08/09/01 19:35:45 HGn0vwmK
質問したいけどいいかな
・性別変化方法は自由?
(変身・入れ替わり・憑依・皮etc)
・H描写はどこまでセーフ?
(♂→♀だったら、乳もみくらいか?
オナニーはさすがにアウトかもしれんなぁ)
3:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/01 19:39:28 jjYdak/l
このスレに限らず、エロ表現の限界については俺も迷うところだ
4:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/01 19:43:51 HGn0vwmK
男と男のカラミだったらありなんかな?
ローカルルールは細かく明文化
されてないし、ボーイズラブがギリなのかくそみそテクニックレベルがギリ
なのかようわからん
5:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/01 19:47:18 QDlSwXDA
>>2
上はなんでもおk
エロはどれくらいが大丈夫なんだろうかね…
>>4
男と女だろうが男と男だろうが女と女だろうが基準は一緒だと思う
6:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/01 19:49:39 /OMmIXzP
>>4
ここは新しい板だから、ルールに従う段階じゃなくてルールを作る段階
要は進んで皆叩き台になってほしい時期じゃないかな
だからとりあえず何も考えんでガンガン投下しつつ「この辺かな?」って探っていけばいいかと
7:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/01 19:54:51 QDlSwXDA
とりあえずオナニーやらセックスやらを克明に描写するのは明らかにダメだろ
ぐらいでいいかも
8:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/01 20:20:00 HGn0vwmK
漫画的なかんじでいうとムフフトーンとか暗転みたいな感じか
9:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/01 22:00:53 HGn0vwmK
そういえばアップローダーとかはないけど
長編SSとか漫画はどっかから借りてきてうpか?
10:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/01 22:07:50 QDlSwXDA
>>9
URLリンク(www39.atwiki.jp)
というわけでwikiに作っといた
11:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/01 22:15:22 HGn0vwmK
どうもです、ショートショートでもいいから作ろうかなあ……
12:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/02 20:14:29 p3CxSkpT
軽くいくつか構想を練ってみたんですが、
間違いなくエロエロ展開になってしまいます
13:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/02 21:49:48 B61/QFGx
エロ直前暗転、朝チュンぐらいがいいのかな
14:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/02 22:31:31 4EnjJ5ma
To-LOVEるレベルなエッチなら大丈夫じゃない?
15:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/03 22:06:29 DJKwjMSb
読んだことないんだけど、
パンチラとか
乳が体に触れたりとか?
16:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/03 22:25:53 ouXAR2A6
ToLOVEるはチラってレベルじゃなかったりw
17:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/04 18:16:39 aoDLOpKy
止まってますね
18:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/04 19:46:28 sT8pcd/V
止まってるんじゃあない、今考えてるんだ……たぶん
19:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/04 21:31:07 iUmDv6a3
もうすぐ上がるから待っててね
20:『化学反応』(1/4) ◆KazZxBP5Rc
08/09/04 23:34:57 iUmDv6a3
よし、じゃあ投下します。♂→♀変身モノです。
-------------------------------------------------------------
目を薄く開くと、見覚えのない真っ白な天井が目に飛び込んできた。
ここは……?
まだぼんやりとした頭で、記憶をたどってみる。
朝、学校に行く。そのまま何もなく授業時間を終える。そして……それから……そうだ、放課後の化学部の実験で薬品を混ぜ間違えて……?
どうやらその後に何かあったらしい。記憶の糸はそこで途絶えていた。
意識を今に戻す。すると大体の事情が読めてきた。
ここは病院のベッドの上。どうやら結構眠っていたらしい。テレビの上に置かれたカレンダーつきの時計の日付は、最後に見た日付の三日後を指していた。
病室を物色していると、僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「まこと……?」
あ、母さん。彼女は病室の入り口のところで立ち尽くしていた。突然の訪問者に僕はうまく表情を返すことができなかった。
「まことっ! ああ、よかった!」
母さんは持っていた荷物も放り出して僕の胸に抱きついてきた。……胸?
「このまま目が覚めなかったらと思うと、心配で心配で……。」
「母さん、あの……。」
目に溢れんばかりの涙を浮かべている母さん。その話をさえぎるのは気が引けるが、落ち着いてはいられなかった。
「む、むね……。」
なぜなら、胸が、膨らんでいる。僕の胸が。腫れたような感じではない。これじゃあまるで……。
母さんは黙ってうつむいた。喉がごくりと鳴る音を聞いた。
しばらく沈黙が流れたが、やがて静かに優しい声で語りかけられた。
「まこと、驚かないで聞いてね。今のあなたの体は、完全に女の子なの。」
オンナノコ?
「お医者様も首をかしげていたわ。いったいどんな実験をしたらこうなるのかって。とにかく、現代の医学では元に戻す方法はない、と。」
モドスホウホウハナイ。
「それで、無理に男に戻る方法を探るより、このまま女として生きた方が幸せなんじゃないかって。まことはどう思う?」
シアワセ……。
「まこと?」
「あ、ごめん、何?」
母さんが話した言葉を、僕の脳はうまく解釈できなかった。あわてて返事を返すと、母さんはため息混じりに、
「そうよね、いきなりこんなこと言われても実感無いわよね。ゆっくり考えなさい。」
と、僕の頭をぽんぽんと叩いて出ていった。
母さんが帰った後、僕はあわててシーツの中に手を伸ばした。
少し逡巡した後、思い切って股の間に触れてみる。無い。たったそれだけのことで、人生を全て失ったかのような気がして、涙が溢れて止まらなかった。
夕日が弧を描いてビルの谷間に赤く揺らめいている。美しい。あれからまたいつの間にか眠っていたようだ。
ふと思い立ってテレビ台の中を探ってみる。そうして見つけ出した手鏡を恐る恐る眺めてみた。
お姉ちゃんそっくりの女の子が引きつった顔で見つめ返してきた。これが、今の僕なのか。今度は不思議と素直に受け入れることができた。
手鏡を元に戻し、しばらく外を眺めていると、病室の扉が開いた。
「先生……。」
増田先生。僕の通っている高校の、化学の先生。まだ新任二年目で、僕たちと同時に「入学」してきたのだが、生徒からの人気は高い。
「すまなかった!」
「や、やめてくださいよ、先生。」
いきなりの土下座。僕は慌てて声をかける。
「俺の監督責任だ。」
増田先生は僕の所属している化学部の顧問でもあった。
しかし先生が気に病む必要は無い。なぜならあの日彼は出張で、僕は自己責任で実験していたのだから。
という旨を伝えたはずなのだが、頑なに態度を変えようとはしなかった。
「だが、俺がちゃんと君に注意していればこんなことには……。」
「分かりました、分かりましたから頭を上げてください!」
結局、不毛なやりとりを半時間ほど続けた挙句、うちの家族が見舞いに来たので帰ってしまった。
まったく仕事熱心な人だ。
21:『化学反応』(2/4) ◆KazZxBP5Rc
08/09/04 23:35:51 iUmDv6a3
退院は、あれからすぐ翌日にできた。外傷も内傷もまったく無かったらしい。人体とは不思議なものだ。
「おかえり!」
玄関で満面の笑みで迎えてくれたお姉ちゃん。
それに反して、僕は適当にただいまを返して素通り。自分の部屋でベッドに倒れる。正直疲れた。
「入っていい?」
返事をするのも面倒くさくて黙っていると、肯定と取ったのかそのまま僕の部屋に入ってきた。まったく、姉という生き物は。
「今日はお風呂一緒に入ろうか。」
「は?」
何を言い出すんだ、この人は。
「ね!」
「う……。」
涙は女の武器とはよく言うが、笑顔もまた強力な武器なんじゃないだろうかと思う。
目、キラキラさせすぎです。逆らえません。
「分かったよ……。」
目のやり場に困る。
すぐ前には大きな鏡があるし、下には見慣れないふたつのカタマリ。後ろにはお姉ちゃんが上機嫌で僕の背中を洗っている。
「一緒に入るの、小学校のとき以来だね。」
人形のように固まったまま動くことができない。だって恥ずかしすぎるじゃないか。いくら家族とはいえ、もうすぐ成年を迎える、しかも昨日まで異性だった人が真っ裸で真後ろにいる。そして僕もまた、その「異性」の姿で一糸まとわぬ姿を晒している。
「おーい、聞いてる?」
聞いてますよ聞いてます。と心の中では返事をするのだが、まるで金縛りにでもあったかのように首一つ振れなかった。
「ふふ。心配しなくてもきっとすぐに慣れるから、大丈夫だよ。」
ひととおり僕の体を洗い終えると、お姉ちゃんは洗面器で浴槽からお湯をすくって、
「ばしゃーん!」
風呂場に響いた子供のいたずらのような声がおかしくて、僕は思わずふきだした。
「やっと笑った。」
「あ。」
「ほら、そこどいたどいた。」
言うが早く椅子を占領される。しかたがないので湯船につかる。
「何かあったらさ、」
「うん?」
「いつでも頼ってきなさいよ。」
タオルを泡立てながら語るお姉ちゃん。
「これでも一応、あんたより十九年も長く女やってるんだからね。」
「うん。」
背、縮んだのかな。お姉ちゃんの背中がいつもより少し大きく見えた。
22:『化学反応』(3/4) ◆KazZxBP5Rc
08/09/04 23:36:38 iUmDv6a3
後日、家庭裁判所にて、僕は社会的にも女として認められることとなった。割と、すんなり。
人生の転機というのは未知の力による性転換をもってしても簡単に訪れるものではないらしい。
それからの僕の日常は相変わらずだった。変わったことといえば、保健体育のカリキュラムと、月に一度面倒臭いことになるくらい。
と、そう思っていた―もしくはそう思いたかっただけかもしれない―僕が自分の変化に気付かされたのは半年ほど後、ある日の夕食の席だった。
何気ない会話の何気ない一言。それを発した本人であるお姉ちゃんは、きっとすぐに忘れたんだろう。
「そういえばまことさ、最近増田先生の話よくするよね。」
しかしそれは僕の中に眠っていた得体の知れない感情を呼び起こすには十分であった。
昼下がり。僕の視線はまっすぐと、教壇に立つ男性だけに注がれていた。
胸が苦しい。授業が早く終わればいいのに。いや、永遠に続けば。いっそ家庭教師なら……。
内容は頭の上をむなしく素通りする。もっとも、この科目に限っては、聞いていなければならないようなことはとっくに理解しているのだが。
突然視界がさえぎられた。見渡すと全員席を立っている。いつチャイム鳴ったんだろう。……最近はずっとこんな調子だった。
一礼をすませると、教室を出て行く先生の後を追う。悪いことをしているわけじゃないのに、なるべく目立たないように気を配る。
「増田先生、今日の部活のことですけど……。」
「おう、先にはじめておいていいぞ。」
「はい!」
たったこれだけの会話でも心臓が飛び出そうになる。我ながらかなり重症だ。
ガスバーナーに火をつけると、ビーカーの中の液体がごぽごぽ音を立てて泡立っていく。実に化学部らしい光景だ。
「先輩!」
一年生が呼んでいる。今この場にいるのは彼と僕の二人だけだから、当然僕のことなんだろう。そんなことに気付くにもいちいちいつもより時間がかかる。もう、しゃっきりしろ! 僕。
今行く、と机に手をついて……。
「熱っ!」
机に手をついたつもりが思わずバーナーに触ってしまった。まさかそんなことをする奴がいるなんて夢にも思ってもいなかったが、それが自分だとは。笑えない。
バーナーが倒れる。それに呼応してビーカーが音を立ててはじけた。
「きゃっ!」
すごく女っぽい声。僕の口から出たとはとても信じられない。
それはともかくとして、後輩が僕の腰あたりを指差して絶句していた。なんだろうと思って見てみると、制服の上から羽織っていたカーディガンが燃えている。
ええと、ええと、どうしよう。とりあえず脱がないと危ないな。それでええっと……。
後に思う。なんであんな馬鹿なことをしたんだろう。パニック状態に陥った人は何をしでかすか分からない。
僕は脱いだカーディガンを、ガスバーナーのほうに投げ出した。そんなことをしたから火がよりいっそう早く回る。当たり前だ。
もうそれから後はあまり覚えていない。とにかくおろおろしていたら先生がやってきて、そのときはもう手遅れで、避難訓練が実際に活かされるなんて生徒たちは初めてだっただろう。
23:『化学反応』(4/4) ◆KazZxBP5Rc
08/09/04 23:37:30 iUmDv6a3
後日、案の定増田先生に呼び出された。僕はいったいどんなお叱りを賜るのだろう。いや、もしかしたら優しくなだめてくれるのかも。なんて、考えが甘いかな。
しかし彼が最初に口にしたひとことは叱咤でも激励でもなかった。
「辞表出してきた。」
意味をすぐには飲み込めなかった。
数瞬後、はっと気付いた時には叫んでいだ。
「そんな! 僕のせいで。」
「君のせいじゃないよ、誰のせいでもない。」
「でも……。」
「本当に火事の件は関係ないよ。もともと俺には教師は向いてなかったんだ。」
顔が熱い。
「じゃあ、なんでわざわざ僕だけ呼び出したりして……。」
そこから先は言葉にならなかった。うつむくと雫がこぼれて、自分が泣いているんだと分かった。
「辛い思いをさせてしまったから。改めて謝りたかったんだ。本当にすまなかった。」
ただ首を横に振ることしかできなかった。
教室に僕のすすり泣く声だけが響いて、またいっそう不安になる。
どうにか落ち着きを取り戻すと、頭の中から指令が聞こえた。今だ、今しかない、言うんだ。
「先生。」
ばっちりと目が合って、少し怖気づく。頑張れ、まこと!
「好き、でした。」
最後は消え入りそうな声だった。もう返事も聞かずに逃げ出してしまおうかと思った。半年前まで男だった生徒なんて相手にしてくれるはずない。
と、そう思っていると肩が揺れた。先生の顔が目の前にある。つまり、これは、抱き合っている形だ。
「せ、先生!」
「手がかかる子ほど可愛い、か。」
それもすぐに解放された。もっとそうしていたかったという思いもあるが、あのままだといけない気持ちになってしまいそうだった。
「今はまだ無理だけど、いつか……。」
「本当にぼ……私なんか……。」
「ああ。」
嘘じゃないかとほっぺをつねりたくなるが手が動かない。多分、顔は真っ赤だろう。
言葉に詰まった。むしろこのまま無言の時間を共有するのもいいな、とも思ったが、無情にもタイムアップはやってきた。
「じゃあ、元気でな。」
「あ、はい。先生こそ、お元気で。」
もっと何か言えないのかという気もしたが、口がうまく回らなかった。
翌日、学年集会が開かれて、先生は発っていった。
いつか、その日が来るまでに、彼にふさわしい人になる。私の女としての人生は、その時始まったのだった。
[おわり]
24:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/04 23:58:53 DIVH3Is5
GJ!
