ロボット物SS総合スレ 3号機at MITEMITE
ロボット物SS総合スレ 3号機 - 暇つぶし2ch1:創る名無しに見る名無し
09/05/28 02:42:19 gvDSlDn5
ロボット物のアニメ・漫画・小説・ゲームの二時創作から、
オリジナルのロボット物一次創作まで何でもどうぞ。


・ガンダムやマクロス等の有名作は、該当する専用SSスレが立った場合はそちらへ。もしなければ全部ここでやればいいんじゃあないでしょうか。
・次スレは>>980が立てて下さい。また、容量が470KBを超えた場合は要相談。
・立てられない場合は報告及び相談を。
・ルールを守って、楽しく創作活動に励みましょう。
・動けぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!

まとめwiki
URLリンク(www13.atwiki.jp)

前スレ
ロボット物SS総合スレ 2号機
スレリンク(mitemite板)

2:創る名無しに見る名無し
09/05/28 02:43:42 gvDSlDn5
容量オーバーしてたので急遽立てさせてもらいました

3:創る名無しに見る名無し
09/05/28 05:34:39 Lq6P+AA+
容量オーバーしてたのか…タイラントオーバー>>1乙

4:創る名無しに見る名無し
09/05/28 15:49:33 V68Ilde/
スレ発祥連載作品紹介!(※紹介文には多少の誇張表現も含まれています)



【荒野に生きる(仮)◆8XPVCvJbvQ】
再生暦164年、コンクリートの荒野が広がる未来―。
獣の耳と尻尾を持つ「ヒューアニマル」の少女達はひたすらに戦う。対鋼獣用人型兵器・ヴァドルを駆って―!!
怪獣VS獣耳っ娘!? 話題騒然のデスマッチ!!

【CR ―Code Revegeon― ◆klsLRI0upQ】
これは、悪夢に立ち向かうちっぽけなひとりの人間と、「怨嗟の魔王」と呼ばれた機神の物語。
アンノウンの襲撃で家族を失った潤也は、漆黒の鋼機・リベジオンの玉座に身を沈める。反逆と復讐を遂げるために……!
人類震撼! 暗黒のレコードオブウォー!

【瞬転のスプリガン◆46YdzwwxxU】
スーパーカーから伸びる鋼の腕―神速の挙動と極微の制動を可能とする、エーテル圧式打撃マニピュレータがその正体!
異世界の侵略者・魔族により廃墟と化した街角で、幼いことねは機械仕掛けの拳法家を目撃した。
変形ロボットならではの技が炸裂する、極超音速機動武闘伝!

【パラベラム!◆1m8GVnU0JM】
Si Vis Pacem, Para Bellum―汝、平和を欲さば、戦への備えをせよ
意思ある機械人形(オートマタ)・リヒターと、彼のマスターとなった少女・遥(19)の戦いが始まった!
なんだかおかしなキャラ達による軽妙な会話と、動きを魅せるアクションに定評あり。ファンタジックロボット冒険活劇!

【ザ・シスターズ◆klsLRI0upQ】
平凡な大学生、大野啓介の元に届いた大きなダンボール箱
その中に入っていたのは妹を自称するヒューマノイドで――
超展開を超展開でねじ伏せる、お気楽ドタバタロボットコメディ!

【電光石火ゼノライファー◆.dMD1axI32】
「俺、戦うよ。兄さんの代わりに」
正体不明の敵「アンノウン」来襲! 柊頼斗は兄の遺志を継ぎ、巨大ロボット・ゼノライファーに搭乗する!
少年少女の思いが交錯する超王道スーパーロボットの活躍に、キミのハートもブレイズアップ!

【Tueun◆n41r8f8dTs】
全てを無くしたこの世界で―青年と人形は明日を咲かす
荒廃の大地に安住の地を求めるショウイチ。彼と旅する巨大トラクター・タウエルンには、とんでもない秘密が隠されていた!?
「家業継ぐわ…」「農業ロボ!?」 そんなスレ内の小さな種(ネタ)から◆n41r8f8dTsが丹精こめて育てた、痛快娯楽開墾劇!

【海上都市姫路守備隊戦記◆gD1i1Jw3kk】
「鉄の鎧を纏いし日出ずる国の兵」。帝国に虐げられる民が希望を見出した救世主伝説。
兵士として生きる男・清水静が愛に目覚めた時、戦乱の異世界に重装甲強化服のローラーダッシュの唸り声が響き渡る!
止められるものなら止めてみよ! 熱と硝煙! 剣と魔法! 凄絶無比のヘビーアーミー!

【最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ◆46YdzwwxxU】
ドゥビドゥビッドゥ! ドゥビドゥビッドゥ! ドゥビドゥビドゥビドゥビッドゥドゥビドゥビ!
今日も今日とてロボヶ丘市で激突するのは、変な正義と変な悪!
ハイテンション! 歌うスーパーロボットバトルアクション!



・読者側は、積極的にエールや感想を送ってあげよう! 亀レスでも大感激! 作者はいつまでだって待ってるもんだぞ!
・作者側は、取り敢えずは作品で語れ! 自分のペースでも完結まで誠実に奮励努力せよ!
・我らスレ住人は、熱意に溢れた新作をいつも待ち望んでいる! 次スレの紹介文には、キミのロボットも追加させてみないか!?

5:創る名無しに見る名無し
09/05/28 15:52:52 V68Ilde/
荒野とゼノライファーの二名のチェックがまだだけど、大きく外れてはないと思う。
何かあれば次スレまでに修正します。

>>1

6: ◆8XPVCvJbvQ
09/05/28 17:25:37 0shbhpAx
時間に余裕が出来て、そろそろ投下出来そうだから覗いてみたら、何か面白い事になってるw
そして自分のヤツが的確に纏められてて笑ったw随分前に投下して以来だけど、纏めてくれた人ありがとう。
スレがたつ前に修正出来ればよかったけど、一足遅かった。>ヒュー「マ」ニマル。「ヒューマン」+「アニマル」の造語。

でも、こういう要点を纏めているのって良いね。
内容が把握しやすい分、読み手に親切だ。

とりあえず、近々投下させていただく報告ですた。

7:創る名無しに見る名無し
09/05/28 17:36:42 V68Ilde/
大変失礼しました。ああ素で間違えていたとも。

8:瞬転のスプリガン(3) ◆46YdzwwxxU
09/05/29 00:18:49 b7RuS2/r
みなさん乙です。
さっそく投下します。一番乗りかな?

9:瞬転のスプリガン(3) ◆46YdzwwxxU
09/05/29 00:21:02 b7RuS2/r
 スプリガンが捌きを主体に敵の体勢を崩し飛礫のごとき強打を浴びせれば、ドルンドメオンは再生能力を前提
に巨岩のふてぶてしさで一撃必殺を狙う。
 鮮烈の青と深遠の黒。
 神掛かった瞬発力と電光の反応速度のスプリガン、悪魔の憑いたような生命力と予知めいてさえいる防衛本能
のドルンドメオン。互いに決め手を欠いたまま、二体の巨人は丁々発止と打ち合う。
「分かっているぞ、スプリガン。オルピヌスに曝け出すまいと、まだ本力を隠しているのだろう。愚かしくも憎
めなんだ我が配下、リクゴウを屠ったあの流儀だ」
 赤銅色の魔族オルピヌスは二人から一定の距離を保ち、複眼を光らせている。長く垂れた触覚の動きが止まる
様子はない。人族の兵隊カーストの一挙一投足を探るのだ。
 魔族にとって、スプリガンはこれまで遭遇したことのない強敵だった。
 もちろん、人類との戦いで死傷した魔族もいないわけではない。だが、それは数匹のスズメバチが蜂球となっ
た数百匹のミツバチに焼き殺されたようなものであり、一対一の格闘戦で圧倒されたなどといった記録は皆無と
言い切って良かった。新種との交戦データとなれば、価値は計り知れない。
「ふむ」
 膠着状態に業を煮やしたか、ドルンドメオンが不意に間合いを大きく開いた。思案げな響きに上位個体の意思
を察したオルピヌスがすぐさま背後に控える。
 無機質な複眼が光を孕む。
「ならば本気を出させてやろう」
『何だと?』
 演算能力を戦術の検討に費やしていたスプリガンは、咄嗟に真意を量りかねた。
「今の貴様と我とは実力伯仲。ならば我が力を増せば、貴様は流儀を披露するしかあるまい」
『力を、増す』
 スプリガンには思い当たる節があった。
 予想される事態は、期待されていた勝利の確率に激変をもたらす。心臓が跳ねるように大きく。
『メンタルバーストか!』
「そのような呼び方は知らぬが」
 魔族の戦士は憮然とした声を発した。それは、あくまで人類の呼称にすぎない。
 魔族のうち上級のものは、平時に余剰エネルギーを魔石というかたちで体内に蓄えておき、必要に応じてそれ
を崩壊させることで莫大なエネルギーを取り出す。
 それが、メンタルバーストである。
「あのリクゴウも間違いなしと太鼓判を押すに相違あるまい」
『させると思うな』
 胸の奥に焦燥が燻ぶるように、スプリガンの出力がじわじわと暴走気味に値を伸ばす。
「持ち堪えよ、オルピヌス。三秒もいらぬ」
「承知」
 進み出る赤銅の魔族。スプリガンの視界で存在感を増したその体色は、使命感に燃えているようだった。生け
る盾となり外敵からコロニーを防衛する、兵隊カーストの本分。
 ある種のハチやシロアリなど真社会性の昆虫は、生殖者・労働者・兵隊といった階級(カースト)に分化し、
役割を分担して生活している。
 生殖とは生物の究極の目的のはずだが、例えば兵隊アリは子孫を残さない。ならば彼らは自分の遺伝子に興味
がないのかというと、そうではないという。人間に例えるなら、子どもを産んで莫大な養育費を掛けるよりも、
甥や姪など血縁者の子どもを支援し続けた方が遥かに楽に自分に近しい遺伝子を残すことができる。個体数や生
存確率、コストや共通する遺伝子の割合を冷徹に計算した結果なのだ。
 だから彼ら兵隊カーストは、巣を襲撃する捕食者とも命懸けて戦うことができる。
 魔族を大別する四大属の中でも昆虫に似た彼ら甲属の魔族は、生殖カーストたる猛甲ラピュラパズロイと契約
を交わした、死を恐れない狂戦士だった。

10:瞬転のスプリガン(3) ◆46YdzwwxxU
09/05/29 00:21:58 b7RuS2/r
 もっとも、それは機械仕掛けの拳法家とて変わらない。
 蒼穹よりもなお青いスプリガンが急加速。疾走しながら弓を絞るように右腕の肘を引く。すぐ右側を流れてい
く建築物の群れとは、接触しないのが奇跡というべき、数センチメートルの距離だった。
 瞬きひとつの最接近に、オルピヌスが構える。背面からエーテルを高速噴射。短時間ならば体重の大きい魔族
をも飛翔させ得る推進力がスプリガンを待ち受ける。
 ビルと胴体との間の翳に隠されていたスプリガンの豪腕が、ビルの壁面を舐めるように射出される。
 極超音速すら越えた神速のために、魔族の時間分解能をもってしても全貌は不明。それでも、言えることがひ
とつだけある。
 赤。
 そう、赤いのだ。どこまでも青いはずのスプリガンの右手が。
 目映いばかりの赫光を帯びた、それは炎の拳。
 立ち塞がるオルピヌスの左上腕に着弾。
 鉤状の突起によって大地を掴まえる魔族の爪先が空中に投げ出され、重力に引かれて大地に激突する。万全の
態勢から止めようとしても持ち堪えられない巨大な運動量。
 傷口から溢れ出る体液を蒸発させながら、オルピヌスの赤銅色の上肢が千切れて宙を舞った。びっしりと生え
ていた棘は熱に融解し、焼け爛れた腕と混じり合う。
 本体もただでは済まない。左半身には重度の熱傷。体液は煮え滾り、甲殻は沸騰して気泡を生じる。
 遅れて轟音。スプリガンの右後方、ビルの壁面が無惨に抉られていた。破壊痕に刻まれた幾何学模様は、スプ
リガンのタイヤの溝と一致を見る。
 構造物に引っ掛けたタイヤの摩擦力で腕の振りを掣肘。それだけならば速度が落ちるが、それに抵抗させるか
たちで蓄えた駆動力を解放すれば、単純に殴るよりも遥かに強力な打撃が可能になる。
 それだけではない。スプリガンはもともと、流体の微細な乱れに干渉することで一帯の衝撃波を分解し、自機
や周辺の構造物に掛かる負荷を軽減している。その微小擾乱整流技術を応用すれば、大気圏に突入した隕石が曝
されるような高熱を、より低速で得ることも容易だった。
 エーテル圧式打撃マニュピレータの先端を、急速に圧縮された空気が生じる熱により赤熱化。
 流派超重延加拳“火炎車”を発動したスプリガンが纏うのは、魔族の甲殻の断熱能力を凌駕して焼夷効果を発
揮する、地獄の業火からの貰い火。

11:瞬転のスプリガン(3) ◆46YdzwwxxU
09/05/29 00:23:04 b7RuS2/r
『未熟』
 白煙と陽炎が揺らめく光景の中、青に還りつつある巨躯が姿勢を直立気味に戻す。
 破壊力においては流派最強の技のひとつとして数えられる火炎車だが、ここに重大な欠点を露呈していた。
『今の私では、精度が落ちるか』
 しばし訪れた静寂を最初に破ったのは、スプリガンの痛恨の言葉だった。
「……ぎ、ぃっ……!?」
 それは呻き声だったのか、関節の軋む音だったのか。
 酸鼻を極める姿になりながら、オルピヌスは九死に一生を得ていた。スプリガンのスピードに反応できず、体
を張っての防御にならなかったことが逆に幸いしたとも言える。肩から先を吹き飛ばしながら、鋼の拳じたいは
左上腕を抉っただけで、直撃ではなかったのだ。
 そして。
 エーテルブラスト。
『ちっ!』
 スプリガンは見切って躱すが、暴風めいた余波によってオルピヌスから引き離される。
 人類に気づかれることなく世界に満ちていた、粒子であり波。魔族やスプリガンが我がものとする超常能力の
根源。魔族が用いる言語を借りて命名された、それがエーテルである。
 ある種の魔族はそのエーテルを不可視に近い帯として放射する、エーテルブラストという強力な攻撃手段を有
する。発動に何らかの制約があるらしく乱発はしてこないが、最も警戒するべき武器のひとつと言えた。
「再生には時間が掛かりそうだな、オルピヌス」
 廃墟に聳え立つ魔族の戦士ドルンドメオンは無傷だった。
 全身から炭化した闇黒の甲殻が、剥離していく。上へ、上へと。魔窟より飛び立つ蝙蝠の群舞のようだった。
脱皮するその下には、美麗種の甲虫を思わせる金属光沢の黒色。
 ドルンドメオンは内臓を灼く火炎車の熱波を、抜け殻と積層甲殻の二段構えで遮ったのだ。
『メンタルバースト……』
 スプリガンは沈黙。呆然としているふうに見えるが、状況の変化に応じた再演算を実行している。
 導き出される勝利の可能性は、極めて低い。
 メンタルバースト。カルシウム不足に陥った体が骨から成分を溶かし出すなどといった働きに感覚としては近
いが、魔石の機能はより攻撃的といえる。体質や形態をも劇的に変えてしまうそれは、昆虫における羽化や、い
わゆる特撮ヒーローにいう“変身”にも等しい。
 変身。
(ただでさえ化け物じみた魔族が!)
 臭い立つような殺気。
 魔族の戦士ドルンドメオンのシルエットは大きく変貌を遂げていた。ブラックホールが誕生したかのように、
そこだけが深淵の暗闇に思える。
 白昼の悪夢が始まった。

12:瞬転のスプリガン(3) ◆46YdzwwxxU
09/05/29 00:23:46 b7RuS2/r
今回はこんなとこで。
なんか短い上にタイミングの微妙な説明ばっかでスミマセン。もうちょっと読みやすくしたい所存。
「火炎車」というネーミングは1スレ目の>>995さんからいただきました。ありがとうございました!

