると回っている。それは全て……。
「……少しいいかい? ショウイチ君?」
目の前で座っている青年、ショウイチ・マーチマンの事だ。今更ながら実感する。この青年は普通じゃない。
あのタウエルンという自動人形も、正確に大男を倒した射撃技術にしても、何もかも普通じゃない
「はい、何でしょう?」
あっけらかんとした明るい口調で、ショウイチはトニーに顔を向けた。奇妙な緊張感が張り詰める。
「君は……君はいったい何者」
その時、激しくドアを叩く音が部屋に響いた。トニーは一瞬体を強張らせると、ショウイチに待っている様に言ってドアに向かった。
訪問者に声を掛ける。
「すまないが今取り込み中なんだ。またの機会にしてく」
「トニーさん、あたし! クレフよ! 早く開けて!」
馴染みのある声に、トニーはドアを開けた。すると目に涙を浮かべたクレフが飛び込んできた。
「ちょ、クレフちゃん!?」
「村長が……村長がシュワルツに殺された!」
続く
176:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/20 01:25:17 O7L3Qa3M
投下終了です。それと設定的な物を。
上から世界観・主人公・主役ロボです
ずっとずっと先の未来、自動人形と呼ばれるロボット同士の戦争で荒廃した世界
人々はその中で残った僅かな資源を活用しながら、畑を耕し、自然と触れ合いながら生きている
時折、前大戦の負の遺産である自動人形が掘り返される。まだ利用できる場合は利用され、不良品の場合はパーツなどをばらされて市場に売られる
完全な状態で利用できる自動人形もあるらしく、内戦等でいまだに戦争の道具として利用される自動人形も、ある事にはある
ショウイチ・マーチマン タウエルンと旅をする不思議な青年。外見は青年だが年齢は不明。
年齢以前に経歴他も現時点では一切不明。一つ分かる事は、タウエルンとはパートナーである事のみである
タウエルン ショウイチと旅をする自動人形。トラクター→人型→戦闘用と三段変形する
ショウイチと同じく、全てが謎に包まれている。ただ、太陽の光が重要なエネルギーらしい。
耕作用にも戦闘用にも。
>>168
承諾しました。
まぁ自分のは設定みたいなのは上の三つくらいしかないんで、どうとでもなりますよw
177:創る名無しに見る名無し
09/06/20 05:09:22 s7Emwa6U
スパロボ企画に
瞬転のスプリガン
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ
で参加表明しときます
本編で出してない敵って出していいのかな?
うちなら獣属・鱗属の魔族とか、よそなら作者様の了解や設定を受けて土竜型以外の鋼獣とか、天狼以外のメタビとか。
個人的に、獣属vs獣耳とかやってみたい!
>>176
肥えはスリル・ショック・サスペンス!
タウエルン&ショウイチの強さ、堪能させてもらいました
ソーラーキャノンっていうネーミングがなんか好き。フシギバナー
個性的だからスパロボでも埋もれなさそう
178: ◆46YdzwwxxU
09/06/20 05:16:38 s7Emwa6U
おっと念のため。
179:創る名無しに見る名無し
09/06/20 13:15:53 HcQQO4zo
tes
180: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/20 15:20:51 yPbd17U/
ショウイチとタウエルンが悪党共を叩き潰す様がいい。シュワルツを倒すんだ!
海上都市姫路守備隊戦記、参戦OKです。
実際やるとして最初から全ての作品世界が融合している普通のスパロボ式か、別々の世界が融合されるスパロボZの多元世界方式とどっちがいいですかね?
