コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ39at MITEMITE
コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ39 - 暇つぶし2ch481:創る名無しに見る名無し
09/04/27 21:41:35 Hn3Hgk/+
一身上の都合ってなんだよ。またサボりかあクソ管理人?

482:創る名無しに見る名無し
09/04/27 21:49:02 xZp/LGSl
>>477
投下お疲れ様でした。
いやぁ、ほんわかしてたSSですね。
それに文章のつなげ方とか、間の取り方とかうまいなぁと思いました。
さらに、桜という花を持ってくるあたりもセンスの良さが出ていると思います。
うーんっ、今回も座布団3枚ですかねぇwww
というわけで、(どういうわけだよwww)山田君っ、聖さんに座布団(GJ)3枚追加ね~っ。
GJ×3でしたっ!!
次回の投下も全力でお待ちしております。


483:創る名無しに見る名無し
09/04/27 21:58:20 Hn3Hgk/+
>一身上の都合により少しの間このスレから離れることになりました(その間、更新も停止します)。
まず一身上の都合とやらを説明しろ。てめえの勝手な都合で住民を振り回すな。嫌だってんなら
金輪際お前の戻ってくる場所なんかないよ。この際だからこのまま永久に消えたらどうだ?

>こちらの不手際によるものです。
ほんとミスだらけだな。お前の人生自体ミスなんじゃないのか?

484:創る名無しに見る名無し
09/04/27 22:15:57 Hn3Hgk/+
返事ないな。見てないのか?まあいいや。それならそれでメール送れば済む話だからな。
geass_lc_ss@yahoo.co.jp
俺は今から送る。みんなで詰問してやろうぜ。ここで甘い顔したら駄目だ。

485:創る名無しに見る名無し
09/04/27 22:39:46 xZp/LGSl
えーと、即席ですけど投下します。
愚痴言ったり、文句言うのは、仕事だけでたくさんでしょ?
ここでは、みんな楽しみましょうよ。

なお、10分程度で書いたので、すごく短くてごめんなさい。
では、スタートします。




486:創る名無しに見る名無し
09/04/27 22:40:34 xZp/LGSl
「どうしたのよ、ライっ。顔色が真っ青じゃないのっ」
慌ててミレイさんが駆け寄ってくる。
「大丈夫ですよ」
「いいえっ。その顔は大丈夫な顔じゃありませんっ。こっちに来なさい」
そう言われ、僕は長椅子に無理やり寝かしつけられた。
「いや、本当に……」
そう言いかけたが、ミレイさんの表情を見て言葉が出なかった。
そう、彼女は怒っていたのだ。
「なんで、こんなになるまで無理するのよっ」
「で、でも、学園祭の責任者だから……」
なんとかそう返事をして起き上がろうとした僕は、バンッというミレイさんのテーブルを叩く音で動きを止めた。いや、止めさせられた。
「責任者が何よっ、無理したら意味ないじゃないっ」
「でも……」
再び、テーブルが叩かれる音。
もう、何も言えなかった。
彼女が本当に心配してくれているのがわかったから。
「……ごめん……」
なんとか言えたのは、そんな言葉だけ。
だが、その言葉を言った途端、僕はやさしくミレイさんに抱きしめられていた。
「ライが学園祭にがんばってくれている理由も私はちゃんとわかっているつもりよ。でも、心配させないで……」
「ごめん……」
しばらくそのまま抱きしめられていたが、すーっとミレイさんが離れて僕を包み込んでいた暖かな温もりが無くなっていく。
「それにね、無理な時や疲れた時は、ちゃんと言って……。学園祭は、貴方一人で何とか出来るものではないわ。皆で少しずつ協力し合ってやっていくものだもの」
そう言うミレイさんの表情が、いつの間にか微笑へと変わっていた。
「皆を頼ってよ。きっと皆、そう思っていると思うよ」
そして、暫く間が空いて、顔を真っ赤にしてミレイさんが付け加える。
「それに……、貴方には、私がいるわ」
その言葉にドキリと心臓が高鳴る。
「それは……」
僕は、その意味が僕の思ったとおりの意味なのか知りたくて言葉を続けようとした。
だが、ミレイさんの人差し指がすーっと僕の唇に当てられる。
「それは……学園祭の時に……ね?」
そして、ミレイさんは僕を再度長椅子に寝かしつけると「ちゃんと休んでなさいよっ」と言い残し、生徒会室を出て行った。
それを呆然と見送る僕。
多分、そんな風に言われなくても僕は動けなかっただろう。
なぜなら、その微笑と言葉に僕はノックアウトされてしまっていたのだから。

おわり

487:創る名無しに見る名無し
09/04/27 22:42:11 xZp/LGSl
以上です。
皆様が少しでも楽しんでいただければ、幸いです。

では~♪

488:創る名無しに見る名無し
09/04/27 22:47:39 Hn3Hgk/+
おお~やるじゃん。>>486GJだ。職人の技が冴えるな。

それにくらべてあのカス管理人は…
ほんとあいつ存在してる意味あるのかねえ?

489:創る名無しに見る名無し
09/04/27 23:00:39 k1ZRoQ0l
>>487
乙でした!
ちゃんと会長をやっているミレイさん、良いですね!
この前後の展開はどうなのか、想像してみるのもまた楽しい。
貴公の次の投下を全力でお待ちしております!

490:創る名無しに見る名無し
09/04/27 23:02:25 AdcXoHs+
>>487
GJっす!
>私がいるわ
このセリフ、イエスだね!

491:創る名無しに見る名無し
09/04/29 19:12:22 B+UxcRNz
丸一日投下どころか一件のカキコもない…
おまけにトーマス卿はよく分からない理由(←これなにげにすごいこと)で離脱…

正直やばくね?

492:創る名無しに見る名無し
09/04/29 20:05:00 iei3qtQh
確かにここ最近は色んな意味でヤバいかもしれないなぁ

でもきっと虎視眈々と投下するタイミングを図ってるんだと思いたい

493:創る名無しに見る名無し
09/04/29 21:12:31 rnFu4Fi7
>>491
赤の他人に自分の予定は教えんだろ?

494:創る名無しに見る名無し
09/04/29 22:14:37 Fu/Q7VsI
>>492 493
かまいなさんな
例のアホだ

495:創る名無しに見る名無し
09/04/29 22:27:37 B+UxcRNz
な、なんで?なんか間違ったこと言った?

496:創る名無しに見る名無し
09/04/29 22:29:09 Jj1O7Q2i
どんまい
ただの認定厨だ

497:創る名無しに見る名無し
09/04/29 22:32:58 rnrFHW/e
まあ、ここに書き込んでなにかが変わるわけではないし、まったり待とうや。

498:創る名無しに見る名無し
09/04/29 22:35:54 rnFu4Fi7
>>495
すまん、何か”トーマス郷のよく分からない理由”って部分で
悪口を言ってるように捉えてしまった・・・

499:創る名無しに見る名無し
09/04/29 22:47:56 B+UxcRNz
>>498
トーマス卿って更新停止するときにはいつも明確に理由を言ってるでしょ。コミケとかお葬式とか。
それが今回は言葉を濁してるし保管庫でもなにも言ってない。なんとなくやばい匂いがしたんだ。
言い方が悪かったってのは認めるよ。ただあの人を心配しての発言だと受け止めてくれ。

500:創る名無しに見る名無し
09/04/30 00:00:51 iei3qtQh
>>449殿
まぁみんながトーマス卿の事が心配なのは変わらないわけさ~

でもやっぱ心配だな

501:創る名無しに見る名無し
09/04/30 00:06:40 Sr3C08Pu
トーマスさんの事は心配だが、一日投下無いのは最近じゃ珍しい事でもないでしょ
それに、ここは雑談しながら投下待つってスタイルは嫌われるみたいだしさ
トーマスさんもSSも、のんびり待とうよ

502:創る名無しに見る名無し
09/04/30 00:33:55 SjIH0PvN
管理人さんが停止宣言だしたのはアンチの荒らしの中傷メール攻撃に疲れたからかもなあ~?
結構頻繁にあったらしいし、しかもしたらばの方にロスカラのSS板が立ったしね。



503:創る名無しに見る名無し
09/04/30 02:53:12 ywc6x4oy
したらばの板のほう、かの人が何を思って立てたのか
もともとトーマス氏と申し合わせてあったのかはわからないけど
削除されたみたいだね。

504:創る名無しに見る名無し
09/04/30 05:02:24 DR0NuRC1
直接、脅すみたいに閉めろって書き込まれたら、良かれと思ってやってたら閉めるんじゃないの?

505:創る名無しに見る名無し
09/04/30 05:46:17 Zx6rdXar
良かれとは言うけど、
このスレが不要と言っているようなものじゃないかと思うよ

隠すつもりなかったみたいだから触れるけど、
トリップから察するならあの板立ち上げたのって酸性雨さんだよね?
移転したかったってことなのか。
最近自分の投下頻度が上がってるから分散目的とか?

506:創る名無しに見る名無し
09/04/30 06:48:34 47bmibk+
つかもう理由とかどうでもいいからさっさと復帰してくれ
困るわマジで

507:創る名無しに見る名無し
09/04/30 08:29:53 xCg6R6+2
ここで愚痴る暇があるならその思いをメールにして送ればいいじゃん

508:創る名無しに見る名無し
09/04/30 18:27:50 DR0NuRC1
移転というより、避難所だったんじゃね?
投下しにくい雰囲気だったし、いろんな人が投下しても流れ変わりにくかったし。
まぁ、今となってはわかんないんだけどさ。

509:創る名無しに見る名無し
09/04/30 19:25:27 WifhK1ns
つうかなー。
お前らはトーマスさんトーマスさん言い過ぎだ。管理人も職人も住人の玩具じゃないんだから、そっとする時はそっとしといてやれよ。

510:創る名無しに見る名無し
09/04/30 20:25:13 pIdimBEl
こんな時ぐらい、雑談をして空気を変えてもいいんじゃないかと思うんだが
どうだろう?

やっぱり、投下しずらくなるかな?

511:創る名無しに見る名無し
09/04/30 20:32:16 Sr3C08Pu
>>510
今の雰囲気変えてくれるなら……

512:創る名無しに見る名無し
09/04/30 21:09:40 pIdimBEl
自分で振っといてなんだが…


なんかネタ無いかね…orz

513:創る名無しに見る名無し
09/04/30 21:51:08 QIJLj747
管理人にも職人にも当然モチベーションってもんがあるから
無理強いは出来んがこれだけは言える

荒らしに屈すると荒らしはこう考える
『気に入らないのが潰れたw なーんだ、荒らせば思い通りになるもんだなww』
『テキトーに荒らしてたらスレ潰れたwうはw俺スゴスwww』

そうなれば荒らしはまたどこかのスレで同じ事を繰り返す、
荒らせば自分の思い通りになると思って

こんな事は絶対にあっちゃあならない
管理人も職人も自分のペースで全然構わない、やりたい時にやってくれりゃそれで十分だよ
だから『視聴者様』や荒らしに屈しないで欲しいと思う
このスレに、職人に、管理人に、ロスカラにこれからも幸あれ

514:POPPO
09/05/01 01:07:15 0Gfch1PG
POPPOです。
今から
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN01 「2人のゼロ」
を投下します。
支援お願いします。



515:POPPO
09/05/01 01:10:50 0Gfch1PG
a.t.b. 2018 
ブリタニア人住居区域 トウキョウ租界。

曇り一つ無い晴天の空の下、蜜柑色の気球船がブリタニア人住居区であるトウキョウ租界上空にさしかかっていた。
操縦席に座っている、緑色の長髪を持った女はトウキョウ租界航空管理局との通信を終えた後、可愛らしいストラップが付いた桃色の携帯電話が鳴った。
彼女は白を基調とした独特のスーツを身に纏い、美女と呼ばれる容姿をしていた。その女は操縦桿から右手を離した。胸ポケットから携帯を取り出すと、電話を繋いだ。
「どうした?」
『ねえ、本当に大丈夫なの?大規模な作戦なのに、ナイトメアはたったの十機、それも旧式なんかで…』
「心配するな、井上。そっちは任務に専念しろ」
『準備はすでに整ってるわ。あとは貴方たちの行動を待つだけ』
「そうか、報告感謝する。だが、余計なことは気にするな。なぜなら―」
モニターにはトウキョウ租界の南東に聳え立つ、一際異彩を放った建築物が映し出された。彼女はそれを眼前に捉える。
「これは、『ゼロ』の命令だからな」
整った容姿に、魔女は微笑みを浮かべた。






516:創る名無しに見る名無し
09/05/01 01:11:31 afZrdmKX
支援

517:POPPO
09/05/01 01:11:55 0Gfch1PG
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN01 「2人のゼロ」




曇り一つ無い晴天の空の下、ヴィレッタ先生の追っ手から逃れたサボりの常習犯兼副会長、ルルーシュ・ランペルージはリヴァルのバイクを借りて、ロロ・ランペルージと一緒に目的地であるバベルタワーに向かっていた。
会長の差し入れであるパンをロロに噛ませると、車体が大きく揺れる。
冷静沈着なルルーシュも、弟の運転に少しひやっとした。
「おいおい!…ロロ」
「んっ!だって、兄さんが…」
「ははは。分かってるさ。だが、安全運転で頼むぞ」
「うん」
そういうとロロはブレーキに少し力を入れた。
スピードを落とし、バイクは都市高速のカーブを曲がっていった。
ルルーシュはパンを包んでいた袋をサイドカーのダストシュートに入れる。向かい風でページがめくれるのを押さえながら、「カラマーゾフの兄弟」を読みふけっていた。
(ふん……小説でも現実でも、悲劇は連鎖するものだな)

ルルーシュが小説を読み終えたとき、バイクが信号に捕まり、吹き付ける風が止んだ。
都市高速を下り、目の前にはバベルタワーまでの一直線の道路が見えていた。
巨大スクリーンから流れるカラレス総督の声が、ルルーシュの耳に入る。
ルルーシュは目を細めて、ヘルメットについた青いサングラスを通してスクリーンを見た。
眼前では黒の騎士団のメンバーが射殺される光景が映った。
執行後、カラレス総督の声がスピーカーを通して周囲に大きく響いた。
『これはイレブンに対する差別ではない!区別だ!』
ブリタニアの武官らしい風格と、武官らしい言動がルルーシュの心を曇らせた。


