08/11/27 20:37:59 t8eWfUuV
その青年はある日『叩いたものが二つになる金づち』を手に入れた。
青年はいぶかしみながら、金づちをもてあそぶ。
手のひらに軽く振りおろすと、ずしりとした感触があった。
「本当にふつうの金づちだな」
いぶかしさはさらに増し、窓から投げ捨てようかと考えたそのとき、
いきなり体が分裂して、青年は二人になった。
思わず、金づちを床に落としてしまうほどおどろいた青年だったが、
これにより金づちの能力を確信した。
「よし、これでお金を増やそう」
そういって金づちを拾おうとしゃがむと、もう一人の青年が口をとがらせた。
「まて、その金づちは僕のだ」
「何を言っている。僕が手から落としたんだ」
「違う、僕だ。君は僕が叩いて増えたほうじゃないか」
「馬鹿な。増えたのは君のほうだろう!」
しゃがんでいた青年はかっとなり、金づちを握り締めると、
もう一人の青年に向かって襲いかかった。
力いっぱい振りおろそうとした瞬間、家が音を立てて崩れた。