>>177
姫路の魔族はジャーク帝国以外敵とみなしていないので、スプリガンの魔族と味方になる事はまずないでしょう。
敵対関係か、同じ魔族同士なのでお互い不干渉を決めているのか、対ジャーク帝国戦のみ協力している、という所です。
181: ◆46YdzwwxxU
09/06/20 21:03:58 s7Emwa6U
>>180
私がやると私情が入りそうだ。
この際(受け持ってくれる作者様がいれば)丸投・・・そっくりお任せしても面白いかもしれませんね。
182:スーパーロボット大戦SH(仮) ◆PMPifNk6WCVg
09/06/21 11:23:04 4EOwdomD
■1 企画概要
2ch創作発表板「ロボットSS総合スレ」発祥作品群によるクロスオーバー
■2 参戦作品(募集中→■3)
☆海上都市姫路守備隊戦記◆gD1i1Jw3kk
☆最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ◆46YdzwwxxU
☆瞬転のスプリガン◆46YdzwwxxU
☆Tueun◆n41r8f8dTs
・五十音順
・ここには>>168以降に作家本人による参戦表明が明確になされた作品のみ記載します
■3 参戦作品募集条件等(要議論)
(1)原作者が2ch創作発表板「ロボットSS総合スレ」の住人であるか、また住人となること
(2)原作者がプロローグ募集開始(→【4】)までに、“原作者以外が人物や機体を動かせそう”な程度の設定及びSSの発表をすること
・参戦させたい人物の「会話」と、参戦させたい機体の「戦闘」は必須
(3)原作者が最低一本は自作品以外のキャラを使用したクロスオーバーSSを書く意志を持つこと
(4)原作者が自作品及び他作品、そして参加者を尊重できること。また、企画の成功と自作品の完結のために努力できること
・以上の条件を全て満たせるなら、いわゆる飛び入りもOKということ
■4 参加資格(参戦作品原作者以外も含む)
(1)2ch創作発表板「ロボットSS総合スレ」の住人であるか、また住人となること
(2)参戦作品そして参加者を尊重できること。また、企画の成功のために努力できること
■5 プロローグ(要議論)
募集準備中
・参戦作品確定後に募集し、参加者による決を取ります(その際、議論による微修正等も検討します)
■6 舞台世界(要議論)
暫定的な方針として、基本となる世界の他に「ファンタジー系作品を包括できる異世界(便宜上「魔界」と呼びます)」を設定することを提案します
・基本世界日本(現代もしくは近未来の日本。作品としては姫路B、ネクソン、スプリガン)
・基本世界荒廃(地理的には中東あたりで。作品としてはタウエルン?)
・魔界(初期は召喚など限られた手段でしか行き来できない。ジャーク魔法帝国(姫)、魔族(姫)、魔族(ス)の勢力圏。作品としては姫路、スプリガンB)
もちろん、最初期にタウエルン組が日本の農地でオロオロしていたり、スプリガンが(設定上可能なら)魔界で武者修行していてもいいでしょう
ただし、「魔界」は異世界であることに留意し、明確に基本世界を舞台とする作品のキャラの場合には要議論ということで
まずはこの三つをフィールドに、世界観のやや近い二、三作品くらいでクロス
あとは特に縛りは入れずに作家陣の発想に任せたいかなと。行き詰ったら議論
183:スーパーロボット大戦SH(仮) ◆PMPifNk6WCVg
09/06/21 11:24:06 4EOwdomD
■7 SSについて(要議論)
(1)リレーSS形式で行います
→形式的にはロワ企画に近い感じで
(2)要予約(→■8)
(3)投下までの期限は大雑把に一週間
→一言断れば更に一週間延長アリ。つまり予約してから最長二週間。それ以上は“原則として”破棄
(4)文章量の規定はなし。一話一話が短くてもバンバンリレーが進む方がいいかも
→インターミッションだけ、戦闘だけ、悪人同士の悪巧みだけ、でも結構です
(5)同一作家によるリレーは推奨しませんが、作家が少人数になると予想されるため止むなしか?
(6)参戦作品の原作者以外にも作家募集中!
