星新一っぽいショートショートを作るスレat MITEMITE
星新一っぽいショートショートを作るスレ - 暇つぶし2ch254:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/12 00:16:26 VcSF9G3e
>>249
ありがとー☆
星っぽさを押し出した甲斐があった。
あんまり意識し過ぎても星新一御大には及ばないので、星っぽさはまあほどほどにしておく。



ところでネタの選定が難しい。
すんなりくるネタは手垢にまみれてそうで、新鮮なネタはわかりにくかったり。

(´・ω・`)

255:創る名無しに見る名無し
09/02/12 14:54:35 SLNJjzrf
あんた面白いねぇ

256:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/12 20:52:19 VcSF9G3e
>>253>>255
正直、誉められるのは慣れてない。
(*・ω・)

俺、ショートショート100話書いたら彼女にプロポーズするんだ…。
ちなみに、70話で彼女と初キス、50話で女友達に告白、30話で素敵な女性との出会いがある予定。


…まあ冗談はさておき、流石に空気読んでしばらく休んだ方が良いかな?

257:創る名無しに見る名無し
09/02/12 20:53:36 T/FJEkgS
星新一のショートショートが好きで、ショートショートの広場でも
入選している者ですが....すいません、オチがよく分からないのですが...
こちらの勉強不足ですかね?

258:創る名無しに見る名無し
09/02/12 21:29:17 FHq46BaC
入選(笑)
書くのと読むのとは違うんじゃね?

259:創る名無しに見る名無し
09/02/12 22:32:05 zfun9E1V
>>256
空気は読むものじゃなくて
創っていくものだってばっちゃが言ってた

260:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/13 01:09:42 hoi9TXSN
大発見


石の台の上でおがくずと落ち葉がくすぶっている、その横には十字に組んだ木片に紐を結びつけたものが置かれていた。
それを挟んで二人の男が興奮しながら会話している。
ただ、その顔は毛は生え放題、目は窪み肌は赤茶けていて、腰に僅かに布を巻くのみである。

『これを見ろ、こんなに効率的な方法で火を起こす手段があったんだ。』
『これは凄い技術だ。一体、誰が考えたんだ?みんなに教えたら英雄扱いされるぜ。』
『…誰だって構うもんか、俺たちが考えたことにしよう。』
『正気か?本人が名乗り出たらどうするんだ?』
『なあに、ここから俺たちの集落には距離がある。まず、訪れることは無いだろうし、こういうのは言った者勝ちだ。』
『……わかった。誰にも見られないうちにこれを持ち帰ろう。』
『いいか、二人だけの秘密だからな。』


「お昼のニュースです。
今日、午前九時半頃、N市ボーイスカウト教習センターで火を起こす野外教習中の広場にUFOが突如乱入。
UFOからは体中に毛が生えた猿のような宇宙人が現れて、何か会話した後、火付け用の機材と石の台を持ち去ったとのことです。
警察では火山ガスによる集団幻覚も視野にいれ調査していますが…

261:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/13 01:21:24 hoi9TXSN
>>257
すみません。
ピエロが風船で首吊り→首長ピエロになって再起、てな話にしたかったのですがわかりにくいですよね。

>>259
わかった。彼女目指してガンガル。

(*・ω・)

262:創る名無しに見る名無し
09/02/13 02:25:18 AJXCLkaJ
なるほど、面白いなw
ライターとかマッチとか見たらひっくり返るなw

263:創る名無しに見る名無し
09/02/13 19:46:57 6FwIfjO1
UFOで宇宙に出れるくせに火のつけ方知らないのかよww

264:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/13 22:42:32 hoi9TXSN
不幸を呼ぶ男


俺は三つ目の勤め先を、わずか3ヶ月で退職することとなった。
俺が大きなミスしたわけでは無い。人事担当は昨今の不況の影響が、とか言っていたがそんなことに本当の理由は無いのは俺も察している。
先々月、出社途中の俺の目の前で車が炎上する交通事故が起こった。先月は、昼休みに目の前でお局が不倫の果てのダイブを果たした。
前の勤め先からも不穏な噂が聞こえてきて、人事も動かざるを得なくなったのだろう。

俺は不幸を呼ぶのである。


学生の頃は大したことは無かった、俺の周囲でよく人が転んだり、物が壊れたりする程度だった。
その不幸がその場で俺に影響することは無かったが、必ず俺は“それ”を目撃した。
問題は、成人してから段々不幸が激しさを増してきたことだ。二十代半ばを過ぎてからは、1ヶ月に一度は“人死に”を目撃するようになってきた。最近は殺人が増えてきてる気さえする。
いっそ完全にノータッチを決め込められれば楽なのだが、必ず目撃するので、それがばれると事情聴取やら、裁判の証人やらで仕事も手につかない。

何はともあれ、次の仕事を捜さないことには俺が“人死に”してしまう。
見るのは段々慣れてきたが、体験するのはまっぴらだ。
しかし、いくら仕事を探しても、不特定の不幸を呼びよせる男に就職先などあるはずもない。
俺は段々自暴自棄になっていた。

「いっそ、手を翳したら相手が死ぬとかなら、まだ殺し屋にでもなれるのに…………そうか!」


一年後、俺はすっかり手慣れた風に仕事をしていた。

「犯人はあなただ!Aさん!自分の心は誤魔化せても、この名探偵Mの目は誤魔化せない!」

未だに自分で言ってて吹き出しそうになる。それはそうだ、なんせ俺は必ず“それ”を目撃するんだから。

265:創る名無しに見る名無し
09/02/13 22:45:57 P6vouLoh
いいよーいいよー
しかしあまりにも綺麗で感想書きにくいなw

266:創る名無しに見る名無し
09/02/13 23:16:22 6FwIfjO1
なんという転職wwww

金田一やコナンはこういうやつだったわけね

267:創る名無しに見る名無し
09/02/13 23:23:28 6FwIfjO1
天職天職

268:創る名無しに見る名無し
09/02/13 23:34:07 4JwtPhUe
面白い、星というよりは筒井の短編にありそう

269:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/14 00:15:55 w062Ffg3
だから、俺は誉められるのには慣れてないと、あれほど。

(*・ω・)アンガトウ


携帯からいくつか書いてると、1レス縛りが厳しく感じる。
起承転結の承から始まって、転+結で締めてしまう。
でも、それを自分に課してるからこそスパッと終わる気もする。
むむむぅ。

270:創る名無しに見る名無し
09/02/14 00:18:08 MXbvi4f4
1レスじゃなくてもいいんじゃない?

271:創る名無しに見る名無し
09/02/14 00:20:41 XVzxZk6b
一レス以上になるとショートショートじゃなくなる気もするけど

あなたの文は好きだから、これからも読ませてもらいます

272:創る名無しに見る名無し
09/02/14 00:32:37 w9245LQH
ショートショートの定義自体、けっこう曖昧だからなあ。
個人的には『1レス以内』ってのには、あんまこだわらんでもいいと思う。
1レススレは他にあるしさ。

273:創る名無しに見る名無し
09/02/14 00:51:01 w062Ffg3
(*・ω・)好き…


まあ、1レス以上の話についてはまた考えときます。
根がずぼらだから、パタッと飽きていなくなるまで宜しく。(・ω・)/

274:創る名無しに見る名無し
09/02/14 01:42:40 NQ2I44Zd
俺がこのスレでちょっと書いてみて感じた、星っぽさってなんなの?っていうお話
星作品って設定とオチの奇抜さもさることながら、その状況に振り回される人間がとても精密かつコミカルに描かれてると思うのよ
>>1にはああ書いてあるけど、ぶっちゃけ書いてて短すぎるとはちょっと感じた。人間を描き足りないというかなんというか
星作品好きでこれ以上語ると長くなりそうなんで一言でいうと、 別に1レス超えてもいいんじゃね?

275:創る名無しに見る名無し
09/02/14 01:43:58 NQ2I44Zd
いかん、大事な事言い忘れた
XXX ◆TqnDIIRxZU氏、俺も好きだ

276:創る名無しに見る名無し
09/02/14 19:57:53 qctegLHE
確かに、XXX氏のはよくまとまってて面白い

277:創る名無しに見る名無し
09/02/14 23:49:38 VHFmetxS
そろそろまとめサイトが必要かね

278:創る名無しに見る名無し
09/02/15 08:06:23 16eNSr1c
ここは地味に良スレ

279:創る名無しに見る名無し
09/02/15 09:12:24 6QQaVIiS
うんうん、ここかなりの良スレだよね

>>277
つくるとしたらまとめwikiだろうか

280:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/15 10:58:09 yVAvEIqr
間違い


半紙が机の上に広げられる。漆塗りの気品ある筆が漆黒の軌道を広げていく。
半紙には丁寧に“思想”と結ばれた。

「よく聞け。お前の普段の生活にはこれが無いんだ。『思い、なお想う。』だらだらと生活してるから、家事でもミスをする。お前と結婚して10年、もう直っても良いんじゃないか。」
半紙を手に取り、男は机を挟んで向かい合う妻に話し始めた。
男は三十代後半だろうか、その身だしなみから几帳面な性格が見て取れる。
「些細な事が大事なんだ。お前がそんな風だとカズキにも良くない。いいか…」
突然、気だるそうに話を聞いていた妻が、机を叩いて立ち上がった。
「なによ!あなたはあの子の教育に口出しするほどの事はなぁんもして無いじゃない!」
彼女は身を大きく乗り出し、相手の持つ“思想”の文字を奪い取り二つに引き裂いた。
「思想?なに言ってるの?私がもう持ちあわせて無いのはこれよ!」
彼女は手元のチラシの裏にマジックで“愛想”と書きなぐった。
「あんたの愚痴にはいい加減愛想が尽きたわ。今後10年、自分の皿は独りで洗いなさいよ!」
「なんだその言いぐさは!」
夫も負けじと“愛想”の二文字を引き裂いた。

「ただいまー!」
敵意に満ちた視線が交錯する中、沈黙を破ったのは帰宅した息子のカズキだった。
部屋に入って、不穏な空気に気づいたのだろう黙って二人の間に座る。

子供を挟んで喧嘩する訳にもいかない。夫は新聞を大仰に広げ、妻は台所で水仕事を始めた。
夫は思った、
『どこで間違えたんだ。互いの足りない部分を補っていたはずの歯車が、すっかりずれてる。』
妻は考えた、
『カズキは私が引き取って、実家にしばらく世話になろう。それから…』

「遊びに言ってくるね。」
しばらく机の上で手慰みの様なことをしていたが、二人の背中に耐えきれなくなったのだろう、カズキは外へ飛び出していった。

「車に気をつけて」「遅くなるなよ」短い言葉と視線で息子を送り出し、再び背を向けあう二人。
ふと、目の端が何かをとらえた。机の上に顔を向けると引き裂いた紙が机の上に一列に並べてある。カズキの手慰みだろう。

 想  思  想  愛

思わず小さく笑ってしまった。
相手を見ると、同じように苦笑している。

「本当は想の字が違うんだが。」
「あの子、知識はあってもそそっかしいから。」
もう一度、二人はクスリと笑いあった。
春の近づきつつあるある日の出来事である。

281:創る名無しに見る名無し
09/02/15 11:05:40 6QQaVIiS
これはなんていい話!
よく思いついたなー
俺は今までの中でこれが一番好きだな

282:創る名無しに見る名無し
09/02/15 11:07:54 lZ3WoNBa
いいなーこれwww
XXXさん、好きです。

283:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/15 11:12:24 yVAvEIqr
ごめん。昨日の晩に寝てしまった。

(´・ω・`)


>>277
自分は新参者なのでまとめサイトで旧作を読めるとめちゃ嬉しいです。

284:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/15 11:22:22 yVAvEIqr
>>281>>282

(*・ω・)好き…


ええと、自分が根暗なのかショートショートの案を考えると大体不幸(?)な終わり方になるので、その辺意識して変化球気味にしてみました。

読み直すと誤字や言い回しの被りがありますね。
すいません。

orz

285:創る名無しに見る名無し
09/02/15 13:25:43 0ARkDgP/
いいよーいいよー

286:創る名無しに見る名無し
09/02/15 15:32:53 gX6ZEKOr
>>280
いいねぇ
星というより向田邦子っぽい感じがしないでもない

287:創る名無しに見る名無し
09/02/15 21:52:09 hngZJ09Q
読むとほんわかするね。この話好きだ。

288:創る名無しに見る名無し
09/02/16 11:49:45 8kB2JcgN
星では無いんだが
>>194が好きだ

289:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/17 07:04:41 X0uSNRj5
第14話「新生」

~前回までのあらすじ~
世界の平和を守るべく戦ってきたM。
しかし、秘密結社Qの恐るべき鎧獣人に初めて完全な敗北を喫した。
しかし、それでもなお人々の為に闘おうとするMに、博士は新たなる力を授ける。
新たな力を得たMの拳は見事に鎧獣人を打ち砕いたのであった。


バトルジャケットが解除され、元の衣服が転送されるまで後、1分45秒。
博士とのやりとりがMの脳裏によぎる。
「確かに、ジャケットを構成する“物質G”の割合を限りなく100%に近づけることで、更なる力を手に入れられるじゃろう。じゃが、それがお前に与える負担は…」
「博士!それでも俺はみんなの幸せを守りたいんです!平和の礎になれるなら俺はどうなっても構わない!」
「わかった…。もう、なにも言わん。わしのできる限りのことはしよう。」

解除されたあとに襲って来るのは、激痛かはたまた発狂か。
Mは先ほど鎧獣人に襲われていた若い女性の事を思い出した。
変身が解除されるまでに彼女の無事を確認して、この場を立ち去らなければ。
「大丈夫ですか?お嬢さん。」
「いや!ちかよらないでっ!」
しかし、意外にも相手から発せられたのは拒絶の言葉だった。

その時初めてMは気づいた。
自分は全裸だ。


研究所に老人が一人、この人物こそMにバトルジャケットを授けた博士である。
博士の目の前のパイプを複雑に組み合わせたような機械からはエラーを示す警告が鳴り響いている。
博士は悲しそうに呟いた。
「ジャケット内の“物質G”を100%にすることにより、ジャケットは完全に透明になる。更には転送装置への異常負荷により、衣服の再転送もできん。Mへの“社会的負担”は相当なものになるじゃろう…」
博士の目に涙が光る。
「しかし、Mよ。もうなにも言うまい。お前の瞳の中に、確かな正義の輝きを見たからのう。」

290:創る名無しに見る名無し
09/02/17 07:19:09 zVOlqxy8
今度から服を持ってけば大丈夫じゃね?