初めて性別変化ものを読んだわ。
俺もさわやかで甘酸っぱいものを書いてみたいものです。
25:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/05 00:03:11 rhx/OX1v
GJ!
薬ネタはよくあるなあ
しかし、少しほろ苦いエンドだな
まぁこれはこれでありか
26:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/05 01:40:01 ON99X+7F
板のロダができたので>>10のページは消しましたよ
URLリンク(www6.uploader.jp)
27:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/05 01:58:11 rhx/OX1v
おお!GJだ。
これならテキストもうpできそうだ
28:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/06 21:04:12 k7plN6+t
街の郊外に位置する山林、鬱蒼とする中で隠れるようにと建てられた邸宅から、駆け出すように男達が走り出す。
周囲が喧騒に包まれ、軍服を身につけた男達がトラックへと飛び移ると
山道を駆け下りるように走り出した。
茂みの中から浮かび上がる薄緑の眼光、
スニーキングスーツに身を包み暗闇に潜む男は持っていたボトルを開けると
入っていたウォトカを一息に飲み下し、持っていた拳銃をゆっくりと構える。
『ターゲットが偽の情報にかかったよ、三舟用意はいい?』
「―清水か? 今ちょうど酔いがまわってきた所だ」
山道がライトで照らされ、先ほどのトラックがゆっくりと三舟の射程距離内へと進入してくる。
足元のスイッチを踏み、小気味よくカチリと音を立てると、
道路脇に仕掛けられていた指向性地雷が炸裂し、一瞬にしてトラックを炎上、横転させた。
「敵襲だ、全周防御ッ!」
「……フン」
トラックから投げ出された男達の中でターゲットが立ち上がり、指揮を始めるのを確認し、
ゆっくりとファイファー・ツェリスカの引き金を引く、山林に轟音が轟くと同時に潜んでいた野鳥達は散り散りに飛び立つなか
ターゲットの体が宙を舞うと、地面へと投げ出された。
「始末した、これから回収ポイントへと向かう」
『うっかり足を踏み外してあの世逝き、なんてことに、ならないように注意してね』
「フッ、俺を誰だと思って―」
三舟が立ち上がろうとしたその時、三舟は足元の苔に足を取られ、その場で真後ろにひっくり返ると
偶然地面からはり出していた石に頭をぶつけ、そのまま死んでしまった。
29:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/06 21:05:04 k7plN6+t
「―う、うーん、ハッ!?」
暗転した視界の中、僅かな光を瞼の奥に感じた三舟は、その場を飛び起きるように目覚めた。
周りを見渡すと窓から入り込んでくる穏やかな風にカーテンが揺れ、遠くからは子供たちの笑い声が聞こえてくる。
リアリスティックな夢にしばらく思考を奪われていたが、ふと傍らに視線を向けると、一人の青年が驚きの表情のまま固まっているのが見えた。
「清水か……こうして顔を合わすのは久しぶりだな」
「えッ!? えぇ、そ、そうだねッ!」
「なんだ―? 俺のこ、声が妙だぞ!」
自らの声に驚愕した三舟が腰を起こそうとするが、肩にのしかかるような重みを感じ
胸元を注視すると、再び仰天した。
「な、なっ……ななな、なッ!」
「なんじゃこりゃ?」
「なんじゃこりゃぁぁーッ!!」
本来あるべきではない位置、わずかばかりに膨らんだ胸元に三舟は錯乱状態に陥る。
はたと気を取り直し、次は股下へと腕を伸ばす、しかし、彼の期待していたブツはそこから忽然と姿を消していた。
「し、清~水~!? ど、どういうことなのか、説明してもらおうかぁ?」
「ざんねん! ミフネのぼうけんは ここでおわってしまった!」
「説明になってない! お、俺の体はどこ行った!?」
「三舟が生前―
『俺が死んだ時には、戦友達が眠っている地中海に埋葬してくれ』
―って、遠い目をして言ってたから、もう手配して火葬にしちゃったよ?」
そういうと清水は近くにおいてあった骨壷を手に取り、手を合わせるといい加減なお経を唱え始める。
「即身成仏」
「やかましいわ! って、本当に灰になってる……な、なんてことしてくれるんだよ、お前は」
「ちょうどいい具合に研究中の肉体転移施術の献体が一体余ってたから、
君の脳をそのまま移植したんだよ、脳に埋め込んだ、インプラントをそのままにして死なれるのも面倒だったしね……」
「―命があるだけ助かったと言うべきか、というかなんで女なんだ」
30:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/06 21:06:25 k7plN6+t
その言葉を聞くや否や清水は足元においてあった紙袋からファイルの束を取り出すと
ベットの上に腰を下ろす清水に投げ渡した。
「派手に暴れまわるのだけが諜報戦じゃないよ、君にはこれから財界・財閥の御曹司たちが集まる名門校へ転入し、
彼らと接触しながら、末端から情報を引き出して貰いたい」
「産業スパイかよ―娼婦にでもやらせとけっつの」
ベットの上であぐらをかいている三舟の頭を清水が軽く小突き、
ふところから学生証を取り出すと、ポーズを取りつつ三舟の前にその学生証を差し出した。
「えーと、『三舟愛璃』? なんだこの名前」
「ふふ!下の名前は僕が新しく付けたんだ……ナイスネーミングでしょ?」
(多いよなぁ、こういう親―ババァになって、そんな名前で呼ばれる身にもなってみろっての)
「ともかく、明日からさっそく学校に潜入してもらうからよろしく!」
こうして―学園の闇に潜む巨悪に立ち向かう、
三舟権三(2×)改め三舟愛璃(16)のスニーキングミッションが始まろうとしていた。
「明日からかよ!!」
投下終了、ギャグっぽく書いてみまんた。
31:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/06 21:15:18 6LZN8x9x
乙
酉やタイトルはつけないのかな?
32:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/06 21:15:46 3mZq4sB7
投下乙
なんかあれか、Mr.クリスみたいな
そういうノリなやつでいいなw
33:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/07 00:45:32 o1Hy4F2V
>>31
不定期に書いてますので、いらないかもですね
―――
>>30
灰色に染まったビルの街並みを静寂が支配している、朝焼けとともに立ち込めた霧が晴れ
コバルトブルーの青空が頭上を染め上げる、三舟はベットからけだるい身を起こし窓際に立つと、
Yシャツと下着一枚だけの姿から、はだけた肢体を冷ますように大きく一つ溜め息をついた。
凛とした顔立ちに腰まで伸びたつややかな長髪がブラインドから差し込む光に当てられ
ゆらゆらと光を放つ、三舟は胸元のポケットからハイライトを1本取り出すと、
愛用のジッポで火をつけ大きく息を吸い―。
「ゲホッ! ゴホッ!ガハヘッ!!」
思いっきりむせた。
「―ゲホッ! か、体が受け付けないのか?
な、なんか一気にテンション下がったな……」
「大丈夫かい? 僕が背中をさすってあげよう」
「あぁ、悪いな清水……って! 何でお前が俺の部屋にいるんだ」
何故か先ほどまで三舟が寝ていたベットから清水がブリーフ一枚で現れると、
むせて無防備になった三舟の肩に手を伸ばし背中をさすり始める。
「えぇい、き、気色の悪いッ、触るなッ!」
「僕たちの仲じゃないか、遠慮はいらないよ―さぁ、二人でもう一度夢の続きを……」
「バカぬかせーッ!!」
肩に回した手首を捻り上げ背後に回ると、膝裏に蹴りを打ち込み清水の体勢を落とし、
そのままクローゼットへと頭から突っ込むように放り投げる。
「はぁはぁ……訓練中、同じ宿舎にいた頃から薄々怪しいとは思っていたが、
まさかモノホンだったとは……油断ならん奴」
「ふふ、照れ屋さんだなぁ、あぁそうそう学校で使う制服と教材はテーブルの上に置いておいたから
あと、登下校中に変な人に話しかけられても、ついてっちゃだめだよ」
「やかましいわ、変人はしばらくそこで寝てろ」
頭から激しく流血している清水をよそに、三舟は脱衣所で手早く着替えを済ませると
Cレーションを片手に通学路を走り抜けていった。
34:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/07 00:46:19 o1Hy4F2V
「へっへっへ、まだ持ってんだろ? 一之瀬君よォッ!」
「今日はそれだけしか持ってきてなッス、本当ッス」
「いいから飛んでみろや、森羅万象チョコの金箔レアシール出すまでここは通さねぇぜ!」
「ちょっと待ちにゃい!」
不良からカツアゲにあっている一之瀬の横から、台詞を噛みながら颯爽と三舟が現れた。
「あぁッ!?」(台詞噛んだッス)
「だ、誰だテメェは!?」(台詞噛みやがった)
「お前のようなチンピラに名乗る名前は持ち合わせちゃいないぜ、
さぁ、さっさとそのボンボンを放してやりな!」
三舟は年齢不相応の言動でチンピラにくってかかると、ゆっくりと腰を沈めて、
一糸の乱れも見せない構えを取り、チンピラを威圧する。
「ふっ、このクラヴマガは、いつ、いかなる時・場所でも効率的に
相手を倒す為に生み出された究極の軍隊格闘技、いわば殺人技―お前如きに見切れるかな?」
「さ、殺人技だと、上等じゃねぇかぁッ!」
チンピラが襲い掛かってくるよりも早く、三舟は携帯電話を取り出すと、
目にも留まらぬスピードで電話をかけた。
「あ、もしもし、警察ですか?」
「ち、ちくしょう―覚えてやがれッ!」
「す、凄いッス! あの屈強な男をたったの一撃でッ!
一之瀬が助けた礼を言う前に三舟が後ろを向きその場を立ち去ろうとすると、
ヒョこヒョコと子犬のように一之瀬が後を追いかけてくる。
「なんだ? なんか俺に用か?」
「おいら、一之瀬豊って言う名前ッス、それでその……貴女のお名前を」
「三舟権ぞ―じゃねぇ、三舟愛璃だ」
「み、三舟さんーッ! おいらを子分にして欲しいッス!
おいら、三舟さんの為なら、な、なんでもするッス!」
細身のあどけない美少年が、弱々しい上目遣いで子犬のように目をウルウルさせ懇願するのをみた三舟は
心の奥深くから嗜虐心フツフツとわきあがってくるのを感じた。
35:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/07 00:47:12 o1Hy4F2V
「―よし、じゃぁお手」
「はいッス!」
「―おかわり」
「余裕ッスよ!!」
一之瀬が調子に乗って指示にのってくると、三舟はニヤリと笑みを浮かべた。
「―チンチン」
「えッ! えぇぇッ!?」
「どうした?早くやれ」
「そ、そんな、おいら恥ずかしいッス……」
顔を真っ赤にしてモジモジしている一之瀬を尻目にそそくさと三舟はその場を離れ、学校へと辿りつくと、
指定されていた教室のドアをくぐった、クラスの全員が三舟に注目すると、担任と思しき中年の教師が
三舟を黒板の前へと誘導し、自己紹介を勧めた。
「さっ、みんなに自己紹介お願いね」
「今度からこのクラスでお世話になります三舟愛璃と申します
皆さん今後ともよろしくお願いします」
無難に挨拶を済ませると、周囲の男子達から冷やかすように口笛がなる。
多少不快感を感じたが、席に着いたとき、常に戦いの中に身を置いてきた三舟にとって、
何者からの束縛も受けない真の自由とも言える、この時が何事にも変えがたいものに感じられた―
「では本日から新しくこのクラスの担任になられる『清水幸也』先生です」
「清水です、皆さんよろしくね!」
「ブーッ!!」
清水がいつもの営業スマイルを振りまきながら教室へと入ると、女生徒たちの間で黄色い歓声が巻き起こる。
三舟は「お前がそうやって女生徒たぶらかせばいいんと違うか?」と思ったが口には出さないでおいた。
一方その頃―
「で、でもおいら、三舟さんの為なら……」
一之瀬はまだ悩んでいた。
終わりッス
36:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/07 01:24:53 3c/syd8M
ノリがいいな
>>33
それ余計に必要なんじゃ…
まあ強制はしないけど
37:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/07 04:24:22 OPadNLOZ
物語中で性転換するんじゃなくて設定上男と女を入れ替えた
二次創作ってのはアリなのかな?
38:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/07 09:46:06 UKjFahXG
キョン子とハルヒコみたいなの?
別にいいんじゃね
39:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/07 10:56:19 3c/syd8M
別にいいと思うけど
投下前にそういう話だと注釈つけた方がいいかも
40:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/14 01:26:39 ekhii5FW
あらこんなとこにTSスレ
41:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/14 02:21:18 PvF8Cn/a
いやこんなところに落ちてるんですぜお嬢さん
42:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/14 23:16:35 ekhii5FW
_、_ ω
ヽ( ,_ノ`)ノ 残念、それは私のおいなりさんだ
へノ /
(i)ノ
>
43: ◆CtoGIKO.Vo
08/09/15 04:34:01 oipPd106
このスレの作品に感動したので自分も投下
『 入れ子人形 』
♂→♀ 皮モノ(?)
