09/10/04 22:27:59 fjUn72Ek
「知らなきゃ良かった」
変わり者ではあるものの、天才的な頭脳を持つエフ博士。
ある日、彼に電話がかかってきた。着信番号は旧知のエヌ記者の番号である。
「もしもし」
「あ、博士!助けて下さい!」
エヌ記者の何やら切迫した叫びが聞こえてくる。
突然、聞き覚えの無い男の声が割り込んできた。
「初めまして博士。お聞きの通り、エヌ記者の身柄は我々が預かっております」
「ふむ。それはつまり誘拐ということだね。となれば私に何か要求があるのかな?」
「さすが博士、話が早い。実は、博士に開発して頂きたいものがあるのです」
「それなら、直接私を狙う方がもっと話が早いだろうに」
「実は最初はその予定だったのですが・・・博士は滅多に外出されず、研究所のセキリュティも完璧でして」
「つまり、狙いやすい所を狙ったわけだね。で、何を開発しろと?私にも出来ない事があるよ」
「開発して頂きたいのは読心機とでも言いましょうか、つまり、他人の考えてる事が分かる機械です」
「・・・そんなもの何に使うのかね?ろくな事にならんと思うが」
「出来るか、出来ないか、でお答え頂きたい。もちろんお返事次第でエヌ記者は・・・」
「そんな物ならもう作ってる。発表はしとらんがね」
「なんですと!?本当ですか!?」
「若い頃にな。探せばどっかにあるはずだ」
「そ、それが本当ならエヌ記者はすぐ解放する。これで将軍様もお喜びに・・・」
エヌ記者が解放されて一ヵ月後。
「結局、彼らは何者だったんでしょうねえ?明らかにプロでしたよ。犯罪組織とも違うような・・・」
エヌ記者がつぶやく。
「まあ、どっかの権力者の手下だろうさ。権力者ほど周りが信用出来ないものだからね」
エフ博士はTVのニュースを眺めながら答える。
半月程前から狂った様に粛清を開始した某国の独裁者が、ついにクーデターを起こされて殺されたそうだ。
「だからろくな事にならんと言ったのに・・・」
博士は若い頃、世の女性の本性を知った時の苦い記憶を思い出していた。