291:あ
09/02/17 11:26:56 OUbYjfNE
2206年3月2日、「人体コピー機」なるものが作られた。
自分の人差し指を人体コピー機に当てるだけで、コピー機からうにょうにょと自分のコピーが出てくるのだ。
もちろん、能力は自分と全く同じなので、買い物に行ったり、仕事に行ったりするのが面倒くさかったら、このコピーに任せられるのだ。

このコピー機を買ったひとの中のひとり、エヌ氏は、建設業につとめていた。
もちろん、肉体労働というものは大変である。そこで、自分のコピーに任せることにしたのだ。
こうすることで、働かなくても、お金が入るようになった。
人体コピー機


エヌ氏がコピーに仕事を任せるようになってからちょうど一ヶ月がたった給料日、お金が入ってこなかった。
コピーにたずねると、今日から給料は直接手渡しになった、と言う。
エヌ氏は、コピーにお金を自分に渡すように言ったが、コピーはそれを許さなかった。
そこでエヌ氏は自分で働くことにしたのだが、コピーがあたかも那智氏本人のように取り扱われていたため、働かせてもらえなかった。

そしてそれから三ヶ月がたった。エヌ氏はコピーに全てを奪い取られた。
「偽物は出て行け!」
とコピーに言われ家を追い出されたたエヌ氏は、今日も浮浪者として町をとぼとぼ歩いている。



292:あ
09/02/17 11:27:41 OUbYjfNE
ありゃ。題名がなくなっとる。
一応、題名。「人体コピー機」

293:創る名無しに見る名無し
09/02/17 11:29:09 69wmg4C+
いいショートショートだ

294:創る名無しに見る名無し
09/02/17 11:30:29 zVOlqxy8
乙!
ただ贅沢を言うならもう少しオチに意外性が欲しかったりもするかも

295:あ
09/02/17 11:33:52 OUbYjfNE
ありが㌧。
もう一度文章を読み直してみたら、変なところに題名が紛れ込んでたorz

>こうすることで、働かなくても、お金が入るようになった。
>人体コピー機 ←これ

296:291
09/02/17 15:54:00 OUbYjfNE
もう一個置いていきます。星新一っぽくないかも。


「あべこべ」

エヌ氏とその夫人は、親が残した莫大な遺産のおかげで毎日豪勢な暮らしをしていた。
金が有り余って仕方がないほどだから、たくさんのものに金を費やしていった。
車はもう既に五台ももっていたし、グランドピアノも二台置いてあった。

ある日、エヌ氏はタバコを吸いはじめた。
タバコが、一番金を消費しやすいと思ったからだ。
夫人も、それを見てタバコを吸いはじめた。

それから五年後、エヌ氏は行きつけの病院へ健康診断をしてもらいにいった。
診断が全て終わったとき、医者が言った。
「タバコの吸いすぎですね。このままでは危ない。」
エヌ氏は、将来肺がんになるかもしれないと言われたのだ。
念のため夫人も健康診断してもらうと、やはり肺がんになる恐れがあると言われた。
エヌ氏とその夫人はさっそく禁煙することにした。
だが、頭はすっかりニコチンに依存してしまっていた。
吸わずには、いられなかったのだ。

次の日、エヌ氏は近くにある研究所のエフ博士に相談にいった。
「禁煙できる薬はないか?」
「うーむ・・・『禁煙できる薬』というものはないのう。」
「そうか・・・。」
エフ博士は、薬の天才と言われるほどたくさんの薬を作っていた。
だが、さすがのエフ博士でも禁煙できる薬は作れないようだ。
「だが、一応あるにはある。『禁煙できる薬』というわけではないがね。」
「その薬、是非もらう。」
「ほう。じゃあ、この薬をお前さんにやる。一応、説明をしておくが・・・。」
エフ博士がそう言ったとき、エヌ氏は既に薬を持って研究所をあとにしていた。

エヌ氏は、家に帰るとさっそく薬を飲んだ。夫人にも飲ませた。
すると、タバコを吸いたい気持ちがなくなり、無意識にタバコの箱をぐしゃっとつかむと、ゴミ箱に放り投げた。
だが、それだけでは終わらなかった。エヌ氏とその夫人は、突然家を壊しだしたのだ。
そして、最終的にはお互いの殺し合いがはじまった。エヌ氏は、夫人を殺した後自らの命を絶った。

エヌ氏が薬を持って家に向かって走っていた途中、エフ博士はこんなことを考えていた。
「あの薬は、飲んだ人のなにもかもあべこべにしてしまうから、危険なのだが・・・。そこまでして、禁煙したいのかねえ。」


297:創る名無しに見る名無し
09/02/17 18:54:08 2ysrB91q
GJ!!
これはものっそい星っぽいと思うのですよ?

298:291
09/02/17 19:02:24 OUbYjfNE
ありが㌧。
ちなみに、>>291>>296は某所に投稿しています。

299:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/17 19:39:21 X0uSNRj5
>>291>>296
おもしろいです。
語り口がなんだか自然に星っぽい。

(´∀`)


自分は早くもネタ切れ気味です。
星新一は改めて凄い。

(´・ω・)

300:創る名無しに見る名無し
09/02/17 21:17:16 8WKpsEJC
相変わらず良スレですな
ここに投稿しようとして、何度も挫折した俺が通りますよ

301:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/18 00:06:17 xcx8FmqD
3つの願い

真っ白な病院の一室で、一人の老人がベッドに横たわっていた。
周囲には家族が寄り添っており、各々が励まし、呼びかけ、明るい言葉を発していたが、老人が今夜にでも手の届かないところに行ってしまう事に気付いていた。
ふと、老人がその目を開けた。ボソボソと何かを囁く。
彼はか細い声で、家族にしばらく独りにして欲しいと言った。
息子は強い人だったから最期を人に見せたくないのだと思い、孫は優しい人だったから皆の悲しむ様を見たくないのだと思った。
家族は部屋から出て行き、老人は独り病室に残された。
老人は皆が出て行った事を確認すると、そのか細い声で何かを唱え始めた。

「ウン、ハカマラキリ、チクマカラヒキリ、マカオカナラカフタカニユ、チマタニレニチ」
その呪文が途絶えると、部屋の隅から浮き出るように真っ黒な影が浮かび上がった。
顔は狒狒のようだが、顔以外の部位は朧気であり、体を覆う黒い毛は風もないのに周囲に溶け込むように揺らめいている。

老人は影に向かって問いかけた。
「丁度60年前の約束を覚えているか。」
《壷の封印を解いてくれた礼に3つの願いを叶えてやるという約束だ 愚かな人間よ》
影の声は何重にも重なった悲鳴のような高い奇妙な声をしていた。
「わしの一つ目の願いを覚えているか」
《お前の企みを包み隠さず話せ だったな 狡猾な人間よ》
「ふっ、お前の方がよほど狡猾だ。お前と来たら、金を願えば誰かの遺産、女は病気持ち、世界平和を願ったら人類を撲滅するつもりだった。」
《言いたいことは何だ、老い果てた人間よ》
「今こそ、二つ目と三つ目の願いを使おう。わしに若さと寿命をくれ!お前が何を企んでいようと構わん!」
老人は目を大きく見開き、影に手を伸ばした。
「家族の魂が欲しいならくれてやる、世界がどうなっても構わん!わしが悪魔になっても良い!兎に角わしに人生をくれ!」

《人間よ お前の願いは聞き届けた ………だがその前に一つ言っておく事がある》

老人はこの60年間の長い影との付き合いの中で初めて、初めて影の笑顔を見た。

《最初に言った3つの願い あれは嘘だ》

そう言って影は跡形もなく消えた。

302:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/18 00:25:50 xcx8FmqD
>>300
YOU!投稿しちゃいなYO!
読みたいZE

303:創る名無しに見る名無し
09/02/18 00:26:22 Q5MzeN49
なにこの良作SFショートショート濫造スレwww
みんな乙
星くない作品にもSF御三家の中庸センスな作品が多くて素敵

>>301
オチまでの流れが自然かつ不条理なので、星っぽさとか論じるだけ野暮な気がしてきたw
この読後感、老人のその後の茫然自失っぷりとか想像せざるを得なくなる方の濃さがいい。
星氏はこういう切り方ほとんどしないと思うんだけど、中期までの筒井氏なら
ぐだぐだ原稿30枚くらいギャグに費やしてからこういうオチ平気でやっただろうなあw
小松氏なら同じ着想をどう攻めたかな……無駄に荘厳に広げまくるかコテコテの馬鹿コントにするとかかなぁ

304:創る名無しに見る名無し
09/02/18 02:31:02 J4R41r4k
これはナイスショートショート
>>303の言うとおり星っぽさについて語るのは野暮だなw

305:291
09/02/18 09:10:37 +tee8lgD
>>301
オチが面白くて(・∀・)イイ!
自分は早くもネタ切れですよ・・・

306:291
09/02/18 09:23:15 +tee8lgD
いまいち星っぽくないかも。

エヌ氏が住んでいるアイ市を走る鉄道、エス鉄道。この鉄道には、「夢の超特急」というものが走っている。
行き先が不明という、変わった列車だ。
エヌ氏は、今日この列車に乗ろうと、チケットを買い、アイ駅まで行った。
アイ駅には、金色の列車が到着していた。これが、夢の超特急である。

エヌ氏が座席につくと、早くも列車は出発した。
出発してすぐ、こんなアナウンスが流れた。
「永遠に夢の世界へといざなう夢の超特急、ただいま出発しました。」

307:創る名無しに見る名無し
09/02/18 09:25:19 AOluFxTW
乗っちゃらめえ

308:創る名無しに見る名無し
09/02/18 13:37:47 T/jUPK6x
「らめぇ」って言っちゃらめぇ

309:291
09/02/18 13:47:20 +tee8lgD
星っぽいかと言われると微妙だったりして。

「任務」

エヌ氏は、宇宙探査機関に勤めていた。
国がやっている機関なので、エヌ氏はまあいわば公務員である。

今日、エヌ氏は冥王星へ行くことになった。
今まで誰も冥王星に行ったことがないので、これが人類初の冥王星上陸だ。
エヌ氏は一人でロケットに乗り込んだ。
ロケットが火星の近くまで行ったとき、宇宙探査機関のビルの最上階でこんな会話がされていた。
「おい、いいのか?殺してしまっても。」
「学生時代にあんなにいじめやがったんだ、あいつは。」


短すぎorz

310:291
09/02/18 13:47:57 +tee8lgD
最後の文訂正。

「学生時代にあんなにもいじめやがったんだ、あいつは。だから構わない。」

311:創る名無しに見る名無し
09/02/18 14:27:59 cMzB58p/
今日の一面のニュースにここも関係ありかもって思う記事が載ってた。
URLリンク(list2.auctions.yahoo.co.jp)

こりゃ荒れるな。
俺らも事情徴収受けるかもよ?!

312:291
09/02/18 14:58:59 +tee8lgD
>>311
ブリーフ・・・

313:創る名無しに見る名無し
09/02/18 15:04:38 J4R41r4k

だがやっぱり短すぎると思うぞw

314:291
09/02/18 15:07:24 +tee8lgD
掌編小説並か、それ未満くらいだしねw

星新一はやっぱすごい(^ω^ )

315:創る名無しに見る名無し
09/02/18 22:07:06 pThq5JgC
でも面白い
短編は好きなんだ

316:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/18 22:16:34 xcx8FmqD
いかさま


Mの手に汗がにじむ。
まさに“天運”とはこのような事を言うのだろう。
大逆転への道が、Mにははっきりと見えていた。

赤、黄、茶色、色とりどりの球の中に一際輝く的玉。
今回のワンオンルールでは、Mがそれに持ち玉を当てた瞬間、彼の逆転勝ちが決定する。
Mは、まだ余裕の笑みを見せる対戦相手のKを無視して、ボールの動きをゆっくりとシミュレートする。

「いける。」

確信を持って小さく呟いた。
インパクトは持ち玉の真芯を捉えた。赤銅色の持ち玉は、球と球の間隙を縫うようにして青い的玉へと一直線に突き進んだ。
最早、この勝利を遮るものは何も無い、とMが確信した瞬間、的玉から飛び出した何かが赤銅色の軌道を曲げた。

「いかさまだ!」
Mは思わず声を上げて審判に顔を向けた。
だが、主審も副審も首を横に振り、Mの抗議を認めようとはしなかった。


~所変わって~
ニュースキャスター「各国の英知の粋を極めた対赤色彗星ミサイルは、見事に彗星の軌道を変えることに成功しました!
地球の危機は去ったのです!
まさに、今この時の為に我ら人類が神によって地球にもたらされたと言っても過言ではないでしょう!」

317:(‘∀`)ウボァ ◆JGdfIM4Fic
09/02/18 22:36:07 +tee8lgD
乙!
発想がすげえ(´∀` )

318:創る名無しに見る名無し
09/02/19 01:25:57 UB4EKdLj
これは凄くいいな!!
オチに気がついたときはっとさせられたし

319:創る名無しに見る名無し
09/02/19 09:44:36 9i7j+4+b
これはすごい。完璧に騙された。
途中まで「お前も時間をとめられるのか」みたいな話かと思ってたw
文体も星らしくていいね。

320:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/19 21:47:01 HLEiIVlg
>>291
やっぱり、他に書く人がいると張り合いでますね~。
自分ならこのネタこう書くとか考えたり。

(´∀`)

>>317->>319
ありがとうございます。
また、何か考えよう。

( ゚∀゚)

最後の落ちにニュースキャスター持ってくるパターンは使いやすいけどちょっと控えます。

321:創る名無しに見る名無し
09/02/20 02:04:34 XLZw2Iu2
飽きっぽい人

 エフ氏は飽きっぽい人だった。
どのくらい飽きっぽいのかと言うと、例えば新しい服を買ったと思ったら一回袖を通しただけで捨ててしまう。
もちろん日記は幼い頃から三日坊主だし、彼の棚や押入れには読みかけの本ややりかけのパズルが沢山詰まっていた。
万事そんな具合だったから、エフ氏は定職に就かずにふらふらしていた。
というよりも仕事にすぐ飽きてしまうのだ。もしかすると、彼にとっては服を捨てるのも仕事を辞めるのもほとんど同じ事だったのかもしれない。

 エフ氏は長いこと色々な仕事に就いては辞め、就いては辞めを繰り返した。
サラリーマンも経験したし、公務員にもなった。
板前を目指して修業したり、大道芸人として食うや食わずの日を送ったこともある。
また時には危ない仕事にも就き、その金で自分の店を開いたこともあった。
しかしそのいずれも長続きすることはなく、エフ氏は次第に年をとっていった。

 ある日、電気関係の仕事をしていた時だった。エフ氏は発作を起こして倒れてしまった。
集まった遺族に向かって彼はこう告げた。
「わしは、一度でいいから有名になってみたかった。
 しかし、この飽きっぽい性格のため、何かをやり遂げることなどできなかった。
 それだけが、どうにも無念じゃ…」
そう言い残してエフ氏は事切れた。

 エフ氏が死んだ翌年。世界の様々な記録を記した本が出版された。
本は面白いと世界中で評判になり、空前のベストセラーになった。
その中には「世界一多くの仕事をした人」として、エフ氏の名前が大きく書かれている。

322:321
09/02/20 02:06:19 XLZw2Iu2
以前書いた物を纏め直してみました。疲れた…
読みにくかったらごめんなさい。


323:創る名無しに見る名無し
09/02/20 02:22:14 02IXS9eN
これはよくまとまってるな

324:創る名無しに見る名無し
09/02/20 02:44:30 BDIAMCK2
星っぽさがよく出てると思うぜ~
GJ!!

