糞スレ創作at MITEMITE
糞スレ創作 - 暇つぶし2ch131:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 09:41:18 0hJ7X+WL

空いていた部屋の一室に通すとフェルダーはことのいきさつをカルロに告げると、
一個小隊が鎮圧に当たり、魔物が現れた山へと向かった兵達が未だ帰還していないことを告げた。

「馬車の交易で被害を受けた商工団から
突き上げを食らって、兵を出したんだが……下手をすれば」

「魔物は土塊からでも生まれることが可能だが
完全に実体化するまでは時間がかかる、まだ発見出来ていない可能性もあるさ
突然邪魔して色々とすまなかったなフェルダー」

「こちらこそ力になれなくてすまない、またねロゼ」

「……ん」

そそくさと逃げ出すようにロゼが玄関へと駆けて行くと、父親が頭を下げ娘の後を追う。
小隊の後を追うため乗り合いの馬車へと2人は乗り込むと、
少女は先程、父と話し込んでいた男について尋ねた。

「お父さん、さっきの人は?」

「昔の仲間だ……ここで戦争があった時のな」

「お父さん、沢山人を斬ったの?」

「……あぁ、斬った」

車輪が石に乗り上げ馬車が弾むと、男はかつていくとどなく乗せられた”棺桶”の様子を思い起こし
掌を見つめ鼻を撫で、懐から取り出した水筒の水を口に含んだ。

「強かったんだ」

「強弱は関係ない、重要なのは生き残ることだ
剣にしろ飛び道具にしろ、限られた間合いの範囲でしか効果はない
相手の得物を把握し、安全な位置取りを先んじて取るように心がけろ」

「へへ、私も”神剣”を使えるようになれる?」

男は少女の顔を見合わせ口元で薄く笑うと、少女は不貞腐れるように頬を膨らまし、
鉄の具足を男の具足と克ち合わせる……負けた奴は死ぬ、男はそういう世界で生きてきた。
強弱など何の慰めにもならない、一度生き残る時に、二度生き残る度に、積み重ねられる”死の確立”
何千もの死の刃を喉元に突きつけられ、無事で済む人間などいない筈だった。

神に愛されたと言うよりは、神に嫌われたと言う方が適切だろう。


132:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 19:40:24 Hj4khL4a
さあ、上げて進ぜよう

133:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 21:36:00 b3GhxCCz


【パルミナ北部 山岳地帯】


魔は魂のみの存在であり、その精神的質量により他界への扉を潜ることが出来ない。
死を持って生まれ変わることも滅ぶこともなく、強固な肉体を形成し幾度となく蘇る。
地に溢れる最も多い種族、人間を糧とする為に……。

馬車から降り目的地へと到着した二人は山道を昇り始めた、日は真上に位置し正午を告げる。
歩き続けていた2人の視界に、血の赤が飛び込んだ。

「どうやら間に合わなかったようだな」

「血が暖かい? まだ付近にいるのかも」

少女は寸断された胴から流れ出る血に手を触れると、周囲を見渡し敵の姿を捜す。
傷口は猛獣に食い千切られたような歯形が見られ一部の遺体は焼け焦げている、そのことは
現れた魔物が比較的大型であることを示していた。

「魔力持ちか……厄介な」


134:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 21:36:35 b3GhxCCz

轟くような咆哮が森の中から聞こえてくると、2人は声のする方角へと駆け出す。
鬱蒼と生い茂る森林の中で銅鎧に身を包んだ隻腕の戦士が指揮を取り敵を囲んでいる。

「小隊長、野郎、まだ向かってきます」

「チッ、たまに招集がかかったと思えばこれだッ!
一箇所に固まるな、森林に散兵して敵の行動を拘束しろ!」

警備団の指揮を振るうトリフォンへと近付く巨躯の獣、浅黒い肌に丸太のような腕を振るい。
空気中に発生した球電による熱で地面を焦がす、隠れている木に雷が走ると浸透した電圧が貫通。
男の体を電流が駆け巡った。

森林の中から飛来した射出槍と銃弾が魔物の体を捉える、先陣を切り駆けてくる
賞金稼ぎの姿を兵士達は確認すると、小隊長は散兵している兵たちに号令をかけた。

「救援か? よし援護だ! 槍をありったけブチ込め」

次々と打ち込まれる槍に体勢を崩した魔物に男は足元から斬りかかる、その身長差およそ2倍。
振るわれる攻撃を身を翻して避け続け、攻撃に気を取られた魔物の体が前傾姿勢となる。

「ロゼ……今だ!」

鉄装歩兵の開発進歩により軽量化の進んだ武装は、稼働時間の延長と瞬発力の増強をもたらした。
1人の少女が跳躍し4mを越す巨体の頭部を目掛け握った剣を頭蓋へと突き立てる。
魔物の恐怖に満ちた眼を少女は冷徹な目で見下ろすと、柄を捻り剣先を射出し
脳内を攪拌し、頭蓋を完全に粉砕すると地面へと着地した。

「おいおい、冗談だろ?」

「怪我はないか?」

「あ、あぁ、なんとかな、かなり被害が出たが
まさかここまでのバケモンだとは思わなかったぜ……」

トリフォンが少女の顔を見て呟くと、ムッとした様子で少女は男を睨み返す。
はからずも少女の心象を悪くした男は兵を纏め帰還する準備を整えると、馬車へと乗り込み。
警備隊宿舎へと到着する、宿舎の前には男達の帰還を待っていた者が集まり。
馬車から降ろされた遺体を確認すると嘆きの声を上げた。

「……」

「セリミア、待たせて済まなかったな
今から本部へ報告に行って来る……もう少し待っててくれ」

女は足を引き摺りながらトリフォンの胸元に顔を預け、報告へと向かう男を見送ると
負傷して帰還した周囲の者達の搬送に協力した。


135:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 21:37:47 b3GhxCCz


【新たなる神剣】


一通り作業を追え、宿舎の一室を借りた親子は談笑を交えつつ軽い食事を済ませると、
外から現れた来客の声に呼びかけられ、宿舎の扉を開ける。
そこには1人の女、ロゼの母であるコルネリアが立っていた。

「お母さん!」

「ふふ、元気にしてた、ロゼ?」

「うん……今日はね、凄くおっきい奴やっつけたんだ。
ロゼが止めを刺したんだよ!」

頭を撫でられ上機嫌の娘に母は微笑みかける、血生臭い日常もまた少女にとっては生活の一部である。
現れた女は椅子に座り込む男の前に腰を下ろし語りかける。
来るべき時が来たのだと、男は覚悟を決めた。

「カルロ……いえ、ディマカエリ
娘に……ロゼに”神剣”を譲ってくださらない?」

「あぁ、実力的には申し分はない、譲ろう」

「では、”神剣”は今どこに?」

男は薄く笑うと女の顔を見据えその場を立ち上がる、ロゼに剣を持つように呼びかけ
自らも剣を取るとし表へと歩き出し、見晴らしのよい丘の一つでその足を止めた。

「お父さん、どこにいくの?」

「カルロ、一体どうしたの? さっきから様子が……」

「”神剣”はここだ……」

妻子の方へと振り返るなり男はそう言い放ち、胸元に指をさす、困惑した表情を浮かべるコルネリアの顔を少女は覗き込むと、
父である男は剣を抜き、娘である少女へとその切っ先を突きつけた。

「な、何の冗談なのカルロ?」

「”神剣”が必要なんだろう、コルネリア……魔を討ち倒す破邪の剣、
ベアトリス建国に至る英雄を作り出した神器を……」


136:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 21:38:21 b3GhxCCz

男が少女の下へと剣を振り下ろすと、寸前の所で身を退き剣の届かぬ射程外へと逃れる。
焦燥した表情で逃げ惑う少女に次々と剣閃を振るい、その全てを少女は避けてゆく。

「お父さん、やめて!」

「戦え、ロゼ!!」

「嫌だよ、いつもの動きよりずっと遅いもの、
お父さんだって本気じゃない! なんでこんなことを!」

「これが”神剣”に選ばれる者の運命めだッ!!」

娘に容赦なく突きつけられる剣戟を止めるように母が仲裁に入ると
男はその身を乗り出す女を跳ね除け、更に攻撃を加え少女を追い込んでいく。
コルネリアは次第に理解し始めていた、男の語ることがどのような結果を生むのかを。

「カルロ、もういいわっ! もう必要ない」

「コルネリア、もう後へと引き返すことは出来ない……
ロゼはもう既に選定され、その力の一端を見せ始めている」

「そんな……」

ロゼの放った剣戟を篭手で逸らし少女の腹部に突きを放つと、鎧の一部を弾き飛ばす。
その瞬間、少女の目に飛び込んでくる映像、偶然にももう一方に持っていた剣が父の胸板を貫き
流れ出る鮮血、少女はその場でへたり込み、立ったまま少女を見下ろす父の顔を見上げる。

「お父さん……お父さん!」

「ロゼ、お前は悪くない、誰も悪くないんだ
悪いのは俺だけだ……これでいい」

「……御免なさい」

「”復讐に意味はない”努々忘れるな」

口から噴き出す鮮血が溢れ男の胸元を濡らす、魔に翻弄され戦い続けた男は
ようやく訪れた安息の眠りを微笑みながら受け入れる、惜しむらくはこんな地獄でも手放したくは無い
護るべき者が出来てしまったことだろう。

息を引き取る直前、男が口をつく言葉は掻き消されついには目覚めることの無い、深い眠りについた。

その瞬間、ロゼの頭に記憶が流れ込んでくる、それは100年以上の長きに渡る戦いの歴史。
様々な戦場で”神剣”は常に戦いの渦中へと身を投じ、無限に生まれる魔と戦い続ける。
戦いに向かうのはいつの時代も持たざる者達であった。

―愛する者あれば命を惜しむ

―守る物あれば命を惜しむ

―誇るものあれば命を惜しむ

”神剣”とは何の見返りも齎されることなく、魔を屠る義によってのみ生かされる”奴隷”なのだ。

少女は息を整え、た母の元へと歩き出し、父の遺体を膝の上に乗せ流す母の涙をみる。
しかし少女は不思議と父の死に涙を零すことはなかった。

父から受け継いだ魂は今、確かにここにあるのだから。


137:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:46:45 r8KZNtSB


【ベアトリス湾 酒場】


数日後の街角、まだ日も落ちぬ頃、雑踏をかき分けるように女が酒場の敷居を跨ぐと
酒瓶に埋もれながらうずくまる、女の元へと近付き顔を覗き込む。虚ろな目に沈む瞳は濁り
あの会戦の時に見た、女の精悍さは見る影も無くなっていた。

「合席しても宜しいかしら、コルネリア」

「ヨハンナ……私に何か用?」

「貴女の耳にも入っているでしょう、西側の管轄する地域を連合へ明け渡す調印に対し。
北部領土委譲に対して反対する西側の抗戦派が兵を出しているわ」

「条約で決まったことでしょう、最も
そう仕向けたのは連合の上層部だけど」

女はそう履き捨てると懐から書簡を取り出しヨハンナに向かって投げ渡した、
そこには東西の代表を中立であるベアトリス島へと召喚し、条約を再締結する日時と場所が書かれている。
重要な文書を易々と明け渡すコルネリアにヨハンナは眉をしかめ問いただす。

「どういうおつもりかしら?」

「あげるわ、もう……どうでもよくなったの
倒すべき敵を目の前にしながら、つまらないいざこざばかり。
うんざりしたわ、人間も亜人も皆同じよ」

「彼を失って、冷静さを欠いているのかしら?
貴女らしくもない……」

「馬鹿な男よ―」


138:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:47:21 r8KZNtSB

女はそういうとなみなみと注いだ酒を呷る、殲滅した筈のベアトリス島にまで及ぶ魔の顕現。
本国では既にあらゆる場所から侵攻を始めた魔物の襲撃により、小さな集落や村は壊滅する危機を迎えていた。

「人は強い者には逆らわず、自分より弱い者にその剣を向ける
その事が分かっていながら、あの人は命を賭けたの……」

「彼に近付いたのにも目的があったのでしょう?」

「そう、私の言う事は何でも聞いてくれるのよ
統一戦争の後、奴隷商から彼の命を買い上げた時から。
あの人の命と引き換えに、私が望むものも手に入れたわ……」

杯を持つ手が震え、俯きながら言葉を放つとコルネリアは相手の目を見据え愚痴をこぼす、
互いに愛情があるわけではなかった、その事は死んだ男も生き残った女自身も理解していた。
”神剣”を手に入れ亜人の下へと繋ぐ、その為の逢瀬だった。

「ふふ、あの人ったら、寝てても私が言うまで手を出さないのよ。
それで、夜までずっとそのまま抱き合って眠るのが好きだった、笑っちゃうでしょう。
初心な娘みたいに、彼が傍に居てくれるだけでだけで安らぐの」

「随分と酔っているみたいですわね」

「……もう用は済んだんでしょう? 帰って頂戴」

女が杯を机の上に叩き付けると、ヨハンナは席を立ち、その場から離れ去っていった。
1人残された女は手元に残った酒を呷る。心に残る邪魔な記憶を消そうと、酒を注ぎ思い出を塗り潰す為。
次々と思い起こされる記憶を誤魔化す為に1人ごちる。

「彼が恨み言の一言でも言ってくれれば、まだ救われたのに……」

女の両の眼から涙が溢れ出す。

「馬鹿な―人」


139:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:47:59 r8KZNtSB


【ベアトリス港 郊外の山林】


数人の子供達が山林の中を探索している、剣術の教練をしているスパルタ教師が
魔物に不覚をとったと言う話を耳にし、大人達の鼻を明かす為に山林の探索に踏みきる事となった。
勇ましく指揮を振るう年長組の少年を先頭に、少年達は周囲を見渡す。