518:POPPO
09/05/01 01:12:43 0Gfch1PG
行政特区日本崩壊から、もうすぐ1年。
ゼロが起こしたクーデター、『二〇一七事変』の真相については、当時様々な情報が飛び交っていたが、ブリタニアの公式発表によればこうだ。
設立からわずか半年で、黒の騎士団は行政特区日本が保有する軍隊として正式に任命された。
急激過ぎる進展。
だが、ゼロの思惑はそれだけにとどまらなかった。
黒の騎士団は裏で軍備拡張を続け、ブリタニアの傀儡となることを恐れたゼロは、行政特区日本の崩壊と共に独立を目論んでいた。
そして、式典で起こった惨事。
ゼロは『新日本党』を利用し、混乱に乗じて、ユーフェミア様を亡き者にしようと企んでいた。
ゼロの目論見に気付いたユーフェミア様は、それを止めるべくゼロをけん制したが、失敗に終わり、命を落とした。

そう考えれば、ゼロが反行政特区組織であった『新日本党』と裏で繋がっていたことも納得がいく。
ゼロは新たな国家を作りたかったのか、それとも特区日本の実権を握りたかっただけなのか、今となっては分からない。

いずれにせよ、特区日本は終わった。

(たとえ、日本がブリタニアの属国になったとしても、血を流さずに戦う方法は幾らでもあったはずだ…)
黒の騎士団は敗北し、ゼロは捕らえられた。
数日後には処刑され、その功績で、生徒会のメンバーであったスザクはラウンズに就任した。
それを祝って、俺たち生徒会のメンバーもささやかなパーティをしたものだ。
名誉ブリタニア人が、軍の最高位であるナイトオブラウンズに就くなど、ブリタニア始まって以来の異例の出世だ。
一部のメディアが冷ややかな報道をしたが、俺たちにとっては嬉しい出来事だった。

しかし、半年前に『ゼロ』は復活する。

EUに亡命を果たしていたゼロは、活動を再開した。
今年は12カ国の国家がブリタニアの支配下に入り、神聖ブリタニア帝国の侵攻の勢いはさらに増した。
このエリア11のこのような植民地は増加しつつある。
その時代の中で、ゼロの鮮やかなパフォーマンスで彩る逆転劇に、イレブンの人々だけではなく反ブリタニア勢力も希望を取り戻し、近頃のテロは活性化しつつあった。

スザクが捕まえたゼロは偽者だったのか?
だが黒の騎士団は一時期、壊滅寸前まで陥っていた。ゼロが何らかの理由で表舞台に出てこられなかったのは確かだった。
今のゼロは別人なのか?
本当にゼロは生きているのか?
ゼロに関する様々な噂は絶えない。
だが…
(…俺には、関係の無いことだ)
ルルーシュは小説を閉じると、バイクを運転する弟に声をかけた。
「ロロ、早く行こう」
「わかったよ。兄さん」
信号が変わると共に、ロロは思い切りアクセルをきった。


519:創る名無しに見る名無し
09/05/01 01:14:33 afZrdmKX
支援

520:創る名無しに見る名無し
09/05/01 01:14:56 IUrSxJdZ
しえん

521:POPPO
09/05/01 01:14:57 0Gfch1PG
エレベーターを降り、ルルーシュとロロはイレブンの格闘場を無視して、チェスやルーレット、カードのギャンブルが行われている場所へ足を運んだ。
チェスが置かれている台の一つに、一際賑わっている箇所があった。ルルーシュは名のある打ち手が来ているのかと思い、見物客を割って入っていった。
そこではルルーシュの予測どおり、賭けチェスで有名な棋士の決闘が行われていた。
「チェックメイト」
カツ、とクラッシュアラバスターが奏でる木質の音と共に、透き通った声が辺りに響いた。
煌びやかな服を纏ったギャラリーから声が上がる。
「黒のキングが負けた!?」
「すごい…圧倒的だ」

貴族を示すような顎鬚を生えそろえた中年の男、『黒のキング』は、震える手で決闘の相手を指差した。
「い、イカサマだ!これは!」
「あら?何をおっしゃいますの?黒のキング様。それとも、本当の決闘を申し込まれたいのかしら?」
黒のキングに打ち勝った相手は、黒服の女だった。
肩を晒した漆黒のドレスに、二の腕まである黒のロンググローブ、赤いバラをさした黒の帽子には目元と鼻の辺りまで覆う黒のベールを纏っていた。
その下に表れているのは透き通ったように白い肌と、ピンク色の彩られた唇であり、整った体型と、そこから想像させる美女の輪郭は、男の視線を惹きつける魔性の雰囲気を漂わせていた。
彼女は透き通るような声一つで、怒りに身を震わせる『黒のキング』を制していた。
ルルーシュは、男の怒鳴り声に動じない女の胆力に内心賞賛しつつも、彼女の真意を見抜いた。それは彼女の左胸に飾られている金色の翼のようなアクセサリーだった。
このカジノで一握りの会員が付けることを許された装飾品であり、それは彼女の身分を表すことと同然だった。
(ほう…あの女、貴族か。それも侯爵じゃないか)
黒のキングもエリア11にいる貴族であり、一時の癇癪で決闘を起こせば、人のつながりが最も重要である貴族としての地位を揺るがしかねない。
そして、『黒のキング』は男爵だ。
『男爵程度の下級貴族が、私に刃向かう気か?』
と、暗に意味していたのである。
「ちぃ!…どけどけっ!」
周囲に群がる人々をどかし、黒のキングは二人のボディガードを連れて、眉間にしわを寄せたまま去っていった。
その情けない後姿を見つめていると、唐突にルルーシュに声がかかった。
「…もしや貴方は、『プリンス』様では?」
その声に、周囲の人々の視線がルルーシュに集まった。
彼の隣にいたロロはいきなり注目を浴びたことで、身を縮めてしまった。
ルルーシュが目を見開いたのも一瞬、顔に微笑みを浮かべて彼女に返事をした。
「これはこれは…光栄ですね。近頃、噂になっている『魔術師(メイガス)』様に気を留めてもらえるなんて…」
「あら、近くで見ると中々の坊やね。では、一局いかがかしら?」
「…喜んでお受けいたします」
人々から、軽い歓声が上がった。
先ほど、名立たる打ち手が負けたのを目の当たりにしておきながらも、年端もいかぬ若者が物怖じせずに彼女の挑戦を受けたのだ。当然の反応だった。
ルルーシュは席に座り、ロロが椅子のすぐ後ろに控えた。
スーツを着た男が駒を揃え始めた。
だが、『魔術師(メイガス)』は左手でそれを止めた。
「待って」
「どういたしました?」
彼女の行動が理解できなかったスーツ姿の長身の男は、戸惑いの心情を声に乗せていた。
ルルーシュもそれは同様だった。
彼女は黒いロンググローブを纏った指先で、ルルーシュが手にしていた物を指差した。
「どうせなら、貴方のボード、ギースベルト社の一品で行いましょう。イカサマと疑われるのは心外ですので…」
『魔術師(メイガス)』の視線の先で、『黒のキング』がグラスを床に叩き付け、大きな舌打ちをした。2人の屈強なボディガードを引き連れ、不愉快を示す足取りで大きな自動扉をくぐっていった。
周囲の見物客から、失笑が漏れる。
鼻から上の顔を隠す黒のベールが揺れ、『魔術師(メイガス)』の鮮やかなピンク色の唇が、魅惑的な微笑を模った。
「では、プリンス様のお手並み拝見といきましょうか」




522:POPPO
09/05/01 01:17:34 0Gfch1PG
すいません!
投下ミスりました!
519と521の間に一つ文章があります。
521がダブりになりますが、どうか許してください!

523:POPPO
09/05/01 01:18:27 0Gfch1PG
バイクをバベルタワーの地下駐車場に置き、歩いてバベルタワーのエントランスホールへ向かった。
高貴な身分が集まる会場に相応しい、豪華なエントランスホールをまたぐと、黒スーツを纏った男が近寄ってきた。ルルーシュは彼に会員証を提示した。
赤い絨毯が敷かれた階段を上り、カジノに直通のエレベーターに乗り込んだ。
「兄さん。今日は幾ら稼ぐつもりなの?」
「なに…ここまでの往復のガソリン代と、2人分のディナーの食事代を稼げればいいさ」
「それと、シャーリーさんの誕生日プレゼント代も、でしょ?」
「ん?そういえば…あったな。そういうのも」
「それはひどいよ。シャーリーさんが可哀想だ」
「なぜだ?恋人でもあるまいし…」
「…やっぱり、ひどい」
「ははっ。俺にとって、お前以上に大切なものなんて無いさ。ロロ」
ルルーシュの言葉を受けて、ロロは照れてしまう。だが、ロロはルルーシュの表情から憂いの感情を感じ取った。携帯を制服のズボンのポケットに入れる。
「…ありがとう。兄さん。でも、ほどほどしたほうがいいと思うよ。気持ちは、分かるけどさ」
「……相手になる奴がいないからな」
「…早く、帰ってくるといいね」
「……ああ」
ルルーシュはエレベーターのガラスごしに、小さくなっていくトウキョウ租界を見下ろしていた。
トウキョウ湾では大型タンカーなどの多くの船が行き来しているのが見える。
彼はため息をつくと両肘を金色の手すりに置き、表示される階の番号に目を向けた。
ふいに紫色の瞳が揺れる。ルルーシュの顔に哀愁の表情が浮かんだ。

ライ。
お前は何処にいる?
会長のから元気は、もう見たくはないんだ。
お前が好きだったカレンは、黒の騎士団のメンバーだった。
ショックなのは分かる。
でもな。
その悲しみを皆に与えるんじゃない。
お前は強い男だろう?
お前がいれば、俺はこんなことはやっていない。
退屈なんだよ。
俺は…


524:創る名無しに見る名無し
09/05/01 01:18:37 afZrdmKX
支援

525:POPPO
09/05/01 01:19:27 0Gfch1PG
エレベーターを降り、ルルーシュとロロはイレブンの格闘場を無視して、チェスやルーレット、カードのギャンブルが行われている場所へ足を運んだ。
チェスが置かれている台の一つに、一際賑わっている箇所があった。ルルーシュは名のある打ち手が来ているのかと思い、見物客を割って入っていった。
そこではルルーシュの予測どおり、賭けチェスで有名な棋士の決闘が行われていた。
「チェックメイト」
カツ、とクラッシュアラバスターが奏でる木質の音と共に、透き通った声が辺りに響いた。
煌びやかな服を纏ったギャラリーから声が上がる。
「黒のキングが負けた!?」
「すごい…圧倒的だ」

貴族を示すような顎鬚を生えそろえた中年の男、『黒のキング』は、震える手で決闘の相手を指差した。
「い、イカサマだ!これは!」
「あら?何をおっしゃいますの?黒のキング様。それとも、本当の決闘を申し込まれたいのかしら?」
黒のキングに打ち勝った相手は、黒服の女だった。
肩を晒した漆黒のドレスに、二の腕まである黒のロンググローブ、赤いバラをさした黒の帽子には目元と鼻の辺りまで覆う黒のベールを纏っていた。
その下に表れているのは透き通ったように白い肌と、ピンク色の彩られた唇であり、整った体型と、そこから想像させる美女の輪郭は、男の視線を惹きつける魔性の雰囲気を漂わせていた。
彼女は透き通るような声一つで、怒りに身を震わせる『黒のキング』を制していた。
ルルーシュは、男の怒鳴り声に動じない女の胆力に内心賞賛しつつも、彼女の真意を見抜いた。それは彼女の左胸に飾られている金色の翼のようなアクセサリーだった。
このカジノで一握りの会員が付けることを許された装飾品であり、それは彼女の身分を表すことと同然だった。
(ほう…あの女、貴族か。それも侯爵じゃないか)
黒のキングもエリア11にいる貴族であり、一時の癇癪で決闘を起こせば、人のつながりが最も重要である貴族としての地位を揺るがしかねない。
そして、『黒のキング』は男爵だ。
『男爵程度の下級貴族が、私に刃向かう気か?』
と、暗に意味していたのである。
「ちぃ!…どけどけっ!」
周囲に群がる人々をどかし、黒のキングは二人のボディガードを連れて、眉間にしわを寄せたまま去っていった。
その情けない後姿を見つめていると、唐突にルルーシュに声がかかった。
「…もしや貴方は、『プリンス』様では?」
その声に、周囲の人々の視線がルルーシュに集まった。
彼の隣にいたロロはいきなり注目を浴びたことで、身を縮めてしまった。
ルルーシュが目を見開いたのも一瞬、顔に微笑みを浮かべて彼女に返事をした。
「これはこれは…光栄ですね。近頃、噂になっている『魔術師(メイガス)』様に気を留めてもらえるなんて…」
「あら、近くで見ると中々の坊やね。では、一局いかがかしら?」
「…喜んでお受けいたします」
人々から、軽い歓声が上がった。
先ほど、名立たる打ち手が負けたのを目の当たりにしておきながらも、年端もいかぬ若者が物怖じせずに彼女の挑戦を受けたのだ。当然の反応だった。
ルルーシュは席に座り、ロロが椅子のすぐ後ろに控えた。
スーツを着た男が駒を揃え始めた。
だが、『魔術師(メイガス)』は左手でそれを止めた。
「待って」
「どういたしました?」
彼女の行動が理解できなかったスーツ姿の長身の男は、戸惑いの心情を声に乗せていた。
ルルーシュもそれは同様だった。
彼女は黒いロンググローブを纏った指先で、ルルーシュが手にしていた物を指差した。
「どうせなら、貴方のボード、ギースベルト社の一品で行いましょう。イカサマと疑われるのは心外ですので…」
『魔術師(メイガス)』の視線の先で、『黒のキング』がグラスを床に叩き付け、大きな舌打ちをした。2人の屈強なボディガードを引き連れ、不愉快を示す足取りで大きな自動扉をくぐっていった。
周囲の見物客から、失笑が漏れる。
鼻から上の顔を隠す黒のベールが揺れ、『魔術師(メイガス)』の鮮やかなピンク色の唇が、魅惑的な微笑を模った。
「では、プリンス様のお手並み拝見といきましょうか」