13:創る名無しに見る名無し
09/05/29 10:41:17 8RelUY/9
どういたしまして!

14:瞬転のスプリガン(5) ◆46YdzwwxxU
09/05/30 08:02:13 5aipMBAT
 荒々しい靴音で目が覚めた。
 椅子の背もたれに上体を預け、食後の昼寝と洒落こんでいた天農は、顔に被せていた少女漫画をずらして扉の
方を見やった。まるでアイマスクを着けたように、鼻から上半分を翳は隠れている。
 そこは狭い部屋だった。
 年季の入った事務机には、だいぶん旧型のパーソナルコンピュータ。無造作に載せられた青いミニカーが木目
に映える。
 壁一面を覆う本棚には、まるで統一性のないジャンルの書籍が、滅茶苦茶に突きこまれていた。
 対魔族兵器の開発に関する研究所、客員である天農にあてがわれた一室。
 魔界に通じる門、エーテルポイントが地上に現れるようになって数年―。
 そこを征途に地上侵略に乗り出す魔界の住人“魔族”は、災厄や疫病にも近しい、人類史上最悪の敵のひとつ
となった。
 魔族との戦い方を模索する研究施設は、今や世界中に点在し、複雑なネットワークを構築している。熾烈な派
閥争いも見られるにせよ、人類は概ね一丸となって、異世界からの侵略者に立ち向かっているといえた。
 ノック音が立て続けに鳴らされる。手加減なしの乱暴さに天農は嘆息を漏らした。
「天農さん! いらっしゃるんでしょう?」
 金切り声は、ドア越しにも響くほど大きい。声の主の女が激昂していることは明らかだった。
「失礼しますからッ!」
 返事を待たずに重たい扉が開け放たれる。そのまま壁に叩きつけんばかりの勢いに、天農は破損を心配した。
 リノリウムの床を打ち抜く硬質な靴裏の響きが再開し、すぐに止んだ。
 地味な色のスーツを着た女研究員が、天農の傍に仁王立ちしていた。
 藤本久仁枝(ふじもと くにえ)という名前を、天農はどうにか思い出した。
 平時から癇の強さの表れた顔立ちだったが、今は般若の相になっている。彼女の表情に鬼女の能面のイメージ
を重ねてしまって、天農は危うく吹き出しそうになった。
「天農さん! 毎日毎日、HWS-03に何を教えているんですか!」
「拳法」
 刺々しい糾弾の響きにも、天農は平然としたものだった。このところの自らの行動を顧み、彼女の怒りの原因
を悟りながら、悪びれもせずに答える。
 ここではHWS-03という型式番号で呼ばれる、無人の人型兵器。
 天農は訳あってその機械仕掛けに心を宿らせようと試み、“超級人工知能”を用いてそれに成功していた。
 問題は通常の電子頭脳に比べてよりデータの入力に慎重を期す必要があることで、HWS-03は現在も様々
な学習の課程にある。そのプロセスは、産まれたばかりの赤ん坊を育て上げていくのにも似ていた。
「けんぽう……?」
 藤本は露骨に眉根を寄せた。ロボットについての彼女の常識にそのような概念はない。

15:瞬転のスプリガン(4) ◆46YdzwwxxU
09/05/30 08:04:10 5aipMBAT
「俺の流派だ」
 そう告げる男は、どこか誇らしげだった。
 白衣の裾から突き出た手はごつごつと骨張っており、何度も皮を破いた痕が窺える。
 “延加拳”の、天農。
 彼はロボット工学の専門家でありながら武術を嗜み、我流の拳法の開祖となった変わり種だった。学者離れし
た剽悍な物腰から、人類未到のはずの魔界から生還したなどとまことしやかに囁かれている。
 個人的な趣味から、魔族出現以前より研究されていた人型兵器(HW)を模倣し、規格外の性能を誇るロボッ
トを独創してみせたという、冗談のような実績の持ち主でもある。情勢の悪化に危機感を覚えた政府によってそ
の機体“HWS-03”が接収された時から、客員として研究所の一席に収まっていたが、性格と素行の悪さか
ら同僚達の顰蹙を買っていた。
 藤本としては決してぞんざいには扱えない人物だったが、HWS-03を未だに私物化しているような彼の言
動にはよほど腹に据え兼ねるものがあるらしい。
「HWSシリーズの挙動については、既にカリキュラムが組まれているでしょうに。あなたが自修時間に邪魔す
るせいで、スケジュールに遅れが生じているんですよッ!」
「分かった、分かったから。そうキンキン声で怒鳴らんでくれ」
 まるで子どもを遊びに連れ出してばかりの父親と、教育熱心な母親の態だった。
「だいたいですね」 
 当事者でありながらどこ吹く風と受け流す天農の神経に呆れ果てながら、藤本はこの機会に日頃の鬱憤を晴ら
してやるとばかりに矢継ぎ早に非難を浴びせる。
 烈火のごとき怒りは、いつしか燻ぶるようなものに変わっていた。
「あのファンタジックな呼び名は、あなたが付けた愛称なのですか? HWS-03は、まるで自分本来の名前
であるかのように話していましたよ」
 それを聞いた途端に、天農の口許に喜色が浮いた。
「“SPRING‐GIGANT”、撥条仕掛けの巨人さ」
「邪悪な妖精の一種でしょう? 綴りは“SPRIGGAN”ですが」
「俺流の洒落だ。ちと強引なのは認めるがね」
 とぼけたことを言って、天農はもう話すことはないとばかりに漫画本の位置を戻した。赤色の目立つ表紙では、
主人公らしき少女が憂いを帯びた表情を浮かべている。円らな瞳の中にいくつの星が瞬いているのか何となく数
えようとして、藤本は自制した。眩暈を覚える。
「まだ話は終わっていません! そもそも殴る蹴るだなんてあんまり原始的です!」
「ゴキブリを殺すとき」
 静かだが有無を言わせぬ調子で、天農が藤本の声を遮った。
「君ならどうするね?」
 藤本が何か言いたげに口をぱくぱくとさせるが、構わず天農は言葉を紡いでいく。出鼻を挫いたかたちだ。
「ひとつ、足音を忍ばせて距離を詰める。武器は丸めた新聞紙か、殺虫剤のスプレーか。ふたつ、匂いで誘き寄
せ、罠に嵌める。粘着シートや毒餌だな。みっつ、部屋に有害物質を充満させ、一網打尽にする。そういう噴霧
器が最近の流行りらしい」
 列挙される屋内害虫の駆除方法。対魔族戦術になぞらえていることは、藤本にも容易に察しがついた。
「君のお好みは、確か殺虫剤のスプレーだったな。魔族にも効きそうな重火器を、いかに高い適応性を持って取
り回すか」
「ええ。少なくとも、新聞よりはましでしょう」
「だが、いくら殺虫剤が進化を遂げようとも、丸めた新聞紙を手に取る者が消えることはないのだよ」
「……ちょっと考えてみれば、ナンセンスな比喩です。状況がほとんど噛み合っていません」
 天農は「違いない」とあっさりと自論を放棄し、くつくつと可笑しそうに肩を揺すった。言い負かされた格好
だが、彼は頓着しない。屁理屈をこねて強弁はしても、議論をする気などさらさらないのだ。半分は気になる女
の子に嫌がらせをする心理にも近い。
「別に私も、殴る蹴るが悪いといっているわけではないのです。実際にHWS-03には魔族との格闘戦を遂行
するだけの力があるのですし。ただ……」
 議論を制したことで多少は溜飲を下げたのか、藤本も落ち着きを取り戻していた。客員の顔を立てておこうと
する余裕まである。

16:瞬転のスプリガン(4) ◆46YdzwwxxU
09/05/30 08:04:57 5aipMBAT
「それがベストとはとても思えないのだろう? ……君の感覚は極めて正常だ。俺だって拳法があれば他に何も
いらないとまでは考えていない」
 そもそも、一口に魔族と括っているが、その種類は多岐に渡っている。
 猛獣スチラロボススに率いられる獣属。毛むくじゃらの魔族。
 猛禽グーリーロックの翼下にある禽属。翼を携える魔族。
 猛鱗テティスカンティルラを隠す鱗属。鱗に覆われた魔族。
 猛甲ラピュラパズロイの仔である甲属。殻を纏った魔族。
 そして、権能によって四大属を統べる“魔王”。
 魔族とは、魔界に棲息する多種多様の高等生命体の総称なのだ。
 必然的に、種の特徴に合わせて臨機応変に戦術を変える必要がある。もちろんHWS‐03一体きりであらゆ
る敵と戦わなくてはならない法はないが、資材が不足している時勢でもあった。人型だからというわけではない
が、ある程度の汎用性が期待されてはいる。
「まあ、HWS-03なら、いずれはほとんどの種類の魔族を徒手空拳で殺傷できるようになるだろうがね」
「エーテルドライブ、ですか」
「そうだ」
 天農はにやりと笑った。
 魔族との戦いにおいて効果が期待される、謎多きエーテルの力。
 エーテルの制御には、これまで数多くの学者達が挑み、失敗してきた。その中には、極めて貴重な魔族の生体
組織を素材として用いた者さえ存在する。
 閉塞した議論の中で、「エーテルは心を通わせた生き物に味方する」という仮説を発表したのは、大ヘルマヌ
スの尊称で呼ばれる老齢の博士だった。彼はエーテルを空想上の精霊に喩えて、物理法則ではなく、人間の意思
や感情といった精神の働きに強く影響されると唱えた。
 当時の誰もが一笑に付したそのロマンチックな説は、やがて彼の弟子達の手で実証されることになる。
 ただしそれは、エーテルの利用に大きな制約が付き纏うことを意味してもいた。
 天農が、悪名高き欧州のヴォルゼウグ学派から第六世代型コンピュータを取り寄せてまで超級人工知能を完成
させたのも、それが理由である。
 結果として、ロボットであるHWS-03は心を持つことに成功し、エーテルドライブという機関により超常
の力を我が物とした。
 この件に関しては、対魔族兵器以外に利用されることを恐れた天農が、未だに厳格な秘密主義を貫いている。
 最初に組み上げられてから三年。改良を重ねたHWS-03は、心を得て、エーテルを得て、今や既存の人型
兵器を闇に葬り去るほどの力を獲得していた。
 天農は言う。
「あれはもはや、HWSシリーズがどうとかいう次元にない。言うなれば、金属の魔族だ」
 それは、鋼の体と人の技を武器とする、有り得ざる魔族。
 熱を帯びたその口振りは、四大属ではないという“魔王”を向こうに張るかのようだった。HWS-03のポ
テンシャルの一端を垣間見たことがあるだけに、藤本も不遜を糾せない。
「極超音速で陸海空を駆け、敵対者の全てを鋼の拳で打倒する、身長512cm/体重4075kgの鋼鉄の男。
HWS-03“スプリガン”こそ、次世代最強の対魔族兵器なのだ」
 目のない男は豪語した。
 廃墟と化した街角で幼いことねがスプリガンと出会う、数ヶ月前のことだった。

17:瞬転のスプリガン(4) ◆46YdzwwxxU
09/05/30 08:06:30 5aipMBAT
今回は以上です。ちょっと仕切り直しついでに前日談。
>>14の名前欄は誤りで、(4)になります。

18: ◆gD1i1Jw3kk
09/05/30 22:39:40 Tuf6ocF/
今週中に予告編2と後編を投下するつもりでしたが、予想以上に忙しくて無理でした。
というわけで、途中の予告編2前半を投下します。

19: ◆gD1i1Jw3kk
09/05/30 22:40:20 Tuf6ocF/
これは偶然重なってしまった異なる世界、交わり紡がれていく物語。

神の如き性能のマザーコンピュータによって支配された完全管理社会。その端末を兼ねる、人間を超える人間として創られた人工人間。
人類が生み出した中で究極かつ完璧な統治システムと完全な人間達を創ってしまった日本人は、優秀な「子供達」に本土から追い出されてしまう。
海上都市での生活を余儀無くされた日本人の人口は全盛期の半分以下、五千万人となっていた。
一部に本土奪還を目指す者はいるものの、皆「子供達」による保護と管理によって平穏な日々を送っていた。
誰もが知る歴史であり、現実。だがそうなっていない世界があるとしたら。
海上都市連合「正統日本」に所属する、旧式の小型海上都市「姫路」。
姫路守備隊重歩兵小隊隊長、清水静は全く違う世界へ召喚されてしまう。
偶然だったのか、それとも必然だったのか。答えは神のみぞ知る。
動き始めた運命の車輪は止まる事を知らず、更に速く激しく廻り続ける。





