09/10/04 12:07:57 KEjyUku2
「で、どういう知り合いなんだ?」
ピザをつまみながら、フェルグスは軽く尋ねた。
「親戚なの。小さい頃は、勉強を見てもらったりしてたのよ。だから、つい『先生』って
呼んじゃうの」
カリンは学生の頃を思い出し、懐かしそうに言う。
その横顔を見て、フェルグスは、『故郷』があるってのはいいもんだな、と思った。
「シレジアには、帰ってないのか?」
「遠いのよ。ここから、どのくらいかかるか分かる? 時間も、お金も。
滅多に帰れないから、就職してからは、年末にしか帰ってないけど……」
シレジアは、北方の地方都市だ。
カリンのマットがかった髪の色は、その地方独特のもので、出身を強く意識させる。
同郷のセティも、マットの髪をしている。
「おまえ、いくつだ?」
フェルグスは、テーブルで唐突に尋ねる。
「じょ、女性に、面と向かって歳を聞くなんてっ! ……21よ、悪い?
で、セティ先生はわたしの4つ上だから25歳のはずよ」
「ほう、オレより4つも下なのか。あの落ち着きっぷりは、それ以上に見えるよな。
結婚してるのか?」
「なによ、探偵ごっこ?」
「そうじゃねぇ。若いチーフってのがどんな奴か、興味があっただけだ」
「結婚は、していないわ。それもまた、先生を呼び戻す大きな理由の一つではあるけれど」
「呼び戻す?」
「シレジアに帰ってきてほしい、ってみんなの希望なの」
「みんな?」
「あっと……、セティ先生の家はね、私立の学校をしているの。先生のお父さん、
つまりわたしの伯父さんに当たる人だけど、その人がもう体が辛いからね、先生に
帰ってきてほしいわけ」
「へえ。なんで、こんなところでチーフなんかやってるんだ」
「さあ、そこまではわたしも知らないわ。いきなり学校の先生になる前に、会社勤めを
経験しとこうってところなのかも」
「ふーん……、ま、それは人それぞれか」