526:創る名無しに見る名無し
09/05/01 01:20:16 IUrSxJdZ
支援

527:POPPO
09/05/01 01:20:40 0Gfch1PG


アッシュフォード学園の高等部の校舎、日差しが差し込むテラスで、金髪の女子生徒、ミレイ・アッシュフォードはルビー色の携帯電話を切った。
紅茶を運んできた生徒会メンバーの女子生徒、シャーリー・フェネットはミレイに話しかける。
扉をあけた音と共に、テラスの手すりに留まっていた鳩は飛び立った。
「随分と長い電話でしたね」
「本国の叔父様から電話があって、今日の中継を見忘れるなって…」
「何かおめでたいことでもあったんですか?」
「声が弾んでたからそうだと思うけど……どんなサプライズをするのやら、不安で仕方ないわ~…叔父様のやることって、想像がつかないから」
彼女にしては珍しく真面目な表情で、ミレイは両肩を抱いて身を振るわせていた。
シャーリーはミレイの反対側の席に座り、紅茶を一口すすった。
「…会長が言えるセリフじゃないですよ。それ」
栗色の長髪をした彼女は、ミレイの意外な言葉に独りごちた。




528:POPPO
09/05/01 01:21:37 0Gfch1PG
プリンスとメイガスが繰り広げるチェスの決闘に、周囲の人々は惹きこまれていた。熱狂という名の沈黙が辺りを支配していた。
彼らが織り成す至高の駆け引きは、もはや芸術の域に達している。
「どっちが勝ってるんだ?」
「分からない。だが…プロ並みだぞ。この二人」
ある者は声を潜めて言葉を交わし、ある者は腕を組み、二人の決闘を固唾を呑んで見守っていた。
「…兄さん」
ロロは不安な口調で兄に話しかけるも、彼には届いていなかった。
「くっ…」
ルルーシュは戸惑っていた。
ライ以来だった。
彼をここまで追い詰めた相手は。
(ルークを動かすと、ナイトに切り込まれる。そして、クイーンは囮。12手目にポーンをクイーンにして、再びキングを狙ってくる。
だが、ここで叩かないと17手目にはこっちのクイーンがやられる。
しかし、その場合は左方が手薄になり、ビジョップがナイトに取られた場合、対処のしようがない…
いや、待て。
29手目のことを考えると、このルークもサクリファイスとして成立するぞ。
くそっ、このままではステールメイトに持ち込むしか…)
ルルーシュは一瞬で何十通りの手を考え出していたが、彼女の手は全てが本当で、全てが囮のようにも感じられる手ばかりだった。
噂以上の腕だった。
彼の額に緊張の熱に当てられた雫が、頬を伝う。
(…若干だが、旗色は俺が悪い)
ルルーシュが額に手を当て思考していると、唐突に『魔術師(メイガス)』の声がかかった。
「プリンス様」
「…なんです?メイガス様」
「貴方は強い」
「ほう、この状況で貴女がそ…」

「ただ、それだけです」

彼女はルルーシュの声を遮るように言った。
「貴方では、私には勝てません。たとえ何回やっても、何千回挑んできたとしても…」
メイガスの言葉はルルーシュの癇に障った。彼の整った容姿に眉が吊り上る。戦局が悪いこともあって、ルルーシュは不快な表情を隠せずにいた。
「…もう勝利宣言ですか?随分と強気ですね」
ルルーシュの視線を受けたメイガスは唇に笑みを浮かべた。その表情が彼をさらに苛立たせた。
不敵な笑顔で、メイガスは白のポーンの駒を進めた。
「貴方は失ってしまった」
「・・・失った?」
「ええ。もっとも大切なものが……そう、『真実』というピースがね」
「真実?そんなもの、語られないほうが多いのでないのでは?」
「ですが、それは貴方にとっての真実なのですよ」
「…おっしゃる意味が分かりかねますが?」
「いえ、『今』の貴方に理解できないのは当然です」
「……『今』の俺?」
ルルーシュに後ろに立っていたロロの表情が鋭くなった。
メイガスの言葉が理解できず、ルルーシュに一瞬の隙を与えた。黒のナイトをボードに置いた。そのとき、ルルーシュの思考は止まった。
はっとなり、先ほど置いたナイトを見た。
(し、しまった…駒の配置を間違えた!くっ!この女、俺の動揺を誘ってっ!)
メイガスの唇が薄く開いた。それを見たルルーシュは、ベールに隠された笑みの表情を連想し、不快な思いがこみ上げてきた。
「ふふっ。この勝負、見えましたね。では・・・」
白のクイーンが黒のキングを捕らえ、チェックがかかった。
メイガスの唇が歪む。

「貴方に『真実』をプレゼントいたしましょう」

魅惑的な笑みを浮かべる黒服の女性に、ルルーシュは目を奪われた。
素顔こそ分からないが、あざや名ピンク色の唇と透き通った白い肌から連想される彼女の美貌に、頭を刺激される。
この時、彼には黒服の女が『魔術師』ではなく、本物の『魔女』に見えた。


529:創る名無しに見る名無し
09/05/01 01:23:57 afZrdmKX
支援

530:創る名無しに見る名無し
09/05/01 01:39:01 cHqgSraa
猿か?
支援

531:創る名無しに見る名無し
09/05/01 01:40:17 afZrdmKX
支援

532:創る名無しに見る名無し
09/05/01 01:55:27 3mF4GWAx
猿でしょうね。
前回の時も感想と一緒にアドバイスあったのに。
読んでないのかな?

さるさん( 過剰数の投稿に対する規制 )
 ・1時間に投稿できる数は10レスまで。それを超えると規制対象に
 ・毎時00分ごとにリセット。00分をはさめば最長20レスの連投が可能

533:POPPO
09/05/01 02:02:20 0Gfch1PG
その時だった。
爆音と共に、カジノが揺れた。
シャンデリアが落ち、ガラスや壁が砕け散る音と共に周囲に煙が舞った。強い風がルルーシュたちを襲う。
盤上の駒は全て弾かれ、その場にあったグラスや花瓶は吹き飛んでいった。
「うわあああっ!」
ルルーシュは椅子から離れて、床にたたきつけられながらも無意識に両手で顔を覆った。
灰色の煙が漂う中、ルルーシュはすぐさま立ち上がり、大声で叫んだ。
「何処だ!ロロ!」
悲鳴を上げて、周囲にいた人々は逃げ出した。駒が散乱していたが、彼はそんなことを気にとめていなかった。
足を誰かに掴まれた感触がしたルルーシュが下に目を向けると、怯えた表情で視線を合わせない弟を発見した。
「ロロ!大丈夫か!?怪我は…」
ルルーシュの言葉が耳に入っていないのか、ロロは震える手である方向を指差した。その先をルルーシュは視線を向ける。
「兄さん。あれって…」
約5メートル先の眼前には、紅いナイトメアフレームがいた。そして、眼前にはその状況に臆することもなく、ゆっくりと椅子から立ち上がるメイガスの姿が映った。
機械音が鳴り、紅いナイトメアフレームの右腕にある銀色の鉤爪が鈍く光った。ルルーシュの背筋に悪寒が走った。
(見覚えがある。あれは…)
「あ、あの赤いナイトメアはっ!」
「逃げろお!ゼロの双璧だ!」
「くっ、黒の騎士団が!エリア11に帰ってきた!」
周囲の悲鳴がさらに鋭くなる。
客だけではなく、従業員さえ物を放り投げて扉のほうへ逃げていく。
突然、ルルーシュの手が掴まれた。
「逃げよう!兄さん!」
「あ、ああ…」

「何!?」
『魔術師(メイガス)』は声を上げた。
黒光りする小さなポケットから耳に装着する通信機を取り出すと、多くの人が走っていく方向を指差して、叫んだ。
「カレンさん!後を追って!」
『了解!』
ナイトメアのオープンチャンネルの声が響き、ランドスピナーが起動した。
左腕に武装されたコイルガンで扉を壊すと一気に跳び上がり、紅いナイトメアフレームは走り去った。
それを確認したメイガスは右手で通信機のボタンを押した。周囲の状況に全くといっていいほど動じていない彼女は、服装の色とは対照的な白い通信機でやり取りを交わしていた。
『ルルーシュを見失った?』
「ええ…かけていたのに、いつの間にか解かれていたのよ」
『では、あの少年はお前の予想通り…』
「対ギアス能力でないとしたら…」
『メイガス』は金色の懐中時計を取り出し、蓋を開けた。秒針が刻々と動くギリシア数字表記の盤面に目をやった。
「そうね…時を止めるギアス。人間の体感時間を止めるギアスといったところかしら?」




534:POPPO
09/05/01 02:03:52 0Gfch1PG
ロロと逸れ、ルルーシュは先ほどの飾り立てられた室内の雰囲気とはうって異なる、物寂しいコンクリートがむき出しの空間を彷徨っていた。
「!?」
そこでブリタニア人やイレブンの無残な死体を目の当たりにして、強烈な吐き気を催し、吐き出してしまった。
全身が凍りつくような不安に襲われながらも、心は弟の安否だけで埋め尽くされていた。
イレブンのバニーガールが手にしていた一枚の写真が目に入る。
血で濡れたゼロの写真がそこにあった。
(馬鹿だ!こんな奴をいまだに信じてるなんて…だからお前たちは!)
死体が連なる先には、サザーランドではない青いナイトメアが静かに佇んでいた。
ルルーシュは目を見開いた。
片腕に大きな鉤爪がある青いナイトメアが、ゆっくりとルルーシュの方に向いた。
「く、黒の騎士団!」
ルルーシュの声に反応したように、ナイトメアのコクピットのハッチが開き、一人の少女が現れた。
緑色の髪をした少女だった。
白を貴重としたパイロットスーツを身に纏い、整った女の体躯が暗闇でも分かる。
一筋の光が彼女を照らす。
「ルルーシュ」
酷く綺麗な声が耳に届く。
「・・・な、なぜ、俺の名を」
彼女は美しかった。ルルーシュが見てきたどんな女よりも美しく、そして全ての男を虜にするような魔性を放っていた。
魔女の言葉に操られたように、ルルーシュは足を進めた。
目には彼女しか映っていない。
その時、彼に近づいてくる足音が木霊した。
ルルーシュはすぐさま振り向いた。

そして、凍りついた。

「ゼロ!?」
忘れるはずが無い。
黒いマントをなびかせ、黒い服で全身を覆いつくす仮面の反逆者が眼前にいた。
このエリア11に新たな波を引き起こしたテロリストの首領が、単調な歩行でルルーシュに近づいていた。
コツコツと、仮面の人物がコンクリートを踏みしめる音がルルーシュを怯えさせた。
後ずさるも、足がすくんで尻餅をついた。
喉が冷えあがる。
このエリア11に戦争を起こした張本人が眼前にいる。
震える声で、ルルーシュはゼロを指差した。
「お前は、死んだはずじゃ…」
仮面の人物は答えない。
『お忘れですよ。プリンス様』
ゼロは足を止めると、ルルーシュにあるものを投げつけた。
それを受け取ったルルーシュはさらに驚愕した。
「なっ!?なぜこれをっ…!」
茶色のチェスボード、混乱の中、ルルーシュが置いていったものだった。
仮面から、副生音が彼の耳に届いた。
『だから、言ったではありませんか。貴方に『真実』を見せてやると…』
「……まさか、お前は!」

535:POPPO
09/05/01 02:05:39 0Gfch1PG
ルルーシュの言葉は、コンクリートの壁がナイトメアの銃弾によって破壊される轟音によって塗りつぶされた。
彼が振り返った目の先には、アサルトライフルを構えたサザーランドが立ちふさがっていた。
床を蹴る多数の足音と共に、完全武装したブリタニア兵が姿を現した。
ライフルの金属音が木霊し、銃口がゼロを狙っている。
ブリタニア兵の姿を見た途端、ルルーシュの心は安堵と恐怖に締め付けられた。
(…助かったが、まずい!これでは、俺が黒の騎士団の一員だと誤解されてしまう!)
「へ、兵隊さん!ゼロです!ゼロが!」

「まあ、慌てるな」
低い男の声がルルーシュの耳に届いた。
サザーランドのハッチが開き、パープルを基調とした軍服を纏った中年の男がワイヤーを使って降下する。
その右手には拳銃を構えたまま、ルルーシュを見据えた。
「まさか、魔女と一緒に、『ゼロ』までエサに引っかかってくれるとは…私にもツキが回ってきたということかな」
「え、エサ?」
「そうだよ。ルルーシュ・ランペルージ君。君は魔女を捕まえるためのエサなのだよ」
「魔女?…エサ?…何を言ってるんですか!?俺はただの…」
「ごくろうだったね。君は役目を十分に果たした。だから、もう…」

ゼロの仮面の一部がスライドし、琥珀色の瞳が晒された。
その瞳に、赤い紋章が宿る。
鳥のような形をした悪魔の刻印が、妖しく輝いた。
司令官の男の目が、赤い光に彩られた。
「……かっ、か…」
その男は驚愕の顔を浮かべ、両手で首を押さえた。
喋ろうとするが、口が動かず、命令を下すことが出来ない。
途中で声が途切れたことに疑問を思った数人の兵士が、司令官の方を向いた。
彼はなんでもない、と手を振ると言葉を紡いだ。
「まだ撃つな。殺すのはゼロの最後の声を聞いてからにしよう」
(…口が、勝手に、動いた…!?)
誰も彼が苦悶の表情で声を発していることに気付かなかった。
魔女は彼の表情を見て、くすりと笑うと、ルルーシュに口付けた。


「本当の自分を思い出せ―――――ルル―シュ」


536:POPPO
09/05/01 02:07:09 0Gfch1PG
何だ。これは?

見知らぬ光景が映し出される。
いや、知っているはずの光景が映し出された。

魔女の出会い。
鉄と血にまみれた日々、
嘘で固めた日常、
悲劇の過去、
親友との再会、裏切り。
そして、出会うはずの無い人間との遭遇。
境遇を知り、苦しみと喜びを分かち合い、手を取り合った日々。

俺たちが手にした本当の平和。

だが、それは一瞬で砕け散った。



力が欲しいか?

――力ならお前はもう持っている。

――忘却の檻から、お前を解き放つ!