(7)■3(4)及び■4(2)に違反した場合は議論に掛けます
(8)作家は予約、延長申請、投下の場合にはトリップを付けてください。
■8 予約について(要議論)
「同一時間に同一人物が別の場所にいる」といった矛盾を生じさせないための措置です
予約された人物や機体は、他の作家によって使用できなくなります(量産機等を除く)
予約を行った作家は、人物や機体を独占しているという自覚を持ち、可及的速やかに執筆してください
(1)基本的に作品名(→■2)、集団名、もしくは人物名で、「作品名A、作品名B、人物名1@作品名C、集団甲@作品名D・・・」などという形式で行います
・ここでいう「集団」とは、「シュワルツ一味」「村の人々」「セイギベース3」「ドルンドメオン部隊」などで、その構成員全てを含みます
(2)機体はパイロットとなる人物と合わせて登場させることができます
・「清水静」で予約すれば、「専用重装甲強化服」がもれなく付いてきます
(3)パイロットなしで単独行動できる機体や、個体名を持つ巨大生物などは人物扱いとします
(4)「予約した作品や組織の中でも、特定の人物や機体だけを他の作家に譲る」といった特殊な状況では追記してください
・あんまりややこしくするのも何なので、他の作家に使われると困るものを書き出す方向で
・フルネームでなくても判別できればいいです
・執筆途中に面白い展開を思いつくこともあるでしょう。宣言すれば途中追加もアリとします
■9 クロスオーバー(要議論)
・時間的な矛盾が出ないようにしながら、作品単位ではなく人物単位で動かすと多作品クロスオーバーの幅が出るでしょう
・情報交換を活発にしつつ、自作品のキャラ以外でも頑張るようにしましょう
・某ディケイドの「虫(ワーム)には虫(クウガ)だ!」といったような、面白い組み合わせを探してもいいでしょう
■10 敵(要議論)
敵は絶対的な種類が少ないので、原作の組み合わせに拘らず、割と自由にシャッフルしてやれたらと思います
世界各地に出現する設定などを上手に使いましょう
・荒廃世界でスプリガンを出さずに「タウエルンVS甲属魔族」とかで害虫駆除バトルをしても、それはそれでOK
・原作未未登場でもいることが明らかな敵は、原作者に設定の提供を依頼するか、勝手に設定したものでも原作者の許可を得ればOKとしたいと思います
・ラスボスは要議論
184:スーパーロボット大戦SH(仮) ◆PMPifNk6WCVg
09/06/21 11:25:24 4EOwdomD
俺の考えた要綱はこんな所。
まだまだ手探りのためとんでもない見落としが山ほどありそうですが、これをひとまずの叩き台に議論してもらえれば。
異議や質問があれば誰でも遠慮なく。
・・・つか別のスレでやった方がいいかのう
185:スーパーロボット大戦SH(仮) ◆PMPifNk6WCVg
09/06/21 11:27:58 4EOwdomD
スレ名間違えた
×ロボットSS総合スレ
○ロボット物SS総合スレ
186:創る名無しに見る名無し
09/06/21 11:32:23 QCDTFrP5
この手の企画は元作品が完結してからじゃないとコケる。ぜっっったいにコケる。
クロスオーバー企画が楽しいのは分かるし、俺もやってみたいと思うけどもうしばらくは我慢した方がいいと思うよ。より楽しく、より良い作品にしたいのなら。
187:スーパーロボット大戦SH(仮) ◆PMPifNk6WCVg
09/06/21 11:37:14 4EOwdomD
完結してもコケるときはコケる
俺は各作品が完結するまで待っていたら一生できないと思うね
188:創る名無しに見る名無し
09/06/21 12:06:02 rRoNYK32
とりあえず、投下や参加表明自体はこのスレでいいとして
そこらへんのルールその他は避難所なりなんなり、別の場所でやったほうがいい
あと言っちゃ悪いが、いきなりトリつけてルールをポンと出してその態度は
傍からすりゃスレの私物化っぽく見えなくもないので、注意したほうがいい
近いうちに企画を動かしたいというのに文句を言うつもりはないが
もう少し我慢して、他の人も交えて色々煮詰めた上でも遅くはないんじゃないかな
189:創る名無しに見る名無し
09/06/21 12:06:13 OlbdlxGd