―――――――――――――――
『「う、嘘だろ・・・。」
己の胸についているやけに大きな二つの塊が俺の呼吸とともに静かに上下している。
「まさか!」
とっさに自分の股間へ手を滑らせる。のっぺりした手触りに見慣れたモノの感触はない。
そばの鏡に目を走らせる。
「これが・・・俺・・・?」』
「うーむ、やっぱりTSモノのSSはいいねぇ。ラノベとかよりも断然こっちだなw。」
そういって俺はパソコンの画面を見つめながらひとりごちる。
「あーぁ、どこかで「○○」みたいなかわいい女の子に変身できるようなアイテムとかないかな
ぁ。」
もちろんそんなものが存在しないなんてことは先刻承知、まだ俺は現実と幻想の境界くらいはき
ちんとわきまえている。
まぁときどき踏み越えてしまいそうにはなるけど。
「さて、今日はもう寝るかな。」
と、俺は今まで読んでいたネット上にアップされていたテキストをメールで携帯に送る。
明日の昼休みにでも読もうという魂胆だ。
昼休みの教室。クラスメートたちがわいわいがやがやと騒いでいる。
「あっちゃん、何午前中の授業全部で寝てるのよ。夕べ何時に寝たの?」
「うるせぇなぁ。美香に言われたくはねぇよ。お前も朝のホームルームで爆睡してたじゃねぇか
。」
「はいはい二人ともストップ。俺にはどんぐりの背比べにしかみえないよ。」
「背比べって何よ!午前の授業全部を睡眠学習してるような奴と比べないでよ!私は」
「はいストップ。落ち着いて食べようよ。」
この女は飯原美香。かなり気が強くてことあるごとに俺と口げんかしている。
男のほうは篠原光也。結構無口な性格でいつも俺と美香の仲裁役である。そんな役どころからか
俺と美香からは『センセイ』って呼ばれている。
2人とも俺とは幼稚園からの腐れ縁で今でもよくつるんでいる。
ちなみに俺は高橋淳司。自分で言うのもなんだがごく普通の男子高校生である。まぁ、強いて普
通じゃないところをあげるとするならばTSモノの小説が好きだってことくらいかな。
飯を食っている間はさすがに美香も静かである。この間に夕べの小説を少しでも読み進めようと
俺は携帯を開く。
「何食べながら携帯いじってるのよ。」
といいつつ携帯の画面をヒョイと覗き込む。
「あー!なんかエロいの読んでるー!!!」
「ちょ、勝手に覗き込むなよ!」
と言いつつあわてて携帯を閉じる。
「いーけないんだーいけないんだー せーんせいに・・・」
お前はどっかの小学生か。
「まぁ、あれだ。真昼間からいかがわしいものを読むってのはあんまり感心できないぞ。」
「センセイまでそんなこというか。別にエロいものじゃねぇよ。」
「へぇぇー、そんなこと言うんだー。じゃあお姉ちゃんにみせてごらーん?」
「ちょ、うわ やめろtt・・・」
そんなこんなで今日も学校は平和であった。
44: ◆CtoGIKO.Vo
08/09/15 04:37:39 oipPd106
そしてその夜のこと、俺は今日もTS関連の小説を読んでいた。
『「これさ、実は皮なんだよね。
こうして胸の前で爪を立てると―
ほらね。中身は男だろ?」 』
「こんな皮があったら絶対にほしいもんだなぁ。」
ため息をつきながらぼやく俺。
独り言を言いながら寝間着のシャツをまくりあげ
「それを着てさ、胸の真ん中あたりで爪を立ててこーしt・・・ってええええぇぇぇぇ――っ!!!」
目の前の現実が信じられなかった。まさに目をうたがうとはこのことだろうと俺は思ったね。
だって信じられるか?まさにパソコンの画面に映っている小説の登場人物のごとく俺の胸の前がパックリ割れていたのだから。
あわてて裂け目を閉じる俺。するとその裂け目は何事もなかったように閉じてしまい、元に戻ってしまった。
すぐに閉じてしまったが今度はシャツを脱いだ上でもう一回爪を立ててみる。そもそも人間、特に男なんて生き物の目の前に「好奇心」という餌がぶらついてたとしたら、それをみすみす見過ごすか?否、俺なら絶対に見過ごさずに喰らいつくね。
何度か開けたり閉じたりを繰り返すうち、だんだんと開ける大きさが大きくなっていく。俺の目は裂け目の中の暗闇に吸い込まれていた。
幅にして20cmくらい開いたところだろうか。突然視界が真っ暗になった。
完全に真っ暗というのではなく一部分に穴が開いているようで、そこから部屋の景色が見えていた。
顔に手をやってみる。ごわごわしたものが自分の皮膚を覆っているようである。しかも頭だけではなく手もそれで覆われているらしい。
どうも体全体がなにかで宇宙服のような感じにすっぽりと覆われてしまっているのだと理解するのにそれほど時間はかからなかった。
どう好意的に考えても異常な状況なのだがそのときの俺の頭は正常な判断能力を失っていたようである。
まるで脱皮する動物のように、腕を、頭を動かして胸の前の裂け目から外に出ようともがく。
程なくして上半身が外に出る。脱いだ皮のようなものを見てみるとまるでどこぞの怪盗が脱ぎ捨てた変装用マスクを全身バージョンにしたようなものの上半身が力なく横たわっていた。
「ふぅ―、暑いなこれは。これはいったい・・・。あれ、なんだか声が・・・。」
はて、何故か声がおかしい。というかこれはもしかしてアレのお約束のせりふじゃないか。
脳がアドレナリンを大量放出しているのを感じる。
ふっと胸元を見る。男とは思えないほどに膨らんだ二つの塊が鎮座していた。
右手で包み込むように片方の固まりを触ってみる。大きすぎず、小さすぎず、そんな手で覆うのにちょうどいいくらいの大きさでそれはそこにあった。
「ゴクリ・・・」
俺が生唾を飲み込む音だけが部屋に響く。心臓の音が階下にいる両親に聞こえるんじゃないかってくらいに激しく波打っている。
ゆっくりと、震えながら、俺はまだ皮に包まれている股間に手を滑り込ませる。
果たして、其処には何もなかった。何もないというのには語弊があるかもしれない。正しくは其処にあるべき男性のシンボルがなかったというべきだろう。
俺は今や、完全な女になっていたのである。
つづく?
日頃から「このSSつまらないな」とか「俺ならもっとうまく書ける」なんて思い上がったことほざいていたけど、
自分で書いてみて初めて小説を創作する大変さを知りました。
もう二度とあんなことは言えませんし言いませんorz
45:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 16:49:09 0kBe8Cnl
感想:脱ぐのかよっ!!w
46:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/15 18:59:18 /VRt62RQ
なるほど逆転の発想
乙
人が増えますようにage
47:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/16 15:25:55 1a01s1x6
もともと女だったってことか?
48:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/17 22:24:42 La10eKhw
>>47
だと思う
49:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/18 01:29:29 HWpDdWX2
もともと、と言っても『皮の中身は一体何時発生したのか』を妄想すると、
色々と解釈も展開もあると思うのだけどね。
というわけで、続いたら嬉しいな。
50: ◆CtoGIKO.Vo
08/09/19 02:24:01 tCYH9KnT
『 入れ子人形 2 』
♂→♀ 皮モノ(?) 可逆
―――――――――――――――
俺は悲鳴を上げることはなかった。常人ならここでパニックに陥ってしまうだろう。
なぜなら俺は、これまで読んできたTS小説によって仮想的にこうした状況に慣らされていたのである。
このあたりは俺の危機管理能力の高さが伺える。(ちょっと違うか)
まぁ、下手に悲鳴を上げて今の状況で親とご対面するのは極力避けたい事態である。
説明しても分かってもらえるはずもないし、ましてや俺自身もまだ理解できていない。
階下の気配を見る。幸い親はもうすでに寝ているのか大きな動きは感じない。
目下の心配が解消されると今度は別の大きな心配が頭をもたげてきた。
「これって戻れるのか・・・?」
TSにおいて可逆か不可逆かは非常に大きなファクターである。
それによりTSに対する心構えも大きく変わってくるのである。
もしも不可逆ならどうしてこうなってしまったのか原因らしい原因がない以上、
一生女として生きていく覚悟がいるかもしれない。
スキューバダイビングの潜水服を着るような感じで俺はまだ生暖かい自分の皮を身にまとう。
皮を着る際に何も引っかからずにこすれる股間の感覚が、自分が女になってしまったことを俺に突きつける。
ぶかぶかになってしまっているのは女になって体格が変わったせいだろう。TS小説ではよくあることである。
破ってしまわないように細心の注意を払いながら手、頭を皮の中に入れ、最後に胸の前の裂け目を閉じる。
まるで体に空気入れを接続されて風船みたいに膨らまされるような感覚とでも形容しようか、
はたして俺の体は元に戻っていた。人並みに筋肉のある手足、平らな胸、股間のモノ、人は故郷が一番とはよく言うが
その言葉がいかに的を射ているかがよく分かった。
これほどの安堵感を感じたのは高校の合格通知が来て以来だ。
「良かった、俺の場合は取り合えず可逆っと。」
しかし安心するにはまだ早い。脱いだ状態の皮を損傷してしまうことで今まで可逆だったものが
不可逆+ダークにまでなるということもありえない話ではない。
皮は細心の注意をもって扱わなければなるまい。
51: ◆CtoGIKO.Vo
08/09/19 02:25:08 tCYH9KnT
「さて、戻れることも確認したし、もう一度脱いでみようか。」
無事元に戻れることを確認した俺はもう一度胸に手をかけ、今度は足の先まで完全に脱いだ。
「元の皮はたたんで机の上においておこう。」
皮を畳む間にも二の腕に当たる自分の胸に俺のボルテージはいやでも上昇していく。
クローゼットを開けて鏡を見る
「これが・・・俺・・・?」もちろんお約束の台詞も忘れない。
鏡の中には黒髪の美しい裸の少女がいた。近づきがたい美しさではなく
誰もが寄ってくるようなかわいい的な美しさである。正直俺だと信じられない。
もし街で見かけたらぜひともお近づきになりたいと思ったことだろう。
その少女に向かって手を伸ばす。すると俺の視界に俺の手が見える。白くて、細い。
これが俺の手なんだと思うとなんだか興奮してくる
顔の前に持っていって手を握ったり開いたりしてみる。
手のひらはふっくらとしていて男のごつごつとした手とは比べ物にならないほど繊細で華奢である。
今度は手から視線を下に持っていく。形よく、ほどよく膨らんだ胸がそこにある。
「さっきはあまり触れなかったけど、こっちはどうなっているのかな。」
かすかに息が荒くなる。顔が紅くなるのを感じる。
親指と四本の指でつまむように揉んでみる。
とても柔らかい。前に太った男友達の胸をふざけて揉んでみたりしてみたが
このさわり心地は正直言ってそれをはるかに上回る。
今度は反対側の胸をわしづかみにしてみる。やはり同じように柔らかく、肌もすべすべしている。
そうやって胸をいじっているうちに体の奥からじんじんと疼くような感覚が湧き起こる。
そして俺は――
日の出が近づき、雀たちが鳴き始める頃まで、俺は体の欲望に逆らえなかった。
つづく(?)
意外な好感触レスに感謝!
エロ表現はこんな感じでいいんでしょうかね。
とりあえず時間はかかっても今頭の中にある妄想は全部書いていきたいと思ってます。
自分は過剰なエロが好きではないのでこのスレが発展してくれることを願ってます。
52:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/19 21:20:54 NCRSxYmT
おつおつ
>エロ表現はこんな感じでいいんでしょうかね。
そんなところでしょうね
53:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/19 21:22:16 wYrECAYn
セフセフですな
54:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 01:46:20 GSzwJhzM
興味あったんでざっとスレ内容読んでみたんだけど。
あれだね、気を抜くとすぐエロに流れそうだ。……気持ちはわかり過ぎるほどわかるけどw
姉妹との入れ替わりものなら、そういうモヤモヤをクリア出来そうだけど、
そういうのって読む側としてはどうなんだろう? やっぱモヤモヤさせた方が良い?w
55:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 01:55:53 PNrDFjJt
いらっしゃいませ。自由に書いてください
本音はモヤモヤさせた方が良いw
56:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 01:57:25 UxW0xFay
モヤリモヤリとやっていくのですな
57:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 02:03:52 GSzwJhzM
おk把握いたしましたw
へ ノ
(´∀`)モヤモヤ
58:高坂君と佐藤さん
08/09/21 07:48:18 GSzwJhzM
詳しくは語るまい。
不肖わたくし高坂諭吉(17歳)は、どういうわけか女の子になってしまったジーザス。
……いや、女の子は好きですよ? むしろ大好物ですよ?
でも、だからってだからこそ……俺を女の子にしなくてもいいじゃないですか神様!!
そりゃさ、初めは確かに喜んださ! 確かめたさ! むしろ触りまくったさ!!
もっと詳しく言えば×××××さ!!! 更に×××××さ!!!? (※板規制により削除されました。
……でもさ、虚しいんだよ。
だって、ないんですもの。
な い ん で す も の ! ! ! ! !
「無いって……何が無いのよ、ゆきっちゃんは」
訊ねてきたのはマイガール、同級生の佐藤さん。
「そりゃあ勿論、胸ですよ!?」
「わ、悪かったわね無くて!!? ていうか、マイガールって何よ!!?」
……ちょっと『フレンド』を略してみただけじゃないですか……そんなに怒らないでよ。
「お、怒ってないわよ! それに、私だって成長するもん!」
おやや。いけない、彼女は何やら勘違いされているようですよ?
生粋のジェントルっ子であるこのわたくしが、マイガール(フレンド)の胸のサイズの不満を口にするとでも思うたか!
……しかし、それをそのままに訂正するは言語道断。
何故ならば、マドモワゼルはチェスト(笑。バストではなく)のサイズを気に病んでおられるらしい。
婦女子の不都合な真実を抉るが如きは、紳士のなすべき所業ではありませぬ。
なればこそ、要すべきは婉曲な話題そらしとみつけたり!
「佐藤さん? それはもしかして『成長するもん』と『性徴ホルモン』とをかけてる訳ですな?」
「アホかーー!!」
……そう、アホです。
ないのです。
ほんと、どこ行っちゃったんだろう……胸。
だっておかしいじゃないですか。
こういう時って、
「あれれあれ? 俺なんで女になっちゃってるんだろう? こんな大きくて柔らかいボインまであるしどぎまぎ☆」
みたいに、なるものじゃないですか。
そりゃあ、アレですよ? 下半身なんて×××××で色だって素敵な×××××だったし!(再び規制削除
もうね、堪能させて頂きましたともさ!!
なのに!!
何で、胸だけ全然変わってないんですか!!?
