09/04/12 16:53:35 NBvNiu62
「ってわけらしいが、どうするよJガイルの旦那様よぉ?」
「裏切り者には死の制裁を……って言いたいところだが、ウェザーの能力にはまだまだ用がある。
今まで通りある程度距離を置いて尾行を続ければいい。ボンペイだったか? あそこまではそんなに距離がないはずだからな」
日が昇ったものの未だに薄暗い駅に潜む二人組み。
口の角を無理矢理曲げたような醜悪な笑みを浮かべながらJガイルは片桐安十郎、通称アンジェロの肩に右手を乗せる。
胡散臭そうな目で置かれた手を眺めながらも、楽しそうな口調でアンジェロは苦言を呈す。
「っていてもなぁ。ブラックモアの野郎にゃ俺の能力はばれてるだろうしよ。結構しんどいんだぜ?」
「じゃあ俺が代わってやろうか?ハングマンなら気付かれずに尾行できるぜ?」
「おいおい、あまりいい気になるもんじゃねぇぞ。反射物がないといけないお前の能力じゃ不安定要素が多すぎるじゃねぇか」
軽口を叩き合ってニタニタと浮かれた表情を見せる二人。
駅での会話で互いの趣味を晒しあったお陰か、二人の間には独特の価値観が共有されていた。
それは人を殺すことに快楽を抱くという事。
社会の爪弾き者、所謂マイノリティ側の人間であるが故に同じ価値観を抱く人間の存在は貴重。
気があったという一言では説明することが不可能な常人には理解し得ない複雑な何かが彼らの間には存在していた。
「だがよぉ。仗助の野郎を殺しそびれたのは本当にむかっ腹が立つぜ」
「落ち着きな……まだ承太郎が残ってるんだろ? 俺はそっちには手を出さないからポルナレフの方はやるんじゃねぇぞ」
「オッケーオッケー。お楽しみを邪魔するほど野暮な真似をする気はねぇよ。ほれ、奴らも移動したし俺らもボチボチ行くか」
通り過ぎていく黒雲を名残惜しげに眺めつつ、二人は東へと歩き始めた。
駅の中での和気藹々とした空気は消え去り、顔に残るのはこれまでの経歴に恥じぬ凶悪な人相。
水を求めて彷徨う砂漠の民のように、ウェザーという水源を求めて彼らは朝日の輝く方角へと向かっていく―――。
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