コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ40at MITEMITE
コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ40 - 暇つぶし2ch4:創る名無しに見る名無し
09/05/07 19:59:14 9vr5N+wh
■画像投稿報告ガイドライン

ロスカラSSスレ派生画像掲示板
 PC用  URLリンク(bbs1.aimix-z.com)
 携帯用(閲覧・コメントのみ) URLリンク(bbs1.aimix-z.com)

1.タイトルとコテハン&トリップをつけて絵を投稿する。
  尚、コテハン&トリップについては、推奨であり強制ではありません。
 ・挿絵の場合は、誰の何のSSの挿絵と書く
 ・アニメ他公式媒体などにインスパイアされた場合は、それを書く(例:R2の何話をみてテンさんvsライを描きました)

2.こちらのスレに以下のことを記入し1レスだけ投稿報告。
  (SSの投下宣言がでている状態・投下中・投下後15分の感想タイムでの投稿報告は避けてください。)
  例:「挿絵(イメージ画像)を描いてみました。 画像板の(タイトル)です。
     ~(内容・注意点などを明記)~ よかったら見てください。」
 ・内容:挿絵の場合は、SSの作者、作品名等。それ以外のときは、何によってイメージして描いたのかなど
 ・注意点:女装/ソフトSM(首輪、ボンテージファッションなど)/微エロ(キス、半裸など)
      /ゲテモノ(爬虫類・昆虫など) など(絵はSSに比べて直接的に地雷になるので充分な配慮をお願いします。)

 画像掲示板には記事No.がありますので、似たタイトルがある場合は記事No.の併記をおすすめします。
 *ただし、SSの投下宣言がでている状態・投下中・投下後15分の感想タイムでの投稿報告は避けてください。

3.気になった方は画像掲示板を見に行く。
  画像の感想は、原則として画像掲示板に書き、SSスレの投稿報告レスには感想レスをつけないこと。
  画像に興味ない人は、そのレスをスルーしてください。

4.SSスレに投稿報告をした絵師は以下の項目に同意したものとします。
 ・SSスレに投稿報告した時点で、美術館への保管に同意したものと見なされます
 ・何らかの理由で保管を希望しない場合は、投稿報告時のレスにその旨を明言してください
 ・美術館への保管が適当でないと判断された場合、保管されない場合もあります
  (ロスカラ関連の絵とは言えない、公序良俗に反するなど)


----以上、テンプレ終了----

5:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 21:24:14 wHr8DJhJ
おつかれさまです!
ありがとうございます!
では、続きをよろしいのでしょうか?

6:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:25:15 9vr5N+wh
>>5
かもんべいべ~

7:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:27:20 CRV0DE+V
支援は幸せ

8:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 21:27:21 wHr8DJhJ
重い非常扉を閉め、ルルーシュは肩で息をしていた。
先ほどの飾り立てられた室内の雰囲気とはうって異なる、物寂しいコンクリートがむき出しの空間に、ルルーシュとロロはいた。
ルルーシュは困惑していた。
(……何で、あの赤いナイトメアは俺に手を差し出したんだ?あれじゃ、まるで…)
「兄さん!」
「ああ、大丈夫だ。それよりもロロ、怪我は無いか?」
「…うん。でも、ここからどうすれば」
「安心しろ。ロロ。お前は必ず、俺が何とかしてみせる」
弟の肩を抱きながら歩いていると、上から足音が聞こえた。彼らが見上げると、そこには黒のジャケットを羽織り、アサルトライフルを構えている人間がいた。
刹那、数発の銃弾が彼らに襲い掛かる。
「危ない!兄さん!」
ロロは身を挺して、ルルーシュと共に床に倒れこんだ。
息つく暇もなく、爆発音が響き渡り、建物が揺れた。その反動で、ルルーシュが足場の無い場所へと転がり込んだ。
ルルーシュは気が飛ぶような浮遊感に襲われる。
「ロロ!」
だが、ルルーシュは自分の身よりも、弟のことを気遣っていた。
「兄さん!」
二人が手は伸ばしたが、指だけが重なり、ルルーシュは暗闇に落ちていった。
大きく目を見開いて叫ぶロロの姿が遠くに離れていく。
ルルーシュは、遠ざかる弟を掴むように手を伸ばしていた。




9:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:27:58 4QOEOUCk
支援

10:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 21:28:53 wHr8DJhJ
ルルーシュは運よくビニール製のマットに倒れこみ、無傷で助かった。しかし、何階も下に落ちたために、ロロと大きく離れてしまった。
黒の騎士団がこのバベルタワーにいる。
そう考えただけでも、焦燥感がルルーシュの全身を襲う。
自分の安全など省みず、一目散に階段を走り出した。
(…俺にだって力はあるはずだ。世界で、たった一人の弟を守れる力はっ!)
階段を上りきると、大きな暗い空間がある場所にでた。四方八方を見回しながら、上へと登る階段を探していた。
足に、何か柔らかい感触があった。ルルーシュはふと足元を見る。
「!?」
そこでブリタニア人やイレブンの無残な死体を目の当たりにした。それも一人、二人ではない。中には『黒のキング』の死体もあった。
強烈な吐き気を催し、押さえ切れず、地面に零す。
全身が凍りつくような不安に襲われながらも、心は弟の安否だけで埋め尽くされていた。
イレブンのバニーガールが手にしていた一枚の写真が目に入る。
血で濡れたゼロの写真がそこにあった。
(馬鹿だ!こんな奴をいまだに信じてるなんて…だからお前たちは!)
死体が連なる先には、サザーランドではない青いナイトメアが静かに佇んでいた。
ルルーシュは目を見開いた。
片腕に大きな鉤爪がある青いナイトメアが、ゆっくりとルルーシュの方に向いた。
その機体も見覚えがあった。
先ほどの目にした赤いナイトメアの対となる青いナイトメア、黒の騎士団の最高戦力として名を馳せた機体だった。
「ぜ、ゼロの双璧!」
ルルーシュの声に反応したように、ナイトメアのコクピットのハッチが開き、一人の少女が現れた。
緑色の髪をした少女だった。
白を貴重としたパイロットスーツを身に纏い、整った女の体躯が暗闇でも分かる。
一筋の光が彼女を照らす。
「ルルーシュ」
酷く綺麗な声が耳に届く。
「・・・な、なぜ、俺の名を」
彼女は美しかった。
ルルーシュが見てきたどんな女よりも美しく、そして全ての男を虜にするような魔性を放っていた。
彼女はナイトメアのワイヤーを使って、ルルーシュと同じ目線に降り立つ。
魔女の誘惑に魅入られたように、彼は足を進めた。
目には彼女しか映っていない。
その時、彼に近づいてくる足音が木霊した。
ルルーシュは、それに気付き、すぐさま振り向いた。

11:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:30:50 9vr5N+wh
支援

12:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 21:31:59 wHr8DJhJ
そして、凍りついた。

「ゼロ!?」
忘れるはずが無い。
黒いマントをなびかせ、黒い服で全身を覆いつくす仮面の反逆者が眼前にいた。
全身が黒い服で覆われ、性別、素顔、経歴、全てが謎の人物。
このエリア11に新たな波を引き起こしたテロリストの首領が、単調な歩行でルルーシュに近づいていた。
コツコツと、仮面の人物がコンクリートを踏みしめる音がルルーシュを怯えさせた。
眼前にはゼロ。
後ずさるも、背後には得体の知れない魔女がいる。
ルルーシュはどうすることも出来ず、足がすくんで尻餅をついた。
喉が冷えあがる。
このエリア11に戦争を巻き起こした張本人が目の前にいる。
震える声と手で、ルルーシュはゼロを指差した。
「お前は、死んだはずじゃ…」
仮面の人間はルルーシュの問いには答えず、副生音の言葉でつづった。
『お忘れですよ。プリンス様』
ゼロは足を止めると、ルルーシュに『あるもの』を投げつけた。
『それ』を受け取ったルルーシュはさらに驚愕した。
「なっ!?なぜこれをっ…!」
それは茶色のチェスボードだった。混乱の最中、ルルーシュが置いていったものだった。
仮面の人間から、彼の耳に届いた。
『だから、言ったではありませんか。貴方に素敵な『真実』を見せてやると…』
「…まさか、お前はっ!」

13:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:32:44 G7MiXCY0
支援

14:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:32:50 4QOEOUCk
支援

15:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 21:33:47 wHr8DJhJ
ルルーシュの言葉は、コンクリートの壁がナイトメアの銃弾によって破壊される轟音によって塗りつぶされた。
彼が振り返った目の先には、アサルトライフルを構えたサザーランドが立ちふさがっていた。
床を蹴る多数の足音と共に、完全武装したブリタニア兵が姿を現した。
ライフルの金属音が木霊し、銃口がゼロを狙っている。
ブリタニア兵の姿を見た途端、ルルーシュの心は安堵と恐怖に締め付けられた。
(…助かったが、まずい!これでは、俺が黒の騎士団の一員だと誤解されてしまう!)
「へ、兵隊さん!ゼロです!ゼロが!」

『まあ、慌てるな』
低い男の声がナイトメアのオープンチャンネルと通して、ルルーシュの耳に届いた。
サザーランドのハッチが開き、パープルを基調とした軍服を纏った中年の男がワイヤーを使って降下する。
その右手には拳銃を構えたまま、ルルーシュを見据えた。
「まさか、魔女と一緒に『ゼロ』までエサに引っかかってくれるとは…私にもツキが回ってきたということかな」
「え、エサ?」
「そうだよ。ルルーシュ・ランペルージ君。君は魔女を捕まえるためのエサなのだよ」
「魔女?…エサ?…何を言ってるんですか!?俺はただの…」
「君と話す気は無いね。ごくろうだった。君は役目を十分に果たした。だから、もう…」

ゼロの仮面の一部がスライドし、琥珀色の瞳が晒された。
その瞳に、赤い紋章が宿る。
鳥のような形をした悪魔の刻印が、妖しく輝いた。
司令官の男の目が、赤い光に彩られた。
「……かっ、か…」
その男は驚愕の顔を浮かべ、両手で首を押さえた。
喋ろうとするが、口が動かず、命令を下すことが出来ない。
途中で声が途切れたことに疑問を思った数人の兵士が、司令官の方を向いた。
彼はなんでもない、と手を振ると言葉を紡いだ。
「まだ撃つな。殺すのはゼロの最後の声を聞いてからにしよう」
(…口が、勝手に、動いた…!?)
誰も彼が苦悶の表情で声を発していることに気付かなかった。
魔女は、目が赤く縁取られた司令官の表情を見て、くすりと笑うとルルーシュに口付けた。


「本当の自分を思い出せ―――――ルル―シュ」


16:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:35:06 CRV0DE+V
支援

17:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:35:09 G7MiXCY0
支援

18:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:35:09 9vr5N+wh
支援

19:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 21:35:14 wHr8DJhJ
何だ。これは?

見知らぬ光景が映し出される。
いや、知っているはずの光景が映し出された。

母の死から転落した過去、
魔女の出会い。
鉄と血にまみれた日々、
嘘で固めた日常、
親友との再会、裏切り。
そして、出会うはずの無い人間との遭遇。
境遇を知り、苦しみと喜びを分かち合い、手を取り合った日々。
俺たちが手にした本当の平和。

だが、それは一瞬で砕け散った。



力が欲しいか?

――力ならお前はもう持っている。

――忘却の檻から、お前を解き放つ。

魔女が彼に近づいてくる。
眩い光が彼の視界を白一色に染め上げた。
―彼が過ごしていた嘘の日常は、全ては壊れた。

俺の日常にとげのように突き刺さっていた苛立ち…

―ああ、思い出した。

俺は―――――

俺が―――――



『魔神』は目覚める。



20:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 21:36:33 wHr8DJhJ
「―――礼を言う。C.C.」
魔女から唇を離した『魔神』は、ブリタニア兵のほうへと向けた。
黒髪が揺れ、紫色の瞳が妖しく光りだした。
「残念だったな、ブリタニア。本当のエサは誰だったか、それを俺が教えてやろう」
『魔神』は大きく腕を仰ぐ。
彼を縛り付けていた虚無の呪縛を振り払うように。



「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる」



「――――――――死ね」
『魔神』の左目に赤い紋章が輝いた。
不死鳥をかたどった刻印がブリタニア兵士を襲った。

抗うこともできずに、赤い光が宿った兵士たちは微笑みながら、互いに銃口を向けた。
司令官である男は、拳銃を首筋に押し当てた。
彼らの最期の言葉が、狂喜に満ちた声で紡がれる。

『Yes! your highness!』

銃撃が鳴り響き、多くの兵士たちの命は散った。
凍てついた瞳で、ルルーシュは亡骸を見下ろしていた。
「そう、俺はゼロ。ブリタニアに反逆し、世界を変える男…」
突然、天井の一部が崩れ落ちた。
瓦礫を散らせながら、地響きと共に一機のナイトメアフレームが降り立った。
銀色の鉤爪を持った、左右非対称の腕を持つ紅いナイトメアだった。

蒼の月下と紅蓮弐式。

黒の騎士団の最高戦力、『ゼロの双璧』が立ち並ぶ。
2機のナイトメアフレームの間には、彼らの守るべき主君、『ゼロ』が佇んでいた。
ゼロはC.C.の肩をたたいて、横を悠然と通り過ぎる。
黒いマントを靡かせながら、仮面を被った主君は『魔神』の元へ足を進めた。
ゼロは静かに『魔神』に告げる。


『お待ちしておりました―――――ゼロ様』


21:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:37:02 9vr5N+wh
支援

22:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:39:08 4QOEOUCk
支援

23:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 21:40:30 wHr8DJhJ
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN01 「2人のゼロ」
投下終了です。

次は、
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN02 「合衆国 日本」
です。
サルに気をつけます。
先ほどは「改行が多すぎます!」と「長い行があります!」に手間取っていました。
すいません。
では、よろしいでようか?

24:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:42:06 CRV0DE+V
どうぞ~

25:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 21:43:53 wHr8DJhJ
数人の兵士が持っていた火炎放射器のタンクに銃弾が当たり、ブリタニアの兵士や民間人の死体に火は燃え移っていった。
業火の炎が、深い闇を背負う『彼ら』を彩っていた。
まるで『魔神』の復活を讃えるかのごとく、幾多の命が生贄のように捧げられている。
仮面の被った人間は眼前にいる『魔神』に話しかけた。副音声が周囲に鳴り響き、ゼロは『魔神』に手を差し出した。
『お目覚めですね。ゼロ様。早速ですが、ここは危険なので場所を…』
「待て」
強い口調で、『魔神』はゼロの言葉をさえぎった。
『魔神』の整った表情が険しくなった。
「誰だ?お前は」
『魔神』は左目に赤い紋章を宿らせたまま、仮面を被った人物を睨みつけた。
自分に強い警戒心を抱いていることを察したゼロは、差し出した手を引き戻し、何かを諦めた様に仮面に左手を当てる。
『……学園では何度かお会いしているんですが…』
仮面の後頭部が展開し、長い髪が晒された。右手で首筋から髪を振り払った。
黒に限りなく近い青色で、腰まである髪が宙に舞った。

『魔神』の目が見開かれる。

仮面の下には、透き通るような白い肌の美少女がいた。
背丈は『魔神』と差ほど変わらない。整っている容姿に、強い意思が宿っている琥珀色の瞳。
年端もいかない一人の少女が、ゼロの衣装を纏っていた。
彼女の口が薄く開いた。
「改めて、はじめまして。ルルーシュ先輩」
彼女は首をかしげ、『魔神』に優しく微笑んだ。
ベールの下に隠されている容姿は、彼が想像していた容姿よりさらに美しく、あらゆる男を惹きつけるような魔性の美貌を持っていた。
もう一人の『魔神』が告げる。



「2代目『ゼロ』、リリーシャ・ゴットバルトです」




26:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:44:41 9vr5N+wh
念のため、次以降はこちらに頼めますか?
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

代理投下はやります。ただ、一人の職人が長時間スレを占領する形になるのはなにかと拙いので、
他に投下待ちの人がいないか訊いてから行います。

27:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:45:55 9vr5N+wh
遅かったか…
すいません、当方もちょっと席を外さないといけないので、暫し失礼します。

28:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 21:46:25 wHr8DJhJ
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN02 「合衆国 日本」



ルルーシュの頭に急激に血が上る。彼の整った顔が憤怒に歪んだ。
「っ!お前はッ!!」
射殺しかねないほどの殺気を込めた視線で、左目のギアスをリリーシャに向けた。
赤い紋章が羽ばたく。
「やめろ。ルルーシュ」
緑髪の女は左手を突き出し、ルルーシュの視線からリリーシャの顔を隠した。
「何故庇う!C.C.!お前は知ってるだろう!こいつが何をしたか!こいつが俺たちをっ…!」
ルルーシュはC.C.の腕を振り切るが、その隙に彼女はゼロの仮面を被りなおしていた。目が見えない相手には、ルルーシュのギアスは効力を失う。
「知っている。だが、ここでリリーシャを殺しても何のメリットも無い。少しは冷静になれ」
「これが冷静でいられるか!一体どうなっている!?こいつは、俺たちを陥れた張本人だぞ!」
「話を聞け!ルルーシュ!リリーシャは私たちを…」
『…いいわ。C.C.話は私のほうでするから』
今にも飛び掛かりそうなルルーシュを止めていたC.C.に、リリーシャは声をかけた。
ゼロの仮面で反射している青白い光の炎が、ゆらゆらと揺れていた。
「…何が2代目ゼロだ。ふざけるな!」
『それが普通の反応ですよ……でも、頭で分かっていても、言われると堪えますね』
ゼロは、心の苦しみを押さえつけるように、マントの上から胸元の服を握り締めていた。
彼らの間に沈黙が漂う暇なく、唐突に紅蓮弐式からオープンチャンネルで紅月カレンの声が聞こえた。
『話し合いは後にして。それよりもリリーシャ。7時方向からサザーランドが一機!』
『…始末して。ナイトメアはもう必要ないわ』
『了解!』
ランドスピナーが急回転し、ルルーシュたちの頭上を一気に飛び越えた。丁度、ルルーシュたちの視界に現れたサザーランドは、禍々しい鉤爪に頭部を捕らえられた。サザーランドは態勢を崩し、壁に叩きつけらた。
強烈な光と音共に、右腕から輻射波動が放たれた。
赤い光に彩られたサザーランドは、機体全体がぶくぶくと膨れ上がり、瞬く間に爆散した。
爆風がルルーシュたちに吹きつけ、ゼロのマントが揺れる。
『じゃあ、19階に上り、ヴァルハラの残存勢力を叩いて。ポイントは…』
『D-37、でしょ?』
『あら?大正解。有能な部下を持つと嬉しいわ』
『…あー、はいはい』
穴が開いている天井に紅蓮弐式の胸部から2本のスラッシュハーケンが発射された。紅蓮弐式は高く舞い上がると、瞬く間に姿を消した。
白い通信機を外すと、ゼロは懐からナイトメアのキーらしきものを取り出し、ルルーシュに手渡した。
「…何だこれは?」
『奥に強化型の月下が用意されています。それに乗ってください。私はそのサザーランドに乗りますので』
ルルーシュに背を向けたゼロに、C.C.が声をかけた。
「リリーシャ。忘れてるぞ」
C.C.はクリアケースに入ったディスクを、ゼロに手渡した。
それを取ったリリーシャは、ゼロの仮面の下から呟いた。
『トランスファープログラムを忘れるなんて…結構動揺してるみたいね。私……』



29:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:50:10 4QOEOUCk
支援

30:創る名無しに見る名無し
09/05/07 21:50:29 CRV0DE+V
支援

31:POPPO
09/05/07 22:02:05 wHr8DJhJ
26さんへ
え?どうすればいいんでしょう?

32:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:05:27 G7MiXCY0
>>31
とりあえず支援はできますので
続けていただいて大丈夫だと思います

33:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:06:41 f+F7MWH2
規制なりくらって投下が困難になるまではいけるところまでPOPPOさんが、
その後代理スレに投下して代理投下してもらう

ってことでいいんじゃないですか?

34:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:11:28 G7MiXCY0
代理投下のことわかるかな。

>>31
引き続き投下お願いします。
猿に引っかかったら>>26のリンク先に続きを落としてください。
いづれかの人が本スレへの投下を引き継ぎます


2・3人いれば猿にはならないと思うのでとりあえず頑張って支援

35:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:12:08 wHr8DJhJ
分かりました。それではいきます

36:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 22:13:35 wHr8DJhJ
神聖ブリタニア帝国。
王都ペンドラゴン。
華やかな衣装を身に纏った貴族や皇族が、赤い絨毯が敷かれた道を歩いていた。巨大なホールから、オーケストラが奏でる音色が響いていた。
石柱が立ち並ぶ講堂の一角で、軍の大幹部が華やかなパーティをしている中で、青いマントを羽織った騎士、枢木スザクと、彼の足元で跪いている黒尽くめの兵士がいた。
「ゼロがエリア11に?」
「未確認情報ですが、エリア11の機密情報局から、ナイトオブセブン様に至急伝えるようにと…」
「分かった。黒の騎士団討伐の全権は皇帝陛下から預かっている。その情報の真偽が確認され次第、準備を整えてくれ」
「Yes, my lord」
スザクに一礼し、彼は音も無く立ち去っていく兵士の後姿を見ていた。
唐突に、スザクの背中に重荷がのしかかった。
「スーザクゥー」
スザクより一回り大きく、人懐っこい陽気な性格をしているが、ナイトメアの腕はナイトオブラウンズに名を連ねるほどの実力を持つ騎士、ジノ・ヴァインベルグがスザクに寄りかかっていた。
「……重いんだけど」
「何でマントなんて羽織ってるんだ?まだ時間はあるだろ?」
「ジノ、ちょっと飲んでる?」
「まーまー、仕事の話は無しによーぜ」
ジノは片手にシャンパンを持ったまま、もう片方の手でスザクの頬をつついていた。
「いいじゃん。今日くらいはさ。アーニャなんて、『…ドレス着てくる』とか言って、聞かなかったからな」
ジノの話を聞いていたスザクは、緊張の糸を解いた。徐々に表情が柔らかくなる。
スザクは賑やかな周囲を見回し、笑顔で答えた。
「うん…それもそうだね」




37:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:13:59 G7MiXCY0
支援

38:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:17:26 4QOEOUCk
支援

39:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 22:20:58 wHr8DJhJ
バベルタワーの14階にあるモニタールームに二人の男女がいた。
「D1、南南東上部30度に一斉射撃。D3、D4、17階のポイントK-04から突破口を作れ。IFFの番号変更を伝える。通信はKURに切り替えろ、Y6TTKF9…」
ゼロの格好をした少女は、途中で指示をやめた。
背中に銃を突き付ける学生に目を向けることなく、言葉をつむぐ。
「質問はありませんか?」
「…ありすぎて、何から聞くか迷うほどな」
「…質問にはお答えします。もちろん、嘘偽りなくですよ」
「お前の目的は何だ?」
「…いきなり核心をつきますか」
「振り向くな」
少女は振り向こうとするが、拳銃の金属音と共に強い言葉で制された。
ルルーシュは拳銃をリリーシャに突き付けたまま、視界内に入ったリリーシャの左目に疑問を持った。
「……なぜギアスを持っている?報告では…」
「貴方を助けること、そしてゼロとなることを条件に、C.C.と再契約しました」
「なに?」
「本当は煩わしい交渉云々を簡単するために『絶対遵守』のギアスが欲しかったんですけど、発現した能力は以前と同じ『絶対操作』の能力で…
この能力は『戦術』的には向いているんですが『戦略』的には不向きなんです。
黒の騎士団の再建と支援者との交渉に手間取ってしまって、ここまでこぎつけるのに約1年かかってしまいました…」
「…そして、目的は」

「この地に新たな国家をつくります」

ルルーシュは言葉に詰まった。
銃を向けられたまま、リリーシャは話し続けていた。彼女の顔を見ることは出来ないが、これは冗談ではない。彼女が本気であることを悟った。
「……お前は、ユフィの命を奪った。それだけじゃない。スザクだって、あんなことには…」
リリーシャは強い口調で話を塗りつぶした。
「貴方は、私の兄を奪った。兄の人生を、命までも踏み躙った」
「お前は特区日本を潰した!俺たちの世界を!争いの無い世界の礎を、壊した!」
その言葉を聞いた瞬間、彼女は鼻でルルーシュを笑った。
「…それがなにか?」
ルルーシュの頭に血が上る。
手に力がこもり、トリガーを引きそうになった。口を歪ませ、大声を張り上げた。
「なんだとっ!」
「正しいことに価値など無いのですよ」
リリーシャはルルーシュの心情を理解しながらも、彼に言葉をつづる。
「この世は強いものが勝ち残ります。それこそが、弱者が目を背けようとする現実、強者だけが知っている真理、いや、自然の摂理です」
「ふん、お前も皇帝と同じ、弱者を蹂躙することを是とする、ただの…」
「でも、それは先輩も理解していることでしょう?」
彼は言葉を噤み、リリーシャは言葉を続けた。
「力がなければ、何も出来ない。ただ、憎み続けることしか出来ない。遠くからただ、睨みつけることしか出来ない。
だから貴方は力を欲した。
そしてギアスという力を得た貴方は行動した。
黒の騎士団という武力を使い、その頭脳を使い、ギアスという王の力を使い、人々を動かし、ブリタニアに反逆した」
彼女のダークブルーの長髪が揺れる。
リリーシャの瞳にはモニターの光だけが映っていた。
「自分たちの居場所を作るためだけに、ブリタニアの秩序を壊し、私のような人間を巻き添えにして、悲劇をもたらし、多くの血を流した。
『自分たちが幸せに暮らすことができれば、それでいい』
聞こえはいいが、それは単なるエゴだ。
ブリタニア人と、行動原理は何ら変わりは無い。
自分たちの居場所が欲しい。そんなエゴを押し通すために、多くの人間を手にかけてきた男、それが貴方です。
貴方の言う『正義』はただの…」

40:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:21:22 G7MiXCY0
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41:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:22:23 4QOEOUCk
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42:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 22:26:31 wHr8DJhJ
リリーシャの言葉はそこで止まった。
ガンッと、デスクにリリーシャの顔が叩きつけられ、ゼロの漆黒のマントが揺れる。
「うぐっ…!」
銃口が後頭部に押し当てられ、彼女の綺麗な長髪が乱れた。
彼の整った容姿は怒りで歪み、紫色の瞳が鋭い眼光を放っていた。
ルルーシュは体を震わせながら、吼えた。
「お前に何が分かる!!貴族として、ぬくぬくと生きてきたお前なんかに、俺の何が!俺の何が分かるっていうんだ!」
ルルーシュの脳裏には、様々な記憶が蘇ってきた。
皇族として誕生し、厳しい教育と皇族の競争の中でも、妹と母を支えに生きてきた。
だがそんな日々も、母の死によって唐突に終わった。
皇位継承権を失い、小国に身柄を売り飛ばされ、彼の世界は一変した。
ブリタニア人だからという理由で蔑まされ、いじめられ、居場所を無くし、手足が不自由になった妹を守り続けた。
そして、影でひっそりと暮らす日々を、たった一人の妹と共に生きてきたのだ。
戦争という悲劇に飲み込まれ、想像を絶する人生を歩んできた彼は、孤独だった。
誰にも打ち明けることなく、誰からも理解されず、誰よりも賢いからこそ、彼は一人だった。
リリーシャは抵抗することなく、押さえつけられた状態でルルーシュに言葉を投げかけた。
髪が散乱し、リリーシャの目元が隠れていた。
「…かつての貴方も、そしてかつての私もそうだった」
「ただ、自分のエゴを、最悪のやり方で押し通して、そして、潰れただけ…」

「ルルーシュ先輩…私たちは、負けたんですよ。だから、私たちは『悪』なんです…」

ルルーシュは黙ってしまった。
彼女は、分かっていたのだ。そして、自分も気付いていた。
世界の摂理は、どんな言葉で飾り立てても変わらないことを。
だから彼も、武力でブリタニアを潰そうとした。
それが正しい。
だが、認めたくなかった。
自分は正義だと、巨悪を成してでも悪を討つ正義であると、信じていたかった。
それを彼女は否定した。
ルルーシュに、現実を突き付けたのだ。
目的が何であれ、自分のやってきたことは人殺しに代わりは無いのだと…
いつの間にか、ルルーシュの肩から力が抜けていた。銃を持った手が下ろされた。
ゆっくりと上半身を起こしたリリーシャは、乱れた髪を抑えながらルルーシュの方向を向いた。
左頬が赤くなっていたが、気にする素振りも見せずにルルーシュに笑顔でこたえた。
「引き金を引いても構いません。作戦の70%は既に完了しているんで、後は先輩が指揮を取ってくれれば問題ありませんから」
それを見た彼は一瞬、目を見開いた後、瞼を深く閉じた。
ルルーシュは彼女の態度の意図することに気付いた。
罰を受けたい、ということを。
「そうか…」
そして、瞳を開けた。
彼は左手をゆっくりと突き出した。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる――――――」

『魔神』は少女に命令した。
左目に輝く『絶対遵守』のギアスが羽ばたいた。
『Yes, your highness…』
それを見たリリーシャは表情を消し、彼女の両目が赤く縁取られる。
リリーシャはマントの下から拳銃を取り出した。




43:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:27:02 G7MiXCY0
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44:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:27:09 4QOEOUCk
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45:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 22:30:09 wHr8DJhJ
アッシュフォード学園。
高等部女子寮の一室。
淡い紫色の長髪の美少女、ヘンリエット・T・イーズデイルは眼鏡をかけて、赤いシャーペンをノートに黙々と走らせていた。
ノックもなしに、部屋のブラウン色のドアが開いた。
真っ白なランニングシャツに黒の短パン、左腕には黒のリストバンド、首にタオルをかけ、ランニングを終えたような格好をした少女が入ってきた。
茶色の短髪に赤い瞳、ランニングシャツの首周りは、日焼けした後がくっきりと残っている。
体育会系特有の活発な雰囲気がある少女、ノエル・パッフェンバウアーが2本のスポーツドリンクを持ってきた。
ヘンリエットの机にスポーツドリンクを置くと、ヘンリエットはペンの動きをとめて紫色の瞳を動かし、ノエルの顔を見た。
「…紅茶を頼んだのに」
「あれ?そうだっけ?なはは、まあいいじゃん!一本余ってたからさ。今日の自主練も終わったし、休憩、休憩!」
ノエルは頭をかいて、スポーツドリンクのストローに口を付け、ヘンリエットのベッドに座った。
「あっ!シーツを綺麗に敷いたばかりなのに!どうせなら向かい側のリリーシャのベッドで寝そべって!」
「…リリーシャのベッド、何か仕掛けてありそうで怖いもん」
「そんなものはないわ。大丈夫よ。いつも私が掃除してるから」
ヘンリエットはノエルと視線を合わせず、ストローから一口ジュースを運ぶと、再び勉強に戻った。
その姿を見たノエルは、小さなため息をついた。
「…がんばるねぇ。ヘンリー。私、尊敬するよ」
「…あの貧乳女、学校は全然来ないくせに、成績はいつも私より上で……」
「前回はついにトップだったもんね」
ボキッ、とペン先が音を立てて折れた。
「あの『ガリ勉ゴールズ』を抜いて、ぶっちぎりの一位ですわよ!悔しくてなりません!でも、それでこそ私が認めた永遠のライバル!」
「……で、今回こそリリーシャを追い越してやると…」
「ええ!打倒リリーシャですわ!」
左手でガッツポーズを取り、ヘンリエットの紫色の瞳は競争心でメラメラと燃えていた。
スポーツドリンクを飲み干したノエルは、大きなため息をついた。
「…で、ノエル。どうだった?」
その声を聞いたノエルが顔を上げると、目の前にヘンリエットの顔が視界一杯に広がっていた。
驚く暇もなく、ノエルの肩がヘンリエットの両腕に掴まれた。
眼鏡の端がキラリと光り、ノエルはさらに恐怖を感じた。
「…リリーシャの勉強のやり方でしょ?」
「ええ。私の言うとおり、さりげなく話を振って、聞いてくれたのね」
「うん。でも…」
「いいから言いなさい。まあ、大体予想はつきますわ。勉学に裏技なんてありませんもの。
リリーシャは人前では努力する姿を見せないタイプ…そして、最近は私が日々追い詰めているから、取り繕う余裕が無いのですわ。
うふふっ、リリーシャったら意外に可愛いところが…」
「『そんなの、一回見たら分かるでしょ?』だって……」
その瞬間、ヘンリエットの腕に尋常ではない握力がこもった。ゴキッ、と鈍い音が彼女たちの耳に届いた。
曇り一つ無い晴天の下、アッシュフォード学園の一室で、女の悲鳴が響き渡った。




46:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:31:06 4QOEOUCk
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47:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:31:07 G7MiXCY0
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48:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 22:33:41 wHr8DJhJ
「……え。私、今何を」
呆然と立っていたリリーシャが目にしたのは、椅子に座って、デスクに2丁の拳銃を置き、彼女のノートパソコンを見ているルルーシュの姿だった。
「…ほう、なるほど……よく考えたな」
あごに手を当てながら、ルルーシュはギアスが解かれたリリーシャの方に向き直った。
「…あの、一体、私に」
ルルーシュはUSBメモリをパソコンから引き抜き、閉じたノートパソコンをリリーシャに渡した。
「俺は『作戦内容を教えろ』と命令しただけだ」
ルルーシュは、瞳はまだ鋭いものの、顔には微笑を浮かべた。
その言葉を聞いた彼女は、すぐさまルルーシュにギアスをかけた。
ルルーシュは金縛りにあい、自分の意思とは無関係に腕が動いた。両手で自分自身の首を絞め、ルルーシュの顔に驚愕の表情が浮かんだ。
「!おいっ、何をする!?」
デスクに置かれた拳銃をルルーシュに突き付ける。
今度はリリーシャの顔に大きな笑みが浮かんだ。
「あははっ、言っていたことは本当のようですね」
目元をこすりながら、もう一方の片腕は腹を押さえて、笑っていた。ひとしきり笑うと、リリーシャは言葉を続けた。
「私はてっきり『私に逆らうな』、『私に刃向かう意志を抱いた場合、自害しろ』というギアスをかけたと思ってました」
突き付けている拳銃を再びマントの中に隠し、彼女の左目からギアスが消えた。
「この場で私を殺さないのは分かってましたけど、万一に備えて今までのデータだけはまとめておいたんですよ。作戦完了後に確認してください」
そう言って、携帯電話から小さなメモリーカードを取り出し、ルルーシュに手渡す。ルルーシュの顔は歪んでいたが、リリーシャは気にせず、彼にとびきりの笑顔を見せた。
リリーシャの年相応の笑顔に気を取られながらも、ルルーシュは言葉を続けた。
「こんな言い方は嫌いだが、
「では、協力してくれるんですね…」
「何を言っている。もともと、黒の騎士団は俺のものだ」
特区日本を創った男。
特区日本を壊した女。

二人は手を取り合った。

「それに、お前は殺すには惜しい人材だ」
右手を口に当てながら、リリーシャは苦笑気味の表情で答えた。
「うふふ、物騒な口説き文句ですね」
「口説いたつもりは微塵も無い」
手を握ったまま、リリーシャは取り繕いのない微笑を浮かべた。ルルーシュは彼女の真剣な表情とのギャップに、内心では何かもやもやしたものを感じていた。
「ライ先輩に感謝してください。こうやってルルーシュ先輩と手を組めたのは、ライ先輩のおかげなんですから」
「…そうか」
手を離したルルーシュは、モニターのほうに顔を向けた。
背中越しに彼は、言った。
「ライは、どこにいる?」
ルルーシュの表情は分からない。
だが、リリーシャは彼の顔を見ようと思わなかった。
制服の後姿から、彼の心情を感じ取ったからだ。
「…申し訳ありません。でも、生きているのは確かです。C.C.がそう言っていますから、間違いないです」
「ふん、魔女の言葉は、どうも納得がいかないな」
「一つだけ心当たりはあるのですが…」
「だが…なんだ?」
「もしそうだったら、最悪のケースです」
ルルーシュが問いかけようとした時、デスクに置いてあったリリーシャの銀色の携帯が鳴った。
彼女は表示されている文字、『Q2』を見るなり、すぐさま電話に出た。
『ゼロ様、こちらの任務は完了いたしました』
「予定よりも早いな…レナード。感謝するよ」
『…勿体無いお言葉です。では、作戦終了後にお会いしましょう』
通信を終えると、リリーシャは二つ折りの携帯電話を両手でパタンと閉じた。
琥珀色の瞳を細め、ルルーシュに微笑みながら彼女は言った。
「フェーズ4完了です。では、そろそろ私たちも行きましょうか。ゼロ様♪」




49:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:35:24 G7MiXCY0
支援

50:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:36:23 x6ql7XXr
支援

51:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:40:50 k/id9sOR
sien

52:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 22:44:37 wHr8DJhJ
中華連邦の大宦官との食事を欠席したカラレス総督は、指令用のトレーラーの中でバベルタワーの状況が刻々と伝えられていた。
「敵性ナイトメアを確認しました。総数は確認されているだけでも7機。しかし、どれも旧型ばかりで・・・」
連絡員からの報告を聞いたカラレス総督
「ふん。黒の騎士団がEUに見限られたというのは本当だったようだな」
「では、いかかがなされますか?」
「奴らの逃走ルートを塞げ。悪あがきのテロリスト共は一匹たりとも逃すな!」
「Yes, my lord!」


53:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:45:52 G7MiXCY0
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54:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:46:08 k/id9sOR
sien

55:創る名無しに見る名無し
09/05/07 22:48:29 x6ql7XXr
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56:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 23:02:21 wHr8DJhJ
バベルタワーの20階層に3機のナイトメアがランドスピナーを走らせていた。
リリーシャはサザーランドのアサルトライフルの残弾数を確認し、操縦桿を握る。
「サザーランドは使いづらいわね。こんなことだったら専用機を持ってくるんだった…」
『…バベルタワーを灰にしたいの?リリーシャ』
カレンのため息交じりの声が、サザーランドのコクピットに伝わる。
扉を越えて、薄暗い大きな空間に出た。
目的地に着いた紅蓮弐式、月下がサザーランドを守るように陣形を取る。
リリーシャの通信機に、部下の緊急連絡が入った。
『ゼロ様!一機のナイトメアが…うわあ!』
『消えた!?いつの間に!?』
リリーシャは即座に反応する。
「…消えた?どういうことだ?」
だが、部下はその返事をすることもなく、通信は途切れた。
彼女の額にいやな汗が流れる。

眼前が爆発と共に、粉塵を巻き上げた。
金色のヴィンセントが空中で一回転し、地面に降り立つ。
敵を視認したヴィンセントは背中からニードルブレイザーを取り出した。
『ルルーシュ!輻射障壁をオンにして!』
『だから命令するなと!』
月下は回天刃刀を構えた。
紅蓮弐式と月下はランドスピナーを起動して、ヴィンセントに襲い掛かった。

だが、

『なっ…!?』
『消えた!本当に…』
彼らの眼前から忽然と消え、
リリーシャが騎乗するサザーランドの前に、ヴィンセントが一本に組み合わさったニードルブレイザーを構えた。
『リリーシャ!』
それを見たカレンが叫ぶ。
ルルーシュは、目の前で起こった現象に驚愕していた。
(……バカな。物理的にありえない)
リリーシャ眼前で起こった現象に目を見開いていたが、ルルーシュとは正反対に、思考がフル回転する。
(ランドスピナーの初速度…
タイヤの痕跡・・・
ここからの距離・・・
ニードルブレイザーの接続のライムラグ・・・
そして、この武装からして私を殺すのではなく、拿捕が目的・・・
私をなぜ背後から斬らない?
いや、背後に回れなかった・・・
すなわち・・・)

57:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 23:03:53 wHr8DJhJ
「25,7メートル…」

物理的な要因を無視するナイトメアの動きに驚くことなく、リリーシャは呟いた。
突如、サザーランドのランドスピナーが後方に急回転し、スラッシュハーケンと共に、後方の天井に舞い上がった。
「カレンさん!先輩!距離をとって!」
その言葉に、二人は反応した。
『…俺に命令するな!』
ルルーシュは悪態をつきながらも操縦桿を握り、金色のヴィンセントと距離をとった。
回天刃刀を捨て、コイルガンを発射した。
巧みな動きでヴィンセントは銃弾を避けていく。
『Q1!先ほどの動きを読み取ってUDDを逆算!
R2!同じくUDDを用いて、コイルガンの発射時間を2,3秒後に設定!』
『R2!?俺のことか!』
三機のナイトメアは、ヴィンセントを中心に、三角形の布陣を引いた。
壁に張り付いた紅蓮弐式は、そのままヴィンセントに襲い掛かった。
「10メートル手前で輻射波動を放出!」
『は!?当たるわけないじゃない!』
『いいから!』
半信半疑にもカレンはボタンを押した。

『え?』
カレンは声を上げた。
カレンが次に目にしたのは、鉤爪の掌にある輻射波動の影響で変形したナイトメアの腕だった。
金色の腕から煙が上がり、すぐさま爆発した。
リリーシャは見上げた。
「4,9秒……範囲と時間は若干操作できるみたいね」
右腕を失った金色のヴィンセントがいた。

爆発音が木霊し、バベルタワーが傾き始めた。

「時間切れか……でも、結構面白かったわ」
轟音と共に、床が崩れ、金色のヴィンセントが灰色の粉塵に包まれていった。
「じゃあまた会いましょ。坊や♪」
リリーシャはモニター越しに投げキッスをはなつと、スラッシュハーケンを近くの壁に撃ち付けた。
バベルタワーが音を立てて崩壊していく。
カラレス総督を乗せていた軍用車は抗うすべもなく、バベルタワーの下敷きになった。




58:創る名無しに見る名無し
09/05/07 23:04:58 4QOEOUCk
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59:創る名無しに見る名無し
09/05/07 23:06:53 x6ql7XXr
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60:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 23:07:34 wHr8DJhJ
政庁の中央モニタールームでは、その光景がリアルタイムで映し出されていた。
目の当たりにしたグラストンナイツとギルフォードは驚愕に染まる。
「なっ…」
それと同時に、一人のオペレーターから声が上がった。
「ギルフォード卿!トウキョウ租界に向かってくる3機の未確認飛空挺が!」
「なに?モニターに出せ!」
画面が切り替わり、トウキョウ租界沿岸部上空にいる3機の白い飛空挺が映った。
アヴァロンと同程度の大きさを持つ3機の機体であり、中心に円形のコクピットがあり、その端に回転式の大型砲が装備された船だった。
翼は機体に比べて小さいことが特徴的なEUの最新式の戦闘機である。
グラストンナイツの一人、アルフレッド・G・ダールトンが声を上げる。
「EUの飛空艇『パルテノン』?なぜエリア11に…」
だが、隣にいたエドガー・G・ダールトンが叫んだ。
「違う!船尾のマークを見ろ!」
その指摘に従い、モニターには右下に船尾の拡大図が表示された。
司令室にいた人々は息を呑む。
黒い鳥を象った、有名なテロリストである『彼ら』を象徴とするマークがそこに描かれていた。
「あれは、黒の騎士団!?」
「バカな…EUとは手を切ったはずでは…」
「ギ、ギルフォード卿!」
またもや、オペレーターの一人から声がかかる。
ギルフォードは普段の冷静さを失い、少し声を震わせながら叫んだ。
「今度はなんだ!」
気圧された中年のオペレーターはギルフォードの声に気圧されつつも、報告した。
「先ほど、トウキョウ監獄から緊急連絡がありまして……ナイトメアの強襲があり、黒の騎士団の幹部、251名全てが奪還されたという知らせが…」
「なんだと!?」
司令室が再び揺れた。
次々と報告される情報に対応が追いつかず、司令室は混乱の窮みに陥っていた。武官を支持するカラレス総督が死に、文官の人間がこの騒乱に乗じて介入を果たしていた。
指揮系統が乱れ、ギルフォードは唇を強くかみ締める。
(黒の騎士団は健在だったのか…!
組織の弱体化を装い、注意をバベルタワーに引き付けた。
多数の軍隊をおびき寄せた上で、中華領事館へと渡るラインを造ると同時にバベルタワーの構造を利用して殺害…
そして主力部隊は人員が少なくなった刑務所に送り、最小限の被害で仲間を救出した…
この大胆さと策略……これはっ…)
「ゼロだ!奴は本物のゼロだ!」


61:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/07 23:10:43 wHr8DJhJ
そして、『魔神』は現れる。