俺の日常にとげのように突き刺さっていた苛立ち。

ああ、思い出した。

俺は―――――

俺が―――――



『魔神』は目覚める。



「―――礼を言う。C.C.」
魔女から唇を離した『魔神』は、ブリタニア兵のほうへと向けた。
黒髪が揺れ、紫色の瞳が妖しく光りだした。
「残念だったな、ブリタニア。本当のエサは誰だったか、それを俺が教えてやろう」
『魔神』は大きく腕を仰ぐ。彼に絡み付いていた呪縛を振り払うように。


537:POPPO
09/05/01 02:09:28 0Gfch1PG

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる」



「――――――――死ね」
『魔神』の左目に赤い紋章が輝いた。
不死鳥をかたどった刻印がブリタニア兵士を襲った。

抗うこともできずに、赤い光が宿った兵士たちは微笑みながら、互いに銃口を向けた。
司令官である男は、拳銃を首筋に押し当てた。
彼らの最期の言葉が、狂喜に満ちた声で紡がれる。

『Yes! Your highness!』

銃撃が鳴り響き、多くの兵士たちの命は散った。
凍てついた瞳で、ルルーシュは亡骸を見下ろしていた。
「そう、俺はゼロ。ブリタニアに反逆し、世界を変える男…」
突然、天井の一部が崩れ落ちた。
瓦礫を散らせながら、地響きと共に紅いナイトメアフレームが降り立った。

蒼の月下と紅蓮弐式。

『ゼロの双璧』が立ち並ぶ。
2機のナイトメアフレームの間には、彼らの守るべき主君、『ゼロ』が佇んでいた。
ゼロはC.C.の肩をたたいて、横を悠然と通り過ぎる。
黒いマントを靡かせながら、仮面を被った主君は『魔神』の元へ足を進めた。
ゼロは静かに『魔神』に告げる。


『お待ちしておりました。ルルーシュ・ランペルージ様――――
いえ、反逆の皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア様』





538:POPPO
09/05/01 02:10:52 0Gfch1PG
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN01 「2人のゼロ」
投下終了です。
すいません。サルに引っかかってしまいました。
はじめて気付いたのですが、パソコンの時間表が15分ほど遅れていました。
(ニコ動と比較して、気付きました)
支援ありがとうございます。

トリップというのが良く分からないんですが、これって適当につけていいんですか?
あと、ジャンルなんですが、この回はシリアス、カップリングは無しでお願いします。
現在は更新停止されてるようなので、更新を再開されるときのために書いておきます。

誤字報告
528
あざや名→鮮やかな

後編5の始め。
後編4のプロローグがかぶってます。削除お願いします。


コメントを読み、文章を改善してみました。
少し手厳しかったですが、自分のSSを読み返して「幼稚なぁ・・・」と思っていたのは確かです。
皆さんの意見を参考にして、読みやすくて面白いSSを書ければそれだけでいいので、どんなコメントも大歓迎なのでどんどんお願いします。
それでは。


次回。
TURN02 「合衆国 日本」


539:創る名無しに見る名無し
09/05/01 03:11:46 Cxf6ZJLc
投下お疲れ様でした。
やっぱり面白いな。POPPOさんの長編は。読み応えがある。
メイガス、黒衣の女性はやはりあの人でしょうか。
ゼロを勤めてきた男にメイガスに、騎士団側の人的資源が潤沢だ。世界奪れるよ!
今回R2第一話に合流する形で収束しましたが
POPPOさんの大胆な切込みを見られるのを楽しみにしています。


また、以前受けていた指摘とかぶる部分も多いかと思いますが、
投下に関する二点について。

まず支援要請についてですが、支援を必要とするときは
事前の「投下予告」を行ってから(そのときに本投下開始時間を予告しておく)
本投下を開始するまで15分程度?時間を空けて
支援の名乗りを上げてくれる人を待った方が良いかと思います。
3分程度では、誰かが気付いたときには手遅れになることが多いかと。
無計画にさるに引っかかることは支援者を無為に、より長く拘束することになります。
加えて、「支援」は他の方が時間と手間をかけてしてくれる行為です。
してくれた方には感謝(の言葉)を忘れずに。

次点、トリップについて。
これは、例えば 「 POPPO#codegeass 」 でもなんでもいいのです。
「 名前+#(半角シャープ)+(半角英数で適当な文字列) 」
を名前欄に入力して書き込むと、「 POPPO◆tpZelq9PwM 」
というような # 以降が全く別の文字列に変換されたものが表示されます。
他人には元の文字列がなんだったのかを知ることができないので
名前欄に一定の文字列「トリップ」を表示することは本人の証明になり、
なりすましなどを防ぐことができるとされます。
POPPOさん自身で何か忘れずに済む思い入れのある言葉を(こっそり)決めて使ってください。

今一度、このスレ冒頭のテンプレ、特に>>2-3を熟読されますよう。
それでは

540:創る名無しに見る名無し
09/05/01 04:09:14 Cxf6ZJLc
あ 読み違えていた。そういうことか

541:創る名無しに見る名無し
09/05/01 08:49:04 VBkM5o8h
>>538
POPPO卿、GJでした!
黒衣の女性「魔術師」がゼロ?
そしてギアスが使える……そういうこと、なのか?
この時点でロロのギアスに検討が付いている、井上生存、おそらく進んでいる技術、女装している?ライ。
どういう展開となるのか……
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!


トリップは好きに決めて構いませんよ。
ただ、単純な数字(例:1234)等だとバレやすく成り済ます人が出てくる事があるため注意です。

542:創る名無しに見る名無し
09/05/01 22:33:12 LzTBYnhV
誰かあれからトーマス卿から何か聞いてる人いる?
連休前のウキウキもこれじゃ半減だ…
せめてなにか連絡がほしい

543:創る名無しに見る名無し
09/05/01 23:17:45 XVDcSI/2
もう諦めたほうがいいかもな

544:創る名無しに見る名無し
09/05/02 00:21:13 5Ahm4zQa
連休だからじゃね?
連絡無いのも投下ないのも。


545:創る名無しに見る名無し
09/05/02 08:55:32 wqeWHONo
あの管理人実は新型インフルエンザで死にかけだったりしてなw

546:創る名無しに見る名無し
09/05/02 09:38:39 dkkO3IYi
トーマス卿伝々言ってる人の自演が分かりやすすぎて困る

547:創る名無しに見る名無し
09/05/02 11:09:10 c+I2wq/J
POPPO卿、GJです。
最初にR2の一話を見た時に、話がどうつながっているかよく分からなかった。
今もそんな感じがちょっとあった。
続きを楽しみにしています。


548:創る名無しに見る名無し
09/05/02 11:33:34 it5Q8vYb
伝々って間違い方は斬新だなw

549:創る名無しに見る名無し
09/05/02 12:58:34 Be0DO3wb
伝々吹いたw

550:創る名無しに見る名無し
09/05/02 13:13:49 FRIF8Ry6
>>538
POPPO卿、GJでした!
井上さんが生きているのが何気に嬉しいw
そして、魔術師の正体とはやはり…

次回の投下を楽しみにお待ちしております!

551:厨房8号室 ◆t1YPe/1c5I
09/05/02 19:27:15 GbvAb5Hs
初めまして、ここでは初のレスとなる者です。宜しくお願いします。
これから5レス投下しようと思います。支援は必要ありません。

タイトル【ヘタレ男の片思い】序章 彼女は俺の天使だ!
ライ×カレン←オリキャラ という中編もののプロローグです。
そのオリキャラ、設定がかなり可哀相に作られていますが、同情は必要無いです(ぇ)。

*注意*

・オリキャラが主人公の、ライ×カレン←オリキャラの中編SSです。
・ライの出番は3章からなので、序章~2章では出てきません。
・一部、キャラ崩壊アリ。
 ライカレシーンはあまりありませんので、ギャグとして受けとってください。
・上記の通り、主人公は名前も可哀相なコンセプトから生まれています。
 同姓同名だった方は、すみません!


552:厨房8号室 ◆t1YPe/1c5I
09/05/02 19:27:59 GbvAb5Hs
からりと晴れ上がった青空の下、俺は口笛を吹きながら租界を歩いている。
仕事場へ行くための通勤さ。
俺は名誉ですらないイレヴンだから、車なんて高級品はここじゃ乗れないから徒歩で行くわけ。
それも、今まさにパソコンのモニターを見つめているお前等にとっちゃあ、ウハウハ天国であろう、休日の日曜日にだ。
そりゃあ、俺だって仕事が無けりゃあ、こんな租界をぶらぶら歩いたりせず、昼間まで眠りこけているところだ。
だが、用事が仕事だけなら、果たして口笛を吹くほど機嫌よく行くだろうか?
まずげんなりオーラ全開で行くよな、普通。
俺だってそうだろうし、別にその仕事に誇りを持っているわけでもない。
というか、サボりたい気は満々だ。
仕事が仕事だから、どうせならブリタニアにちょっとペコペコしながらも、とりあえず生きられる名誉ブリタニア人になった方がまだマシとか思うくらいに。(現在、俺はあるツテで居候だから他のイレヴンよりは裕福かもしれんが)
ん?そう思っているのなら、何でただのイレヴンに成り下がっているのかって?
フッ……お前等、本気で恋をしたことがあるか?
ほーら、そこ。「質問を質問で返して話そらそうとすんな」とか固いこと言ってんじゃねえ。
そういう奴に限って失恋経験があったりするもんだけどな、俺の経験上。
俺はお前等みてぇな負け犬とは違う!
只今、片思い中のごく健全で純情な青年なのさ!
……何ィ?「どう見ても30のおっさんだろ」だとおぉ!?
お前等、極度の遠視じゃねぇのか?俺はまだ22だっつーの!!
全くよぉ。お前等が話そらしてんじゃねえか。
機嫌悪ぃからさっきの質問は後で答えてやるよ。
まぁ、そんなわけで今、仕事場にいる。
……「どんなわけだ」と突っ込むのは作者に言ってくれ。
8時25分、俺はいつもこの時間に出勤というか、まぁ仕事服に着替えている。
余談だが、俺はこの制服、結構気に入ってるんだ。
黒一色ってのがまたカッコイイし、バイザーとか特にお気に入りだから、意味も無く着けるときもある。
い、いや、コスプレは好きじゃないぞ!
特撮ヒーローものは割りと見てるけど……
とにかく、今日はバイザーを着けなかった。
俺の人生で一番大事な日課に、遅れるわけにはいかなかったから。

553:創る名無しに見る名無し
09/05/02 20:08:50 scdZeMUa
…続きは?トラブルかなにかかな?

554:創る名無しに見る名無し
09/05/02 20:56:26 2Bderdij
なんなんだ・・・
これは・・・

555:創る名無しに見る名無し
09/05/02 21:17:25 SA8Lq3cY
ライが主人公じゃないって
なんだかな~

556:創る名無しに見る名無し
09/05/02 21:25:05 2Bderdij
厨房8号室さんへ。
はじめまして。
初の投下という事ですが、もしかしてリアルタイムで書いていらっしゃるのですか?
もし、それならば、他の住人や職人さんに大変迷惑になりますので完成してから、再度投下しなおしてください。
また、用事で投下できない場合は、そのむねを書き込むのがマナーだと思います。
なお、PCのトラブルの場合は、後日でもいいので理由を書きこまれるといいですよ。
そうしなければ、荒らしと思われてしまいますから。




557:創る名無しに見る名無し
09/05/02 21:25:23 Be0DO3wb
ライが主人公ならたとえライカレじゃなくてもいいけど
いくら設定がライカレでもライが主人公じゃないのはもうロスカラってかライSSじゃなくね?
しかもオリキャラって…せめて別キャラ視点ってのならまだわかるが

558:創る名無しに見る名無し
09/05/02 22:11:46 scdZeMUa
失礼します。
ただいま別の方から代理投下の依頼を受け付けました。
取り敢えず2215まではこのまま待機しますが、その時点で何も応答がない場合は投下を実行致します。
なお、支援の必要はなさそうです。

559:代理投下
09/05/02 22:18:17 scdZeMUa
時間になりましたので開始します

タイトルは「蒼の悪鬼 序」
その他のカプなどの指定は特に受けておりません

次レスより本文開始します

560:代理投下
09/05/02 22:19:56 scdZeMUa
蒼の悪鬼 序


「ねぇ、ライ。話したいことがあるの。聞いてもらえる?」
月下の整備をしていたら、後ろから声をかけられ.る。
誰だか判ったが、念のため振り返って確認してみる。声の主は思ったとおりカレンだった。
「ああ、整備しながらでいいなら構わないよ」
僕は、整備しかけた部分に視線を戻して話す。
本来なら整備するのを中断して話を聞くべきなのだろう。
だが、ここ最近は彼女を意識しすぎて、真正面から顔を見て話すのがとても恥ずかしいというか照れてしまう。
だから、こうやっての会話の方がまだ落ち着いて対処できると思ったからだった。
「うん。かまわない。その方が私も助かるから」
その言葉にいつもの元気は無い。
どうしたんだろう。
しかも、その方が助かるってどういう意味だ?
訳がわからずに聞き返そうと思ったが、どう聞いたらいいのかわからず、結局何も聞けなかった。
その無言を話を進めろという意味に取ってくれたのだろう。
カレンが言いにくそうにぽつり、ぽつりと喋りだす。
「あのさ、この東京決戦が終わったらなんだけど……」
僕の整備の手が止まる。
無意識的に、この話は大切なものだと認識したのかもしれない。
しばしの沈黙が、カレンの迷っている心を表しているかのようだった。
そして、彼女は決心したのだろう。
「……もし、よかったら……なんだけど……」
震える声が響く。
彼女の緊張が、僕にも伝わってくる。
「私と……付き合ってほしいの」
その言葉と同時に駆け出す音が響く。
僕がその言葉に一瞬我を忘れ、慌てて振り返ったときには、そこにはもうカレンの姿はなかった。

561:代理投下
09/05/02 22:20:44 scdZeMUa
結局、カレンに返事を返せないまま、東京決戦は始まった。
いつもなら僕とカレンはペアを組み戦うのだが、今回の戦いは味方の数が多いうえに寄せ集めという状態。
そのため、指揮系統を統一化する為に僕もカレンも別々の部隊を率いなければならなかった。
いつもは傍にいるはずの彼女がいないだけで、こんなにも不安になるとは思いもしなかったが、やるしかない。
そう自分に言い聞かせ、戦いに飛び込んだ。
激しい戦いが繰り広げられていった。
戦いは、序盤こそ黒の騎士団が優勢であったが、ゼロの戦線離脱により形勢は逆転されてしまう。
それでも勝利を信じ、奮戦する仲間達。
だが、僕の目の前で多くの仲間たちが倒れていく。
そして……。
「危ないっ、井上さんっ……」
僕の叫びも虚しく、爆参する井上さんの無頼。
ああ……なんで……。
また一つ、大切なものが消えていく。
僕の両腕からするりと抜け落ちるかのように。
なんでだっ。
なんでなんだよっ。
心にズキリと鋭い痛みが走り、僕の精神を切り刻んでいく。
その痛みが僕の正常な判断を狂わしていく。
畜生っ。
僕の……。
僕の大切な仲間たちをっ……。
そして、僕の中で何かが切れた。
「死ねよ……」
ぽっりと口から言葉が漏れる。
一度、漏れた言葉はより強い思いが篭ってまた漏れた。
「しねぇぇぇぇーーーーーーっ!!」
僕の心が殺意で満たされる。
目の前にいる敵が、いつしか人と認識できなくなったいく。
ただ、目の前の敵を殺して、壊して、潰していくことだけ。
そう、オレの大切なものを消し去っていく貴様らには、死んでいくのが相応しい。
ゾクゾクした刺激が背中を走り抜けていく。
それは、まるで本来の自分に戻ったかのような感覚だった。
記憶が戻ったのではない。
そう、身体が覚えている感覚といった方が正しいのかもしれない。
それがますます僕を変えていこうとする。
オレはそれに逆らわない。なぜなら、逆らう理由がないのだから。

