糞スレ創作at MITEMITE
糞スレ創作 - 暇つぶし2ch109:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/24 20:26:35 AnJROo6s

双剣のディマカエリ。

しかし、その強さも老いに勝つことは敵わない、患った病と傷が元でついには息を引き取った。
……俺に伝えた剣の技だけを遺して。

その後、魔の台頭により再び大陸は混乱に陥り、
狭まれた生存圏を巡る人間同士の小競り合いが始まると、俺は捕らえられ奴隷としてこの島へと送られた。
結局、彼の犠牲を持ってしても人々は一致団結することなど無かったのだ。

「”復讐に意味は無い”」

「どうしたカルロ、急に?」

「……俺の養父の遺言だ」

「耳が痛い言葉だな、俺もその人に学べたら少しは強くなれたかな?」

敵兵達がこちらの姿に気付くと武器を手に取り距離を詰め始める、十数人は越えたか。
覚悟を決め両手に剣を握り向かい合うと、敵陣より射出された槍を身を翻し避ける。
突撃してきた敵鉄装歩兵と剣を克ち火花を散らすと、突然側面より飛来した槍が敵の脇腹を貫いた。

「あれは?」

「見覚えがある、アルメンテの鉄装歩兵だ
巻き込まれないよう後退しながら戦うぞ、アルメンテヘの警戒も怠るな!」

次々と攻め入るアルメンテ軍により戦局は一方的な展開となった。
1人の鉄装歩兵が兜のつばを上げるとこちらへと歩いてくる、どうやら敵意は無いようだ。
兜から覗く耳がちらりと覗く、どうやら彼女は亜人のようだ、大陸ではよく見かけたものだがこの島では始めてお目にかかる。

「怪我は無い?」

「えぇ、なんとか……貴女は一体」

「私はアルメンテ解放戦線の副長、名はコルトリ・ウノ、
コルネリアとお呼び下さい」


110:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/24 20:27:25 AnJROo6s


【大陸からの使者】


解放された奴隷たちが次々と収容所の中から現れると、俺達は後方の2人と合流し
制圧した屋内で顔を合わせた。これからパルミナへと向かい、ベアトリスに対する最後の反抗作戦を行うらしい。
フェルダーを除く3人は部屋の通されると先程の女がお茶を入れテーブルの上へと並べている。
シュタインは俺の袖を掴み声を潜めながら話しかける。

「おいカルロ、何だあの女……耳が尖ってるぜ?」

「亜人と呼ばれる種族だ、大陸ではさして珍しくも無い。
彼らは物珍しい目でみられるのを嫌がる、注意してくれ」

「あぁ、分かった」

「わぁ! 見ろよシュタイン、この人耳が凄ェ長いぜ!」

止めた傍から、ルロワが物珍しげに騒ぎ立てると険しい顔をしたシュタインが後ろから羽交い絞め
ルロワが外へと連れ出される、彼女は呆けた様子で俺と目が合うとくすりと笑う。

「……すいません」

「お気になさらず……慣れておりますので、それよりも先程の戦いぶり
拝見させて頂きました、お強いんですね、お名前は―」

「カルロ……ロッシです」

「では”双剣のディマカエリ”はただの字かしら」

俺は本能的に腰の剣に手をかけ相手の全身を見据える、大陸から来た者ならば知っていてもおかしくはない。
しかし彼女と俺は初対面の筈、少なくとも俺の幼少時の記憶が確かであればの話だが。
俺が警戒したのを察したのか女は距離をとり、剣の射程外へと身を退ける。

「奴隷身分に落ち、その身を死地に投げ込んでも
生きていらしたのには驚きました、流石は”神剣”に選ばれた者の業を継ぐ者」

「何の用だ?」

「人は愚かなものです、敵がいる内は結束し魔を討ち払おうと努力します。
しかし、外に敵がいなくなったと知るや、その剣を内に向け人同士で奪い合うのです」

亜人と人間の寿命の差から来る発言なのだろう、生き急ぐ人間と未来を見据える亜人とでは
根本的な思想自体が異なるのだ、彼らは人間を愚鈍と信じて止まない上に、
我々人間は彼らの長命から来る人知を超えた技術を恐れる。

「闇の深遠より這い上がる異形達の勢いは留まる事を知りません。
これでは同じ歴史が繰り返されるばかり、そのため連合の協力の下で
この騒乱の即時解決を図るよう取り決めました」

「大陸の異種族がこの島に干渉するのか?」

「いいえ、貴方達の手によって……」

女が窓の外を指すと馬車に見慣れない鉄装歩兵の鎧が積み込まれている、あの鎧が”干渉”なのだろう。
俺は彼女の目を一瞥し表へと歩みを進めると、後ろから呼び止められる。

「また大陸でお会いしましょう、”ディマカエリ”」


111:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/25 02:25:34 8SyaSLn5


【蟻の世界】


”神は持たざる者にこそ、その救いの手を差し伸べる”

誰が言った言葉だろうか、もしその言葉が真実であればそれはとても残酷なこと、
そんな救いなど誰も求めてはいないのだから。私は馬車から降りると、北西の砦へと呼び付けられた。
ベアトリスの外城の城壁へと通じる螺旋階段を上ると吹き込む風と共に空が開ける。

海上に浮かぶ船が煙を噴き上げ砲弾を発射すると、城壁が揺れ積み上げた石垣が崩れ落ちる。
他の街とは違いベアトリス領を囲う外城は倍以上の高さ(20m)を有している、
その城壁が洋上の艦砲射撃により倒壊しようとしているのだ。

