星新一っぽいショートショートを作るスレat MITEMITE
星新一っぽいショートショートを作るスレ - 暇つぶし2ch18:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/20 17:29:24 SZhRF4iw
エヌ博士は長年の研究の末に、ついに死者を蘇生する装置を開発した。
「博士、おめでとうございます。やりましたね!」
「うむ……しかしな、動物実験では成功したが、実は人体実験がまだなのじゃ」
「ええっ?」
「医者や坊主の知り合いはおらんし、都合の良い死体が転がっているわけでもなし。
 どうじゃ、助手君。いっぺん死んでみてはくれんか?」
助手はその日の内に研究所から逃げ出した。

それからもエヌ博士は、妻や子ども達、数少ない知り合いに同じ提案をし続けたが、それを受けてくれる人間は現れなかった。
勿論、かかりつけの医者や坊主も、人体実験のために死体を分けてくれる訳がない。
「……誰も、わしの発明を信用してくれん。こうなったら、わし自身で実験をするしかない」
エヌ博士はそう決意するしかなかった。

エヌ博士が自分自身を実験に使う上で、ひとつの問題点があった。
「わしが死んだら、誰が装置を動かすのじゃ?」
装置は非常にデリケートなもので、スイッチを入れてそのままという訳にはいかない。誰かがとても複雑な数値を計算し、更に複雑な装置の操作をする必要があった。
「助手は全て逃げ出してしまったし。……そうじゃ、ロボットにやらせよう」
その日から、エヌ博士のロボット開発が始まった。

それから十数年後。エヌ博士はついにロボットの開発に成功した。
「XX新聞です! 博士、世界一精巧で頭の良いロボットを作り上げたというのは、本当ですか?」
「そうじゃ。自分で考え、動く事ができる」
「ということは、これからロボット工学の新たな時代が拓けるという事ですか?」
「そんなレベルの話ではない。じきに、もっと凄い技術をお目にかけよう」
エヌ博士は一躍時の人となった。

「では、私はこの薬で死ぬ事にする」
<ハイ、博士>
「後の事はわかっておるな?」
<ハイ、博士ノ生命反応ガ途絶エタ後、装置ヲ起動シマス>
「これでわしは、わしから離れていったあの憎い者どもを見返すことが出来る。頼んだぞ」
<ハイ、博士>
「お前は賢いな。ありがとう、わたしの味方はお前だけだ」
<アリガトウゴザイマス、博士>
しばらくして、エヌ博士の心臓は停止した。

その直後、研究室のドアを乱暴に蹴破るようにして入ってくる者達がいた。
「博士! 私は信じておりました!」
「あなた! 貴方から去ったあたしをゆるして!」
「親父ぃ! すげぇ発明したんだって? ぼろ儲けじゃねえかよ……って、あれ?」
「博士!? ……亡くなってる」
「あ、あなた!?」
「まじか!? ……これ、遺産とかどうなるんだ!?」

……その光景を見ていたロボットには、その後の彼らの有様が手に取るようにわかった。
研究成果の横取り、莫大な名誉と特許収益、それに群がる猛禽達への遺産分与……。
あまりにも醜い未来予想。目覚めた博士はそんな現実を見て、どう思うだろう?
ロボットは、エヌ博士の蘇生をやめる事にした。


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