「どうよヒルデ、見つかったか?」

「そう簡単に見つかりっこないって、早く戻ろう……
帰りが遅くなると義母さんが煩いんだ」

「何ビビッてんだよ、聞いた話じゃこの森に出る奴は
小さい方なんだ、俺達なら余裕だって!」

しばらく歩みを進めると開けた林へと抜け、そこに蠢く小さな人影のようなものが蠢いていた、
歪んだ顔に爛々と輝く黄色い眼孔、避けた口が笑うように歪むと、細い体躯を撓るように沈み込ませ
林の木々に飛び移るように跳躍した。

「な、なんだッ! さっきのはどこ行きやがった!?」

「上だよ! 木の上を移動してるんだ!」

1人の少年に圧し掛かるように魔物が飛びつくと地面に押し倒され
錯乱した少年はあらぬ方角へと射出槍を放ち、放たれた槍が仲間の肩を掠める。
悲鳴を上げのたうつ仲間を救うためヒルデは手に持った剣で斬りつけるが、魔物の体を弾くだけに留まった。

「き、斬れないの? なんでッ!?」

「クソッ! 槍だッ……槍を撃てッ!!」

指揮を取る少年が槍を放つように指示をするが、素早く動く魔物に照準が合わせられず
次々と山林の奥へと槍が消えていく、飛び道具を失い負傷者を抱えた少年達が後退るのを見計らったように
魔物の体躯が伸び上がり、ヒルデの顔面へと爪を振るった。


140:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:48:31 r8KZNtSB

次の瞬間、放たれた銃弾が魔物の体を弾き飛ばす、いつぞや出会った少女は銃を懐に戻すと
2本の剣を握り魔物へと迫る、跳躍し視界から消える魔物を追うように少女は跳躍すると
木に足をかけ空中で体勢を反転し、すれ違いざまに魔物を斬りつけた。

「君は、あの時の?」

地面へと着地した少女の髪の中からもこもこした生き物が顔を出す、
ロゼは少年のことを思い出したのか、動けなくなった少年達の顔を見据え話し始める。

「何をしているのこんな所で?」

「そ、その、魔物を退治しに来たんだ……」

ヒルデと少女は互いの顔を見合わせると、少女は目を逸らし足元に転がる魔物の姿を見つめる。
息も絶えだえに動く魔物を取り囲むようにヒルデが仲間に指示を出し、
仕留めるよう伝えると、ロゼが見咎めるように口を挟む。

「止めを刺すだけなら、そこまでする必要はないわ」

少女はヒルデに剣を手渡すと魔物の前に立たせ、止めを刺すように促す。

「貴方が止めを刺したらどう?」

少年は血の泡を吹きながらもだえる魔物の前でしばらく立ち尽くしながら、
思い直したように剣を振り上げる、しかし、体は硬直したように動かず、その剣を振り下ろすことが出来ない。
魔物の目に浮かび上がる絶望の眼が彼自身の脳裏に焼き付く。

「で、出来ないよそんなこと」

「自分の手を汚すことなく戦うのは、卑怯者のやること……」

ロゼの振るう剣が魔物の頭蓋を打ち砕き顔面を潰すと、吐き気を催した少年達が思わず目を逸らす、
少女は返り血を浴びた剣を懐から取り出した布で拭い落とし、ヒルデに手渡した剣を受け取ると
踵を返しその場から歩き出し、姿を消した。

「何だ、あの女おっかねえ、ヒルデの知り合いか?」

「前に港で見かけたんだ」

ふと、少年は自分の手が揺れていることに気付いた、恐怖から来る震えが全身を揺らし、
抑止しようと意識するほど震えはますます大きくなっていく、先ほど魔物が斬れなかったのも
心のどこかで命を奪うことに対する恐怖心を抱いていたからだろう。

もしくは自分の感性とは異なる人種との出会いがそうさせたのか、少年には分からなかった。


141:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:49:06 r8KZNtSB


【ベアトリス港 邸宅】


玄関先で仁王立ちする義母に注意を受け少年は頬をつねられると、家の中へと迎えられる。
浴室で体を洗い流し、浴びていた返り血が溶け出すと少年は何度も体を洗い流した。
食事の席に着き、義母と顔を見合わせ少年は語りかける。

「義母さん、亜人って知ってる?」

「えぇ、東の連合を統括する異種族を総括して
亜人と呼ぶのですわ、我々西大陸とを二分する大国……
近い内に争うことになりますわね」

「争うって? 戦争になるの、嫌だよそんなの」

少年がそう答えるとヨハンナは食事をする手を休め、グラスに注いだ水を口に含み。
彼の顔を見つめる、戦乱の世の中にありベアトリス女王を内へと引き入れた連合の力は
西大陸に匹敵するほどにまで成長することとなった。

「貴方が産まれる前に起きた統一戦争も、西大陸に対する牽制。
連合との密約が元になって起こった騒乱ですわ
半ば彼らにその責任がある……」

「でもそれだと、あの娘と戦うことになるよ」

「あの娘?」

「亜人の女の子に助けてもらったんだ、今日はそれで遅くなって……」

その言葉を聞くなりヨハンナはそれ以上食事に口をつけることなく席を立ち、自室へと向かった。
義母がこうなる時は決まって、とても機嫌が悪いことを知っていた少年は口をつぐみ
自分の部屋へと戻ると、椅子に座り込み剣術の教本を開いた。

「読むのは簡単なのに、上手くいかないなぁ」

眉をしかめ近くにあった木剣を手に取り、部屋の中で剣を振るい始めるが
覚悟を伴わなければ、実戦に活かせることはないと、傍と理解した少年はベッドの上へと身を投げ出した。
表は薄暗く夜の帳が街を包み始めると、少年の自室に義母が現れ、少年の傍へと腰を下ろす。


142:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:49:48 r8KZNtSB

「義母さん、さっきはごめんね」

「いいのよヒルデ、貴方はとても優しい子ですもの
争いを好まないのも仕方の無い事ですわ」

「義母さん?」

しなだれる様に少年の肩に女が顔を近付けると、俯く少年の顔に手を添え互いに見つめ合う。
女は強引に唇を重ね合わせると身を退く少年をそのままシーツの上へと押し倒し、顎の根元を押さえ舌を捻じ込む。
唇から唾液の糸を引き女は唇を離すと、震える少年の顔は紅潮し両の腕で顔を隠す。

「可愛い、私のヒルデ」

「何故? 何故こんな……」

「貴方を愛しているから」

彼女はその本心を少年に打ち明ける、憧れを抱いていた彼の母が産んだ最後の忘れ形見、
性格は父親似ではあるものの、その姿かたちは母親の生き写しと見紛うばかりの姿をした少年。
女は羽織った衣類を脱ぎその肌を外気に当てると、今まで抑えてきた黒い欲情を歳の離れた少年の前に曝け出した。

「あ……」

「いいのよヒルデ、全てを私に任せていいの
何の心配もありませんわ」

今まで肉親同然に慕ってきた義母の豹変振りに戸惑う少年は、自らの上に跨る女の体を直視する。
透けるように白く張りのある肌、そして自らを見下すように微笑みかける金色の瞳、
そこにいたのはただ1人の女だった。

「義母さん……」

「今日みたいな事が二度とあっては駄目よ、分かるわねヒルデ?」

少年が体を引き攣らせると抵抗力を失ったのか呆けた表情で頷く、女は満足そうに微笑むと
彼の胸に顔をつけ首元まで舌を這わせる。

―彼の全ては私の物―

その証を刻み込むように女は首筋に強い口付けを交わした。


143:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 16:22:00 Mskttzyk
ごめんスレタイ「糞スレ創作」って見えたけど違うスレ開いてるみたい俺バカだなアハハ

144:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/03 04:29:04 JRwu6kJC
また他所に移るのか?

145:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/04 08:40:58 rCBt0lNq
エロ禁止令

146:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/04 08:57:44 iTlHzSDy
まだ容量だいぶ残ってるね

147:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/05 23:12:07 +8SbEkL7


148:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/08 04:11:40 Beh5Oe+j
オレをストーカーするくらいの技能があるなら、
もっと他のことに力・エネルギーを傾けた・使った方が人生賢明だ
そのサイバーの技能だけは大したもんだしな
もっと建設的に使った方がいいというものだ

149:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/08 04:24:46 fM/57cCg
何のことでしょう^^
誤爆?

150:創る名無しに見る名無し
08/11/09 23:41:45 RRODlmKp
【急報】

「ヴィジランテ旅団が壊滅しただと!?」

「……は、たった今、レイヴンがもたらした情報です。情報部の面々も見聞し、事実である…・・と」

「国王陛下は、この報をご存じなのであろうな」

「いえ、まず情報部より至急、将軍のもとに報告さしあげろと。作戦内容について、大幅な変更を余儀なくされるであろうからと」

「うぅむ……ご苦労だった。下がり、休息するがよい」

伝令士が退室すると、男は長年執務をともにしてきたオーク材の椅子に体を沈めた。
まるで、へヴィ級の拳闘士が鮮やかな一発をもらい崩れ落ちた。そんな風に。
そして、震える手を机上のベルに伸ばし、力なく左右に振った。
試合終了のゴングの音のように、それは室内に鳴り響いた。

「これより、軍議を招集する。将校らを叩き起こし、軍議の間に集めろ」

執事にそういうと、自身もくまさんパジャマから、ものものしいプレートメイルに着替え始めた。

おりしも、王国歴78年の真冬。
一日中しとしとと降りしきる長雨が、王国最強の騎士団の葬送歌のように鳴り響いていた……。

151:創る名無しに見る名無し
08/11/10 04:44:25 PWw1QnvT

なぜなにヨハンナさんのコーナー

聖堂の派遣員ヨハンナと申します
ちょっくらばかり、補足説明致しますわ
ヴィジランテ旅団は懲役免除を餌に集められた諜報部員
つまり私(わたくし)も犯罪者と言うことになりますわね

・ヒルデガルト
爵位を持った爺に言い寄られて、強姦されそうになった所を
脱走して逃げたのが問題になり、とっ捕まってしまいましたの
家督を継げない娘はこの時代、貢物扱いでしたので仕方ありませんが
頑なに拒んだヒルデに目をつけた諜報官が旅団を率いる団長として抜擢させました
レオニウスとの間に出来た息子である、ヒルデベルトを出産する際に死亡しました

・ヨハンナ
私はリアレス教の司祭で教鞭をとっておりました、この際に読んだ書物のおかげで
人並みには軍略をこなすことが出来ますの、教職は教え子に手を出したのがバレてクビになりましたわ
男は汚らわしくて触れるのも嫌いなので、無論お相手は女生徒ですのよ

・キアラ
ヒルデお付きの従者ですわ、ヒルデベルトが死亡した際に本国へ呼び戻されました
二重スパイと言うやつですわね

・フランチェスカ
壊滅した盗賊団の頭の娘ですわ、手先が器用で口もよく回るので重用されていますの
現在では私に隷属しております

・セリミア
騎士の娘でしたが犯罪に巻き込まれ、喉を潰された挙句に功罪の全てを押し付けられた娘ですわね
ドルバトゥールに切られ落馬した際に足を悪くしましたの、トリガシラとか言う男と所帯を持ったようですわ

と言うわけで騎士団でもなければ、旅団が全滅しても特に問題はありませんの


152:創る名無しに見る名無し
08/11/10 04:47:40 PWw1QnvT
×ヒルデベルトが死亡した際に
○ヒルデガルトが死亡した際に

153:創る名無しに見る名無し
08/11/10 08:00:52 UVScj/O8

バティアトゥス先生の余談講義

元赤銅の盾、参謀バティアトゥスだ
現在ではベアトリスはパルミナとガセルダを隔てた関所を撤去し
ベアトリス港としてまとめ交易をしており
大都市となったベアトリス街で教職についている

・ユリウス
ベアトリス会戦時に受けた傷が元で現役を退き、溜め込んでいた私財を元手に
救貧院を設立、そこで学園長をされている、ちなみに教育水準のレベルは
東連合>ベアトリス>西大陸だ

・トリフォン
ベアトリス会戦時に大砲の直撃を受けたにもかかわらず、腕一本で済んだ悪運の強い男だ
学園に就職した私の推薦で軍事教練の教職についている
副業で自警団にも参加しているようだ、セリミアとか言う女と同居中らしい

・アデニオン
ガセルダ侵攻作戦時に死亡したが死体はまだ見つかっていない
遺体のほとんどが原形を留めていないのが主な原因だ

・バティアトゥス
ベアトリスの学園で講師を務めている
官僚の幾人かが歴史を歪曲する為にベアトリスに残された書物を焚書したが
リオニアから大量の国書が見つかり、ここ数年でベアトリスの教育水準は飛躍的に高まった
失われた技術により、インフラの整備も進んだと言われている


魔法についての講義

・ベアトリス女王
ベアトリス国は代々女系の女王が戴冠する、血統を示すのは容易であり
受け継いだ強大な魔力の顕現を示すのは大概の場合、女王の血を引いている
元来”魔力持ち”は魔族との混生配合によって産まれるため
ベアトリス女王は魔と人間の中間種ということになる

・魔力
幽離(アストラル)空間から現存世界にエネルギーを転移することで魔法を生み起こすのが魔力だ
体の中に生来備わっている魔人血統としての魔力持ちと、自然世界に漂う魔力を収束できる魔力使いの二つがいる
分かりやすく言えば天才型と努力型がいる、人間と亜人の間にある差別意識はこの思想が根底にある