『私は、ゼロ』

エリア11にある電波は全て掌握され、あらゆる場所にあるモニター画面に『ゼロ』の映像が映し出された。
『日本人よ!私は帰ってきた!』
背後に日本の国旗を掲げ、仮面の人間は言葉を紡いだ。
『私は愚かだった…』
仮面に手を添え、副生音の声が響く。
『血が流れることなく、ブリタニアと調和する国家が実現することを、私は信じていたのだ』

『だが、特区日本は終わった。偽りの希望は潰えた!日本の独立を拒んだユーフェミアによって!』
『だから、私は彼女に天誅を下した!そして、この日本を苦しめるカラレスも、我が手で葬ったのだ!』
『仮初めの平和を謳うユーフェミアはもういない!欺瞞に満ちた国家も無い!』
『私は、ここに日本の独立を宣言する…』
『人種を問わず、あらゆる主義、主張を受け入れる国家!』
ゼロは両手を仰ぐ。
漆黒のマントが大きく羽ばたいた。
『その名も――』


『合衆国日本!!』


『うおおおおおおおおおおおおおっ!!!』
エリア11のあらゆる場所で、歓声が上がった。
ゼロの姿に涙を流す者もいれば、狂喜の声を上げ、握りこぶしを空高く上げる者もいた。
全ての日本人が奮い立った。
テロリストたちは、機関銃やナイトメアのアサルトライフルを掲げて『ゼロ』の帰還を称えた。

戦闘艦『パルテノン』の船内では、多くの囚人服が宙を舞った。
ゼロの帰還と、自分たちの救出を心の底から喜びあっていた。抱きしめあい、涙を流す幹部たちが大半だった。
幹部たちの無事な姿に、井上は涙を堪えきれなかった。オペレーターの水無瀬むつきと日向いちじくは手を叩きあった。
双葉綾芽は十字架のシルバーネックレスを両手で握り締め、頬を紅く染めながら、円満の笑顔を見せる。
扇と杉山は肩を組みながら、笑いあっていた。
瞳から流れる涙と鼻水をぬぐい、玉城は歓喜の声を上げる。
「ゼロォ…俺は、お前を信じてたぜぇ…やっぱりすげぇよ!俺のゼロはよぉ!!」

『ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!…』

『彼ら』は叫ぶ。
やがて、ゼロを称える声は日本全土に広がっていた。




62:創る名無しに見る名無し
09/05/07 23:11:12 4QOEOUCk
支援

63:創る名無しに見る名無し
09/05/07 23:18:40 x6ql7XXr
支援

64:創る名無しに見る名無し
09/05/07 23:27:39 G7MiXCY0
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65:創る名無しに見る名無し
09/05/07 23:41:09 G7MiXCY0
02が>>23含めて13レス、前スレでの予告は14レス
もう支援なくてもいけるとは思うけど……終わったのかな

66:創る名無しに見る名無し
09/05/07 23:42:56 x6ql7XXr
どうだろう…あれか、親御さん乱入か

67:創る名無しに見る名無し
09/05/08 00:15:58 5erGGmSY
PC使用時間に制限があるとして、12時過ぎはまず無理そうだなあ

時間のない人の長編投下、
ろだ利用を本気で考えたほうがいいかも。

68:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/08 00:16:34 sjsGkd6l
中華連邦総領事館。
放送を終えたゼロは、星刻の前を通りすぎていった。
長い黒髪を揺らす星刻は、黒の騎士団の部下と共に部屋に戻る『ゼロ』の後姿を見守っていた。
(いつの間に高亥様と取引を…いや、括目すべきものは彼の策略…噂以上の腕前だ)

ゼロは自動ドアを跨ぎ、中華連邦の国旗の下にある、広いテーブルにつくと仮面を取り外した。
リリーシャは眼前のソファに座っているカレン、C.C.そしてルルーシュに声をかけた。
「皆、お疲れ様」
カレンは身を乗り出し、リリーシャに話しかけた。
「大成功よ!リリーシャ!皆も無事に帰ってこれたし、『パルテノン』が停泊している大広場に皆がいるわ。後で顔を見せに行きましょうよ!」
「…分かったわ」
リリーシャは深く椅子に座り、ルルーシュに声をかけた。彼女の表情から疲労の様子が伺えた。
「先輩は心配しなくてもいいです。後で私たちと共に地下通路から、表に出ますので…」
「…分かったが、これからどうするつもりだ?」
リリーシャが答えようとしたとき、彼女の携帯電話が震えた。
彼女が電話を取ると、電話の向こう側から男の大声が聞こえた。
『ゼロ!!』
『何事だ。ディートハルト』
『た、大変です!ブリタニアの中継をご覧ください!』
普段のディートハルトから想像できない声に、その声を聞いたルルーシュたちは首をかしげた。
C.C.はリモコンを操作し、部屋にあるテレビに電源を入れた。

大広場で酒盛りをやっていた幹部たちは、大広場にある巨大スクリーンが突然映ったことに興味を示し、全員の視線がそそがれた。
「ほへ?」
すでに出来上がっていた玉城は、とろんとした瞳でそのスクリーンに目をやった。


そして『彼ら』は目にした。



69:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/08 00:18:06 sjsGkd6l
『ここで番組を一時中断し、ブリタニア本国からの中継をお送りします』
女性アナウンサーの声と共に、王都ペンドラゴンの謁見室の映像が映った。
大きな音と共に、ブリタニアの国歌が響き渡る。
名だたる貴族が並び、皇帝陛下が座る王座への道には、赤い絨毯が敷かれていた。
そして、貴族、皇族が並ぶその先に、帝国最強の騎士たちが並んでいた。

ルルーシュはその内の一人の顔を見て、怒りがこみ上げた。
「…スザク!」

一人の近衛兵が大声を張り上げた。
「ナイトオブラウンズ様!ご入来!」
大声と共に、オーケストラの音が奏でられ、重厚な扉が開かれた。
一人の騎士が、姿を現した。
その姿を見た皇族、貴族たちから割れんばかりの拍手が巻き起こった。



皆は驚愕に震えた。



それは真紅のマントを羽織った騎士であった。
未だ史上最強といわれた騎士、『閃光のマリアンヌ』のみが許された『真紅』。それを羽織ることは何を意味しているのか。誰もがわかることだった。
『彼』が一歩一歩、皇帝陛下に近づく度に拍手の音は増していった。
一人の騎士は悠然と赤い絨毯の上を踏みしめていた。
銀色の髪。
深遠な青い瞳。
誰もが目を惹く、端麗な容姿。


70:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/08 00:18:53 sjsGkd6l
『彼』は壇上を登り、シャルル皇帝陛下の眼前で膝を折った。
 金色の大剣が、『彼』の肩にかかる。
そして、シャルル皇帝陛下は告げた。

「我が剣となり、盾となることを誓うか?」

「誓います」

「ここに騎士の誓約を立て我が力として戦う事を誓うか?」

「誓います」

「我欲、夢、野望、その全てを抱き我が剣となり戦うことを誓うか?」

「誓います」

皇帝陛下は大剣を地面に突き刺した。
覇者たる豪快な笑みの先に、一人の男が映っていた。
「よかろう!では、そなたにラウンズの称号を授ける!」
両手を広げ、皇帝は一人の騎士の誕生をここに宣言した。


「ナイトオブツー、ライ・アッシュフォードよ!!」


「――――Yes, your majesty」
歓声は頂点を迎える。誰もが『彼』を称える。
ナイトオブラウンズの騎士たちも『彼』を心から祝い、拍手を送っていた。

71:創る名無しに見る名無し
09/05/08 00:20:19 n20Sz6GU
支援

72:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/08 00:20:35 sjsGkd6l
「ええ!?ウソっ!ライ!?」
アッシュフォード学園で一部始終を見ていたミレイは驚愕の声を上げた。
他の生徒会のメンバーも同様だった。
「…マジで?」
「ライくんが・・・」

「う、そ・・・」
赤い髪のカレンは呆然と呟いた。

「――っ!?」
ルルーシュは衝撃に目を見開き、絶句した。






ライ・アッシュフォードと呼ばれた騎士は大剣を引き抜き、皇族や貴族たちの方に振り返った。
黄金の剣を、優雅な振る舞いで、『彼』は鞘に戻す。

『彼』は瞼をゆっくりと開く。

両目には、不死鳥を象った赤い紋章が宿っていた。




この瞬間から、世界は、
一人の男の『反逆』と―――
彼の『覇道』を―――――

認識した。


73:POPPO ◆SpjVdqMpCo
09/05/08 00:25:23 sjsGkd6l
申し訳ありません。
一時間以内に10つも投下していないのに、サルになってしまいました。
この原因が分からず、いろいろしていたら
refferが変です?
みたいなことになって…
支援してくださった皆さん、大変申し訳ありません!


コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN02 「合衆国 日本」
投下終了です。

今回と、次回のTURN03 「ナイト オブ ラウンズ」で、この世界観とキャラの配置が大体つかめると思います。
もうすでに本筋と異なってきてますが、さらに本編を逸脱していきます。
(これがリリーシャとライが世界に及ぼす影響力と思っていただければ幸いです)
また、TURN03 「ナイト オブ ラウンズ」の投下終了後、登場人物と機械の設定資料を合わせて5つ追加する予定です。
オリジナル要素が強すぎると、皆さんが楽しめなくなるので、本編を逸脱しつつも逸脱しない(?)ように注意して話を展開していこうと思います。
批判、中傷、なんでもいいので皆さんの感想の書き込み、お願いします!
それでは。


74:創る名無しに見る名無し
09/05/08 00:45:55 atdEtVML
>>73
乙でした。
前回の話のライは如何にも王といった様子で、一見皇帝の下に就くようなキャラには見えなかったです
が、そんなライが何故ブリタニア側に居るのか謎は残りますが、追々明かさていくのだろうと楽しみにしてます

最後に一つ
改行が多すぎる気がします
見せ方としては有りなんでしょうけど、仮にそれが投下の妨げとなっているのなら
改行を減らす事を考えてみるべきだと思います

何にしても、次回投下をお待ちしてます

75:創る名無しに見る名無し
09/05/08 07:29:34 cHgNpD9n
>>73 乙です。
ここでリリーシャが絡むとは思いませんでした
てっきりライが女装したものかと思ってましたw
ライがまさかのラウンズ入り。
彼の覇道が如何なる物か楽しみです


76:創る名無しに見る名無し
09/05/08 08:38:56 HkQWYLuY
>>73
POPPO卿、乙でした。
……再契約したリリーシャか。 ……深読みし過ぎた。
ラウンズ入りのライ、その真意は……
後、目の縁が赤くなるのは演出効果で実際は赤くなっていないらしいですよ、と言っておきます。
貴公の次の投下をお待ちしております。

77:創る名無しに見る名無し
09/05/08 20:52:36 DDjPWYyK
乙でした。
やはりリリーシャでしたか。
ゼロがライじゃないのは瞳の色が違ってたので分かってましたけどね。
ただいろいろ気になったのは、今回の話だけではないですが、シーンが飛び飛びになってることが多いですね。
前回の引きと続きの冒頭が繋がってないとかね。
読んでて「あれ?間の1話読み逃した?」とか思うこともしばしばですので。


78:創る名無しに見る名無し
09/05/08 21:09:15 CoCnMd9m
>>43
乙でした。

冷静に戦局、相手の能力を分析するリリーシャ、いいですね。
ルルーシュが万能選手をするのとは違う新鮮さがある。
CCにカレン、シャーリーにリリーシャと周辺に女性陣が充実していますが
どのようにリリーシャを生かしてルルーシュと関係を築かせるのか。
便利なだけではない、彼女の魅力を見せていただけるのを楽しみにしています。

投下について一点。途中さるにつかまったようですが、
>>26以降で提案されていた代理投下の内容は把握していらっしゃるでしょうか。
わからないときは尋ねるかあちこち検索するなどして
次回以降に役立ててもらえればと思います。

*

代理投下もだけど、うpろだも選択肢に加えていいんじゃないかなー。
マスターコードやらは投下報告のレス番使う画像掲示板方式で問題ないだろうし
ろだ利用だと感想減りそう?かな

79:創る名無しに見る名無し
09/05/08 21:41:57 FyWfKNsQ
修正版だけでも投下以外の方法でやったら全然違うと思う。
他の人はメールとかで修正お願いしている場合もあるし、わざわざここに投下する必要はないと思うんだけど。
感想書くにしても、修正版は書きにくいし、書く気もおきない。
それこそ、蒼姐さんのように大きく書き直してあるならともかく・・・。

80:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 02:47:28 4N+HLJ3P
夜分遅くにこんばんわ。前作の続きを投下します。13レス程度使用します。
支援は大丈夫だと思います。まあ、何とかなるでしょう!

【メインタイトル】コードギアス 反逆のルルーシュ L2  

【サブタイトル】~ TURN03 ナイトオブラウンズ(前編)~

【  CP  】無し

【 警告 】●根幹は黒騎士ルートを準拠してのR2本編介入ものですが、オリジナルな設定と話も多々あります。
      ●王様ライの性格は自分の考えに依存してます。苦手な方はご注意下さい。
      ●オリジナルの名称が出ます。同じく苦手な方はご注意下さい。
      

それでは、投下行きます。


81:創る名無しに見る名無し
09/05/09 02:48:20 kXBlRHrS
しえん

82:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 02:49:30 4N+HLJ3P
―――――――――――

 コードギアス 反逆のルルーシュ L2  
 ~ TURN03 ナイトオブラウンズ(前編)~

―――――――――――

 薄暗い嚮団の地下施設。
 その場所をライは黒衣の男を道標に悠々と歩みを進めていた。
 やがてその歩みが止まると、二人の正面には巨大な壁が立ちはだかっていた。
 ライが「行き止まりか?」と首を傾げていると、男は壁に手を添えた。
 すると、掌程の凹みが出来ると同時に、カチンという短い音が鳴り目の前の壁がゆっくりと開いていく。
 その仕掛けを見た時、嚮団を隅々まで歩き回り全ての施設を把握したと自負していたライは、一年近くも気付けなかった事に「失態だ」と内心舌打ちしつつも歩みを進めた。
 部屋の中には、V.V.を筆頭に此所までライを案内して来た男とは別に4人の黒衣の男達が、ストレッチャーに横たわる大柄な男を取り囲むように居た。
 また、彼等の奥にはその部屋よりも遙かに大きなガラス張りの空間が有り、そこには今までライが見た事も無い重武装と重装甲が施された巨大なナイトメアらしき機体が、その部屋の主よろしく鎮座している。
 ライはまだ知る由も無いが、その機体の名はジークフリートと言う。一年前、C.C.の乗るガウェイン諸共海底に沈んだ筈の機体だ。
 二人が部屋に入ると男達は皆驚いたようで一斉に視線を向けるが、ライが目を細めると男達は今度は一斉に視線を逸らした。
 そんな中、たった一人視線を逸らさなかった存在、V.V.は残念そうに呟いた。
 「あ~あ。見つかっちゃた」
 しかし、ライが我関せずといった様子で周囲を観察していると、V.V.は彼を連れてきた男を見据え瞳に批難の色を滲ませた。
 「言いつけを守れないなんて悪い子だね」
 「も、申し訳ございません」
 咎められた男がやや畏縮しながら謝罪の言葉を口にすると、V.V.は軽く溜息を吐いた。
 「まぁいいよ。どうせ脅されたんでしょ?それに、何れ彼には見てもらおうと思ってたし」
 そう言ってV.V.は再びライに向き直る。
 「それで、ここに来た要件は?……ひょっとして―」
 「推察通りだ。C.C.を確認した」
 「そう…やっぱり領事館に居たんだね」
 目元を緩ませるV.V.を尻目に、ライは軽く相槌を打った。
 「ああ」
 「それなら―」
 「残念だが、これ以上は無理だ」
 言葉の続きを予測したライが口を挟むと、V.V.は一転して怪訝な表情を浮かべた。
 「どうして?」
 「皇帝が禁じている」
 「…そう、だったね」 
 僅かな間をおいて、V.V.が心底残念そうに呟くとそれを認めたライが問う。
 「あの男は本当に目的を果たす気があるのか?」
 「彼を疑うの?」
 V.V.は再び瞳に批難の色を滲ませるが、相変わらずライは気にもしない。
 「私は当初、領事館の直接占拠を提案したがあの男はそれを却下した。揉め事は避けろと言ってな」
 「でも、彼が契約を蔑ろにする事は無いよ」
 「何故そう言い切れる?」
 「彼とは長い付き合いだからね」
 「長い付き合い、か……だが、人の心は移ろい易い。心変わりをしたとしても不思議では無いだろう?」