562:代理投下
09/05/02 22:21:43 scdZeMUa
「ライっ、ライはどこっ……」
私は、必死になってライを探す。
戦場は混戦となって連絡がいきわたらない上に、指揮系統がズタズタにされてしまい、事実上、黒の騎士団は敗北状態にあった。
だから、私は必死になって彼を探す。なぜなら、今、見つけられなかったら二度と彼に会えないような気がしたから。
そして、運がいいのだろうか。ついに私は、ライを見つける。
だが、私は、見なければよかったと後悔することになった。
そこには、まさに悪鬼と化し、ブリタニア軍兵士を容赦なく惨殺する蒼い月下の姿があったからだ。
敵ナイトメアを破壊すると中の兵士を引きずり出して、握りつぶして殺していく。
吹き出す紅い液体が機体に降りかかる。
蒼い機体の大半が紅く濡れているのは、間違いなく……。
私は、嫌悪と吐き気を覚える。
呆然と立ち尽くす私の紅蓮を月下のセンサーがやっくりと捕らえる。
その姿は、まさしく鬼だった。
殺戮を楽しみ、血にまみれた一匹の悪鬼。
私の背中をゾクリとした寒気が走る。
あれは……だれよ……。
本当に……ライ?
あのやさしいライ……なの?
ガタガタと身体が震える。
その時だ。ピーッという警戒音が響く。
慌てて回避行動を取ろうとしたが、間に合わずにミサイルが当たって紅蓮の右腕が爆散して紅蓮が壁に叩きつけられる。
「くっ……」
私は痛みを抑えながら、ゆっくりと紅蓮を立ち上がらせる。
そして、私の目に入ったのは、私を攻撃したブリタニア兵士を殴りつけて殺す月下の姿。
その光景を見た瞬間、私にはライの狂ったような高笑いが聞こえたように感じた。
いや、もしかしたら本当に聞こえていたのかもしれない。
頭に響く、甲高い狂気の笑い声。
その恐ろしいまで歪んだ狂気に私は怯え、その場を逃げ出した。

東京決戦は結局、黒の騎士団の敗北に終わり、私は逃げ延びた仲間たちと共に潜伏する道を選んだ。
国外に脱出するという手もあったが、それは私の中では選択肢に無かった。
私の祖国はここなのだ。
国外に逃亡するなど逃げ出すように思えてしまい、それがとてつもなく嫌だった。
そして、ライとはあの時から会っていない。
なによりも生きているのか死んでいるのかさえもはっきりしていない状態なのだ。
ただ、判っている事は、捕虜になった中に彼の名前が無い事だけ。
たが、その結果、会えないことでほっとしている自分がいる。
会って何を話せばいいのだろう。
どんな目で彼を見たらいいのだろう。
何より、私は真正面から彼を見ることが出来るのだろうか。
それほどまでに、あの時の光景が私の精神を怯えさせ、話す言葉を消し去ってしまっていたのだから。

そして、半年後、私は風の噂でブリタニア軍の黒の騎士団残党狩りを襲う者がいることを聞くことになる。
その者は蒼いナイトメアフレイムを狩り、ブリタニア軍を皆殺しにしていくという。
普段の私なら、そんな噂を聞いても、にわかに信じなかっただろう。
そんなのは、しょせん噂なのだと。
だが、私は見たのだ。
あの狂気に満たされた血に濡れた蒼い月下を。
だから、私はそれが噂ではなく、真実だと確信した。
彼は、あれから生きのこってまだ戦っているのだと。

563:代理投下
09/05/02 22:23:50 scdZeMUa
以上、本文終了。

これにて投下終了です。皆様ありがとうございました。

564:創る名無しに見る名無し
09/05/02 22:39:11 rkJ1Au3a
>>563
代理投下、乙
職人さんには、誤字報告
>>561
>>爆参する井上さんの無頼。→爆散
>>562
>>月下のセンサーがやっくりと捕らえる。→ゆっくり
>>その者は蒼いナイトメアフレイムを狩り、→フレーム

565:創る名無しに見る名無し
09/05/02 22:45:04 rkJ1Au3a
→フレームを駆り、

566:創る名無しに見る名無し
09/05/02 22:51:26 FRIF8Ry6
>>563
職人さんGJでした!
代理投下の方も乙です!

567:創る名無しに見る名無し
09/05/02 23:06:31 rkJ1Au3a
リアルタイムで読む事は滅多になかったんで、誤字報告を先にさせてもらいました。

タイトルに「序」が、あるって事はシリーズもの?!
自分の事を「オレ」と呼ぶライ・・・
「狂王」と区別して、「悪鬼」ならではの呼び方という事でしょうか?
捻りがきいてます。
ダークなライにドキドキ♪ GJでした~

568: ◆B.jUaYJTw6
09/05/03 00:33:26 8vS8LF6Q
騎士団→解放戦線→出戻りルートでブラックリベリオン発生で、
R2開始前くらいの設定でライと卜部とC.C.(カレン留守)話
カプは特に無し
5レスくらいです

569: ◆Tos7HmkkJs
09/05/03 00:35:53 8vS8LF6Q
 ブラックリベリオンの幕切れは、それはもうひどいものだった。
 指揮官のゼロはいきなりKMFごと行方をくらますし、当然同乗者のC.C.も然り、
扇副指令は負傷で、戦力の要であるところの紅蓮まで消えた。
 あれで状況をどうにかできる人間がいたとしたら、そいつはもう人間ではなく化け物かなにかだろう。
 ともあれ、僕らは大惨敗した。
 だから混乱の果てに再会した仲間がいくらか情緒不安定になっていたとしても、それは仕方のないことである、はずだ。
 はずだったら、はずである。


 そんなフォローに思考がまわっていたせいか、ライはしばらく何のリアクションを取ることができなかった。
 で、あるからして、ぐぐぐと押しのけながらじろりと男を睨みあげたのもしばしの間の後のことである。
「卜部中尉、苦しいです」
 かつて黒の騎士団から離れていた時期に行動を共にした解放戦線の卜部は、ライよりもはるかに長身の男だ。
 その身長の割には痩躯といっていい体型ではあるが、それでも抱きつかれたら鬱陶しい体躯の持ち主である。
「あ、すまん、つい」
 ライから離れ、卜部がぼりぼりと頭をかきつつ詫びの言葉を口にした。
「まさか、少尉にまた会えるとは思っていなくて」
 卜部が浮かべた笑いには、わずかな苦味を含まれている。
 無理もないとライもまた苦笑いで応じた。

570: ◆Tos7HmkkJs
09/05/03 00:37:50 8vS8LF6Q
 戦線の崩壊後、ライも潜伏を余儀無くされていた。元々の容貌がブリタニア人よりであるとはいえ、
そもそもが得体の知れない施設から逃げ出した身である以上、ブリタニアの目を避ける必要があった。
 そんな緊張だらけの中で、ようやく黒の騎士団の残党と合流できたもののあの動乱から半年は過ぎていたのだ。
 卜部らにしてみれば、とっくに死んだものと思っていて当然の話だろう。

 だから顔を見るなり抱きつかれたのもまあ許容の範囲といえば許容範囲内といえた。呼吸を妨げられない限り、ではあるが。
「少尉が生きていてくれて本当に助かった」
 ライに部屋にあがるよう促しながら、卜部は再びそんなことを口にする。
 よく見れば涙ぐんでさえいるその姿に、くすぐったさすら覚えながらライは室内をちらりと一瞥した。
 ブリタニアでは一般的な間取りのそこは、荒んだ生活を強いられているだろう割には片付いているように見える。
 さらに奥を覗き込めば、馴染みの顔がベッドに寝転がっている。
「なんだ、お前生きていたのか」
 寝転がったまま顔を上げてそんなことを言ったのは、C.C.だ。
「紅月もここで暮らしてるんだが、ちょっと今は用事で出ててな」
 その彼女にはまったく目もくれずに卜部はずかずかと台所まで大股に進むと、苦笑いでそう口にした。
 C.C.と卜部の態度に、ライはこの調子だとゼロもまだどこかで生きているのだろうという確信を得た気がした。
 藤堂らが囚われの身でゼロの処刑の報道(素性さえ明らかにしなかったそれは、
ライ自身も疑わしいとしか思えなかった)もあった割には、どこか奇妙な余裕があるように見えたのだ。
「卜部中尉、あの」
「多分、俺は少尉がいなかったら限界だった」
 ライの言葉を遮るように、卜部がぽつりと呟きを漏らした。
 片手にミトンをつけ中華なべを火にかける姿には、微塵の隙もない。
 見れば調理の最中だったのか、台所には整然と調理具やスパイス、それに具材が用意されていた。
 そこから献立を推測しながらも、弱気とすら取れる卜部の言葉をどうにか紛らわそうとライはかぶりをふる。
「そんな大げさな、やめてくださいよ卜部中尉」

571: ◆Tos7HmkkJs
09/05/03 00:39:18 8vS8LF6Q
 鍋からは目を離さず、ライの態度にむしろ卜部は語気を強めた。
「いや、大げさなんかじゃないぞ、断じて大げさなんかであるものか」
 じゃっという音とともに、具材が焦げ目をつける程度にいためられていく。
 軽く炒めるやスープを加えたその手順に、どうやら炒め煮の一種らしいととライは悟る。
 その視線の先で、卜部はただ鍋だけを親の敵のように睨みながらたまりかねたような顔で口を開いた。
「俺だけじゃもう、紅月もあのクソ女の面倒は無理だ!!」
「はい?」
 ついに鍋から目を離し、卜部がライに顔を向ける。その勢いたるや、ぐりっと音がしそうなほどだった。
「いいか少尉、ひどいんだぞあいつら!?」
「え、あの」
 クソ女って、まさかC.C.のことか、聞こえていようがお構いなしかこの人。
 返す言葉を失ったライに、卜部はさらにまくし立てる。
「飯はカレー以外ろくに作れねえわ、掃除はしねえわ、下着は平気で脱ぎ散らかすわ、
人のことおっさんだの味オンチだの言うわ、めちゃくちゃなんてもんじゃねえぞ!!」
 まくしたてながらも、鍋から気がそれているでもなく火加減は調節しているあたり、さすが四聖剣と感心すべきなのか。
 ライの思考はさらに混乱するばかりだ。
「あの、僕はですね」
「おまけになんだ、せっかく人が見るに見かねて面倒みてやりゃあ、『和食よりピザがいい』だの、
『部屋だけじゃなくて風呂の掃除も』だの『ブラは手洗いしろ』だの、
俺はオカンか?あいつらのオカンとボクと時々オトンなのか!?」
 限界って、限界ってそういう。
「半年間中佐達の安否で気が気じゃなくてとかそういうシリアスな方向を期待してた僕の気持ちを何だと思ってるんですか、この虫食い野郎」
「ああ俺は確かにあいつらにちょっとはいい顔したいとか思ってたよ、思ってたさ、でもな、そこでこう、あるだろ?一言『ありがとうございます(はぁと)』とか『キャー(はぁと)卜部さん男前ー抱いてー』とか……今少尉ひどいこと言ったよな」
 ライの冷めた視線に、卜部もまたいささか落ち着きをとりもどしていた。

572:創る名無しに見る名無し
09/05/03 01:04:13 GFlkr5F+
支援…?

573:代理投下
09/05/03 01:05:18 m44OS2qV
ご本人が規制に引っ掛かったらしいので、もう少々お待ち下さい。

574:代理投下
09/05/03 01:09:18 m44OS2qV
「言っても差し支えないくらい、今の卜部中尉はうんこです、がっかりです」
 容赦のない言葉を受け肩をおとした卜部に、ライはそれでも厳しい目を向ける。
 あの動乱後だからとフォローにまわる思考をしていた自分が、バカみたいじゃないかという腹立ちも
混じっていたのは仕方のないことだろうという思いも込めて。
「……そんなにか」
「はい」
 ふ、とため息を漏らし、卜部は再び黙々と調理に専念した。
 横で改めて眺めていると、手際は実にいい。解放戦線時代よりも手馴れている感がある。
 どうもこの半年、本当に彼女らの面倒を見っぱなしだったらしいことが窺えた。
「あ、少尉、みりん取ってくれ」
「はい、どうぞ」
 目分量でみりんを入れる手つきも危ういところはまったくない。
 しばらくして、卜部は鍋の火を弱め大きく息をついた。
「ゼロはすごいな、俺は今本気であいつを尊敬してるよ」
 うっかり頷きそうになりながら、ライは前後の文脈を思い返し踏みとどまった。
「……ええまあその、異論はないと思いたいのは山々なんですが、ものすごく同意したくないです」
 仮面男のおさんどん姿というシュール極まりないものを連想しつつ首をふったライに、卜部が不満げに、
いやすげえよゼロなどとぼやく。
 だからその、『すごい』のポイントがどう考えてもおかしいでしょうとライが言い募ろうとした時、ひょこっとC.C.が顔をのぞかせた。

575:代理投下
09/05/03 01:10:06 m44OS2qV
「おい、また和食か。いいかげん趣旨換えしたらどうだ、こう、デュラムセモリナとかオリーブオイルとかそういったワードと縁のあるジャンルにだな」
 ようするに、ピザ、である。
 彼女の要求するものは、どうやら相変わらずのようだ。
「うるせえ食いたきゃ勝手にデブ食ってろピザ」
「卜部さん、一応あれでも女の子なんですから」
 即座に毒づいた卜部とそれを諌めるライをじろりとひと睨みすると、C.C.はふたたび寝室へと引き上げた。
 引き際が、良すぎる。
 ライは魔女殿のいやにあっさりした態度に不安を覚えたものの、調理の手伝いを促されそれをひとまず心の棚に押しやった。
 ついでにその他諸々の不安や疑問もすべて押しやり、手伝いに回ることにした。
 今は目の前のことに専念した方が、いくらか健康的に思えたからである。