・亜人
亜人とは文字通り亜種に分類される人類だ、魔人血統を持つものが交配を繰り返し
血が薄まったものだと言われている、魔法を学問として昇華させたエルフ、頑強な肉体を持つドワーフ
精密作業に向いているホビット等が連合に参加している

亜人が長命と言われており120年程度
人間のこの時代の平均寿命は40歳前後である為、充分長命と言えるな


154:創る名無しに見る名無し
08/11/10 08:01:30 UVScj/O8

読んでもつまらない裏設定

・ベアトリス戦争について
ベアトリスは島国であり、島にある4つの領土と植民地である西大陸からの税によって国政が賄われている
官職は軍務・執政の二大権力と行政における複数の大臣によって成り立っており、女王による任命制
軍師であるリュゲルは女王の意思を任意に操作させ、自分の手駒を官職につかせると暴走を始め
傀儡王政と化したベアトリスは各地の領主との税率や政策との行き違いから、疎遠となり
ついにはベアトリス統一戦争を引き起こした

・何故戦乱が起きたか?
小さな島国では資材を賄いきれない為、外国からの輸入に頼ることになる
各地の領主達は貿易による交易でその領土を拡大し、資金を得て女王に納める税と収益を上げていた
しかし、ここでちょっとした問題が起こる、東の連合と結ばれた”同盟条約”
国力をつけ、ベアトリスに匹敵する力を身につけた西大陸の独立を恐れた
先代のベアトリス国王が秘密裏に連合と結んだものだ

・国益の齟齬
抑止力となるべく結ばれたこの同盟条約に危機感を抱いた西大陸の官僚達は
海賊を敢えて無視し、ベアトリス商船に対する略奪と通商破壊活動を推奨して行った
貿易なくして経済が立ち行かない、ベアトリスに対する”脅迫行動”だ、リュゲルは妻子と共に不運にもこの海賊行動に巻き込まれ
この事件が彼の復讐心の一端を担うことになる、この事件から大陸とベアトリスの確執は深まり
修整不能な事態へと転がり落ちていく

・安全保障と三十三稿
ベアトリス領内における三領が官僚の決定を無視し、個別に西大陸との安全保障条約を締結した
この判断を翻意とみなしたベアトリスの官僚達は各地の領主に税率を上げ脅しをかけるものの反発を食らう
疑心暗鬼に陥ったベアトリス領は国内から孤立し、ベアトリス領からの安定した食糧供給を停止
三領を分断するように砦や関所を設けて反抗に備えた

そして西大陸より半ば独立を求める脅しとも取れる”三十三稿”の条約を突きつけられ
武力によるベアトリス統一を宣言”ベアトリス統一戦争”となった


155:創る名無しに見る名無し
08/11/10 15:17:07 gb2D/Aul

天才イフティハルが語る西大陸の興り

ガセルダの若き新領主、イフティハル様による
西大陸の興国の歴史と現在の政況を説明しますよっと
植民地である西大陸は無数の領土により分かれており、小康状態の内紛が続いてるが
それらを取りまとめて西大陸と呼ぶ、一枚岩の大国とは名状しがたい状況な訳だな

・イフティハル
完全無欠の完璧人間、それがイフティハルだ
鍛え抜かれた肉体、美術彫刻を思わせるような優美なルックス
それもその筈、かの英雄”不死身のドレト”の孫にして、ガセルダの新領主である
早く俺もカッコイイ通り名が欲しいぜ

・マルコ
俺の取り巻きにして、家来第一号の文筆家
おふくろ以上に口煩いので会話すると説教になること、請け合いだ

・アル・アフダル
俺の教育係としてつけられた酒臭い爺さんだ
大人の遊びも色々と教えてもらったぜ、特に七並べが最高だな

知らなくてもよかった大陸予備知識

・西大陸の興国
歴史年表を見ての通り、元々人類は東西の大陸に分かれて住んでいた種族
しかしながら、魔族の台頭により生きる場所を失った人間達は、大陸を捨てて逃げちまった
その後、島国ベアトリスで力を蓄えた人々が兵を従え帰郷、大陸に蔓延る魔族を屠り
西大陸を救った、その中でも突出していた人物が”不死身のドレト”だ

・不死身のドレト
不死身のドレトは謎の多い人物であり、通り名の通り戦場では不死身だったとも言われる
魔物から奪い返す土地が、そのまま自らの領土となった時代
彼のような英雄が、より多くの領土を手に入れることは必然であったと言えるな
魔族どもから奪った広大な土地はそのまま中央都市「ゴード」となり
他の領土は中央の衛星都市となった

・中央都市ゴードによる植民支配
ゴードにはベアトリスから流れてきた貴族達が溢れ帰り、専制政治による植民地支配が始まった
王族に任命された大臣が国政を取り仕切り、俺等の英雄を顎でコキ使う
そんな状況を見かねた国民の中で反発が生まれ、タカ派とハト派が内部分裂を起こした

・南北を分けるジャルムとガラム
特に未だに魔族との戦闘が絶えない、北部の辺境都市ガラム
砂しかない南方都市ジャルムは、旨い所だけつまみ食いして持っていった貴族に対し猛反発
現在でも続く内紛の元となった訳だ、北方領土移譲に関する
領土移譲条約などは西大陸に反発するガラムを連合が上手いことノセた形だ

・政局の暴走
貴族連中の増長を見咎めたのは西大陸の一部だけに留まらず
ベアトリス本国もそうだった、特に大量に採掘される金の存在により、経済状況は逆転
大臣を解任すると、貴族達は労働量を減らし希少鉱物の採掘量を制限、本国に脅しをかけ始めた
新しく任命された大臣も即座に金と女の賄賂で骨抜きにされ、実質貴族が国を取り仕切った
洗脳教育により、国内では独立を望む声が高まり、国民の不安は怪しげな宗教で封殺
所得格差による貴族階級が、平民以下を一方的に支配する枠組みが完成された

・ガセルダの立ち位置
ドレトが中央都市ゴードを作り上げたとはいえ、これと言って高い評価を受けた訳じゃない
西大陸で名を馳せた英雄の親族は本国ベアトリスのガセルダへと送られる、要するに”人質”だ


156:創る名無しに見る名無し
08/11/10 15:17:38 gb2D/Aul

ロゼの亜人連合説明コーナー

作者の文章力では分かりにくい点を説明する
鉄装鎧の技術、剣闘士、賞金稼ぎ、神剣使い……etc
次いで東の連合についても補足する

・ロゼ
私です

・カルロ・ロッシ
神剣使いとしてお祖父さんに養われ業を受け継がれた、ロゼのお父さんです
ベアトリスに送られる前は連合の所有下にある奴隷で、地面に打ち込まれた杭に鎖で繋がれ
体から流れる血の臭いに引き寄せられた魔物を斬る、連合北領砦に収容されていた最後の剣奴でした
その後ベアトリス軍に買い付けられ、戦役でも生き残ったのでお母さんに買われました

・コルネリア
神剣の研究者であり、真偽を図る為に神剣使いを死地に送り込んで検査していました
お父さんが戦闘で死ぬように仕向けたのは全て実験であり
神剣が呪いだということには気付いていなかったようです

・神剣使い
魔族を滅ぼす為に賢者によって作り出された剣……と言うのは建前で
その実体は自らを殺害した人間に肉体の身体情報を移し変える、呪いの一種
この呪術自体「かけられた者が戦いの中で死ぬ」ことを前提に作られている
ロゼの体の中にも百数十年に及ぶ戦闘経験が蓄積された
犠牲の数が多いほどより強くなる


細かい設定あれこれ

・剣闘士
見世物で奴隷同士が殺しあう競技、お祖父さんはここ出身

・賞金稼ぎ・用心棒
人に害を与える魔物の駆除や犯罪をして逃げる賞金首を殺してお金を貰う仕事
陸路での交易(トレーダー)を護衛する者や盗賊や魔物から村などを護る用心棒は”ヴィジランテ”と呼ばれる
仲介役となる案内所(ギルド)に書類を出せば誰でもなれる

・鉄装鎧の進歩
3~5mm装甲板が当たり前の時代から、近年では最大装甲厚が10mmの物まで現れた
戦地以外では全身を覆うものよりも軽装の物の方が主流、臙脂石の出力向上と鉄柱(シリンダ)の小型化
限界最大積載量が増大が300㎏を越えても動けるようになった


157:創る名無しに見る名無し
08/11/10 15:18:11 gb2D/Aul

謎の集団”亜人連合共同体”の解説

・東の連合の実体
亜人は様々な種族に分かれるけど、内向的なために外交的な摩擦や衝突が起きにくいのが特徴
ベアトリスから流れてきた移民は彼らの生活に馴染み、政治に興味を持った各種族は代表を集め共同体を発足
西大陸の中央都市ゴードと同じくして、連合を統括するエルフによりフランティエが誕生する
活発な研究や学問が行われ、研究成果や正否を判断する為に他国との干渉を強めることが多くなった
ベアトリス女王が訪れたことにより王都に指定された

・ベアトリス王女のその後
純粋な魔人としての意味合いを持つ、王女の存在は亜人の発祥を示す
最も興味深い検体であり、フランティエによる最重要の学術研究対象として保護されている
また亜人の人種的優劣を唱える人類学者にも大きな影響を与え、連合内の劣等種(人間)排泄論にも拍車がかかった

・失われた力を求める亜人
選りすぐられた種、前時代の失われた力を取り戻す為の研究が連合では積極的に行われた
”神剣”や”亜人の起源”、”魔法の探求”や”技術開発と兵器転用”に至るまで幅広い分野で研究が行われている
お祖父さんが倒したと言われている”竜”の存在を示す研究、魔物に幽離(アストラル)段階で
人為的に手を加え、自由に生成(召喚)する研究も進められている

・連合の規模拡大と経済成長
豊富な食料・資材と工業力によりめざましい発展を遂げ、ベアトリス戦役による
交易で多大な収益を上げることに成功した、これにより”戦争成金”ともいうべき富豪層が次々と現れ
武器や兵器などを製造する工場が次々と増産、より富を得る為の政策に影響を与えている
その政策とは”他国の争いに火を注ぎ更なる収益を上げる”と言うもの

・北部領土移譲問題
西大陸における北部領土ガラムにて、領土移譲問題に関する取り決めが行われた
西大陸中央の意思決定に逆らうガラムが、北部からの魔物の侵略と中央からの突き上げにより
連合を頼り事実上泣きつく形となった、ここを交易の中心として足がかりにしたい連合と
連合の内陸侵攻を恐れる大陸、更にはガラム反抗軍とゴード中央軍の戦中利益を狙う財閥の思惑により
情勢は混沌の様相を呈してきた……


158:創る名無しに見る名無し
08/11/10 16:50:24 Q6Uh10g6
シャアード・ワードを作ろう!
スレリンク(mitemite板)

こっちも盛り上げてくれ~

159:創る名無しに見る名無し
08/11/10 21:31:33 PANBb08l

 【軍議の間】


「彼奴らめが全滅したというのは真の話なのか?」

「ああ、〈情報部〉のシメオン・スターアイが確認済みだそうだ。
 連中の生首がキレイに7つ、カーラーン城の狭間胸壁に並べられておったそうだ。
 ご丁寧に、女勢のおっぱいを切り取って、口に含ませてな」

「……星の目殿か。これで〈教会〉の連中が騒ぎたておるな。
 なんせ彼奴らめに祝福を与え、”神の代行者なり!”と判子を押したのは
 教皇聖下、御自らなのだからな」

「神の栄光を帯び、矢も剣も通じぬ、魔法さえも跳ね返す。
 そんな無敵の方々をぶっ倒しちまった連中は、どんな神様の祝福を受けていたのやら」
 あんがい、向こうの方が霊験あらたかなのかも知れませんな」

「聞き捨てならんな。つまり、我らが神より連中の神の方が力がある……そう言いたいのか貴校は」

「めっそうもない。ただ、祈り一つで矢をはじく。
 そんな便利な鎧があれば自分もぜひ欲しいと思っていましたところ、
 それがとんだ欠陥品だったことを知り、ガックリと肩を落としているだけのこと。
 ああ、せっかくヘソクリを貯めていたんですがねぇ」

「……連中に、信心が足りなかったのだッ!」

「まあ、そのへんで止めておけ。
 とにかく、今、我々が話すべきはヴァリアンテ騎士団のことではない。
 我々がいかにして、カーラーン城を落とすか、それについてだ」

「うむ、まず現状の再確認について語りたい。オートン」

「はっ」

(机の上に、巨大な地図が広げられる)

160:創る名無しに見る名無し
08/11/11 18:15:41 D7yvmypQ


【中央都市ゴード 錬兵工廟】


中央から広がる高級邸宅に群がるように立ち並ぶ貧民街を隔て、
その合間を縫うように工業地域が広がっている。鉄板を金槌で打ち付け薄く引き延ばし、鋲で止め製作する簡易な製作工程。
ほぼ全ての武器・防具が職人の手作業で作られる製造現場は、よく言えば職人芸であり悪くいえば前時代的である。
イフティハルは頭を掻きながら考え込むと文筆家が彼に声をかける。

「随分と慌しい操業ですね、やはり最近は物入りだからでしょうか?」

「大昔の全身鎧と言えば装甲の厚さが1mmにも満たないものが、ほとんどだが
それよりも薄い上に炭素の焼き付け工程すらもしてねぇな」

「?……鋼じゃないんですか、これ?」

「こんなもん着て戦うくらいなら服の方がマシだねぇ」

男はそばに置いてあった完成した鎧を拳で叩くと、ぽこんと間抜けな音が響いた。
大凡の場合、連合製の2mm装甲板を打ち抜くのに必要な弓の張力は50Kg、それだけの力で弓を引き続け
標的に狙いを合わせ動く敵を撃ち抜くのは至難の業である、結果として戦場では狙うのが容易な機械弓に取って代わられ
最終的には巻き上げの必要もなく動体静止能力(マン・ストッピングパワー)が高い射出槍に取って代わられた。