まぁ取りあえず、各作者さんの意見を聞いてみたいな
後、参戦確定した作品以外の作者さんの参戦意思も
190:創る名無しに見る名無し
09/06/21 12:12:00 QCDTFrP5
主導するのはいいってかむしろ率先して動いてくれるのはありがたいのだが
>俺は各作品が完結するまで待っていたら一生できないと思うね
お前さ、これはちょいと作者さんに失礼なんじゃねーの。暗にどうせ完結しねーんだろって言ってるも同じじゃねぇか。
まぁ言いたいことは分からないでもないんだけど、ね。
191:スーパーロボット大戦SH(仮) ◆PMPifNk6WCVg
09/06/21 12:29:02 4EOwdomD
すまない。いいすぎたし、一人ではりきりすぎた。意見を感謝する。
俺は個人的には、この企画が作家陣の創作意欲の刺激になればいいと思っている。
このスレは基本的に感想が少ない。作者からすれば、自分の作品がどう思われているのか全然分からんはずだ。
それでは完結させるだけのモチベーションも湧かないだろう。
スパロボで作家陣だけでも連携できれば、あるいは活性化につながるんじゃないかと思って強引に進めてみた。
更に言えば、それほど壮大化・長期化させるつもりもない。
一段落付いた作品で楽しく遊ぼうと、そんな感じだ。
それでも時期尚早だというならそれもそうかもしれん。
参戦を表明してくれた作者も、今から撤回してくれても構わん。
192:創る名無しに見る名無し
09/06/21 12:49:45 OlbdlxGd
ま、企画が企画だしゆっくり考えてけば良いよ
まぁ本編間際の息抜きって感じで楽しんでさ
193: ◆klsLRI0upQ
09/06/21 14:30:06 aihB4jXB
CR参戦します、よーわからん場合はキャラ世界観ぶっ壊しまくっても構わんです
赤い光の正体はそれなりに引っ張る予定なので、自分の執筆がそこまでいけてなかったら
なんかよくわからん不思議パワーとして扱ってもらえるとうれしいです
クロスオーバーで新規設定にされると嬉しくなって作者に抱きつきます(富野監督風にw)
とりあえず一応の描写のイメージとばらしてもいい程度の設定だけ
無視、改変いくらでも来いなので参考程度にしてくださいw
・黒峰潤也
あんまりまだ描写してないので詳しく書けないんですが
一言だけ言うと捻くれ者です
一応、SIDE Cの終わりに・・・ゲフン、ゲフン
・リベジオン(ブラックファントム)
いわゆる魔王のイメージです、鋼機をベースにしてますが、操縦方法が鋼機と若干違います
武装は多機能可変の槍(普通に突くのと展開して遠距離射撃をする二つの機能があります)
両方とも赤い光を利用していて突いた対象を消滅させたりします、自己修復機能持ちです
赤い光が漆黒の機体を駆け巡るイメージです(若干、違いますがOFのエネルギーラインのイメージに近い)
ロストテクノロジーが使われていますがベース自体は昔の機体をベースにしてますので、そこら辺をクロス設定に使ってみると面白いかも
・鋼機
作中であんまり説明する余裕が無さそうなので、せっかくなのでここで説明
これ自体はこの間公開した、シャドウミラージュから設定をほとんど変えずに作ってます
共通武装はバイブレーションナイフのみです
コンセプトはシンプルなベースを使ったカスタム機で搭乗者によてMSV並のバリエーションが出来たら良いなーとかいう、儚い願望がありますw
武装に関してはかなり自由です、作中で出す武器はモンハンとMGSの二つをモチーフにしてたりするのでそこら辺から武器をチョイスして貰えれば俺のイメージに近いと思います
弓系の武器とかは爆弾矢を発射するみたいな感じで考えています
出てない武器を使っても俺の中では違和感全然ありません、ビーム兵器は現状ではまだ出す予定が無いのでちょっとイメージとは違うかも知れない
作中に出てきたディールダインというのはエネルギー増幅作用がある特殊な鉱物です
これを用いる事によって、低燃費で高いエネルギーを得る事が出来ます
これを使う事によってアインツヴァインは機体の小型化と多機能化に成功しています
ただし、あんまりにもエネルギー増幅量がピーキーなので、中々実用化には至れませんでした
それをさまざまな研究の末に実用化したのがS-21アインツヴァインになります