「胸ってさ、揉めば大きくなるって、アレ本当なのかなぁ……?」
「それは独り言なのか? 私へのあてつけで言ってんのか!? そこんとこどうなの!?」
「…………」
「む、私の胸を見ないでよっ!?」
「佐藤さんは、胸が(俺より)大きくて良いよね」
「な……!?」
お口をぱくぱく佐藤さん。……あ、これ。指突っ込みたいなぁ。
突っ込むといえば。
いつの間に、夜ごと俺を悩ませたそういったリビドーは、霧が晴れるように無くなっていた。
元々が女顔である。最も顕著な男女差異である胸も、幸か不幸か小さいおかげで、日常生活もさほど変わらぬままだ。
もうしばらくは……それがいつまでなのかはわからないが、社会的には男のままで通せるだろう。
だからこそ俺は、今のこの状況を、深く思い悩まずにいられるのかもしれない。
「まあこれも、人生の大きなスパンから見れば、小さい悩みなのかもね」
「ち、小さいって言うな!?」
「…………」
彼女に。
この俺の最も大事な……ガールフレンドである、この女に。
今の俺の状況を話したとしたら……或いは、それも変わるのだろうか?
「佐藤さん?」
「何よ?」
「今度さ、俺の胸揉んでよ」
「な……!?」
二回目なので、今度は指を突っ込んでみた。
思いっきり噛まれた。
59:高坂君と佐藤さん
08/09/21 07:50:40 GSzwJhzM
予定よりちょっと早い時間に起きちゃったので、勢いで書いてみた。
あぶねぇ、ぎりぎり60行だったぜ!
モヤモヤ分が全くないけど全然気にしないぜ!
60:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 19:36:22 PNrDFjJt
勢いは伝わったぜ!
61:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/21 22:59:29 dy9Kyqy3
GJ! なんだか別種のモヤモヤを感じる。それが心地よい感じで良いな
62:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/22 14:30:03 jvpCbnTp
やはりちょっと違ったか……むずいな。
TS百合コメディっぽくしたかったんだが、冷静に読み直してみたら全然違うねこれ。何だこのテンション。
やはり百合に必要なのは純潔さか……花言葉の通りだ。上手く出来てる。
よし! 森奈津子を読み直すことにするぜ!
63:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/23 08:58:11 GD4d5TS+
別種のモヤモヤというか、感じたままそのものズバリで良かったのか!
表面上変わらない日常と変化した自分の交差点に彼女が居る状況が
たまらなく美味しいです。ごちそうさまでした。
想定と違うとしても良い意味で裏切られたのだけど、次回もそうなりそうな予感がw
64: ◆CtoGIKO.Vo
08/09/28 03:45:49 R8BvkIls
『入れ子人形 3』
「・・・ん、・・・ちゃん・・・」
「あっちゃん!!!」
そんな大声にたたき起こされて俺は突っ伏していた机から顔を上げる。
「・・・なんだよ、美香。」
黙って指を指す美香、その先に目をやる。
「目が覚めたんなら教科書読んでくれるか。」
困り顔の先生がいた。
――――――
その日の昼、いつものように3人が集まる。
「あっちゃんここ最近毎日のように寝てるよねー。もしかして、例の小説で毎日お楽しみ~?」
ニヤニヤ笑いながらそう問いかける美香。
「うーん、まぁあれだ。若いのは結構なことだが・・・」
美香に追随する光也ことセンセイ。
当たらずとも遠からず、小説ではなくて現実なんだなこれが。
俺はもくもくと弁当を口に運ぶ。
つれない俺を見てつまらなそうな顔をしながら別の話題を振る
「そうそう、明日はどこいく?」
何のことはない毎週土曜日はいつも3人で遊びに行ったり図書館で勉強したりしているのである。
「あぁ、俺パス」
口に入った飯を飲み込みそう答える俺
「僕も今回は遠慮しておくよ。ちょっと用事があってね。」
他人の申し出を断るとはセンセイにしてはめずらしい。
「えぇー!二人とも来ないの!?センセイはともかくあっちゃんはなんで来ないのよ!」
「ともかくってなんだよともかくって。俺にだって用事くらいはあるんだよ!」
不機嫌そうな顔をする美香。
そんな美香をよそに、俺は自身の身に起こった一連の出来事に思いをはせていた。
人の中に人がいた。皮で変身するならともかくその逆とはTS系の小説にもそうそうないシチュエーションだろうな。(現実にはそうそうどころかありえない部類に入るが)
中の人などいない!なんて旧いネットのネタがしゃれにならないな。
さて、今日は金曜日、明日は待ちに待った休日だ。
普段なら休日は3人でつるむ以外にすることも別段なかったが今回は別だ。
俺の中の人のための服を最低限一着は買わなければならない。
今までは夜中、親の寝静まった時間にこっそり脱いで楽しんでいたのだがやっぱ家の中だけじゃつまらないんだよな。
せっかくの休日なんだから外へ出てなんぼだと思うわけだ。
「いーもんいーもん!一人で休みをエンジョイするもん!」
美香はセンセイに当り散らしていた。
65: ◆CtoGIKO.Vo
08/09/28 03:46:21 R8BvkIls
土曜日の朝は良く晴れていた。
今日は折りよく両親は朝から出かけている。夜まで帰ってこないとのことだ。もしも出かける予定がなかったら親が起きる前に家を出なければならないところだった。幸先のいいことである。
親の車のエンジン音がすっかり消えたのを見計らって俺は自分の胸に手をかける。
そして俺の抜け殻とでも言うべきモノをベッドの上に広げる。
部屋の中を見回してみる。
「やっぱり、今まで感じてきたけど男のときよりも視線が低いな。」
身動きすると視界の端々に白くて細い腕や長くて柔らかい黒髪、豊満な胸(ちなみに目分量によると恐らく美香よりも大きい)が存在を主張する。
それら全てが自分が女になってしまっていることを実感させてくれる。
「さて、たしかここにあったはずだけど・・・」
しばらく裸で歩き回った後、衣装箱を引っ張り出して中身をかき回す。
確か着れなくなった昔の服がこの中に保管されているはずだった。
「これとこれと、これでよしっと。」
ほどなくして箱の中で一番小さいサイズのシャツと上着、ジーンズを引っ張り出す。
一番小さいものを選んだのだがそれでもシャツは少し大きいようだ。
女性向けの下着は流石になかったので無しで着る。
「やっぱりブラジャーがないと擦れて痛いな。まぁ店で買ってくるまで我慢するしかないか。」
ふと目に付いた三面鏡の前まで行ってクルリと回転してみる。
「やっぱりかわいいな。今でもこれが自分だなんて信じられないよ。」
ふわっと広がった髪と胸、ウェスト、ヒップにかけてのラインがそそられる。
まさに俺の理想の女子高生だぜ。
「私、前原美香。今日はショッピングに行くの。楽しみだなぁ♪」
なんて適当な偽名作ってノリノリでポーズをとりながら喋ってみる。意外に様になるから困る。
「まぁこんなぶりっ子口調は疲れるからやらないだろうな。」
箱を片付けながらごちる。
カバンの一番下に傷つかないように厳重に布で包んだ抜け殻と男のときの服をつめる。
それ以外は普通の外出で入用なものを見繕って詰め込む。
「さて、これで準備OK!さっさと買い物済ませてこの体でめいっぱい楽しもうか!」
俺は外へ飛び出した。
66:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/28 10:44:43 hIAndI2a
+ +
∧_∧ +
(0゜・∀・) ワクワクテカテカ
(0゜∪ ∪ +
と__)__) +
67:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/28 19:31:41 fsZhxtGl
続きwktk
68:高坂君と佐藤さん2
08/09/29 13:39:55 WV2X03t5
拝啓 姉上様(脳内)
麗しき貴女様の不肖にして最愛の弟、高坂諭吉(セヴントゥィーン)は、女の子になってしまいました。
「というわけでプールなんですよヒャホーイ!」
「ゆきっちゃんテンション高すぎ!?」
はい。そうなんです。
プール! そう、プー―――ルなんです。 忘 れ て ま し た !
「……これは例年以上の浮かれ方だわ……」
失敬な、佐藤さん。浮かれてなどおりませぬ。ぬ。ぬ。
だってねぇ。
社会的にはどうあれ、今の俺は、乙女なんですよ? それなのに水泳パンツ一丁なんですよ? ダーリンほんまにどうするっちゃ?
「……私、プールが合同なのはすごく罪な事なんだって、君を見てて思ったわ……」
ファッキンジーザス!? またこの娘っ子は神をも恐れぬ勘違いを!?
「違うんですぜよ、佐藤さん!? 真に罪なのは、そのなだらかなベジェ曲線なのぜよ!?」
ベジェ曲線? 勿論俺も何なのか知りませんよ?
「って、これも違うのぜよ! 俺が悩んでいるのはもっと日本の夜明けを見据えたノーブル且つノーブラな」
「エロネタは禁止!! あとインチキ竜馬弁もやめなさい!」
なんてこったい! 俺の才谷梅太郎さん(偽名)語調を否定されるなんて!?
ではなくて。
そうです。身体が女でも社会的に男ってことは、プールも男として入るわけで。……これは!? ま、まいっちんぐ!!?
……ちくせう! 何でこういう時ばっか、俺は男じゃないんだよ。俺だってそんなの男として見たいよ!
ていうか、俺が見られちゃうんじゃん!!?
「……鬱だ。プール、休もうかな……」
「どどどどどど!? どうしたのよ、ゆきっちゃん!? おかしいよ! 君の大好きなスクール水着なのよ!?」
「反応がコミカルだ」
「……実験素体である諭吉君に起こった事象を、客観的かつ科学的に分析しましょう」
「反応がケミカルだ」
いや、適当にツッコんでますが。
佐藤さんが時々見せるこういうボケ、好きだなぁ。
「……デジカメを買いました」
「反応が……えっと、コニカミ○ルタ?」
もはやあってるんだか、いないんだか。
「じゃなくて。……そうだなぁ、佐藤さんは人前にパンツ一丁で出なきゃならなくなったら、どうする?」
「ぅゎ……唐突に何そのシチュエーション?」
退かないでよ! 正直自分でもそれってどうよって思ったさ!! ていうか乳丸出しは俺だってひくわ!!
でもでもでも! 実際そのまんまの悩みなんですもの……。
「んー、絶対にやらなきゃいけないの? ……そうだなぁ、開き直る、かな」
「えぇ!? やっちゃうの!?」
「何その反応!? 真面目に答えた私がアホみたいじゃん!?」
いえ、むしろ俺がというか。想定されるべき状況がアホです。
「パンツとか裸とか、気にしてられない状況なんでしょ? やらなきゃいけないなら、自分を騙してでも自分にやらせる」
「……でもさ。裸を見せて、それで人生が変わっちゃうのかもしれないんだよ?」
相手が佐藤さんだから、気楽に話せるけど……俺だって正直、怖いんだ。
俺を見る周囲の目が―決定的に変わってしまうかもしれないのは。
「でもそれは……まぁ、んー……選択の重さ次第かな」
「重さ、か。……確かにその通り、なんだよな」
「……でもさ? 女の子といっても、みんなのママと同じ物がついてるだけだよ? 妄想過剰なんじゃないの?」
「思春期特有の異性の身体への関心を一瞬で萎えさせた!?」
ごめん。ツッコミ長かった。
でも。
佐藤さんの言うとおり、気にしても仕方ないのかもしれない。
俺が皆に女の子だってばれる日までは―俺はこの身を偽る為、足掻き続けるしかないのだから。
……ありがとう。佐藤さん。
「……よし、やってみるか。まぁどうせ、ぺったんこなんだしねっ」
「き、貴様ァッ!! 真面目に答えてあげた私に、それが言う事かぁっ!!!」
……口は災いの元でした。
後日談。
何事もなく、普通にプール授業を受けられましたとさ。
……姉さん、ないものには確かに気付きようがないんだけど……それはそれでヘコむんだ……。
69:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/29 13:44:04 WV2X03t5
という訳で、まさかの第二弾でしたとさ
……TS+プールなんて美味しいシチュでなんでこんなことに……
70:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/29 22:31:44 ecIUCyV+
乙
まあこの話的にはそれで正解じゃねw
71:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/29 22:32:53 ecIUCyV+
上がっちった、まあいいけど
72:名無しさん@お腹いっぱい。
08/09/30 19:30:46 GP/9qVmd
>「……でもさ? 女の子といっても、みんなのママと同じ物がついてるだけだよ? 妄想過剰なんじゃないの?」
いや、一人一人違ってそれを色々堪能するから楽しいんじゃないか
73:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 14:39:32 dOxoRCfs
二週間もスレが止まってるのは誠に遺憾だぜ……
74:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 17:32:08 tF9Oh/VY
このままじゃいかんとは思ってるんだが…
75:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 17:38:13 dOxoRCfs
という訳でGGGに出張して書いてきましたw
……あのシリーズに関しては、やたらと気楽に書いちゃってる気がするぜ……
現行Gスレが落ちた頃に、書き直して転載するのかもしれません???
76:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:06:44 KKl0SV7k
こっそりカサカサ
TSってらんまみたいな感じだよな
77:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:09:07 RbtE1Pou
何の略なんだ?
トランスフォーマー・スペシャル?
78:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:11:02 KKl0SV7k
Tがトランスなんたらっていうのは確かだろうな
79:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:12:36 tF9Oh/VY
2回目ようこそw
>>76
うん。あとわりとよく代表で出るのがかしまし
80:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:13:45 RbtE1Pou
なんとなく把握した
81:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:14:36 tF9Oh/VY
>>77-78
とらんすせくしゃる
82:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:15:22 KKl0SV7k
せくしゃるがとらんすするのか
理解理解~
83:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:25:31 +Ci4SsMF
森永あいの「僕と彼女の×××」を思い出した
84:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:37:16 KKl0SV7k
あれ?僕女の子になっちゃってるーとか
私、男になっちゃったの…とかやるわけだな
85:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:40:18 tF9Oh/VY
>>83
そういや入れ替わりってまだ来てないな
>>84
Yes! Yes! Yes!
86:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:42:51 +Ci4SsMF
2人同時に事故にあって中身が入れ替わるなんてのは王道だよな
87:モーニング息子 1/2
08/10/13 18:47:15 RbtE1Pou
朝。
窓から差し込む日の光で私は目を覚ましてしまった。
今日は休日なので遅くまで寝ていられるというのに。
太陽を睨みつけるわけにもいかないので、抗議のつもりで布団をかぶり直した。
寝返りをうつ。
「んんっ……」
……今の低い声は、一体誰のものだ?