「下手するとやすりで削れるんじゃない?」

「色んな方面から苦情が来るような発言は慎んでください、
鎧がやすりで削れる筈ないでしょう」

臙脂石を用いた不燃機関の研究が進まず、西大陸は連合との技術開発に遅れを取り、
未だに機械駆動方式を用いた鉄装鎧の自主開発の目処が立たないまま、技術と工業水準は停滞を続けていた。
更には平和と享楽に浸かった国民達の徴兵義務は疎かにされ、ガラムへと向かう兵の多くが
無産市民で構成されており、士気が低いのが現状である。

ここにきて西大陸にある技術力の無さと、軍隊としての錬度の低さが浮き彫りになった形となる。
イフティハルは香草を口にいれもさもさと齧ると、思案に耽りながら工廟を後にした。

「御館様、西大陸は勢力的に一番大きいのに、何故兵が集まらないんでしょう?」

「負けたら死ぬ戦況ならまだしも、大義名分もない貴族連中の領土争いの為に死にたがる奴などいる筈もない、
平和な時代に生きてるのに突然剣を渡され、戦うことを強制されれば誰でも逃げ出すでしょ
尚且つ労働の中心にある男手が死んだら、残された親族は路頭に迷うのがオチ。
死にたくない兵士を戦地に連れて行けば士気も低くなるさね」

「じゃぁ、ベアトリス軍のように傭兵や奴隷で部隊を構成すれば……」

「傭兵や奴隷で兵員の埋め合わせをするのは、正規兵の数があればこその話だ。
例え話、正規兵が100人で奴隷兵が1000人集めたとして奴隷達は言うことを聞くのか?
正規兵の数が補充する数を上回っていなければ、奴隷や傭兵連中の運用は危険だよ」


161:創る名無しに見る名無し
08/11/11 18:16:13 D7yvmypQ

二人が官邸の広場に差し掛かり周囲を見渡すと、こちらへと歩いてくる男の姿が目に入る。
注意深げに辺りを見渡し、二人の前で立ち止まるとイフティハルが書状を突き出し、男は言葉を投げかける。

「これはどうもイフティハル様、ようこそお越しいただきました
この度の戦況、どのように予測されますかな?」

「ガラムの勝ちだな、防衛側で装備も潤沢
条約が再締結されるまでの間、中央軍がどれだけ連中の領土に食い込むか……」

「しかし、それでは中央が許すまいでしょうな」

「連合はベアトリスに一旦、陸揚げした物資をガラムへと輸送している
状況から見てベアトリスがガラムを支援する形だ、統一戦争の王女に対する
待遇がここに来て仇になったねぇ」

海運での交易を保障している西大陸にあって、ガラムへの物資搬入を差し止めることは出来ない。
つまり兵站を断ち切り、篭城を切り崩すのが不可能となっている以上、西大陸の取るべき選択肢は限られてくる。
条約を反故にしベアトリスからの補給路を断つ、下策だが街に篭城する敵を力攻めで落とす、或いは先んじて戦略的要所を押さえ
防衛が困難であれば破壊、譲渡する前に連合の動きを前もって封じる。

「大臣の判断により既に第一陣は出兵を済ませ
ガラムの街へと向かっております……」

「負けた時のこと考えねぇのか、お偉いさん達は……
ガラム要塞はどうなってんの?」

辺境から中央都市へと続く陸路の間にそびえる岩山を切り崩して作られたガラム要塞。
南下する魔物の侵攻を食い止めるために北向きに作られた物だが、南向きに手を加えれば陸路を封じる防衛線となりうる。
ガラムの行動は経済的に抑え込めるにしても、この要塞を先んじて奪取されるのは好ましくない。
連合が中央都市へ侵攻するためのルートを確保されることと同義であるからだ。

「兵は与えられる命令以外では動かぬものです……」

「俺がガセルダから連れてきた兵の内5000は自由に使ってくれ
だが残り2000はこちらで遊軍として別行動させて貰う」

「し、しかしそれでは、こちらとしましては……」

「援軍要請の書状には5000と書いてあったんだ、余りの2000は
俺の指揮下に置くのがスジってもんでしょ? 何か問題でも?」

イフティハルはにやりと笑みを浮かべながら強い語調で男に言い放つと、呆れ顔の行政官を残しその場を立ち去った。


162:創る名無しに見る名無し
08/11/11 20:33:48 yuurGviO

 【カーラーン城攻囲戦(3日前)】

「あ、あの、閣下。陣はどこに設営いたしましょう?」

「まだ早い。それよりも、地勢を検分したい。
 今の季節、ホワイト・リバーは兵馬の渡河は無理だと言ったな」

「ええ……基本的には……まず無理かと思われます」

「お前は、この地のルートウィン家の出身だと聞いたが?」

「はい、我が家はホワイトリバーのクロス王家の旗手諸侯を務めて参りました。
 今もそれは変わっておりません。これからも、永遠に揺るがぬ忠誠を捧げております」

「クロス王は、ホワイトリバーに唯一の橋をかけその地位を築いたという。
 だが、70年前。 橋を挟んで王の双子の兄弟が争いを繰り広げたとき、お前たちルートウィン家の始祖は
 秘密の通路から川を渡り、敵の背後をついて功をあげ、その家名を起こしたと聞く。
 あれは、吟唱詩人のホラ話だというものもいる。
 あの河を渡れるはずがない。ルートウィン家は兄の軍を裏切って、強襲を仕掛けたのだと。
 その証拠に、奴らはミミズ捕りから成りあがったではないか、と」

「根も葉もない、嘘っぱちです!」

「ああ、だからその証拠をオレに見せてくれないかな?」



その夜、夜陰にまぎれ、赤茶けた泥水を跳ね上げながら、わずか300つの騎影が河を渡り始めた。
彼らが陣を敷いたのは、河を渡ってすぐ、カーラーン城の目と鼻の先であった。

「さあ、特等席ができたぞ」

そう言い放つのは、王国最強と謳われるヴィゼリア騎士団団長、ヨゼルダ・ハーラルであった。

163:創る名無しに見る名無し
08/11/12 22:55:36 67TlaL79


【盾、潰える時】


日が水平線へと沈み夜がふける頃、いつ頃から振り出した雨が舗装された石畳を濡らしていく。
降りしきる雨霧がたちまち周囲の空気から熱を奪うと、教練から帰宅する途中
足止めを食らった男が憎々しげに空を仰いだ。

「降り出したな……」

「よぉ参謀、お前も立ち往生か?」

横から現れたバティアに声をかけられたトリフォンは不意に差し出された、雨避けの外套に目をやった。

「どういう風の吹き回しだ?
ひょっとしてお前が呼び込んだ雨じゃねぇだろうな?」

「まぁ、たまにはな……お前は風邪をひく心配など無用だろうが
お前の女房を寒空の下待たせるのは忍びない」

「まだ一緒になった訳じゃねぇよ」

「わざわざ指輪代の為に自警団で危険な思いをしなくとも
副業の一つや二つ紹介してやった物を……」

参謀にそう言葉を返された男は言葉に詰まると、口を尖らせ否定するように目を逸らす。
差し出された外套を手早く奪い取ると、噴き出すのを堪えるように笑う参謀に
手を突き出し。親指を下に向け煽った。

「笑ってんじゃねぇよ……この」

「またな、色男」

「あぁ、またな……こいつは借りにしておくぜ」

背を向けて男が雨の中を歩き出すと、前髪にかかる雨粒が忘れていた記憶を呼び起こしていく、
ベアトリス会戦時、南門で足止めを食らうこととなった赤銅の盾一団は砦に残っていた正規軍と合わせ
打ち破ることの出来ない戦いへと身を投じていた。

あの時も雨が降っていた、泥の中を這いずり回り、城壁へと接近し攻城櫓を誘導する手筈。
しかし敵の放った数発の砲弾が攻城櫓を打ち砕き、そのまま瓦礫の山に飲まれ彼は腕を失ったのだ。
会戦に破れ、仲間と腕を失い、今こうして雨の中自分の帰りを待つ者の元へと帰ってゆく。

「……チッ」

牙を失った男は二度と戦うことは出来ない、自警団の仕事を引き受け、自らに残された可能性に縋る道も断たれ、
自らの無力感に打ちひしがれる。安息の中につかる自分自身の姿と脳裏に焼き付く戦友の死。
トリフォンは胸から下げた紋章を握り締め口を結ぶと、橋の下に佇む不審な影に気付いた。


164:創る名無しに見る名無し
08/11/12 22:56:51 67TlaL79

三人の男に囲まれるように少年は逃げ道を塞がれ、持っていた麻袋を男達の前で振り回す。

「そう興奮するなよ坊主、何も命まで盗ろうって訳じゃない
ちとばかし、俺等と一緒に来て貰えれば済む話なんだよ」

「寄るなっ! 僕は……」

「ヒルデベルト家の御子息様だろ? その点はよぉく存じ上げておりますとも」

「何故それを!? お前ら何者だ?」

男達に囲まれていた少年ヒルデは、懐から木工作業用のナイフを取り出し突き出すと、
敵は軽々とその攻撃を避け、がら空きとなった腹部に向かい膝で蹴り上げた。

「ぐ……あがぁぁっ!!」

「所詮素人だなお坊ちゃん、さて……」

「ヒルデッ! そこ動くなッ!!」

「……先生?」

加勢に現れたトリフォンは外套を脱ぎ捨て川岸を滑り降り、修練用の木剣を片手で構え相手に向け突きつける。
突然現れた予想外の邪魔者に一瞬身動ぎした男達は相手が隻腕だと分かるや否や
口元に笑みを浮かべ、左右から同時に撃ちかかる。

瞬時に敵の得物の判別を終えたトリフォンは、細身の剣と木剣を克ち合わせると、剣は根元から折れ地面へと突き刺さる。
呆気に取られた男の一人は首元に追撃を打ち据えられ地面に倒れ込んだ。

「な、なんだこのカタワ野郎はッ!?」

「そりゃ、こっちの台詞だ……うちの生徒に何の用だ?」

「ひ、ひははは、多少は出来るみてぇだが、テメェは運がないぜ
おい、ゼラー! 仕事だッ……この野郎をブッタ斬れッ!!」

「お……おぁ?」

後ろで待機していた男の前に剣を投げ出され、鎖の擦り合わされる金属音が周囲に響く。
頭から被せられた麻布から除く手足は明らかに手錠で繋がれており、
それだけを見ればゼラーと呼ばれた男が奴隷であることが分かる。

「何もたもたしてんだ、早く拾えッ!」

敵が剣を拾うのを待たずしてトリフォンは前屈みに剣を拾おうとする奴隷へと斬りかかる、
この状況であれば、どのような敵であろうと自らの勝利は揺るがない、彼自身の経験がそう判断したのだ。
赤銅の盾千人長 トリフォン、数多の戦場を駆け戦い続けた男の最大の不運は、
常軌を逸した強敵との交戦経験がないことによる”油断”だった。


165:創る名無しに見る名無し
08/11/12 22:57:25 67TlaL79

「な……何ッ……!?」

「ん……」

トリフォンの腹部から鮮血が滴る、自らの予測した距離よりも遥かに遠い間合い。目まぐるしく動く思考の波に流され、
彼は相手の足元を注視する、奴隷の男は足の指で剣を握り、トリフォンの斬り下ろしの隙に蹴り込むように
突きで合わせたのだ。予想外の出来事、思考に混じる雑念を吹き飛ばし、
トリフォンは木剣を強く握り直すと、敵の追撃に備える。

ゼラーは足の指で握った剣を空中に放り上げ手に取り、両者共に顔を見据えあう。
その刹那、トリフォンは敵の動きを先んじて捉えると先程と同じように剣の腹を横薙ぎに打ち払いにかかる―

「……」

雨は激しさを増し、ベアトリス港の街並みを埋め尽くすように満たしていく、赤い屋根の借家に住む女は
痛む傷を抑え彼の帰りを待ち続けていた。突然降り出した雨に濡れて帰って来るだろう。
そう思い水を拭う為の布を手元に用意して、ただ道の先の向こう側を見つめていた。

「……す…まない」

橋の上に体を横たえ、息を吐く度に喉元から空気と血が漏れ出し、雨水の中へと解けていく。
手には仲間達の命を刻んだ紋章を握り締め、ただ心の中で懺悔の言葉を繰り返し、

やがて、男の命の火は雨の中で消えていった。


166:創る名無しに見る名無し
08/11/12 23:59:24 Ql98EHiM
まだあるのかこのスレ
24時間ノンストップオナニーだな

167:創る名無しに見る名無し
08/11/13 00:57:09 L3GhGxT5
シェアードの方が尻切れで終わったんで
こっちはまともに終わらせたい

168:創る名無しに見る名無し
08/11/13 03:15:27 E9loqQtk
何故か自分がストーカーされてると思い込んでる
微妙にキの字入ってる人なんでそっとしておいてあげた方がいいぞ

基本的に淡々とSS投下していくだけの人畜無害だから

169:創る名無しに見る名無し
08/11/13 06:50:39 U1bQ0bBR
シェアード青春で普通の日常書いてたのだろw

170:創る名無しに見る名無し
08/11/15 23:49:52 S+hSR/6r


【王都フランティエ フランティエ宮殿内】


宮殿に朝日が差し込み、庭に咲く色とりどりの緑が光に照らされざわめく、
王宮の一室、けだるい倦怠感の中で女は目覚めると、枕元に備え付けられた水差しを
カップへと注ぐと水を一口含み溜め息をついた。あれから16年の時が経ち少女の面影も無くした女は、
かさつく髪を指で解きほぐすと窓ガラスに映りこむ自らの姿を見る。