 ―心変わり―

 その言葉を聞いた時、V.V.の表情が僅かに曇った。それを見逃すライでは無い。
 「どうやら思い当たる節があるようだな?」
 ライの問いは当たっていた。だが、V.V.は答える事無くライから視線を逸らすと一人思慮に耽る。以前はどうしたか、と。
 そして、直ぐにその結論に至ると徐に口を開いた。
 「仮にそうだったとしても、それならそれで彼の心を変えた理由。それを消せばいいだけだよ。でも、やっぱり杞憂だよ」
 V.V.はそう前置きした後、今度はどこか懐かしむかのような瞳を虚空に向けた。
 「あの日、僕達は地獄で誓ったんだ。僕達だけは絶対に裏切らないって」
 本来、その言葉の後には続きがあるのだが、V.V.がそこまで語る事は無かった。既に破ってしまっているからだ。
 「ライ、君も裏切らないと誓ってくれない?」
 「馬鹿馬鹿しい。そもそも、私には心変わりする理由やお前達を裏切るべき理由が無い」
 その言葉にV.V.は僅かに顔を顰めた。

83:創る名無しに見る名無し
09/05/09 02:50:25 kXBlRHrS
支援

84:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 02:56:17 4N+HLJ3P
 この一年、ライを見続けて来たV.V.にとって、確かにその言葉は一定の説得力が有るには有った。
 今はゼロに並々ならぬ関心を懐いているとはいえ、それが元でライが裏切るという要素は垣間見えない。しかし、唯一の気掛かりも有ったのだ。
 ライの左手の手袋の下。その薬指に填められている指輪。その送り主。
 それが誰であったかと言う事だけだが、下手に問い詰めた結果、年代記に語られていないだけで過去にそういう存在が居たとなったら目も当てられない。
 皇帝のギアスによって自分を契約者だと信じているライに、「何故知らないのだ?」と問われかねないと考えていたからだ。
 その時、言葉を濁す事は可能であっても問うたが最後、ライの鋭すぎる洞察力がV.V.に嫌疑を掛けて来る事は想像に難く無い。
 さすれば、ライは契約を果たす事。それ即ち母と妹の仇に繋がると言った皇帝の言葉さえも疑い出すだろう。
 そうなれば、今まで契約によって縛ってきたこの狂える王。その強大な牙を抑えきる事は自分であっても不可能だと、下手をすれば弟にまで危害が及ぶ可能性があるとV.V.は懸念してたのだ。
 ライが呆れた口調で答えた時、V.V.には見えた事だろう。
 今にも引き千切られそうな程にか細い鎖がライの首に巻き付いているのが……。
 だが、そこは年の功とでも言うべきなのだろうか。V.V.は直ぐに気を取り直すと、心情を気取られぬよう嬉しそうに笑みを浮かべてみせた。
 「それもそうだね」
 その笑みの裏にそんな想いが隠されているとは露知らず、ライはV.V.の真横まで歩み寄る。

 因みにV.V.も一つ、夢にも思っていなかった事がある。
 自分がライに見張られているという事。
 そして、それを頼んだのが他ならぬ弟、皇帝だと言う事を。
 しかし、この場合それを裏切りと言えるかと言えば答えは否だ。
 V.V.が弟との約束を違えなければ良いだけの話なのだから―

 ライは、ストレッチャーに横たわっている男。顔半分を仮面に覆われ固く瞳を閉じている大柄な男に視線を落とす。
 「この者は死んでいるのか?」
 「眠ってるだけだよ」
 先程の笑みそのままに答えるV.V.を見て、ライは再び疑問を口にする。
 「新しい駒か?」
 「似たようなものかな。彼は僕の騎士にしようと思ってね」
 ライは再び視線を落とす。男が身につけている装束は確かに騎士と呼ぶに相応しい物だった。が、一箇所だけどうにも解せない所があったライは、神妙な面持ちで呟いた。 
 「妙な男だな。これでは仮面の意味が無い」
 「其処に突っ込むの?」
 真剣な眼差しで何とも間の抜けた事を言ってのけるライ。最も本人にその自覚は全く無く、ごく自然な感想を口にしたつもりだったのだが、それが余程可笑しかったのかV.V.は愉快そうに笑った。
 その態度がカンに障ったライは思わず睨み付ける。
 「使えるのだろうな?」
 「さぁ?まだ何とも言えないよ」
 自身の眼光に全く臆する事無く、相も変わらずヒラリと受け流すV.V.を見てこれ以上は無駄だと悟ったライは、続いて奥にあるガラス張りの空間を指差しながら問うた。
 「あれはナイトメアか?」
 「正しくは、ナイトギガフォートレスって言うんだけどね」
 「何だ、それは……」
 怪訝な表情を浮かべるライに対して、V.V.はそれまで二人の会話の邪魔にならないよう無言で佇んでいた黒衣の男達に命じた。
 「説明してあげて」
 「畏まりました」
 男達は優雅に腰を折ると口々に説明を行った。
 やがて、彼等から一通り機体の設計思想を聞かされたライは端的に思いを述べる。
 「乗せろ」
 「無理だよ」
 余りにも明瞭な言葉にV.V.が思わず苦笑すると、ライはその笑みを侮辱と受け取った。
 「私では操れないと?」
 ライの眉が危険な角度を描く。
 すると、突然周囲に居た黒衣の男達がV.V.を庇うかのように二人の間に割って入ると、その内の一人が口を開く。
 「お、恐れながら申し上げます。あれは機体とパイロットを接続することで神経回路と直接連動させる、神経電位接続という特殊な操縦法を用います。今の陛下のお体では……」
 男が震える声で何とか言葉を紡ぐと、それを聞いたライは瞳を細めた後、さも残念そうに呟いた。

85:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 02:57:43 4N+HLJ3P
 「無理と言う事か」
 「そんなにナイトメアが欲しいの?」
 ライの呟きを聞いたV.V.が不思議そうな表情で問うと、彼は思わず心情を吐露した。
 「私は一日の大半をこの薄暗い地下施設で過ごしているのだぞ?それ以外は黄昏の間だが、彼処には何故か常にあの男が居る。
だからと言って外に出たところで、其処は一面既に見飽きた砂の海。お前の様に千年以上も生き続ければ退屈という思いさえ忘れてしまえるのだろうが、生憎と私はそうでは無い」
 珍しいライの愚痴を聞いたV.V.は顎に手を置くと暫しの間考え込む素振りを見せるが、やがて何かを思いついたらしく徐に口を開いた。
 「分かったよ。じゃあ、僕がプレゼントしてあげる」
 「何だと?」
 予想外の言葉だったのか、瞳を見開くと驚いた様子でいるライを余所にV.V.は更に語る。 
 「そうなると、君のデータを取らないといけないね。丁度此所にはシュミレーターもあるし、今から乗ってみる?」
 「それを早く言え」
 ニンマリと笑みを浮かべるV.V.に対して棘のある口調で言ったライだったが、目元は僅かに緩んでいた。
 そんなライを横目で捉えながらV.V.が男達に視線を送ると、主の意図を察した彼等は恭しく頭を垂れる。
 「では、陛下。こちらへ……」
 「じゃあ、僕は彼の調整を見てくるよ。終わったら言ってね」
 V.V.はそう言ってストレッチャーを押す2人の男を従えると、隣の部屋に消えて行った。
 ライもまた、男達に促されるままその部屋を後にした。

 ~そして、30分後~
 
 V.V.は、両腕を後ろに回すとベッドに横たわり無数の管に繋がれている半面の男を物思いに耽った表情で眺めていた。すると、不意に入口の扉が開いた。
 その音を聞いたV.V.は振り返る事無く問い掛ける。
 「どうだった?」
 だが、返事は無い。不思議に思ったV.V.が向き直ると、そこには怪訝な表情を浮かべたライの姿があった。
 「妙な体験だった。ナイトメアなど乗った覚えが無い筈なのだが、不思議と操縦方法が分かるうえに自然と体が動いた」
 「ああ、それかぁ……」
 「V.V.。お前まさか―」
 納得した様子でいるV.V.を見たライの表情が強張る。
 「寝ている間に私の体に何かしたのか!?」
 「まあ、それもあるかな」
 「貴様っ!!」
 「僕じゃ無いよ」
 右手を突き出し激昂しかけたライを制すると、V.V.は陰惨な笑みを浮かべながら問い掛ける。
 「でも、そのお陰で君はいとも簡単にナイトメアを乗りこなしたんでしょ?寧ろ感謝するべきなんじゃない?」
 「私の体は母が与えてくれたものだ!それを―」
 「そんな大事な体にギアスを宿したのは何処の誰?」
 「っ!!…それは……」
 ライは珍しく口籠もった。何故か?
 V.V.の問いは正に正鵠を得ていたからだ。

 ―ギアスの力は王の力―

 聴覚を媒介にあらゆる者を従わせる事が出来るライのギアス。正に王の力と呼ぶに相応しく、ライもそれについて異論は無かった。
 だが、それが表向きの表現なのだと言う事を彼はあの日、嫌という程思い知った。
 ギアスは彼にとって全てとも言える二人の命をいとも簡単に奪い去ったのだから。
 誰かが言った。表があれば裏がある、と。
 V.V.が言った言葉は、正にその裏の意味を暗に示していたのだ。「呪われた力を宿したクセに何を言っているの?」と。
 契約の際にそれを知らせなかったとは言え、ライにV.V.を責める事は出来なかった。
 押し付けられた力では無く、自ら望んで手にした力。それを御する事が出来なかったのは他ならぬ自分自身なのだ。
 何よりも己の過ちを他者に擦り付ける等、彼のプライドが許さなかった。まぁ、そもそもV.V.はライの契約者でも何でもないのだが……。
 「……二度と、するな……」
 ライは眉間に皺を寄せると、これまた彼にしては珍しく辿々しい口調で呟いた。
 その時、V.V.には見えた。
 か細い鎖とは別に、遙かに太く強靱な二本の鎖がライの体に巻き付いているのを。
 その瞬間、V.V.は理解した。ライは絶対に裏切れない、と。
 先程の憂いが消えていくのを感じたV.V.が今度こそ心よりの笑みを浮かべていると、再び扉が開き黒衣の男が入って来た。

86:創る名無しに見る名無し
09/05/09 02:58:43 kXBlRHrS
しぇん

87:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 02:58:54 4N+HLJ3P
 「陛下、こちらに記入を」
 男はそう言って手に持ったバインダーを差し出した。
 受け取ったライは、それに綴られた数枚の用紙を捲りながら怪訝に思う。
 「これは何だ?」
 「はい。どういったタイプの機体をご所望されるか聞き取りを―」
 「タイプは指揮官機でいい。だが、個別戦闘にも遅れを取る事が無いようにしろ」
 ライはバインダーを突き返してサラリと言ってのけると、受け取った男は恭しく頭を垂れた。
 「畏まりました。……後は、カラーリングですが―」
 「不要だ」
 「さ、左様で……」
 男が少々驚きを隠せない様子でいると、ライは一瞥をくれた後に持論を展開した。
 「どれだけ着飾ろうとナイトメアも所詮は戦いの道具。私は武器を下手に着飾るのはどうしても好きになれない」
 「では、機体保護の為の塗装は施すとして、それ以外は行わないとなりますと機体カラーは銀色になりますが?」
 「それでいい」
 「畏まりました。では」
 男は腰を折ると踵を返して部屋を後にした。
 やがて、二人の会話が終わったのを見計らったV.V.が再び問い掛ける。
 「彼への報告はもう済んだ?」
 「そう言えばまだだったな」
 「なら、先に行っててよ。僕も直ぐに行くからさ」
 「全く―」
 「小間使いのような事をさせてごめんね」
 ライの言葉を予測したV.V.が三日月を浮かべて言葉だけの謝罪を口にすると、虚を突かれる形となったライは思わず目を見張る。
 だが、直ぐに剣呑な表情を貼り付けると事も無げに言い放った。
 「……今後の方針を決める必要がある。さっさと来る事だな」
 そう言って、ライは立ち去るべく扉に向けて歩き出す。
 すると、入れ違いに今度は二人の黒衣の男達が入って来た。見た目からは判断し辛いが、一人は先程部屋を後にした筈の男だ。
 鉢合わせになった事に驚いた男達は、慌てて道を譲ると頭を垂れる。
 が、ライは当然とも言いたげに彼等の脇をまるで無視するかのように通り過ぎて行った。
 やがて、扉が閉まるのを確認するした男達は、しどろもどろといった様子で口を開く。
 「嚮主V.V.。一つ申し上げにくい事が……」
 「どうしたの?」
 「はい、先程の陛下のシュミレーター結果なのですが。その、何と申し上げたら良いか………」
 「報告は簡潔にね」
 煮え切らない態度でいる男達を見て、V.V.は内心首を傾げながらも目敏く指摘すると、咎められた男達は簡潔に思いを述べる。
 「はっきり申し上げて異常です。我々の手では、陛下に満足して頂ける性能を持ったナイトメアは……」
 「造れない?」
 「お、畏れながら……」
 「それを聞いたら彼は怒るだろうね」
 V.V.の呟きにライの怒れる様をありありと脳裏に描いてしまったのか、二人の顔がみるみる蒼褪めていく。
 他の男達も、哀れむかのような瞳で同僚達の身に起こった不幸を嘆いていた。
 すると、V.V.は余りにも不憫に思ったのだろうか?いや、違う。プレゼントすると言ったのはV.V.自身だ。
 それが無理になるという事は怒りの矛先はまず自分に向くと考えた彼は、果たして誰に向けて言ったのか、助け船を出した。
 「仕方ないね。僕からシャルルに頼んでおくよ」
 「も、申し訳ありません」
 「有り難うございます」
 男達は頭を垂れて口々に感謝の意を述べた後、再び口を開く。
 「ですが、このような数値。果たして身体調整だけで出せるものなのでしょうか?」
 V.V.は何を今更といった様子で僅かに鼻を鳴らす。
 「彼の天賦の才も一因だろうね。でも、彼が記憶を改竄されるまで何をしていたのか知ってるでしょ?」
 男達はハッと何かを思い出した様子で瞳を見開いた。
 「彼は騎士団に居たんだよ?嘗てのゼロ、ルルーシュの左腕としてね。ナイトメアの操縦に関しても、シャルルが弄ったのは彼の記憶であって知識じゃないし」
 V.V.の言葉を聞きながら男達は再び手に持ったシュミレーター結果に視線を落とした。
 そこに記された数値は正に異常の一言だった。ラウンズのデータと見比べても何ら遜色は無い。
 いや、知らない者ならラウンズの物だと勘違いを犯しても可笑しくない程だ。
 だが、これは男達のみならずV.V.も知らない事ではあるが、そこに記されているデータは騎士団に居た頃のライの戦い方とは全く違うものだった。
 以前の彼の戦闘スタイルは紅蓮のサポートに重きを置いた戦い方だった。

88:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 02:59:56 4N+HLJ3P
 個別戦闘に関して言えば、紅蓮の討ち洩らした敵を仕留める。主にナイトメアの頭部や動力部を狙うと言ったような活動停止を目的とした戦い方だった。
 最も、それは相手との力量差がある場合だけだ。拮抗していた場合は流石にそんな戦い方は出来ない。が、そもそも当時のエリア11でそんな相手はスザクを除けばまず居なかった。
 直ぐに機体が爆散する事も無く、脱出の猶予が与えられている事からも分かるように、どちらかと言えばそれは敵にも幾分か優しいものだった。
 しかし、弓矢が飛び交う嘗ての戦場の記憶を思い出した今のライの戦い方はそれとは正反対なのだ。
 敵が死のうがどうなろうが知った事では無いというような、端から殺す気で相対する戦い方。
 頭部を狙うだとか、脚を撃って活動停止にするだとか、そんな事は一切考えていない。立ち塞がるものは全てねじ伏せる。情け容赦無いものだった。戦場に立てば、味方さえも駒として使い捨てるだろう。
 それは、嘗て数多の戦場を勝ち続けて来たライ本来の戦い方。
 個別戦闘に関しては帝国最強と言われるナイトオブラウンズの一角に食い込む程であり、まだ明確なデータは無いが今なお伝わる過去の戦績と照らし合わせれば、指揮能力についても比類無き者という事が容易に想像出来る事だろう。
 しかし、それ程のデータだと言う事を彼等はまだ知らない。
 やがて、V.V.はデータを見ながら何やら囁き合っている男達から視線を移すと、再びストレッチャーの主に向き直った。
 「で、こっちの彼の調整は?」
 「既に8割方終了しております」
 「そう、ここまで来るのに1年近く掛かったけど、あと少しか。早く見たいよね」
 「畏まりました」
 主の要請に対して、男達は一斉に頭を垂れる。
 V.V.はそんな彼等を尻目に、ストレッチャーの上で未だ眠り続けている男に対して酷く陰惨な笑みを浮かべた。
 「光栄に思うといいよ。君は今まで誰も持ち得なかった力を得るんだから。ねぇ?ジェレミア・ゴットバルト……」
 嘗てゼロによって全てを失った男、ジェレミア・ゴットバルト。
 彼の存在はルルーシュのみならずライの運命さえも大きく揺さぶる事となる。正に分水嶺とも言える立ち位置に居るのだが、当の本人は未だ深い夢の中。
 だが、目覚めの時は近い。そして、目覚めた後に彼の取る行動。それは確実に運命の歯車に組み込まれているという事を、この時はまだ誰も知る由も無かった。

――――――――― 

 救出劇より数時間後。
 同胞を奪い返したルルーシュは、領事館の一室に居を構えていた。
 部屋の中には、彼の他にゼロの素顔を知る者としてC.C.とカレン。そして新たに加わった卜部の姿が見受けられる。
 彼等の中で最初に声を発したのはカレンだった。
 「ゼロを助けたパイロットは?」
 「星刻のルートで外に出した」
 カレンの問いに対して、端的に返すC.C.。すると、その聞き慣れない名前にルルーシュが口を開いた。
 「星刻?」
 「中華連邦の人。今の此処の責任者よ」
 「そうか。では、私も使わせて貰おう」
 C.C.の代わりにカレンが答える。
 それを聞いたルルーシュが納得した様子でいると、それまで一度も語る事の無かった卜部が動いた。
 「少しいいか?ゼロ」
 「何だ?」
 卜部の突然の問い掛けに、ルルーシュは怪訝に思うと同時にある決意を胸に懐いた。
 自分の正体について納得が出来ないのなら、他の者達に打ち明ける気なら、残念だが使うしか無い、と。
 ルルーシュは、ライが大切に想った仲間に対して出来る事なら使う事は極力避けたかったのだ。
 注意深く探るかのような瞳で見つめるルルーシュ。対して、卜部もまた普段よりも些か真剣な眼差しで見つめ返すと徐に口を開く。
 「改めて見ると…本当に若いな。それに、まさか学生とはな」
 「不満かな?」
 自身の思惑が外れた事に安堵しつつ、ルルーシュが不敵に笑うと卜部は首を横に振る。
 「いいや、驚いているだけだ」
 「卜部さん。この事は―」
 「分かっている。話す気はない」
 「藤堂達にもだぞ?」
 「っ!……ああ。俺はゼロ、君に懸けたんだ」
 心配そうに問うカレンには力強く答えたが、C.C.の問いには少々口籠もった。
 だが、それでも卜部の決意は堅いようで、その瞳に宿る強い光を認めたルルーシュは又しても不敵に笑った。
 「フッ、では今後とも宜しく頼む」
 「ああ、こちらこそ」
 そんな願いにも似たルルーシュの言葉に卜部が力強く頷くと、二人の会話を聞いていたカレンは内心胸を撫で下ろしながら話題を変えた。

89:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 03:01:03 4N+HLJ3P
 「それで、あのパイロットの事は?まさか秘密にする気?」
 「お前達とアイツの間には、バベルタワーでの一件があるからな」
 「やっぱり、同一人物なのね」
 「やはり、か」
 納得した様子でいるカレンと、寡黙な態度を崩さないでいる卜部。
 C.C.はそんな二人をチラリと見た後、ルルーシュに視線を移すと僅かに口元を緩めながら問うた。
 「知れば殴りに行くからか?」
 「ちょっと!失礼な事言わないでよ」
 「それ位は弁えている」
 二人は思わず非難の声を上げたが、案の定、魔女に効果は無い。
 逆に冷やかな視線を浴びせられる事となり、それを見透かされていると勘違いしたカレンはばつが悪そうな顔で言うのだが、その言葉は魔女にとっては恰好の餌だった。
 「その…少しとっちめるぐらいよ」
 「おい、紅月?」
 「フッ、やはりな。しかし、それぐらいで済むのか?」
 得意気に語るC.C.。その時になって誘導された事に気付いたカレンは、お返しとばかりに冷やかな視線を送る。
 「騙したわね。それに、一体どういう意味かしら?」
 「加減を知らない女だろう?」
 「あんたねぇ―」
 一触即発の空気が辺りを漂い始めると、卜部は思わず肩を落とした。こうなってしまってはどうしようも無いのだ。
 律義な彼は当初何とか止めようと割って入ったが、その結果一度語るも恐ろしい程酷い目にあっており、経験から学んでいた。
 それに、彼女達は数日も立てば何事も無かったかのように普段通りの仲に戻るのだから。
 しかし、今回ばかりは少し勝手が違った。
 卜部が触らぬ神に祟りなしとでも言わんばかりに無関心を決め込んでいると、突如としてルルーシュが割って入ったのだ。
 「二人ともそれぐらいにしておけ」
 「でもっ!―」
 「カレン。今は言い争いをしている場合では無い」
 「それは…そうだけど……」
 「C.C.お前もだ。あまりカレンで遊んでやるな」
 「……分かったよ、坊や」
 ルルーシュが窘めると、口論は一応の集結をみた。互いに不祥不精といった様子ではあったが……。
 一方で、卜部は先程の無関心さも何処へやら。一転して安堵したかのような表情を浮かべると、それを不思議に思ったルルーシュが問う。
 「どうした?」
 「……いや、君が戻って来てくれて本当に肩の荷が降りたと思っただけだ」
 「その様子だと苦労したようだな」
 同情するかのような視線を送られた卜部は、珍しく愚痴を溢そうとする。
 理由は簡単だ。
 一年もの逃亡生活の中で、これまで騎士団には彼の上に当たる人物や同僚は居なかった。
 かといって部下に愚痴を溢すなど彼の美学が許さない。そういった事を言える相手が居なかったのだ。
 「ああ、それはもう……」
 そこまで言って、卜部は自身に浴びせられる強烈な怒気と冷気に気付くと、はたりと言葉に詰まる。
 彼は恐る恐るといった様子でそれらが漂って来る方向に視線を向けると、そこには案の定、カレンとC.C.の姿があった。
 卜部は慌てて話題を変える。
 「と、兎に角。俺はこれからも君の事はゼロと呼ばせてもらう」
 「そうしてくれると助かる」
 「ああ、それじゃあ俺は中佐の所に行っている」
 卜部はそう言うと足早に部屋を後にする。
 そんな彼の後ろ姿に容赦無く視線を浴びせ続ける二人。
 「逃げたな」
 「逃げたわね」
 すると、互いの意見が一致した事に驚いたのか。視線を交わらせた彼女達は、今度は一転して微笑を浮かべあった。
 ルルーシュはそんな二人の様子を見ながら思う。仲が良いのか悪いのか良く分からないな、と。
 どうやら彼の明晰な頭脳を以てしても答えは出なかったらしい。いや、そもそもルルーシュに女心が分かるのか甚だ疑問だ。
 やがて、卜部が部屋から逃げ去ったのを確認したカレンは、徐にルルーシュの真向かいに歩み寄ると手に持った小型のレコーダーを机に置いた。
 「ルルーシュ。約束の物よ」
 カレンが告げたのはたったそれだけ。しかし、ルルーシュにはそれだけで十分だった。 
 徐にレコーダーを手に取ったルルーシュは僅かに瞳を細める。二人はそんなルルーシュの様子を無言で見守っている。
 が、次の瞬間、ルルーシュは二人にとって予想だにしない行動に出た。

90:創る名無しに見る名無し
09/05/09 03:02:22 kXBlRHrS
支援

91:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 03:03:03 4N+HLJ3P
 「必要無くなった」
 そう言うとあろう事かカレンに突き返してみせたのだ。突き返されたカレンは驚きに瞳を見開くと、怒りを孕んだ口調で問う。
「どういう意味?」
「言葉の通りだ」
 カレンが怒っている事など容易に理解出来る筈だったが、ルルーシュは敢えて短く返した。当然、それは火に油を注ぐ結果となる。
 「何よそれ!死んだ人間に用は無いって言いたいのっ!?」
 激昂したカレンが詰め寄るが、ルルーシュに動じた様子は見られない。それどころか、彼は彼女達にとって信じられない言葉を言ってのけた。
「生きている」
「えっ?」
「ライは生きている」
 自身に言い聞かせるかのように反芻するルルーシュを見て、カレンのみならずC.C.さえも驚いたかのような表情を浮かべた。
 依然としてC.C.が口を挟む事は無かったが、ライの事でカレンが黙っている筈も無い。
 カレンは、なまじ先程の怒りに染まっていた方がまだ優しい。そう思わせるに十分な冷え切った瞳を向けながら詰め寄った。
「本気で…言ってるの?」
「愚問だな」
 「気休めは止めてよっ!ルルーシュ、あなたはこの一年私達がどれだけ探したか分かってない!!」
 「気休めじゃない。俺には確信がある」
 「何よそれ!」
 「それは言えない。だが、生きていると信じている」
 息をする事さえも忘れて矢継ぎ早に言葉を紡ぐカレンだったが、ルルーシュは真っ向から受けて立って見せた。
 そんな彼の態度に、本当に信じているのだと理解したカレンはゆっくりと落ち着きを取り戻して行った。
 やがて、完全に落ち着いたカレンは顔を伏せると肩で息をしながら震える声で呟いた。
 「……本当、に?」
 「ああ」
 短くも力強いルルーシュの言葉にカレンは思わず顔を上げると、彼女の瞳に飛び込んで来たのは何処までも真っ直ぐなルルーシュの瞳。
 それを見たカレンは、拳を固く握り締めると机の上にあるレコーダーとルルーシュ。双方に視線を行き来させる。
 やがて、意を決した彼女は左腕を高々と掲げると次の瞬間、あらん限りの力で降り下ろした。
 机が割れたかのような音とともに砕け散るレコーダー。
 その様子にルルーシュのみならずC.C.までもが呆気に取られいると、カレンは再び顔を伏せて辿々しい口調で語り始めた。
 「これで、もうライの声は聞けない。私がこれをずっと持っていたのは、これがライの最後の声だったから。でも―」
 「聞かせてやる」
 遮るかのように告げられたルルーシュの言葉に、カレンは思わず肩を震わせるとルルーシュは今一度告げた。
 「聞かせてやるさ」
 「……なら、お願い。ライを、探し…て……」
 普段の彼女を知る者達からすれば信じられないだろう。
 蚊の鳴くようなか細い声で願うかのようにカレンが呟くと、ルルーシュは優しげな声で応じた。
 「その願い聞き届けた。だからカレン。君も二度とライが死んだ等と思うな。必ず、必ず見つけてやる」
 カレンは顔を伏せたままルルーシュに背を向けると、先程より幾何か明るい声で答えた。
 「ありがとう、ルルーシュ」
 突然の感謝の言葉にルルーシュは一瞬目を見張る。が、彼は直ぐに申し訳なさそうに唇を噛み締めると謝辞を述べた。
 「いや、礼を言うのはこっちの方だ。信じてくれて感謝する。だが、こうなってしまったのは元はと言えば俺のせいなんだからな。カレン、済まなかった」
 「あの時はあなたなりの理由があったんでしょ?それに、あなたがライの事で嘘を吐かないって事は信じてるから」
 「そうか…」 
 ルルーシュはバベルタワーで自身が言った言葉を思い出すと、少々気恥ずかしそうに呟いた。
 それが可笑しかったのか、カレンは天井を見上げると一転して明るい口調になる。
 「皆の所に行ってるわ」
 そう告げるとカレンは幾分か軽い足取りで部屋を後にした。

92:創る名無しに見る名無し
09/05/09 03:04:17 kXBlRHrS
しえん

93:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 03:06:27 4N+HLJ3P
―――――――――

