09/04/22 21:16:13 hkxaW9I/
【酒と不幸】
私はその日長年連れ添った女房と別れ、絶望に打ちひしがれていた。
感傷に浸りながら街を歩いていると一軒のバーが目に留まった。
店の看板には“Bar Unhappiness 不幸な方には無料でお酒をお出しします”と書かれていた。
丁度いい、私は今不幸の絶頂だ。入ってみよう。
「いらっしゃいませ。お客さん、貴方は今不幸なんですね?」
「えぇ、長年連れ添った女房と別れてしまったんです」
「それなら無料でお酒をお出しします」
そこで私はウォッカ・トニックを何杯か注文した。
そして四杯目のウォッカ・トニックを飲み干した頃には、私はもう酔ってしまっていた。
「どうです?酒を飲んでいると不幸なんてものは忘れてしまうでしょう?」と、マスターが尋ねる。
「えぇ、もう僕の不幸なんて何処かへ消えてしまったみたいです」
そう言うとマスターは笑みを浮かべ、私に言った。
「そうですか。ではお代の方はきちんと払って頂きます」
世の中には上手い商売があるものだ。