325:創る名無しに見る名無し
09/02/20 03:16:32 uxxxpHoy
>>321
おお、いいね。特に導入のワンブロックが好きだ。

中学時代「三日坊主は一月で10個の物事にチャレンジできる人」
と言ってた先生を思い出したよ。
まぁ実際の飽き症はそんな大層なもんじゃないと思うがw
エフ氏はマジですごいと思う。
こういう生き方は何でもこなせる能力がないとできないよな。

326:321
09/02/20 09:56:16 XLZw2Iu2
>>323-325
ありがとう。すっごく嬉しいです。
また機会があったら書こうと思っているので、よろしくお願いします。

327:創る名無しに見る名無し
09/02/20 10:45:51 JereSOdY
このスレはこの発想はなかったわというのがすごく多くて楽しい

328:創る名無しに見る名無し
09/02/20 16:47:40 /it1vRm0
湖の女神


 男が湖に錆びた鉄の斧を投げ入れると、湖の中から美しい女神が現れました。
「貴方が落としたのは、金の斧ですか?銀の斧ですか?」
 眩く輝く二つの斧を見せながら、女神は男に尋ねます。
「お、俺が落としたのは、その金の斧だ!間違いない!」
 男の答えに、女神は残念そうな顔をした後、
「あなたは正直者ではありません……」
 とだけ言い、斧を持ったまま再び湖の中へと消えていきました。金の斧と銀の斧は手に入らず、
男が投げ込んだ鉄の斧も、彼の手元に戻ってくることはありませんでした。





「……何も、見つからんか」
 S警部補の報告を聞きながら、M警部は眉をしかめた。
「どうやら、警部殿の『このコテージに泊まっていた者の中に犯人がいる』という推理は外れのようですね。
 もし犯人が彼らの中にいるのだとしたら、被害者の頭をカチ割った、斧のような凶器がまだ見つからないのはおかしい」
「確かに……アリバイ証言が正しいのであれば、斧を遠くに捨てに行ったり、地中深くに埋めたりするような時間的余裕がある者は一人もいない。
 ……サイズ的にそう簡単に隠せるモノとは思えんのだがな」
 M警部が手帳に書き込んだ事件記録を見直していると、彼らの部下がドアを開けて入ってきた。
「付近の湖を捜索していたダイバーからの報告です!『湖の中を隈なく探しましたが、それらしいものは発見されませんでした』とのこと!」
「湖が、一番怪しいと思っていたんだがな……」
「やはり犯人は彼らではないな! 斧を持った殺人犯は、まだ逃亡を続けているに違いない!」
 捜索範囲を広げるよう部下に指示を出すS警部補の声を聞きながら、M警部はコテージ二階の窓から湖を見下ろした。

329:創る名無しに見る名無し
09/02/20 16:57:47 JAvc2z/G
やるなwいや後半入った時点でオチは読めたんだけどさ、でも雰囲気よすぎでギャップに笑ったw

330:創る名無しに見る名無し
09/02/20 18:19:53 hoqC5CT7
ちんぽの伝説

「どうやら、自分のちんぽは世間一般で言うところのちんぽではないらしい」
N氏が初めてそう感じたのは中学生の修学旅行の時だった。
クリトリスだった。
その後、N氏は周りの友人から「ボッコちゃん」と呼ばれるようになった。

331:創る名無しに見る名無し
09/02/20 18:38:19 hoqC5CT7
びっくり勃起

エヌ博士は長年の苦労の末についにいつでm男性が勃起する
魔法のクスリを作り出すことに成功した。
しかし、エヌ氏は童貞のまま死んでしまった。
成功したのに性交しなかったのだ。
ああ、びっくり勃起。

332:創る名無しに見る名無し
09/02/20 19:59:40 JAvc2z/G
もうちょい練ってから投下してくれ
下品さを熟した方がおもしろいかも。その際はエロパロあたりへ是非

333:創る名無しに見る名無し
09/02/20 23:02:49 JereSOdY
勢いで書きすぎだろー

334:創る名無しに見る名無し
09/02/21 04:52:34 J+0LZr0w
>>331はリテイクしてダジャレースレに持っていくべき

335:創る名無しに見る名無し
09/02/21 05:12:55 JNgUKT9Q
「いやいや、君のおかげでこんな裕福な生活をしていられる。」
とN氏がいった。
ブランド物のスーツを着て、ワインをたしなみながら、満悦した表情を浮かべるN氏は、自宅に招いた客人に語りかける。
「本当に素晴らしい日々だ。バチが当たりそうなくらいだよ。」
と、N氏が話し続けるのを、スーツを着たやけに姿勢のいい成年は黙って聞いていた。
この二人の出会いは1年前。高層ビルが建ち並ぶ大都会の隅で、家もなく、寒さに震えていたN氏に成年がコートを与えたのが最初だ。
猫背で、髪は伸び放題、ボロボロの所々に穴のあいたジャケットに、緑のスウェットを着たN氏は、現在とはまったく反対の状態だった。
ピンッと背筋の伸びた黒のコートを着た、品の良さそうな成年は、よくホームレスのたまり場であるここに来ては、ホームレスたちに衣服や食べ物を渡していた。
この時代に見返りを求めない素晴らしい人がいると、ホームレスたちは成年をありがたがっており、遠慮なしに成年が持ってくるものを頂いていた。
この日、N氏は成年が着ていた上等のコートを頂き、気分がよかった。
「そんなに嬉しいのですか?」
と成年は微笑みながらN氏に訪ねた。N氏はコートを着た自分が上等の身分になったかのように振る舞いながら言った。
「ああ。こんな素晴らしい物をただで貰えるなんて最高だ。」
満悦の笑みを浮かべはしゃぎ始めるN氏に、成年は真っ直ぐな目でN氏を見つめた。
「そんなに喜んで頂けると光栄です。私も見返りなんて求めずにこんな事をやってはいますが、喜んでいる姿を見ると嬉しいですね。」
と、成年が言ったのに調子図いてか、N氏は続けた。
「ははー。あんたは相当なお人好しだ。その姿や振る舞いから金持ちの子かなんかだろうが、裕福すぎて暇をもてあましてるんだろう。羨ましな、是非、私もそんな生活をしてみたいものだ。」
少しの沈黙が流れた。N氏は調子に乗りすぎたかと感じたが、成年はN氏の顔をじっと見つづけた。そして、スーツの胸ポケットから紙とペンを取り出すと何かを書き始めた。
「なるほど。いいでしょ。確かに私はあなたたちよりお金を持っています。それに、その使い道がわからずもてあましているのも確かです。あなたがそれを望むなら実現させるのも面白いかもしれませんね。」
と、成年は言いだした。そして、何かを書き終えた紙をN氏に渡して成年は笑顔で去っていった。
N氏は状況を理解できずに、成年は呆れて帰ってしまったのだと考えたが、渡された紙を見てみると住所が書いてある。まさか成年は本当に自分に裕福な生活をさせるというのか?
とN氏は驚いたが、お人好しの成年の事だから、何かしら用意してくれているだろうと深く考えずにその住所に向かった。


336:創る名無しに見る名無し
09/02/21 12:07:26 BuxG0+4a
お迎え

午後二時。
幼稚園のプール教室に通う娘を迎えにいく時間となった。
気が進まないが、生活パターンを変えて、近所から無用な関心を
引いてしまうようなことはしたくなかった。
家を出ると、お盆休みの時期のためか、街中に普段の喧騒さはなかった。
太陽の日差しが、やけにまぶしく感じられた。

幼稚園に着くと、娘の担任が職員室の窓越しに声をかけてくれた。
窓辺の風鈴が涼しげな音を立てていた。
「あら?メグちゃんのお母様…残念でしたわね、すれ違いになってしまいましたね」
「すれ違い?ですか?娘は一人で帰ってないはずですが…」
先生は一瞬困ったような顔をしたが、職員室から出てきて説明してくれた。
「もちろん、園の規則では、園児一人での帰宅を禁止していますが、たった今、
メグちゃんのお父様が、お迎えに来てくださったんですよ」
先生の一言に、私は戸惑いを隠せなかった。
一瞬、強い風が吹き抜け、風鈴の音が激しく鳴り響いた。
「主人…主人は…外国に出張中で…迎えに来られないのですが…」
先生は、とっておきの知識を披露するのがおもしろくてたまらないという口調で、
「メグちゃんのお父様もお人が悪いですね。お戻りになったことをお母様にも
内緒にされていたとは」

そんなはずはない! 旦那が娘を迎えに来られるわけがないのだ。
一ヶ月前、ちょっとした口論がきっかけで、カッとなって旦那を刺し殺してしまい、
バラバラにした死体を袋詰めにして、山に埋めてしまったのだ…
いつの間にか風は止んでいて、風鈴の音はとぎれていた。
園庭は、真夏の日差しを受けて白く乾ききって、死んだように静まり返っていた。
ただ、どこからか耳鳴りに似たセミの鳴き声が聞こえてきた…
呆然と立ちすくむ私に、先生はほほ笑みながら、こう付け加えた。
「突然のことだったので、メグちゃんもびっくりしていましたけど、
とても喜んでいましたわ…お父様もメグちゃんに会うのは、一ヶ月ぶりとのことで、
本当にうれしそうでした…『メグ、迎えに来たよ、お父さんと一緒に帰ろう』って、
仲良く手を繋いでお帰りになりましたわ」

337:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/21 19:13:19 Va5LEeWy
>>336
乙!
落ちの意外性だけでなく、物悲しい雰囲気が良い

338:辛口評論家
09/02/21 20:11:42 dgw+6tyd
>>301
要は、夢オチじゃんか

339:創る名無しに見る名無し
09/02/21 20:27:20 GNuwsaAW
>>335
続きはー?

>>336
死者のお迎え…か

340:創る名無しに見る名無し
09/02/22 02:51:37 gIR1XIad
>>335
N氏が青年の好意につけこんで、青年が用意した家をあたかも自宅のように使っている
その青年さえも自分の家の客人として扱ってしまった
ということ?

341:創る名無しに見る名無し
09/02/22 03:03:32 STDZQ725
>>336
ゴクリ……
なんかアウターゾーンを思い出した

342:創る名無しに見る名無し
09/02/22 04:54:44 s6YQBzo2
>>335
続きはある……よな?