形式番号を21にしたのはBJから、アインツヴァインは逆転の意味を含めて
・鋼獣
えーと、SIDE Bの時点で気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが
驚異的な能力と引き換えに索敵がゴミ屑レベルです、あとあんまり数がいません
数がいないから政府軍が持ちこたえられているという感じです
ちなみに天狼は鋼獣の中の下ぐらいの能力です
これも本編で説明するか不明なんで言っておきますが特に空中にいるときは聴覚の神経をカットしているので、まったく音が聞こえないなんて状態になってます
その内(といっても今、非常に忙しい状態ですので申し訳ないが少し時間かかると思います)、レポートみたいな形式で政府軍側から見た鋼機に関しての考察みたいなのを投下する予定です。
一度書いてたのがデータ飛んじゃって涙目になってたりはするんですが(´;ω;`)
・秋常譲二
正統派主人公タイプ
熱血漢かつ、頭が良いが熱し易いのが難点
最新鋭機アインツヴァインの開発が彼がいてこその賜物
リベジオンに嫉妬と羨望が混じったような感情を抱いている
・シャーリー・時峰
世界政府第七機関「イーグル」所属で戦闘部隊の隊長、一応この人に関しては説明したのでまあいいかと
シスターズも参戦させたいけど
こっちは現状じゃ背景まったくなくて無理だからな(´・ω・`)
まあ、乱入させやすい設定だけど、無理やりがいくらでもできる設定だし
194:創る名無しに見る名無し
09/06/21 20:12:32 4EOwdomD
反応を見た感じ、みんなが企画の是非も含めてちゃんと意見を出してくれそうなので、俺が仕切る必要もなくなった。
よって俺は一参加者に戻る。不快な思いをさせてすまなかった。
1からみんなでやり直そう。
>>193
感謝する
195: ◆kNPkZ2h.ro
09/06/21 23:01:21 zBUNMCpS
予告どおりリアルロボット系にて参戦!
といってもボトムズとかガサラキとかの様な小サイズのロボットです
そしてガンパレ風味
少女機甲録(仮)
1/15
建物の影に身を屈める様に隠れていた87式機士の頭部センサーアイに光が灯り、ゆっくりと上半身を起こす。
身長4mの人型の装甲騎兵はその鋭敏なセンサーに複数の敵影を捉えていた。
敵の発する熱量、歩行する時の振動を各種のセンサーが関知し、その種類と数が即座に分析される。
「ガールズ・マルヒト(01)よりガールズ・マルマル(00)へ…
タイプA、6 タイプB、4 本町信号機前を通過し国道227号線を南下中…予定通り市営住宅の火点で迎撃する
マルヒトとマルフタ(02)はこれより誘導を開始、3秒間の射撃の後、後退する」
マルヒトの符丁を与えられた87式機士に搭乗するパイロットは10代の少女特有の高いソプラノの、透き通った声で仲間へと通信を行う。
接近してくる敵に電波無線が傍受される恐れは無いが、奴らはこちらと同様に熱や音には鋭敏な感覚センサーを有している。
目前500mにまで接近してきた敵に気付かれないよう慎重に立ち上がったつもりだったが、しかし気づかれてしまったようだ。
舌打ちをして操作グリップに回避行動の命令を入力する。
1秒後には隠れていた建物のコンクリ壁に十数本もの太い槍の様な弾丸が打ち込まれていた。
196: ◆kNPkZ2h.ro
09/06/21 23:02:14 zBUNMCpS
2/15
「マルヒト、射撃開始! 撃(て)っ! マルフタ援護っ!」
87式機士の右腕に装備された25ミリ機関砲がバースト(点射)モードで炎を吹く。
ドンドンドン、ドンドンドン、と2回に分けて三発ずつ打ち込まれた砲弾は敵、タイプAの6本足のうち3本を吹き飛ばし
マルヒトはそのまま背を向けて全力で後退した。
それを援護するマルフタの、同じく25ミリ機関砲のドンドンドンドンドンドンという連続した発射音。
マルフタはどうやらフルオート(連射)で撃ちまくっているらしい。
「マルフタっ! 射撃はバーストでって行ったでしょう!」
後退射撃位置に付いたマルヒトは事前の申し送りをマルフタが無視したのを叱責しながら、マルフタの後退するのを援護するために再度射撃を行う。
マルフタは連射でタイプBの1体の胴体を蜂の巣にすると、迅速に後退行動に入る。
