星新一っぽいショートショートを作るスレat MITEMITE
星新一っぽいショートショートを作るスレ - 暇つぶし2ch92:創る名無しに見る名無し
08/11/23 23:53:18 DQOORTje
エル博士が長年の研究の結果、新たな薬を開発した。
被験者となる青年を前に、博士は薬の効能を説明していく。
「この薬を飲めば、君の運はぐんとよくなる。これで今までのツキのない人生とはおさらばじゃ」
「博士、それは本当なのですか? 本当に私の運がよくなるんですね」
「もちろんじゃ。君の境遇はよく知っている。だからこそ君を被験者に選んだのだ」

人は運を使うたびにその運を失っていく。失っていくのなら増やす事だってできるはずだ。
そう考えたエル博士の長年の努力が実を結んだのだ。この薬を飲めば人間の運を増やすことができる。
この薬を試す上で一番問題となるのは、その効果そのものである。
なにしろ運を左右する薬なので、仮に普通の人間に投与して運がよくなったとしても、それが本当に薬の効果なのか、「たまたま」運がよかったのかが区別できないのだ。
エル博士もこの問題に対して相当悩んでいた。しかしある日この青年に出会い、その問題もすぐに解決した。

この青年には運がまったくないのだ。そのことは事前の検査で明らかになっている。すでに運を使い果たしているのだ。
具体的に言えば買った宝くじはみな外れ、試験で適当に選んだ選択肢は全部不正解、じゃんけんですら負け続きなのだ。
この青年の運がよくなったのならば、薬がきちんと作用することが明らかになるのだ。

博士は薬の入ったビンを青年に差出した。
「さて、早速薬を飲んでくれたまえ。そのあと運を使う実験をいくつかやろう
「はい。では飲みます」
そういって青年はビンの中の薬を飲み干す。薬だけあって苦味があったが、何かが体に満ちてくるような感じもした。
「博士、なんだか運がよくなったような気がします」
「そうかそうか。では早速実験じゃ」

そして二人はいくつかの実験を行ったが、なぜか結果が出ない。
やはり宝くじは当たらず、適当に選んだ選択肢は不正解で、じゃんけんも負け続けなのだ。
「たまたま」運が悪かったのではないかと考えて、何度も実験を行ったが、それでも一向にいい結果が出ない。
「これはおかしい。作り方を誤ったのだろうか。それともこの薬は効き目がないのだろうか」
博士はいったん青年を帰した後、この薬に関する資料を調べることにした。

調べていくうちに恐ろしいことが分かった。
この薬には人間の運を増加させる作用がある。これは間違いなく本当のことである。
しかし、同時にこの薬は猛毒でもあった。この薬を飲んだ人間はほとんどの場合すぐに死んでしまうのだ。
そう、「よほどの運の持ち主でもない限り」必ず。


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