343:辛口評論家
09/02/23 02:53:40 YT8sIdLh
>>338
いや、前半部分がよくできていただけに残念だなぁと・・・
やっぱり、夢オチはマズイでしょ・・・



最初の一つ目を「オレに金に不自由しない人生を与えてくれ!!」にし

「今こそ、三つ目の願いを言おうぞ……」
「ワシに若さと寿命をくれ!
 ワシはまた若くて、力に漲っていたあの頃に戻りたいんじゃ!
 ワシにはまだ、やり残したことがあるんじゃ!
 何も永遠の若さや不老不死が欲しいなどと言うておるんじゃない!
 もう一度だけ若返って、人生を過ごしてみたいだけなんじゃ!
 そのことで、お前が何を企もうが、この際ワシは一向に構わん!」

老人は、病床が嘘のような剣幕で、奇妙な影にまくし立てた

「…………分かった、いいだろう…、オマエの最後の望みもちゃんと叶えてやろう………」

影は静かにそう答えた
その返事を聞き、老人は今既にもう、若返ったかのような歓喜の表情を浮かべた

「………だが、人間よ、その願いなら、もう既に叶えてある………」

老人は、この影の言葉の意味が咄嗟に理解できなかった

「………人間よ、最後に一つ言っておくことがある……、
 オマエはまだ十分に若い…、
 そして、寿命も我々に比べ短すぎる…、その多少は誤差の範囲内だ…、
 我々から見れば、オマエはまだ赤子以下だ………」

影は最後に皮肉な笑みを浮かべながら、そう言うと、いずこかへと音もなく消え去った・・・

344:辛口評論家
09/02/23 02:57:18 YT8sIdLh
いずこかへと音もなく消え去った・・・

いずこかへと音もなく消え去っていった・・・

345:辛口評論家
09/02/23 03:04:09 YT8sIdLh
考えてみれば、上記は見慣れたパターンかもな、
オリジナルのつもりで書いても・・・

企て云々がベースにあるんだろうけど、
結果として、夢オチになってるので、マズイと思う

346:辛口評論家
09/02/23 23:18:52 YT8sIdLh
最初の一つ目を「オレに金に不自由しない人生を与えてくれ!!」にし

最初の一つ目を「オレに金と女に不自由せず、
        戦争に巻き込まれないような安定した人生を与えてえてくれ!!」にし

途中の文章に適合するように変更する

347:創る名無しに見る名無し
09/02/23 23:23:12 4f1WTD1a
はぁ。

348:創る名無しに見る名無し
09/02/23 23:44:11 92IjoSp/
まあ、他人の作品にアレコレ難癖付ける暇があったら
自分のアイディアでSS書けっつー話だわな

349:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/23 23:46:03 WYXd1owr
感想ありがとうございます。
夢オチと見られるのは望むところなのです。

私が変更したのは、最初は“悪魔”と書いて、姿も山羊の角に牙や爪といった具体的な悪魔だったのですが、最終的には“影”に修正して、『型破りに非道な悪魔の話』、『死を前にした老人の妄想の話』どちらともとれるように変えました。
以上、蛇足でした。

(´∀`)またなんか書こかな。

350:創る名無しに見る名無し
09/02/24 00:17:50 Mf1LIEPj
星作品の中でも夢オチものはいくつかあったな
印象に残ってるのは『爆発』

安易に「夢でした」で済ませるんではなく、きちんと意味があり、そのための手法として
用いるんであれば、夢オチってのは全然アリだと思いまつ

351:辛口評論家
09/02/24 00:47:32 ates7YBm
>>350
志向性の違いだろうな・・・
オレは意味があってもなくても嫌いなんだ

352:創る名無しに見る名無し
09/02/24 01:02:51 QptZ/GFn
NG登録し易くていいな

353:創る名無しに見る名無し
09/02/24 01:05:22 F3C61c4M
理想の身体

「ついに出来た!」
K氏は思わず声を上げた。
彼は産まれてこの方、ただの一度も
女性と付き合った事が無かった。
特別に醜い訳ではないが特徴のない顔立ちと
生来の臆病さが原因である。
彼はそんな自分を変えるべく、ある薬の研究に着手していた。
自分の考えた姿になれる薬。
それが今、完成したのである。
K氏は逸る気持ちを抑えながら薬を手に取る。
偶然完成した薬に替えは無く、チャンスは一度きりである。
研究の気晴らしに付けていたテレビではちょうど綺麗な女性が映っている。
「あぁ、私も早くあんな女性と付き合える身体に生まれ変わりたい」
K氏は一気に薬を飲み干した。



後日、芸能界に突如として現れた女性が、
世の女性の羨望を浴びる事になった。

354:創る名無しに見る名無し
09/02/24 01:07:11 RwP0/JBZ
うん、オチは読めても良作w
短いって正義

355:創る名無しに見る名無し
09/02/24 16:18:43 pxIncJPL
俺バカで読解力無いんだけど、
「あんな女性と付き合える身体」になろうと考えたのに
テレビに映った「綺麗な女性」の身体に生まれ変わるのはおかしくない?
それともこーいうのって視覚認識が先行するのが暗黙の了解なの?

356:創る名無しに見る名無し
09/02/24 16:32:18 z337iVOh
男女ではなく友達としてのお付き合いって意味じゃね

357:創る名無しに見る名無し
09/02/24 16:52:22 pxIncJPL
>>356
解釈ありがとう。
ということは薬の方がK氏の意図を間違えたってことだね。人間みたいに。
K氏が外国人だったら言葉が違って大丈夫だったのかな。

358:353
09/02/24 20:15:26 F3C61c4M
分かり難いかもしれないですが、
K氏が作ったのは「考えた姿」に成れる薬です。
飲む直前に女性の事を考えてしまった為、
女性に成ってしまったという事です。

なかなかに難しいですね。

359:創る名無しに見る名無し
09/02/25 00:35:22 xuRAfjgb
>>358
解説どうも。
となると>>355の疑問が残るけど、きっとそういうものなんですね。

360:創る名無しに見る名無し
09/02/26 22:05:39 6l9d1eYH
白髪

二日酔い気味の頭を抑えつつ、水差しから水をついで一息に飲み干した。
舌に何かが絡む。ねっとり絡みつくそれを吐き出すと一本の白髪だった。
誰の白髪か心当たりが無い、昨日飲んだバーだろうか?
よく思い出せない。
誰かの白髪入りの水なんか気持ち悪いので、水差しの水を流しにあける。俺は老人だの婆あだのが大嫌いだ。
まだムカムカする。蛇口から直接水を飲んでいると今度は喉に何か絡まった。
せき込みながら吐き出すとやっぱり白髪だった。
きっと、これは白髪のように見えて白髪ではない、と思い当たった。
一月前に取り付けた浄水器の濾過繊維か何かだろう。
「本当に良いものを勧めるなら自分が持たなくてどうする!」
赤ら顔の上司の罵声を逃れるためにいらない買い物をした。
こんなのを買うのは、無駄にニコニコしてる爺さん婆さんだけだろうと思っていたのに、俺も馬鹿の仲間入りか。

水に白髪を混入させるなんて、ゴミみたいな浄水器だ。その性でますますムカムカしてきた。
俺は便所に駆け込む前に我慢できず、洗面台にもどしてしまった。
洗面台に胃液が絡んだ大量の白髪がぶちまけられた。

なんだこれは
俺は理解できずに白髪をみようとしたがむかつきがおさまらない
また喉元からなにかがはいあがってくる
顔を上げると、
洗面台の
鏡の中の
俺の口の中に
真っ黒い笑顔のばばあ









361:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/02/26 22:07:32 6l9d1eYH
(・ω・)/ヤホー


みんな元気?
久々に一話書いてみました。

362:創る名無しに見る名無し
09/02/26 22:08:51 dGaFnSTn
な、なんだこれは。。形容しがたいホラーでつな

363:創る名無しに見る名無し
09/02/26 22:09:59 9UJuvcWy
怖い……

364:創る名無しに見る名無し
09/02/27 00:11:03 nj0qp150
怖すぎ

365:創る名無しに見る名無し
09/02/28 11:37:14 vSBfJNDM
怖いよう怖いよう

366:創る名無しに見る名無し
09/02/28 12:59:45 5iniuinK
なぜこれをこのスレに投下しようと思ったのやら

367:創る名無しに見る名無し
09/02/28 16:56:53 9wM4rMVi
星新一にも怖い話有るけどね

368:作る七誌に観る七誌
09/02/28 20:50:26 h4hW2Wwx
>>360
ばあちゃん食べたの?

空気読めてないレスでごめん

369:創る名無しに見る名無し
09/02/28 23:53:23 zFsYP0mK
「奥義」

「夫婦円満に過ごすコツ? 奥義があるんですよ」
 N氏はお茶を持って来た奥さんを追い返してから、静かにそう呟いた。
 それから彼は、試験管に入った液体を記者達の前に取り出した。
「これを飲めば肉体は十歳若くなる。動物実験を行ってみましょう」
 氏はネズミ、犬、猫に投与した。
 年老いた犬は十歳若返り、猫は子猫に、ネズミは胎児を経て受精卵になり、やがて消え去ってしまった。
 記者達は嘆息した。
「なるほど、完璧だ。生まれる前まで遡行する訳ですね」
「この発明が……奥義、ですか?」
 記者達は代わる代わる訊ねた。
 これを氏が飲んだのか、それとも奥さんに飲ませて夜の生活を円滑にしているのか。
「違います。これはね、危険な発明なので封印しているんですよ。私も実はこれを実際に使う事は考えていない」
「と、すると……?」
 氏はニヤリと笑って、言った。
「若返られる、という安心感。それだけで十分なのですよ」

 記者達が帰ったあとで、氏は幼い娘を抱きかかえて言った。
「事実を言う訳にはいかないじゃないか。なあ、ハニー」
 N氏の妻がお茶を持って来た。N氏は興味なさげに茶を口に含んでから、娘と語らい続けた。
「あなた―じゃない、旦那様。今日はもう、帰ってよろしいですか?」

「ああ、構わないよ。実のところ君は、昔の妻に似ているから雇っているってだけなんだから」

370:創る名無しに見る名無し
09/03/01 00:02:38 jro5dovc
ロリwwwww

371:創る名無しに見る名無し
09/03/01 00:27:02 jro5dovc
N氏ってロリコンだから妻を幼女にしたんだよな?あってる?

372:創る名無しに見る名無し
09/03/01 00:37:58 ot9Daulj
想定通りですよ
ほかの解釈もあるのかなぁ

373:創る名無しに見る名無し
09/03/01 00:54:17 ZChnFY6R
ネタはすげえ面白い。
ただ、「奥義」はちと違う気がするなぁ。
あとなぜわざわざ記者たちに話してるのかよくわからん。

374:創る名無しに見る名無し
09/03/01 01:12:34 ydU6Nnqu
ロリコンかwww

375:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/03/01 09:20:41 dVS4yZLt
名産品

場所は王宮議事堂。
ここ数週間、国王、大臣、補佐官らは長い長い議論を交わしていたが、一向に答えは出そうに無かった。
議題はこの世界恐慌を凌ぐ金策の方法である。

この国は、王家の所有する国有地を民衆に農地や牧場として貸し与え、野菜や穀物を輸出して経済を成してきた平和な国だった。
ところが、先進国が“食の安全”とやらに気を使いはじめ、輸出が伸び悩みだす。
収穫期を迎えれば、まだなんとかなると思われていたが、収穫期前に取引先の大国が金融危機に陥り、連鎖式に大不況が広まった。


「時期が悪い。早く金策を考えて乗り切らないと、国内に及ぼす影響が計り知れない。」
「そうは言っても、我が国の野菜も果物も乳製品も生産を急には上げられない。金策と言ってもそうは無いぞ。」
「ここは一つ、国王の資産に援助頂いては…」
「不敬な上に馬鹿な奴め、この状況だと海外の資産家に二束三文で買い取られるのがわからんのか!」

会議は紛糾しつつも全く前に進まなかった。
国王は深々と溜め息をつき、思った。
『去年の春は良かった…、
国有地から出荷される作物の生産量報告を朝一番に受ける。
バルキ地区:桃17t、サンラ地区:牛肉18t、ニアデ地区牛乳22t…
民衆が働いている地区の名前を聞く度、やる気が沸いてきたものだ…。』


「そうだっ!」
M国王は手を叩いて飛び上がった。
「先進国では大きな建物や人の集まる場所の命名権を取り引きすると聞いた。
由緒正しい、M国の国有地の命名権を各国に販売しよう。
そして、そのお金で収穫期まで乗り切ろうではないか。」
大臣達は皆でM国王の意見を褒め称えたが、内心『そんな物を買う酔狂な奴などいるはずがない。』と思っていた。
だが、かと言ってうまい考えも浮かばないまま会議は進んだ。

~3ヶ月後~
「国王、今年最初の生産量報告を報告に参りました」
「ご苦労、今年は輸出量も倍増していると聞いたが。」
「はい、これも我が国有地の命名権を売るという国王のアイデアのおかげです。」
「それほど大したものでは無いぞ。さあ、報告を頼む。」
「はい、“山形”地区:桃17t、“松阪”地区:牛肉18t、“北海道”地区牛乳22t…」

376:創る名無しに見る名無し
09/03/01 09:58:26 NBVr/wzb
乙!
日本ブランドの恐ろしさって奴ですねw

377:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/03/01 10:19:25 dVS4yZLt
>>369
面白いです。その発想は無かった


ところでその薬欲し…
いや、何でもないです。…


378:創る名無しに見る名無し
09/03/01 13:23:53 5eawaRvc
>>375
最後までオチが読めなかった。
皮肉が利いて面白い。

379:創る名無しに見る名無し
09/03/01 14:20:39 jro5dovc
日本に輸出したら国産みたいになるのかw
これはまったくオチがよめなかったw

380:創る名無しに見る名無し
09/03/01 14:58:37 TnXswYUF
>>369
>>375
どっちも面白いね、

381:創る名無しに見る名無し
09/03/01 15:08:27 ZmwUqqkh
>>375
C国K産党があなたの発想に興味を持ったようです

382:創る名無しに見る名無し
09/03/01 16:00:54 QLyHrWvJ
実際にありそうだなw

383:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/03/01 20:03:54 dVS4yZLt
皆さん、感想有難うございます。
(・ω・)/

言い訳がましいですけど、自分の携帯は500文字以上になるとページ変更した時、500文字超えた分が削除されるので、
作品書き始めるとスレの流れを読めません。
誰かの作品の感想の真っ只中に作品投下してしまうかもしれませんがご了承下さい。


>>373
あえて>>369に口を挟ませてもらえるなら「極意」の方がしっくりくるかも…

384:創る名無しに見る名無し
09/03/01 21:34:45 jro5dovc
「おうぎ」にちょっと意味があったりするわけですよ
御題的な意味でね

385:369
09/03/02 22:18:41 REoSw394
感想どもですー。
タイトル、確かに極意の方がしっくり来るですな……。

「平和」

 K氏は猫を撫でながら、窓の外を見ていた。
 徐々に春の雰囲気が漂いはじめてはいるが、たちまち冬の残り香にかき消されてしまう。
「これが平和というものなのだろう」
 K氏の傍らにはテレビが点いている。
 ニュースが流れていた。五年連続で、世界中でまったく紛争が確認できなかったという情報を伝えていた。
「あたりまえさ。争いの火種も、五十年前に尽きたからねえ。
 そう思わないかい、ミイちゃん」
 年老いた猫は、K氏の指先に喉をあてながら、満足げに喉を鳴らしていた。
「希望は、不満を生むんだ。不満が争いを生む」
 彼の部屋には、沢山の
「僕は今、とても平和な気分だよ。寂しささえなくなった。とても、ほのぼのとした気持ちさ」
 K氏はやおら、身を起こす。
「絶望は、人類から不満を摘む。争いは起こらない」
 年老いた猫は、気怠そうにK氏の膝から降りた。

 五十年前に戦争が終わり、とある某国が放った特殊な化学兵器の効果は、地球全体に及んだ。
 人類は、まったく新生児を作れなくなった。
 K氏は嘆いた。
 ―つまり人類は、完璧な平和を、誰もが全てを諦めて欲求しなくなった先でしか見出せなかったって訳だ。
「きっと、お前もそうなんだろう。さようなら、ミイちゃん」
 K氏は椅子を蹴った。

 年老いた猫が宙吊りのK氏を見上げて、不服そうに「ミャオウ」と鳴いた。



386:創る名無しに見る名無し
09/03/02 22:40:10 inYIyeAA
何か深い話だな
思わず考えさせられてしまったぜ

387:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/03/02 23:21:58 +nkzbEZJ
深い…

現実味がある

388:創る名無しに見る名無し
09/03/02 23:51:19 BZgb9hN9
ID見覚えあると思ったらwwテラ多才wwww
ミイちゃんは何に不服だったんだろう?
あと文章の抜け?は意図的??