自慢ではないが、私の声はもっと高くて澄んでいて綺麗なはずだ。
だから、可能性としては誰かが布団に忍び込んでいる線が濃厚だ。
「…………」
まあ、いいか。
減るものじゃないし。
「――っ!?」
そんなわけがない。
私は跳ね起き、布団を体から引き剥がした。
目は完全に覚めてしまったが、そんな事を言っている場合ではない。
「……誰もいない?」
首をかしげた。
布団の中には私以外の人間はおらず、跳ね起き布団を剥がしたのも全くの無駄だった。
だが、おかげで自分の体に何が起こっているのかがハッキリとわかった。
股間に、全く見慣れないテントが張られていたのだから。
――そう、声の主は私自身だったのだ。
88:モーニング息子 1/2
08/10/13 18:47:59 RbtE1Pou
鏡で自分の姿を確認した。
女顔の少年がそこにいたが、顔のつくりはほとんど変化がないので当然のことだろう。
目立った変化は、少し出ている喉仏。
「少し時期が早いけど、これならマフラーで隠せないこともないかな」
とりあえず病院に行こうと決めたが、道中変態扱いされるのも面白くはない。
私は女物の服しか持っていないので、男の体になっても女物の服を着るしかないのだ。
こんなことになるなら実家暮らしをしていれば良かったと思わなくもない。
……しかし、誰が自分の性別が突然変化すると予想出来るだろうか?
「保険証は……使えるのかな」
今は少々懐が寂しいのだ。
何を呑気な事をと思うかもしれないが、混乱していてもはじまらない。
それに、金銭は老若男女共通の問題だ。
「あっ」
違和感を感じ、声をあげた。
朝は元気になるとは知っていたが、こんなになるとは思ってはいなかった。
というか、いつこれは落ち着くのだろうか?
「どうしよう……」
こればっかりは、女物ではまずいだろう。
正直、締め付けられて痛いし。
「……男物のパンツが必要だよね」
結局保険証を使うことはなかったのだが、今考えてみるとあの時の私は大分混乱していた。
なにせ、そんなくだらない事を考えていたのだから。
89:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:50:22 RbtE1Pou
こんな感じですかい?
90:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 18:55:44 RbtE1Pou
しまた
>>88は、2/2で
91:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 19:24:43 tF9Oh/VY
おお、初♀→♂
続きが気になる終わり方だ
92:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 20:07:16 dOxoRCfs
他の登場人物が出てこない孤独感みたいなのも、これまでの投下作にはなかったパターンかも?
……続きを期待しても良いのかい?
93:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/13 20:28:13 RbtE1Pou
予定は未定で気が向いたらで~
94:10/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ
08/10/20 23:46:26 GXr60qzN
スレリンク(mitemite板:191-192番)
このスレ名義でS-1に投稿してきました
新作? 脳内プロットはあるの…
95:10/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ
08/10/21 00:31:03 n2NuSlQn
>>94 乙でしたっ
少しずつ女性に変化して行く主人公の心象を、季節とともに色を染める紅葉に託してる訳だね。
移り変わる心のグラデーションが美しい作品でした。重ねて乙です!
96:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/23 04:59:20 k8gMX2x8
女の心象って何だ
と突っ込みたくなるけど
97:10/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ
08/10/23 09:47:34 ZlYIn0Xk
最下位記念
98:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/28 08:29:10 cjTq33ri
あげ
99:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 17:20:30 geBAXaDO
ビッテンフェルトがTSとな!?
100:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 23:01:13 kUR8lJvB
100げと
今月は先にこっちに投下することにしようかな
101:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/04 20:23:16 G4Sqf1ZB
過疎なんでTSコミック紹介ブログの有名どころを貼ってみる
いけさんフロムFR-NEO RE 性転換コミック特集インデックス
URLリンク(ikesanfromfrneore.blog64.fc2.com)
102:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/06 23:36:45 TuqGiyyL
おおこれはGJ
せっかくだし大手のTS専門投稿サイトでも
少年少女文庫
URLリンク(ts.novels.jp)
103:創る名無しに見る名無し
08/11/20 22:59:16 JtgbjLWH
S-1 11月分
スレリンク(mitemite板:375番)
さて、諸般の理由で>>94で言ってた新作はしばらく封印するとして…
お題くれくれ
↓
104:創る名無しに見る名無し
08/11/20 23:18:19 Q1y9MdXw
風邪
105:創る名無しに見る名無し
08/11/20 23:28:47 JtgbjLWH
把握
106:にょたいかぜ(1/2) ◆KazZxBP5Rc
08/11/21 11:12:17 bESFdMdJ
はっちゃけたらなんか割と早くできたw
悪友が風邪を引いた。
馬鹿は風邪を引かないということわざがあるが、それを無視して風邪を引くあたり相当の馬鹿なのだろう。
とりあえず授業を休んで見舞いに来てやった。ああ、俺ってなんて友達想いなんだろう。
インターホンを鳴らすとパジャマ姿の可愛い娘が出迎えてくれた。
ショートカットで顔つきはなんとなくアイツに似ているな。
「こんにちは……妹さん?」
「俺が一人っ子なの知ってるだろ。」
ん? 今この娘が言ったの? ダメだよお嬢さん、そんな乱暴な言葉遣いしちゃ。で、誰?
「えっと……じゃあどちらさまでしょうか。」
美少女はため息をついてオーバーに告げた。
「目に映るものに惑わされるなんて、俺たちの友情はそんな程度だったのか。悲しいぞ、親友。」
リビングに案内されソファに腰掛けると、俺は早速問い詰めた。
「で、なんでそんなことになってるんだ?」
「こーゆー風邪なんだよ。」
ふーん、と適当に相槌を打ちながら全身を眺める。すっかり女の子だ。しかも俺好みの体型。
俺の視線に気付いたのか、奴は慌てて付け加えた。
「しばらくしたら治る。」
「治るのかよ。」
時計の秒針の音だけが三回ほど響いて、
「治らないほうがいいのか。」
「そりゃそうだろ。」
「……ばか。」
なんだよその反応。いつもみたいにもっと憎まれ口を叩けよ。
可愛いじゃねえかちくしょう。
「さあ、じゃあせっかく来てもらった、ん……」
「おいっ!」
奴は立ち上がろうとしてこっちに倒れてきた。
熱があるみたいだ。ちゃんと風邪の症状も出てるんじゃないか。
107:にょたいかぜ(2/2) ◆KazZxBP5Rc
08/11/21 11:13:07 bESFdMdJ
「あれ……?」
「お目覚めですか、お姫様。」
あれからアイツの部屋に担ぎ込んだ。
「変なこと……してないよね。」
「するわけねえだろ。」
ごめんなさい、ごめんなさい。すました顔してるけど本当は何かやりたくてたまりませんでした。
だってお前が悪いんだぞ、そんなやらかくていい匂いしてるから。
だが神に誓ってもいい。俺は本当に何もしていない。
「ぷっ。」
「なんだよ。」
長い付き合いだ、きっと俺が内心焦ってることもバレてるんだろう。
沈黙が襲った。元はどうあれ若い男女が同じ部屋にいるという状況、気まずい。
「あ、ごめん。俺もう帰るわ。」
「え?」
そんな意外そうとも残念そうとも思える声を出されると困るじゃないか。
「俺学校行かないと卒業ヤバいんだわ。」
本当に行くかどうかは気分次第だが。
「そんなの今更変わんないだろ。」
と、彼女は笑ってくれた。
ああ、君の笑顔。もう二度と会うことがなくても忘れないよ。
さようなら、三十二回目の初恋。
数日後。
「よっ、美少女!」
「うるせえ! 前のお前ほどじゃねえよ。」
うつされました。
108:創る名無しに見る名無し
08/11/21 11:14:24 bESFdMdJ
本当はことわざじゃないから間違えないでね><
引き続きお題募集
109:創る名無しに見る名無し
08/11/23 00:52:05 WOjCaV3i
可愛いなw
萌えました。
110:創る名無しに見る名無し
08/11/23 00:54:00 a5n7oBnl
御題…
「女子高」もしくは「男子校」で
111:創る名無しに見る名無し
08/11/23 01:17:59 fOgESGot
さんくす><
>>110
はーく
112:創る名無しに見る名無し
08/11/23 04:34:24 SRccU4KO
>>106-107
うつっちゃうのかw
かわいいな
113: ◆16Rf2BBdUE
08/11/23 16:00:06 gXqRmxTa
>>104の「風邪」で書いてみました。
とりあえず前半投下。
114:「風邪の諸症状に・上」1/4 ◆16Rf2BBdUE
08/11/23 16:00:32 gXqRmxTa
喉が、かわいていた。
理由は判っている。口で息をしていたからだ。
鼻が詰まりに詰まりきっていた。キムチラーメンの匂いさえ、今のオレにはわかりそうにない。
「う゛ー」
濁った声を漏らして、オレは重たい布団をはねのけ、体を起こした。
「くすりのばなきゃ」
ハンテンを羽織って、ベッドから降りる。フローリングの床の冷たさに、背筋が震えた。
台所に出て、水をコップに半分もらう。
何の変哲もない、秋も深まった週の火曜日だ。家族はあらかた出払っていて、オレのような病人が一人だけ、ぽつんと取り残されている。
体が弱っていると、そんなことが妙に寂しく感じられるものだ。
(藤枝みやこさん)
病人特有の脈絡のないインスピレーションで、クラスメートの女子の可憐な横顔を思い浮かべる。
(みたいな、かわいい女の子が看病してくれたらなあ)
……訂正。風邪とかあんまり関係なく、やっぱりオレは石和亮だった。あんまり嬉しくないことに。
オレは風邪薬をてのひらに出し、いっきにあおった。ぬるい水道水が、じわりと喉を滑り落ち―
数秒もせずに、強烈な眠気が襲ってくる。
「……ふあ?」
半端なうめき声を、オレは絞り出した。
「えむ……ねぶ……」
ろれつが回らない。
何だこれ。おかしい。絶対おかしい。何か。なんだか。
そこから先の思考は、深い深い眠りに溶けてしまった。
*****
わたしは小さく咳をして、口元を押さえた。
喉が痛い。もう三日もこんな感じだ。
(日曜日、つぶれちゃったよー)
未練たらしくそんなことを考えて、がっくりと肩を落とす。
(あーあ……)
布団の中で、寝返りを打つ。
わたしとママしかいない藤枝家は妙に静かで、なんだかちょっと白々しい。まるで、自分の家じゃないみたいに。
(石和クンみたいな明るい男の子が、遊びに来てくれたらなあ)
そんなことを考えてしまう。風邪をひいてても、考えることはあんまり変わらないようだ。わたしって子は。
わたしはベッドサイドへ視線をやった。お気に入りのビーンズテーブルに、ぬるま湯のポットと切り分けた錠剤の包みが置かれている。
寝ている間に、ママが置いてくれたみたいだ。
「ありがとねー」
がらがら声で呟いて、わたしは薬に手を伸ばす。
薬の封を外して、そっと飲み込んで―
コップに手を伸ばすころには、わたしは泥のように眠り込んでいた。
*****
115:「風邪の諸症状に・上」2/4 ◆16Rf2BBdUE
08/11/23 16:01:32 gXqRmxTa
朝陽が差し込んでいる。
オレは目を覚ました。
体が軽い。鼻ももう詰まっていない。その代わり、喉が少しだけ痛んだ。
(……治りかけてんのに、今更別のことが痛み始めてきたんかよ)
明るい光の中で身を起し、喉をそっと押える。
三日も伏せっていると、人間も変わるものだ。オレの喉はなぜか、どきっとするほど細くなっていた。
「やつれたかなあ」
―世にも妙なる可憐な声が、オレの耳朶をそっと叩いた。
「え?」
ああ、ほれぼれするほど可愛い声!
「あれ?」
いいなあ、実にいい!
「……」
オレが黙ると、声も黙った。
オレは恐る恐る、もう一度口を開く。
「拇印」
こら! そんな声でそんなこと言うんじゃありません!
「なめこのみそしる」
なんですかはしたない!
「……マンギョンボン号」
まったく! そんなこと!
そしてオレはまた、ふつりと沈黙した。
当然のようにまた、声も聞こえなくなってしまう。
オレはおもむろに視線を下げ、自分の手をじっと見つめた。
白魚を並べたような、というのだろうか。そんななまぐさそうなのはみじんも感じられない、とにかく清潔で白く、美しい手だった。いつ見てもどの時期でも竹刀の握りダコや古傷でボロボロなオレの手とは、比べ物にならないくらいに。
オレの手とは、比べ物に―
オレは周囲を見回した。
綺麗な部屋だ。本棚その他には淡い色合いのカーテンがかけられ、勉強机の上には消しゴムのかす一つ落ちていない。
何よりマンガが見当たらない。オレのバイブルであるところの「六三四の剣」も、ぼろぼろになるまで読み返された「DRAGON BALL完全版」も、この清潔な部屋には影も形も見当たらなかった。
片付けられたとか捨てられたとか、そういうレベルじゃない。
これでは、まるで。
「女の子の、部屋?」
ああっ、戸惑い気味のこの声がまた可愛いったらありゃしないのだ! こんな至近距離で女の子の声聞いたこと、今までなかったぜ!
無駄にテンションを上げながら、オレはベッドを降りた。
もこもこした部屋履きがベッドサイドに揃えてあるのに気付き、恐る恐る爪先を差し込む。
すげえ、ちょう暖かい。何これ、文明の勝利?