 無限の時間を生きる魔女は、己にとって小僧といって良い歳の二人を壁越しに睨む。
 卜部は言うまでもなく、『一応あれでも』呼ばわりのライもかなり失礼な話である。
「……あいつじゃなくて、お前らにコード押し付けてやろうか。楽しいぞーエンドレス火あぶり」
 そんな物騒な呟きは、壁向こうで夕食の支度に追われる野郎二人の耳に届くことはない。

 男どもは無駄口を叩かず、おとなしく自分のために尽くせばいいのである。
 それが魔女のモットーであった。

<おしまい>

576:代理投下
09/05/03 01:11:54 m44OS2qV
以上、代理投下終了です。失礼します。

577:創る名無しに見る名無し
09/05/03 01:16:24 8R4WF2Qm
クソワロタwww

578:創る名無しに見る名無し
09/05/03 01:21:25 CdJzE9xI
CCの傍若無人ぶりにGJを言わざるをえない

579:創る名無しに見る名無し
09/05/03 02:08:46 5f1EIuGe
苦労は人を変えるのだなあ。
CCの引き際に年の功を感じます

580:創る名無しに見る名無し
09/05/03 03:09:45 7pOZyHPC
職人さん、投下の方々、乙です。

>>560-562
何かひやりとする怖さがあります。
生きているなら、なぜライは合流しないのか?
亡霊や都市伝説のようだ。悪鬼という言葉がピタリと。

>>569-575
さくっと読めて面白いー!
ブラは手洗いですかそうですか。
軽いノリのお話が久しぶりな気がして新鮮でした。

581:エノコロ草 ◆svacoLr1WE
09/05/03 03:34:00 5f1EIuGe
画像掲示板投下報告です。よろしければ >>4 よりどうぞ。

・・・・・・・
「公式ラウンズ+α」
ナイトオブラウンズを並べました。
小さいのを作り始めたら止まらなくなったので
ついでにカレンも加えて総勢十名でキリ良く。
・・・・・・・

・・・・・・・
いつも投下報告でスレストかけてしまい申し訳ありません。
また、画像掲示板を連続で埋めてしまって申し訳ありません。
場違いだとは自覚しつつ、ロスカラやそのSSの絵を描くのは自分なりのラブコールなのだと思い定め、
これからも時々お邪魔させていただければ幸せに思います。 それでは

582:創る名無しに見る名無し
09/05/03 08:24:15 A74DKfPx
>>563
代理投下乙、そしてGJでした!
ライが黒すぎる……真ゲッ○ーのパイロットレヴェルだ……
人の命を大事にしないやつめ、死ねぇ! よりヤバいぜアニキ!
続く……のか? どうなるのか楽しみです。

>>576
代理投下乙、そしてGJを!
卜部www 落ち着け、お前は錯乱しているwww
そしてライもさり気に酷いwww 愚痴くらい聞いてやれw
エンドレス火あぶり、物凄いレベルのサウナ感覚でんなこと言うなよwww


貴公らの次の投下を全力を挙げてお待ちしております!

583:創る名無しに見る名無し
09/05/03 09:29:26 S8zzGsYi
>>563
>>576
GJ!!
このスレやっぱり好きだと再認識しましたよwww

584:自爆と誤爆
09/05/03 15:02:34 hiy/2m0H
初めましてです。
今までの皆さんの作品を読んで突然出てきた電波をSSにしてしまいました。
反省はしてません。
17:00に投稿するのでよろしくお願いします。

585:創る名無しに見る名無し
09/05/03 17:07:23 S8zzGsYi
一応、支援

586:自爆と誤爆
09/05/03 17:21:55 hiy/2m0H
時間通りに投下できずにすみませんでした。
一応、初期(R2じゃない)で展開的にはかなり最初ぐらいの部分を書きました。
タイトルは【彼の日常】

587:自爆と誤爆
09/05/03 17:23:25 hiy/2m0H
とてとてとて…

「彼」は今日もお気に入りの場所を探して歩きます。

とてとてとて…

しかしお気に入りの場所は中々見つかりません。

「あら?」

赤毛の少女が「彼」を見つけて寄ってきました。

「こんにちわ。どこかにお散歩?」

「彼」は軽く返事をします。

「フフ…」

少女は軽く笑った後、彼を少し撫でて別れました。

とてとてとて…

しかしお気に入りの場所は中々見つかりません。

すると
「ルルー!今日は授業と生徒会!2つともサボらない様にね!」
「いや、その、いつも済まないとは思ってるんだ。だが、今日もちょっとだな…ん?」

オレンジ色の髪の少女と黒髪の青年が何か揉めていますが「彼」を見てピタッと止まりました。

「あれ?どうしてここにいるの?スザク君が探してたよ?」
「ちょうどよかった!シャーリーはコイツを頼む!俺はスザクを呼んでくるから!」
「あ、ちょっとルル!あーもー!また逃げてー!もう…。ホラ、おいでって…あれ?」

黒髪の青年が去った時には既に「彼」は少女の場を離れていました。


588:自爆と誤爆
09/05/03 17:25:43 hiy/2m0H
とてとてとて…

そろそろ眠くなってきました。
お気に入りの場所は何処へやら…

「あれー?どうしたのー?こんなとこで?」
「クラブハウスにいなきゃ、駄目ですよ?」

今度は金髪の少女と黒髪の眼鏡を掛けた少女が話しかけてきました。

「ホラ。こっちにおいで…」

金髪の少女が抱こうと腕を伸ばしてきましたがそうはいきません。
「彼」は外で昼寝をしたいのです。
ピョン、と彼女の腕を飛び越えました。

「アララ…。素っ気無いわねぇ…」
「じゃあ今度は私が…チッチッチッ…」

黒髪の少女が「彼」に不思議な音を出しながら手招きしてきます。
本来なら「なんだろう?」と鼻で嗅いを確かめたい所なのですが、今はお気に入りの場所でのんびりお昼寝をしたいのです。
我慢してその場を去りました。

「ごめん。ミレイちゃん。駄目だったみたい…」
「今日はご機嫌斜めなのかしら?」

金髪の少女がそんな事をいったけどそんな事はありません。
「彼」は今日もご機嫌です。

とてとてとて…

しかし、これだけ探しても見つかりません。もう適当な場所で眠ろうかと考えた頃でした。

「あれ?アーサーじゃん」

藍色の髪の青年が話しかけてきました。
「彼」の理解者の1人です。

「ライならあっちで寝てるぜ。って…アララ」

「彼」が少年の指を指した方向にまっしぐらに行ってしまったので少年は呆れ返ってます。

「雄の猫まで落としちまったよアイツ…」

「彼」はようやくお気に入りの場所に出会いました。
お気に入りの場所は今、ちょうど良く芝生で眠っています。
お日様もまだ高い位置にあり、気持ちよさそうです。
なので「彼」はお気に入りの場所でのんびり寝る事にしました。

589:自爆と誤爆
09/05/03 17:28:46 hiy/2m0H
ドスッ
いきなり腹に重い物が乗っかってきた。
「うっ……またか」
首だけ起こして腹の辺りを見るとアーサーが気持ちよさそうにスースーと鼻を鳴らして寝ている。
最近、僕が昼寝をしているといつもこうだ。
どこで寝ていてもアーサーがやってきて僕の上で昼寝するようになった。
別にそこまで重い奴じゃないので乗られても問題は無いのだが、何しろいきなり乗ってくるものだから夢の世界からいきなり現実の世界に戻されてしまう。
まぁ、そのおかげで僕も昼休みに寝過ごす事はないんだけど。
「うーん…そんなに気持ちよく寝られると起こしにくいなぁ…」
「あ、いた!アーサー!」
スザクがルルーシュと一緒に走ってきていた。
ルルーシュは少しゼェゼェ言ってるけど。
「スザクか。ちょうど良かった。もうすぐで昼休みが終わるからアーサーをどうにかしてくれ」
「分かった。もう…アーサー。ほら、こっちに…イッツ!」
「うわ!痛っ!」
スザクがアーサーを抱こうとした時、アーサーに思いっきり噛み付いた。
僕は噛み付かれていないがアーサーの余りの噛み付きっぷりについ声をあげてしまう。
「アーサー…」
スザクが悲しい声でアーサーに語りかける。
だが、アーサーはスースーと寝息をまた立て始めた。
「駄目だよ。アーサー。我侭いっちゃ。ホラ…」
「馬鹿!やめろ!そんな痛々しい噛み跡を見せられる人の気持ちにもなれ!ここは俺が…」
「ルルーシュ、アーサーをもって生徒会室までいけるの?」
「どんだけ虚弱体質だ俺は!猫一匹ぐらいで骨が折れると思ってないだろうな!?」
「違うの?」
「なっ…!ス、スザァァァァク!」
2人の漫才を見ながら僕は上半身を軽く起こす。
「ニャー…」
アーサーが少し不満気な声を上げたが無視してアーサーを抱いた。
「ほら、スザク。これならアーサーも噛まないだろ?」
そういってスザクにアーサーを抱いて渡す。
「あ、ありがとう。それとゴメンね。アーサーが迷惑を掛けちゃって」
「これぐらいなら平気さ」
スザクが笑顔で生徒会室に行こうとしたが、ルルーシュがスザクの肩を掴んだ。
「待て!スザク!アーサーは俺に任せろ…!そこまで馬鹿にされては引き下がれん!俺にもプライドはある!」
「え?いいけど…骨折しても知らないよルルーシュ?」
「折るかぁぁぁぁ!!」
2人が立ち去った後、空を見上げる。
空は今日も綺麗な青空だ。

590:自爆と誤爆
09/05/03 17:29:53 hiy/2m0H
おまけ
「フハハ…ハハ!どう…だ!スザク…!猫一匹を…生徒会室に運ぶくらいで…!この!俺…が!骨を折るはずないだろう!」
「う、うん。だけどルルーシュ…それはもうアーサーが猫じゃなくて重りになっちゃってるみたいだけど…」
「いやかましぃ!とりあえず俺は耐え抜いたぞ!後はこの扉を開ければ生徒会…」
ギィィ…
「あら、ルル。お帰り♪」
「シャ、シャーリー!?なぜここに!?ハッ…!まさかスザク!?」
「ゴメンね。シャーリーは本当にルルーシュを心配しているようだったからさ…」
「クッ!馬鹿な!この俺が謀られるなど!」
「さ、今日はちゃんと授業と生徒会、まとめて出るのよ?私がちゃんとマークします!
 それとコレ。溜まっている書類ね♪今日中に皆、仕上げましょ?」
「待て!シャーリー!スザク!俺は今日も大事な用が…!」
「大事な用って私以上に大事な用?」
「そこまで言うなら話してもらわないと納得できないよ?」
「く…おのれえええええ!!」

その夜、黒の騎士団でゼロが急用により不在となった。

591:自爆と誤爆
09/05/03 17:31:36 hiy/2m0H
以上です。
…投下し終えて読み返して自分が馬鹿な事をした事に気づきましたorz
あまりに酷い

592:創る名無しに見る名無し
09/05/03 17:47:33 WbnDXWkl
>>591

ようこそ…ロスカラの世界へ



アーサー可愛いよアーサー
GJ!

593:創る名無しに見る名無し
09/05/03 17:51:15 A74DKfPx
>>591
自爆と誤爆卿、GJでした!
猫はいいねぇ……猫はエジプトの生み出した癒しの極みだよ。
読んで顔がほころぶ、癒し系なSS、あぁ、いい……
あなたに感謝を……!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!

594:創る名無しに見る名無し
09/05/03 19:28:24 u61Oghil
>>591
乙でした!
何処が酷いのでしょう?
動物さえも落としたライw
ホンワカしていて和みました
そして最後のオチw
ルルーシュはオチ要員ってのは伝統ですねw

次回の投下をお待ちしてます

595:創る名無しに見る名無し
09/05/03 23:03:12 /XnFzDdh
2315より代理投下をいたします。
支援は必要ありません。

596:創る名無しに見る名無し
09/05/03 23:05:43 m44OS2qV
よっ待ってました!

597:代理投下@貧弱な軍馬
09/05/03 23:15:13 /XnFzDdh
随分お待たせしました。それでは投下させていただきます。
題名は『遠い貴方へ』でお願いします~


598:代理投下@貧弱な軍馬
09/05/03 23:15:58 /XnFzDdh
ライと名乗った青年に対して、私 セシル・クルーミーは最初にどんな感情を覚えただろうか?
IDも持たない身元不明な記憶喪失者でありながら、とても人が出来ていると思った。
ロイドさんが重点を置く身体能力とかではなく、人に接する礼儀や心配り。
だが皇族のような芯の強さに隠されて、記憶を持たないゆえの危うさを持っていたのだ。
故に彼の事がたびたび脳裏を掠めるのはいわゆる母性本能であると思っていた。


「何時頃からかしら?」

この胸のトキメキが母性によるものではなく、愛と呼ばれる感情だと気がついたのは……
行政特区の大混乱の中、命を落とされたユーフェミア皇女殿下の冷たくなった手を握ること一分ほど。
伏せていた瞼が見開かれ、隣で崩れていたスザク君を見るでもなく、ライ君は静かに呟いた。

「逝くぞ」

それだけの言葉。それだけなのに駆け巡るのは絶対零度の悪寒。
女の勘だった。『ライ君を行かせてはダメだ!』と。
アヴァロンの内部構造の把握はライ君よりも私の方が上だったから、格納庫へと先回りした。

「行ってはいけません! これは上官として命令です!!」

クラブのキーを引き抜くだけでは安心できず、パスワードを変えてロックまでした。
これでもう出撃する事は出来ない。歪んだ安堵を感じているはずなのに、体がカタカタと震え出す。
冷たい視線……ツンと突き出された指は私のオデコを僅かに掠り……


「万全な状態で私を見送れ、セシル・クルーミー」

赤い鳥のような紋様が羽ばたいたのを覚えている。

「イエス、ユア・マジャスティ」

そう答えたことは覚えていない。


「あれ?」

次に意識を取り戻したのはKMF二騎分のスペースが空いた格納庫の中だった。
彼らの乗騎はそこには無くて、ライ君たちの姿もそこには無い。慌てて制服の内ポケットに手を突っ込んだ。

「ない……」

絶対に渡すまいと決めていたクラブの機動キーもない。
意味が解らずに右往左往していると、何故か頭にタンコブを作ったロイドさんが現れた。
しかもキャラじゃない感じに怒っている。

「もう! なんであの二人を行かせたのさ、セシル君!!」

「え? 私はそんな……」

記憶には無い。けれどロイドさんがワザワザ嘘を吐くような人でもない。
だからきっと……


599:代理投下@貧弱な軍馬
09/05/03 23:16:46 /XnFzDdh
「君以外に居ないでしょ! 止めようとした僕まで殴り倒してさ!? みて、この瘤!!」

私が……行かせた……

「もう! どうしてくれるのぉ~あの二人の様子、見てなかった?
 アレはさぁ……目的を失っているのに気付かないで突っ走って……嬉々として死を選んじゃう目だよ?」

解っていた。どうしてライ君を行かせたくなかったのか?
実に簡単な事だ。自分の前から遠くへ行ってしまうと、感じさせたからに他ならない。
そのためにキーを引き抜いてロックまでしたのだ。なのにどうして彼はここに居ないの?