「ベアトリス様、こちらです!」

「……リュゲル」

軍師であるリュゲルが青ざめた表情で私の手を引く、戦艦が西側から砲撃を加え
風穴を開けてベアトリス領内への活路を開く、そんな馬鹿げた戦略を誰が思いつくだろうか。
こうなっては最も堅牢な南北の砦は意味を成さず、洋上からの侵攻を食い止めることは出来ない。

「今こそ、今こそベアトリス様の御力を我々に示して頂きたい!」

「え?」

その言葉に最も恐れていた事態が起きたことを私は確信した。
私がその場から離れようと後ろを振り返ると兵士達に出口を阻まれ退路を失ってしまう。

「嫌、嫌ァッ! それでは約束が違うッ!!」

「ベアトリス様、ここで持ち堪えれば我々の勝利なのです
何卒、その御力を我々にお貸しください」

「何が我々の勝利よ、勝ちたいのは貴方だけでしょう!」

「宜しいのですか? わが国が……貴方の故郷である
リオニアの人々がどうなろうと、構わないと仰るのですか!?」

リュゲルが私の目を睨みつけながら髪を掴み、洋上の船へと目を向けさせる。
私に選べと、リオニアの人々の命と、あの洋上の船に乗った兵達の命とを秤にかけろとこの男は言っているのだ。
先王が亡くなり平民との間に授かった私の存在が明るみになる10歳までの間、私はリオニアの島で生活していた。

私が戴冠するのを領主達は皆一様に反対した、平民出の小娘に頭を下げろなどと誰でも御免被るだろう。
しかし、それさえもこの男の謀略の内であったのだ。


112:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/25 02:26:08 8SyaSLn5

「卑怯者ッ!!」

「この島を平定し、皆が一丸となり。大陸からの侵略に備えなくてはならないのですッ!
私は民衆の為に、全ては民を思えばこそのことッ!!」

「あの船の船員も……ベアトリスの民でしょう」

「では貴女は大陸の顔色を伺い、頭を小突かれながら謙って生きろと仰るのですか?
これは我々にとって必要なことなのですッ!」

私が頑なに要求を拒むと、彼が耳元で他の兵に聞こえぬよう囁きかける。

「ドルバトゥールにもしもの事があっても宜しいのですか?」

「な、何を言い出すの?」

「今であれば城壁の損傷は軽微、反乱軍の侵攻を最小限に食い止められます
ですが、これ以上倒壊を許してしまえば前線に立つ彼は窮地に立たされる、そういう事です
それに、もしもということも有りえますしね……」

私はその場に立ち上がり小刻みに震える手を上げると、周囲に満ちた力を収束させる。
空に雲が集い始め、黒い雨雲にも似た渦が黒い闇を覗かせる、周囲では兵達がうろたえ始め、
リュゲルの顔に笑みがこぼれる。

「素晴らしい……素晴らしい! これが魔の力かッ!
貴女は正しいのですベアトリス様、愛する者の為に戦うのは罪ではありませんッ!」

「……御免なさい」

空に浮かぶ闇の中から一筋の光条が放たれ洋上に浮かぶ船へと突き抜ける。
その瞬間、周囲に轟音が響き渡ると城壁を越えるほどの巨大な水柱が立ち上り
パルミナとガセルダ双方の港へと降りかかった。

ぱらぱらと降りしきる海水が城壁まで届き空に大きな虹を描く、何故私に……
何故私にこんな力を授けたのですか?

「はははははッ! 勝てるッ! 勝てるぞッ!
この力の前では反乱軍など蟻のようなものではないか、蟻の世界だッ!!」

私は救いなど求めてはいないのに。


113:10/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ
08/10/25 09:59:25 E/BrrBYv
がんばれー

114:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/25 18:38:29 VuUuVMS4
西暦20xx年・・・。

日本は高度な技術を手に入れ、一昔前では想像もできないような便利な物を発明した。

自分の頭の中のイメージを映像にできる機械。周りに誰がいるかわかる地図。ピントを合わせて、かなり遠くの物を見れる眼鏡。 

全ての人には、それぞれ与えられた仕事があり、混乱は全くなく、平和だった。

そんな中、犯罪率0の日本で殺人事件が起こった。

警察官である主人公は、犯人を捕まえた。しかし、犯人は突然どろどろした液体に変わり、消滅した。 

実は犯人は、ある生物実験所から逃げだした液状生物だったのだ。 

さらに悪いことに、なんにでも化けることができるこの生物は実は日本の中にまだ複数いる事が、研究関係者の口から伝えられた。

全ての人に役割が与えられている社会。逆に言えば、一人でも、人に化けた生物がいると、社会の秩序が壊されてしまう。 

未来社会の崩壊をくい止めるため、日本政府は上に挙げた特殊な発明品の数々を使う対液状生物ハンターを編成した。 
そして、この戦いに主人公も巻き込まれる事に


115:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/27 12:56:53 pLYwwtcV
セックス中のゲロが原因で戦争始まったって認識でおk?

116:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/27 13:05:08 vQTRcJAi
作者が違うと思うぞ

117:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/27 18:38:30 ZKg3tSc0

【歴史】*適当です

紀元300年 大陸の城郭都市がエルダードラゴン(賢竜)の襲撃により壊滅

紀元180年 時の賢者により”神剣”が作られる

紀元80年 大陸を捨て 島(現ベアトリス)への民族移動(現パルミナ)が始まる

紀元20年 シーサーペント(海竜)により移民船団の一つが沈没

紀元10年 ”英雄ベアトリス”が島に潜む魔族を掃討し 島を開放する

紀元6年  ベアトリス城の建造

王暦0年  英雄ベアトリスの死去により その夫が次期国王へと推挙される

王暦3年  大陸より流れ着いた漂着民(現ガセルダ)との紛争が起こる

王暦16年 名も無き英雄が魔族の首領を打ち倒す この際に受けた傷で両者は死亡 

王暦18年 剣闘士”ディマカエリ”(初代)の済む集落がベアトリス軍により壊滅

王暦20年 剣闘士”ドレト”王族”ルロワ”(本編の人とは別人)が国王を打倒

王暦24年 大陸へと進出”ディマカエリ”がエルダードラゴン(賢竜)を討伐する

王暦27年 ”ディマカエリ”がシーサーペント(海竜)を討伐 海上通商が再開される

王暦30年 大陸へと進出した”ドレト”が国王となり大陸を西部を制覇

王暦31年 亜人による異種族の連合が発足される 代表はベアトリス島より移民した人間族

王暦40年 連合が大陸西部を制覇 この時代より魔族が大陸北部の生存圏を脅かすようになる

王暦41年 ”不死身のドレト”死亡

王暦42年 連合の兵器工廟にて次々と新兵器が開発され 大陸や島へと輸出が開始される

王暦43年 内紛が激化 大陸から大量に採掘される金により”ベアトリス国”との経済格差が広がる

王暦50年 デーモン(悪魔)との戦闘中に受けた傷が元で”双剣のディマカエリ”死亡 

王暦55年 大陸の雇った海賊によるベアトリスに対する海上通商破壊が始まる

王暦56年 第四代ベアトリス国王が死去 娘である”ベアトリス”(現在)が戴冠

王暦57年 海上通商安全保障条約に関する取り決めをパルミナ・ガセルダ・アルメンテの領主による合意で取りまとめられる

王暦60年 大陸からベアトリス国に対する内政干渉 大陸側に有利な公約を纏めた三十三稿が出される

王暦62年 ベアトリス統一戦争勃発(現在)


118:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/27 18:40:22 ZKg3tSc0
修正

○王暦40年 連合が大陸東部を制覇 この時代より魔族が大陸北部の生存圏を脅かすようになる

119:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/27 22:12:37 KaDJSkOo

それぞれの所属の説明

・ヴィジランテ旅団
”内乱を誘発させる”の言葉通り、大陸の西側が送り込んだスパイ
領主と司令官、軍政両方の指導者を失ったパルミナを実質手中に収めた
鉱山爆破による産業破壊など西側に有利な工作を進め、既に目的は達成されている

・アルメンテ解放戦線
大陸の東側の資金支援を受けた解放軍、連合は双方の陣営に武器を販売していたが
元老院の判断により、内乱の終結を纏める政策を打ち出した
作中で撃ったり斬ったりしている武器のほとんどが連合製品

・ガセルダ本隊
かつて大陸から流れ着いた民族であり、軍により迫害された経歴が有る
領主が戦死したことで方針を転換し、内乱の早期解決によるベアトリスとの和平の道を模索中

・剣奴隊
アルメンテ解放軍の傘下に入り別働隊として行動中

・ベアトリス軍
元はベアトリスが”本国”であり西大陸は”植民地”だが、国力の逆転により内政干渉されている
また立場上、ベアトリス本国を守る為の盾として魔族と戦い続けた経歴により
西側が抱く本国への不信感と恨みも根深い、ベアトリス領はリュゲルの意志の元、開戦の意志を打ち出し
他の3領は厭戦、リオニアは中立


120:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/27 23:17:31 KaDJSkOo

登場した装備の備考

・臙脂石
火薬の換わりに使われる、特殊な溶液や水に触れると大気中に溶け出し
空気に触れると瞬間的に膨縮する、地表に出てるものはすぐに蒸発するので
山などで採掘して取り出す、水蒸気を出すが熱の発生は少ない

・鉄装鎧
装甲を厚くした鎧で総重量で30~50kg近くある、臙脂石によるサポートにより動作し
弓矢・機械弓・火薬を用いた貫通力の低い銃弾などを通さない
構造上の欠陥で間接にわずかな隙間が開く、銅と鉄をあわせた複合装甲や
裏側にキルト生地を用いた衝撃吸収、高度技術で作られたミスリル(ようはジェラルミン)製もある

・火薬
臙脂石の方が推進剤として優秀な為にあまり使われなくなった
火をつける際の爆薬としては優秀

・剣
1m前後の一般的な両刃剣、装甲を完全に撃ち抜くため、突きを加えると刃先が飛び出す仕掛けになっている
本体と刃先を止めてあるボルトを抜くと飛び道具にもなる、推進剤には臙脂石が用いられる

・弓矢
軽装歩兵用に未だに使われている弓、鉄装歩兵の導入により機械弓は大型化が進み
ハンドルを使っても人間の手では引けなくなった為、使われなくなった

・銃
火薬の取り扱いが面倒、弾丸が丸いため鉄装歩兵の装甲を撃ち抜けない
推進力の不足などにより、あまり使われない、大型化した大砲は現役

・射出槍
2m前後の槍、筒に1mほどの細長い槍を差し込んだ形になっており、臙脂石を推進剤に用いて射出する
有効射程は300m前後、鉄装を撃ち抜く場合50mの距離まで近付かなくてはならない
捕鯨銃のような物、貫通力が高く一般的な飛び道具といえばこちらになる


121:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/28 19:43:02 40k8kMAT


【ヴィジランテ旅団 ベアトリス領内】


空に淡い雨雲が広がっている、私は外套を傘代わりに小雨に打たれる小麦の穂を眺めていた。
眼前に広がる肥沃の大地、大陸の荒れ果てた風土に比べればなんと豊かなことか、
不意に後ろから呼びかけられ案内を誘導を受けると、本部となる野営内へと入る。