ベアトリスから離れた今でも、軟禁生活は終わることはなく彼女に自由が与えられることはなかった。
時折訪れる医者の処方箋や検査により、体調も思わしくなく、無気力な日々を過ごしている。

「ベアトリス様、良い御目覚めでしたか?」

「クロウリィ、今日は気分が優れないの……」

若くしてフランティエ連合を束ねる国家元首であるクロウリィと、廊下で顔を合わせると男は頭を下げる。
短く整えられた黒髪に薄く見開いた目、まるで作り物のような細い手足からは、異様な雰囲気が感じられ、
女は彼と視線を交わすことなく足早に立ち去ろうとする。

「どちらに行かれますので?」

「庭です、この時期になると薔薇が咲くの
こんな窮屈な場所では、他に楽しみなどないものね」

「これは手厳しい御意見です、しかしベアトリス本島に比べれば……」

「その話はもうしないように釘を刺しておいた筈よ、クロウリィ
もう思い出させないで頂戴」

思い起こされる記憶、思えばあの島では何一つとして良い思い出などなかった、
連合により自分自身が魔と人の混血であることを知らされた少女ベアトリスは、あの日全てを知ったのだ。
物心付く幼い時からリオニアに放逐されていたのも、家臣が自らを見つめる冷徹な視線の意味も、
最愛の人が振り返ってくれなかったのも、全て。


171:創る名無しに見る名無し
08/11/15 23:50:25 S+hSR/6r


自分自身に秘められた力を誇りに思えた時期もあった、少女時代、同世代の村の子供たちの憧憬を集め、
ある日王族であることを知らされ、夢のような王宮生活に胸を高鳴らせた純朴な少女。
あの時の自分に今のような落ちぶれた姿など想像しようもなかったことだろう。

「―ドルバトゥール」

不意に流れ出る涙を女は指で拭う、他の男の腕に抱かれても消えることのない記憶。
階上からその様子を窺っていた元首は泣き崩れる女の姿を一瞥し鼻で笑うと、
当初の目的であった執務室に入り、部下である男に語りかける。

「どうだカステル、神剣使いの絞込みは順調か?」

「はい、新たに999人の捕獲した奴隷を”蟲毒”にて選定しましたが
残念ながらそれらしい者の発見には至っておりません」

カステルと呼ばれた頬のこけた男は細かい状況を記した書簡をクロウリィに手渡す。

「忌々しい神剣使い共め……引き続き選定を続けろ、
ガラムに向かわせた兵の動きを西大陸の諜報部に流してやれ」

「しかし、それではこちらにも相応の被害が……」

「劣等種が何人死のうが、こちらには問題無い
炙り出すには丁度良かろう、候補に残った男はまだ生きているのか?」

「”ゼラー”は現在リューゲル家へ向かっております
直に経過報告が寄せられることでしょう」

側近の言葉に耳を傾けていた男は細い目を見開き、口元を歪めると顔を押さえ込むように笑い始める。
甲高い不快な笑い声が執務室に響き渡ると側近の男も口元を釣り上げる。

「”神剣使い”同士の殺し合いか、これは結果報告が見物だな……ハッハッハッ!
カスどもめ、これが力だッ! 矮小な人間が些細な力を身につけた所で
絶対的権力の前では児戯に等しいッ!」

「仰る通りで……」

「西大陸に集められた25000の兵力、これを損耗させ、最後の仕上げを行う
統一戦争と同じく抜かりのないようにな」

そう言い放つ男の形相は邪悪なる者が放つ”魔”の微笑であった。


172:創る名無しに見る名無し
08/11/16 02:13:32 mchPig/t

【最後の希望】

「条件を言え、聞くだけは聞いてやろう」

「早々に旗印を捨て、大手門を開放し呂。
そうすれば、将兵の命は保証する。エモン公に仕えたいものは残ることを許す。
嫌であれば、武装解除と引き換えに好きなところに行ってもよい」

「ほう、なかなか寛大な処遇だな。で、俺はどうなる?」

「黒衣をまとうことを許す。ネッド・スタークの私生児はいまや〈壁〉の総帥だ」

「それもまた、貴様の父親の差し金か? 
亡き姪……ケイトリンはけっしてあの小僧を信用していなかったと記憶する―シオン・グレイジョイを信頼していなかったのと同じように。
どうやらケイトリンの判断は、どちらについても正しかったようだ。やはり、貴様の口車には乗るまい。
せっかくだが、おれは暖かい地で死ぬ。獅子の血で真っ赤にそまった剣を片手にな」

「われらの剣もまた、タリーの血で紅く染まることを忘れるな。
どうあっても城を明け渡さぬというなら、城攻めに踏み切らざるをえぬ。
あたら数百の命を無駄に散らせてよいのか」

「我が勢の討ち死にが数百なら、貴様らは数千だ」

「いまさら抵抗を続けてなんになる。戦は終わった。貴様の主君、〈若き狼〉は死んだのだ」

「歓待の儀礼をことごとく踏みにじり、惨殺しておいて、なにをぬかす」

「それはフレイ家の所業だ。おれの与り知ることではない」

173:創る名無しに見る名無し
08/11/16 02:16:42 mchPig/t

【最後の希望2】

「なんとでも好きに言い訳するがいい。あの謀には、タイウィン・ラニスターの匂いがぷんぷんするぞ、〈王殺し〉よ」

「しかし、父もまた死んだ」

「あの醜い小人にはらわたを刺し貫かれたのだというな。
腸から糞尿をもらしながら、糞の海に血反吐を吐いてくたばったという。
なんとも、悲惨な末路よ」

「・・・もう一度言う。ロブ・スタークはもはやこの世にはおらぬ。
そして、〈若き狼〉とともに、その王国は滅び去った」

「ふん、片手を失ったのみならず、視力までも失ったか。
目をあげて上を見ろ。われらが城壁の上にはためく大狼の旗が見えぬか」

「見えるとも。狼の孤影が哀れでならぬ。ハレンホールは堕ちた。シーガード城もメイドンプールもだ。
ブラッケン家はひざを屈し、タイトス・ブラックウッドを使い鴉の木城館に押し込めている。
パイパー家、ヴァンス家、ムートン家―貴様の旗主らはみな降人となった。
残るはこのリヴァーラン城のみ。
そして、我らが軍勢は、貴公の守兵の20倍の兵力を擁する」

「つまり、20倍の糧秣を必要とするわけだな」

「……」

174: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し
08/11/16 02:26:58 1r4VxTrJ
返し方おかしいwそこで糧秣かw
ムアコックっぽいのかなksks

175:創る名無しに見る名無し
08/11/16 16:11:33 4ZGS8CHy


【ベアトリス港 港湾地区】


走り抜ける皮靴が飛沫をはね、放たれた刺客達が二人の親子の元へと迫る。
大方金で雇ったゴロツキの類であろうと予測していたヨハンナだったが、統率されじわじわと包囲を狭める動きに
追手が連合から放たれた暗殺者であることを確信した。

「養母さん……先生が」

「気をしっかり持つのよ、ヒルデ
恐らく、連中は連合の手の者に違いありませんわ」

「れ、連合がなぜ僕等の命を狙うの?」

ヒルデベルトの問いに答えることなく、女は忍び寄ってくる男達の前に立ち塞がる。
彼女自身狙われる理由は予測も付かないことだったが、何があろうとも彼を護らなくてはならない。
飛び道具を持つ敵が居ないことは彼女にとっても幸いであった。

「女、貴様には用はない大人しく
その子供ををこちらに引き渡してもらおうか」

「子供を渡せと脅されて、差し出す母がいると思って?」

「ほざけ、これだけの手勢相手に素手で敵うとでも思っているのか
息子の前で無様な痴態を晒したくはなかろう?」

「下品な脅し文句、育ちが知れますわ……」

雨は止むことなく厚く覆った雲が朝の光すらをも遮っている、男達が間合いを詰め
剣を振るい襲い掛かる剣をヨハンナは半身で避け、腕を掴み大きく円周を描くように投げ飛ばすと
受身を取れずに顔面から石畳に激突した男が悶える。

「二人まとめて御相手して差し上げても宜しいですわよ
……最も、貴方がたの体が持てばのお話ですけど」

「二人同時にかかれッ!!」

男達が狙いを上半身と下半身を別々に薙ぎ払う、逃げ場を失った女は敢えて前へと踏み込み。
剣を掴む腕を握リ動きを受け流すと、その場で振るい投げ二人の男を衝突させる。
身動ぎする男達の前を悠々と歩きながら、ヨハンナは溜め息をつく。

「次はどなた?」

「クッ……ユシエルは何をやってるッ!?
さっさとゼラーを連れて来いッ!」


176:創る名無しに見る名無し
08/11/16 16:12:05 4ZGS8CHy

男がそうがなると、いかにも小者感の漂う貧相な男が従えていた奴隷に指示を出し、
女の前へと歩み出る、虱がわかぬよう短く切られた髪に呆けたような眼差しをした奴隷は
雨を避けるように周囲を飛ぶ羽虫が気になるのか、きょろきょろと目で追っている。

「ゼラー、今度はあの女を斬れ、分かるな!?」

「ゆぁ……ぅ?」

「め、飯は後だ! この仕事が片付きゃ俺達は一気に大金持ちだ
腹いっぱい飯が食えるぜ!」

「えぅ!」

ゼラーがヨハンナと向かい合い剣を向ける。
意識を集中し身構える瞬間、剣を持つ男の腕が視界から消え、危険を察知した
女は身を捩り回避。足元で気絶している男から剣を奪うと次々と襲い掛かる
見えない剣を寸前の所で見切り受け止めていく。

目の前で繰り広げられる常軌を逸した戦いに、双方の陣営には重苦しい沈黙が流れた。
人間の反応速度では到底見切れぬ男の剣速もさることながら、その攻撃をただの女が追従している。

「あ、ありえねぇ、あの女ゼラーの剣を見切ってやがる」

「むぅ……」

業を煮やした男が渾身の力で剣を振るうと、風を裂く音を周囲に轟かせながら
女の体を両断するよう刃が走る。しかしその攻撃すらも直前で見切って返すが、女は息を荒げ、
互角の勝負に思われた戦いも持久力の差によりじわじわと追い詰められていく。
養母の危険を察知したヒルデは、懐から短刀を抜くと養母に駆け寄った。

「ぼ、僕も戦うよ!」

「下がってなさいヒルデッ! 彼等の目的は貴方ではないわ……そうよね?」

「まさか……この女が”神剣使い”か
ユシエル、ゼラーに指示しろッ! 何があろうともこの女を殺せッ!」

女は既にこの時、諦めにも似た覚悟を心に抱いていた。
彼等の狙いが最愛の人ではなかったことを幸運とすら思う。彼の両親の命を奪った
自らが罰せられるべき罪なのだと、既に信仰を捨てた彼女にもその時が来たのだと理解できた。
奴隷の剣がこちらの剣の腹を打ち抜き、刀身が中ほどから割れ、敵の剣が自らの体に食い込む時。

女は静かに目を閉じそれを受け入れた、冷たい石畳に倒れ冷たい雨に打たれると、
ふと頬に当たる暖かさに再び目を開ける。女の体を抱き咽び泣く少年の涙が頬を伝い彼女の顔へと落ちてゆく。
彼の名前を呼ぼうと動く口から血の泡を吹き、ただ女は心に願った。
形ばかりの物ではない、自らの命を神に捧げた祈り……

―この子に神の御加護があらんことを―


177:創る名無しに見る名無し
08/11/16 16:12:39 4ZGS8CHy


【北領の魔窟】


ガラム要塞に辿りついた、イフティハルが目にしたものは、おおよそ信じがたい光景であった。
地を埋め尽くすように蠢く異形の集団、魔の群れがわずかに残されていたガラムの警備隊を食らい、
要塞からは黒煙が上がり完全に破壊されている。わが目を疑う男の前に老兵が歩みでる。

「どうなっとるんじゃあ、これは!?」

装甲騎兵が前に乗り出し岩上を這い回る昆虫型の魔物に向かい射出槍を放つと、
ばらけるように散開し槍を避け、灰色の肌をした魔物達を先頭にこちらへと間合いを詰めてくる。
明らかに統率された動きをみせる集団と間合いを取るよう、馬を引かせた途端、
占拠された要塞の中から火の粉を散らしながら炎が投げ込まれた。

「伝令ッ! ガラムの街へ向かった連中を叩き起こして
こっちに連れて来い、大至急だッ!」

「そ、それが、イフティハル様
ガラムの街へとむかった5000の兵からの先程伝令が……」

「折り返し連絡を入れろ、睨み合ってるだけなら問題ないだろう」

「ガラムの街が陥落しました、川から引いていた
地下用水路の上水道を掘削し潜水兵が侵入、門を開いた街中に兵が流れ込み
双方の被害は甚大です……」

采配を振るいながらも、イフティハルは状況を頭の中で整理する。地下を巡る用水路の位置など
内通者がいなければ知りえない情報、そんな情報を開示し戦わせた所で得る物など何も無いのだ。
このままでは大陸と連合の緩衝を大きく崩し全面会戦の火種となる。

「本気で戦争する気か、状況が見えてないのか?」

「親方様……空を」

見上げた空に浮かび上がるその姿、その場に居合わせた兵士達の心を満たしたのは絶望であった。
煌々と輝く金色の瞳、ささくれ立つ鱗に口元から覗く牙、口伝により伝えられていた竜の姿。
街の城壁ほどもある巨体がイフティハルの2000の軍の中央へと舞い降りると、
吠える声に大気が震えあがり、兵は恐慌状態に陥る。