「あぁ……なんで……」

膝から力が抜けていくのが解る。合金製の冷たい床を掌で感じて……

「セシル君? ちょっ! 衛生兵~衛生兵ってば!!」

意識を手放した。





結論だけを見れば、ライ君は死ぬなんて事は無かった。
スザク君と一緒に無事に帰ってきてくれたのである。でも遠くの存在になったのは間違いない。
二人はブラックリベリオンで武勲を上げ、皇帝陛下直属の剣 ブリタニア最強の騎士 ナイトオブラウンズになったのだ。

「似合わないよね? スザク」

「ライ、君はボクよりもずっとそれらしいと思うよ」

ラウンズのみが許される金縁のマントを身に着けて笑いあうライ君とスザク君。
今まで何度も見てきたような微笑ましい光景だったけど、何だかその色は全く違うモノになってしまったような気がする。


「あれっきり二人も会ってないみたいだし……」

スザク君と私達 特派の関係は少し変化したけど途絶える事は無かった。
ただ私たちの名前がナイトオブセブン スザク君専属のメカニックチーム キャメロットと言う名前に変わったくらいだ。

「でもライ君は遠くに行っちゃった……」

ライ君とスザク君には違う点が多い。

例えばラウンズ入りを決定した武勲。スザク君はゼロを捕らえるという実に単発的なもの。
しかしライ君は錯綜した指揮系統下、自ら指揮を取ってゼロ不在の黒の騎士団を完膚なきまでに叩き潰した。
その人種も大きな違い。ラウンズになったとは言え、支配地出身のナンバーズ。
片や限りなく本物のIDを持ち、ブリタニアが新大陸に居を移す前から連なる古き血筋を持つ者。

600:代理投下@貧弱な軍馬
09/05/03 23:17:46 /XnFzDdh
どちらが神聖ブリタニア帝国を動かす貴族と言う人々に好印象を与えるか? そんな事は直ぐに解った。
スザク君のサポートを私達が引き続き行うのは、彼が本来ナイトオブラウンズにとって必要不可欠な支援を受けられないからである。
私の淡い希望としてはライ君のバックアップも行いたかった訳だけど……もう側にいない。
あっと言う間に貴族の間での株を上げた彼は幾つもの大貴族がスポンサーとなり、瞬く間に自分だけのチームを作ってしまったのだ。





夜も更けてきて閑散とした仕事場には私だけが残っている。
遅い夕食にはエリア11で覚えたライスボールをパクパクしながら、ニュース番組をちらりと横目で見た。
今夜のトップニュースは……


『ナイトオブイレブン、エリア6の反乱を鎮圧』

お米が喉に詰まりそうになった。テレビ画面には若い女性のアナウンサーと老年の知識人が映り、会話を始める。

「本日のトップニュースですが、三ヶ月前にエリア6で発生した麻薬組織絡みの混乱が終結しました。
 鎮圧の功労者は最近この番組でも御馴染みのこの方! ライ・ランペルージ卿です」

ウキウキとした調子、仕事以外の楽しみを滲ませてフリップを取り出す女性アナウンサー。
フリップにライ君の顔写真の他に彼のこれまでの経歴が載せられている。

『天涯孤独の身に……』
『エリア11で学生生活をしていたが特派にスカウト』
『日本解放戦線殲滅作戦に参加し、危機に陥ったコーネリア殿下を救出』
『キュウシュウ戦役にてナイトオブセブンと共に上陸の突破口を開く』
『ブラックリベリオンでは臨時の指揮を取り、黒の騎士団を壊滅へと追い詰める』
『その成果を認められ、ナイトオブラウンズへ。ナイトオブイレブンを拝命』

ここまでは私も良く知っている。だがそこから先は……ライ君が一人で積み上げた戦果。
その項目が一つ増えるたびに、私が知らない彼がドンドン増えていく。


「いや~一ヶ月前に新たなエリア成立の功績をお伝えしたばかりなのに、こんなに早くライ卿の武勲が増えるとは思いませんでした。
 まずは反乱の概要を簡単に説明いたします。まず……」

簡単に要約すれば反乱の原因となったのは、エリア農村部に蔓延っていたケシ栽培と麻薬密売組織の黒いネットワーク。
自分のエリアのみならず、本国すら侵す麻薬の根源を断つのは武力的に言えば簡単だ。
しかし軍部すら犯す麻薬絡みの裏金が蔓延しエリア6は混乱を極め、総督ですら容易く改善を実現できない状況。
それを武力の面でも、行政の面でも瞬く間に改善してしまったのがライ君だったらしい。

「この難解で面倒な事態を瞬く間に打開してしまったわけです。どう思われますか? アドルフさん」

ここで初めて話の流れが老年の知識人へと移る。今まで微動だにしなかった老人の口から零れるのは生きてきた時代の長さを感じさせる重い言葉。

601:代理投下@貧弱な軍馬
09/05/03 23:18:34 /XnFzDdh
「軍人の功績として目を奪われがちになるのは、どうしても『敵騎を何騎撃破した』とか『一人で戦線を破った』などの戦果です。
 しかし今回に限らずですが、ライ卿の評価されるべき点は別に在ります」

「と、いうと?」

「彼は反乱鎮圧後の円滑なエリア運営、つまり政治の面での問題改善も考えて、軍事行動を行っている点です。
 今回の点で言えば森林山岳地帯でゲリラ戦を展開する敵に対し、絨毯爆撃によるあぶり出しと言うセオリーを選択しませんでした。
 爆撃は簡単な手法ですが、一帯の農民の生活基盤を奪う事になるからです」

その言葉に女性アナウンサーは首を傾げる。ブリタニアでは味方の犠牲すら戦果に対して軽く見られるものだ。
しかも今回問題に成るのは非支配層のこと。何故そんな事が話題に上ったのか首を傾げていると知識人は話を続けた。

「確かに一時的な混乱の鎮圧だけを考えれば、そのような考えは無用な産物でしょう。
 しかし元を辿れば混乱の元凶は総督府の目が行き届かなかった点であり、そこを利用して築かれた裏のネットワークなのです。
 もしここで再びその点を蔑ろにした場合、今回と同様の混乱が起こるでしょう」

その言葉に女性アナウンサーは納得行ったように頷き、慌てて次のフリップを取り出す。

「そのような点とリンクする事になりますが、今回ライ卿はエリア運営についても進言をしており、その内容が物議を呼んでいます」

アナウンサーが読み上げるフリップに並ぶ幾つもの項目。
つまりライ君がした助言の内容に目を通せば、彼の本質は変わっていないと思える。
並ぶ内容はエリア6でのナンバーズに対す待遇改善制作……きっとライ君もユーフェミア様の目標を追ってるんだ……

「待遇を改善する事により生産性を向上させると同時に、決起が起こるような事態を避ける為ことを目的としているのでしょう。
 しかしその内容は前例が無い革新的で野心的なものです。今後エリア6、本国の文官・武官を交えた論争が考えられますね」

しかしライ君がやることなのだ。きっと何とかしてしまうだろう。
だって彼はきっと……

「こうして見てみますと、ライ卿は他のどんなナイトオブラウンズとも違うという印象を受けます。
 例えば同じ時期に加盟したナイトオブセブン、人種こそ違えど彼は『騎士』と呼ぶに相応しい人物です。
 力があり、忠誠心がある。けれどライ卿はそれに加え……考えている。深く、深く……」

「あの……アドルフさん?」

どこか自分の思考に酔ってしまったかのように呟くアドルフに話しかける女性アナウンサー。
不意に老人が吐き出した言葉は……放送事故の元。


「ライ卿……彼は王だ」

602:代理投下@貧弱な軍馬
09/05/03 23:19:15 /XnFzDdh
画面が一瞬ブラックアウトし、『しばらくお待ち下さい』の表示。
シュルル皇帝陛下を唯一王とするブリタニアではしていけない発言だった。下手をすれば不敬罪で重責を問われるかも知れない。
けれど私は心臓が違った方向で飛び跳ねた。他人にすら、私以外の人間すら、彼をそう言った存在だと認識している。
何処にでもいる技術士官とは……遠すぎる。


「ライ君……会いたいな」


仕事を放り出して、酔いたい気分になった。

603:代理投下@貧弱な軍馬
09/05/03 23:20:06 /XnFzDdh
以上です……なにこれ暗い!?(自分で書いておいて
しかも中途半端だ~もしリアルとスレの皆さんが許してくれれば、続編も書きたいと思います。


以上です。

604:創る名無しに見る名無し
09/05/03 23:21:30 A74DKfPx
>>603
貧弱な軍馬卿、GJでした!
>逝くぞ この一言は不吉すぎる……!
なんというか、小さな喜びと大きな切なさが一緒くたになった気持ちが伝わってきそうですね。
コメンテーターの老人が思わず紡ぎ出してしまった言葉はまさしく真理。
続きも気になりますが、これはこれで一つ纏まっていて……難しい。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!

605:創る名無しに見る名無し
09/05/03 23:23:46 pMUIQGL0
リアルはともかく、許さないわけがない!>続編
いやむしろ書いてください!お願いします!

606:創る名無しに見る名無し
09/05/03 23:34:48 u61Oghil
面白かったです
ライは殆ど話していないのに、他者の視点から語るだけでライが十分魅力的に映る
カッコイイなぁ

607:創る名無しに見る名無し
09/05/04 09:12:19 D5plgL6x
ライ君、カッコイイー
貧弱な軍馬卿が続きを考えているのであればぜひお願いします。
私たちは全力で応援します。

608:羽付き羊
09/05/04 10:16:14 Oe+d90xq
皆さん初めまして
羽付き羊と申します。
今回は構想という名の妄想を形にした長編ができましたので
投稿しようと思います。
とりあえず予告のみ15分後投稿します。

609:羽付き羊
09/05/04 10:29:40 Oe+d90xq
では投下します。


610:羽付き羊
09/05/04 10:31:11 Oe+d90xq
予告篇
彼は失った すべてを擲ってでも護りたかった人を、彼の生きる灯を…
彼は眠りについた 生きる意味を失ってしまったから 生きて欲しいと願ったものを…

彼は失った 護ると決めた人達の為に、明るい光に包まれ『自分』という存在すべてを…
彼は眠りについた 自分の意思と無関係に、逆らえぬ力によって…

しかし彼らは目覚めてしまった。
同じ時代、同じ場所、同じ者の手によって
そして彼らは違う方向に向かって歩き出す。
それぞれの友、仲間を得て、それぞれの敵を倒す為に…

「僕は、絶対に護る!もう…もう失うのは嫌なんだ!!!」

「戦場に立ったからには、力で証明するしかない…それが此処での唯一のルールだ。」

「「だから、負ける訳にはいかない!!!」」

加速する運命の歯車…
人は何を求めて戦うのか 何が理由で殺し合うのか
求めた先にあるものは?
それは求めなければわからない
人は愚かであり 賢明であるから…
同じ場所から始まった物語
それがどんな結末を迎えるのかは 神すら知らない。
『コードギアス LC ~反逆者達の願い~』
「護ると決めたんだ。命に代えても…」
「男が泣く時は、全てを終わらせた時だけだ…」

神すら知らぬ物語が今、産声を上げる…

611:羽付き羊
09/05/04 10:33:32 Oe+d90xq
投下終了ですが何かエラーになったのは一体?
このssにはオリキャラが出ます。ライ並の能力を持っている人物とライが主人公です。
特派ルートと黒の騎士団ルートの両方を成立させる為にそうなりました。あれこれ妄想しながら執筆しましたので…
皆さんよければアドバイスと感想を頂ければ幸いです。

612:創る名無しに見る名無し
09/05/04 11:49:38 gSozARdb
 スペースで区切ってたり読点で区切ってたり統一していない部分が気になったり、「神すら知らぬ」という表現は集合無意識的に何か重要なキーワードであったりするのかが気になります! とか……

 う~ん、アドバイスとか感想って言われても予告篇だけじゃ何も言えないよう……。私も人にとやかく言える立場にないしねー。
 個人的には予告篇より本編投下バッチコーイ! な心境です。


 では微妙に重圧がかかったところで15分後に投下でも……

613:創る名無しに見る名無し
09/05/04 11:52:55 OQkbiKOe
>>611
羽付き羊卿、乙でした。
予告……むぅ、なかなかありきたりなかんじであり評価しづらいですね。
逆にありきたりだからこそ物語は広がりそうですが。
オリ主か……いろいろ難しいこともあるかと思いますが頑張ってください。
期待を胸に、貴公の次の投下を全力でお待ちしております。

614:ピンクもふもふ ◆RS7Cu7PdYI @株主 ★
09/05/04 12:02:28 gSozARdb
 4月といえば「出会い」ですね。もう終わりましたが。
 しかしここに来れば素敵なSS達に出会えるではありませんか! お、もっふーいいこと言った!
 ってなわけでピンクもふもふです。
 そういえば投下前に名乗ったのなんて随分と久しぶりな気がします。七年ぶり、くらいでしょうか。
 新年度になって全然投下してないような……したっけ? たぶんしてない。ひと月も離れると文章ってのは錆びれるものです。というかネタが無い。
 だからー今回のSSはー私が他のアニメを見て思ったことをーただライ達にしゃべらせただけのーつまらないものですー。
 まぁ暇な人は暇つぶしに読んでくだせぇ。支援は必要ありません。
 カップリングはもっふーお得意のちまーじょさ!

