星新一っぽいショートショートを作るスレat MITEMITE
星新一っぽいショートショートを作るスレ - 暇つぶし2ch499:創る名無しに見る名無し
09/04/06 17:49:08 xUUmL6wJ
『悪戯』

 NとSという二人の青年が机を挟んで向かい合わせに座っていた。
 Nは文庫本を読んでおり、Sは机にの上に置いたノートパソコンで大学のレポートを書いていた。

「実はさ」不意にNが言った。「君にちょっと悪戯をしたんだ」
「どういう悪戯?」Sがキーボードを打つ手をやめ聞き返す。
「まぁリラックスして聞けよ」
「いいけど……うわぁ!!」

 Sが椅子の背もたれに体重をかけた瞬間、背もたれはSの体を支えることなく後ろへ倒れ、Sもまた椅子から転げ落ちてしまった。

「君がさっきトイレに行ったとき、背もたれを壊しておいたんだ」Nが笑いながら言う。
「ひどいなぁ。しかし、僕は怒らないよ」
「どうして?」
「僕も悪戯をしたからさ」Sは椅子に座りなおすとニヤリと笑った。「君がトイレにいってる隙にね」

 二人は互いに大の悪戯好きで、いつもどちらが凄い悪戯をするかを競っていた。
 椅子の背もたれなど、まだかわいい方だ。Sの悪戯でNの家が警察に包囲されたこともあったし、Nの悪戯が原因でSは恋人にフラれてしまったこともある。

「で、君はいったい何をしたんだい?」Nは尋ねる。
「そのうちわかるさ。先に言っちゃあ面白くない」
「まあ、そうかもね。しかしいったい何だろう?」

 そう言ってNはペットボトルのお茶を飲んだ。飲んだ途端Nは顔をしかめる。

「やったな」NはSを睨み付けた。「何を入れた?」
「しょうゆ適量、塩こしょう少々」料理番組の解説みたいにスラスラとSが言う。
「道理でしょっぱいはずだ」Nは毒づく。「しかし、僕の悪戯は背もたれだけじゃないんだぜ」
「僕だってそうさ、他にもある」Sも負けじと言う。「例えば、君のその本」
「これかい?」
「有名な推理小説だよな。その本の謎解きのページを切り取っておいた」
「あ、本当だ」Nはページをめくり叫んだ。「ひどいことをするな、犯人がわからなくなてしまった」
「それなら大丈夫」Sがニヤリと笑う。
「どういうことだい?」
「登場人物紹介のページの、犯人の欄に赤ペンで丸をうっておいた」
「どれどれ……ああ、こいつが犯人だったのか。しかしこれじゃあ読んでいた甲斐がないというものだ」
「まあ、今日のところは悪戯勝負は僕の勝ちだな」Sが勝ち誇ったように言った。
「それはどうかな?」本を閉じるとNは言った。「僕にもまだとっておきの悪戯がある」

 そう言うと、NはSのパソコンを指差した。

「これ?」
「そう、そのパソコンに悪戯をしたんだ」
「どこにだい?」パソコンを調べながらSが首をかしげる。
「実はね、爆弾を仕掛けたんだ。そのパソコンに」
「ええ!?」Sは驚く。「ひどいことをするなあ、これは高かったんだぜ。それに何より、危ないじゃないか」
「大丈夫。この机の近くにいたら危ないだろうけどさ、すぐ逃げれば怪我はしないさ」
「でも、やっていいことと悪いことがあるぞ」
「まあね。しかしこれで僕の勝ちだ」Nは自慢げに言った。「さて、あと一分ほどで爆発するからそそろ逃げようか」
「後悔するぞ」Sが悲しそうに言った。
「どうしたんだい? 確かに爆弾はやりすぎたかもしれないが……」
「実は僕ももう一個悪戯をしたんだ」

 椅子から立ち上がるとSは言った。

「君の椅子とお尻の間にさ、接着剤を塗っておいたんだよね」



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