09/10/13 14:11:20 fi6KZltQ
200Ⅹネン、有人宇宙船が金星の近くで爆発した。
乗組員達はなぜか死ななかった。
死ぬよりも、生き残った後どうするのかの方が問題であった。
なにせ大宇宙である。果てすらない。
霊体のようなものでみな生き残っているからして、死すらないだろう。
で、みんなで話し合った。それは、途方もない暇についてだった。
一番最初に今後の人生を決めたのはN氏だった。
「おれは宇宙船なんて本当は真っ平ごめんだったんだ。」
「本当はプロサーファーになりたかったんだ。」
N氏は宇宙船のかけらからボードを作り、宇宙の波を延々と乗りこなした。
「あいつらしいよな。永遠に波乗りなんて・・・」
「本当は、宇宙にはなにもないよ。だから探査船にまかしてるんだがな。」
N氏はなにもないとわかっているからこそ、宇宙サーフィンをやってみたいと
いうことだった。自ら食事をとることもなく、女を抱くこともなく、眠ることも
なく、延々と宇宙の波みたいなものを乗りこなす。
もうだれも調子のりだった彼のことを調子にのってる!なんて非難するものはいなくなった。
本当に、彼らしかった。
寝たきりの、N氏の病床のAMラジオに特有の雑音が入った。周波数が少しかわったのだろうか。
時々美しい言葉は、耳を捉えるようだ。でも複雑な顔をする。
「ザーーー」「ザーーー」そのたびに達成感にも似たような、幸せそうな顔をする。