これを繰り返しながら、じりじりと後退を続けるのがマルヒトとマルフタの任務だ。
「火点に到達するまでに敵の数を減らしておくのも大事だと思うけれど」
「そういことは考えなくていいの! 私達は軽装甲なんだから、まともに敵とやり合おう何て考えない!!」
197: ◆kNPkZ2h.ro
09/06/21 23:03:12 zBUNMCpS
3/15
言葉を交わしながら、後退→射撃・援護を交互に繰り返す。
軽騎兵型である87式の装甲防御力は頼りない。 敵の針弾を一発食らっただけでも戦闘不能になることもありえる。
致命部位に損傷を受けたら、それはパイロットの死を意味するのだ。
だから、マルヒトとマルフタの与えられた任務は偵察と、建物から建物へと退きながら敵をこちらが罠を仕掛けているポイントまで誘導する囮だ。
今のところ、被弾は無い。 あと800m後退すれば、火点に到達できるはずだ。
と、後方から白い煙の尾を弾いて一発のミサイルが飛翔してくる。
そのミサイルはおそらく目標にしたであろうタイプAと自身の間にある民家に突っ込み、爆発した。
「マルマルっ、今の誰!? まだ攻撃距離じゃないでしょ!? マルナナ(07)!?」
マルヒトが怒りの声を上げると、ノイズ交じりの通信にマルナナが答えた。
「私じゃねーよ、初李だよ。 だから言ったじゃん、こっからじゃ当たんないって…」
初李、とはマルハチ(08)のパイロットの名前だ。
マルナナ・マルハチの82式機士は砲撃・火力支援型の砲兵型と言われるタイプである。
砲やミサイルを装備し、遠距離から装甲目標を精密攻撃したり、小型目標を面制圧したりする。
「…87式と82式はデータリンクがあるから、マルヒトかマルフタが照準している目標に誘導が可能だわ」
「何馬鹿なこと言ってんの! 打ち合わせにあったこと以外はしない! それに、81式誘導弾の性能じゃ
市街戦では建造物が邪魔になって当たらない!! ボケてるの!?」
198: ◆kNPkZ2h.ro
09/06/21 23:03:58 zBUNMCpS
4/15
データリンクは情報共有、他者のセンサーで捉えた目標の情報を自分も手に入れることが出来る機能である。
例えば、マルヒトの87式機士が照準に入れた敵は82式のセンサー外にいてロックオンしてなくても、情報共有によって
ミサイルを発射すれば敵に命中させる事が可能である。
しかし、今マルハチの82式機士に装備されている81式誘導弾は障害物を自己判断で回避して目標に命中する機能は持っていない。
そのため開けた場所でしか使えないのだが、マルハチのパイロットは何故か発射してしまった。
もっともイチイチそれを責めていてもしょうがない。
マルマルからマルハチまで、パイロット全員が戦闘に関してはほぼ素人なのだ。
それに今は作戦行動中だ。 言い合いやお説教をしている暇は無い。
戦闘が終わって機士から降りた後にするべき事だ。
マルヒトは小さく舌打ちすると、諦めて任務の続行に専念した。
そして、マルヒトとマルフタが予定のポイントに到達しようとした時だった。
「よし、あと50m…ってちょっとぉぉぉ!?」
「全体、撃てーっ!!」
まだ敵が予定の攻撃圏内に入りきっておらず、マルヒト・マルフタが回避しきっていないのに火点から射撃が開始されてしまったのだ。
仲間たちの放った無数の機銃弾、砲弾、ミサイルの雨に飲まれ、閃光と爆発に囲まれながらマルヒトの操縦室内でモニターがブラックアウトした。
199: ◆kNPkZ2h.ro
09/06/21 23:04:58 zBUNMCpS
5/15
…機士という兵器の始まりは、まだ人類が剣と槍と鉄砲で戦争をしていた頃に遡る。
突如として戦場に革新を与えた新兵器、それは人間が装着する事で何倍もの筋力を得る事が出来、
しかも刃物も矢玉も跳ね返す頑丈な甲冑を纏った歩兵であった。
倍増した筋力によって通常の人間が複数でなければ持ち運び出来ない重火器を携帯でき、
倍増した脚力によって塹壕も障害物も楽々と越え、そして装甲によって銃弾の雨の中でも平然と戦い続けることが出来る。
まさに、絶対に倒れる事の無い不死身の兵士の登場だった。
やがて戦争は、強化服…パワードスーツとも呼ばれた甲冑を纏った兵士同士の戦いへと移行する。
パワードスーツ同士がぶつかり合い、銃弾や砲弾を浴びせあい、敵の火力に対抗するためにより重装甲に、