615: ◆j7R1Qu6Krs
09/05/04 12:05:46 gSozARdb BE:1855598786-2BP(0)
 あれ、トリップ間違えてる……また間違っててもSSで分かるよう努力!

616:幸せの等価交換 
09/05/04 12:11:02 gSozARdb
 アーニャは外食が好きだ。
 家で食べることになると必ず自分ではなくライが作ることになるので、女としては若干どころかかなりプライドを傷つけられる。
 それでも料理を練習しないアーニャに問題はあるだろうが……。
 特にする気も無いので、すっかり常連となった近所のファミリーレストランにて今日の夕飯を食べる事になった。


「何かを得るためには、相応の対価が必要になる、か」
 レストランのメニューを見るなり、ライはそう言った。
 いきなりこんな事を言う彼に最初は戸惑ったものだが、慣れとは不思議なもので、今ではこちらから聞きたいと迫るようになっていた。ライがどんな事を考えているか聞くのは好きだったし、と言うより、それが恋だったのだろう。
「なにそれ」
「等価交換って話」
 それをメニューを見ながら考えていたのか。
 呆れる一方感心する。
「偶然見たアニメで言ってたんだよ」
「へぇ」
「タイトルは鋼の……あれ、なんだっけ?」
 まあ、こんなものだ。
 恐らくそのアニメで冒頭辺りに流れたのだろう、とアーニャは予測した。そのフレーズに興味を持ったライは本編そっちのけで思考にふけっていたのだろうとも。
「まあいいや。このメニューを見て少し不思議に思ったんだよ。これも等価交換なのかなって」
 アーニャは首をかしげた。
「そういうものじゃないの?」
「そういうものなのかな?」
 疑問を疑問で返す論法にとっさに言葉が出ない。
 ライは続ける。
「貨幣は、事物に価値を見出す事で等価交換を可能にするものだ。価値なんて時や人によって変わる物だから、レストランのメニューにその価値があるかどうかなんて言わないよ」
 一息ついて、
「でもさ、この貨幣だって、僕は働いて手に入れた訳だ。労働という対価を払って、お金を得たんだ。なのに僕は今、それを対価として払おうとしている」
 ああ、とアーニャは頷いた。
 ライの言いたい事がようやくわかった。
 お金を得るために対価を払った。そして何かを得るためにお金を払って―
「つまり、何を得ようとしているのかが、分からないってこと?」
「そう、その通り」
 分かってくれて嬉しいよ―そう言ってライは柔和な微笑みを投げかけた。
 この笑顔を貰える事が、アーニャの一番の幸せだった。もしくは二番目か、三番目か。
 実際はライの考えている事の半分も理解しきれていないのだろう。
 それでも、どこかで繋がったような感覚が生まれる。幸せだと実感できる。
「対価を払って手に入れたお金を再び払って、何を得るんだろう? 最終的に、何を得るんだろう?」
「食べ物? 衣食住とか」
「それが最終目標なのかな? 食べる事をエネルギー摂取に置き換えると話にならないから、この場合は【より幸せな生活】と捉えるべきか」
 と、そこでライが話を一旦中断する。
 どうやらウェイトレスが注文をとろうとテーブルの側を言ったり来たりでそわそわしていたようだ。
 確かに、お茶すら頼まず長々と話し込むのはマナー違反だろう。ここら辺の常識を理解するまで、かつてのアーニャはひどく苦労した。
 ウェイトレスがほっとしたように近づいてきたところで、アーニャは重大な事実に気がつく。
 ……あ、まだ決めてない。
 ライとの話に夢中でメニューを決めていなかったのだ。

617:幸せの等価交換
09/05/04 12:12:38 gSozARdb
「ええと、このサラダを二人前。ドレッシングは必要なくて―」
 いつものサラダを注文するライは自分の分はちゃっかり決めているらしく、『山の幸炊き込みご飯と和風ミネストローネ』なんてこじゃれた物を頼んでいる。
 ウェイトレスがアーニャの方を向いた。
 ……何を頼もう?
 一度迷うとなかなか決められないのがレストランのメニューだ。気になるものはいくつかあったのが、
「あっこの子はハンバーグカレーでお願いします」
 ゴツン、と凄い音をたててアーニャはテーブルに頭を打ちつけた。
 ウェイトレスがぎょっとするが知ったことではない。
 それよりも、
「何で、ライが、勝手に決めるの!」
「え。だってアーニャがメニュー眺めてた時に目を留めてたから、てっきりこれかと」
「うっ……」
 何で見ている、とは言えない。
 細かいところまで見られているのは嬉しいのだが、
「こ、こんなの欲しくないもん」
 こんなの呼ばわりでハンバーグカレーも可哀想ではあるが、いかにも子供向けのメニューに惹かれていたことを認めるのは、アーニャのプライドが許さない。
 そっかごめん、とライは頷いて、
「こっちのドミたまハンバーグだったか」
 ガツン、と盛大な音をたててテーブルに頭を打ちつけた。
 ライが指差したのは目玉焼きが乗ったハンバーグという、それもアーニャは気になっていたメニューだが、いかにも子供向けのメニューだ。
「なんで……」
「え。これも見てたから」
 違う? と首をかしげられても、頷く訳にはいかない。
「こ……」
 こんなの欲しくない、と再び言おうとしたところでアーニャはウェイトレスの視線に気づいた。
 早く決めてくれ、と言外に語っている。
 ……私? 私が悪いの?
 思わず心が挫けそうになるが、ここは自分が大人になって子供向けメニューを選んでしまえばいいかと結論づけた。
「もう、これでいい……」
「はい、ドミたまハンバーグセットですね? 以上でよろしいですか? では、注文を確認します……」
 少し早口でウェイトレスは注文を確認して、さっさと厨房へと行ってしまった。
 ライは何ら気にした様子もなく、冷水で乾いた喉を潤して、
「さっきの続きだけど」
 と切り出した。アーニャは頷いて、
「私は恥という対価を払って、ドミたまハンバーグセットを手に入れた……」
 他にも大事な物を失った気がするが。

618:幸せの等価交換
09/05/04 12:12:52 gSozARdb
 ライはアーニャの嘆きを無視して話を続けた。
「【より幸せな生活】を仮に終着点だとすると、そこに終わりはあるのか」
 また長くなりそうだ、とアーニャは冷水を口に含みながら、
「終わり?」
 と首を傾げた。
 そう、とライは頷いて、
「たとえば、僕は今、アーニャといられて幸せだ」
 ぶはっ。そんな漫画みたいな勢いで水を吹き出してしまった。―いきなり何を言いだすのか、この男は。
「アーニャ、お行儀悪い」
 ライはおしぼりで机を拭きながら、アーニャをたしなめた。
 ……私? 私が悪いの?
 いまいち納得できないまま、アーニャはごめんなさいと謝る。
 ライは気にしてないよ、と言って、
「で、僕は幸せって話に戻るんだけど」
「う、うん……」
 改めて言われるとまた恥ずかしい。ライの方も若干照れているのか、はにかんだ笑顔を浮かべている。
 そんな表情をされて、何も思わないはずがない。
 ……今夜は寝かさない。
 そう静かに決意してライの話に耳を傾けた。
「それでも僕達はこうして外食に来ている。別にご飯が美味しくなくても、僕は幸せでいられるという確信があるのに、だ」
「っ……でも、美味しいものは食べたい」
「じゃあどれくらい美味しいものが食べたい?」
「どれくらい……」
「人間の欲なんて限りはない。【より幸せな生活】にも限りはない。ではそんな事で、果たして僕達は【より幸せな生活】という物を手に入れているのだろうか?」
「贅沢しなければ?」
「それはその人が満足するレベル、という基準点だから明確ではないね」
「じゃあ答えなんてない」
 アーニャは口を尖らせて言った。
 ライは先ほどからずっと楽しそうに話している。誘導する様な言動で自分の考えをなぞらせるのが好きなのだ。
 手のひらの上で踊らされているようであまり面白くないが、ライと同じ事を考えていくという感覚は好き、という板挟みな状態が歯がゆい。
「そう、答えなんてないのかもしれない。―でもそれじゃあ面白くないから逆に考えてみた」
「逆?」
「一般的な生物における、最終目的とは何か」
 一息、
「繁殖、つまりは生殖行為な訳だ」
「せっ……!」
 思わぬ変化球にアーニャは声を裏返した。
 生殖行為を人間で表すなら、要するにセックスのことである。
 自分でも真っ赤になっている事が分かるアーニャの表情を見て、ライは苦笑した。
 ―今夜、する?
 アーニャにだけ聞こえるように囁いた。
 声に出す事はできず、アーニャはこくんと頷く。奇しくもアーニャの望みが叶ってしまった。

619:幸せの等価交換
09/05/04 12:13:01 gSozARdb
 ライはアーニャが落ち着くのを待った後、
「かつては人類もそうだったんだろうね。生きることが目的で、子孫を残す本能に従って対価を払い続けてきた。等価交換に忠実な世界だったと思うんだ」
 でも、
「今は違う。その一番の理由は……やっぱり社会システムかなぁ」
「社会システム?」
「社会性というだけなら他の生物にもあるんだろうけど、貨幣なんてシステムをここまで発達させた生物はいないよね、たぶん。僕が一番気になったのは、流通というシステム」
 言いつつ、ライは人差し指で円を描くようにテーブルを擦った。
「このシステムで金持ちに求められているのは、投資だ。おかしな話だよね。まるで……」
 アーニャはその先の言葉を取った。
「対価を払うことが前提になってる?」
「そう。社会の原則たるシステムが、もう等価交換から外れている。でも、そう考えれば説明がつくかもね」
 何のためにお金を稼いでいるのか。それは等価交換でも何でもなく、労働力を得るため、対価を払う事が前提の社会システムを作り出した結果。
 つまり、
「人類が個人の自立力を失う代わりに社会の利便性を手にしたように―人類は等価交換の原則を対価に払って、新たな社会の原則を手に入れた」
 ライはそう結論づけた。
「その新たな原則って?」
 さぁ? とライは肩をすくめた。
「分からないんだよね。この結論だと、等価交換を対価に、新たな原則を手に入れたことにしたんだけど……」
 ああ、とアーニャは頷いた。ライがどこでつまづいているかが分かった。
「それ、等価交換の原則が今も働いていることになる」
「そうなんだよね。だから今の原則はそうした矛盾も含まれた原則か―」
 ―もしくは、等価交換の原則そのものが初めから存在しなかったか。
 ライは少し落ち込んだ様子でそう言った。
 アーニャは何と声をかけるべきか迷い、結局その答えも出ずに、料理が来るのを待つことしかできなかった。


 レストランからの帰り道、夜空を見上げながらライがふと呟いた。
「例のアニメの後の番組がニュースだったんだ。冒頭が自殺のニュース」
「自殺?」
 そう、とライは頷いた。
「それで考え始めた。彼を含め……自殺した人達は、死という対価を払ったのか、逆に死を得たのか」
 人は生きる。生物としての本能が生きて繁殖するという物であるのなら、
「死は対価じゃないの?」
「死は終わりを意味するはずだ。だとしたら、その対価で何も得なかった事になる」
 じゃあ死を得たの? アーニャが首を傾げると、ライは頭を振った。それも多分違う、と。
「だとしたら対価は何だ? 自殺した少年はイジメにあっていたそうだ。少年は死を望んでいた訳じゃない」
 ではイジメられた事や、そういう生き方をした事が対価にならないのか。そう言おうとして、アーニャは気がついた。
「イジメという対価が、先に支払われている……?」
 それは先ほどの、流通というシステムでライが語ったことに似ている。対価が先に支払われる、別の原則。
「そう。だから今の世界は等価交換なんかじゃないって思ったんだ。考えてみれば当たり前だよ。努力が必ずしも上手くいくとは限らないんだから」
 だから等価交換なんて無い。
 ライはまた、寂しげに等価交換を否定した。

620:幸せの等価交換
09/05/04 12:13:06 gSozARdb
「ライは、何かを手に入れたいの?」
「うーん、そういう訳じゃなくてさ。僕はもう払ってしまったんだ、対価」
「あ……」
 ようやくアーニャはライの表情の意味を理解した。
 ライはかつて、国を、民を滅ぼしたと語った。ギアスという未知の力で人を操って。
「だから……僕は、アーニャとの幸せを得る事は出来ないんじゃ―」
「ばか」
 最後まで聞かずに、アーニャはライの尻を蹴り飛ばした。
「いっ! アーニャ、いきなり何を!」
「ライは馬鹿。どうしてそういう事を一人で考えて、悩むの」
 アーニャが涙目になってそう言うと、ライはばつが悪そうに俯いた。
「だって」
「だってじゃない。ライ、さっき幸せだって言った。あれは嘘?」
「嘘じゃないよ。でも、やっぱり少し不安でさ。僕がアーニャを幸せにできるか―」
「ばか」
 今度は俯いた頭をはたいた。
 何か言いたそうなライを視線で封じつつ、
「わたしは幸せ」
 ライが目をまん丸に開いて驚いた。
 それはそうだろう、とアーニャは内心頷いた。こんな言葉、普段の自分なら絶対に言わない。
 だが、アーニャにも譲れない物もある。だから、
「わたしは、幸せ。だって……」
 ―ライと一緒だから。
 最後の方は消え入るようになったため、案の定ライは聞き返してきた。
「え?」
 ……ああ、いつものライに戻った。
 聞こえなくて良かったと安堵し、聞こえなくて残念と思うのもいつものことだ。
 だからこれでいい、とアーニャは思ったが、ライはそうでもないらしい。
「え、アーニャもう一度言ってよ」
「やだ」
「そんな、珍しく素直なアーニャの言葉なのに」
 不満気に口を尖らせるライを見て、アーニャは何かを感じ取った。これはいつもと違う、と。
「ライ……聞こえてた?」
「いや、聞こえなかった」
 それで全てを悟る。アーニャは顔から火が出る思いがした。
「嘘っ! 聞こえてたの!?」
「聞こえてなかったって。だからもう一度言ってよ。ほら、ライと……?」
 ライがわざとらしく首をかしげる。
 アーニャは頭を抱えて逃げ出した。このネタで、一週間は遊ばれる。
「いやっ! 二度と言わない!」
「お願いだから」
「言えない、言わない、言いたくない!」
 二人でわめきながら夜道を走るのもまた恥ずかしかったが、それもまた幸せだと、アーニャは思う。
 
 ―だって、ライと一緒だから。



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