「旅団のヒルデガルド様ですね? お待ちしておりました」

「いえ、残念ながら団長は病に伏せておりまして、
つきましては代行として、私がこの場へと馳せ参じた次第です」

「左様ですか、ではこちらへどうぞ」

薄暗い室内に各陣営の代表が集まり、急遽ベアトリス本領に対する会議が始められる。
私は周囲を見渡すと隣にいる亜人の女性と目が合う、恐らくは連合の手の物だろう。
向かいには髪を後ろへと纏めた、覇気の見えぬ男と付き添いの男がなにやら揉めている。

「この記号はどういう意味なんです?」

「槍だよ、こうやって向きを変えて配置すんの
さっきから質問責めだな、文筆家殿」

「僕、軍議に参加するのって初めてですから」

私が小さく咳払いをすると、ガセルダの代表と思しき男が頭を下げながら室内の人を払う。
見慣れない者達を数人残し会議が始められた、おおよそこの会戦は勝つ戦、
如何にして我々パルミナが有利な位置につけるかが争点となる。

「……まさしく恵みの雨ですわね、
旅団の代行で参りましたヨハンナと申します」

「イフティハルだ、いきなし、船を真っ二つにされたときはぶったまげたが
ツキはまだ、こちらにあるようだね」

「船を破壊する為に力を使用した以上、
しばらくの間、彼女の脅威は抑え込めるでしょう
私はアルメンテ領主代行、コルネリアと申します」

加えてこの視界の悪さでは近付く我々の動きを察知するのは難しくなる、
私は懐から一枚の羊皮紙を取り出し机の上へと差し出すと、立案した作戦を提言する。

「ベアトリス領内を分断するように広がる
水路の位置を纏めた物ですわ、皆様もご存知のとおり
我々はベアトリス城へと上りながら侵攻することになります」

「まともな方法で近付いては射撃の的になるねぇ」

「そこで水路に油を流し込み、火を放つことで敵の視界を立ち
地図上で示された位置をなぞるように侵攻すれば……」

「それでは、問題があるのではなくて?
水路を畑へと開いている今の時期、油を流せば農作物に被害が出るわ」

言葉を遮るように亜人の女性が語りかけてくる、確かに農作物に被害は出るだろう。
しかしその被害も織り込んだ上での作戦なのだ、私は一先ず自らの意見を飲み込み
彼女の考える作戦に耳を傾ける。


122:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/28 19:43:37 40k8kMAT

「では、どのように?」

「敵の補給は行き届いておらず、火砲の運用すらままならない状況です
ひとまず補給を寸断する為に南の城門を押さえ、持久戦へ持ち込むのが上策かと」

「悠長に敵が降参するまで待つというの?
和議の条件は? 国王であるベアトリスの対応は如何なさるのかしら」

「アルメンテとしては助命することを和議の条件として出すつもりです」

女がそう告げると場には重苦しい空気が流れる、我々の目的は女系の女王である王家の血筋を断つこと
女王の死を持って終戦としなければ、今後の対応に不備が出るだろう。

「何を馬鹿な……」

「俺ら、ガセルダの方でも助命する方向で
和解しようと何度か使者を出してるんだけどね」

どうやら両者の間で何かしらの取り決めがあるのだろう、先日の戦艦にしろ
ガセルダ側の資金力で用意するのは困難な代物。私は下手に反論することを避け、
彼女の意見におおむね同意すると、水路の見取り図を手に取った。
直接処刑できなくとも、暗殺という手も有る……。

「現在、合同で混成した部隊をぶつけてるが
反応は相当鈍い、ベアトリス軍の大半は金で雇われた傭兵に奴隷だからな。
ガセルダ方面へ向かった部隊は砦の兵力合わせて8000、
これが指揮の混乱による脱走で5000程度にまで減少……」

「外城の城壁を利用すれば、2000程度の兵力でも防衛は可能ですわね」

「そうさね、南門に陣取り貿易港への道を塞いだ場合、
事が窮するのを待つ前にベアトリス軍は討って出てくる筈
城内の敵の規模は……まぁ多くて3000程度だな」

合同で展開されたこちらの兵力は10000を既に越え、
門の防衛に兵力を割いても8000、会戦を迎えるには十二分すぎるほどの余力がある。

「つまり、こちらの勝ちはこの時点で決定した訳だ、
この戦局がひっくり返ることはまずありえねぇ」

「油断されていると足元を掬われますわよ」

「その辺はおたくらを”信用”させてもらうよ
後ろからバッサリなんてのは御免だからねぇ、ははは
んじゃ、馬に飼い葉やる時間なんで、そろそろ失礼」

そう言うと男は2人席を立ち、本部の外へと歩きながらその場を離れる……喰えない男、
豪胆放逸な性格だと噂に聞き及んでいるが、あの目は何者も信用していない目に見える。
我々の内、いずれかが裏切る手筈を取り付けても、それも彼の予測の一つに入っているだろう。

私は連合の亜人の目を一瞥すると、軽く会釈をし後を追うように本部から外へと出る。
雨は本格的に降り始め、私の外套へと降りつける、雨の簾で塞がる視界を歩く内に
言い知れようのない不安に捕らわれてしまう。

私を”信用”出来る者などいるのだろうか?


123:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/28 19:44:32 40k8kMAT


【ベアトリス会戦】


曇り空の中から降りつける雨が俺の頭を濡らす、遠くから聞こえてくる戦場の喚声が耳に障る。
雨音を掻い潜るようにコルネリアの鉄装が姿を現す、無用心にも護衛の姿は見えない。
俺が彼女と目を合わせると、こちらへと語りかけてくる。

「カルロ、濡れるわよ」

「汚れを落とすには丁度良い……前線の様子はどうだ?」

「心配はいらないわ、連合は物資の供給を止め
備蓄していた燃料も底をついている、もはやベアトリス軍に抵抗力はない」

「それで、俺に何をさせる気だ、
案山子としてここに立たせておく訳でもないだろう?」

俺がそういうなり彼女は兜を脱ぎ雨水を顔に浴び、纏めた髪を撫で上げると、
口頭で俺に依頼を伝えた、俺は彼女の声に耳を傾ける。

「貴方に頼む依頼は3つ、1つ目は軍師リュゲルの殺害
彼はこの戦乱を起こした首謀者、生かしておけば禍根が残るわ
2つ目に執政室の書庫に火を放つこと……」

「知られては不味い連合の資料でもあるのか?」

「えぇ、秘密裏に交わされた、ベアトリス軍と連合との同盟を記した文書よ
それに加えてもう1つ、ベアトリス女王を捕らえ、私の元まで連れてくること」

「……何故そんなことを?」

俺が疑問の言葉を放つと、彼女はわずかに動揺を見せたが
恐らくは機密に当たる情報を彼女は隠すことなく話し始める。

「この戦乱で彼女が命を落とせば、西大陸は島へと派兵する口実を得るわ
”王政を打倒した謀反人を討つ”という大義名分が手に入る」

「そこで連合が”人質”としてこの国の女王を確保することで
東西の緩衝を得るという訳か……」

「そう……そうね、国は実利に伴って動くもの、
島への侵攻を許せば、西大陸の覇権はますます成長することとなる」

俺は鉄装に銅柱を差し込み鎧を始動させると、戦場へと一歩踏み出す。
人が変えることの出来ることなど些細な物だ、どれだけ地獄の底で足掻こうとも
うねる様に変化する時勢の流れを人の力で断ち切ることなど出来はしないのだから。

「カルロ、貴方には何も遺らない、例え戦いの中で命を落としても
……貴方の養父様と同じように」

「彼が遺したからこそ……俺が今ここに居る」


124:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/28 19:45:37 40k8kMAT

降りしきる雨の中、撥ね上がる泥に塗れながら俺は剣を振るうと、
次々と薙ぎ払われる敵の骸が水路を埋め尽くし、怖気づく敵兵が悲鳴を上げながら散り散りに逃げ出す。
道を塞ぐように立ちふさがる城壁に射出銃を向けると、城壁に上部へとフックをかける。

「随分と静かだな」

城壁を昇りきり数人の見張りを打ち倒すと、城壁から城の周囲を見渡す。
防衛についているのは100余名程度、俺は城壁から飛び降り警備を掻い潜るように
城へと近付き、背嚢の銅柱を捻り虚空へと舞い上がった。

城の窓枠を突き破り、城への侵入に成功すると
部屋の隅で1人の給仕が震えているのが目に入る。

「ひ……ひぃ……」

「リュゲルはどこに居るか知っているか?」

「リ、リュゲル様なら……し、執政室に篭っておられます
お願いします、命だけは……」

「安心しろ、そこまで俺は暇じゃない」

部屋から廊下へと出ると、広い通路を歩きながら執政室へと向かう、
見張りに気取られぬよう護衛の兵達を射出銃で打ち倒すと、部屋の扉を潜る。
部屋の中で頭を抱える男が物音で振り向くと俺と目を見合わせ、驚愕の表情を浮かべる。

「誰だ……お前は」

「ベアトリス軍師、リュゲルに相違ないな?」

「き、貴様は一体どうやって……
単騎でここまで攻め寄ってきたというのか!?」

「……悪いな」

俺は剣を翻し男の胸元を斬りつけると、鮮血を撒き散らしながらその場に倒れこんだ。
胸元に繋げていた胸飾りの鎖が切れ、金属音が部屋の中に響き渡る。

「こんな……こ、こんなバカなッ!
こんな所で私が……死ぬ筈がッ!!」

男は噴き出す血を押し戻すように掌を押し当てながら、落とした胸飾りを拾おうと腕を伸ばす。
俺は胸飾りを拾い上げ確認すると、そこには一人の女の胸像が描かれていた。

「か、返してくれ、マルキアを……私は」

胸飾りを伸ばした腕に掴ませると、リュゲルは描かれた胸像を見つめながら涙を流す。

「すまない、マルキア……き、君の仇は……討てなかった」

「……」

そういうと男は息が切れたように息を引き取る、この男も遺された遺志を継ぐ者だったのだろう。
俺は男の遺体を抱え上げ部屋の外へと遺体を移すと執政室へ火を放つと、
騒ぎに気付いた親衛隊が俺の前に姿を現した。

残すはベアトリスの身柄の確保のみだ。


125:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/28 19:46:08 40k8kMAT


【戦乱の終焉】


闇夜の中を雨が降り続けている、先ほどまで聞こえていた戦いの喧騒も
今となっては届くことはない、恐らくはこの城もじきに落ちる。
強大な大陸な干渉に対し我々は最後まで無力だった。

「ベアトリス様……」

「ドルバトゥール、戦況は?」

「残念ながら力及ばず会戦に敗れました、兵員の指揮の低下に
歯止めがかからず壊走を続け、最早戦列の維持は困難です」

「ドルバトゥール、最後のお願い……頼んでも良い?」

補給を寸断され篭城することも適わないとなれば降伏するより他はない
私は彼の手を取り、両の目を見つめる。

「私を斬って貴方が王になるのよ」

「!? 何を仰るのですか」

「そうでもしなければ……この戦乱により根付いた民衆の不信は断てないわ
貴方が私を斬り、彼らに私の首を差し出すの、そうすれば―」

「私の命は助かる……そうお考えですか?」

私の心を見透かすように彼が言葉を紡ぐと私の言葉が詰まる、このまま和議を結び私が助命されようとも
彼に対する責任の追及が消える訳ではない。

「既にアルメンテ側との降伏勧告を受け入れ交換条件を提示しました、
貴女のお手を煩わせる事も御座いません」

「ベアトリスの名において貴方に命じます! 私を……!」

「残念ながら、その命令に従う訳にはいきません」

その場で踵を返す男の後ろから手を伸ばすと、彼はその手を跳ね除けながら。
私の目を見据え、けして視線を外すことなく言い放った。

「ベアトリス、やはり貴女はただの田舎娘のようだ―」

「!?」

両の目から涙が零れ落ちる、この城に来て6年もの間一度として流すこともなかった涙。
彼は騎士という身分の立場でしか私を見てはおらず、彼にとって私はただの身勝手な厄介者なのだ……