178:創る名無しに見る名無し
08/11/16 16:14:23 4ZGS8CHy

「引け、撤退だッ!」

退却の合図を出すと兵馬は混乱に陥る、訓練された馬すらも本能により危険を察知し、
馬上の兵士を振り落とし逃げ惑おうとする、撤退の足元が揃わぬ兵を見かねた老兵が殿へと買ってでた。

「若造、先に逃げとれ」

「こんな時に冗談はよせ、爺さん
あれにはどう計算しようが勝てっこねぇ!」

「しっかりと考えておるさ、秘策をな」

立ち止まる老兵の後姿を男は眺めていたが、意を決して彼を残し
その場から撤退を始めた。策を弄してもどうにもならないことをイフティハル自身は理解し、
突きつけられた非情の選択を黙することしか出来ない自らの未熟さを呪った。

「……死ぬなよ爺さん、博打の勝ち逃げは許さんぜ」

そう言い残し去っていく若き領主を老兵は見送ると、竜の目の前に立ち塞がる。
逃げた者達を追おうと翼を広げる竜の体に射出槍を発射するアフダルだったが、肉厚の皮膚に遮られ、
その行動は竜を激昂させるだけの行為で終わった。

「精々粋がるがいい、わしを今ここで喰ろうたところで
必ずやあの若造が貴様の首を取る!」

竜が素早い動きで口を開くと馬上のアフダルごと顎で食い千切る、半身を失いながらも
老兵は驚くほど冷静に射出槍を装填し、竜の口内に掛かる上半身を起こすと、喉の中をめがけ槍を発射した。

「悪食めが……」

遠くから響き渡る竜の悲鳴に馬を止めた若者は足を止め、その場を振り返る。
辛くも生き残った者達は、戦勝で喜びに湧きあがるゴードへと帰還した。


179:創る名無しに見る名無し
08/11/16 19:25:03 1i2ZJNaW


【神剣 フライング・ソード】


※「セイレン家の乙女は、他者の視界を盗み見ることができるという。
   お前は男にしか見えんが、どうやってその技を私に説くと言うのだ?」

#「わたしが陛下にお教えするのは、あのような小手先の技よりももっと大きなものです。
   国全体を司り、世界を動かす・・・まさにそういう大きな力です」

※「ほぅ、そのような力があれば興味深いがな」

#「敵に対し、”我々自身の目で物事を見させ、我々自身の口で語らせる”。
   それが出来れば、敵のあらゆる美点は無へと帰し、かの国の世論は我々の思うがままとなりましょう」
    世論、すなわち情報こそが剣よりも魔法よりも強力な力なのです」

※「すまぬが、意味がわからぬ。貴様、まさか酔っているのではあるまいな?」

#「ホホ、ホ……。酒は10年の昔にとうに断ちました。
   代わりに今、私を酔わせるのは酒よりももっともっと美味く甘美なものです」

※「それは、なんだ?」

#「勝利ですよ、陛下」

※「勝利・・・詳しく語るがよい」

#「その昔、暗愚王の時代。一人の天才鍛冶職人がとてつもなく素晴らしい剣を作り出しました。
   その剣はとてつもなく美しく、それだけでなくどんな伝説に謳われる名剣にも劣らぬ切れ味を誇り、
    そして量産が可能で、安価でした。
     しかし、その力を恐れた私の祖先は、帝国に雇われ工作活動を開始しました。
      すなわち、その剣は柄をひねると簡単に剣が飛ぶ。1年で錆びて使いものにならなくなるとね」

※「馬鹿な。自らの国を勝利に導く発明だぞ。誰も信じまい」

#「信じる? 信じるとは、多くのものが言っていることを、ただ知るというそれだけのこと。
   多くのものが、その剣は飛ぶ、1年で錆つくといえば、それは”そういうこと”になるのです」

※「そして、暗愚王はどうしたのだ?」

#「鍛冶職人を呼び付け、首をはねました。
   彼自身が発明した、まさにその剣でもってね」

※「その後、彼の国は滅びたのだったな……」

#「ええ、その剣がやがて人々の記憶から枯れ果て、忘れられたころ。
   敵国によって正式装備に採用され、鍛冶職人を処刑したその剣でもってまた
    暗愚王も自らの首をはねられたのです」

※「そしてお前は、その逆のことができるというのだな」

#「さすが陛下は暗愚とは程遠い、懸命さであらせられる」

※「クク、知っているか貴公。
   その笑み、王が私でなければ即刻打ち首に処したいほど無気味だぞ」

180:創る名無しに見る名無し
08/11/16 19:46:58 0CZgkYSS
鎧を着てる奴が剣で打ち抜けないから剣型のパイルバンカーになってるんだろw

181:創る名無しに見る名無し
08/11/16 19:56:06 gIKGMRn8
槍や弓ならまだしも、剣で鎧がかまぼこみたいに斬れるとかジョークの域だから

182:創る名無しに見る名無し
08/11/16 20:40:24 pCfqLw3w
誰か、西大陸のカステル大公と東連合のクロウリィ国家元首の演説書いて、
双方が正義を主張して民衆を煽るような文でよろ。

183:創る名無しに見る名無し
08/11/16 21:10:26 927njyK2


【ついに完成! 神剣 フライング・ソード】


※「ついに完成したようだなこれが例の飛んでる剣か」

#「ホホ、ホ……資料を掘り起こし、完璧なかたちでコピーいたしました」

※「どれどれ、うっお――っ!! くっあ――っ!! ざけんな――っ!
  重い、重すぎるわ……何でこんなに重いのだ、これは」

#「当時の平均的な装備の剣で12キロ前後あります」

※「昔の人間は巨人か何かだったのか? 
  こんなものはとてもじゃないが振り回せないぞ」

#「ロストテクノロジーですので、詳しい資料は紛失してしまったのでありません」

※「肝心な所で頼りにならんな、で石突きを抑えて柄を廻せば飛ぶんだったな」

#「臙脂石という代物が我々の技術では精製不可能な為
  火薬で代用いたしました」

※「ポチッとな」

ドコンッ!

#「ああっ、王の腕が曲ってはいけない方向にっ」

※「こんなもの片手で保持しながら撃てるかっ!
  しかも熱いっ、熱すぎるわっ」

#「火薬以外の炸薬でないと駄目なようですねぇ」

※「”ですねぇ”じゃないだろ貴様、処刑するぞ」

#「昔の連中は魔法使いが多かったのでしょう」

※「遺跡からたまに発掘される鉄の機械人形となんか関係があるのやもしれんなぁ」

#「ロボットアニメのように鉄の鎧着込んで斬り合ってたと?」

※「こやつめハハハ、我が国でも開発出来ないロボットがそんな大昔にある筈なかろう」

#「ハハハ、ワロス」

184:創る名無しに見る名無し
08/11/17 13:49:13 geV0fqRh


【抗いの薔薇】


西大陸と東の連合との戦いは混迷を極めた。命を捨てて戦う者達の多くを失い、
不足した兵の数を補う為に子供・女・老人達まで徴兵により戦力として投入され、
その大部分が異形の者達に襲われ命を失った。

こちらの動きを見透かされたように現れる敵に恐怖し、人々は安全を提供する権力に縋り
独立した兵力で抵抗を続けていたガセルダ、アルメンテの両軍も、度重なる兵力の疲弊により
次第に追い詰められていった。

正義の介在しない地獄の到来である。

異形の魔物達にとって人間は食料に過ぎない、人間が家畜を飼うのと同義であり
生存個体を管理調整、場合によっては互いに争わせ遺された死骸に魔物達が群がった。
闘争本能を失った人類は豚に成り下がり、何時襲われるとも知れない恐怖に震え。
何時か現れ、自分達を救ってくれる英雄の到来を待ち侘びた。

「……誰かが命を賭けて救ってくれる、皆そう思っている」

誰かの手を汚し罪を着せるのは容易な事であり、過去の神剣使いの中には
人を救いながらも、あらぬ誤解から処刑され、命を落とした者もあった。少女は剣を手元で返すと眼前の集団を睨みつける、
神剣に込められた想い、人間に対する憎悪、亜人に対する憎悪、魔に対する憎悪。
しかし彼女は復讐の為に剣を振るう訳ではない、ただ前へと進む為に……。

「……私の邪魔をしないで」

襲い掛かる異形の魔物達を次々と斬り、地に伏せていくロゼは、あらかた周囲の敵を片付けると
鉄装鎧に銅柱を差し込み充填させる。眼前にそびえる魔物達の本拠。かつて城塞都市として栄えた、
北領にある始まりの地。瓦礫の山と化した筈の城砦は元の姿へと修復され、禍々しい魔の力が感じられる。


185:創る名無しに見る名無し
08/11/17 13:49:58 geV0fqRh

「これはまた可愛いお客様ですね、今日は随分と来訪者の多い日だ」

「貴方は?」

城壁の上に現れた男が口に手を当てほくそえむと、少女は周囲に散らばる鉄装騎馬の残骸を発見する。
屍が積み上げられた残骸の中に立つ異形の魔物達が少女の姿を見つけると、
剣を振るい上げながら次々と打ち付ける。

「まさかとは思いますが、御一人で来られたのですか?
だとしたら、見くびられた物です。」

周囲から次々と集まる異形が少女へと襲い掛かり、幾度となく斬ろうとも次から次へと増援が現れる。
灰人(オルク)の物量に不覚を取り。振りぬかれた金槌が腹部へと直撃し跳ね飛ばされた。

「ふ……ぁ!」

「ま、こんなものでしょう、御伽噺に現れる勇者気取りですか? 
たった一人で万機の軍勢を相手取るなど甚だ笑止、”神剣使い”とは
どれもこれもおつむの足らない連中ばかりだ……」

「はぁ……は……」

「ゼラーという神剣使いもそうでしたね
友人の男を捕らえ、犠牲になるよう促したら、あっさり死んでくれましたよ。
あんな取るに足らないチンピラの為にね……これだから人間と言うものは面白い」

立ち上がるロゼに遠方から放たれた火弾が飛来し、小さな体を跳ね飛ばす。
足元に転がす男の死体から射出槍を取り上げると灰人を射撃し、返す刀で敵を斬り上げる。

「仕方がない、ベアトリスを持って来い」

男が側近にそう言うと、側近は魔力を開放する為の生ける人形と化したベアトリスを、男に差し出した。
魔王の血を引くベアトリスの力により、この世に彷徨い続ける魔の魂は肉体を得て復活し、その手駒となる。
男が女を城壁で抱え上げると、空に広がる暗雲が渦巻き、周囲を光が包みだす。
勝利を確信したクロウリィは、この世ならざる者に新たな肉体を与えるため、その呪文を口にした。

「彷徨える魂よ、再びこの地に集いその力を示せ」

大地が光に包まれ周囲が魔力の源で包まれ、集められていた魂達は解放され新たな肉体を得る。

「ハッハッハ! 必死扱いて魔を狩ってきた君には申し訳ないがね
彷徨う魔の魂から幾らでも再生可能なのだよ……残念だったなッ! 豚がッ!
魔力の残りカスで出来た、貴様等人間が魔族に逆らうなど許されるとでも思っていたのかッ!」

「……」

「可哀想になぁ、君にも青春があっただろうに、
愛も欲も我慢して、その身を戦いに捧げてきたのにねぇ。
男と愛することも知らず、その身を綺麗に着飾ることも知らずに、醜く朽ちていく気分はどうかな?
意味のない努力、今までご苦労、奴隷は奴隷らしく……絶望の肥溜めの中で死んでいけッ!」

「……よくまわる舌ね」

少女がそう吐き捨て大きく溜め息をつくと、眼下の光景を眺めた魔の笑みが次第に強張る。

一人の少女を追い詰める為に行った、男のその行為は最大の誤算だった。


186:創る名無しに見る名無し
08/11/17 13:55:33 aU4YDuRz
支援ぬ

187:創る名無しに見る名無し
08/11/17 17:57:57 jMhV3shK


【魂の枷】


魔の権化達はその目で見た、少女の周囲に集う無数の子供達の姿を、神剣の元に集う真の精鋭達。
神剣に集められた魂が生前の姿を形作り、その力を解放していく。絶望の果てにある、たった一度の奇跡。
灰人は本能でその脅威を感じ取り退くと城壁のクロウリィが怒鳴りつける。

「な、何をやっている、相手はただのガキだッ!
押し潰してしまえッ!」

男は城壁の上から指揮を執り、空に現れた竜がこちらへと近付いてくる、その瞬間、鉄装騎馬の屍の山から
一発の信号弾が頭上に上がり、周囲に展開し伏せていた兵達が次々と飛行する竜に砲撃を加えた。
深手を負い死んだ筈のガセルダの兵達が次々と起き上がり、
イフティハルは咳き込みながら文筆家に声をかける。

「ぶほッ、あーった、マジに生き返るとは思わなかったぜ
文筆家ぁ、無事か?」

「折角、伝記を真面目に書いてきたのに、一気に胡散臭くなっちゃいましたよ」

伏兵の鉄装騎馬とコルネリアの率いるアルメンテの鉄装兵士団が合流すると、
城門を開き雪崩れ込んでくる竜人(リザードマン)達と衝突する、硬い鱗と武装に包まれた
鉄装歩兵の能力差は僅差、野に伏し体力を消耗していた部隊は次第に圧されていく。

「怯むな! ここで敗れれば我々に明日はないっ!」

コルネリアの奮起を促す声が轟くと、膠着した戦列に一陣の風が吹き込んでくる、次々と舞い上がる鮮血の中で
両の手に握られた二本の剣が煌く。女は我が目を疑い、その剣を振るう男の姿を目で追う。
いつか見た姿をそのままに現れた”双剣のディマカエリ”。