海上都市姫路守備隊戦記×最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ クロスオーバー作品





劇場版 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ 異世界からの来訪者 予告編2

20: ◆gD1i1Jw3kk
09/05/30 22:41:57 Tuf6ocF/
重装甲強化服の右脇に装着してある連装発射筒から放たれた100mm超振動極熱ミサイルは対戦車用に使われる切り札。
比喩ではなく本当に蟻一匹すら逃さない神の目の索敵と情報解析、1mmの誤差も無く正確無比に迎撃する嵐の如き間接防御射撃を潜り抜けて、
絶大な防御力の戦車に一撃で修復不可能な致命傷を与えられるように開発された。
レーダーに映らず、目に見えず、音も無く、匂いすら無く、あらゆる探知手段から逃れる高度な遮蔽と情報解析による精密な誘導を行いながら地表すれすれを飛行する対戦車ミサイルは、
最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの足元に到達すると慣性の法則を無視したような急上昇で顎に直撃、爆裂した。
ボクサーの渾身のアッパーカットで顎を下から突き上げられたように態勢を崩して後ろへ倒れていくネクソンクロガネの目から悪山の機械恐竜に放たれるはずだった二条の極光、ネクソンクロガネビームが虚空を薙ぐ。
そのまま倒れると思ったが、素早く片足を後ろに引いて態勢を立て直した。
「ダメージ無し、か」
ミサイルが直撃した顎下部に全く損傷が無い。
振動波と逃げも離れもせず極短時間で急速に伝播する特殊熱の相乗作用、分解蒸発で敵を撃破する振動熱兵器は絶大な威力を発揮する。耐振動熱防御と防御用振動熱発生機能の両方が無いならその威力は正に地獄の如く。
特に100mm対戦車超振動極熱ミサイルは通常の振動熱兵器よりも強力な超振動波と極大特殊熱を使用する。
欠片すら残さず完全に分解蒸発する危惧を考慮して、振動熱の威力を10分の1以下に調整して撃ったのだが杞憂でしかなかったようだ。流石は異世界のスーパーロボット、か。
巨人の顔が離れた場所にいるこちらを向き、碧眼が正確にこの三式重装甲強化服ブルーショルダーカスタムを見据えている。
ネクソンクロガネの全高は29.30m。重装甲強化服は全高3mと足底に装備した機動靴の15cmを合わせて3.15mしかない。全高だけで約10倍も差がある。巨人と小人、簡単に踏み潰せる体格差。
いや、それ以前にスーパーロボットと二世代も旧式の量産機では話にならない。戦えばどちらが勝つか、言うまでもないだろう。そんな事は骨身に染みて理解していた。
自分の役割は悪山の支援であり真正面からネクソンクロガネを打倒する事ではないが、並大抵の攻撃は全く通用しないのはさっき証明されたばかり。
手加減して対抗出来る相手ではない。全力で戦わせてもらおう。
現実と全く変わらない仮想訓練で飽きる程戦い続けてきたが、スーパーロボットとの戦闘経験は無い。自分の実力と重装甲強化服の性能がどこまで通じるのか試してみるのも一興。
自身の名前のようにどんな戦闘であろうと冷静であり続けてきたが、今に限っては子供のように気分が高揚していた。
こんな気持ちになった事は一度も無い。次元の異なる世界に召喚されてスーパーロボット相手に戦いを挑もうとしている今の異常な状況が精神に影響を与えているのかもしれない。
「行くか」
右脇の連装発射筒から二発目の100mm超振動極熱ミサイルを調整無しの最大威力で発射。同時に機動靴の自在車輪が最大出力で唸りを上げ、地形に合わせて自在に形状を変化させる。
右手に主兵装である25mm重機関砲、左手に鞘から抜刀した150cm振動熱斬刀を構えながら、時速100kmを超えるローラーダッシュでネクソンクロガネに向かう。

21: ◆gD1i1Jw3kk
09/05/30 22:43:30 Tuf6ocF/
以上。
後編はなるべく早く投下するつもりです。

22:創る名無しに見る名無し
09/05/31 07:05:57 N4A0BRUJ
ネクソンクロガネって本編を見る限りそんなに強く見えないw

23: ◆gD1i1Jw3kk
09/05/31 15:58:43 bMOOY/Hl
三式重装甲強化服ブルーショルダーカスタムは、例えるならザクⅡに近い性能を出せるよう改造したザクⅠですから。
ザクがガンダムに勝っちゃ駄目だろうと、そういう事です。簡単にダメージ与えられたらネクソンの作者さんが不愉快に思うかもしれませんし。
まぁ、劇場版本編ではネクソンクロガネを戦記側の技術で勝手に強化改造する予定なのでどう思うかは分かりませんが。

次まで時間が空きそうなので、重装甲強化服が使っている武装の設定を一部公開。

紛らわしいが機体そのものは重装甲強化服、兵士が着用した状態を重歩兵と呼称する。

重装甲強化服の武装

基本的に全て火薬ではなく電力で発射。使われている弾は全てケースレス弾です。

短針弾発射機 敵弾迎撃専用の間接防御兵器。頭部両側、こめかみに一基ずつ計二基装着するのが基本だが、機体の何処にでも取り付けられるよう設計されている。
超音速の振動熱短針で敵弾を迎撃する。その精度は同じ振動熱短針を迎撃可能な程である。
多目標同時攻撃・防御が前提とされている作中の現代ドクトリンによって開発されたこの兵器は、生身の歩兵が撃つ小銃弾、機関銃弾程度なら前後左右、全方向から同時に放たれても完全に迎撃可能。小型軽量で弾数が多い。

長針弾発射機 敵弾迎撃専用の間接防御兵器。頭部両側、こめかみに一基ずつ計二基装着するのが基本だが、機体の何処にでも取り付けられるよう設計されている。超音速の振動熱長針で敵弾を迎撃する。
生身の歩兵が撃つ小銃弾、機関銃弾程度なら前後左右、全方向から同時に放たれても完全に迎撃可能。小型軽量ではあるが短針弾発射機より弾数が少ない。その代わり威力が高く、短針弾で迎撃出来ない敵弾を迎撃可能。
ちなみに本編で帝国軍の兵士を殺しまくっていたが、説明にあるように本来は間接防御専用兵器であり元の世界では攻撃に使用しても全く役に立たない。

多連装6.25mm機関銃 ガトリング砲と違い、銃身がそれぞれバラバラな方向を向けての射撃が可能な間接防御兵器。
間接防御兵器の中で最も威力が高く射程が長い。100mm超振動極熱ミサイルのように寸前で迎撃しても甚大な被害を被る兵器を離れた距離で撃墜出来る。
長針弾同様、本編で帝国軍の兵士を殺しまくっていたが、説明にあるように本来は間接防御専用兵器であり元の世界では攻撃に使用しても全く役に立たない。

25mm重機関砲 重歩兵の主力武装。大威力長射程であり、対地対空、目標によっては対艦攻撃も可能。
20世紀時代の兵器なら90式戦車を1発で欠片も残さず分解蒸発、完全に消滅させられる。連射なら戦艦も沈められる。こんな代物を帝国の兵士とはいえ生身の人間にブッ放ちまくった清水さんマジ外道。
コンピュータ制御による反動を利用した照準の修正と発射速度の微調整により、連射でも狙撃と変わらぬ精密射撃が可能となっている。その高い命中精度によって、状況によっては間接防御兵器としても使用する。
片手で使用出来るように設計されているので両手に持って戦う事も可能。
弾倉は100発入り。本編で超重装甲強化服改が使用している25mm重機関砲改は200発入りの大型弾倉である。
以上。

24:創る名無しに見る名無し
09/06/01 05:23:57 ZrD7BJKO
電力で発射ってえことはレールガンみたいなモンなのか?
なんだか変なプライドが出てんのか、クロスのさせ方が危なっかしくて不安に思わんでもないが・・・
共同作業でもなし、当人同士が納得できるならどうでもいいか。

それはそうと、人、いねーなー・・・

25:創る名無しに見る名無し
09/06/01 09:02:41 Fj2bJWbK
あえてageる
近々覚えている人が居るか分らんが、ハルとデイブを投下しようと思う
少しでも活気づくなら良いな

26: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/01 22:34:47 pYaN+w7q
>>24
海上都市姫路守備隊戦記は22世紀~23世紀ぐらいの近未来を想定しており、火薬発射式は旧時代の遺物としてほぼ完全に廃れています。
普通の拳銃ですら少ない電力で高い威力を発揮する、超高効率のレールガンみたいな物です。
発射に必要なのが本当にただ電力のみ、コンピュータ制御により発射速度を自由に設定して威力を調整出来るので凄く便利。

>>25
投下、楽しみにしてます。

27:創る名無しに見る名無し
09/06/01 23:29:30 ewtlXQeW
複数パイロットの人数ってどれくらいが妥当かね?
役割分担とかさせた場合、誰が何やるかとかも細かく決めた方がいいのだろうか

28:創る名無しに見る名無し
09/06/02 01:18:37 VKQy1b8i
>>27
その作品のジャンル・方向性やら、そのロボットの役割なんかでかなり変わってくると思うけど。
戦隊ロボットだとなんかよくわからないけどとにかく5人か3人乗ってるって形になるし。

装甲戦闘車両や軍用機を参考に考えてみると、
機長(判断指揮・他機との情報交換)・操縦手・照準手の三名か、
パイロットと火器・電子機器統制官の二名の
どちらかが基本で、指揮統制機や偵察・電子戦機なんかの機種には指揮官や観測要員も乗ってるってとこか?
結局はそのロボットの役割・性質によるなあ。

俺が考えた変なロボットだと、遠隔操作でパイロットは搭乗しないけど、人間は乗ってる(というより積まれてる)ってのがあるけど。

29:創る名無しに見る名無し
09/06/02 01:44:30 xoPjMItR
戦闘書き始めると無駄に文量とっちゃうなぁー
書いてる分には楽しいんだけれど、物語がほとんど進んでないから
読む人退屈しないか凄い心配で、書いては消しての繰り返しだ
無理矢理にでもオープンチャンネルにして人間の会話を入れてくようにしようかねぇ
色々おまけも考えてるけれど…おまけの作業だけが進んで本編の進みが遅くて涙目


>>28
すごいカレンデバイスを思い出すなw

30:28
09/06/02 02:34:34 VKQy1b8i
>>29
カレンデバイス知らなかったからググってみたけど、人間を道具扱いで積む、って意味合いは似てるかも知れない。
俺の考えたので積まれてるのは普通の人間の整備士だけど、睡眠薬漬けだし、感覚的にはほとんど整備用装備だから。
あとロボットの最大の特徴が「とにかく弱くてこそこそ行動する」。

>戦闘だと文量が増える
オイラと逆だなあ~。

31:創る名無しに見る名無し
09/06/02 05:48:35 hXaB3t7H
当時小学生だったけど、凄まじくハードで重いストーリーだったなぁ、フロントミッション。
特にカレンデバイスは……。精神的にかなりきつかったけど、容赦無い重厚な物語がフロントミッションを傑作としている。
6はいつ出るんだろう?

32:ネクソンクロガネ作者 ◆46YdzwwxxU
09/06/02 06:01:00 ErHgVJWo
カレンデバイスとは違うかもしんないけど
最近のとこではアスラクラインのロボットもそんな感じ・・・なのかな?

この前見てみたら、それにもクロガネってやつが出てきてびっくり
デザインは違うけど、黒に金の縁取りってのまでいっしょだったし

>>23
おー乙です。
まあ、あんまし俺のことはそうお気になさらず。派手にかましちゃってくださいw
今ダウン中だけど、続きも書かないとなぁ・・・

33:創る名無しに見る名無し
09/06/02 06:05:06 xoPjMItR
>>30
俺が技名叫ばせて終了にするのが味気なくて嫌なだけでもあるんだけれどね
いや、これ自体が悪いんじゃなくて
俺がそれやるとなんか自分の中にあるロボット像と違和感があるというか
だから無茶苦茶でもいいから技名とかはいわないようにして行動を描写してると
簡単に3000字~2万字ぐらいになる
一応、スレ投稿用に戦闘の内容は枠に収まるようにあんまりややこしくしないように意識はしてるんだけどねw

34:創る名無しに見る名無し
09/06/02 12:44:22 VKQy1b8i
>>31
ゲームの方はやらんから知らないけど、ヤングガンガンのマンガ見てもハードだってわかるなあ。
APFSDSのサボが離脱する作画とか衛星からの情報を利用した戦闘とかがあって感心してたら太田垣スタジオだったみたい。

>>32
クロガネ(鉄)は割とポピュラーな気がしなくもない。
かのマジンガーでも、 空に そびえる くろがねの城♪ と……
……マジンガーおまえ超合金Zでできてんだったろ。クロガネ(鉄)じゃないだろ。

>>33
>技名叫ぶのに違和感
ちょっと違うかも知れないけど、
ボトムズの始めの方で、キリコが戦闘中に「バルカンセレクター」とか言ってるシーンがあって、エラい違和感感じたことが。

35:創る名無しに見る名無し
09/06/02 14:53:54 sjyXj7X7
>>27>>28
艦船とかの配置部署を参考にした巨大ロボで
艦橋は艦長と航法レーダー手と通信手と操舵手、
機関部に機関員とかがいて出力を調整
戦闘はCICで砲雷手とミサイル手が…って考えたが

36:創る名無しに見る名無し
09/06/02 15:11:09 M/DhuQs1
Bメカに乗ると死ぬんですね、わかります

37:創る名無しに見る名無し
09/06/02 15:45:19 O6Q3uhwe
そういやこのスレ多人数乗りのロボ少ないよな
何がいたっけ?

38:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/02 16:26:14 BnVZQgs2
熱風・疾風 >>1乙バスター

前スレは容量オーバーだったというのか……!

今まで気付かなかった私の奥の施設を破壊してくれ、ドミナントとの約束だ!