敵の装甲を打ち破るためにより重火力に、そして増大した装甲と武装の重量を支えられるようにより高出力に、
そうして性能を肥大させていったパワードスーツは通常の等身大サイズから、2m、3m、そして現在の4mに到達した。
それが、「機士」と呼ばれる装甲された巨人、人型兵器の誕生である。
現代では、歩兵の主力はほぼ機士だ。
機士以前の3m以下のサイズのパワードスーツを装備している歩兵部隊もまだ残ってはいるが、二線級の部隊が多い。
あるいは、技術や経済力の追いついていない後進国は旧来のパワードスーツを主力にしている。
しかしユニオン合衆国や日本、ヨーロッパ連合諸国や社会主義連邦などの先進諸国は機士を配備していない軍は
ほぼ存在しないというくらいに常識化している。
そして、戦車等の兵器はほぼ存在しない。
昔から、野戦砲などはパワードスーツで牽引すれば良かったので、車両の発達を促さなかったのだ。
そのため、現在の軍隊の多くは輸送車両や、一部の自走榴弾砲や自走ロケットランチャーを除いて戦闘車両は無い。
装輪式の軽戦車・駆逐戦車というものを配備している軍隊があるのみだ。
200: ◆kNPkZ2h.ro
09/06/21 23:06:20 zBUNMCpS
6/15
このように優秀性を発揮した機士に代表されるパワードスーツ兵器だが、大きな謎があった。
一つは、誰がどのようにしてこのような兵器を発明したのか全く不明である事。
もう一つは、パワードスーツの搭乗した当時、人類はまだ蒸気機関車の黎明期にようやく手が届くという程度の
文明しか持っていなかったにも拘らず、パワードスーツというオーバーテクノロジーを手に入れることが出来たという事。
最後の一つは、パワードスーツを初めとして、この世界でそれらの発達した兵器の製造を担っている
「セントラル」と呼ばれる企業組織について、誰もその詳細を全く知らないという事だ。
そして、その機士という兵器、現代の甲冑を身にまとい北海道は函館を守るために日々訓練している少女達が存在した。
「……全員、そこに正座!!」
コンピューターソフトによる訓練シミュレーションプログラムが終了し、ソフトの自動採点の結果が
Bマイナスという厳しい評価だったことよりも何よりも、訓練中の様々なことがマルヒトのパイロットである
葉倉 玲(はくら れい)の怒りを有頂天に到達させていた。
一つ、僚機であるマルフタのパイロットである井沢 咲也(いざわ さくや)は無駄に弾を撃ちまくる。
一つ、砲兵班のマルナナのパイロット、野礼寺 初李(のれいじ はつり)は攻撃圏外からミサイルを撃つ。
一つ、極め付けに、予定のポイントで攻撃するタイミングが早すぎる。 あまつさえ、自分ことマルヒトと、マルフタが
退避を完了してないのに巻き添えにする。
おかげでマルヒトは大破・戦死判定、マルフタは脚部大破、脱出判定…
「これがシミュレーションじゃなくて本番だったら、私死んでたのよ? そんなに私を殺したいわけ?
敵じゃなくて味方を撃ちたいわけ? だいたい、事前に作戦内容を3回も念入りに説明したよね?
何聞いてたの? 聞いてなかったの? それとも私の説明が足りなかったの? 馬鹿なの? 死ぬの?」
201: ◆kNPkZ2h.ro
09/06/21 23:07:25 zBUNMCpS
7/15
一列に並んで正座させられている陸上自衛軍第28連隊の第4中隊の面々は、顔を下に向けてシュンとしていたり
頭をポリポリ書いていたり、何を怒られているのか理解してなさそうなキョトンとした表情をしていたり、
私は何もしていないのに…と迷惑そうな顔をしていたりと様々だった。
中隊といっても玲を含めて14名、せいぜい2個分隊相当の人数しかいない。
そのうち、機士は8台しか無いので戦闘に出られるのは半分だけで、残りは整備班とか、機士のトランスポーター(輸送車)の担当だ。
戦闘に参加してない(シミュレーターを見ていただけ)のに正座させられた上にお説教もされて不満顔の整備班だがこれも連帯責任という物である。
部隊は規律と結束が必要なのだ。
「えー…でも敵は全滅できたわけだし…ほら、麗は尊い犠牲という奴で」
「私はまだ尊い犠牲とかになるつもりは無いの! それとも今度はあんたが87式に乗って偵察と囮をする!?