389:創る名無しに見る名無し
09/03/02 23:52:28 XyIK9Xcc
いいね、この何とも言えない後味
個人的には「子供が産まれなくなった」というネタばらし?を最後に持ってくる方が好きかな

390:創る名無しに見る名無し
09/03/03 03:35:48 ZHdTHhDN
彼の部屋には、沢山の  の後が気になるよう

391:創る名無しに見る名無し
09/03/03 14:22:32 TWKBtJCs
落丁すみません><
推敲中に悩んだまま埋めるの忘れてました><

> 彼の部屋には、沢山の表彰状や思い出の写真が飾られたまま埃を被っていた。

とか埋めておきます

392:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/03/04 01:50:09 nhN4B272
男と怪獣と

M氏が居間でくつろいでいると、番組が突然切り替わりニューススタジオを映し出した。
「臨時ニュースです。今日、午前5時頃N市A地区のQ山系に隕石が落下。中から巨大な生物が現れ、付近では混乱が起きているようです。現場付近では山火事も…」

突拍子もないニュースだったが、M氏を強く引きつけたのはニュースの内容もさることながら、その場所にあった。
M氏は自家用車の鍵を握りしめて玄関を飛び出した。


交通規制を振り切り、車で山道を走り抜ける間、M氏はずっと彼女の事を思い出していた。
初めて彼女に出会ったあの思い出の場所、彼女の微笑みに恋したあの愛しい場所、彼女を探し歩いたあの切ない場所。
しかし、短いトンネルを抜けて現場に着いた瞬間、M氏の心は後悔一色に塗りつぶされた。

M氏の目の前で、黒煙を上げて燃え盛る山々。その煙のすぐ向こう側には100mは超えるであろう、怪物の巨躯がうっすらと見える。
巨大な翼や三本の首らしきもの、稲妻のように迸る怪光線に、M氏は「私がここに来てなんになると言うのだ…」と絶望に満ちた独り言を呟いた。

その時、煙の向こうの影が足を踏み外すかのように大きく傾いだ。

その瞬間、目の前に“彼女”が立っていた。
彼女は以前と変わらない美しい笑顔を見せて微笑んだ。

「あなたが落としたのは金の怪獣ですか?銀の怪獣ですか?それとも普通の怪獣ですか?」

この時、この瞬間の為に自分は彼女に出会い、そして再会したのだと確信しながら、M氏は彼女に微笑み返して答えた。

「私が落としたのは金の怪獣です。」

怪獣の唸り声が消えて、一瞬の静寂が訪れた。

393:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/03/04 01:55:02 nhN4B272
彼女は再び微笑み、鈴の鳴るような声で言った。

「あなたは本当に正直者ですね。褒美に…」

その後の彼女の言葉は、轟音と突風に吹き飛ばされたM氏には聞き取れなかった。

山火事の煙さえも吹き飛ばして、黄金に輝くキングギドラが三匹、颯爽と飛んでいった。

394:創る名無しに見る名無し
09/03/04 02:07:03 tgblekmv
なんというwww

395:創る名無しに見る名無し
09/03/04 02:36:11 4Yg5THc/
まさかの金の尾の銀の斧w

396:創る名無しに見る名無し
09/03/04 03:32:18 UNKERSdR
なんて壮大なw

397:創る名無しに見る名無し
09/03/04 10:33:07 u3EyN+VL
これは華麗な超展開ww

398:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/03/04 23:37:47 nhN4B272
≡( ゚∀゚)ヤホー

※1
本編は一応、>>241「星と美女」の続編にあたります。

※2
キングギドラは三つの竜の頭を持つ黄金の怪獣です。

※3
初めて前後編の大長編スペルカクルにしてみました。

399:創る名無しに見る名無し
09/03/05 01:12:35 qC5gnN3g
なんという斜め上の大長編スペクタルw

400:創る名無しに見る名無し
09/03/06 22:50:22 r6RbRAXm
期待オェーーーーッ

401:自殺
09/03/07 14:27:54 NQntGkSh
 男は自殺の名所といわれるA岬にやってきた。この世の全てが嫌になったのだ
 意外なことに、そこには実に多様な人々がいた
「自殺なんてもったいない、我々と一緒にぜひインコ真理教に入りましょう。空中浮遊!」
 数人の男女が手を合わせてピョンピョンと跳ねている
「にいちゃん、どうせ死ぬなら戸籍売ってくれんかのぅ?」
 サングラスをかけた強面の男が肩に手をかけてくる
「死ね、死ね、死ね、呪い殺してやる!」
 枯れ木のようにひょろひょろとした体格の男が血走った目で『祝ってやる』と大きな紙に書きなぐっている
「人生そんな辛いことばかりじゃないんだから。だいたいアナタを産んでくれたお母さんに~~努力すれば誰でも~~死体の処理にたくさんの税金が~~」
 よく肥えた年配の女が長々と説教してくる
 なんだかどっと疲れた男はA岬を後にした。また次があるさ。しかし死ぬのも案外労力がかかるものだなぁ。ひょっとすると、ダラダラと生きたほうがよっぽど楽かもしれないな

402:創る名無しに見る名無し
09/03/07 14:38:32 NQntGkSh
最後に行間空けるの忘れてた……

403:創る名無しに見る名無し
09/03/07 17:45:38 QtfwlhiE
名所すぎるんだなw

404:創る名無しに見る名無し
09/03/08 14:49:35 lmZQD9Vr
おもしろい
意外とこうゆうの書くの難しいんだよな

405:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/03/09 20:22:58 RqdjeySx
味があるショートショート
なかなか、書こうと思ってもこうは書けない

(`・ω・´)

406:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/03/09 20:51:51 RqdjeySx
童話抽出機


昔々、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。
お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。
お婆さんが川で洗濯をしていると、川上の方から男の子がドンブラコドンブラコと流れてきました。
お婆さんは、
「可哀想に、おおかた間引きにでもあったのか。なんまんだぶなんまんだぶ。」
と手を合わせて男の子を見送りました。


お姫様の駕籠の前を塞いだのは、大きな大きな赤鬼でした。
お姫様の家来は慌てて逃げ出してしまいました。
お姫様を守るために鬼の前に立ちはだかったのは、小さな小さな一寸法師。
鬼は、
「お前みたいな虫けらに何ができる。」と笑って一寸法師を一飲みにしてしまいました。
哀れ、丸腰の一寸法師は鬼のお腹の中で消化されてしまいました。



「こんな物がなんになると言うんだ!」
怒声と共に、絵本がコンクリートの床に叩きつけられた。
「じゃから、ワシの発明したのは童話抽出機というものなのじゃ。」
M博士は話しながら、目の前の男はまるで赤鬼のようだとおもっていた。
「俺が聞いているのはお前の動機だ!」
髭面の真っ赤な顔がM博士の鼻先に迫った。
「じゃから、『桃太郎』に『一寸法師』が挟まっておったのじゃ…。」
そう言って、M博士は申し訳なさそうにうつむく。
「わけのわからん事を言って、精神病を装っても無駄だぞ!
俺は『針入りの桃を路上で売った動機』を聞いているんだ!」
赤鬼のような刑事は、M博士をまだまだ取調室から出す気はなさそうだった。

407:創る名無しに見る名無し
09/03/09 20:56:19 5l4lOINN
そこがオチかw

408:創る名無しに見る名無し
09/03/09 21:24:57 +39KY8x2
うーん…

409:創る名無しに見る名無し
09/03/09 21:44:24 xDoSQu0O
わからんw

410:XXX ◆TqnDIIRxZU
09/03/09 21:51:44 RqdjeySx
微妙でしたか、
次がんばる

(・ω・)/

411:創る名無しに見る名無し
09/03/09 22:04:39 Bt67Bf9r
桃と針を、絵本の中から同時に取りだしてしまったって事なんだろうが
それを博士が路上で売ってたのが謎だな
金が欲しいなら小判とか引っ張り出した方が確実なのに

まあ、白衣の爺さんが
赤ん坊が入るサイズのデカい桃を路上で売ってたってのを想像すると
色んな意味でシュール過ぎるけど

412:創る名無しに見る名無し
09/03/11 19:28:29 lbwX5nkq
混ざったってことか

413:創る名無しに見る名無し
09/03/13 00:33:45 MW0bmWc+
「黒か白」

エフ氏は宇宙開拓局というところに勤めている。
宇宙の様々な場所を調べるためにつくられた局だ。

エフ氏は今日も普段通りに宇宙開拓局へと来た。
「さて、今日はどの惑星の調査だろうか。新型ロケットが次々と開発されたため、銀河系のどの惑星にも1日とかからずに着くからな。気楽な仕事だ。」
エフ氏の仕事は、惑星に行って、空気の測定や、生物の様子を調べて帰ってくるという仕事だった。
「まったく、最初のうちはドキドキしながら行ったものだが、最近は同じ行為の繰り返しばかりで飽きてきたな。たまにはスリルのある仕事をやってみたいものだ。」
そうつぶやいているエフ氏のもとへ、局長がやってきた。
「エフ君。単調な仕事に飽き飽きしているようだね。たまには危険な仕事もやってみるかい?」
「えっ、やらせてもらえるんですか。もちろん、やります。どのような内容ですか?」
「うむ、ブラックホールの調査をしてもらいたい。」
エフ氏は驚いた。
「ブラックホールですって。大丈夫なんですか?」
「分からないが、学者の仮説では、ブラックホールはホワイトホールと呼ばれるところに通じていて、そこへワープするらしい。」
「なるほど・・・」
「もしその仮設が証明されれば、ワープが可能になり、宇宙開拓もかなり進むだろう。もちろん君は昇進するし、かなりの額のボーナスも出る。」
「なるほど。やってみる価値はありそうですね。行かせて頂きます。」

そしてエフ氏の乗った超高速ロケットは、銀河系の中心にあるブラックホールへと向かった。
十数時間後、管制センターへ連絡が入った。
「こちらエフです。ブラックホールに到着しました。これより突入します。」
「幸運を祈る。」

その後数日間、連絡は途絶えていた。
皆があきらめかけた時、通信が入った。
「こちらエフです。ブラックホールはどこかの惑星へと通じていました!」
管制センターが歓声で包まれた。
「おお!素晴らしい。その惑星の様子を詳しく説明してくれ。」
「はい。空気はとても澄んでいます。また、清らかな小川、新緑の森、美しい花畑、それに住民は皆私を歓迎してくれています。美食に美酒、美女までなんでも揃っています。
でもみんな足が無いような・・・まあそういう種族なのでしょう。あれ?僕の足も無くなっている。」
管制センターはため息で包まれた。


414:創る名無しに見る名無し
09/03/13 00:35:35 MW0bmWc+
初投稿です。
見にくくてすいません。

415:創る名無しに見る名無し
09/03/13 03:07:05 zL7T6nB7
>>413
何気にホラーじゃねーかw

416:創る名無しに見る名無し
09/03/13 03:29:42 kusPzRxL
エフ氏……(;ω;)

417:創る名無しに見る名無し
09/03/13 03:53:19 EowO/oLs
コンタクト可能な彼岸の発見
ワープってレベルじゃない大変な功績だw

418:創る名無しに見る名無し
09/03/13 11:55:19 AfwZbM4U
これ好きだなー
ほのぼのしながらもちょっと黒いというかなんというか

419:not星 ◆tHwkIlYXTE
09/03/13 16:16:24 sATNjJDc

『文明』


我々は重大な情報を手にした。地球が我々の星を滅ぼそうとしているらしい。
我がS星は地球よりもかなり文明が発達している。
逆に地球を滅ぼすなど簡単な事なのだ。

この星は無機物で出来ている。我々の体も地球の人間とは異なった素材でできている。
人間などのように痛みに苦しむ事もない。
 
 
『たった今、地球から核ミサイルが発射されました。あと1時間でS星に着弾します。』


とうとう戦争が始まるのか。しかし我々には人を憎むと言うことがない。
だが星を守るためには仕方なかった。

そこで我々は考えた。
数億年前の地球まで遡り、そこで地球を滅ぼせば我々は攻撃をされないし、我々も人類に攻撃をしない事になる。

これは名案だった。
すぐに我々は時空転送機で地球に向かった。
そこで星を壊滅させる爆弾をしかけた。



『あと10分でミサイルが着弾します。』

ついに我々は爆弾のスイッチを押した。




そして地球とS星は消滅した。

420:創る名無しに見る名無し
09/03/13 18:20:32 xVKG0jna
オチがよく分からん

S星がかつての地球だったって事なのか?
てか、時空超えれるレベルの技術力持ってんなら
核ミサイル防ぐくらい楽勝だと思うんだが
そこら辺は文明が歪な発達の仕方をしたって事だろうかね

421:創る名無しに見る名無し
09/03/13 18:57:51 IM36yBAA
おれもさっぱりわからん

422:創る名無しに見る名無し
09/03/13 20:26:18 sATNjJDc
地球がS星を作ったって事だろ
と作者が解説してみる
 
今日の再放送見て考えたから内容はかなり薄いし
わけわからなくてごめん

423:創る名無しに見る名無し
09/03/13 20:35:18 xVKG0jna
地球がS星作ったってのは
古代に超文明があって、その連中が星を作ってたって事なのか?