しかし、それでも……私は彼を失いたくはなかった。


126:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/28 19:48:43 40k8kMAT


【騎士と奴隷】


鉄の甲冑が軋む音を立てる、この鎧を身に纏うのも恐らく今日が最後だろう。
兵には降伏を受け入れたことを通達してはいない、私は賊が来るのを待ち構えるように
通路の中央で身構える、侵入者がベアトリス様の部屋へと通るとあればこの道しか残されてはいない。

「来たか」

「……何者だ」

「私はベアトリス軍総司令、ドルバトゥール
生憎この先へ通すわけにも遺憾、貴様にはここで死んで貰う」

一気呵成の勢いで斬りかかる男の剣を篭手で弾きながら、こちらも剣を突き出し反撃を加える、
並みの手だれであればこれで勝負がつく、しかしこの男は容易に身を翻し私の剣を避けると
体を反転させながら繰り出す斬撃により私は腹部を貫かれた。

「まさか……これほどまでとはな、だが……」

私はその場で膝をつき前のめりに倒れこむ、腹部から溢れ出す血が掌を濡らす。
ベアトリス様は……まだ泣いておられるだろうか?

「これが……私の」

この城に来られた時、私は貴女に従属することを拒絶していました。
ただの平民の娘が物珍しげに部屋を荒らし、礼儀・作法などあったものではないのですから、
ほとほと手を焼いたものです。

「……」

しかしこうして死の淵に立たされた今でも、気にかかるのは貴女の事ばかり、
ベアトリス様……貴女様を遺しながら逝くことをお許しください。

叶うことならば……私は騎士としてではなく、一人の男として貴女を護りたかった。

叶うことならば……貴女と―


127:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/28 21:26:48 5xm47YVl
ほれ、死ぬまで書け

128:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/29 06:21:21 hCsO9OKU


【王暦78年 ベアトリス港】


港の大都市へと朝焼けの光が差し込む、ベアトリス統一戦争より十余年の歳月が流れ、
人々の心から忌まわしき過去の記憶は次第に忘れられようとしていた。
住宅地の一角に立つ屋敷の一室で、栗色の髪をした1人の少年がベットの上に横たわり寝息を立てている。
少年は窓を叩く小鳥に足音で目を開け、大きく伸びをすると窓の外へと目を向けた。

「ヒルデ起きなさい、朝ご飯できてるわよ」

「はぁい、今行くよ義母さん」

少年が頭を掻きながら食堂へと向かうと、義理の母であるヨハンナが食卓にスープを並べている。
彼は壁にかけられた生前の母の肖像画を眺め、口に出すことなく朝の挨拶を済ませ
彼女は席に座るように促されると、二人で食卓を囲み食事を始める。

「この間、街中でバティアトゥス先生とお会いましたわ、
ヒルデ……授業をサボってるらしいじゃないの」

「え!? ち、ちゃんと受けてるよ」

「誤魔化さないの、剣術の修練から逃げてるとお聞きしたわ
あまりご迷惑をおかけしては駄目よ、貴方は由緒ある
リューゲル家の子息としての自覚を……」

「だってトリ先生、木剣でビシバシ打って来るんだもん
それにほら、今の平和な時代、必要なのは学問だよ」

少年がその場を取り繕うように言葉を放つと、眼鏡の奥にある金色の目で睨みつけられる。
小柄な体に編み上げた髪、人目では穏やかに見える女性でも、
少年にとっては怒ると怖い義理の母なのだ。

「あ……もうこんな時間だ!
じゃぁ、義母さん、行って来ます!!」

「お待ちなさいヒルデベルト、まだお話は終わってません!」

後方に落ちる雷から逃れるように少年は脱兎の如く逃げ出すと、
朝から目覚め活気付き始める街並みの中を走り抜ける。港へ停泊しているガレー船を横目に見ながら、
歩みを止めると何者かの気配を感じ振り返った。

「キュ……」

「わ、何だ、この変な生き物、貨物船に紛れてきたのかな?」


129:名無しさん@お腹いっぱい。
08/10/29 06:24:14 hCsO9OKU

もこもことした鼬のような生き物が首を捻りながら、こちらを見つめているのが目に入る。
生物を捕まえようと手を広げ、摺り足で近付くと少年の腕を潜り抜け。
近くにいた少女の体をかけ昇り、長い髪の中へと姿を隠した。

「あ……と、ごめんその動物……君が飼ってたの?」

「……別に」

金髪に碧眼の瞳に亜人であることを示す細長い耳、細い体躯に似合わぬ無骨な防具を体に身につけ、
腰には2本を剣を指しているのが見える、亜人と言えば経済的に恵まれた者が多く、
煌びやかな衣装に身を纏っているのを少年はよく見かけていた。