 カレンも部屋を去り、一人残された形となったC.C.。
 「全く、あの女は」
 彼女は微苦笑を唇に湛えながらカレンを見送った後、ルルーシュに向き直ると少々棘のある口調で問い正す。
 「で?どういうつもりだ?」
 しかして、ルルーシュはあっけらかんとした口調で問い返す。
 「何がだ?」
 「ライが生きているということさ。一体、何を根拠に―」
 「無いんだ」
 「何?」
 C.C.が疑問の声を上げると、ルルーシュは机に両肘を付き手を組む。そしてその手に額を押し当てると俯いた。
 「生徒会の皆から、ナナリーとライ。二人の記憶が……」
 「……」
 その仕草から彼の表情を伺い知る事は出来ない。
 だが、C.C.は察していたのだろう。彼女は何も言わずにただ無言で続きを促すと、ルルーシュは自身の考えを告げた。
 「ナナリーに関する記憶を奪ったという事は、学園に現れないと知っているからだ。だが、ライはどうだ?本当に死んだのなら何故奪った?奪う必要など無いだろう?」
 「ルルーシュ。あいつはギアスを、王の力を持っているんだぞ?」
 C.C.の指摘にルルーシュは面を上げる。彼女の予想通りだったのか定かでは無いが、彼の顔は憎しみに歪んでいた。
 「そう、ギアスだ。だからこそ皇帝がライを押さえている可能性は十分にある。相手は実の子供でさえも道具として使う男だ。ライの存在は……大層魅力的に映るだろうな!」
 そこまで言うと遂に耐えきれなくなったのかルルーシュは拳を机に叩き付けた。そんな彼を余所にC.C.は諭すかのように続ける。
 「なぁ、ルルーシュ。私はギアスと繋がりのある者の事なら分かる」
 その言葉にルルーシュはC.C.の瞳を無言で見据えた。
 「お前が生きていると分かったのもそのお陰だ。ギアス能力者が持つ特有の波長…とでも言うか。それを感じ取ったからなのだぞ?だが、この一年ライの波長は一度も感じていない」
 だが、相変わらずルルーシュは鰾膠(にべ)も無い。 
 「魔女のレーダーも錆びたな。それとも、何処からECMでも出ているんじゃないか?」
 ルルーシュの軽口にC.C.が眉を曇らせると、それを批難と受け取ったルルーシュは鼻を鳴らすとソッポを向いた。
 C.C.は内心「ガキめ」と小馬鹿にしながらも再び問う。
 「本気で信じているんだな?」
 「ああ」
 「まさか、信じたくないという想いからでは無いだろうな?」
 「くどいぞ」
 話は終わりだとでも言わんばかりに吐き捨てたルルーシュは、今一度決意を述べる。 
 「ナナリーもライも必ず見つけてやる」
 「分かったよ。私も、もう一度探りを入れておく」
 最早、何を言っても無駄だと悟ったC.C.は溜息混じりに答えるとルルーシュは驚いた様子で振り向いた。
 「まさか、心当たりがあるのか!?」
 「……当てにはするな。それと、ルルーシュ。これだけは頭に入れておけよ?」
 C.C.はそう前置きした後、紫色の瞳に疑問の色を浮かべているルルーシュに向けて何時になく真剣な眼差しで告げた。
 「生きているのなら、皇帝がライを従えているのなら、間違いなくライは敵になっているぞ。それも、最悪の敵にな」
 C.C.が何を言わんとしているか瞬時に理解したルルーシュは、剣呑な瞳を浮かべながら口を開く。
 今日のブリタニアの覇権主義。それを決定付けたのは、現皇帝シャルルの「力こそ絶対」との国是。その源となった存在。伝説に謳われた古の王の名を。
 「ライゼル、か……」
 C.C.は静かに頷く。だが、ルルーシュは一層の決意を露わにした。
 「良いだろう。俺はこれから世界を手にしようと言うんだ。親友一人取り戻せずして何が世界だ!!ナナリーもライも絶対に取り返してみせる!」
 ルルーシュのそれが揺るぎないものであると認めたC.C.ではあったが、彼女は依然として思慮していた。
 本当にライが生きているとして、ライゼルに戻ってしまっていた場合、ルルーシュは果たして勝てるのか?と。
 何よりも、仮に取り返せたとしてもライに対してはルルーシュのように記憶を取り戻す術は無いのだ。
 試しにC.C.はルルーシュと同じ方法を取る事を考えてはみたが、直ぐに却下した。


94:創る名無しに見る名無し
09/05/09 03:08:16 kXBlRHrS
しぇん

95:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 03:08:30 4N+HLJ3P
 あれは彼女が持つルルーシュの記憶を流し込んだだけであり、ライにしようものならルルーシュの記憶を持ったライが誕生しかねない。
 そこまで考えた時、C.C.は考えるのを止めた。そして、これ以降、彼女は密かに自身の懸念が事実で無い事を祈るようになった。
 しかし、残念ながらその祈りは長くは続かない。ライを想う者達の中で、彼の生存とその変貌。それらを真っ先に知るのは彼女となるのだから。
 
―――――――――

 「おおっ!懐かしの団員服!」
 「やっぱりこれじゃないとなぁ。拘束服なんて二度とごめんだぜ」
 領事館の中庭では、一年ぶりの団員服に袖を通し肌触りを懐かしむ面々の姿があった。
 だが、そんな彼等とは一線を画すかのように相も変わらず剣呑な表情を浮かべる一団の姿も見受けられる。藤堂達だ。
 「そうか、桐原翁は……」
 「はい、キョウト六家の方々は神楽耶様を除き皆様……」
 藤堂の呟きに卜部もまた無念といった様子でいると、そこに仙波が割って入る。
 「その神楽耶様は?」
 「ラクシャータ達と共に中華連邦へ難を逃れられたと」
 「一先ずは安心という事か」
 仙波は腕を組むと安堵したかのように溜め息を一つ溢す。一方で、今後の事を思案していた藤堂は思わず愚痴る。
 「何れにしても、これからの戦いは更に厳しいものになるな」
 それを聞いた二人は一様に口を噤んだ。それもその筈。嘗てのような、キョウト六家の支援はもう望めないのだ。。
 周囲を敵に囲まれた、まさに陸の孤島とも言えるこの領事館から全てを始めなければならないのだから。
 三人は皆一様に渋い顔を浮かべるとそれっきり押し黙ってしまった。
 所変わって少し離れた場所では、そんな壮年の男達の姿を心此処に有らずといった様子で見つめる一人の女性の姿が…千葉だ。
 すると、不意に彼女の側に居た朝比奈が悪戯っぽい笑みを浮かべながら背中を押す。
 「告白しちゃえばいいのに…」
 「な、何を告白しろとっ!」
 慌てて否定する千葉。そんな時、周囲に声が響いた。
 「ゼロだ!」
 隊員の誰かが言った言葉に二人の目付きが鋭くなる。
 千葉は我先にとゼロの元へ集まる隊員達へ向けて、牽制の言葉を発した。
 「待て待て!ゼロ、助けてくれた事には感謝しよう。だが、お前の裏切りがなければ私達は捕まっていない」
 「一言あってもいいんじゃない?」
 遅れ馳せながら朝比奈も援護射撃を行う。
 だが、ゼロには彼等の口撃は予測済みだった。
 「全てはブリタニアに勝つ為だ」
 ゼロが切って返すと、言葉の続きが気になる隊員達を代表して玉城が尋ねる。
 「ああ、それで?」
 「それだけだ」
 何の謝罪も無かったゼロの言葉に隊員達の間でどよめきが起きると、千葉は更に食って掛かる。
 「そんな言葉で死んでいった者達が納得するとでも?」
 「その者達には心より哀悼の意を表する。だが、戦いに犠牲はつきものだ」
 「戦場から真っ先に逃げ出したお前が何を言う!」
 燐とした千葉の声が辺りに響くと隊員達はただ無言でゼロの言葉を待つが、ゼロは何も答えない。その事に千葉の怒りが増す。
 「見下げ果てた奴だ!お前より彼の方が余程リーダーに相応しかった!」
 「彼?」
 「惚ける気か!?ライの事だ!お前は知らないだろうから教えてやる!彼は…彼は最後まで仲間を護ろうと戦った!!!」
 その言葉に殆どの隊員達は顔を伏せた。すると、彼等の仕草を見たカレンは左手を胸に懐き一人思う。
 ―ライ。今でもあなたを想ってくれてる人達が……こんなにも居るわよ。
 一方で、そんなカレンの様子を勘違いした扇が慌てて口を開こうとしたが、それはゼロに遮られる事となった。
 「生憎、ライについては詫びる気は無い」
 「何だと……?」
 俄にざわめき出す隊員達。すると、呆れて物も言えないといった様子でいる千葉の代わりに朝比奈が噛み付いた。
 「どういう意味だい?場合によってはゼロ。君はここに居る全員を敵に回す事になるよ?」
 だが、半ば脅しに近い台詞にも関わらずゼロは事も無げに言い放つ。

96:創る名無しに見る名無し
09/05/09 03:10:23 kXBlRHrS
支援

97:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 03:10:31 4N+HLJ3P
 「簡単だ。ライは生きているからな」
 「はぁっ!?」
 朝比奈が素っ頓狂な声を上げると隊員達は俄然騒ぎ出した。
 「マジかよ……」
 「でも、幹部の人達は生きてる筈が無いって……」
 「いや、ゼロはああ言ってるんだし……」
 「でもっ!……」
 各々、混乱しつつも思い思いの言葉を口にする。
 そんな中、いち早く立ち直った朝比奈はゼロを睨み付けた。 
 「君はあの爆発を見ていないからそんな事を言えるんだよ!良いかい!?あの爆発の中で―」
 「やめろっっっっ!!」
 「っ!!…藤堂…さん?」
 「中佐?」
 突然声を荒げた藤堂に驚いた様子でいる二人を余所に、彼は一人壇上に上がる。
 「ゼロ、彼は生きているんだな?」
 「私はライの事で嘘は吐かないと誓っている」
 それを聞いた朝比奈の瞳が鋭さを増す。
 「何それ。俺達には吐くって言ってるような物だよね?」
 「敵を騙すには、まず味方からという言葉もある」
 「そんな言葉―」
 「朝比奈っ!」
 二度目の叱責。
 朝比奈は、怒りに染まっていたとはいえ藤堂が話している最中に割って入ってしまった事を恥じたようで押し黙った。
 「もう一つ聞きたい。あの時も勝つための策を練ろうとしたんだな?」
 「私は常に結果を目指す」
 「分かった」
 短く答えた後、振り向いた藤堂は眼下に居並ぶ隊員達に向けて言った。
 「作戦内容は伏せねばならない時もある。それに今は争いごとをしている場合では無い。我々には彼の力が必要だ。私は、彼以上の才覚を―」
 そこまで言った時、藤堂の脳裏に灰銀色の青年の姿が過った。
 藤堂は、一瞬だけゼロに視線を移すと直ぐに向き直る。そして、軽く咳払いをした後、言った。
 「彼以上の才覚を持つ者はこの場には居ないだろう!」
 隊員達は互いに顔を見合わせる。そんな最中、後に続くように壇上に上った扇は一人気を吐く。
 「そうだ、みんな!ゼロを信じよう!」
 だが、以前のような盲信は危険だと思った南が苦言を呈する。
 「でも、ゼロはお前を駒扱いして……」
 それでも、扇はめげなかった。彼は一人の旧友に狙いを定めた。
 「彼の他に誰が出来る?ブリタニアと戦争するなんて中華連邦でも無理だ。EUもシュナイゼル皇子の前に負け続けてるらしいじゃないか。俺達は全ての植民エリアにとって希望なんだ。
独立戦争に勝つ為にも、俺達のリーダーはゼロしか居ない!」
 「そうだぁ!ゼロッ!ゼロッ!ゼロッ!」
 扇の狙い通りに、玉城が音頭を取ると疎らながらも半数近くの隊員達が後に続いた。響き渡るゼロコール。
 そんな中、壇上より降りた藤堂は未だ納得出来ない様子でいる二人の元へ歩み寄る。
 「千葉…」
 「中佐の仰る事は分かります。ですが、ゼロは彼の事を山車に使っているように思えてなりません」
 申し訳なさそうに答える千葉。藤堂は視線を移す。
 「朝比奈」
 「俺の居場所は藤堂さんの側であって、ゼロの側じゃありませんから。その考えを変えるつもりはありません」
 朝比奈は強い決意を秘めた瞳を藤堂に向けた後、再びゼロに向けて言い放った。
 「ゼロ!俺が従うのは藤堂さんだけだ。俺は君の事を信じた訳じゃない。特に彼の事についてはね。この中にも俺と同じ気持ちでいる隊員は多いよ。皆を信じさせたいなら―」
 「ライを捜し出せばいいんだな?」
 千葉と朝比奈。二人のゼロに対する不信感は、さも簡単に言ってのけるゼロを見て更に深まって行く。
 が、そんな事はお構いなしとでも言いたげにゼロは言葉を続ける。

98:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 03:12:06 4N+HLJ3P
 「彼奴を大切に想うのは私も同じだ。ライは私の大切な左腕だからな」
 「協力は出来ないよ?」
 「構わない」
 ゼロが言い切ると、朝比奈は「見つけれるなら見つけてみろ」とでも言いたげな視線を送った後、踵を返すとその場を後にした。
 やがて、朝比奈の後ろ姿を見送りながら渋い表情を浮かべていた仙波が藤堂に歩み寄る。
 「難しいですな」
 「ああ、今は団結せねばならないというのに溝は深いようだ」
 「朝比奈は戦闘隊長殿の事を評価しておりましたからな。居なくなってしまった今、それが下がる事は無いでしょう」
 そう、生きている筈が無いと信じている朝比奈にとって、ライの評価が下がる事は無い。いや、むしろ上昇して行くだろう。思い出とは美化されるものなのだから。
 一方、朝比奈と同じスタンスでいたがその場を立ち去るまでには至らなかった千葉は思わず尋ねた。
 「中佐はゼロの言葉を信じるのですか?」
 「信じると言うよりは、信じたい、だな。卜部、お前もそうでは無いか?」
 「……はい」
 藤堂は、いつの間にか背後に控えていた卜部に向けて振り返る事無く問い掛けると、卜部は短く頷いた。
 そして、藤堂は未だ熱心にゼロコールを送る隊員達とそうでない隊員達に視線を向ける。
 「何れにしても、今の我々は彼の捜索にさえ人員を割けないのが現状だ。ライ君の事はゼロに任せて吉報を待つしかない」
 「「「はい」」」
 三人は力強く頷いた。
 一方、藤堂が彼等と会話していた頃、壇上では別の会話が行われていた。
 「ゼロ、信じていいんだな?」
 扇の縋るかのような視線をその身に浴びながらも、ゼロはハッキリと言い切る。
 「結構だ」
 頼もしい言葉を聞いた扇は、思わず呟いた。
 「変わった…よな…」
 「変わった?私がか?」
 意外な言葉にゼロが思わず反芻すると、扇は気恥ずかしそうに言った。
 「ライの事だけじゃ無い。救出の時もそうだ。俺達を……同胞と呼んでくれた」
 「覚えていないな」
 ゼロは夜空に浮かぶ月を眺めながら惚けてみせた。だが、ゼロが自身の言った事を忘れるような男では無い事を承知していた扇は、その仕草を見て微苦笑を浮かべると次に疑問を口にした。
 「分かった。けど、何故そこまでライの事を?」
 扇としては嬉しかった。自分にとっても仲間にとっても。何よりもカレンにとってライが生きているという言葉は他ならぬゼロが言った言葉だ。
 扇は彼が何の根拠も無しに言うとは思えず、それは希望が持てる言葉だった。
 だが、一方で千葉や朝比奈のような感情を抱く者も中には居るという事を、扇は囚われの身であった時に重々承知していた。 
 「彼奴は……いや、止めておこう」
 一瞬、扇の前で「親友だ」と言いかけたゼロは、咄嗟に思い留まった。これ以上の特別扱いは出来なかったのだ。
 「お、おい。ゼロ?」
 扇の言葉を聞き流し、未だ鳴り止まぬゼロコールの中、必ず見つけるという決意を胸に一人その場を後にするゼロ。
 だが、彼にはそれ以前に対峙しなければならない存在が居る。
 嘗ての親友、スザク。
 ゼロを、ルルーシュを未だ憎む彼がこの地に舞い戻っている事を彼が知るのは翌日の事だった。