424:創る名無しに見る名無し
09/03/13 20:37:47 sATNjJDc
古代に作ったって訳じゃないよ 
 
昔の地球ぶっつぶしたら
今の地球もないわけだから
わかりづらいかのう(´・ω・`)

425:創る名無しに見る名無し
09/03/13 20:45:53 xVKG0jna
地球の連中が作ったってんなら
今の地球の文明がS星以下ってのが変でね?と

それがS星の連中の勘違いってんなら
それはそれで「地球が時空転送機に対処出来ないのは何で?」ってなるし

426:創る名無しに見る名無し
09/03/13 20:51:59 sATNjJDc
背景としては
S星が発達しすぎたって言う(´・ω・`)
 
言葉が足らんかったな
出なおしてくるわ

427:創る名無しに見る名無し
09/03/14 00:24:05 bzr0w0aK
「むかしむかし・・・」


「むかしむかし、ある所にお爺さんがおりました……。」
孫と一緒に暮らしている老婆は、童話を話し終えた。
「うわあ、強欲なお爺さんだなあ。欲を出さなければ良いお爺さんのように幸せになれたのにね。」
「そうだねえ・・・。」

そのころ、地球はソル星という惑星と親交があり、お互いに貿易などをしていた。
ソル星には穏やかで優しい種族が住んでいた。
ある日、ソル星から地球に通信が入った。
「もしもし、地球さんですか。ソル星の者です。」
「どうも。何かご用でしょうか?」
「はい、地球さんが欲しがっているウランがたくさん手に入りまして、いつもよりもお安く提供できると思いますよ。」
「ほう。しかしどうやって手に入れたのです?」
「それが、まだ文明の発達していない星を見つけましてね、そこに様々な技術を提供したところ、お礼としてウランをくれたのです。」
「なんだって。ということは、その星にはウランが大量にあるんですね?」
「おそらく。」
「その星の場所を教えてください。ぜひ行ってみたい。」
「わかりました。」

ソル星の人々に教えられ、地球の宇宙船はその星に着いた。
「やあ。我々は地球という星のものです。何か技術を提供するので、ウランをくださいませんか。」
「すみません。ソル星の人達からだいぶ情報を頂いたので、もう要りません。」
「ならばウランと地球の物資を交換しませんか?」
「すみません。ソル星の人達から頂いた物で満足しておりますので・・・。」
「ならば仕方ない。」
「ご期待に添えず、申し訳ありません。」
「いや、帰らないぞ。」
「えっ?」
「ウランをよこせ。さもないと強力な爆弾がお前たちの星を襲うぞ。こんな風にな。」
少し離れた所から、大爆発が起こった。
「ははは。見たか。これが地球の軍事力だ。」
「ど、どうかお助けを。ウランはいくらでも持って行ってください。」
宇宙船は、ウランを積めるだけ積んで帰って行った。
「大収穫だ。これからもちょくちょく来るとしよう。」

「くそう、地球人め、親切だったソル星の人々とは大違いだ。今に見ていろ・・・」

それから数か月たったある日、地球にウランが豊富な星の宇宙船が来た。
「どうも。地球のみなさん。いつかはお世話になりましたねえ。あなた方が帰って行ったあと、我々はあの爆弾を研究し、ウランをつかった爆弾だとわかりました。
ウランは私たちの星に豊富にあるので、たくさん作れましたよ。ふふふ。」
そのすぐ後、地球は強烈な閃光と轟音に包まれた・・・

数百年後、ソル星ではある人が童話を話していた。
「むかしむかし、あるところに、地球という星がありました・・・。」
それを聞いていた子供たちはこう言った。
「うわあ。強欲な星だなあ。欲を出さなければ、僕たちの星のように幸せになれたのにね・・・。」


428:創る名無しに見る名無し
09/03/14 00:26:48 bzr0w0aK
文章が粗くてすいません。
近代的な童話っぽい感じで書きました

429:創る名無しに見る名無し
09/03/14 00:36:09 DVz76AQu
序盤で昔話を入れなかった方が良かったんでないの?
オチが見えてて意外性とかも無かったし

昔話のオチと違って、ソル星も滅ぼされるのかな~とか思いながら読んでた
デモンストレーションにビビって星一つ滅ぼすくらいに気性が荒過ぎる星の住人なら
次は温厚なソル星すらも疑心暗鬼で狙いそうだし

430:創る名無しに見る名無し
09/03/14 01:36:13 bzr0w0aK
なるほど
序盤のやつはタイトルを活かすために入れたんですが、逆効果でしたね。
次がんばります

431:創る名無しに見る名無し
09/03/14 02:00:36 gXr67Xxk
>>419
感想待ってるよ

432:創る名無しに見る名無し
09/03/14 09:59:53 3kDbR5gx
URLリンク(kissho.xii.jp)

まんま何か(『夜の声』でしたっけ?)に似ています。お許しを。

433:創る名無しに見る名無し
09/03/14 10:19:42 gXr67Xxk
はい携帯の俺涙目ww

434:1
09/03/14 10:50:33 3kDbR5gx
 カチ。また腕時計が針音を鳴らす。黒革のベルトに白銀の字盤、針に簡単な細工を施したやや小さめなこの時計。
幼き日から今日の今まで、僕の腕上で動き続けてくれたこの時計をいつ如何にして手に入れたのか、僕は何故か覚えていない。

 この腕時計がどこかおかしいことに気が付いたのは四年ほど前、中学校の運動会の日。個人種目でニ〇〇メートルを走り終え、
空いた教室で友人らと水筒の茶を飲みながら語らいでいる際、ふと静かとなった一瞬に、聞き覚えのある針音が数度聞こえた時である。
違和感があった。時計が一秒を刻む際に鳴らす針音の間隔が、実際の一秒のそれよりもやや短いように思えたのだ。
その時はすぐ会話が再開したためあまり気に止めずにおり、またしばらくして腕時計を見ると時刻に狂いはなかったため、ただの勘違いだと思うことにした。
 翌日、熱を出した。布団にくるまるも眠れずにいると、机の上に置いた腕時計の針音が部屋に響いた。今度はすぐに気が付いた。
明らかに針の音が一秒よりも遅いのだ。試しに手元の携帯電話の時計画面を開いて確認したところ、針の音がニ度鳴るのに三秒近くかかっていた。
これは明らかにおかしい。故障かと飛び起きて時計の針を確認すると、しかし針は携帯電話の時刻表示と同じリズムで、一秒に五度を移動する規則的な運動を繰り返していた。
が、針の鳴らすカチカチという針音は明らかにその動きに合っておらず、遅いのである。僕は腕を組んだ。
 右手がパジャマを越して左胸に触れる、その一瞬に理解した。針音は、等しく僕の拍動に対応していた。

435:2
09/03/14 10:51:38 3kDbR5gx
 僕はその後高校に入った。入学式、式辞を読む際の冷めぬ緊張を腕時計は乾いた音で冷ましてくれた。
またそれは飲酒量の限りを、自らの意識せぬ興奮をその音で伝えてくれた。僕の生活は常に腕時計と共にあった。
遠い昔も、あの日々も、そして初の試験の前日、不治の病と診られた結果、寝たきりとなった今でさえも。

 余命を宣告された瞬間、頭の中は絶え間無い針音に支配された。六ヶ月。あと半年で僕は死ぬのか。やがて暗くなった視界の中に、幼稚園児程度の少年の顔が現れた。
知らぬ顔だが、僕を見て笑っているらしい。その純朴な笑顔に何故か底知れぬ罪悪感と強い敵意を感じると、僕は意識を失った。

 それから五月ほどが過ぎた。先月は医師から自宅療養を勧められ、僕も家族も従った。
掛布団の下の僕の拍動は今にも折れそうな肋骨を弱弱しく叩くのみで、意識して心音を聞こうとしても針音に掻き消されてしまうほどに弱弱しくなっている。
喉の重さを払おうと、溜息をつき、息を吸う。ひゅうと音をたて、詰まる。息が、吸えない。首を左に捻る。針音が止まっている。鼓動も聞こえない。
ふっと揺らいだ視界がやがて薄い闇に落ちると、再びあの少年の顔が浮かんだ。とても嬉しそうな顔をしている。誰なんだ、これは?記憶を探る間もなく、僕の世界から完全に光が消えた。

436:3/3
09/03/14 10:53:01 3kDbR5gx
瞼の裏にぼやりと、あの少年の顔が再び浮かんだ。その表情は醜く歪み、何度もこちらに舌打ちをしている。
やがてその音は僕の鼓動と同化し、やがて針音に掻き消された。息が吸える。瞼を開けた。僕はまだ生きていた。
チューブの刺さった右手を握り締め、母が泣いていた。

 その後、今日まで一週間生きた。喉の重さがあの時を思わせる。今息を吐いてしまえば、次に吸うことは恐らく永久にできないだろう。
怖い。死が怖い。この息を吐きたくない。しかし僕は息を吐いてしまう。息苦しさを覚えると同時に針音が止むと、今度はすぐに闇が訪れた。
いつもの少年の顔に代わり、今度が本当に最期なのだろう、走馬灯が始まった。誕生、両親との日々、幼き日に見たテレビ番組―。
いくつかのシーンののちに、幼稚園の制服を着て、同い年程度の子供たちを引き連れ公園を歩く僕が見えた。小さい頃にガキ大将を気取っていたことなど、今になるまで忘れていた。
 僕はどうやら一人の少年を苛めているようだった。暫しの喧騒、怒号、泣き声の後、そこには顔を覆い嗚咽を零す少年と、彼を背にし、
あの腕時計を手に揚々とはしゃぐ僕の姿があった。ああ、思い出した。あの時計はあの少年から奪ったものだったのだ。近所の名前も知らない少年。
確か彼はその後公園に来ることはなかったため、僕の記憶からも消えてしまったのだろう。
 突如、走馬灯が止まった。泣き顔の少年が顔を上げ、僕を見た。その顔は幾度か闇の中に見た顔と同じだった。
少年は凍りついた僕を舐めるように見上げると、僕を指差し何かを言った。消え入りそうな声だったが、何を言ったかはすぐにわかった。

 「おわりだよ。おしまいだよ」

 僕は少年から目を逸らし、走馬灯の続きを待つ。ふと左腕を見ると、そこにはもうあの腕時計はない。
やがて少年が消えると視界はやがて完全な闇に覆われ、走馬灯の続きはいつまでも始まることはなく、響いてくるのは名前も知らないあの少年の笑い声ばかり…。

437:創る名無しに見る名無し
09/03/14 10:54:05 3kDbR5gx
以上です。今更だけど、星っぽくない・・・。

438:創る名無しに見る名無し
09/03/14 11:40:13 +o0DWJNt
縦書きはこうやって投下する方法もあるのか……

星っぽくはないけどいい短編だったぜ

439:創る名無しに見る名無し
09/03/14 17:05:41 OuN+XXau
宇宙の外側を発見した。
ある研究者の衝撃的な発表は瞬く間に世界に広がった。
それによると、宇宙の外側は真っ白い光に溢れた空間であり、そこと宇宙とは透明な硬い壁で隔てられているらしい。
その真偽を自らの目で確かめるべく、数名の優秀な宇宙飛行士たちが宇宙へ飛び立った。

彼らが出発して数ヶ月が経った頃。
「おい!あれを見ろ!」
宇宙船の中で歓声が上がった。
そこには見たこともないような真っ白に輝く光景が広がっていた。
「素晴らしい!きっとあそこが宇宙の外側に違いない。」
しかしその刹那、船体に激しい揺れが走った。船は制御不能に陥り、光の濁流に呑み込まれて行った。


「それ、棄てるの?」
「ええ、最近光らなくなってきたし。」
「結構古いものね。安物のインテリアにしてはよくもった方じゃない?」
「そうね。ちょっと寂しいわ。でも彼が最新型のを買ってくれたから。」
白いエプロンをつけた女性はくすくすと笑いながらガラスの容器に入った黒い水を台所に流した。

440:創る名無しに見る名無し
09/03/14 17:07:13 OuN+XXau
初投下。
ショートショートって難しい。

441:創る名無しに見る名無し
09/03/15 21:25:47 S6b9SYHC
やっと書き込めた

>>434
息苦しくなるくらい悲しい話だった。いいね。

>>439
たまねぎシステムな宇宙体系はありがちだけど、
みんな一度は考えるよね。

442:創る名無しに見る名無し
09/03/16 03:14:16 BP+CUwnA
宇宙はインテリアだったのか
外の白い空間は女性の部屋ってことだな

443:創る名無しに見る名無し
09/03/16 12:20:05 dSOS1AEn
世界の果てへの想像力こそがSFの始まりなのです

444:創る名無しに見る名無し
09/03/21 00:21:46 zaIW+XnP
保守

445:創る名無しに見る名無し
09/03/21 10:34:14 bOEEoBAF
>>434
幼稚園時代と時計が好きな主人公の結び付きが弱い。

>>439
星っぽくて好き。最後の彼女の台詞がいい。

446:創る名無しに見る名無し
09/03/22 13:54:23 dpBHy0GJ
いまのところ本スレで発表された71作品のリンクまとめてみました。

URLリンク(www6.uploader.jp)