>>37
ゼノライファーが二人乗りだったはず

39:創る名無しに見る名無し
09/06/02 17:11:02 O6Q3uhwe
>>38
ども。前スレ見返したら確かに二人乗りっぽかった

40: ◆8XPVCvJbvQ
09/06/02 19:14:23 xWvmPPAM
逆転検事にうつつを抜かし、投下が遅れてしまった。

<あらすじ>
 最西暦164年。鋼獣という異形の生物に溢れた世界。
 地中を高速で駆け抜け、コンクリートをスナック菓子のように噛み砕く鋼獣土竜型との戦闘を
見事勝利で収めた対鋼獣用人型兵器ヴァドル。
 その搭乗者は、3人のヒューマニマルと1人の人間の男だった。


以下数レス投下。

41:荒野に生きる(まだ仮名) ◆8XPVCvJbvQ
09/06/02 19:16:52 xWvmPPAM
1章 鋼の体を持つ獣

(1)
 エルツは汗と埃に塗れた栗色の前髪を片手でかき上げながら空を見た。
 日はまだ高い所にあり、その日差しは熱く鋭い。
 ヴァドル部隊での初陣となる、鋼獣土竜型との戦闘に勝利してから2時間。
 ヴァドル部隊とそのサポート部隊は、無事に第十六都市へと帰還を果たしていた。
 エルツはパイロットスーツのまま、ハンガールームと呼ばれるヴァドル専用の格納庫の前に腰掛けている。
 巨大なシャッターは半分ほど閉じているが、それでも、エルツがジャンプをしたくらいでは手が届かない高さである。
 ハンガールームの中は慌しく、特に半壊している二号機の修理が最優先で行われているらしい。
 メカニックは人間が7割、ヒューマニマルが3割と言った所で、その先頭ではヴァドル部隊の隊長である瀬名龍也が、
50人近いメカニックに的確に指示を出していた。
 龍也の後姿をボンヤリと見つめて居る内に、いつの間にか自分の尾が嬉しそうに振られている事に気付く。
 ヴァドルとの神経接続は想像以上に負担が掛かるらしく、ヴァドルから開放された途端に襲ってきた疲労感の中に
エルツは居るのだが、彼女の尻尾はそんな事も構わないらしい。
 自分の気持ちを素直に代弁してくれる尻尾に対し、エルツは少しばかり困ったような表情を浮かべた。
 エルツ自信は全く自覚していないが、彼女はどうやらこの瀬名龍也という男に好意を持っているらしい。
 通常ならば、感情を抑制されたヒューマニマルは”好き嫌い”の概念が希薄だ。
 戦争をするに当たっての不要な感情を持たないからこそ、冷静で的確な判断が下せる。戦争をする為に生み出され、
荒野で死ぬ事が運命のヒューマニマルにとって、その様な感情は元より必要ないのだ。
 しかし、エルツは、珍しい事に”好き”という感情が制御されきれて居ない。
 もっとも、その事自体に意味は無い。生まれてくる際に、何らかの要因があって制御し切れなかっただけの事だ。
 他のヒューマニマルには無いモノを持っているという事に、エルツは負い目を感じていない。
 ソレは確かにヒューマニマルという種には不要なものかもしれないが、持っているからと言って、戦えなくなる
訳ではないと彼女は考えている。
 そして、胸の奥で静かに鼓動するソレは不快では無く、むしろ心地良さすらあるのだ。
 龍也の背中をボンヤリと眺めている間、彼女の尻尾は常に左右に振られていた。

42:荒野に生きる(まだ仮名) ◆8XPVCvJbvQ
09/06/02 19:19:19 xWvmPPAM
(2)
「くそっ!」
 頭から熱いシャワーを浴びながら、リートは腹立たしげ声を上げて壁を殴りつけた。
 ミシリと重く鈍い音を立てて壁のタイルにヒビが入るが、彼女は壁も自分の手も気にする様子がない。
 シャワー室には彼女以外に誰も居なかった。
 つい先程までディーネが一緒だったが、彼女は「用事がある」と言い残し、シャワーを浴びると早々に出て行った。
 俯いたリートの鼻先や顎から滴り落ちる水滴が、彼女の大きく膨らんだ胸で跳ねる。
 その胸の内側で渦巻く理解不能の何かが、彼女の苛立ちの原因だった。
 自分が何に悔しがっているのかすら解らない。
 しかし、自分がこうなった要因は分かっている。
(アイツだ。あの、瀬名龍也という人間―)
 思い起こせば、あの男とであった瞬間からこの苛立ちは始まっていた、とリートは考える。
 この不快感、苛立ちの原因は分からないが、あの男との接触によるものなのは間違いが無い。
 リートは人間を嫌っている。
 偶然な事にも、リートもまた、エルツと同様に感情の抑制がされていない。
 しかも彼女の場合は、エルツの様に”一部の感情”が抑制状態に無いのではなく、”ほぼ全ての感情”が抑制状態に無い。
その感受性は、殆ど人間と変わらない。

(何故自分達ヒューマニマルが、人間の言いなりにならなければならないのか)

(何故自分達ヒューマニマルが、人間の代わりに戦い、死なねばならないのか)

(何故人間は、無能の癖に、ヒューマニマルに対し傲慢な態度を取るのか)

(何故人間は、ヒューマニマルと共に荒野に出て戦わないのか)

(何故―)

 再生暦119年にヒューマニマルが生み出されて以来、現在までに構築された、人間とヒューマニマルとの関係が、リートには理不尽で仕方が無い。
 リートが人間を嫌うのは、人間の、ヒューマニマルを物として見ている言動と、自分はリスクを背負おうとしないその態度にある。
(ああ、そうか……)
 リートは気付いた。
 あの男は、”人間でありながら荒野に出て、鋼獣と戦っている”。リートの中の「人間」という存在に当てはまらない。
 今日の鋼獣土竜型との戦闘だってそうだ。
 リートの独断での行動により、二号機は中破。彼自身も土竜型に喰われかけたというのに、あの男はリートに一切の処罰与えないどころか、
ソレを気にした様子すらない。
 そして、自分達を見る、あの目―。
(幾つだ? 幾つの感情が混ざっている?)
 考えるほどに、胸の内側の何かが激しく渦を巻く。
 リートはシャワーを止め、ノロノロとした動作で水を吸って重くなった尻尾を絞る。
 判らなかった。
 その思考の末に、自分が何を求めているのかが。
 瀬名龍也という男が何を考えているのかが知りたい?
 彼を理解する事で、彼自身と何かを共有したい?
 彼にしてもらいたい?
 何を?
 物理的接触?
 それとも、ただ単に、自分の望む言葉をかけてもらいたいだけ?
(わからない……)
 正体不明の苛立ちの中、リートはゼンマイの切れかけた人形の様にゆっくりと天井を仰ぎ見た。

43: ◆8XPVCvJbvQ
09/06/02 19:25:14 xWvmPPAM
一度に投下するのもアレなので、今回はココまで。

世界観の説明と複線を考えて推敲してたら、1章だけで予定の10倍の量になっていた。
きりが無いので、兎に角話を進める事にした。後で加筆修正すること前提で読みにくいけど、その分ペース上げます。

1章はあと3パートほどでおしまい。
全部で7,8章予定。

ロボSSというか、ケモ耳少女と化け物をロボで繋いだだけの話だけど、お付き合い下さい。

44:創る名無しに見る名無し
09/06/02 20:17:09 ErHgVJWo
>>34
それをいっちゃあw>クロガネ
あれは「硬くて黒い金属」程度の意味合いなのか

>>43
乙です。真面目にキャラ描写を積み重ねてけるのはすごいと思います。前回に
「青みがかった銀色の長髪の、狼の耳と尻尾を持つ二十代半ばの女性」
「栗色の柔らかそうな髪の、犬の耳と尻尾を持つ15歳程の少女」
「炎のように真っ赤な髪をした狐の耳と尻尾を持つ女性」
という描写があったけど、今回の誰に当たるのか分からないのがちょっともったいない?
今後に期待しつつ。

45:創る名無しに見る名無し
09/06/02 20:18:24 ErHgVJWo
あ、読み飛ばしてましたスミマセン・・・

46: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/02 23:26:55 DiFUz1mS
>>43
続き、楽しみにしてます。
神経接続して動かすってのが、思考制御とコンピュータ補助で動かすうちの重装甲強化服と似てますね。
ただ重装甲強化服の方は脳とコンピュータを擬似的に繋いでいるだけ+コンピュータ補助のおかげで体に負担がかかりません。

以前の重装甲強化服の武装の続きを投下します。
予告編2後半はもうしばらくお待ち下さい。

47: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/02 23:27:48 DiFUz1mS
50mm狙撃砲
威力、射程、発射速度、命中精度。全てにおいて極めて優れ、重歩兵最強の武器と高く評価する者も少なくない。ただし全長5mもある50mm狙撃砲は大きく、重く、25mm重機関砲と違い両手持ちで無ければ扱えない。
装弾数は10発と少なく、装填にも時間がかかる。

折り畳み式50mm狙撃砲
50mm狙撃砲を小型軽量低威力化し、重装甲強化服の肩に装備出来るようにした兵器。
ぶっちゃけボトムズのバーグラリードッグのドロッパーズフォールディングガン。

50mm連装迫撃砲
50mm迫撃砲の弾薬庫を兼ねた特大バックパックに二つの迫撃砲身がくっついた、背中全体に装着する大型の武装。
両肩から2本の砲身が突き出た形になる。

100mm多目的ミサイル
相手と状況に合わせてありとあらゆる弾種になれる自在兵器。魔法の如く便利な代物だが、専用の弾種に比べれは威力は落ちる。それでも好んで使う者が多いのは、他の兵器には無い究極ともいえる汎用性の為。

100mm超振動極熱ミサイル
対戦車用に使われる切り札。
比喩ではなく本当に蟻一匹すら逃さない神の目の索敵と情報解析、1mmの誤差も無く正確無比に迎撃する嵐の如き間接防御射撃を潜り抜けて、絶大な防御力の戦車に一撃で修復不可能な致命傷を与えられるように開発された。
レーダーに映らず、目に見えず、音も無く、匂いすら無く、あらゆる探知手段から逃れる高度な遮蔽と情報解析による精密な誘導を行う。

150mm無反動砲
150mm弾を発射する、重歩兵が扱う兵器の中で究極の破壊力の兵器。後部に大型弾倉が取り付けられており、最大5連射可能。

小型低出力光熱衝撃砲
熱で敵を撃破する光熱波に物理的な破壊力を付与した兵器。
弾数制限が無く、電力がある限りいくらでも使えるという利点があるが、衝撃に極めて優れ耐光熱防御が施されているのが標準となっている重歩兵にはあまり効果が無い。腕に装着して使用する。

光熱衝撃砲
本編で不死の暗黒兵団を瞬殺した兵器。元々は教授が小型低出力光熱衝撃砲を原型として設計開発した。
高効率、大出力化に加え、あまり強力ではないが振動熱機能が付与された事で威力が桁違いとなっている。

60cm振動熱斬刀
振動熱で敵を斬断する重歩兵用格闘戦武装。刀身が短く軽量なので簡単に扱える。刀身に触れれば大抵の物は跡形も無く分解蒸発するので盾代わりとしても使用される。
残念ながら五右衛門の斬鉄剣のように銃弾を格好良く弾き返せない(分解蒸発してしまう為)

150cm振動熱斬刀
振動熱で敵を斬断する重歩兵用格闘戦武装。重装甲強化服の全高の丁度半分の長さで片手で持てる為とても扱いやすい。
強力な耐振動熱防御と防御用振動熱発生機能を備えた戦車の装甲をも斬り裂く威力がある。ただし「戦車斬り」をすると確実に修復不可能な程大破するので、戦車攻撃の際には消耗品として扱われる。

300cm超振動極熱刀
超振動波と極大特殊熱で敵を斬断する重歩兵用最強の格闘戦武装。重装甲強化服の全高と同じ長さと大重量の為、両手持ちでなければ扱えない。(本編の清水静専用超重装甲強化服改は例外)

48: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/02 23:29:05 DiFUz1mS
補助

伸縮可変鋼線射出機
最大全長100mの伸縮可変鋼線を射出する装置。腕に一基ずつ、計二基装着する。
重武装、最大戦闘重量の重歩兵二人分の重量を支える強靭さと柔軟さを備え、主に移動に使用される。この伸縮可変鋼線によって重歩兵のどんな地形、気候でも戦える汎用性が更に高められる。
他にも輸送機に伸縮可変鋼線をくっつけてぶら下がり輸送する、という使用法もある。
実際、重歩兵輸送用大型ヘリは完全武装の重歩兵10人を機内に、10人を機の下にぶらさげて、一機で最大20人を輸送可能。

展開式軽装甲盾「折り畳み傘」
折り畳み傘のように展開、収納が可能な小型軽量の盾。防御力は低く、振動熱榴散弾を防ぐ程度でしかない。
むしろ防御以外の目的で重宝される。空挺降下、又は高所からの降下の際に折り畳み傘を展開させてパラシュート代わりとして使用可能。
高い遮蔽能力があるので、傘を差した状態で25mm重機関砲を敵航空機に撃つなど。

その他

組み立て式簡易100口径12.5cm速射砲
巡洋艦の副砲又は駆逐艦の主砲として使われている100口径12.5cm速射砲を重歩兵に扱えないか、という発想から生まれた兵器。重歩兵一個小隊10人で運用可能。
12.5cm砲弾を四発収納した弾薬箱を両手に、背中に分解された組み立て式簡易100口径12.5cm速射砲の部品を背負って移動する。
組み立て→設置→砲弾装填→発射(一発)→分解まで1分しかかからない。
簡易な組み立て式なので威力、射程、発射速度共にオリジナルの100口径12.5cm速射砲には若干劣るものの、少数の重歩兵で何処にでも簡単、短時間に設置して12.5cm砲を使える意味は大きい。
重歩兵一個小隊で12.5cm砲弾80発使用可能。

簡易25cm砲
戦艦の副砲又は巡洋艦の主砲として使われている25cm砲を重歩兵に扱えないか、というとんでもない発想から生まれた兵器。旧大日本帝国陸軍の九八式臼砲を参考にして開発された。重歩兵一個小隊10人で運用可能。
25cm砲弾を一発収納した弾薬箱を両手に、背中に分解された簡易25cm砲の部品を背負って移動する。
組み立て→設置→砲弾装填→発射(一発)→分解まで3分しかかからない。
所詮簡易でしかないので威力、射程、発射速度共にオリジナルの25cm砲には大きく劣るものの、少数の重歩兵で25cm砲弾を使える意味は大きい。重歩兵一個小隊で25cm砲弾20発使用可能。

簡易50cm砲
簡易25cm砲の開発成功と良好な試験結果に気を良くした軍上層部が、今度は戦艦の主砲である50cm砲を扱えるようにしろと要求し開発された兵器。重歩兵一個中隊100人で運用可能。
簡易25cm砲の時と違い砲弾をそのまま持って運ぶのは不可能なので、10個のパーツに分解出来るよう開発された改造50cm砲弾の入った大型弾薬箱を両手に、背中に分解された簡易50cm砲の部品を背負って移動する。
流石に簡易25cm砲のように3分とはいかず、組み立て→設置→砲弾装填→発射(一発)→分解まで30分かかる。
所詮簡易でしかないので威力、射程、発射速度共にオリジナルの50cm砲には大きく劣るものの、少数の重歩兵で50cm砲弾を使える意味は大きい。重歩兵一個中隊で50cm砲弾20発使用可能。
以上。

49:創る名無しに見る名無し
09/06/03 11:59:12 4Mw54XfZ
うーん・・・

50:創る名無しに見る名無し
09/06/04 00:21:00 tAeoiv71
まとめwiki、まだ更新されてないな。
更新履歴が2009-05-22のまま。

51:創る名無しに見る名無し
09/06/04 00:22:16 15vYyYUS
まーwikiは皆で作っていくものだけどねー
デザイン決めてくれないと書こうにも書き込めない

52:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(前編)
09/06/04 06:23:50 m9f/r3dC
失礼します。

53:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(前編)
09/06/04 06:25:01 m9f/r3dC
 悪のマッドサイエンティスト・悪山悪男の住まいでもある悪山研究所は、背の高い枯れ草に覆い隠されていた。
 ロボヶ丘市外れの荒れ地である。徒歩なら数分ばかり山に分け入らなければならず、わざわざ訪れようという者でもなければ目にす
る機会もそうはないはずだった。
 雑木林の中にぽっかりと開けた土地は、緑というのも憚られる色の濃い木々に囲まれ、陸の孤島といった風情であった。
 門前にはシロアリに食い荒らされた板状の木材が無造作に立て掛けてあり、墨で書かれたひどい癖字が、ここが「立入り禁止」であ
る旨を告げている。
 生えるに任せた藪に埋没するように建てられた和洋折衷の一軒屋は、持ち主の荒んだ心の表れのようでもあった。
 もっとも、柵で仕切られた敷地内は存外に手入れが行き届いており、不作法な茅の侵入も目立たない。
 玄関口に整然と並べられた陶器の鉢が、色とりどりの季節の花を咲かせていた。軒先に遠慮がちにスタンドを下ろした赤い自転車の
上品な光沢が陽光に眩しい。 
 長い歳月に渡って風雨にさらされた建物は、廃墟と呼んでも差し支えないほどくたびれている様子だったが、それらのために瑞々し
い生活感を失っていなかった。
 人里からやや離れた林間の研究施設は、いつもは寂しいほどに静かだった。強いて鳥達を騒がせるものといえば、まれにマッドサイ
エンティストの地下活動が引き起こす、爆発音や機械の唸り、謎の地響きくらいのものだ。
 だが、その日ばかりは、いつもとは少し趣きが異なっていた。
「出て行けというとろうがゃぁっ!」
 しわがれた怒鳴り声がこだまする。
 摩り硝子を張った研究所の扉がけたたましい音を立てて開かれ、若い女が勢いよく転がり出た。
 レディ・ビジョンという暗号名で呼ばれるその女は、庭先で平然と体勢を立て直す。
 黒に限りなく近い灰色のスーツの土埃を払い、癖のようにずれてもいない眼鏡に手をやると、ちょうど自分を突き飛ばした男がサン
ダルを突っ掛けて玄関から出てくるところだった。
 老爺である。
 身長は低めだが背筋はぴんと伸びて、物腰はかくしゃくとしていた。糊の利いた白衣をいかにも着慣れたようすで羽織り、長い裾を
恐竜の尾のように流してずんずんと歩く。
 やや後退した頭髪は、白髪のために遠目には薄い灰青色に見えた。顎先に同じ色の髭が茂っている。
 皺だらけの顔は、どこか風化した鉱物めいて恐ろしい。
 気難しそうに引き締められた唇ががばりと開かれる。
「ワルサシンジケートじゃとぅ? 誰が貴様らなぞに手を貸すものか! この悪山悪男を何者だと心得るか!」
 強靭な意志を窺わせる眼差しには、燃えるような怒りがあった。
「悪の天才・悪山悪男ぞ! 儂は、悪であっても外道ではない!」
 口角泡を飛ばしながら、老博士は大喝した。
 言っていることは無茶苦茶だったが、有無を言わせない年嵩の重みがある。巨大犯罪組織ワルサシンジケートの構成員として修羅場
をくぐってきたレディ・ビジョンでも、ややもすれば気圧されそうになるほどだった。
 ―ロボヶ丘に在住する在野の技術者、悪山悪男を味方に引き入れること
 それが、上司であるイッツァ・ミラクルからレディ・ビジョンに下された命令だった。
 破格の条件を揃えてじきじきに出向したのだが、交渉に入る前に破綻した。
 不用意に素性を明かすほど彼女も迂闊ではない。表向きは犯罪行為とは無縁のダミー企業を新たに創立し、そこの開発主任として迎
え入れるという手筈だった。
 しかし、悪山悪男の勘働きは衰えていなかった。二、三語言葉を交わすなり「さてはお前さんワルサじゃろ? ワルサじゃな? な
らば出て行けぇ!」とレディを追い出しに掛かったのである。実際に彼の直感は的中しているわけだが、決めつけ方はどこか偏執狂じ
みてもいる。おかげで手の掛かった計画が水泡に帰した。

54:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(前編)
09/06/04 06:27:31 m9f/r3dC
 悪山悪男は、研究所の奥に向かって声を張り上げる。
「エリス! 塩じゃ! 塩! 瓶ごと持ってきてくれ!」
「だめです。またお花枯らすから」
 廊下を響いて伝わった少女の返事は、ひどく冷たかった。
 途端に、悪山悪男が硬直する。どうやら前科があり、そのときも彼女に叱られたらしい。さっきまでの激怒が嘘のような、ひどく情
けない表情を浮かべていた。
 レディ・ビジョンは鉢植えをちらと見た。資料によれば、悪山エリスは偏屈な彼が溺愛している孫娘で、足繁く研究所に通っては家
事手伝いをしているという。悪山悪男は花を愛でるような人物には見えなかったが、これらは彼女が世話をしているものらしい。
「とにかく! 儂は貴様らに協力などしないからな! 覚えておけっ!」
 削がれた気勢を繕うように裏返った嗄れ声で言い捨ててから、悪山悪男は慌てて研究所の中に引き返していった。戸締まりの仕方も
どこかバツが悪そうだった。
「あの……エリスちゃん? 違うんじゃあ、今のは……、な、ナメクジを退治しようと……」
「―嘘つき」
「ままま待って? ちょっと待って? ……わ、儂は、儂ゃあ、あー、えーとその、つまりー」
 扉越しにしどろもどろな弁解の台詞が聞こえる。それもだんだんと薄くなっていき、やがて玄関先に静寂が戻った。
「…………」
 レディ・ビジョンは、呆然と立ち尽くしていた。
『やはり拒否されましたか』
 通信機能のあるピアスが震えた。わざとらしい嘆息の主は、イッツァ・ミラクルその人だった。
「恐縮ですが最上級ワルジェント、イッツァ・ミラクル。あの老人はそれほどの人物なのですか?」
 懐柔するにせよ脅迫するにせよ、いかにも骨が折れそうな手合いだった。只者でないことは明らかだったが、そこまでするだけの価
値があるのかというと疑わしいものがある。
『そうですよ』
 男性にしては高めの声には、どこか楽しむような響きがあった。
『彼のティラノザウルスのロボット、連敗こそしていますが、技術じたいは我々やE自警団より遥かに上、何世代先をいっているのか
分からないほどです。ネクソニウムなどという宇宙のミラクルも使わず、ネクソンタイプとほとんど互角に戦える巨大ロボットとは、
まさにイッツァミラクル!(それは有り得ないほど素晴らしい!)』
 最大級の感嘆を籠めて、口癖を繰り出す。
『世界最狂から数えて九番目の男、悪山悪男。先代のドン・ワルザックが各界の重鎮に根回ししてでも手に入れたがった、一種の巨人
ですね。あなたにとって分かりやすいところでは、ドクトルポイズンが私淑していた人でもあります』
「あの悪の巨大頭脳・ドクトルポイズンがですか?」
 唯我独尊を地でいく横柄さを思い出し、レディ・ビジョンは驚きを隠せない。
『発表以来、字が汚すぎて誰にも理解できなかったという伝説の悪山ノートの解読にミラクル的に成功したのが、当時からシンジケー
トにいた彼らのチームなのです』
 イッツァ・ミラクルはしみじみと過去を語る。時に大仰な語り口となるのも彼の特徴のひとつだった。
『何を隠そう、ワタクシも十年ほど昔、まだ暗号名もイッツァ・ミラクルではなかった幹部候補の頃です、孫娘のエリスちゃんを拐か
してご協力いただこうとしたことがありました』
 そこで事実を誇張するように抑揚をつけた。
『……今生きていられるのがミラクルですよ。ええ、まさかあの可愛らしいリボンにあんなド外道な仕掛けがあろうとは。それ以降、
リボンの女の子はワタクシ大嫌いです』
 レディ・ビジョンの手は、無意識に髪に伸びていた。リボンは、ついていない。
 そのことに安堵しつつ、悪に身を捧げた女は大きく深呼吸した。
(田所カッコマンの件での失敗の分、必ず挽回してみせる……! 必ず!)
 レディ・ビジョンの灰色の瞳は、来る者を拒むように聳え立つ研究所を睨み据えた。
 


 第5話  恐怖! シロガネ四天王現る!




55:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(前編)
09/06/04 06:29:41 m9f/r3dC
 ※

「ボクの名前はカッコマンエビル。分かりやすくいうなら、悪のカッコマン……さ」
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ張りの登場をした悪の神速飛翔ロボ・シロガネソニック。嘲りを含んだ声が告げたそのパイロット
の名を聞いて、セイギベース4に戦慄が走る。
 恐るべき悪の総本山・ワルサシンジケートからの刺客。シロガネ四天王いちのスピード、カッコマンエビル!
 セイギベース3司令室の大型モニタは、神速飛翔ロボ・シロガネソニックを様々な角度から捉えた映像に埋め尽くされていた。
 銀翼と化した両腕で虚空を抉る、機械仕掛けの鳥人。美しい機体だったが、不気味な悪意のような気を全身から発している。
「黙れッ! 今のお前に、カッコマンを名乗る資格はない!」
 はぐれ研究員・龍聖寺院光は手にメガホンを握り締め、怒りを露わに叫んだ。正確にはそれじたいは拡声器ではなく、屋外のスピー
カー設備に音声を入力する装置である。
 カッコマン。もしくはカッコウーマン。
 武闘派市民団体・E自警団が、擁する巨大ロボットの専属パイロットとなった者に託す呼び名である。それは、伊達や酔狂でという
以上に、正義のヒーローとしての自覚を彼らに促すものでもあった。
 悪がカッコマンを騙るなど、許されることではない。
「ほう」
 研究所外にこだまする龍聖寺院光の怒鳴り声を聞いて、カッコマンエビルはことの奇遇さを笑った。
「ここの責任者はあなただったんだね。武御雷光華琉(たけみかづち ひかる)姐さん」
「それは昔の偽名だ馬鹿め!」
「博士落ち着いてください」
 大型モニタに跳び蹴りをかましそうな剣幕の龍聖寺院光を、田所正男は必死に止めた。さりげなくはぐれ研究員の若気の至りが暴露
されていたが、現在とさほど変わるものでもない。
「それより博士! あなたは彼のことをご存じなのですか?」
 田所正男は尋ねる。口振りから二人が旧知の間柄らしいことは明らかだった。
「ああ、間違いない。悪のカッコマン……カッコマンエビル! 昔の名を森本カッコマン! かつてネクソンタイプを手土産にE自警
団を裏切った、裏切り者だ!」
 龍聖寺院光は、憤怒のあまり自らの表現の重複にも気づいていないようだった。メガホンがみしみしと軋んでいる。
「フッ。その名前はとうに捨てましたよ」
「カッコマンは捨てられなかったようだがな」
「これはおかしなことを。ボクは今でもこんなにカッコイイというのに」
 冗談めかしたカッコマンエビルの声には、正義の代名詞とされるカッコマンへの皮肉の響きがあった。
 はぐれ研究員・龍聖寺院光と、元森本カッコマン・カッコマンエビル。話題は彼らにしか分からない貶し合いへと発展していく。
 映像を介さない音声だけの応酬には、しかし互いの呼吸を体で覚えているような軽妙さがあった。田所正男の知らない、彼らの黄金
時代の残り香なのだろう。完全に二人だけの世界が構築されていた。
(カッコマンエビルか……)
 自分以外の全てを嘲弄するような、妙に癇に障る喋り方をするこの青年も、かつては愛と勇気を胸に巨大ロボットを駆って、巨大な
悪と戦ったのだろうか。
 会話に入っていけない田所正男は、ひとり拳を握り締めた。
 取り残された孤独感、カッコマンエビルに対する悪印象、ある種の嫉妬にも近い負の感情が、このとき彼の胸の奥にわだかまってい
たことは否定できない。

56:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(前編)
09/06/04 06:30:49 m9f/r3dC
 しかしそれでも。
(俺が性根を叩き直して、必ずヤツを森本カッコマンに戻してみせる!)
 田所正男の瞳には、決意の光があった。
 カッコマンエビルに引導を渡し、正義の心を甦らせる。
 それが、今のカッコマンとして自分に出来ることだと彼は信じたのだ。
「博士! 俺は最強無敵ロボ・ネクソンクロガネで出ます!」
「……っ!? ああ!」
 我に返ったような龍聖寺院光に、田所正男は微笑み掛けた。
「行ってきます。博士」
「そうか! 頼んだぞ田所カッコマン! だが気をつけろ! 敵は、ひとりじゃない!」
 警告に頷きを返し、愛の戦士は走り出す。
 セイギベース4を襲った悪の剛力無双ロボ・シロガネマッスルも、既に移動を開始していた。
(そうそうにこのカッコマンエビルをなんとかしなければ、二対一に持ち込まれてしまうことは必定……!)
 それどころか、二体の他に悪の巨大ロボットが参戦しないという保証はどこにもないのだ。
 シロガネ四天王。
 彼らの口にした不吉な名前を思い出して、田所正男の体に、恐怖からとも武者震いからとも知れぬ鳥肌が浮いた。


 ※

「待たせたな、シロガネ四天王いちのスピード・カッコマンエビル!」
 魂にも響く若者の声に遅れること数瞬、空の高みより降臨する巨大な物体。母なる大地へのいたわりのために着地はやわらかい。だ
が、人の心の幸せを壊す悪ならば容赦なく踏み砕くだけの力を持っている。
 それは、不動明王の化身とでもいうべきスーパーロボットだった。
 頑強な皮膚はどこまでも黒く、表面に星の煌めきを映しとっている。全身を駆け巡る金色の光は、夜行蝶が俯瞰した街の灯しび。
 カメラの眼には、悪の心胆を寒からしめる凄み。
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ。その威風堂々たる出陣だった。
 対峙する黒と白、二体の巨大ロボット。
「ううん、今来たところさ」
 逢い引きの待ち合わせのようなふざけたことをいい、カッコマンエビルが臨戦態勢に入る。
 悪の神速飛翔ロボ・シロガネソニックの巨体が離陸。地面から数メートルの距離で静止する。まるで重力を操作しているような不可
解な空中浮遊だった。
 ワルサシンジケートの技術力に慄然としながらも、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの操縦桿を握る田所カッコマンは、果敢に先制
攻撃を仕掛ける。
 内蔵兵器を起動。
 装備箇所は左右の肩当て。金の装飾に紛れたハッチが重たげにスライドし、下の兵装に命が吹き込まれる。
(ワルレックス級の重装甲にはともかく、空を飛ぶために体重を削ぎ落とした敵にならば通用するか)
 我こそはと唸り声を上げるのは、各六門の砲身を束ねた回転式機関砲が二基。
「ネクソンクロガネバルカン!」

57:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(前編)
09/06/04 06:32:03 m9f/r3dC