でもって味方に撃たれて見なさい! このスカポンタン! 幕の内!」
「ま、まくのうちゆーなー!」
言い訳をしようとして、逆にどなりつけられて涙目になりながらうーうー抗議しているのは暮内 麗美(くれうち れみ)。
重歩兵型の89式機士、符丁マルサンを担当し、一応中隊の隊長を任命されているが隊長としての威厳はあんまり無い。
幕の内という彼女のあだ名は配属初日の顔あわせで名前の暮内を「幕の内」と読み間違えられたのが原因だ。
そして、今のところ中隊長である麗美よりも、先に第4中隊に着任して訓練を始めていた玲の方が「最先任」であり立場が上だ。
中隊長というのは本来、幹部(士官)である。
しかし、軍隊というのは階級よりも「先にいた先輩」の方が立場が強いと言う事がある。
経験者である最先任は中隊長や小隊長の補佐をするサブリーダーであり、時には中隊長に代わって部隊を取りまとめる陰の実力者である。
202:創る名無しに見る名無し
09/06/21 23:10:32 gv19nYhT
支援
203: ◆kNPkZ2h.ro
09/06/21 23:10:37 zBUNMCpS
8/15
加えて、中隊長といっても麗美は配属されたばかりのド素人。
最先任の役目には新米隊長を厳しくも優しく叩き上げて一人前に鍛えることも含まれている。
玲の麗美に対するそれも、中隊長に早く立派になって欲しいという愛の鞭である…はず。
「まあまあ玲、そのへんにしとこーよ。 仮にも中隊長様がかわいそうだ」
「真璃、あんたは82式の装備が打ち合わせと違ったみたいだけど、またシミュレーション設定を勝手に弄ったの?」
助け舟を出そうとした桐嶋真璃(きりしま まり)、マルナナのパイロットが玲に問い詰められて慌てて白々しく目を逸らす。
真璃は作戦内容の用途や役割よりも、自分の好み・趣味で装備を選びたがる傾向がある。
この間も、迅速な機動力と陣地転換を求められる訓練で82式に重量のかさばる105ミリ砲を装備させ、足が鈍って
敵の砲撃で逃げ切れず大破判定をくらっていた。
「せ…戦争は火力だと私は思う! ランチェスター大先生も言っていた!」
「そうね、戦争は火力ね。 ついでに言えば弾幕ね。 でもって敵、『ワーム』は装甲は固いから小銃弾は効かないけど
20ミリ機銃や40ミリ機関砲は有効だから、それらによる銃弾の雨を浴びせるのが一番いい。
単発の威力が大きい105ミリは魅力的なのは私もわかる。 でも徹甲弾を撃つよりも、榴弾の方が効果的。
…そういえば私、今回は105ミリ砲弾を食らって戦死したようだってシミュレーションソフトは分析しているのだけど
真璃、あなた私を狙って撃ったとかそういうのは無いよね? いくらなんでも、味方を狙って撃ってるとかは無いよね?」
玲が般若の様な恐ろしい表情で笑いながらじっと見つめてくるので、真璃は顔を絶対に正面を向けることが出来ない。
しかし、玲は横に回って嫌でも真璃と顔を合わせようとする。 怖い。
ダラダラと嫌な汗が真璃を襲った。
「玲…あんまり真璃を虐めるのはよしなさいよ。 真璃だってわざとやったんじゃ無いんだろうし」
「有理、マルヒトとマルフタのそれぞれの大破判定に合わせて、整備班に両2機の徹夜の完全整備を申し付けようか?」
「OK、真璃の責任ね! 全部真璃が悪い!」
麗美を助けようとして自分の薮蛇状態になってしまった真璃を助けようと整備班の真門 有理(まかど ゆうり)が
口を挟もうとするが、同じように薮蛇になる事は速攻で回避した。
真璃と有理は親友同士ではあるが、玲の怒りの矛先が我が身にも及ぶようなことだけは御免こうむるようだ。
そして真璃は「うらぎりものぉ…」と泣きそうな顔になりながら呟いていた。