447:創る名無しに見る名無し
09/03/22 19:53:19 wbUO2Zc8
おおーGJ
IDもGJ 書いてみたくなるね ネタないけど

448:創る名無しに見る名無し
09/03/23 12:51:35 DIU7Hf74
まとめwikiも欲しいなぁ

449:フォーティーナイナー ◆WMJUSq/3gY
09/03/23 12:53:46 VuCloGaN
 草一本ない荒野を男が歩いていた。
 彼の頭上には巨大な赤い太陽が、鈍く光っている。男は愚痴をこぼした。
「まったく、行けども行けども何にもない。この地方はどうなっとるんじゃ……おや、建物があるではないか。
ずいぶん大きいが、なにか変わった建物じゃな」
 入ってみると、ひとりでに灯りがついた。
「おお、誰かいるのか。ようやく人に会えたわい」
 そう言って見渡してみるが、誰もいない。ただ大きく、殺風景な壁があるだけである。
と、その壁が急に光りだし、にこやかな青年の顔が映った。
「人ではありませんが、いらっしゃいませ。ようこそ地球へ」
 男はあんぐりと顔をあけて、壁に映った顔を眺めた。
「なんと……これはマーラの技か」
「科学の技です。はじめまして。あなたはどなたですか。宇宙に脱出した人類の生き残りでしょうか。
それともこの星を発見した異星人の方ですか。いずれにしても歓迎します。地球、そして地球人についての
全てのデータがあなたのものです」
「わしは弥勒菩薩だ」
「ミロクボサツさん。あなたは地球人の子孫ですか? それとも別種族の方でしょうか?
残念ながら太陽系の寿命は尽きつつありますが、人類は滅亡前に、地球と地球人についてのあらゆるデータを
私というコンピュータに残しておきました。いつの日か、宇宙人でも異次元人でもいい、誰かがその知識を
受け継いでくれるのを待っているのです。そう、あなたです。感激です。とうとう私の使命を果たせるときが来たのです」
「わしは仏じゃ。天界、極楽浄土からやって来た」
「……はぁ?」
「わしは仏だ。弥勒菩薩じゃ」
「仏のミロクボサツさん……ああ、データにありますね。確かブッディズムという古代宗教の教祖さまの後継者で、
初代のゴータマ・シッダールタ氏が亡くなられてから56億7000万年後に地上に現れ、多くの衆生を救うという。
東アジア文化史の記録に書かれています。確かに現在はAD56億6999万9617年。たしかに予言通りに
来て頂いたんですね」
「その通りじゃ!」
 弥勒菩薩は胸を張って言った。
「ところでこの地上はどうしたことだ。誰もいないし草一本生えておらん。マーラが人間を滅ぼしてしまったのか」
「マーラ……はい、その言葉もデータにあります。サンスクリット語で悪魔のことですね。いや、悪魔は関係ありません。
太陽の寿命のせいです。あなたの先任者、通称お釈迦さまでしたっけ。あの方が亡くなられて」
「亡くなったなどと俗な言い方をするな。入滅と呼べ、入滅と」
 少し不機嫌な声で弥勒は異議を唱えた。
「そうそう、入滅と呼ぶんでしたね。入滅されてから50億年ほどで太陽は膨張期に入っているんです。そのせいで
地球にはとっくに人が住めなくなってますよ」
「なに? では衆生はおらんのか!?」
 弥勒は叫んだ。
「いや、お前がおるではないか。お前を救済し、輪廻の苦しみから解脱させてやろう」
「私はコンピュータです。あなたと会話しているのは、このディスプレイに表示しているグラフィックに過ぎませんからねえ。
もともと輪廻転生なんてしてませんから、解脱とおっしゃられても、もうすでに解脱しているのかもしれません。
それより人類の知識を……」
「そんなものに興味は無い!わしは衆生を救いに来たのじゃ!」
「あ、そうですか」
 プツン。
 知識のリクエストがないとみるや、コンピュータは自ら画面を切った。
 あとに残された弥勒菩薩は、荒野に飛び出した。
「わしを崇める凡夫どもはどこじゃ!わしは救世主なるぞおおお!」
 釈迦の入滅後、56億7000万年後に出現する弥勒菩薩。
 彼は巨大な赤い太陽の下、誰もいない荒野でたった一人、自分を有難がってくれるはずの人間を求め、
いつまでもいつまでもわめき続けるのだった。

450:創る名無しに見る名無し
09/03/23 12:57:13 VuCloGaN
あ、初めて投稿するので題名忘れてました。
『弥勒菩薩』です。

451:創る名無しに見る名無し
09/03/23 13:25:54 DIU7Hf74

シュールで良いね

452:創る名無しに見る名無し
09/03/23 20:02:54 YrECqOPj
弥勒wwww
そりゃ確かに50億年後って人類もういない可能性激高だよなw

453:創る名無しに見る名無し
09/03/23 23:55:11 DIU7Hf74
>>446
今まで何気なく読んでたけど71作品もあったんだ

454:創る名無しに見る名無し
09/03/24 00:52:40 ow8cSIv6
人気投票でもやってみますか?

455:創る名無しに見る名無し
09/03/24 01:53:32 /LQP72zW
してもいいけどスレが荒れるからやめとこうぜ

456:創る名無しに見る名無し
09/03/24 02:34:20 QqNe+nL2
それはつまりしてもよくないのでは

てか普通に放っておいて欲しいですw
気軽に投下したつもりの身としては順位つけられたら泣くしかないがな

457:創る名無しに見る名無し
09/03/24 10:39:32 LxMervw+
人気投票は流石にアレだがwみんなのオススメをいくつか訊くのはありと思える不思議

458:フォーティーナイナー ◆WMJUSq/3gY
09/03/24 18:04:36 VjYxOK1r
『歴史適正化法の歴史的成果』

 西暦2206年、時間移動技術が理論化され、2年後にはタイム・テレポーターが発明された。
 すでに国家は統合されており、地球連邦政府という、国際連合から発展したひねりの無い名前の
単一政府ができていた。地球連邦最高議会は2年前の理論完成段階で、すでに「時間移動装置が
発明された場合、ただちに地球連邦政府の管理下におかれる」という法律を作っていた。
 最高議会の議長モリヤマ氏は、タイム・テレポーターは人類が歴史上で犯した過ちを防ぐために
使われるべきだ、との感動的な大演説をおこなった。
 彼は言った。
「時間移動技術が個人の利益のために使われるとき、それは歴史の単なる破壊を意味する。
公的な管理のもとで、人類が起こしてしまった悲劇を未然に防ぐためにのみ使用されるべきである。
ナチスによるユダヤ人虐殺、ヒロシマとナガサキの悲劇、そして無数の戦争……先祖のあやまちを、
子孫の我々が時を超えて償うのだ。これは人類史にかつてなかった、時間を超えたレスキューである!」
 彼の演説は世界中の賛同を浴びた。
 最高議会では通称タイム・レスキュー法、正式名称「歴史適正化法」がまたたく間に可決した。
そして同法に基づき、修正すべき歴史事件とその方法を割り出す歴史適正化委員会と、その実行部隊である
「タイム・レスキュー」が組織された。
 タイム・レスキューは決して武力を行使しない。「我々の超科学兵器を1000年前に送り込み、騎馬民族や
イスラム帝国と対決させるようなことはすべきでない」とモリヤマ氏は説いた。彼らの任務は現地の社会に
入り込み、当時の重要人物に精神的な影響を与えることで、歴史を悲劇の淵に近づけさせないように
することであった。
 過去の状況によって、任務には若者が適する事態もあれば、老人の意見が重要となる場面もある。
年齢・性別を超えてあらゆる層から、一流の人間だけが選ばれた。人材にはまったく不自由しなかった。
この偉大な任務には、世界中からあらゆる人々が参加したがったのだから。そして地球全土が、選ばれた
タイム・レスキュー隊員に喝采を送ったのだった。
 作戦が開始された。
 歴史適正化委員会の定めたミッションに従い、タイム・レスキューはすぐさま様々な時代へと飛んだ。
 あるチームは学者や聖職者として、魔女狩りのおろかさを説いた。
 あるチームは革命前のフランスへと旅立ち、フランスの財政悪化に歯止めをかけることで重税に苦しむ
多くの民衆を救った。
 十字軍が、世界大戦が、文化大革命が未然に防がれた。

 メンバーたちは任務を終え、自分たちの事故による死や行方不明を演出すると、タイムテレポーターの
帰還スイッチを押した。任務に要した時間は様々だったが、みな同じ日……地球連邦統合記念日の時点に
帰ってくることになっていた。
 ほんの数週間しか過去にいなかった者もいれば、数十年もの主観時間を過ごし、すでに老人となっている
者もいた。不幸にして少数の者は、帰らぬ人となっていた。しかし、メンバーは出発前の懐かしい顔ぶれを見て、
抱き合って喜んだ。自分達は、最も偉大な作戦を成し遂げたのだ。
「さあみんな、早く行こう! 世界中の人々が僕らを待っている! 僕らの偉業は、地球連邦統合以上に
祝われるだろう!」
 たしかに街は歓呼に包まれていた。
 が、それはタイムレスキュー隊の偉業を称える声でもなければ、地球連邦統合の記念日を喜ぶ声でもなかった。
まったく違うことが祝われていたのである。
「一体どういうことだ!」
 若いメンバーが叫んだ。
「まだ分からないのかね?」
 と、レスキュー隊員たちのそばに1人の老人が近づいてきた。モリヤマ氏だった。
「議会制度、違憲審査制度、司法権の独立……権力の横暴を抑止するためのあらゆるシステムは、
悲惨な歴史に対する後悔から誕生したわけだ。ジョン王の愚政からマグナ・カルタが、フランス貴族の
退廃から人権宣言が、世界大戦から国際連合がね。政治システムの進歩は、イコール悲劇から学んだ
結果と言ってもよい。君達はそれらを全て無かったことにしてくれた」
 唖然とする隊員達を尻目にモリヤマは告げた。
「ご苦労だった。ゆっくり休息してくれたまえ。私はこれから、戴冠の儀に出ねばならんのだよ。
大地球帝国皇帝としてのね」

459:創る名無しに見る名無し
09/03/25 00:02:14 PPht7PIf
「違い」

ある日、青年は古びた紙を見つけた。
「ん?なんだこれは。ちょっと見てみるか。」
中を見ると、そこにはこう書いてあった。

私が何年もかけて研究した、悪魔を呼び出す方法についての仮説をここに記す。
まず、どこかに火をつけて、呪文を唱える。そうすれば宇宙の果てから悪魔が来て、願いを3つ叶えてくれる。
ちなみにこの悪魔は、おとぎ話に出てくる悪魔と違い、死んだら魂をもらうなどというふざけたことはしない。
しかし、こいつは、・・・・・・・・・・・・・である可能性が高い。

「おや、一部が読めないな。まあ試してみるか。魂も奪われないようだしな。」
そう言って青年は、マッチをすって火をつけ、紙に書いてある呪文を唱えた。

「おっと、久し振りに俺を呼び出した奴がいるな。ええっと…地球か、聞いたことが無いが行ってみるか。」
そう言って悪魔は、地球へと飛んで行った。
「うーん、このあたりなんだが、見つからないな。イタズラかな。」
悪魔は自分の星へと引き返していった。
自分の足の親指が地球に当たって地球を吹き飛ばしてしまったことに気付かずに。

460:創る名無しに見る名無し
09/03/25 09:54:35 Cl3I+PPr
>>458
はなしのオチ的にはスタンダードだけど、
設定やうんちくの羅列でフンイキでてる。
逆に新鮮でいい。

>>459
全体的にすこしわからなかった。

461:創る名無しに見る名無し
09/03/25 15:03:31 Oi9g/RaE
結婚して五年、子宝には恵まれないながら美人で料理も上手く、近所でも頗る評判の良い妻には満足していた。
結婚したときから、お爺ちゃんお婆ちゃんになっても手を繋いで歩けるような夫婦が理想だった。
子供なんて天からの授かり物。あくまで自然に任せるというのが二人の暗黙のルールだ。

そういえば歴代の彼女たち四人も、誰一人妊娠しなかったことを思い出した。
不安に苛まれた僕は、思い切って不妊検査を受けてみることにした。
さすがに産婦人科に一人で行くのは勇気が要るので、同僚に薦められた総合病院で検査をし、検査結果は会社に送ってもらった。
恐る恐る開けてみると、すべての項目で異常なしであった。僕自身の不安は消えたけれど、徐々に検査したことを後悔するようになった。
いっそのこと僕に原因があればよかったのにとも思った。こんなことで夫婦間に波風は立てたくない。妻が妊娠できない身体でもいいじゃないか。妻を愛する気持ちに変わりはないのだから……。

しかしそれ以来、無意識ではあるが妻に対して何かよそよそしい態度をとるようになっていた。
僕の変化をさとったかのように妻は、検査から一週間が過ぎたある晩、本当のことだと念を押したあと静かに口を開いた。
妻が語りだしたことは、全く想像もしていなかったことだった。
これは事実ではないと信じたい。
しかし、妻は真顔でこんな嘘を言える女性ではないことは、僕がいちばんよく知っている。
だからといって、妻が未来からやって来た機密諜報機関の工作員だなんて信じられるわけがない。

その任務というのが、僕のDNAを後世に残さないことだと言う。
この僕のDNAをだ。
こんなの信じろという方が無理だ。
人類滅亡の原因となるウィルスを開発した男の父親、それが僕だというじゃないか。
つまりその男、即ち僕の息子を誕生させないために、四人の工作員の女性を送り込んだというのだ。
そして妻が最終任務を遂行中だったという。このままなら僕のDNAは残らないことになるが……。


僕は泣きじゃくる妻を強く抱きしめるしかなかった。

462:創る名無しに見る名無し
09/03/25 16:37:44 X+UTTfOh
で? 続きは?

463:創る名無しに見る名無し
09/03/25 21:25:20 yd212kp8
DNAが原因つっても
「特殊なDNAを持った結果、殺人ウィルスを世界中に広める要因となった」ってんならともかく
「将来殺人ウィルスを開発する事になる」ってだけなら
息子が育つ生活環境を変更するだけでどうにかならないのか?

仮に工作員の妻を妊娠させたとしても
母親が人類滅亡の原因となる息子とは別なら
生まれる子供も別人になって普通に任務完了になるんでないの?

父方のDNAが子供を殺人ウィルスの開発者にする最大の要因だってんなら
父親は普通に生活出来てるのは何で?

てか人類の存亡と一人の男の命を天秤に掛けるなら
「僕」を殺害した方が確実なんじゃないのか?
それをしない理由は何かあるのか?