『ネクソンクロガネバルバルバルカン!』
 作詞・作曲・歌/ネクソンクロガネバルカンズ


 バルカンは弱い 巨大ロボ全盛期
 こめかみからバババ やられメカすら倒せない

 剣にビーム 空飛ぶ拳 突進攻撃
 ド派手な必殺武器 俺の出番はまだ来ない

 スペックシート 武装の欄の賑やかし
 だけどしっかり 役に立つんだ
 せめて今日は 敵を牽制するよ

 ババババ バル バルカン バルバル バルカン
 ババババ バル バルカン バルバル バルカン 
 いつか必殺 バルバル ネクソンクロガネバルカン

 バルカンはしょぼい いつの間にお約束
 肩口からバババ 逃げ惑うのは生身の人だけ

 ドリルにキャノン 火炎放射に パイルバンカー
 トドメは最強武器 俺は脇を固めるぜ

 全身火器の 武装の欄に花を添え
 だけどやっぱり 役に立ちたい
 せめて今日は 敵を引き立てよう

 ババババ バル バルカン バルバル バルカン
 ババババ バル バルカン バルバル バルカン
 いつもおそばに バルバル ネクソンクロガネバルカン

 ババババ バル バルカン バルバル バルカン
 ババババ バル バルカン バルバル バルカン
 愛と勇気の ネクソンクロガネ バルバル バルカン



「悪は滅びよ!」
 徳の高い僧侶のような厳めしい台詞を唱え、田所カッコマンは白銀の悪魔に機関砲の集中砲火を浴びせる。
 悪の神速飛翔ロボ・シロガネソニックは、その名から予想される高い回避性能を発揮しなかった。ふてぶてしい態度は、バルカンの
ごときは躱すまでもないと言いたげであった。
 実際に、砲弾の豪雨を銀翼に浴びながら、シロガネソニックは無傷だった。分子一個分すら削れているか怪しい。カッコマンエビル
は呆れと哀れみの入り混じった声でぽつりと呟く。
「あのさ……その武装、もう外した方がいいよ?」
「やはりダメだったか……」
 田所カッコマンはヘルメットの下で目を伏せる。考えが甘すぎたと言わざる得ない。「敵にまで同情されるネクソンクロガネバルカ
ンの活躍の場はこの先来るのだろうか」などとどうでもいいことまで心配する。

58:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(前編)
09/06/04 06:35:53 m9f/r3dC
 実はネクソンクロガネバルカンは、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネにくっついているというだけで、その性能は型落ちの近代兵器
と何ら変わりない。防御力偏重の巨大ロボットを相手に、これほど頼りない武装はなかった。
「超ネクソン白鋼をふんだんに使ったボクのシロガネソニックは、軽くて強くて丈夫なのさ。しかも、美しい」
 聞いてもいないことを自慢たらしくぺらぺら喋るカッコマンエビル。しかし、彼によって明かされた事実に、田所カッコマンはネク
ソンクロガネバルカンが通用しなかったこと以上に衝撃を覚えた。
「何だって!? こいつもネクソンタイプだというのか……!?」
『ワルサシンジケート。……それほど大量のネクソニウムを確保していたとはな』
 龍聖寺院光もまた深刻そうに腕組みをした。もしシロガネ四天王の巨大ロボットが全て超ネクソン白鋼製なのだとしたら、それはも
はや最強無敵ロボ・ネクソンクロガネといえども一機でどうこうできる事態ではない。
「これならどうだ!」
 カメラアイの下、隈のように開いた砲口の深淵に、亜空間から重金属粒子群を大量転送、莫大なエネルギーを添加して野に放つ。最
強無敵ロボ・ネクソンクロガネの内蔵兵器最大の破壊力を誇る高出力金属粒子ビーム。
「ネクソンクロガネビーム!」
 全てを磨滅させる光の帯が、宙に伸長していく!
「思ったほどの射速じゃないね」
 神速飛翔ロボ・シロガネソニックが機体を上昇。鳥人ハルピュイアを思わせる翼が発生させる推力で、苦もなく射線から逃れる。
 それは恐ろしい速さであった。田所カッコマンの動体視力では追いつかず、突然に消え、突然に現れるようにしか見えない。ほとん
ど瞬間移動に近いものがある。
 その度に発生する強烈な衝撃波の煽りを受けて、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの体勢が崩れる。
「へぇ……。そこらのロボットならソニックブームだけでお釈迦だ。伊達にネクソン名乗ってないってことか」
 本来それは、掠めただけで敵を斬り裂く、神速飛翔ロボ・シロガネソニックの攻撃手段であるらしい。
 衝撃波を浴びせ掛けるために、着かず離れずの至近距離を超音速で疾駆する銀翼の巨大ロボット。他に携行武装は見られず、敵との
接触をひどく嫌っているようだった。
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネが目許からビームを放ちながら太い首を動かして捉えようとするが、シロガネソニックの立体機動
の前に翻弄され、虚しく空を薙ぐのみ。
「くそっ! 狙いが定まらん!」
「ボクに当てようと思ったらさあ! レーザー光線でも持ってくるべきだね!」
 田所カッコマンはネクソンクロガネビームの照射を中断し、挑発するように空中を自在に飛び回るシロガネソニックを観察した。
(まずい、状況だな)
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネは、基本的には鈍重な部類の巨大ロボットである。自然、初手には比較的高速のネクソンクロガネ
ビームが選ばれていた。そしてネクソンクロガネビームは強力すぎるため、大抵は一撃で決着がついてしまう。それが通用しないとな
ると格闘戦に突入することになるが、田所カッコマンのまともな戦闘経験はさほど多くない。
 まして三次元となると全く未知の領域だった。最強無敵ロボ・ネクソンクロガネに飛行能力はない。滞空時間の長い大跳躍ならば可
能だったが、それで神速飛翔ロボ・シロガネソニックに対抗できるはずもなかった。
 救いはシロガネソニックの衝撃波攻撃が、ネクソンクロガネの重装甲を通らないことだった。このまま延々と直撃を食らい続ければ
ともかく、今のところは千日手といっていい。
(だが、まごまごしていると敵の援軍が到着する……!)
 焦る。焦る。焦る。
 頭に昇った熱い血を使って、田所カッコマンは思考する。
 これまで生きてきた経験。書物で読んだ知識。誰かから教わったこと。すべてが彼に味方する!

59:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(前編)
09/06/04 06:36:56 m9f/r3dC
 思いついたことがあった。
「……教えてやろう。なぜ最強無敵ロボ・ネクソンクロガネが“鋼の王”と呼ばれているのか!」
「……初めて聞くけど?」
「必殺! ネクソンクロガネビーム!」
 不敵な笑みを、はったりでは終わらせない。
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの下瞼に、アルミホイルの切れ端のような金属片と、砂鉄のような金属の微粒子が発生。ただしそ
れはエネルギーを滾らせることもなく、霧のように空気中に拡散していった。
 そのままロボットの関節可動を利用して、首を360度回転。
 まるでビームの態をなしておらず、やや上空を旋回するシロガネソニックにも全く届いていない。風に煽られるままの薄片と粉塵が、
一帯で浮遊と沈殿を繰り返すのみである。
「何だそれ? まさか煙幕とかチャフのつもりなの? ばればれなんだけど」
 ともすれば沙漠の砂嵐のような量だったが、さして脅威とも思えなかった。
 カッコマンエビルは、もう幾度目になるのかも分からない衝撃波攻撃を敢行。これまで通り、手も足もビームも躱せる軌道を神速で
飛翔する。
 しかし今回に限って、神速飛翔ロボ・シロガネソニックが発火した。
「え?」
 いや、それは発火などという生易しいものではない。
 摩擦熱によって一瞬にして蒸発した金属群の膨張が生み出す、空間の爆轟だった。カッコマンエビルの視界を支配する激しい発光。
乱気流がシロガネソニックの翼を殴りつけ、操縦桿を奪う。
 それだけではない。超高水圧によって物体を切断する工業機械であるウォータージェットの水には、削る力を高めるために砂鉄が混
ぜてあるが、大気中に散布された金属粉は今、それと同じ働きをしてシロガネソニックの機体に甚大なダメージを与えるのだ!
 転移させた物質を融点や沸点を違える数種に合成することで、複数の効果を実現したネクソンクロガネビームの応用。
「命名!! ネクソンクロガネストーム!!」
 これでもまだ致命的な損傷ではない。カッコマンエビルが、火達磨となったシロガネソニックを思わず減速させる。
 だが、それこそが田所カッコマンの狙い。
 そこは衝撃波を浴びせ掛けるための、着かず離れずの至近距離。他に携行武装は見られず、接触をひどく嫌っているようで。
「ここで一度負けて」
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの豪腕が唸る。
「龍聖寺院博士に謝ってこい!」
 ネクソンクロガネパンチ。
 鋼の王の鉄拳制裁が、神速飛翔ロボ・シロガネソニックを捉えた―!!




60:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(前編)
09/06/04 06:37:50 m9f/r3dC
なんかえらい長くなりそうだったので一端切ります。
なお、科学考証は例によってインチキ。
前回から止むなく文章の方向性を変えてますが、これは前のテンポが良いかも。
自分でも迷走してるなあとは思うんですけど、ノリだけではなかなか。
やっぱ四人は多すぎたよなぁ・・・と悩みつつ。

61:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(前編)
09/06/04 06:46:38 m9f/r3dC
うげっ。>>55の五行目はこれ「ベース3」ですね。
なんかここんとこ毎回ミスがあるな・・・

62:創る名無しに見る名無し
09/06/04 10:07:51 igtDEYed
気合、根性で勝つように見せかけて、結局は機体の性能差

63:創る名無しに見る名無し
09/06/04 18:17:18 VwRKN7fe
前のテンポも良かったけど、今のノリも中々いいですよ。
機転を利かせた発想でピンチを凌ぎ、シロガネソニックに豪腕炸裂!
鋼の王の鉄拳制裁はどれほどのダメージを与えたのか、そして残る敵の巨大ロボは!
続きが気になる展開です。

64:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/05 07:25:24 OyOQShVw
な、なんというペースなんだ! ◆46YdzwwxxU氏は化物か!?

相変わらずのノリとテンポ、惚れてしまいます
そしてカッコマンエビルがテッカマンエビルに見え(PAM!

65: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/05 15:52:33 wRvo0pen
今まで自分が書いた文が、海上都市姫路守備隊戦記39KB。
ネクソンクロガネは調べてみたら78KBで二倍も差がある。
追いつけるようにもっと頑張らないとな。

66:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(後編)
09/06/06 11:41:08 ZAeNiEjt
投下させていただきます
前編からそのまま続きます

67:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(後編)
09/06/06 11:43:22 ZAeNiEjt
 ネクソンクロガネパンチは、確実に神速飛翔ロボ・シロガネソニックの腹を打突する軌道に乗っていたはずだった。
 しかし直後に、田所カッコマンは瞠目することになる。
 振り抜かれた最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの腕は、拳ひとつ分ほどシロガネソニックから逸れ、空を切ったのだ。
 もっとも、田所カッコマンの驚愕の理由はそれではない。どうして打点がずれたのかは明白だった。それはカッコマンエビルの緊急回
避が間に合ったからではない。
 殴打する動作じたいに干渉があったからだ。
 超特急新幹線などよりも桁違いに重く速いネクソンクロガネパンチに横殴りに衝撃を与えて、その弾道を捻じ曲げた者がいる!
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの前腕に、凹みが生じていた。直径50センチメートルばかりのそれは、隕石が落下したクレーター
を思わせる。砲弾の痕だった。
『馬鹿な!? 最強無敵を謳われた超ネクソン黒鋼の装甲に!?』
 司令室のはぐれ研究員・龍聖寺院光の悲鳴。それほどの異常事態だった。これまでの激戦を通して、内部機構に不具合は生じたことは
あっても、装甲が損傷したことは一度たりともなかったというのに!
「こんなことができるのは……!」
 田所カッコマンは右方を向いた。これが本職の狙撃手ならば、不用意に誰かに姿を晒すような真似はすまいが。
 果たしてそこにあったのは、月からの逆光に浮かび上がる三つのシルエット。
 一夜にして新たに建造された高層ビルか。馬鹿な。
 それこそが敵影。夜空に食いこんだ銃弾にも似て禍々しき。
「ちぇっ! もう来た」
 カッコマンエビルが唇を尖らせる。台詞とは裏腹に、声調には安堵の響きがあった。
 神速飛翔ロボ・シロガネソニックが羽ばたき、大きく弧を描いて彼らに合流。
 そうして、四体の超級巨大ロボットが遂に、月夜のロボヶ丘に揃い踏みした―!!
『なんてことだ……』
 龍聖寺院光の呆然とした声が届く。気丈な彼女にも、今にも崩れ落ちそうな気配があった。
「こいつらがそうなのか……?」
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの操縦桿を握る田所カッコマンの手には、じっとりと汗が滲んでいた。内臓の機能に異常を来たし、
吐き気を催すほどのプレッシャーを感じる。
 ネクソンクロガネストームの閃光に眩んでいた瞳が暗順応。次第に彼らの正体が明らかになる。
 体型や武器の差はあっても、銀の粒を表面にまぶしたような、美麗な白色だけは違いがない。
 神速飛翔ロボ・シロガネソニックと同じ、超ネクソン白鋼の質感だった。
 彼らこそは、白銀に統一された無法の戦士。悪の総本山によって送り込まれた刺客。恐怖の巨大ロボット軍団。
 すなわち―
「忍耐とはスナイパーの美徳だ」
 四人のうちの一人、向かって左端に立つ、細長い影が口火を切った。
 長大な銃身のライフルを手にした彼は、巨大ロボットを狩る猟兵。
 猟銃をくるくるとステッキのように回し、銃把を下にして大地に突き立てる。天を指す銃口からは、白煙が靡いていた。ネクソンクロ
ガネパンチを射ち抜いたのもそれか。
「たとえ飢え死にしようとも、糞尿を垂れ流そうとも、藪蚊に刺されようとも。じっと好機を待ち、決して外さない……。それ故に我が
名はスナイパーガマン。シロガネ四天王いちのスナイパーだ」
 左目には無骨な眼帯、恐らくは照準器に類する装置を当てていた。
 全身の模様は、シロガネマッスルは赤、シロガネソニックは青だったが、この機体は黄であった。ヤドクガエルの警戒色のように鮮や
かで、白色の強い装甲にも埋没しない。眼帯のない右カメラアイを中心として爪先まで、一定の間隔を置きながら拡大していく同心円の
パターン。自分自身をターゲットと見立てたような、ひどく奇異な装いだった。
「私の愛銃を紹介しよう。百発百中ロボ・シロガネスナイパー」
 操縦席で叫ぶのは、厚手の防弾服に似たパイロットスーツを着た壮年の男。
 胡麻色の髪をオールバックに纏め、左目には巨大ロボットと同じくスコープを装着していた。
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネを前にしての余裕ある態度からは、豊富な経験に裏打ちされた自信が見て取れる。
 四天王いちのスナイパー・スナイパーガマン、百発百中ロボ・シロガネスナイパー。それが一人目。

68:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(後編)
09/06/06 11:45:03 ZAeNiEjt
「前から思っていたんだけど」
 右隣。気だるげな声で、やや蕩の立った女が続く。
 芸術的な曲面を繋ぎ合わせた西洋甲冑だ。前方に張り出した胸甲の滑らかなラインは、その巨大ロボットが女騎士の特注品であること
を如実に表していた。
 何より目を引くのは、それが携える剣か。取り回しの楽そうな適度な長さ。両刃が放つ光沢は鎧のものよりも一層強く、凄絶な切れ味
を予想させる。
「四天王いちじゃあ、凄いんだか凄くないんだか分からないんじゃないかしら。四人ぽっちの中で一番だから何なの?って思ってるわよ、
カレ、きっとね。世界いちとは言わないけど、シンジケートいちくらいは名乗りたいものだわ」
「身も蓋もないな」
 スナイパーガマンが失笑する。
 騎士鎧の優美さを損なわないよう配慮された板金の継ぎ目に、不気味な緑の光が嗤うように蠢く。ヤコウタケという茸が夜に発するも
のに似ていた。兜の頭頂から伸びた、馬の尾のような毛髪の飾りも同じく。総じて亡霊じみてもいた。
「そう言うアタシは四天王いちのテクニシャン・切り裂きジャンヌ。で、この子は一騎当千ロボ・シロガネブレード。たぶん、この一夜
限りの付き合いだけれど、よろしくね」
 地味なライダースーツで強調された豊満な胸を反らし、女は蕩かすような声を発した。白い肌に浮いた口許には妖艶な微笑み。色の濃
い紅を引いた唇が吐くのは、炎か毒か。
 四天王いちのテクニシャン・切り裂きジャンヌ、一騎当千ロボ・シロガネブレード。これで二人目。
 セイギベース4を強襲し、海老原カッコウーマンの一撃必殺ロボ・ネクソンアカガネを捻じ伏せた巨大ロボットもいる。
「ふむ。まだまだ幼いが、無限の可能性を秘めた、よい筋肉だ」
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネを評しながら、次々にマッスルポージング。興奮のためか、筋繊維の入れ墨がより赤味を増している
ような気がした。
 機械仕掛けでありながら、それの特徴を端的に表すのに「筋肉質」以上に相応しい言葉は存在しないだろう。ボディビルダーを思わせ
る重厚な体躯は、距離の隔たりを越えて田所カッコマンを威圧する。
「そしてカッコマンエビル。きみはもう少し筋肉をつけた方がいい。その方がいい」
 パイロットである禿頭の巨漢は、穏やかな教師のような声で隣人に忠告する。
「だから、あそこからボクの華麗な逆転劇が始まる予定だったんだって」
 言い訳がましく返す声は、先ほど最強無敵ロボ・ネクソンクロガネと死闘を繰り広げた魔鳥の巨大ロボットからだった。吹き抜ける青
い風を象った紋様に曇りはない。
 彼らの名前ならば、田所カッコマンにも覚えがある。忘れるはずもない。
 四天王いちのマッシブ・ニック・W・キム、剛力無双ロボ・シロガネマッスル。
 四天王いちのスピード・カッコマンエビル、神速飛翔ロボ・シロガネソニック。
 彼らが三人目、四人目となり、これで全員が確認された。
「ひとついいことを教えてやろう。我々は結成以来、一度も四名揃ったことがない」
「私達は強すぎる」
「エージェントがどうしてもっていうから特別に参戦させてやるけど、残り三人はいらなかったな」
「光栄に思いなさいな、最強無敵ロボ」
 四人が好き勝手に叩く軽口は、苛烈な戦場の兵士が口にするようなユーモアとは違う。そもそも緊張感など微塵もないのだ。
 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネですら敵ではないというのか。国際犯罪組織ワルサシンジケートにより製造された超級の巨大ロボッ
ト、そのために選び抜かれた最高のパイロット達の前には!
「剛力無双ロボ・シロガネマッスルのニック・W・キム。四天王いちのマッシブ!」
「一騎当千ロボ・シロガネブレードの切り裂きジャンヌ。四天王いちのテクニシャン!」
「百発百中ロボ・シロガネスナイパーのスナイパーガマン。四天王いちのスナイパー!」
「神速飛翔ロボ・シロガネソニックのカッコマンエビル。四天王いちのスピード!」
 筋肉隆々たる巨漢が、妖艶な女騎士が、眼帯の狙撃手が、嗤う鳥人が、高らかに名乗りを上げる。
「四人揃ってッ!!」

69:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(後編)
09/06/06 11:46:29 ZAeNiEjt



『シロガネ四天王現る!』
 作詞・作曲/ドクトルポイズン
 歌/シロガネ四天王&ワルサ音楽隊


 1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 無法の戦士
 ヤツらが通ったあとには ぺんぺん草も残らない
 根こそぎ奪うぜ お宝 スマイル 生きてく希望
 シロガネ四天王 誰か止めてくれ

 1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 悪逆非道
 ヤツらが踏み締めた大地からは 愛と平和の歌も消え
 一切合財奪うぜ 金銀 財宝 お前の貯金
 シロガネ四天王 誰が止められる

 1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 無銭暴食
 ヤツらが渡った海では 赤潮青潮流れる血潮
 まるごと奪うぜ 食べ物 飲み物 三時のおやつ
 シロガネ四天王 誰かが止めなくちゃ

 1! 2! 3! 4(し)ロガネ! 悪党好色
 ヤツらが現れた街では ヤツらが王様 逆らうな
 とにかく奪うぜ 恋人 花嫁 気になるあのコ
 シロガネ四天王 誰も止められない

 シロガネ四天王 シロガネ四天王 シロガネ四天王 悪さしてんのう
 シロガネ四天王 シロガネ四天王 シロガネ四天王 あしたキミのもとへ



「シロガネ四天王ッ!!」
 背後で謎の大爆発が発生。
 思い思いのポーズを決める巨大ロボット軍団は壮観だった。
「か、勝てる気がしない……ッ」
『……ッ! 呑まれるな!! しっかりしろ!! 田所カッコマン!!』
 はぐれ研究員の鼓舞もどこか遠い。田所カッコマンの頬を冷や汗が伝い落ちた。
 彼を蝕むものそれは……恐怖……!
 シロガネ四天王、ロボヶ丘に集結―!
 単独でも最強無敵ロボ・ネクソンクロガネをあれほど苦しめた神速飛翔ロボ・シロガネソニック。
 それと同等の性能を誇ること間違いなしの四天王ロボ全員を一度に相手どり、果たして田所カッコマン達はこの戦いに勝機を見出せ
るのであろうか!?
 さらにシロガネ四天王には、まだとんでもない秘密が……!?
 かつてない窮地に、みんなの熱い声援が必要だ!
 ここが正念場だ! 田所カッコマン!
 踏ん張ってみせろ! 最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ! 



 つづく


70:最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ5(後編)
09/06/06 11:47:46 ZAeNiEjt
以上!!!!!
思ったより大した量じゃなくてよかった。

レス大感謝です。

>>63
どうもです。そこんとこ結構不安だったので安心しました。
>>64
実はこっそり意識してました。ボルカッコォォォッ!!とか言わせる予定だったのですが、さすがに没に。
>>65
恐縮です。まあでも長ければいいというものでは

71:創る名無しに見る名無し
09/06/06 22:44:49 Wt5toEH4
そういやこのスレで今までボリュームが一番多かったのってロボものって何なんだろう?

72:創る名無しに見る名無し
09/06/07 22:43:41 OIC7lTWb
◆gD1i1Jw3kk氏に質問
超振動極熱~という用語が付く武装は具体的にどういったものなの?
あとボトムズが好きなのはわかるけど、あまりにもそのまま過ぎるのはどうかと

73: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/08 00:56:12 TjJwyPfJ
>>72
質問、ありがとうございます。

自分の未来観が大きく関わっているので、人によってはおかしいと思うかもしれません。
どうしても受けられない方は適当な駄文と思って読み流して下さい。

過去から現在、そして未来へ、科学は人の夢と願い、想いを元に高性能と高効率を求めて際限無く進歩していく。
当たり前ですが、物は使えば壊れます。壊れない物などこの世に存在しません。どんなに大事に扱おうと、長年使い続ければ必ず。諸行無常、生者必滅の理……は少し違うか。
例えば目の前の液晶モニターと隣にあるパソコン、人によってはノートパソコンでしょうが、どんなに大事にしていても使い続ければいつか必ず壊れます。
生物が死ぬように、絶対に避けられない運命。子供でも理解出来る当たり前の事。ですが……
壊れないパソコンを求めた事はありませんか。どんなに酷使しようが、数十年使い続けようが絶対に壊れないパソコンを、心の中で少しでも。
絶対に壊れないパソコンなど夢物語のような物。人によっては一笑に付す妄想。ですが、本当にあったらいいと、少しでも思った事はありませんか。

ここで思うか思わないかで、自分の未来観を受け入れられるか否かが分かれると思います。

海上都市姫路守備隊戦記の時代は約22世紀~23世紀頃。現代よりも科学が遥かに発達した時代。
どのぐらい科学が遥かに発達しているかというと、パソコンやらテレビといった家電製品、自家用車などが100年酷使し続けても壊れず、修理どころか整備すら全く必要無い。そんな「物」が当たり前にどこにでもある時代。
普通の家電でも並大抵の使用では壊れないのだから、軍事兵器だと尚更。
10万トンを超える戦闘艦が大破しても、ドックに入れば修理が完全に完了するまで24時間かからない。
科学同様医療技術も発達しており、死んでなければどんな状態だろうが治せる、脳さえ無事なら大丈夫、というレベルで、大人数を短時間で心身共に完璧な治療が可能。
兵器及び兵士を襤褸雑巾同然にしてもすぐに直(治)って戦場に戻って来る。兵器は修復不可能な致命傷を与えるまで、兵士なら殺すまで何度でも続く。
昔には当然の常識とされていた、兵士を負傷させて後送し兵站に負担を与えよう、という考えは全く無かった。
戦場に存在する敵を如何にして確実に「潰す」か、それだけが考えられ、その為の思考錯誤と技術開発が進められた。
敵の兵器、兵士を塵すら残さず完全に消滅させる兵器。そんな人によっては一笑に付す御伽噺の如き代物を真剣に求め、発達した科学が応えた。
振動熱兵器。
物体を分解させる振動波と逃げも離れもせず極短時間で急速に伝播する特殊熱の相乗作用、分解蒸発で敵を撃破する革新的兵器の誕生である。

74: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/08 00:58:39 TjJwyPfJ
とまぁ、こんな感じですね。
上記の壊れない家電や振動熱兵器、あるいはそれに近い代物は、科学が発達していけばいずれは実際に作られるだろうと、自分は考えています。
振動熱兵器に関しては他作品との差別化を図りたかったのも理由の一つです。自分が思いついた、他の作品にはないオリジナルの設定を入れたかった。
自分が知ってるアニメ、マンガ、ゲーム、小説、映画などに作中の振動熱兵器を使っている作品は無かったと思います。強いて言えばガンダムのヒートホーク、ヒートサーベルぐらいでしょうか?
振動熱兵器か、それに近い物を使ってる作品があるのなら教えて下さい。

ボトムズそのままにならないよう工夫してはいるんですが……
ボトムズのATのローラーダッシュは足底に内蔵されているけど、重装甲強化服のローラーダッシュは内蔵せずに、足底に機動靴を装備して使用可能になるなど。

75:創る名無しに見る名無し
09/06/08 05:41:39 ESqCgTOR
まじめに戦闘書いてみたらすげー疲れた。もうしばらくは書きたくない。

>>74
>>72じゃないけど、よく分からん!
しかし俺はよく分からないものをよく分からないまま平気で食っちまうんだぜ

76:創る名無しに見る名無し
09/06/08 21:53:56 WKxyaqFP
物体の分子結合を解くのに一番手っ取り早い手段は熱だぜ
あと、ガンダム00のGNカタールの設定がちょっと似てる。あれの刀身に用いられてる素材は熱伝導率が異常に高いって設定で、つまり刃にとっつけたその素材を加熱して、斬り付けると即座に敵装甲に熱が転移して溶断……だったはず。俺の記憶だから間違ってるかも。
熱が特殊ってのが、何言いたいのかよく分からん。物体の分解、がどのスケールの話をしてるのかも分からん。

77:創る名無しに見る名無し
09/06/08 22:08:42 WKxyaqFP
対象物の分子構造内に瞬時に拡散し、金属が蒸発するレベルの熱を発する何らかの架空物質ってことか? 未発見の凄まじい放射線核種くらいしか思い浮かばんが。そしてその架空物質が行き渡る隙間を作るために、その振動機構で分子間結合を緩くする、と。
んなもんがあるなら、正直プラズマでもぶっ放した方が手っ取り早いような気がしないでもない。

78:創る名無しに見る名無し
09/06/08 22:37:30 WKxyaqFP
多分、直感的な理解なら「二重の極み+爆熱ゴッドフィンガーソード」、なのかな?
まぁそれはともかく、物体を分解させる振動波ってのが、熱伝播に何らかの寄与をするのか(しないんなら伝播可能な熱だけでいい)。熱に特殊もクソもないんだから、何らかの熱担体があるのか、それは伝播しうるのか。そのへんがちょっと気になった。

単なるヒートソードならそれこそガイシュツ。それに対し、別になくたって理屈の上では何の問題もない振動なんちゃらをつけてオリジナリティとしているならば、笑止千万といわざるを得ない。そこまで胸を張るなら理屈をつけてくれ。
未来観に関しては同感。アーサー・C・クラーク大好きだし。

79:創る名無しに見る名無し
09/06/08 22:49:36 qCg24k7y
振動ナイフってようは摩擦で熱起こさせて切ってるんだっけ?


80:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/08 23:17:00 x6IQfTg+
>>78
>爆熱ゴッドフィンガーソード

それはシャイニングフィンガーソードでは……? あるいは爆熱ゴッドスラッシュ

81:創る名無しに見る名無し
09/06/08 23:22:25 WKxyaqFP
>>79
摩擦熱で切る、ってのは少なくとも俺は聞いたことない(´・ω・`)
ナイフを当てて、押して引いて捻じ込んでの動作を機構の中に組み込んだもの、ってのが多い気がする。
フルメタなんかだと極微サイズのノコギリ、だっけか

>>80
すげぇヒートソードって印象が伝わればそれでいいww

82: ◆gD1i1Jw3kk
09/06/08 23:36:30 zr9v7LEq
こんなに返答があるとは思ってなかったです。
振動熱兵器は>>77>>78さんの言うような代物ですね。
例えば鍋を火にかけると中の水が沸騰するまで時間がかかるじゃないですか。通常の熱と違い急速に伝わり数十、数百倍の速度で水を沸騰させられるのが特殊熱です。
架空の物質などは全く使っておらず、必要なのは電力だけです。

正直大した科学知識は無いので、大体そういう風なモノと深く考えずに理解してもらえると助かります。
特に皇帝戦はほぼ完全に少年漫画的勢いとノリの話になる予定なので。

83:創る名無しに見る名無し
09/06/08 23:57:37 WKxyaqFP
熱とはどういう概念かを誤解している気がしないでもない。
まぁいいや。SF板に帰るわ

84:パラベラム! の人 ◆1m8GVnU0JM
09/06/08 23:59:49 x6IQfTg+
>>81
ラージャ!