―――――――――
 その翌日の事。
 何の前触れも無く突然学園に復学して来たスザク。彼は素知らぬ顔でルルーシュに笑みを送りながら手を差し延べた。
 その時のルルーシュの怒りは如何程のものであっただろうか。今更推し量る必要も無いだろう。だが、それを顔に出す程ルルーシュは愚かでは無い。
 彼もまたスザクと同じように何食わぬ顔で再開の握手に応じた。
 丁度その頃、何処とも知れぬ場所ではルルーシュとは対照的に一人の青年が怒りを顕にしていた。

99:創る名無しに見る名無し
09/05/09 03:13:12 kXBlRHrS
しえん

100:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 03:14:25 4N+HLJ3P
 「お前は一体何を考えている!?」
 黄昏の間にライの怒号が響く。
 「何故あの男、枢木を日本に送った!?」
 しかして、怒りの矢面に立たされている皇帝、シャルルは臆面無く言い放つ。
 「新しい総督の警護の為に一足早くエリア11入りさせたまで。枢木の件はその者たっての願いでもある」
 「願いだと?実の息子を餌にするような輩が、何時からそれ程寛容になった?」
 「不服か?」
 「当たり前だ!枢木は仮にもラウンズ。機情と対極の存在だ。あの男の事だ。必ず駒共に協力を命じるだろう。そうなれば、あの者達は立場上断る事が出来ない。このままでは命令系統が二つ存在する事になるだろうが!」
 「ならば、互いに協力せよ」
 譲る気は無いとでも言いたげに不遜な態度を崩さぬシャルルに、ライは軽い目眩を覚えた。
 「いいか?あの男はルルーシュを憎んでいるのだぞ?引っ掻き回されるのは目に見えている」
 ライは溜め息を一つ吐くと、声のトーンを幾分か落として懇切丁寧に説明したが、結果としてそれが仇となった。
 「引っ掻き回す?既にしている御主が何を言う」
 「何の事だ?」
 意味深な発言にライは風向きが変わったのを肌で感じ取ると思わず眉を曇らせる。が、シャルルは尚も語る。
 「御主はゼロに要らぬ力を与えたではないか」
 「奪われる可能性があるとは言った筈だが?」
 シャルルの言わんとしている事を理解したライは、せめてもの抵抗か。咄嗟に嘯いて見せたが、所詮は無駄な足掻き。シャルルは全てお見通しだった。
 「奪われる事が分かっておったであろう?いや、御主はあの者達の忠誠心を利用した。ゼロが奪い易いよう仕向けた。違うか?」
 「………………やれやれ、V.V.か」
 ライはたっぷりと間を置くと、やがて観念したかのように呟いたが、同時にその右手は左腰に据えた剣、その柄尻を弄り始めていた。
 それを見咎めたシャルルが釘を刺す。
 「あの者は不死。斬り伏せた所で死にはせぬぞ?」
 だが、今のライに効く筈も無い。
 「分かっている。だが、首と胴が泣き別れになったら、どのように生き続けるのか。興味が湧かないか?」
 陰惨な笑みを浮かべるライ。
 これ以上は危ういと判断したシャルルが再び口を開こうとした時、不意に二人の背後より疑問の声が浴びせられた。
 「何に興味があるって?」
 「来たか。告げ口魔め」
 ライは待ち侘びたかのような声色で呟き蒼い炎をその身に纏うと、白い外套を翻しながらゆっくりと振り向いた。
 背後より差し込む夕陽のせいでV.V.はライの表情を伺い知る事は出来なかった。
 だが、一年近くも行動を共にしたのだ。ライがどのような表情をしているのか十分理解していたV.V.。その瞳に剣呑の色が揺蕩う。
 「同志に牙を向けるの?」
 V.V.は自分達の関係を再認識させるべく問うたが、シャルルと同じく無駄だった。
 「必要とあらばな」
 ライは依然として陰惨な笑みを崩す事無く瞳を見開き凍えるような声で応じると、V.V.は不意に感慨深げに呟いた。
 「君は、壊れてるね」
 しかし、そんな皮肉めいた言葉も今のライには意味を成さない。
 「そうだろうな、私はあの日に壊れてしまった」
 ライは少し自嘲気味に笑った後、柄を握り締めると今にも切り掛からんとする。が、結果としてその剣が振るわれる事は無かった。
 「止めよ!!!奪われた事を責めてはおらぬ。結果としてC.C.の居場所を突き止めた。その功績に免じてな。だが、斬り伏せた所であの者に対する命を撤回する気は無い!」
 怒号にも似たシャルルの言葉。
 そこに含まれる並々ならぬ決意にライの纏う炎が陰ると、それは徐々に小さくなってゆき遂には消え失せた。
 柄より剥がすように手を離したライはシャルルに向き直る。
 「どうしても連携を取れというか……」
 「如何にも」
 「だが断る。私の邪魔をするのなら例えラウンズであっても許しはしない」
 検討するに値しないとでも言いたげにライはシャルルの言葉を切り捨てた。
 だが、シャルルも「はい、そうですか」と簡単に引き下がるような男では無い。
 「あの者達の生殺与奪は儂が握っておる」
 「なら、精々肝に命じさせておけ」
 シャルルの再びの忠告に、ライは苛立ちを隠さず吐き捨てると会話は途切れた。
 身の安全を確認したV.V.がその小柄な体を利用して二人の間に割って入ると、シャルルのみが僅かに間を譲った。
 すると、その時なってやっとV.V.は柔和な笑みを浮かべた。
 シャルルもまた口元を僅かに緩めた後、再びライに視線を向けた。

101:創る名無しに見る名無し
09/05/09 03:15:31 kXBlRHrS
し・え・ん

102:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 03:16:44 4N+HLJ3P
 「希望は確信へと変わったか?」
 その問いにライはやや苦笑した。
 「いや、少し薄れた。当日は私の駒がルルーシュに付いていたからな」
 「思い違いか?」
 「その結論に至ってしまうのは簡単だ。しかし、それでは楽しみが減る」

 ―楽しみ―

 先程の会話から、遂にシャルルにも自身の思惑を把握された事を知ったライが遂に心情を吐露すると、呆れた様子でV.V.が忠告する。
 「精々ゼロに足元を救われないようにね」
 「分かっている。ところで、先程言った新しい総督の件だが、その者は皇族か?」
 「何故そう思う?」
 予期せぬ言葉だったのかシャルルは眉間に皺を寄せ、V.V.もやや驚いた様子で瞳を見開くと二人の様子を見たライは鼻で笑った。
 「当たりだな」
 「何故分かったの?まだ教えて無い筈だけど?」
 一人納得しているライを余所に未だ驚いたままのV.V.が問うと、ライは自身の考え。その根拠を告げた。
 「ラウンズの警護を上奏し、然もそれを認めさせた。とてもでは無いが、矮小な貴族共に出来る事とは思えなかっただけだ。まぁ、ただの推測だったがな」
 「君には本当に畏れ入るね」
 たったそれだけの理由で見事に正解を言い当てたライをV.V.は賞賛した。
 しかし、ライが予測出来たのはそこまで。当然と言えば当然だが、新総督の名前までは言い当てる事が出来なかった。
 「一体誰を送る気だ?」
 今のエリア11、ライに言わせれば日本だがそこは再び甦った魔人、ゼロが巣食う地。
 例え皇族であろうとも余程のやり手でなければ、ライはカラレスの末路を辿るだけだという認識でいた。
 問われたシャルルは端的に答える。
 「ナナリーを送る」
 「ナナリー?」
 シュナイゼル辺りを予想していたライにとって、その名は全くの想定外だったようで彼は思わず反芻した。
 だが、直ぐに誰であるかを思い出したライは驚愕の表情そのままに叫んだ。
 「ルルーシュの妹か!!」
 「如何にも」
 微笑を湛えるシャルルを見て、ライは冷静さを取り戻した。
 「成る程、お前はお前でルルーシュがゼロか見極めるつもりか。しかし……悪趣味だな」
 そう言って愉快げに唇を歪ませた瞬間、ライの脳裏に一つの疑問が浮かんだ。
 「そう言えば、何故ナナリーはこちら側に居る?報告書には―」
 顔を上げたライはシャルルに向けて問うたが、意外にもその答えは下から聞こえた。
 「僕が連れて来たんだよ」
 ライが足下に視線を落とすと、そこにはV.V.の笑みがあった。
 「拐ったのか?」
 「人聞きの悪い事言わないでよ。まぁ、そうなんだけどね」
 ほんの少し口をへの字に曲げて抗議するV.V.。すると、シャルルが口を開く。
 「出立は一週間後。事前に会っておくか?」
 「良い子だよ、ナナリーは」
 「興味が湧かない」
 二人に断りを入れたライは踵を返してその場を後にしようと歩き始める。すると、V.V.は突然思い出したかのように尋ねた。
 「そう言えば、もうすぐ"あの日"だよね?」
 ライは脚を止めると些かゲンナリした様子で独り言のように呟いた。
 「"あの日"か……」
 「それでね、今回僕はちょっと行けないんだ」
 「何だと?」
 慌ててライが振り向くと、シャルルはV.V.に向かって心底残念そうに呟いた。
 「それは残念ですな」
 「ごめんね、シャルル。この埋め合わせはするからさ」
 緩やかな雰囲気で会話する二人。
 その様子をライが両腕を組んで憮然とした態度で眺めていると、V.V.は再びライに視線を向けた。

103:創る名無しに見る名無し
09/05/09 03:17:03 kXBlRHrS
しぇん

104:ライカレ厨 ◆WLVpAM0ark
09/05/09 03:20:44 4N+HLJ3P
 「という訳で、よろしくね。ライ」
 「断るという選択肢は?」
 「無いよ」
 先程のお返しとばかりに満面の笑みで答えるV.V.。
 「だろうな」
 我ながら馬鹿げた事を聞いたと思ったライは、そう呟くと足早にその場を後にした。
 やがて、シャルルが視線を落とすとライの気配が空間より消え去ったのを確認したV.V.は小さく頷いた。
 それを認めたシャルルは口を開く。
 「兄さん。余り挑発はなさらぬ様にして下さい」
 「心配性だね、シャルルは」
 V.V.は破顔したが、シャルルが険しい表情を崩す事は無かった。不思議に思ったV.V.が首を傾げると、シャルルは言葉を続ける。
 「あの者の持つ剣。あれで斬られれば例え兄さんであっても―」
 「どういう事?」
 「あれは、あらゆるモノを打ち砕く剣です」
 意味深な発言にV.V.が瞳を細めた。
 「僕の定めも?」
 「恐らくは……」
 短く肯定するシャルルに対して、V.V.の瞳が益々鋭さを増す。
 「単なる剣だと思ってたよ。そんな物が存在してるだけでも驚きだけど…シャルル、彼の気性は知ってるよね?何故そんな危険な物を与えたの?、僕にはこっちの方が驚きだよ」
 「お忘れですか?兄さん。あの剣は元々彼奴の所有物です」
 「ああ、そうだった。年は取るものじゃないね」
 V.V.が短く声を零して気恥かしそうに頬を軽く掻くと、シャルルはV.V.の容姿と仕草。そして言葉のギャップに少々苦笑しながらも言葉を続けた。
 「与えたのでは無く返したのですよ。彼奴を確実に取り込む為には刀のみを返せば良かったのでしょうが、それでは"剣はどうした?"と言い出しかねないので。それに、確認の意味もあったのですよ」
 「確認?本当にライの契約者が与えた物かどうかを探る為だね?」
 「ええ。当初は剣と刀。果たしてどちらが…と悩みましたが、年代測定を行った結果、答えは直ぐに出ましたよ」
 そこまで話してシャルルは一旦会話を切ったが、V.V.は興味津々といった様子で続きを促す。 
 「それで?」
 「刀については作られた年代は特定出来ました。ですが、剣については―」
 「何も出なかった?」
 「それどころか何で作られているのかと言う事さえも……」
 シャルルは頭を振った。
 一般的に剣の構成物質ならば鉄である筈。だが、そうでは無いどころか、何で出来ているのか分からないという答えにV.V.は驚嘆した。
 「一体、何なの?」 
 「あれは聖剣、エクスカリバー」
 呟くように答えたシャルル。それを聞いたV.V.は剣呑な表情を浮かべると夕日を見つめながら暫しの間無言となる。が、やがてゆっくりと口を開いた。
 「…シャルル。前から思ってたけど、君はライの事で…僕に話してない事が沢山あるよね?幾ら昔憧れたと言っても、君がここまで一個人に執着するのは珍しいもの」
 V.V.からの追求にシャルルは僅かに頬を緩めると、あっさりと認めた。
 「何時から気付いておられましたか?」
 「記憶を僅かな改竄だけで済ました時から、かな?」
 V.V.の答えは、殆ど最初からと言えた。が、シャルルは何も言わずにただ無言で兄の言葉を待つ。
 「あそこまで強烈な自我を持たす必要があったの?」
 「彼奴には自らの意思で動いてもらう必要があったのですよ。さすれば、何かの切欠で記憶が戻ったとしても、最早逃げられません。機情の長として、彼奴が如何程の血に染まっているか。御存知でしょう?兄さん」
 「成る程、罪の意識に苛まれて逃げ出れなくなる、か。……でも、これ以上の隠し事は無しだよ?僕達は、この世界でたった二人の兄弟なんだからさ」
 そこまで言ってV.V.は再び向き直る。すると、シャルルは遂に重い腰を上げた。
 「では、話すとしましょうか」 
 そして語り出した。今まで誰にも話すことの無かったライの存在理由について……。


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