464:創る名無しに見る名無し
09/03/26 01:27:18 ygCKIKSp
あれ、大分解釈違うのな。
俺は楽しめたわよ。解釈の余地があってぐっときた。

折角DNAを強調してるんだから、むしろ"僕の息子を誕生させないために"の下りが解釈の邪魔をしてる感じはするね。
星に限らんけどショートショートではこの手の表現はいっそ省くべきかもしんない。
なんか迂回した表現でもやもやさせると、より深みが増すと思います

殺害しない理由は色々想像できるから文句はないかな
父自体に罪はないだのと長々と議論してる未来の政府とか思い浮かぶw

DNAを安直に理由に紐付けちゃってるせいで、遺伝的な何かのフォローが欲しくなるのかもしんない

例えばどっかに一行「そう言えば父も曾祖父も狂人だった。」とか足しちゃうと、唐突な感じを牽制できるかも。
ラストに置いてアハ体験に期待するのもアリだね。これは諸刃の剣だがw

465:創る名無しに見る名無し
09/03/26 01:59:08 pg0AU6qE
「なぁ、神様は僕達が嫌いなんだろうか?」
仕事の疲れが愚痴を吐き出させる。
「なんだい急に?」
友は、穴を堀るのを辞めて僕を見た。逞しい黒々とした肉体から
労働によって滴り落ちる汗が絶え間なく地面に落ちる。
僕も同じように汗を垂らして続ける。
「この土地では僕等は穴を掘らないと生きていけない。毎日きつい思いをして穴を掘らないと生きる事を許されない」
僕は天を仰いだ。頭上には空洞が広がっていた。
僕達の仕事は穴を堀り地下にシェルターを作る事。とても過酷な仕事だ。だけど怠ける事はできない。
なぜなら僕達の住む土地には、自然災害が頻繁に起こるからだ。
津波が毎日三度も襲い汚染された有害な波が僕達を苦しめ、暴風が突然吹き荒れる。
土地に食べる物なく、唯一の食料は暴風にのって外から流れてくるものだけだ。
必死になって貴重な食料を拾っていると津波にさらわれる。
だから生き残るためには地下にシェルターを作るしかない。
食料をたくさん貯められて、津波に流されないようできるだけ深く深くに。
地球上で一番過酷な土地なのではないだろうか。
「なんで神様なんだよ?」
穴の中で友の声が響く。
「だって自然災害は神様が起こすんだろ?神様は僕達を苦しめてばっかりだ」
僕は声を荒げた。友は目を細めて言った。
「仕方ないだろう。自然災害は防ぎようがない。
過酷な環境だけど必死に生きるしかないんだ。
津波は神の試練ってヤツさ」
僕は納得できない。
「津波だけじゃない。津波ならこうやって穴を掘ってシェルターを作れば防げる。一度穴に避難すればあんなの怖くない。
僕が許せないのは地震だ。ようやく満足の行くシェルターができたと思ったら滅茶苦茶に壊してせっかく掘った穴を土砂で埋めてしまう
こんなに頑張ってる僕達を神様は傷つけてばかりだ。試練だってもんじゃないひどすぎるよ」
本当にこの土地は過酷だ。神様が僕達を虐めるために作った土地みたいだ。
せっかく穴を掘り終え安心なシェルターができたと思ったら地震が全てを壊していく。
また1からやり直しなのだ。
僕は怒り、激しく地面を踏みつける。頭に血が上っているせいか足元がグラグラと揺れた気がした。
友は、なだめるように柔らかい声で言う。
「そうはいうが神様も俺達を苦しめてばかりじゃない。自然災害が神様の仕業なら、
暴風に乗ってくる俺達の食べてるご飯も神様が与えてくれてるもんだ。
頑張って深い穴を掘れば安心して沢山飯が食える。
きちんと働きにご褒美をくれてるんだよ。後ろ向きな事ばかり考えずに前向きにいこう」

僕は納得できなかったが、友になだめられこれ以上は言わない事にした。
そろそろ津波が起こる時間帯だ、シェルターに避難しなくては。
それにしても本当に神様は俺達をどうして苦しめるのだろう?





男「痛たた。1日3度しっかり歯を磨いても虫歯はできるものだな
明日歯医者に行こう。しかし痛い。虫歯菌というの一体どうして、こんなに俺を苦しめるのだろう?
俺の身体に住ませてやってるのだから俺は神様のようなもんじゃないか」


評価お願いします。

466:創る名無しに見る名無し
09/03/26 04:00:17 VdqhHuZx
>>465
最後までオチが読めなかった。
面白かったです。

467:創る名無しに見る名無し
09/03/26 22:44:59 wKgnSUeW
なるほど虫歯菌かwこれは予想外で面白い

468:創る名無しに見る名無し
09/03/26 23:44:02 Zn4otmj3
「変化」

あるところにエヌ国という国があった。
その国は、働き者で知られた民族が住んでおり、経済大国として栄えていた。
しかし、テレビ番組の充実化や、娯楽機器の発達によって、働かずに家で過ごす人々が増えていた。
これにより経済が退化するのを危惧したエヌ国の首相は、対策を考えるため、エヌ国で天才と呼ばれる博士を呼んだ。
「博士、何か方法はないか。なんとか働かない人々を真面目に働かせたいのだ。」
「わかりました。では人々を真面目に働かせる薬を作ってみましょう。」
「頼んだぞ。」
数か月が過ぎ、博士が首相のもとを訪れた。
「できましたよ。これを働かない人々に飲ませればすぐに真面目に働くようになるでしょう。」
「よくやった。褒美を出そう。」
そして、働かない人々のもとに薬が送られ、人々は真面目になっていった。
「よしよし。これで我が国の経済はさらに発展するぞ。」
働かない人々だけでなく、元々真面目だった人々にも伝わり、エヌ国のほとんどの人々がその薬を飲んだ。

ある日、博士が首相の元を訪ねてきた。
「大変です。人々が真面目になりすぎたため、過労で倒れる人が続出しています。」
「大丈夫だ。それは昔もあったことだ。大した変化ではない。」
その数週間後、また博士が首相の元を訪ねてきた。
「大変です。人々が仕事のことしか考えないため、道端で過労のため倒れている人々を助けていません。」
「なんだ、また君か。君は今までで、道端で死にかけている鳥なんかを助けている人を見たことがあるかね?」
「いえ、ほとんどありませんが。」
「そうだろう。その鳥が人間に変わっただけのこと。大した変化ではないよ。そんなことを気にしてないで真面目に働いたらどうだ?私も飲んでみたが、素晴らしいぞ。」
「すみませんでした。飲んでみます。」
その後も働きすぎの人々が過労死し続けたが、博士は研究に打ち込み、政治家は外交などに打ち込み、誰も他人の事を考えなくなった。

数十年後、エヌ国の隣の国の首相が言う。
「あの国は実に大きな変化をとげたなあ。一時期は景気が低迷していたが、突然すさまじい勢いで経済が発展し、世界トップの経済大国となったな。
どのようにやったのかぜひ教えてほしいものだ。しかし、エヌ国の人々は誰も生きていないので聞けないがな。まるで誰も子孫を残さなかったかのように。」

469:創る名無しに見る名無し
09/03/26 23:53:28 hbKi0IU7
申し訳ないけど、博士と薬ネタはいい加減飽きてきたんだが・・・

470:創る名無しに見る名無し
09/03/27 00:46:27 mWxujpkF
>>468
このオチはw夜を真面目に勤しむような文化ではなかったぽいな

>>469
定番だからしゃーないと思うが、他のアプローチを意識してみるのもありか

471:創る名無しに見る名無し
09/03/27 11:35:42 eUSYn0GL
>>468
最後のまるで~の表現が意味わからん

472:フォーティーナイナー ◆WMJUSq/3gY
09/03/27 21:28:39 38V70FML
『蛍雪の功』

 若い魔女がいた。
 彼女は二十歳の頃、そもそも魔女ではなかった。
魔女になったきっかけは、恋人を伝染病で亡くしたことだった。
 愛する人を生き返らせる、彼女はそのためだけに魔術を学び始めた。
 召喚した最初の悪魔は、そんなことは私の手にあまると言った。だがその悪魔は、名もない下級悪魔であった。
 もっと強力な悪魔なら、あるいは……そう思った若い魔女は研究に研究を重ねた。寝る暇も惜しみ、
生活費を稼ぐ時間も切り詰めて、赤貧の中で修行に励んだ。真夜中まで魔術の研究に没頭した。
蝋燭も灯油も買わずに、ランプの中に蛍を入れて灯りにして学んだのである。その甲斐があり、少しずつ
強力な悪魔を呼び出せるようになった。
 四十歳。
 もはや彼女の肌はみずみずしさを失っていた。もう彼に女として愛されることはできないだろう。
たとえ今、恋人が生き返ったとしても、すぐに彼は年齢の釣り合う新しい恋の相手を求め、去っていくに違いない。
それでもいいと魔女は思っていた。もう一度でもあの人の姿を見ることができたら。あの人の声を聞けるのなら。
 大悪魔アシュタロスにさえ、死んだものを生き返らせることはできないと聞いたとき、彼女は絶望に泣き叫んだ。
 彼女は数百歳を超えるという、中東の偉大な精霊使いを訪ねた。
 精霊使いは、人の生死を操る術を求めることに反対したが、哀れな女の必死の懇願についに折れた。
 しかし、ランプに宿る大精霊もまた、人間の生死は神が司るものだと言ったのである。
だが大精霊はこうも言った。その禁忌を破り、魔の力をもって死者を蘇らせる術を記した書物が、
たった一冊だけある、と。
 その書物を見つけ出したとき、彼女の齢は八十を越えていた。
「ふたつのルシファーが力を合わせて放つ光を浴びながら、以下の呪文を唱えよ……」
 ルシファーとは、大魔王サタンのことだ。
 サタン本人を召喚するのに成功した人間の魔法使いは、ひとりもいない。ふたつのルシファーとは何か。
魔界の帝王サタンは、ただ一柱しかいない。
 どれほど魔法書を読み漁っても、伝説的な魔術師や宗教家を訪ね歩いても、その謎は解けなかった。
あるいは、書物のこの項そのものが「不可能」の婉曲的な修辞であったのかもしれなかった。
 ついに彼女は大魔王サタンを、ルシファーをこの世に呼び出すことに成功した。
 それはどんな大魔術師も成し遂げたことのない、黒魔術の最高の到達点であった。
 だがサタンは答えた。そのような術には何の心当たりもないと。呆然として崩れ落ちる老女の前で、
サタンはふたたび冥界に消え去った。
 視力の衰えた眼から老いた魔女はひたすら涙を流し続けた。無駄だった。
 彼女の一生の努力の全てが無駄だったのだ。

 ある夜、魔女の寿命は尽きた。
 己の寿命を伸ばす術など彼女は知らない。知っていても使おうとは思わない。恋人のいない世界に
長くとどまる術など、彼女にはまったく興味のないものだった。
 机に突っ伏したままの彼女の最期を見届けるものは、ランプの中の蛍たちのみ。
 最期の命の火が消えようとする寸前、老婆はあの呪文を、恋人を生き返らせるはずの呪文をつぶやいた。
ほんのうわごとに。
「あの……すいません。ここはどこですか?」
 遠くなった耳に、誰かの声が聞こえてきた。
 あの恋人の声だった。
 百年のあいだ、片時も忘れたことのない声だった。
 奇跡ではない。夢だと思った。悪魔に仕え続けてきた自分に、神様が奇跡を起こしてくれるわけがない。
「お婆さん、僕はどうしてこんなところにいるんです?」
 その声を聞きながらも、彼の復活を信じないままに老いた魔女は息を引き取った。
 だがその表情は、とても幸せそうだった。

 魔女は最後まで知らなかった。
 蛍の発光器の中で反応し輝く2種の物質が、ルシフェリンとルシフェラーゼと呼ばれることを。

473:創る名無しに見る名無し
09/03/27 23:53:31 3nsrSpvP
>>468
>>471
たしかに最後の日本語はおかしい。

>>472
うますぎる。
タイトル、蘊蓄が見事にかみあってる。
(たしかに星氏っぽくはないけど)

474:創る名無しに見る名無し
09/03/28 00:14:22 CDyhAxha
>>472
これは良作

475:創る名無しに見る名無し
09/03/28 00:30:54 FiIyfN46
>>472
素晴らしい!

476:創る名無しに見る名無し
09/03/28 01:22:22 eHhdqjBy
そんないいか?イマイチだと思うが。

477:創る名無しに見る名無し
09/03/28 15:32:24 j07RY+Pr
うまくはないが
いいはなシーサーくらいだな
 
ルシフェルとか厨くさいけどね

478:創る名無しに見る名無し
09/03/28 16:34:50 kOJePpiT
非建設的なことばっかりいっちゃって

479:自殺
09/03/30 06:34:20 Kn/5j1Ps
「今から死のうと思うんだ」
 俺はポツリとつぶやいた。隣にいる友人が、心配そうに声をかけてくる。
「おいおい、馬鹿なことを言うなよ。一体、原因は何なんだい?」
「俺の体は病気に冒されてるんだ。他に例のない奇病らしい」
 そうなのだ、俺の体は悪性のウイルスとでも呼ぶべき存在によって蝕まれている。突然
変異種であるそいつらは瞬く間に数を増やし、今や俺の体中が奴らのねぐらだ。
「うーん、確かにそりゃ聞いたことの無い例だな。体の具合は悪いのかい?」
「酷いもんだよ、体中が毒まみれなんだ。熱も少しあるみたいだ」
 こいつらの恐ろしいところは、その繁殖力と進化のスピードにある。あっと言う間に体
中に広がり、様々な症状を引き起こす。


480:自殺
09/03/30 06:36:08 Kn/5j1Ps
 おそらく俺の体も長くは持たないだろう、くたばるのは時間の問題。ならせめて、最期
は苦しまないように自分の手で幕を引きたい、尊厳死というやつだ。
 そう告げると、友人は悲しそうにうなずいた。
「分かった、そういう事情なら止めはしない。しかし、君の症例はある意味貴重ともいえ
る。少しもったいない気もするな」
「おいおい、当事者じゃないんだからそんなことを言えるんだよ。なんなら分けてやろう
か? 実際、こいつらは君の体にも興味を持ってるみたいなんだぜ。ほっとくと移り住む
かもしれんぞ」
 そう言うと、さすがの友人も後込みしたようだ。
「すまん、そりゃ勘弁だ……それにしても寂しくなるな、君とは本当に永い付き合いだっ
たもの」
「まあ仕方ないさ。ま、他の連中にもよろしく言っておいてくれよ。じゃあな……」


 ―その日、地球は自殺した。火星の見守る前で……


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