部屋の隅には、学生鞄が置かれていた。オレと同じ学校の、同じくらいにすり減った、真っ黒な手提げ鞄。
カチリ、と音を立てて留め金を外し、中に手を突っ込む。
「……」
申し訳なくなるくらいにびっしり書き込まれてボロボロになった数学の教科書を、オレのやたらに美しい左手が掴んだ。
裏表紙に書かれた綺麗な字へ、目を通す。
『2-B 藤枝みやこ』
オレは迷わず、邪魔なパジャマを脱ぎ捨てた。
*****
116:「風邪の諸症状に・上」3/4 ◆16Rf2BBdUE
08/11/23 16:03:57 gXqRmxTa
「何、これえ……」
律儀に学校に来ていながら、わたしは頭を抱えていた。
いや、うん。わたしは頭を抱えているけど、頭を抱えているのはわたしじゃない。
今って、そんな状況だ。
「よっス!」
勢いよく声がかけられて、わたしの背中を誰かがばあん! と叩いた。
「きゃあ?!」
そんなに痛いわけでもなかったけど、そんなに乱暴にされたことなんてなくって、わたしは思わずよろめいてしまう。
「イサワあ?」
なんかすごく嫌そうな声で、わたしの後ろに立っていた男の子が言った。
「何お前、今日はカマキャラで押すの?」
何を言っているのかいまいちよくわかんなくて、わたしは曖昧に微笑んだ。
詰まったままの鼻を、すん、と鳴らす。
クラスの男の子だ。いつも石和くんといっしょにいる。石和くんはこの子のこと、なんて呼んでたっけ―
「キーチ、おはよっ」
ぎこちなく言ったわたしの言葉に、なぜだか彼は「うえー」と呻いた。
「面白くないとは言わねーけどさあ。たぶんアレだぜ、あとから思い出したらぜってー黒歴史だぜ?」
「歴史? 今日テストだったっけ」
「……イサワあ~?」
ああ、もう。会話できてないじゃない、わたしのバカ!
*****
ブラジャーのつけかたはそんなに間違っていないはずだ。ただ妙に、背中がちくちくした。
オレはしきりに背中を気にしながら、鞄を片手にぶらぶら下げて道を歩く。
思ってたより短いスカートが、歩くたびにさらさら揺れて腿を撫でた。
またこの腿がほっそいのだ。ぴっちり閉じると丁度付け根のところに小さな逆三角形の隙間ができる。魅惑のバミューダ・トライアングル! かなうことならここにダイブして溺れ死にたい。
―とりあえず間違いなく、オレは今、違う人間の体を動かしていた。
それもほぼ100%、クラスメイトの藤枝みやびの体をだ。
おへその横に小さなほくろがあるのと、右乳首の脇に薄茶のほくろのようなしみのような斑点がひとつぽつんとあるのだけは、朝の少ない時間の中でも確認できた。
あと、藤枝はたぶん母親似だというのも、この少ない時間で得た貴重な情報だった。
朝の食卓で見た、藤枝オヤジのごつさといったらなかった。ウチの道場の師範より、さらに一回りでかい。
だというのに嫁は妙に色っぽい、若々しい美人で、エプロンの上からもわかるボンキュッボン(死語)で、声もやっぱり妙に色っぽくて、畜生返す返すもうらやましいオレに代われ藤枝オヤジ。代わってくださいお願いします。
「おはよっ、みやこちゃん。風邪大丈夫だった?」
いきなり背後から掛けられた声に、オレはくるりと振り向いてスカートのすそをちょいと摘まんだ。
「おはようございませませ、ごめんうるわしくていかが?」
「……は?」
唖然と立っているクラスの女子に、嫣然と微笑む。
「あたくしたった今この瞬間に少々なんというか小用がこさえられてしまいましたの。ごきげんあそばせ」
「み、みやこちゃん?」
「チャーオ!」
二、三回勢いよくターンをしてスカートの裾を綺麗に開き、オレはそのままの勢いで、校門近くに立つ学ラン二人組の方へ突撃した。
*****
117:「風邪の諸症状に・上」4/4 ◆16Rf2BBdUE
08/11/23 16:04:52 gXqRmxTa
「なんだよイサワよお、熱でちょっと頭アレしたのか?」
「ち、違うの。ほら、いや、うん、そう、まだ熱で頭が―」
あたふたと言い訳を続けるわたしの視界に、信じられないものが飛び込んでくる。
両腕を真っ直ぐ横に広げ―
前のめりに走ってきて―
「キーイィィィィン!」
そんなことを叫んでいる―
「わたしいいぃぃぃぃ?!」
どん。
わたしが、人をはねた。
今までわたしを不信の目で見ていた男子生徒の顔があっさりと視界の外に吹っ飛んで、わたしの顔がそれに入れ替わる。
「あ……あ」
口をぱくぱくさせ続けるわたしに、わたしの顔はやたら可愛らしく、アイドルのような仕草で角度をつけてウインクしてみせた。
「おはよっ、オレ様ちゃん!」
「お、おれ?」
わたしの見慣れた腕が、分厚い学生服の下のたくましい右腕にそっと絡められる。
それを石和くんの視点から見るというのはなんだかとても倒錯的で、幻想的な感じがした。
「秘密のイケナイ密談のお時間でしてよ。さあさあゴアヘッ」
―そんなわたしの思いをあっさり蹴散らかして、わたしの顔をした誰か―中身はたぶん、なんとなくわかるけど―は、石和くんの顔をしたわたしをぐいぐいと引っ張っていった。
*****
朝の屋上に、人気はない。
冷たい風が屋上の砂埃を巻き上げ、鉛色の空に消えていく。
オレは風に乱れるさらさらしたショートボブを押さえ、優しい目つきで隣に立つ男―いや女? いややっぱり男―を、見た。
「あ、あの……」
おどおどした様子で、オレの顔をした何かが、オレの声で言う。
「い、石和くん? よね……」
オレは答えない。
くちもとにニヒルな笑みを浮かべ、一気に身を乗り出す。
どきりとしてのけぞるオレの、我ながら硬く鍛え上げられた背中へ腕を回す。
ちょい、と背伸びをすると、日焼けしたオレの顔が間近に迫る。
「へっ」
間抜けた声を漏らすがさがさした唇へ、オレの柔らかく小さく桃色でジューシーでとにかくビューティフルな唇が触れた。
「……!」
湿り気を与えるようにちゅっ、と音を立てて吸い、こぼれた唾液をなめとって、おもむろに唇を離す。
そこにはなんだか悪夢に見そうなくらいにとりみだし、うろたえ、顔を真っ赤に染めた、オレがいた。
……ちょっと、これはキツいかも。
118:「風邪の諸症状に・上」5/4 ◆16Rf2BBdUE
08/11/23 16:06:55 gXqRmxTa
「あー、やっぱ戻らねーかー」
唇を親指の縁で拭いながら、オレは可憐な声で言う。
「キスすりゃ戻るもんじゃないかと思ったんだがなー」
「な、なっ、ななななななな」
拳を震わせ、俯き、目に涙をためる、うちの部随一の体格と剣勢を誇る剣道少年、石和亮。
オレ以外に見られなてよかったと、しんそこ思った。
「な、ななな、なにするのよう?!」
鼻づまりぎみの声―やっぱり治ってなかったか。痛む喉を、オレは軽く押える。
「だから、こーいうのってキスしたら治るパターンじゃね? って思ってさあ」
「こ、こーいうのって、どういうのなの?」
震える声で言うオレの鼻先を、細い指先でつん、とつつく。
「愛しあう男女に理不尽な災難が降りかかったときさ」
「あ、愛……」
また真っ赤になる。やめろよもう、オレの血が足りなくなっちゃうだろベイベ?
やたらいい気になりながら、オレは頭の後ろで腕を組んだ。
「藤枝さんのコト考えながら寝てたんだよ、オレさあ。そしたらこんなことになっちゃって―」
にい、と口元を歪める。
「だから、藤枝さんもそうなんだろ? オレのこと、考えてたんじゃねーの?」
「お、おれって、だから、石和くんの―」
お茶を濁そうとするようなあいまいな笑みに、ぴしゃりと応える。
「そう、このオレ! かっこよくてすてきでハンサムなクラスメートであるところの石和亮くんのこと、考えてたんでしょ?」
沈黙が落ちた。
俺の鋭い目が潤みがちに宙を泳いで、乙女チックにそっと伏せられる。
「うん……考えてた、よ」
よっしゃオッケイ!
俺は勢い良くガッツポーズを決めた。
やべー俺こんなひょんなことであっさり大人の階段登っちゃったぜおふくろ! おやじ! ありがとう! なんかすごくいろいろありがとう!
感涙にむせぶ俺に、新品のマイハニーは勢いよく水を差してくる。
「って、そんなことじゃなくってえ!」
いきなりひでえな、オイ。
「そ、その……」
少し言い淀んで、オレの声は恐る恐る言った。
「あ、あたしのこと、見たの?」
俺は爽やかな笑顔で、親指を立てた。
「彼女がおっぱい大きいとかまじ嬉しい! ありがとな!」
「……ひどい」
あ、やっはりちょっとサイテーだったみたいだ。
涙を溜めて俯く俺の顔を、俺は慌てて覗きこむ。
「いや、べつにそーいうスケベ心じゃなくてだな……パッドはいらないんじゃないかとか、ほくろかわいいよねとか」
「ひどい!」
野太い一喝と共に、すさまじい衝撃が頬を殴りつけた。
「げぶあっ」
迫力満点の悲鳴をあげて俺は吹っ飛ぶ。回る。世界が回る。意識が回る。
……ヘイ、マイハニー。
お前今、自分のパンチ力が三桁いってんの知ってたか……?
たぶん、声には出なかったのだろう。
そもそも俺の惨状になど回す余裕は、ないようだった。
踵を返して走り去る俺の広い背中が、次第に暗くなっていく。
自業自得か。
わかってるんだよ、ンなこたあ……
俺の意識は、また闇に溶けた。
*****
119: ◆16Rf2BBdUE
08/11/23 16:07:52 gXqRmxTa
はみだしたorz
120:創る名無しに見る名無し
08/11/23 16:28:20 SRccU4KO
ワッフルワッフル
121:創る名無しに見る名無し
08/11/23 18:37:43 a5n7oBnl
ワッフルワッフル
122:創る名無しに見る名無し
08/11/23 18:47:35 21Pykqst
これは入れ替わりネタか?
少し情景が思い浮かんだ。
まったく、ニヤニヤすんなぁ!
123:創る名無しに見る名無し
08/11/23 19:54:31 fOgESGot
投下乙
人が増えてうれしい
スピード感あふれる感じがいいな
後編にwktk
124: ◆KazZxBP5Rc
08/11/24 02:17:08 duLK8pSQ
さて、>>110のお題で
125:女子学園☆パニック(1/1) ◆KazZxBP5Rc
08/11/24 02:18:32 duLK8pSQ
その異変はまず、ひとりの生徒の身に降りかかりました。
「キャー!」
太い悲鳴が寮内にこだましました。
ここは全寮制の女子学園。国内の各地から生徒を集めるほどの規模を誇ります。
「どうしたの?」
彼女たちの中には、小等部からこの学園に就学する者も多くいます。
「朝起きたら……男の子に……。」
ゆえに、
「本当? ねえ、ちょっと体見せて!」
「えっ、や……あっ!」
男性と接する機会があまり無かった者もまた多いのです。
彼女はその典型的な一例。友人の身に起きた変化に興味津々です。
これからこの部屋で何が起こったのかは皆さんのご想像におまかせします。
一人の少女を襲った、いまだ病気とも呪いとも分からぬ異変は、瞬く間に学園内を覆い尽くしました。
廊下を歩く数人の少年たち。もうすっかりこの生活にも慣れてしまったようです。
「みんな結構変わったな。」
「そう言うお前こそ。」
「男って楽でいいよね。」
どこを見渡しても男、男、男。既に学園は男子校へと化していました。
「そういえばマコトはあんまり変わんないね。」
「むしろ男の子になって可愛くなったかも。」
一番小柄なマコトくんに彼らの視線が集まります。
「えっと……そのことなんだけど、実は……。」
と、マコトくんは彼らにカードのようなものを見せました。
「健康保険証?」
「あれ? 性別欄見て。」
「おとこ……? たしか調査が終わるまでは性別変更はできないんじゃなかったっけ?」
「ってことは……。」
そうです。マコトくんは最初から男の子だったのです。
「女装して女子高へ潜入……? アニメみたいでカッコイイ!」
「今まで騙しててごめん……。」
「いいよいいよ、マコトっち可愛いし。」
「なるほどね。元から男だから変わらなかったのか。」
「いや……、その……。」
なんだか歯切れが悪いマコトくん。どうやらまだ何か隠してるようです。
「なんだよ、男らしくないぞ。はっきり言いなよ。」
「……女の子になってしまいました。」
マコトくんがそう言うや否や、一人の少年が後ろからマコトくんの制服の中に手を入れました。
「ひゃっ!」
「おお、小ぶりながらこれはこれは。」
彼にしてみれば女の子同士のスキンシップのつもりでしょうが、客観的に見るとただの痴漢行為です。
「ちょっと……やめ……。」
マコトくんはその後素敵な学園生活を送りましたとさ。
126:創る名無しに見る名無し
08/11/24 02:19:24 duLK8pSQ
我ながらタイトル適当すぎるぜ
まだまだお題募集
127:創る名無しに見る名無し
08/11/24 02:23:06 BybjDEQf
これはwww
学校全体が性転換とはw
128:創る名無しに見る名無し
08/11/24 02:25:09 duLK8pSQ
なあに学校全体とかまだまだ狭いほうだぜ
129:創る名無しに見る名無し
08/11/24 02:28:06 BybjDEQf
ま、まさか国全体とかのプロットもあるのか?
