08/12/06 14:57:46 iL6tXWYS
エス博士は脳医学の研究をしていた。テーマは『老化と幼児化』
これは、老化による痴呆症は幼児化であり、誕生→発達→衰退、の流れで子供に戻っていくのが人生であるなら、折り返し点というピークがあり、その時点がわかれば寿命も予測できる、というものであった。
しかし、博士の研究は医学の進歩により無意味になってしまった。臓器の機械化により脳さえ活性化することができるようになり、人は望まなければ死なない体を手に入れたのだ。
博士は身体の機械化を拒否していた。時間が限られないということは、人間らしさがなくなることだ、という考えからである。
そして博士にも痴呆が進んでいた。
忘れていた母の声が聞こえた。「元気に生まれてくるんでちゅよ~」
博士は暖かさに包まれ幸せだった。