星新一っぽいショートショートを作るスレat MITEMITE
星新一っぽいショートショートを作るスレ - 暇つぶし2ch694:創る名無しに見る名無し
09/06/30 00:29:57 mVD2JOl5
『この鳥』

「気分はどうかな?」
小さくて散らかった研究所の中で、エム博士は綺麗な羽を持つ鳥に話し掛けた。
「うん。まぁ悪くはないね、決して良くもないけど。この狭い籠から出してもらえれば気分も上向きになるのだけどなぁ。」
そう答えると鳥は手羽で鳥籠の扉をさし、エム博士に開けるよう促した。
「それは無理だよ。君は僕にとっての金の卵なんだ。すでに羽化しているけど。」
と、エム博士は笑いながら言った。
「今のは冗談のつもり?ま、笑えないのはこの際置いといてあげるよ。あなたが私で金を稼ぎたいってのはわかったしね。」
鳥は嘆息するとエム博士の顔を凝視した。
「な、なにかね?僕が君に知性と言葉を与えたんだよ?それで僕が儲けようとして何が悪いんだ?」
エム博士はおろおろと視線をさまよわせる。
「何も悪くはないね。知性をありがとう、感謝するよ。せいぜい協力させてもらうさ。」
数日後、エム博士はこの鳥を発表する為にパーティーを開いてもらった。
金持ち。マスコミ。研究者。様々な人々が注目する壇上にエム博士は立つ。
「えー…。この鳥こそが僕の研究の成果であり、まずは、えー…。とりあえず実際に見てもらいましょうか。」
エム博士が鳥籠の扉を開くと、鳥がエム博士の肩に飛び乗る。
「こんばんわ。たくさんの人が君を見ているよ、今の気分はどうだい?」
エム博士は鳥に語りかけた。
「………。」
しかし鳥は何の反応も示さない。
「あ、あれ?緊張しているのかな?ほら喋って喋って。いつもの練習のように気楽に話していいんだよ。」
エム博士が何度も何度も話し掛けるも鳥は話しだす気配すらない。
しまいに鳥はエム博士の肩から離れ、会場の天井の方に飛んでいってしまう。
会場中からあがる笑い声と罵声に耐え切れず、エム博士は壇上から逃げ出した。
会場の窓から外へ逃れた鳥は気分良く歌うように言葉を発する。
「あはは。まったくエム博士ときたら。知恵比べで鳥に負けるとはね。」


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