しかし、その少女から感じられるそれは、非常に泥臭いものであるように感じられ、
俄然その少女に興味の湧いてきた少年は自らの名前を名乗り、彼女に質問を加えた。

「僕、ヒルデベルト・ファナ・リューゲル、君の名前は?」

「名前は……ないの」

「え? あ、そうなんだ」

出鼻を挫かれ慌てた様子を見せる少年を尻目に、少女は船宿から出てくる男に目を向け
走り寄った。古ぼけた襤褸を外套のように頭から被り、口元だけは辛うじて確認することが出来る。
少女と同じように腰に指した2本の剣、脇には銃らしきものが覗き
背嚢には大小様々な武器が詰められている。

男は少女の元へと近付くと頭上から声をかける。

「どうしたロゼ、何かあったのか?」

「……何でもない」

少女は振り返ることなく男の後を追うように着いていき、雑踏に紛れその姿は見えなくなった。

賞金稼ぎ。
依頼により害獣を駆逐し、場合によっては賞金のかかった人の首をも斬る忌業。

自分とあまり年の変わらぬ少女がそのような立場にあることに少年は憤然としたやるせなさを覚えると、
遅刻した時間を取り戻す為に通学路の道を駆け出した。


130:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 09:40:46 0hJ7X+WL


【地方警備隊 本部】


子供連れの剣士が警備隊本部の門を潜ると、物珍しげな好奇の視線が2人へと投げかけられる。
少女の風貌もさることながら、亜人と人間の二人連れという組み合わせもますます目を引く一旦となっていた。
男は近くの警備兵に話を通し、建物の奥から警備隊の隊長が姿を現す。

「カルロ? カルロか!?」

「しばらく見ない内に随分と出世したな、フェルダー
変わりないか?」

「あぁ、シュタインとルロワも街で商売を始めて
上手くやってるよ、それはそうと……」

フェルダーが男の外套の陰へと潜り込むように姿を隠すと顔だけを向け、いぶかしむ様子で警戒している。
おおよそ近隣に出没した悪魔の存在を聞きつけやってきた事の予測はついたが、少女に関しては予想外の来訪者であり。
頭を掻き何事かを尋ねるように口を開く。

「この子はどうしたんだい、見た所……
まさかコルネリアさんと?」

「お互いの長所を掛け合わせたらどうなる?」

「え?」

「その答えがこの子なんだそうだ」

そういうなり男は少女の頭に手を乗せると少女は顔を紅潮させて俯き、ぺこりと頭を下げる。
フェルダーは慌てて礼を返すと、少女の顔をまじまじと観察する、確かに双方の血を分けているようにも思え、
何故そのような子供に武装させているのか頭を捻る。

「じゃぁ、結婚したんだねカルロ、
遅ればせながらおめでとう、祝福するよ」

「いや? していないが……それはそうと
仕事の話だ、現れた魔物について詳しい話を聞かせてくれ」

「あ、あぁ……分かった」


131:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 09:41:18 0hJ7X+WL

空いていた部屋の一室に通すとフェルダーはことのいきさつをカルロに告げると、
一個小隊が鎮圧に当たり、魔物が現れた山へと向かった兵達が未だ帰還していないことを告げた。

「馬車の交易で被害を受けた商工団から
突き上げを食らって、兵を出したんだが……下手をすれば」

「魔物は土塊からでも生まれることが可能だが
完全に実体化するまでは時間がかかる、まだ発見出来ていない可能性もあるさ
突然邪魔して色々とすまなかったなフェルダー」

「こちらこそ力になれなくてすまない、またねロゼ」

「……ん」

そそくさと逃げ出すようにロゼが玄関へと駆けて行くと、父親が頭を下げ娘の後を追う。
小隊の後を追うため乗り合いの馬車へと2人は乗り込むと、
少女は先程、父と話し込んでいた男について尋ねた。

「お父さん、さっきの人は?」

「昔の仲間だ……ここで戦争があった時のな」

「お父さん、沢山人を斬ったの?」

「……あぁ、斬った」

車輪が石に乗り上げ馬車が弾むと、男はかつていくとどなく乗せられた”棺桶”の様子を思い起こし
掌を見つめ鼻を撫で、懐から取り出した水筒の水を口に含んだ。

「強かったんだ」

「強弱は関係ない、重要なのは生き残ることだ
剣にしろ飛び道具にしろ、限られた間合いの範囲でしか効果はない
相手の得物を把握し、安全な位置取りを先んじて取るように心がけろ」

「へへ、私も”神剣”を使えるようになれる?」

男は少女の顔を見合わせ口元で薄く笑うと、少女は不貞腐れるように頬を膨らまし、
鉄の具足を男の具足と克ち合わせる……負けた奴は死ぬ、男はそういう世界で生きてきた。
強弱など何の慰めにもならない、一度生き残る時に、二度生き残る度に、積み重ねられる”死の確立”
何千もの死の刃を喉元に突きつけられ、無事で済む人間などいない筈だった。

神に愛されたと言うよりは、神に嫌われたと言う方が適切だろう。


132:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 19:40:24 Hj4khL4a
さあ、上げて進ぜよう

133:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 21:36:00 b3GhxCCz


【パルミナ北部 山岳地帯】


魔は魂のみの存在であり、その精神的質量により他界への扉を潜ることが出来ない。
死を持って生まれ変わることも滅ぶこともなく、強固な肉体を形成し幾度となく蘇る。
地に溢れる最も多い種族、人間を糧とする為に……。

馬車から降り目的地へと到着した二人は山道を昇り始めた、日は真上に位置し正午を告げる。
歩き続けていた2人の視界に、血の赤が飛び込んだ。

「どうやら間に合わなかったようだな」

「血が暖かい? まだ付近にいるのかも」

少女は寸断された胴から流れ出る血に手を触れると、周囲を見渡し敵の姿を捜す。
傷口は猛獣に食い千切られたような歯形が見られ一部の遺体は焼け焦げている、そのことは
現れた魔物が比較的大型であることを示していた。