「カルロ……」

「……長いこと待たせたな」

「待ちくたびれたわ、もう」

そう女が微笑むと男は目を伏せ微笑み返す、城壁を覆うほどの巨大な牛頭(ミノタウロス)が
囲むように展開した兵を蹴散らすと、四人の奴隷が立ちはだかり、次々と足元を斬りつけていく。
鎧の筋力補強すらも無しに生身で魔と立ち向かう剣闘士集団は一瞬にして牛頭を血祭りに上げると
すたすたと城門を潜り、場内へと侵入する。

「しばらく振りに空を見上げることが出来たと思えば、
まったく……世の中世知辛いものだなぁ、ドレト」

「こ、これでも俺、頑張ったんですよゴードさん
それよりほら、さっきのニ本剣の奴がディマの息子ですよ
……って、何やってんだディマ?」

「テリウスにおれい」

「ども……」

「後でしろ、後で!
敵さんがおいでなすったぜ、抜剣!!」


188:創る名無しに見る名無し
08/11/17 17:58:56 jMhV3shK

鉄装鎧で武装した灰人達の攻撃を悠々と避けながら、装甲の繋ぎ目に剣を突き立て打ち倒し、
鉄装歩兵が城塞内に踏み込むと本城をめがけ兵士達が駆け抜けていく。何が何やら分からぬまま
自警団を指揮するフェルダーに従うマルケスは眉をしかめる。

「僕達、パルミナ鉱山に攻め込むんじゃなかったっけ?」

「予定は変更されたのさ、シュタイン、ルロワ援護しっかり頼むぞ」

「任せな大将!」

シュタインが親指を立て、ルロワの射出槍が次々と現れる灰人を貫く、場外では門を確保する為に残った、
バティアトゥスの指揮する部隊が、迫り来る巨人の兵団を射出槍で食い止めている。

「我々が、ここで盾になり後方を守る……
一匹たりとも城内へと踏み込ませるな!」

3mに程近い身長を誇る巨人が腕を振り上げると。光の中から赤銅の鎧に身を包んだ男が飛来。
巨人の顔面に槍を突き立て、肩に飛び乗ると首筋を剣で斬り裂き、地上へと舞い降りた。
参謀はようやく現れた男に微笑みかけると、赤銅の盾は振り返ることなく敵と向かい合った。

「借りを返しに来たぜ、優男」

「フ……利子は高くつくぞ、色男」

「先駆けて突貫するぜ、アデニオン、ついて来いッ!」

「ま、また俺ですか!?」

渋々従い後を着いてくるアデニオンを従え、次々と巨人達が地面へと崩れ落ちていく。
居城へと逃げ込んだクロウリィは、眼前で繰り広げられる信じがたい光景に目をみはる。
次々と復活を遂げる英雄達を前に人間と魔の本質的な能力の差は呆気なく覆され、男は頭を掻き毟る。

「クソッ! クソッ! こんな筈では……カステルの奴は何をしている!」

門衛棟を落とされ、かろうじて城壁を守るカステルの部隊を次々と奴隷が斬り伏せていく。
近寄ろうと踏み込む灰人は一瞬にして斬り裂かれ、驚異的な検速になす術もないまま追い詰められると
灰人達が発射した射出槍の攻撃を空中へと飛んで避け、慣性の勢いで突進するゼラーの剣がカステルの体を捉える。

「貴様等は! 一体!?」

「バーカ……」

「!?」

カステルの体を城壁から蹴り落とすと、ゼラーは城壁から身を乗り出し相棒の姿を捜す。
目を凝らし数10m先の城外で蟲に追われている相方のユシエルを発見したゼラーはニカリと笑うと
救出に向かう為、城壁の上から水堀の中へと飛び込んだ。


189:創る名無しに見る名無し
08/11/17 17:59:35 jMhV3shK

ヒルデベルトはパルミナの一兵士として合同軍に参加していた、灰人達の軍勢に押され戦列を崩すと
衝突の衝撃で少年は弾き出される、撃ち込まれた射出槍を、すんでの所で一人の男に助け出され
励まされるように声をかけられる。

「怪我は無いか?」

「あ、はい……有り難う御座います」

「君のような少年が戦地に立つ必要は無い……
後は私たちに任せておきなさい」

鉄装歩兵の鎧を着込んだレオニウスは兜越しに少年に伝えると、懐の剣を抜き、灰人の集団に突撃する。
空いた背後を塞ぐように、もう一人の鉄装歩兵が背中合わせにお互いを守りあうと
レオニウスは背中越しにいるヒルデガルトに語りかける。

「す、すまない、助かったよ」

「あまり無茶をしては駄目、
落ち着いて手の届く範囲の敵から片付けるわよ」

「分かった!」

背中合わせの二人は互いの素性に気付くことなく、敵の戦列を切り崩すと、勢いを押し戻した
パルミナの軍勢が灰人の戦列を突き抜け、背後を突くように散回する。一際巨大な肉体を持つ重武装の灰人が
前列に乗り出すと、一人の女が一騎打ちを買って出る。
振り落とした灰人の剣を、打ち落とし面で捌きながら頭蓋を切断すると、溜め息を付きながら踵を返す。

「お話になりませんわね」

「お、やっぱヨハンナじゃん!
セリミア捜してるんだけどみっかった?」

「フラン、随分と久しぶりね
セリミアは妊娠中だから、ここには来てない筈よ」

「え?……まさかヨハンナの子?」

冗談で返すフランの頭を拳骨で叩くと、ヨハンナは遠くに見える二人の男女の姿を見つめる。
全てが元に戻った今自分自身は身を引くべきなのだろう。背後に殺気を感じ振り向くと、
かろうじて生きていた巨漢の灰人がフランに剣を振り下ろす。

「フラン、危ないッ!」

友を庇うように覆い被さったヨハンナは、背後から止めを刺され崩れ落ちる灰人の後ろから現れた少年と目を合わせる。
呆然と互いに見つめあう視線に思わず頬を紅潮させ視線を逸らすと、
胸元に飛び込んでくるヒルデベルトをそっと抱きしめた。


190:創る名無しに見る名無し
08/11/17 18:00:40 jMhV3shK

全てにおいて戦いは人間達に対し優勢に働きかけ、その戦力は居城にまで迫った。
苛立ちを抑えきれずに、あたりを歩き回るクロウリィに意識を取り戻したベアトリスが笑いかける。

「フッ……フフ、アッハハハハ!」

「何が可笑しい、何が可笑しいベアトリスッ!
貴様も道連れだぞ……統一戦争も、東西衝突も、魔物が現れたのも全てお前に責任がある!
貴様が魔王として生まれ、その本分を違えたからこうなったのだ」

「人のこと勝手に利用するだけ利用して……そんなに恨めしいならさっさと殺しなさいよ
もう私の魔の力も必要ないでしょ? 先に行ってあんたが地獄に落ちてくるのを待っててあげるわ!」

「ならば……ここで死ねッ!」

鬼気迫る形相で抜いた剣を女の胸元へ突き立てようとクロウリィが剣を下ろした刹那、
暗闇の中から現れた漆黒の騎士が篭手で剣先を逸らし、すれ違いざまにクロウリィの腹を抉る。
何が起こったのか理解できぬまま男は口から血を噴出すと、目を見開いたままその場で崩れ落ちた。

「ド……ドルバトゥール?」

「申し訳御座いません……敗北を喫し、
貴女様の許可なく死んでしまったことを深くお詫び致します」

「もう二度と私の傍から離れないって……誓って」

「騎士の宣誓なら初めてお会いした時に交した筈ですが?」

「……馬鹿ね」

車椅子から寄りかかるように二人の男女が抱き合うと目を見合わせ、口付けを交わした。
ようやく叶った夢が、すり抜けてしまわない様に。


191:創る名無しに見る名無し
08/11/17 18:01:15 jMhV3shK

堕ちた竜の前でイフティハルは腰を下ろし、老兵の魂に祈りを捧げる。
恐らくは神剣に選定されず蘇生することが出来なかった者もいるだろう。
犠牲の上に成り立つ平和などイフティハル自身は認めたくは無かったのだ……

「あれ……親方様、なんだか竜のお腹動いてません?」

「え……マジで、折角しんみりしてたとこなのに」

竜の中から剣を掻っ捌きながら老兵が姿を見せると、申し訳なさそうに互いに顔を見合わせる。

「博打で負けた借金を取り立てるまでは
死んでも死に切れんわい、ガッハッハッハ!」

「プッ、クク、ハハハハ!」

「何、暢気に笑ってるんですか、二人とも……」

なお、文筆家が書いたイフティハルの伝記はあまりに突飛なストーリーから、
あまりウケは良くなかったようである。


192:創る名無しに見る名無し
08/11/22 22:16:08 mgXO1meD
第一部、完ッ!!!

193: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し
08/11/22 22:18:49 7zyMqM28
終わった?

194:第2部開始!
08/11/22 22:46:26 mgXO1meD


【戦場を望みて】


$「で、レディ。貴女はこの戦い、どちらの軍勢に分があるとお考えかな?」

%「そう……ねぇ。黒鷲には力はあるけど、勢いが足りない。
   逆に白鷺は兵も少なく装備も貧弱、でも彼等には大義があるわね。
    どちらかというと、どちらにも分がありそうに思えるわ。難しい質問ね」

$「つまり、両軍ともに決定的な何かが足りない……と」

%「そういうこと」

$「では、貴女がどちらかに加勢すればどうでしょう?」

%「フフ、そうすればわたくしが加勢した側が勝つわね。問題は単純になる」

$「そして、その反対側の軍勢に、私が加わったらどうなるでしょう?」

%「あら、貴方が剣の封印を解くと仰るの? それは誘惑? 
   そんなことなら、すぐにも彼らを皆殺しにしてこなきゃいけないわ。
    ギャラリーが多いのは燃えるけど、あんな風にいると戦うのに邪魔だもの」

$「いえ、例えばの話です。私が剣の封印をとくのは、今後、ただ一度きりのこと。
   それ以外には、二度と剣は抜かない……そう誓いを立てましたからね」

195:第2部開始!
08/11/22 22:47:01 mgXO1meD
%「ホント、残念。貴方の剣が描く花は、とてもとても美しいのに」

$「貴女の股の間にある花こそ、この世でもっとも美しいと人々は噂していますがね」

%「残念ね、この花はわたくしを剣で打ち倒したものだけが拝むことができるの。
   貴方が剣を抜かないというのなら、永遠に見ることは叶わないわね」

$「正直を言うと、それだけが唯一の心残りでね」

#「後悔は人生のスパイスというわ。悔いのない人生など、黒胡椒の入っていないスープも同じ。
   わたくしとて、ただの女として生きていればと思う事がないと思って?」

$「不運にも、私は辛いものが苦手なので」

#「あら、甘党だったの?」

$「意外ですか? 私の家は戦争で親を亡くし、二人の姉との暮らしでしてね。
   一番上の姉が毎夜、寝る前に入れてくれたホットココアは今も思い出の味です。   
    二番目の姉が教えてくれた、唇の甘い味わいとともにね」

196:第2部開始!
08/11/22 22:48:13 mgXO1meD
#「……その涙は、とても悲しいものだったでしょうね。
   貴方に悪い悪戯をした、二番目のお姉さんは今、どこで何をしているの?」

$「行方は知りません。姉と私を置いて、家を出て娼婦になったと聞きました。
   恐らく、今もどこかの娼館で働いているのでしょう」

#「必死に、貴方を探しているのかも知れないわよ。でも、7才のころ別れたままの弟。
   顔立ちも変わる、手がかりがない。見つけても、名乗り出すことができない。
    英雄になった貴方の名声を、地に落としてしまうのが怖くて」

$「そんな殊勝な姉であれば、あのような真似はしなかったでしょう」

#「人生には、間違いというものが往々にしてあるものなのよ。
   剣一筋で生きられる男の貴方とは違って、女にはいろいろあるものだから」

$「貴女にも、多くの人生がおありなのでしょうね」

#「そう、わたくしもまた、娼館で働いていたことがあったわ」

$「これほど高潔で美貌の貴女が……? 王都にあるという王族専用の〈絢竜の花園〉でしょうか?」

#「いえ、わたくしがいたのは、うらぶれた田舎町の小汚い娼婦の館。
   戦争で親を亡くし、女二人と弟一人、食べるものも着るものもない貧しい暮らし。
    育ち盛りの幼い弟にまいにち、寝る前の一杯のホットココアを飲ませてあげたくてね……」


しかし、2人は気づいていなかった。
今まさに、自分たちが見下ろす戦場で、恐ろしい悪鬼が目覚めようとしていることに……。

197:創る名無しに見る名無し
08/11/23 06:42:11 80diQeR3


【西暦2010年 シアトル発007便 太平洋上空】


航空機の窓から流れる雲空の合間には、灰色の街並みが広がる。
照らされる太陽の光が機内で、眠りにつく一人の男の瞼をこじ開けるように照らす。
男はシートから身を起こし、ミネラルウォーターのキャップを捻り蓋を開けると
一口に含み周囲を見渡す。

清廉な容姿に流れるような金髪、その場から立ち上がった実業家風の青年男性は、
手荷物の中から顔に似合わぬ一振りの剣を取り出すと、その場でゆっくりと剣を抜いた。
一瞬場を包む静寂、乗客たちが次第に男の奇行に気付き始めると
客室搭乗員が男の前に駆け寄り話しかける。