130:創る名無しに見る名無し
08/11/24 02:31:56 duLK8pSQ
プロットというか…
「ぼくは、おんなのこ」でググれ
131:創る名無しに見る名無し
08/11/24 02:34:54 BybjDEQf
ぐぐってみた
世界中の性別逆転とかw
こんな漫画があったのね
132:創る名無しに見る名無し
08/11/24 23:35:29 duLK8pSQ
お題募集age
133:創る名無しに見る名無し
08/11/24 23:36:22 BybjDEQf
じゃあ…「みんなには内緒♪」
134:創る名無しに見る名無し
08/11/24 23:38:45 duLK8pSQ
早っw
把握
135:創る名無しに見る名無し
08/12/02 12:41:44 ENcnxPlR
+(0゜・∀・)+
136:創る名無しに見る名無し
08/12/02 12:42:20 MWpHRAIc
/| /^|
/|_/ |
/||| |
/||| ヽ ジー…
/| ● |
壁|人_) =;
/|γ"ヽ ノ
/|| ゙
/|ヽ_ノ|
/| |
137:創る名無しに見る名無し
08/12/02 17:40:03 X3T+52g+
∧_∧ ∧_∧ ∧_∧+
(0゜・∀・)0゜・∀・)0゜・∀・)
(0゜∪ ∪0゜∪ ∪0゜∪ ∪ + みんなでワクテカ
と__)_)__)_)__)_) +
138: ◆KazZxBP5Rc
08/12/02 21:06:23 tUobGz7S
今日はwktk員多いなw
ちょっと間あいたけど1レス投下するよー
139:ナイショダヨ ◆KazZxBP5Rc
08/12/02 21:08:18 tUobGz7S
「ミンナニ ナイショダヨ」
モンスターは勇者にこの世界での通貨である宝石を与えた。
「しかしよく動いたな。」
「まあね。物持ちは良い方だし。」
今僕たちは某聖三角をめぐるゲームのシリーズ第一作をプレイしている。
「別のゲームもあるよ。やってみる?」
えんじ色と白を基調としたボディに四角いコントローラ。
今ではエミュレートできる後継機も発売されているようだが、やはりオリジナルで遊ぶのは感慨深い。
いや、本当の目的はそんなことじゃなくて……わざわざ押入れをゴソゴソ探って彼にその背中を長い間見せていた理由は別にある。
「お、何があるんだ? 見せてくれよ。」
「うん。」
まだ言ってくれない。こんなに分かりやすくポーズをとっているのに。
僕はまた押入れをあさりはじめた。
「そういえばさ。」
「ん?」
「お前、最近雰囲気変わった?」
きた! 待ちに待った言葉。気付いてほしくて、ここのところずっと近くにいたのに全然何も言ってくれなくて……。
手を止めてそっと振り向く。
「やっと気付いた?」
僕は彼の手を取って、僕の左胸に当てた。心臓の鼓動が激しくなるのを感じる。
「なっ……。」
彼はその感触がなにかおかしいことに気付くと慌てて手を引っ込めた。
「お前……。」
「こっちも確かめる?」
僕はおへその辺りをぽんぽんと叩く。
「……遠慮しとく。」
笑みが止まらない。止めようとも思わないけど。
これで、あの日の約束を果たせる。
「お前、どうやって?」
「ふふ。妖精さんが来て願いを叶えてくれたの。」
あの日、一方的に取り付けた約束。男同士ではなれないと言われた関係になれる。
「僕をカノジョにしてください。」
時計の針がひとまわり、ふたまわり、とにかく長い間経って、ようやく彼は首を縦に振った。
僕が変わったことはまだ彼にしか言っていない。秘密の恋。その響きがくすぐったくて、もうしばらくこのままでいたいなと思う。
だから今のところは……、
「みんなには内緒だよ♪」
140: ◆KazZxBP5Rc
08/12/02 21:11:00 tUobGz7S
投下完了です。そして叫ぶ
*'``・* 。
| `*。
,。∩ * 書き手増え~れ☆
+ (´・ω・`) *。+゚
`*。 ヽ、 つ *゚*
`・+。*・' ゚⊃ +゚
☆ ∪~ 。*゚
`・+。*・ ゚
141:創る名無しに見る名無し
08/12/02 21:17:03 X3T+52g+
お、元同姓だった恋愛成就系TSか!
いいねいいねー
142:創る名無しに見る名無し
08/12/02 21:45:21 tUobGz7S
>>141
TSは恋愛のパターンが増えるのがひとつの利点?だよね
143: ◆KazZxBP5Rc
08/12/05 00:13:54 haFQJHRC
投下いくよー
今回はS-1のお題に漏れた「鍋」で。
144:お鍋の日にはご用心 (1/1) ◆KazZxBP5Rc
08/12/05 00:14:51 haFQJHRC
四人の男がアパートに上がってきた。田中、山田、村山、そしてここの住人である中村だ。
彼らは会社の同僚で、皆独り者である。
中村の部屋に入ると四人は準備を始めた。
買ってきた野菜を切る。コンロを取り出す。鍋にパックの煮汁をあけ火をつける。
ひととおりのセッティングが終わると、中村以外の三人はコタツに着いた。
「全員ポン酢でいいな?」
中村はキッチンに立つと、冷蔵庫からふたつのビンを取り出した。
ひとつはさきほどの発言どおりポン酢。そしてもうひとつは、中国に行ったときに買ってきた秘薬だ。
「中村! 電話鳴ってるぞ!」
誰だ、邪魔しやがって。と思ったが、すぐに部屋に戻る。
「もしもし? え? いえ、違いますが……。」
間違い電話だったようだ。
さて、気を取り直して液を小鉢に注ぐ。まずはポン酢を全員に。そして秘薬を自分以外の分に。
「ふふふ、これで俺も勝ち組だな。」
不敵な笑みを浮かべる中村。
なんでもこの薬には古い言い伝えがある。
昔々呪いによって男子しか生まれなくなった村があった。その村が存亡をかけて生み出した女体化の秘薬がこれだというのだ。
湯気が一気に部屋の中に広がる。
「さて、じゃあ鍋パーティを始めますか。」
「パーティって柄じゃないだろ。」
「はい、皆さんジョッキを持ちましてー。カンパーイ!」
四人はアツアツの鍋をつつきはじめた。
「おい、中村、大丈夫か?」
早くも酔いが回ったのだろうか。少しして中村は強烈なめまいに襲われた。
「ん。ちょっと横になるわ。」
三人の変化を目の当たりにできないのは残念だが、目が覚めたら三人の美女が……と思うと楽しみでもあった。
「ん……。」
「気がついたか。」
薄目を開けると三人の男たち。まだ効いてなかったのか。体を起こそうとしたそのとき。
「あれ?」
目の前には二つの山。声も、出してみて分かったが高い気がする。
ぺたぺたと体を触ってみる。
「うそ……なんで俺が……。」
中村は気付かなかった。電話から戻ったときビンを取り違えていたことに。そして―おそらく製造者も―知らなかった。ポン酢に秘薬を打ち消す効果があったなんて。
美女になったのは中村のほうだった。
「その口ぶりは私達の身に起こるはずのことが自分に起こった感じだな。」
「しまっ……いや、そ、そんな……!」
「なるほど、これはお仕置きが必要だな。」
「えっ……ちょっと……いやあああああ!」
冬の夜は長い。
145: ◆KazZxBP5Rc
08/12/05 00:16:18 haFQJHRC
そろそろ続き物やろうかな…
まだまだお題も募集中
146:創る名無しに見る名無し
08/12/05 00:17:28 93kKkAWU
こいつら仲いいなwww
ポン酢に秘薬を打ち消す効果ワロタwww
147:創る名無しに見る名無し
08/12/05 00:22:07 haFQJHRC
反応速度に全俺が泣いた
あり
148:創る名無しに見る名無し
08/12/05 00:23:32 XEebZpZT
そもそも秘薬ポン酢に似てたのかw
149:創る名無しに見る名無し
08/12/05 00:28:22 haFQJHRC
>>148
勝手に漁られてもバレないようにラベルはがしてたとか脳内補完してくれw
まあ色は似てたんじゃね
150:創る名無しに見る名無し
08/12/05 18:54:23 8TW0TXd2
その後全員に薬をもって
全員女にするんだろ
151:変化球と彼と私(1/3)
08/12/06 15:20:17 8vaAfEvC
恋人と一緒に野球中継を見ていたら、私が男の子だった頃を思い出した。
それは、ずっと昔の話である。
「よっし! アツシ、次はスクリューだからな!」
茶色く汚れたボールを空に指し揚げて、僕は高らかに変化球を予告する。
イメージは、テレビで見たエースピッチャーの投球モーション。
ワインドアップと同時に、存在しない走者の牽制が動揺を誘う。
だがサイドスローは迷いがあってはいけない。この一球に全てを賭ける。
しかし、リリースに入るより先に、キャッチャー・アツシの抗議の声が飛んできた。
「待てって! リョウの球が本当に曲がった事、今まで一度もないぞ!」
「投げる途中で声をかけるなよ。投球妨害だぞ」
「受けるのは俺なんだよ! 変な投げ方するより、ちゃんとまっすぐ投げてくれ!」
「今度は曲がるよ!!」
そう絶対に。
もう一度、スポーツ雑誌で見たエースの写真の通りに握りこむ。
あれ? 僕とあの投手って利き腕が逆だっけ? じゃ、こうか?
でもスクリューは縦の変化だから関係ないのかな?
ま、いいか。投げちゃえ。
「って、あぶねえぇぇっ!!? 顔! 今、顔狙って飛んできたぞ!」
「ねえ、今の落ちなかった?」
「落ちてねえし、そういう問題じゃねえ!」
「ちぇー。僕も、もうちょっと手が大きかったらなぁ」
僕がそう言うと、アツシは少し顔を曇らせたようだった。
「……小学生だから仕方ないだろ?」
「うん、まあね。リトルリーグでも変化球は禁止されてるし」
日差しが強い。
僕は帽子のつばを少し下げた。
「いつか、スクリュー投げれるかなぁ?」
なんとはなしの、それは小さな呟き。
でも。
対するアツシの返答は、僕の想像もしないものだった。
「……リョウには、無理だろ」
「……私は男の子だったよね」
あの頃より大人になった私が、恋人に問い掛ける。
「ん? どうしたの、急に?」
「昔の話。スクリューボール、って言ったら思い出してくれる?」
「あぁ……あの」
何度も頷きながら、恋人は微笑んだ。
「僕も覚えてるよ」
私が、僕から私へ変わったように。
彼も、俺から僕へと変わっていた。
それは小さな、しかし戻る事の無い、時の流れの象徴だ。
「懐かしいな……」
テレビの野球では、久しぶりのヒットが出たところだった。
私の恋人―アツシはそれを一瞥するだけで、ゆっくりと天井の角を見上げた。
あの高かった空を思い出すように。
152:変化球と彼と私(2/3
08/12/06 15:21:05 8vaAfEvC
「お前とは、絶交だ!」
僕はその日から、アツシと絶交をする事になった。
といっても、一方的に僕がアツシを避けていただけなのだけど。
……何でアツシはあんな事を言ったのか。
近所の石塀に、何度もボールをぶつけている内に、何となく理解できた。
理解、出来たのだけれど。
どうして僕は、仲直りが出来なかったのだろう。
こんな形で大事な親友を失ってしまうなんて。
一人では、キャッチボールは出来ないのに。
小学校を卒業して、アツシと学校が別れる事になっても、僕らの仲が元通りになる事はなかった。
やがて中学生になった僕は、制服のスカートを穿く事にも慣れてしまった。
塀に向かってボールを投げる事も、もうない。
僕は、否―私は、女の子になったのだ。
「……それから。高校を卒業するまで、私達殆ど話さなかったよね」
「そうだったね。はは、あの頃を思い出すとなんだか照れるな」
アツシは言って、本当に照れくさそうに頭を掻いた。
私にとっては未だに苦い思い出でしかないのだが。
「ねぇ? どうしてアツシは、あんな事を言ったの?」
「んー、あれはね……」
「私が―女の子だったから?」
結局のところ、女の私が変化球を投げる事は難しい。
体格だとか手の大きさとかの、非常に単純な問題だ。
それがどうにもならない事くらい、今の私にはわかる。
あの頃は……それが悔しくて堪らなかったのだが。
「え? 違う、それは誤解だよ」
しかし、アツシは慌てて手を振ってそれを否定した。
「もっと単純な事さ。……ねぇリョウコ?」
自分の名前ながら、彼にリョウコと呼ばれるのだけは、未だに慣れない。何故かドキッとしてしまう。
「何?」
「リョウコは右利きだよね?」
「そうだけど?」
「あの頃、僕らが憧れていたピッチャー、彼は左利きだったんだけど。
実はスクリューボールっていうのは、左投げ選手の変化球の名称なんだ。
右利きの場合は同じ変化球でも、名前はシンカーに変わる」
153:変化球と彼と私(3/3)
08/12/06 15:21:56 8vaAfEvC
…………。
「えっと」
それはつまり。
「私が右利きだから、スクリューは無理だっていう事?」
「うん、そうだよ」
アツシは、実に事も無げに言った。
……あぁ何だろう、目眩がする。
「ふぅ」
なんという―誤解。
思わず体中の力が抜ける。
私は。こんな勘違いで、小学生時代の彼を絶交してしまったのか。
「……ごめんなさい」
「え? なんでリョウコが謝ってるの?」
「なんか、すごく、申し訳ないです」
本気で反省。
「ちっとも女の子らしくなくて、ごめんなさい」
「ええと、まだなにか誤解があるみたいだけど。……君はね、昔から女の子らしかったよ?」
「嘘ばっかり! 慰めはいらないんだから!」
「嘘じゃないよ! 野球をしている君は、とてもかわ」
「かわ?」
アツシはしまったという顔。
だが、私だってそれは聞き捨てならない。
「とてもかわ、何?」
「ええと。
……そうそう、久しぶりにキャッチボールしようか」
何か大事な事を誤魔化された気がする。しかも下手糞に。
「まぁいいけど……その代わり、変化球の練習ね」
「ええ!?」
その提案にアツシは大げさに驚いて見せた。ふふん、大事な事をはっきり言わない彼が悪い。
テレビの野球中継も、それに同意するように歓声を上げてくれた。サヨナラヒットで試合終了だ。
「大分遅くなっちゃったけど、今こそスクリュー、じゃなくてシンカーをものにするわよ!」
今度は、ちゃんと曲がるまで付き合って貰うんだから。
154:創る名無しに見る名無し
08/12/06 15:23:34 8vaAfEvC
おしまい
でもハルトシュラー、これだけは言わせてくれ。
内容はアレだけど、最初は確かにTS書いてたつもりだったんだゴメンよ……
155:創る名無しに見る名無し
08/12/06 15:26:15 Nt2oodqQ
やっぱりこれ実際には性別変化してないんだよな?
俺の読解力がないのかと思っちまったぜ
でも、ある意味で性別変化ではあるのか
セックスじゃなくてジェンダー的な意味では
156:創る名無しに見る名無し
08/12/06 17:57:33 0MW7YgBG
投下キタ━━(゚∀゚)━━!!
男の子の時から女っぽくて可愛かったアッー!で妄想変換余裕でした^^
157:創る名無しに見る名無し
08/12/07 18:20:10 tEg7msg2
よし、お題だ!
