09/09/24 00:39:49 UqCSDs10
『ゆだん』
S氏は、それなりに有名な洞窟探検家である。
非常識に虚弱体質な男ではあったが、なんとか命だけは繋ぎとめていた。
彼の洞窟探検は常に困難を極めた。
天井から砂や蝙蝠のフンが降ってくる事は日常茶飯事だったし、
ロープから降りる、階段を下るなど、命が危機に晒されるような事も多々あった。
しかし彼は、洞窟探検を止めようとはしなかった。
慎重に、的確に行動すれば、命を落とすことは絶対に無いのだと、確信していたし、
なにより、地下深く続く洞窟は、S氏の無謀な好奇心を刺激しつづけた。
そして、つい先日、その好奇心は遂に、洞窟の闇を完全に照らしあげてしまった。
行き場をなくした熱意は、彼の中で燻るより他になかった。
そんな折、S氏の元に、隣国で未知の洞窟が発見されたというニュースが入ってくる。
未知の洞窟、そのフレーズに居ても立ってもいられず、食べかけの朝食もそのままに、、
S氏は喜び勇んで自家用車に飛び乗った。