09/05/02 22:19:56 scdZeMUa
蒼の悪鬼 序
「ねぇ、ライ。話したいことがあるの。聞いてもらえる?」
月下の整備をしていたら、後ろから声をかけられ.る。
誰だか判ったが、念のため振り返って確認してみる。声の主は思ったとおりカレンだった。
「ああ、整備しながらでいいなら構わないよ」
僕は、整備しかけた部分に視線を戻して話す。
本来なら整備するのを中断して話を聞くべきなのだろう。
だが、ここ最近は彼女を意識しすぎて、真正面から顔を見て話すのがとても恥ずかしいというか照れてしまう。
だから、こうやっての会話の方がまだ落ち着いて対処できると思ったからだった。
「うん。かまわない。その方が私も助かるから」
その言葉にいつもの元気は無い。
どうしたんだろう。
しかも、その方が助かるってどういう意味だ?
訳がわからずに聞き返そうと思ったが、どう聞いたらいいのかわからず、結局何も聞けなかった。
その無言を話を進めろという意味に取ってくれたのだろう。
カレンが言いにくそうにぽつり、ぽつりと喋りだす。
「あのさ、この東京決戦が終わったらなんだけど……」
僕の整備の手が止まる。
無意識的に、この話は大切なものだと認識したのかもしれない。
しばしの沈黙が、カレンの迷っている心を表しているかのようだった。
そして、彼女は決心したのだろう。
「……もし、よかったら……なんだけど……」
震える声が響く。
彼女の緊張が、僕にも伝わってくる。
「私と……付き合ってほしいの」
その言葉と同時に駆け出す音が響く。
僕がその言葉に一瞬我を忘れ、慌てて振り返ったときには、そこにはもうカレンの姿はなかった。