つ「拳銃」
158:ハードボイルドっぽい何か ◆KazZxBP5Rc
08/12/10 23:49:36 IoIF4wah
やばい、だんだん短くなる病を患った。
「おい、本当に『開発者』のことは知らないんだな?」
「だから知らないって言ってるだろ!」
俺は彼に銃口を向けた。
「や、やめてくれ……頼む、それだけはやめてくれ!」
黙殺し引き金に手を掛ける。
「私には妻も子供も!」
「恨むんならあんたんとこのボスを恨みな。」
引き金を……引いた。
ここもはずれか。
彼―すでに彼女だが―が後ろで泣き喚いているここが、最後の部屋だ。
この銃がこの組織で造られたことは分かっている。
造った奴を見つけ出して絶対に元の体に戻ってやる。
改めて深く、そう決意して俺は奴らのアジトを後にした。
159: ◆KazZxBP5Rc
08/12/10 23:51:54 IoIF4wah
次から連載始まるかもです
ROMは結構いると見た
みんなかこうぜ!
160:創る名無しに見る名無し
08/12/10 23:52:52 TyCPcpE6
いいんだな?
本当に書いちゃうぞ?
スレ凍りついて次の投下が厳しくなるぞ?
161:創る名無しに見る名無し
08/12/10 23:54:00 IoIF4wah
イインダヨー
162:近親フラグ
08/12/11 00:01:29 J2sPozQM
無限に増殖し続けるお兄ちゃんを拳銃で次々撃ち殺していく夢を見て
寝汗ぐっしょりで目覚めたあたしの耳に
隣りの、お兄ちゃんの部屋から妙に甲高い、女の人のような悲鳴が聞こえ
そしてあたしは、股間に妙な異物感を感じた
さあスレよ凍れ
163:創る名無しに見る名無し
08/12/11 00:05:52 0DLc6Vr0
>>158
ぜひその組織から薬を手に入れて各地にばらまいてほしね
元に戻る?しなくていいよw
>>162
両方かよww
164:創る名無しに見る名無し
08/12/11 00:07:20 IoIF4wah
>>162
わっふる
165:創る名無しに見る名無し
08/12/11 00:12:02 WnSmQobY
かき氷が食べられると聞いて
「これはね、撃つと性別が変わっちゃうピストルなのさぁ☆」
「相変わらず博士はマッドですね……しかし、それは良い事を聞きました」
「はっ!? 助手君、何を!?」
「ふはははっ、貴方のその可愛いさが私の股間を疼かせるのがいけないんですよっ博士!!」
ぱんっ☆
「ふはははっ、これで博士はおにゃのこに……ってあれ?」
「……あのね助手君。撃つと性別が変わるって、僕ちゃんと言ったじゃない」
「え? え? そっちなんですか? 撃った私が変わるってそんな……」
「でもまぁ、これで君も目的が達せられるのではないかね? ……正直、今の君を見てたら僕も///」
「そんな! 私は博士を自分のXXXでXXEXしてXXXXXした挙句、XXXXXXしてやりたかったのに!!」
「……やっぱ君クビね」
166:創る名無しに見る名無し
08/12/11 00:15:02 J2sPozQM
助手までキタww
167:創る名無しに見る名無し
08/12/11 00:17:27 S55BKSOp
博士と助手…だと…
168:創る名無しに見る名無し
08/12/11 00:34:35 0DLc6Vr0
あれ?かわいいおにゃのこの助手?
これは・・・
169:創る名無しに見る名無し
08/12/11 01:30:41 Z1PbgW+x
>>158
だんだん短くなる病と聞いて、ナニが? と思ったのはヒミツ
170:あなたの胸で 1/1 ◆KazZxBP5Rc
08/12/14 00:08:21 xvQXZCYS
白い肌に、ほんのりと赤く色づく頬。
よく手入れされた小さな手が僕の体をやさしく包む。
うっとりと目をつむる顔は天使のように可愛らしい。
だけど……。
ふたりの身体の間で押しつぶされる四つのふくらみ。
その心地良い感触は、けれども僕の心まで押しつぶしていく。
僕はもう彼女と同じ生き物なんだ。
迷いを振り払うように固く目を閉じて、そっと唇を重ねた。
涙が自然とあふれてきた。
何かが足りない。
僕は、彼女と一緒になっちゃいけないんだろうか。
こうなる前に、もっと早く想いを伝えていればよかったのだろうか。
未練がましく唇を離す。
泣いている僕を見た彼女は、優しく微笑んで、手を頭の後ろに回してくれた。
きっと良い母親になれるだろう。
けれども僕といる限りそれは望めない。
僕はどうしたらいいんだろう。
なぜこんな身体になってしまったんだろう。
さまざまな思いがめぐる。
でも、今だけは何も考えたくない。
今だけは、彼女の胸の中で心ゆくまで泣いていたい。
171: ◆KazZxBP5Rc
08/12/14 00:09:03 xvQXZCYS
連載の方がまだ書きあがらないのと某所が百合の流れだったので
ぼくのご主人様!?買って補給してきたぜ
172:創る名無しに見る名無し
08/12/14 00:18:28 haxDK0tF
百合百合だー
173:創る名無しに見る名無し
08/12/14 00:30:49 a5WKnhVm
GJGJ!
百合だー
174:創る名無しに見る名無し
08/12/14 00:40:06 dFI6vI6A
百合だねー
175:創る名無しに見る名無し
08/12/14 01:47:19 OihavxIm
ユリだー!!
176:創る名無しに見る名無し
08/12/16 00:55:09 QdqlSAp2
ヒャッハー百合だー!!
177: ◆KazZxBP5Rc
08/12/17 02:23:18 HCvFFJ1t
百合が予想以上の食いつきだなw
待たせたか待ってないかは知らないが、今回から連載はじめるぜ!
178:魔法少女? ユイ 1/4 ◆KazZxBP5Rc
08/12/17 02:24:22 HCvFFJ1t
第1話『魔法少女誕生!』
夕刻、空が茜色に染まり巣に帰るカラスの黒が映える。
そして同じく我が家に帰り着く少年が一人、名前は椎名唯人。
唯人が玄関の扉を開けると、いきなりその胸に飛び込む影があった。
「ただいま、ジュニア。」
「あんっ!」
ジュニア―正式にはジャッキー・ジュニア―はこの家の愛犬である。
「おかえり。学校どうだった?」
「別にどうっていうこともないよ。」
「そっか。」
ジュニアの後ろから姿を現した女性。Tシャツにスウェットという格好で出てきたのは、唯人の姉、つかさであった。
以上、これが唯人が暮らす家の住人の全てである。
というのも、実家から遠方の高校に入学することになった唯人は、たまたま学校の近くに住んでいた社会人の姉の家に居候することになったのだ。
「姉ちゃんのほうはどうなの?」
「私も会社ではうまくやってるよ。」
「それはいいんだけどさ、そろそろ恋人とか……。」
「別に。」
「美人なのにもったいない。」
最後の言葉はつぶやく程度だったのだが睨み返されてしまった。
「もうにじゅうは……ぐはっ!」
今度は唇をちょっと動かしただけで殴られた。こんなことは椎名家では日常茶飯事だ。
「ほら、夕飯作るから、さっさと食べたいんなら手伝いなさい。」
「あいあい。」
まだ痛む頬をかばいながら唯人はキッチンへと向かった。
ご飯に味噌汁、そしてコロッケに千切りキャベツを添えた、日本ではありふれたメニュー。
いただきますを言うと、唯人はソースをかけて早速コロッケにかぶりついた。
「ただと。」
「むご?」
「いや、噛んでからでいい。」
それを聞いて一個目のコロッケをむりやり押し込んで食べきる。
「で、なに?」
「これあげる。」
手を開いて受け取ると、それはピンクのキーホルダーのようなものだった。
「何これ?」
「うーん、お守りみたいなものかな。危険が迫ったらそれに祈ってみて。ただし人のいるところはダメ。」
「お守りにしては指示が具体的じゃないか?」
「まあまあ、やってみてのお楽しみ。」
うん、これは絶対にお守りではないな。唯人は確信した。
「さ、はやく食べないと冷めちゃうぞ。」
その日はもう『お守り』に関する話はこれっきりだった。
179:魔法少女? ユイ 2/4 ◆KazZxBP5Rc
08/12/17 02:25:32 HCvFFJ1t
翌日のお昼時。唯人は姉のお手製弁当を広げながら友人とだべっていた。
話題はテレビの話だの近所の美味い店だの他愛のないものだ。
皆が食べ終わった頃、一度会話がさえぎられた。
「順平! はい、借りてたCD。」
「お、サンキュ。」
すぐに再び会話が始まった後も、唯人はさっきの彼女、海瀬雅を目で追っていた。
「みやびのこと好きなんだろ?」
横からささやくのは先ほどのCDの主であり雅の幼馴染である順平。
「協力してやるぜ。」
「順平遅いね、自分から言っておいて。」
ナイス幼馴染……と言いたいところだが、いきなり二人きりというのはどうなんだろう。
放課後、唯人は雅と一緒に下駄箱のところにいた。
「ちょっと急用ができたから先に行ってて、ってさ。」
もちろん本当はそんなものはない。後ろめたさと恥ずかしさが手伝って体が汗ばむ。
「ふーん、じゃあ行きますか。」
「う、うん。」
180:魔法少女? ユイ 3/4 ◆KazZxBP5Rc
08/12/17 02:26:17 HCvFFJ1t
「どんなお店かな?」
「ごめん、俺も場所しか聞いてないんだ。」
「そうなんだ。」
さっきからこんな感じでちょっと喋っては会話が止まる。気まずい沈黙がもう何度目だろう。
「すみません、ちょっとよろしいですか。」
突然目の前に男がいた。近くに曲がり角もないのに一瞬で現れた男をいぶかしがっていると、彼はこう続けた。
「あなたたちを襲わせてもらいます。」
「は?」
男が指を鳴らす。すると唯人たちの背後に影が三つでき、その中からせり上がってくるようにして異形の魔物が生まれてくる。
「椎名君、これは……?」
俺に聞かれても知らねえよ、と思ったが昨日の姉の言葉を思い出した。危険が迫ったら? このことを知っていたのか?
人のいないところ……か。まさに危害を加えようとしてるこの男は勘定外としても、雅だけは逃さなくては。
「俺があの男を抑えるから、その間に逃げて。」
「でも……。」
「いいから!」
小声で話したが、聞かれたか? どっちみちすぐに行動に移さなくては。唯人は男に飛び掛った。
「早く!」
雅は一瞬躊躇したが、このままだと二人とも危険だと判断し駆け出した。
「ちっ……。」
掴んでいた男の様子がおかしい。慌てて手を離すと男も影の魔物に変形していく。
どうすればいいんだ。いや、やることは決まっている。
「何も起きなかったら呪ってやる。」
ポケットから『お守り』を取り出すと両手で包んで祈った。神様でも仏様でもいいから助けてくれますように!
181:魔法少女? ユイ 4/4 ◆KazZxBP5Rc
08/12/17 02:27:09 HCvFFJ1t
次の瞬間、唯人は時間が止まったのかと感じた。さっきまでうなっていた魔物の声も聞こえない。風も凪いでいる。それに、そろそろあるはずの攻撃も未だ受けていない。
目を開けてみるといつの間にかステッキを持っていた。それは『お守り』を大きくしたような形をしていた。
いや、「ような」ではなくてまさにそれが大きくなったものだ。唯人はすぐにそれを理解した。
しかしそれ以上のことを考える間もなく魔物が襲ってくる。唯人は反射的にはたき倒した。
「ちょっ、まだ待って! ……え?」
声が変。喉が枯れたとかそういうのではなくて、元から違っているようでむずがゆい。
喉に手を当てようと腕を体に近づけると、先にやわらかいものが腕に触れた。
「え? え?」
服装も変わっているが些細なことだ。胸が膨らんでいる。触ってみると触られた感触がある。確かに自分の胸だ。
先ほど倒した魔物が起き上がってくる。体について考えるのは後だ。
このステッキ、よく見るとちょうど持ちやすいところにボタンが四つ付いている。赤・青・緑・黄。
「なんか強そうだし赤でいいか!」
赤いボタンを押すとステッキの先から火が出た。そのまま炎はマッチのようにステッキの先に留まっている。
「あれ? 熱く……ない?」
手を近づけても、恐る恐る触れてみても、熱さも痛みも無い。しかしこれでいいようだ。なぜなら魔物たちが怖がっているから。
「いっけぇー!!」
ステッキを振り下ろすと炎は瞬く間に飛んでいき、魔物の体を焼き焦がした。
「よしっ!」
すかざず振り返って残りの二匹も始末する。
「はぁ……。」
緊張から解放されて思いっきりその場に座り込んだ。
さっきまで焦っていたので気付かなかったのだが、どうして自分はミニスカートなど履いているんだろう。
両手ですそを押さえ込む。
「あれ?」
また違和感がある。そういえば胸も膨らんでいた。もしかして……。唯人はゆっくりと手を股間に持っていく。
「ない……。」
頭が真っ白になった。これって、つまり、そういうことなんだろう。
「俺、女の子になってる?」
現実逃避のためかどうかは知らないが、唯人の頭は直ちに別のことを思い出させていた。
「……一匹足りない。」
最初に現れた魔物は三匹、男が変化したのが一匹。しかし唯人が倒したのは三匹だった。
追わなくちゃ。それに、必死に追っている間は体のことを考えなくてすむ。
悲鳴が聞こえた。あっちの方角にいる。走っているときにちらりとカーブミラーに美少女が映ったような気がするが気にしない。
唯人が駆けつけたときに見たものは、今にも魔物に襲われようとしている雅だった。
「ふぁ、ファイヤー!」
ギリギリで炎を浴びせると、魔物はもがき、溶けていった。
「ありがとうございます。えっと、お名前は?」
彼女は目の前の少女が唯人であることを知らない。
唯人は瞬間考えた。自分が唯人だと名乗るのもおかしいし、祈るところを見られてはいけないということは正体も秘密なんだろう。
しかし突然適当な名前を思いつけと言われてもな。元の名前が唯人……だから……。
「私はユイ。椎名君から聞いたわ。あなたが海瀬さんね。」
よくもまあうまく口が回るものだ、と本人も思った。
とにかくこうして、魔法少女ユイは誕生した。