09/06/04 23:09:06 nXTIMzl3
小国の苦悩 第四話
「アテンション!」
その場にいた兵士達が固まる。
「私が諸君らを教育する事になった帝國陸軍第二特別教導団のロジャー大尉であるっ!」
後手を組んでウロウロしながら怒鳴る。
「私の任務は! 貴様らを誇るべき大英帝国のソルジャーにする事であるっ!」
「大尉、帝国は帝国でも大日本帝國です」
「それと彼らはゴンザレス王国の兵士です」
帝國人の少尉と中尉がツッコミを入れる。
ロジャー中尉は2人を睨みつける。
「ふん! 私は英国軍人だ! 例え本国に帰れなくてもな!」
強がっているが、顔が赤い。
「これから貴様らには! このPIAT・・・三式対竜擲弾筒の扱い方を教えるっ」
ロジャー大尉が筒状の物を取り出した。
「この三式は名前の通り、竜を討ち取れる優れものだ!」
兵士の間から響めきが広がる。
「大陸同盟の主力竜を一撃で葬る威力を持っている!」
反帝國陣営は帝國のチハに対抗するため、鉄をも溶かすと言われる史上最強の生命体ドラゴンの実戦投入を図った。
結局、成功したのは下位も良いところの火も吐けないトカゲだったが、歩兵にとっては十分に驚異であった。
「使い方は簡単!」
ロジャーは肩に担いでいた三式を地面に下ろす。
「まず圧縮レバーを立てる!」
筒の側面が割れ、そのまま大型のレバー状になる。
「次にレバーを最後まで引きロックする!」
レバーを引く事で内部のスプリングが圧縮され、最後に金具でロックされるガチャンという音が響いた。
「次に弾を装填する!」
筒の端から、対竜擲弾が装填される。
「敵に向けて発射レバーを引く!」
遠くの的に向けられた筒からガキョ! と言う音とともに弾頭が飛び出し・・・ゆっくりと着弾爆発した。
兵士達は再び響めいた。
「有効射程は50帝國メートルだ! 接近して撃て!」
ロジャーは三式を脇にいた帝國兵に渡すと
「これから貴様らにはこの武器の使用訓練を行ってもらう!」
「全員!駆け足! 向こうの軍曹から三式と訓練弾を受け取れ!」
少尉が声を張り上げた。
兵士達は慌てて向こうに向けて走り出していった。
「訓練がなっとらん!」
ロジャーが怒鳴る。
「大陸の兵士は基本的に常備軍ではありませんから仕方ないでしょう」
中尉の一人が弁解するように言った。
「あれではドイツ軍に勝てんぞ!」
「大尉、ドイツはここには居ません」
ロジャーはまた生意気な2人を睨み付ける。
「わかっておる! 少尉! ティータイムだ!」
「はっ!」
すでに用意されていた紅茶が差し出される。
「・・・うむ・・・そう言えば疑問があるのだが・・・」
「は?」
「なぜ帝國の戦車には湯沸かし器が付いていないのだ! お茶が出来んではないか」
「は?」
帝國人にとって彼の思考は理解不能だった。