単分子カッターですね。
クリムゾンエッジみたいな形の武器、好きだなぁ。

さて、近い内に自分も続きを投下しようかしら。

85:創る名無しに見る名無し
09/06/09 06:00:59 jSnZRKpG
みんな近いうちにっていうから期待しているのに、
なかなか来ないのでおれはマチクタビレッタ

86:創る名無しに見る名無し
09/06/09 21:15:23 3XnZLxyR
んーじゃあ、本編出切るまでのビスケットがわりにでも、むかーしこのスレだったかでも上げた気もするが
URLリンク(ux.getuploader.com)

PASSは目欄

87:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:01:30 cVw8rVLw
>>86
おぉ、これは懐かしい!後でゆっくり読ませていただきますね!

凄く時間が掛かっちゃいました、お久しぶりですorz
取り合えずやっとタウエルンの本来の姿を書く事が出来ました
ぶっちゃけ殆どファンタジーの域ですが、生温かく読んでいただけると幸いです。ではどうぞ

88:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:03:34 cVw8rVLw
<4,変形>

ギーシュは焦っていた。それは何故かと言えば、村長である村長からの連絡が全く来ないからだ。既に1時間以上経っている。
ちらりと目線を正面に向けると、村長の女房がおぼつかない視線で時計を見つめている。その表情には明らかに不安の色が浮かんでいる。
「大丈夫ですよ、奥さん」
ギーシュは明るい音色と、出来るだけ明るい表情を浮かべて、女房に声を掛けた。
「少し話が立て込んでいるんでしょう。大丈夫ですよ。ロッファさんは無事に戻ってきます」
女性を励ましているつもりではあるが、ギーシュはその言葉を自分に言い聞かせているのだと心の底で思った。

先日の事だ。酒場からトニーを送ったギーシュが自宅に帰ると、留守番電話に村長からのメッセージが入っていた。それは……。
「夜分にすまない。どうしても伝えておくべき事があってね。……トニー君の件は聞いたよ。……すまなかった。私が彼らと契約を結んだばかりに……。
 ……実は昨日、彼ら、いやデイトに飛行船に来るように連絡を受けたんだ。どんな要件なのかは来てみれば分かると言われたよ。どう考えても穏やかな内容ではあるまい。
 しかし私は思うんだ。もしここで断れば、恐らく私達は、かつての平穏な生活を永遠に失うのではないかと。そこで私は決心を固めた。
 明日、彼らの誘いに乗る事にするよ。そして、彼らが行っている圧政を直談判しよう。彼らの暴挙を許したのは私の責任だ。私自身が動かねば何も解決しない……

 そこでだ。ギーシュ君。君に頼みがある。明日、君には私の自宅に来てほしい。妻一人だけを家に残しておくのは何分不安でね。 
 腕っ節が強い君なら一緒に居ても安心だろうと思い、電話を掛けた次第だ。来てほしい時間は~……

 事が済み次第連絡する。恐らく1時間もしないと思う。もしも都合が悪ければ悪いで折り返し連絡してくれ。それじゃ……」

村長のこのメッセージに、ギーシュは正直戸惑った。村長の決断がとてもじゃないが英断とは思えないからだ。
シュワルツがどれだけ性悪なのか、ギーシュは嫌というほど知っている。あの男が何を考えているかは分からないが、村長の言う通り穏やかな用件で呼ぶ訳が無い。
止めよう。もし村長に危うい目に合えば今度こそ、この村は終わる。留守電ボタンの明かりが消えたと同時に、ギーシュは決心を固めた。

しまった……時すでに遅し、ギーシュが村長の家に着く既に1時間前に、村長はシュワルツのアジトへと出向いたらしい。
女房がギーシュが到着した際、ドアを開けてか細い声でそう説明した。ギーシュは女房の話に耳を傾けながらも、自らの失態に頭を抱えた。
決意を固めたはずだったが、休日である事が災いしていつもより遅く起きてしまった。自分がこれではトニーの事を馬鹿とは言えないな……。
今更村長を追いかける訳にも行くまい。ギーシュは肩を落として、女房と共に村長の連絡を待つ為家に入った。
そして今、ギーシュは村長から鳴って来る筈の電話を待ち続ける。村長――ロッファが殺された事も知らずに。

「着いたぞ。これだけ荒れてるが……本当に大丈夫なのか?」
トニーが背後を歩くショウイチに声を掛けた。ショウイチは立ち止まり、後ろのタウエルンに手をかざして停車させると、周囲を見渡した。
所変わり、ここはトニーが数週間前に全く芽が出ない為、に続行不可能として判断し、耕すのを諦めたスイカ畑だ。
常々水を与え気を配ったはずだが、なぜだか全くと言っていいほど実らない。実らない以前に……ショウイチは畑に足を踏み入れた。
「種が出てこない?」
「あぁ。何というか奇妙なんだ。まるで……」

89:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:05:36 cVw8rVLw
ショウイチはしゃがむと、何処からか取り出した薄い手袋で土を掘り返した。そしてトニーに顔を向ける。
「ここ数日で、何か変わった事は無かったですか? そうですね……」
視線を宙に向けて、数秒何か考える仕草を見せると、ショウイチは言葉を続けた。
「今まで順調に実っていたのに、ある日を境に突然実らなくなったとか。天気も環境も変わり映えない……
 ごめんなさい、言い方を変えます。去年と全く状況は変わらないのに、何故か今年は全く上手くいかないって感じはしませんか?」

ショウイチの表情と口調がさっきまでと全く違い、異様に静謐さを秘めている事にトニーは戸惑った。まるで、別の人間の様だ。
ショウイチの言っている事の意味がいまいち飲み込めないが、ここは真剣に答えるべきだろう。
「あぁ、ここ数カ月はとんでもない大不作だ。幸い自分たちで食っていける分は確保できているが……とても商売にならんよ」
「やっぱり……」

小さな声でショウイチはそう呟くと、手袋を脱いで、腰に両手を当てた。そして鋭い表情を柔和な表情に変えると、トニーに顔を向けた。
「大体の事情は分かりました。さてと、では耕しましょう!」

「片づけておきなさい。後々使いますから、これ以上傷は付けない様に」
シュウルツがまだ生暖かい血を流しながら息絶えたロッファを一瞥すると、そう言って踵を返した。
固まっていた研究員たちが、ハッと我に返り各々仕事に戻る。シュワルツの取り巻きである二人の男が淡々と、シュワルツの死体を片づける。
ダルナスに動きは特にない。が、シュワルツは妙な予感を抱いていた。ダルナスを見上げて思う。何かが、妙だ。
全て上手くいっている。微力ながらも村の中心となっているロッファは失せ、もうすぐダルナスが復活を遂げる。何ら不備は無い……。が、心の靄が晴れない。

その時、研究員の一人がシュワルツに声を掛けた。シュワルツはダルナスから目を逸らし、そちらへと向かった。
研究員が怪訝な表情でモニターを見、シュワルツに困惑した様子で言った。
「エネルギーの充填率が5パーセント落ちています。今までこんな事は無かったのですが……」
シュワルツはモニターを覗き見る。確かに先ほど見た時よりも、充填率を表すメーターが若干下がっている。

「……あり得んな。まさか……実るというか? 農作物が」
シュウルツはメガネを下げると、冷静に言い放った。確かに農作物が最低限のラインを越えて実る事はあり得ない……筈だ。
ダルナスはこの村全体の畑の地中奥深くにある、巨大なソーラーパネルより吸収される太陽光をエネルギーとしている。
その為、農作物に必要な太陽光を根こそぎ奪ってしまうのだ。
シュワルツはそれでは面白くないと、ある程度生活できる分の農作物を作らせる為、パネルの一部を消灯させた。
やろうと思えばスグにでもダルナスは復活できるが、それでは興が無い。
トニーおよび農民達が農作物が取れないと嘆き、苦しむのを見るのがシュワルツには可笑しくて堪らない。

だが今のシュワルツには嘲笑う気分ではなかった。抱いていた予感が、今現実になろうとしている。
モニターから離れ、シュワルツは研究員の肩に手を乗せると優しい声で言った。
「どの地域で何が起きているかを早急にリサーチしておいてください。大事の前の小事です。芽はしっかり潰さないと……ね」

「モードを田植えから野菜・果物に変更……速度は低速で……よし、オッケイ!」
タウエルンの上部からパネルを引き出し、ぶつぶつ言いながら何か設定を終えたショウイチがパネルを下して、トニーにサムズアップした。
ショウイチはタウエルン押しながら畑に再度、足を踏み入れる。ショウイチが立ち止まると、タウエルンが自動で動き出す。

90:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:07:10 cVw8rVLw
「後はタウエルンが耕し終わるまでのんびり待ちましょう。時間にして……15分程度ですね」
何処からか取り出した懐中時計を見ながら、ショウイチが笑みを浮かべて畑から出る。トニーはタウエルンに目を移した。

タウエルンの前部と後部から二本のアームが延びている。そのアームの先には、クワの刃を思わせる物体がついたローラーが、のんびりと畑を耕している。
正直滅茶苦茶な事をされるのではないかと不安だったが、タウエルンに付いたそのローラーは畑を至極丁寧に耕している。
しかし……別に今の時点では、このタウエルンにショウイチが語った様な無茶苦茶な機能があるように見えない。というか、この程度なら自分自身の力で十分耕せるからだ。
まさかこのショウイチと言う男は本気で……トニーは疑念を浮かべたその時。

「所で……トニーさんは自動人形についてどんなイメージがありますか?」
ショウイチの何気ない一言に、トニーは一瞬何の事か理解が出来なかった。今、ショウイチは確かに自動人形と言った。
イメージ? そんなモノは決まっている。平和な世界を破壊した、度がし難い憎悪すべき存在。それ以上でもそれ以下でもない。
実際トニーはそう、両親から教えられた。そして自分自身、自動人形によって住んでいた場所を奪われた。戦争と言う事を配慮においても、許せる訳がない。

「……質問の意味が分かりかねるな。もう少し具体的に聞けないか?」
あくまで感情を押し殺して、トニーはショウイチに聞いた。ショウイチの返答次第では、強硬な態度に出るつもりでいる。
大体、ここまで付き合っておいて難だがどうにも信用できないのだ。これだけデかく得体の知れない物が、トラクターとはとても思えない。
それにさっきまで膨らんでいた疑問が明確になる事が……怖い。それはタウエルンが――。

「……ナノマシンを分布するには、タウエルンが変形する必要があるんです。人型の、ロボットにね」
「……それで?」
「もしも……もしも貴方が、自動人形に対して嫌悪感を抱いているのなら、僕は彼と共にここを去ります。
 ですがもし、貴方が僕の話を信じてくれるのなら、その機能を使ってこの畑を蘇らせましょう。勿論目の前で」

そう言うショウイチの目には、確かな意思が宿っていた。トニーはその言葉に対し馬鹿にしているのかと一喝しようとしたが、ショウイチの目に、言葉が出ない。
しかし、だ。もしここでタウエルンに頼れば、それは自分自身の価値観を否定する事にならないか? 今だって自動人形に……。

だが、だがもし、タウエルンがショウイチが言う通り、とんでもないメカだったら、本気でこの状況から脱する事が出来るのかもしれない。
どうせこのままでは状況は変わらない。ならば一回くらい、突拍子の無い希望に掛けてみてもいいのではないか。
自動人形は憎むべき存在だ。だが、今はそんな事を言っていられるような状況じゃない。考えてみれば、今の我々には打開策が何も無いんだ。
……トニーは右手で目を覆い、天を数秒仰ぐと、ショウイチに向き直った。

「信じてやるよ。だがもし君の発言が嘘だとしたら、容赦はしないぞ」
トニーは苦笑いを浮かべて、ショウイチに返答した。ショウイチはトニーの言葉に力強く頷くと、畑を耕し終えたタウエルンに向かって大声を上げた。
「タウエルン! トランス!」

91:tueun ◆n41r8f8dTs
09/06/10 00:09:08 cVw8rVLw
その瞬間、タウエルンの車体が縦に割れ、ローラー部分が左右に分離する。見るも奇想天外な変形を重ねがら、タウエルンはその姿を露わにした。
さっきまでどこか鈍重で野暮な姿のトラクター姿とは似ても似つかぬ、人型のロボットがそこに立っていた。変形終了と共に、排気口の重低音が響く。
腕部と足部、そして胸部に車体の装甲が移行しプロテクターとなっており、重厚な印象を抱かせる。闘牛を思わせるヘッドパーツのデュアルアイが鈍く赤く光る。

「す、すげー……」
タウエルンの変形を見て、トニーは思わず感嘆した。するとどこからか、かわいらしい少年の声がした。
「ショウイチー。もう仕事しても良いのー?」
その声は紛れもなく……タウエルンから出ていた物だった。
何処からしゃべっているかは分からない。が、無邪気に右腕をショウイチに向かって振っている。思わずトニーは脱力した。

「あぁ、存分に働け!」
ショウイチが言うが早く、タウエルンは背中の排気口から何かを噴出した。一見ジェットの様に見えるが、それはキラキラと光る青い粒子だ。
あの重そうな自動人形が軽々飛び上がる様に、トニーは呆然とショウイチに呟いた。
「……あれもソーラーエネルギーって奴なのか?」
「ええ。詳しい事は長くなるので言えませんが」

タウエルンはしばらく昇ると、空中で静止した。すると腕部と足部がパカッと縦に二つに割れ、中からウエハースの様に薄い板で成形された部分がせり出てきた。
ゆっくりとタウエルンは降下しながら、その部分を下にする様に体をうつ伏せにした。
そして驚くべき事にその状態のまま、排気口から粒子を吹き出し、畑の上空を飛び回る。ウエハースの部分から、緑色の粒子が降り注ぐ。

「あれが例のナノマシンか……」
タウエルンから降り注がれる粒子を眺めながら、トニーは畑に目を移した。そこには驚くべき光景が広がっていた。
全く芽が出る事が無かったスイカの種が成長しているのだ。無論最初から完成している訳ではないが、これから充分育てられるほどには。
トニーには目の前の光景がまるで魔法の様だと思った。それほどあのナノマシンとやらがトンデモナイ代物なのだ。
「……で、あれほどの装置と言うか物体が、どうやってトラクターの中に収納されてるんだ?」
「詳しい事は長くなるので言えません、ごめんなさい」

次第にタウエルンから分布されていたナノマシンが、穏やかに薄くなっていき、うっすらと消えていく。
当初は荒れ果て、手の打ちようがないほど荒れていた畑が、今では立派なスイカ畑として生まれ変わっている。
ショウイチはこちらに飛んでくるタウエルンを、満足げな表情で迎えている。と、タウエルンがショウイチに近寄り、音声のボリュームを最大にまで下げた。


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