「お、お客様一体何を!?」

「少しばかり空の散歩を……ね」

男の握る剣から奇妙な光が溢れ始めた瞬間、地鳴りのような音が機内を包むと
旅客機の機体が歪に捻じれ、壁面に亀裂が生じた。旅客機のコクピット内では
急激に高度を下げる旅客機に管制からの連絡が入り、機長が応対する。

「メイデイ! メイデイ! こちらシアトル007便、非常事態発生!
高度が上がらない……どうなってるんだ!?」

機長が慌しく緊急事態を管制室へと告げる、操縦をオートパイロットから手動に切り替え
操縦桿を起こすも、機体高度は上がることなく墜落し続けている。
高度を上げようと機首を挙げるにつれ機体は悲鳴を上げるように捻じれ
ついには機体が真っ二つに寸断され、海上へと墜落していく。

機体から投げ出された貨物がひらひらと舞い落ち、客室の乗客たちは
空へと投げ出されないようシートへとしがみつく、海面に叩きつけられ、
墜落した航空機内に海水が流れ込んだ。

『……この事故により383人中237人もの乗客が死亡
詳しい事故原因について生存した146名から事件直後の状況……』

「お母さんTVのチャンネル変えていい? 今日の占い気になる」

「どこのチャンネルも、昨日起きた事件の緊急速報よ
まったく、アンタは年中お気楽なんだから」

「きっと、お母ぁちゃんに、似たのねぇ」

茶碗を持った女子高生は箸をくるくると回すと味噌汁をすすり、
焼き魚を箸でほぐし口へと運ぶ、何の変哲もない母子家庭の朝の光景。
”九条由樹”は手元の携帯の時刻をちらりと確認すると、かきこんだご飯を喉に詰まらせ咳きこむ。

「何やってるの? もう少し落ち着いて食べなさい」

「友達と電車に乗り合わせる約束してるの、けんど間に合わんで!」

「はいはい、行ってらっしゃい」

「行ってきます!」

腰元まで伸ばした黒髪をひるがえし、少女は通学路を駆けだす。
あれから幾千年の時が流れ、砂の足場に組まれた日常が今、崩れ去ろうとしていた。


198:創る名無しに見る名無し
08/11/23 21:30:59 TQFjFAUM
さあ、頑張るんだ

199: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し
08/12/17 21:50:55 qI2fP5Hw
投下に期待

200:糞スレ
09/01/02 09:38:02 qgLKdoo3
kusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokuso
kuso
kuso   ~~~ 荒らし & AA諸君 思う存分 カキこ よろ ~~~      
kuso     ↓↓ここ ↓↓↓
kuso    ブス45歳meramerakyarokyaro = chiharu24jp32転売目
kuso    >>スレリンク(yahoo板)l50
kuso                                 
kuso  荒らし & AA 自由演技 掲示板 へ 変更!!             
kuso   ここ 栄誉ある 「馬鹿&糞スレ}認定 記念         
kuso   荒らし & AAアート フリーゾーン に 変更!!           
kuso                                  
kuso   テーマ   : 馬鹿&糞スレ だから それ見合ok     
kuso                                 
kuso   キーワード : アート内に さらーり 混入 なお嬉     
kuso       梨加  りか  リカ ←これ必須ww         
kuso       高田 ミトハウス 3675 麗奈(仮名)577 おばさん  
kuso       芹沢  大蓮南  ババ― 181            
kuso       子犬3匹 301号 ニュースキン 東大阪市  6725   
kuso       弥刀 0825 おばちゃん 1丁目 近畿大阪銀行    
kuso                                 
kuso   注意点   : スレッドではkusoで発言           
kuso           >>1 ←糞スレ主 逆恨み          
kuso           >>1 ←無視、ムシ、虫、ムシ         
kusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokusokuso



201: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し
09/02/07 10:22:59 CetzBG/J
やたら懐かしい気持ちになるスレだな
ここもモエリーナ来てるし

202:10/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ
09/02/08 00:11:05 XoNkETVy
このスレに書き込もうとしたら
名前欄にこんなのが残ってた

203: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し
09/02/08 00:14:28 AF7fV2Ia
あるあるw

204:創る名無しに見る名無し
09/02/08 00:16:50 XoNkETVy
なんと4ヶ月前だよ!

205:創る名無しに見る名無し
09/03/10 19:06:29 PjX5KNH7
ファザコンのロゼ
URLリンク(218.219.242.231)

206:創る名無しに見る名無し
09/03/11 15:29:16 sI8BGx4B
うめええええ
がなぜこのスレ……

207:創る名無しに見る名無し
09/03/11 18:03:08 bAb23AII
小説書いた本人が挿絵描いて何か問題でもあるのかね?

208:創る名無しに見る名無し
09/03/11 20:46:10 lbwX5nkq
うますぎて吹いたw

209:創る名無しに見る名無し
09/03/11 21:32:22 06J+scdb
ちょwwwゲロ上手じゃんwww

210:創る名無しに見る名無し
09/03/22 14:17:33 coqyk9d4
880 名も無き冒険者 sage ▼ 2009/03/22(日) 14:16:07 ID:ibpkCI8L [2回目]

名無しの魔術だな

名前がないので、100人が1000人にも10000人にも見えてしまう
これを個々の田中さん、山田さんと置き換えていくと2ちゃん世論なんて何のあてにもならないのがよくわかる

メーカーも実際、2ちゃんなんて完全に捨て置いてるだろ?

211:創る名無しに見る名無し
09/03/23 08:04:06 vek3RtCQ
98 名無しじゃなきゃダメなのぉ! sage ▼ 2009/03/23(月) 07:47:59 ID:qzeTZfPf [2回目]

>>96
ハッキリ言おう、無いと

まず「外注」という時点で「そのゲームに何の愛着もない連中が書くわけ」
で、そいつらは当然請負会社だから「大量に並行して仕事をかけもちしてるわけ」
どうやっても、流れ作業で文字を埋めるような仕事になる


ライターだけは、本当に自社で育てるしかない

212:創る名無しに見る名無し
09/03/28 19:31:07 EMWGXQ9E
ま、自分の頭で考え、身をもって体験し、
それで感じた感動から言葉を発するんだな

それが本当の知恵であり、真実の言葉といえるだろうな

敵意100%の連中のネガキャンを鵜呑みにしてりゃ、世界は歪むばかりだぜ

213:創る名無しに見る名無し
09/04/01 13:25:11 Oh5xSXcn
答えがないのが真実

それでも人は己に問い続けなければならない、

― 考えろと

214:創る名無しに見る名無し
09/04/27 11:48:32 iwuE2WQC
>マクドと言う奴等には、マックは敵、と言っていた。
>関西のマクド派にとってマックは敵らしい。

たった少数の「マックは敵、と言っていた。」だけで
「関西のマクド派にとってマックは敵らしい。」という結論を導きだしてしまう

これがまさに2ちゃんの恐怖だね

215:創る名無しに見る名無し
09/05/26 01:43:31 Z76fqvMx

荒涼と広がる白い大地、いかなる生物をも拒絶する死の大地の中を、
二人の少年が歩き続けていた、見渡す限りに広がる土の上に倒れ込むと
流れ出す汗が大地に深く染みる。

フランティエ北領域に位置するオーキス自治領。
人々は未だ、争いを捨てきれずにいた。


【白い風】


岩を切り崩し建設された石造りの家屋が立ち並ぶ、北領大地オーキス。
かつて死の大地に沈んだといわれる、遺跡の発掘及び、希少鉱物の採掘により
低い食料自給率を補い、外部との交易により生活を支えている東連合の一国である。
北から吹き込む風により、痛んだ外壁に申し訳程度に付けられた門をくぐり
交易に訪れた者達が頻繁に行きかっている。

「……」

街の中へと行きかう人々の間を縫うように、無骨な鉄の塊に身を包んだ長身の女が
風に煽られぬよう覆っていた外套から少し顔を覗かせる。

「お嬢さん、表じゃ外套は脱がない方がいいよ
北から吹き込んでくる風に皮膚がやられっちまうからね」
「……お聞きしたいことがあるのだけれど」

女がそう言うと、話しかけた自警団の男は女が腰に下げた二振りの剣を目にやり言葉を返す。

「観光に来たって訳でもなさそうだが?」
「アヴロー家に用があるの……」
「アヴロー? あぁ、あの家の連中なら……」

男はそういうなり遠くに見える丘の上を指差した。
遠巻きから見える影は木で組まれた踏み台から首に縄がかけられ、
五人の家族が北の風に吹かれ静かに揺れている。

「”魔人”だったんだよ、知ってるだろう?
魔に魂を売った人間が、国主であるクロウリィと西大陸のカステルを謀殺したって話さ
おかげで東西戦争の講和は破綻、奴等の所為で大勢の人間が戦争で苦しんだんだ」
「子供まで吊ったの?」
「おいおい、あいつらは土塊で出来てるんだぜ?
人間じゃねぇんだ、何でも矢で蜂の巣にされて血の一滴すら流れなかったそうだぜ」

女はそこまで話を聞くと外套を再び羽織り、その場を振り返ることなく街中へと歩き出す。
重い足取りのなか、土を踏みしめる度に具足と剣が克ち合い、虚しく音を立てた。

宿屋の扉をくぐり、併設されているギルドに貼り出された依頼書に女が目を通していると、
受付に座り込んでいた老人は、久方ぶりの来客に慌てた様子で語りかける。

「ようこそオーキスへ、直ぐにこちらの登録を照会致します……お名前をどうぞ」
「ロゼ……」

女はそう答えるとその双剣を腰から降ろした。


216:創る名無しに見る名無し
09/05/26 01:44:23 Z76fqvMx

日は傾き夜の空に月が浮かぶ頃、頼りない蝋燭の光が部屋を照らし出す。
蟲の泣き声一つとて聞こえない静寂の中で
かすかな衣擦れの音を聞いたロゼは寝台から体を起こし音の方角へと声を向けた。

「……誰」
「夜分に申し訳ありません、クロウリィ元首の従者トットです」

軋む音をたて開く扉の向こうから見慣れた顔が覗くと
ロゼはその場で立ち上がり上着を羽織った。

「お久しぶり」
「ロゼさんもお変わりない様で……」
「そう? 割と背は伸びた方だと思うのだけれど」
「しかし、アヴロー家の方々は残念な事に」

従者がそう呟くと、ロゼは寝台の横に置いた水の注し口から
ゴブレットに水を注ぐ。

「……そうね、回収できなかった」
「まだ……魔と戦える程の力は戻らないのですか?」
「神剣は殺害した相手の魂を喰らうことで力を増す魔剣、魂を解放し、力を失った
今の私には武装した街娘ほどの力しかないわ……無理な相談よ」

そういうなり、ロゼは暫く振りに袂の剣を抜き、錆びた剣先に息を吹きかける。
神剣に封じられた数千に及ぶ人々の魂は開放され、かつて神剣使いに倒された者達は
魔の力を経て魔人となり、第二の人生を得て各地へと旅立っていった。

「で、では、また魂を集めれば……」
「もういいのよ……人の命を犠牲にして魔を倒す力なんてもう必要ない……」
「しかし、魔を倒し、封じる事ができるのは”神剣使い”だけです!」
「なら……私を殺しなさい」

そう言うとロゼは袂に掴んだ剣をトットヘと差し出す、
決意にみちた眼差しがその発言に偽りがない事を示していた。

「……そ、それは」
「私を殺せば貴方が”神剣使い”よ、この呪いはそう作られているのだもの」
「……」
「気に病む必要はない、平和は犠牲の上でしか作られないのだから
誰だって生存競争の中で誰かを捧げて生きているでしょう?
貴方の主であるクロウリィだって……私の中で生きている」

トットは震える手で剣へと手を伸ばすと、汗の滲んだ顔を腕で拭った。

「……で、できません」
「ふふ……ただの冗談よ、”おつむの足りない”貴方に
最初から期待なんてしていないわ」
「!?」

凍てつくような微笑を湛えた女がかつての従者と向かい合い薄く笑う。
女は窓際から覗く白い大地に浮かぶ月を望むと
掌から立ち上る青い炎を揺らしながら呟いた。

「自らの手を汚すことなく戦うのは、卑怯者のやること……か」


217:創る名無しに見る名無し
09/06/02 20:48:42 P+pdYmng
固有名詞がたくさん出て混乱するが、これは面白そう
重めの雰囲気がいい味出してるな
でもなんでこのスレでww

218:創る名無しに見る名無し
09/06/04 20:07:33 om6eblbX
普通は先に話を作ってから漫画を描く


>>40の漫画
URLリンク(www5c.biglobe.ne.jp)
>>197の漫画
URLリンク(www5c.biglobe.ne.jp)

219:創る名無しに見る名無し
09/06/04 22:59:58 vsM7X9gq
なんか濃い漫画キター

220:創る名無しに見る名無し
09/06/05 16:45:16 KJbW+Iz3
>>218
両方ともおもしろかったー!

221:少年A ◆lDWSbsWJ/k
09/06/21 19:46:25 uSeA8x/i

 こんな詩


あの子は凄く文学家で
僕なんかよりも
たくさんの詩を読んだり書いたりなんかしていて
廊下ですれ違うときなんか
きっと僕の心をひょひょいのひょい と
お手玉のようにしてもて遊んでいるんだ

僕がクラスの仕切り屋に苦笑いをするときなんか
きっと僕のことを
なんて太宰治みたいに
八方美人な人なのかしら
なんて思っているんだ

いつかの国語の時間に
僕の詩が発表されたときなんか
その秀でた文学力で
きっと僕がこんな詩を書いてるなんてことは
すぐに気づいただろうな


ああ

あの子もこんな僕の詩を
書いてはいるのだろうか
いや あの子は凄い文学家だ
こんな心理的な
こんな詩なんか
あの子はとうの昔に
書いてしまっているはずだろうな





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