「魔力持ちか……厄介な」


134:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 21:36:35 b3GhxCCz

轟くような咆哮が森の中から聞こえてくると、2人は声のする方角へと駆け出す。
鬱蒼と生い茂る森林の中で銅鎧に身を包んだ隻腕の戦士が指揮を取り敵を囲んでいる。

「小隊長、野郎、まだ向かってきます」

「チッ、たまに招集がかかったと思えばこれだッ!
一箇所に固まるな、森林に散兵して敵の行動を拘束しろ!」

警備団の指揮を振るうトリフォンへと近付く巨躯の獣、浅黒い肌に丸太のような腕を振るい。
空気中に発生した球電による熱で地面を焦がす、隠れている木に雷が走ると浸透した電圧が貫通。
男の体を電流が駆け巡った。

森林の中から飛来した射出槍と銃弾が魔物の体を捉える、先陣を切り駆けてくる
賞金稼ぎの姿を兵士達は確認すると、小隊長は散兵している兵たちに号令をかけた。

「救援か? よし援護だ! 槍をありったけブチ込め」

次々と打ち込まれる槍に体勢を崩した魔物に男は足元から斬りかかる、その身長差およそ2倍。
振るわれる攻撃を身を翻して避け続け、攻撃に気を取られた魔物の体が前傾姿勢となる。

「ロゼ……今だ!」

鉄装歩兵の開発進歩により軽量化の進んだ武装は、稼働時間の延長と瞬発力の増強をもたらした。
1人の少女が跳躍し4mを越す巨体の頭部を目掛け握った剣を頭蓋へと突き立てる。
魔物の恐怖に満ちた眼を少女は冷徹な目で見下ろすと、柄を捻り剣先を射出し
脳内を攪拌し、頭蓋を完全に粉砕すると地面へと着地した。

「おいおい、冗談だろ?」

「怪我はないか?」

「あ、あぁ、なんとかな、かなり被害が出たが
まさかここまでのバケモンだとは思わなかったぜ……」

トリフォンが少女の顔を見て呟くと、ムッとした様子で少女は男を睨み返す。
はからずも少女の心象を悪くした男は兵を纏め帰還する準備を整えると、馬車へと乗り込み。
警備隊宿舎へと到着する、宿舎の前には男達の帰還を待っていた者が集まり。
馬車から降ろされた遺体を確認すると嘆きの声を上げた。

「……」

「セリミア、待たせて済まなかったな
今から本部へ報告に行って来る……もう少し待っててくれ」

女は足を引き摺りながらトリフォンの胸元に顔を預け、報告へと向かう男を見送ると
負傷して帰還した周囲の者達の搬送に協力した。


135:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 21:37:47 b3GhxCCz


【新たなる神剣】


一通り作業を追え、宿舎の一室を借りた親子は談笑を交えつつ軽い食事を済ませると、
外から現れた来客の声に呼びかけられ、宿舎の扉を開ける。
そこには1人の女、ロゼの母であるコルネリアが立っていた。

「お母さん!」

「ふふ、元気にしてた、ロゼ?」

「うん……今日はね、凄くおっきい奴やっつけたんだ。
ロゼが止めを刺したんだよ!」

頭を撫でられ上機嫌の娘に母は微笑みかける、血生臭い日常もまた少女にとっては生活の一部である。
現れた女は椅子に座り込む男の前に腰を下ろし語りかける。
来るべき時が来たのだと、男は覚悟を決めた。

「カルロ……いえ、ディマカエリ
娘に……ロゼに”神剣”を譲ってくださらない?」

「あぁ、実力的には申し分はない、譲ろう」

「では、”神剣”は今どこに?」

男は薄く笑うと女の顔を見据えその場を立ち上がる、ロゼに剣を持つように呼びかけ
自らも剣を取るとし表へと歩き出し、見晴らしのよい丘の一つでその足を止めた。

「お父さん、どこにいくの?」

「カルロ、一体どうしたの? さっきから様子が……」

「”神剣”はここだ……」

妻子の方へと振り返るなり男はそう言い放ち、胸元に指をさす、困惑した表情を浮かべるコルネリアの顔を少女は覗き込むと、
父である男は剣を抜き、娘である少女へとその切っ先を突きつけた。

「な、何の冗談なのカルロ?」

「”神剣”が必要なんだろう、コルネリア……魔を討ち倒す破邪の剣、
ベアトリス建国に至る英雄を作り出した神器を……」


136:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/01 21:38:21 b3GhxCCz

男が少女の下へと剣を振り下ろすと、寸前の所で身を退き剣の届かぬ射程外へと逃れる。
焦燥した表情で逃げ惑う少女に次々と剣閃を振るい、その全てを少女は避けてゆく。

「お父さん、やめて!」

「戦え、ロゼ!!」

「嫌だよ、いつもの動きよりずっと遅いもの、
お父さんだって本気じゃない! なんでこんなことを!」

「これが”神剣”に選ばれる者の運命めだッ!!」

娘に容赦なく突きつけられる剣戟を止めるように母が仲裁に入ると
男はその身を乗り出す女を跳ね除け、更に攻撃を加え少女を追い込んでいく。
コルネリアは次第に理解し始めていた、男の語ることがどのような結果を生むのかを。

「カルロ、もういいわっ! もう必要ない」

「コルネリア、もう後へと引き返すことは出来ない……
ロゼはもう既に選定され、その力の一端を見せ始めている」

「そんな……」

ロゼの放った剣戟を篭手で逸らし少女の腹部に突きを放つと、鎧の一部を弾き飛ばす。
その瞬間、少女の目に飛び込んでくる映像、偶然にももう一方に持っていた剣が父の胸板を貫き
流れ出る鮮血、少女はその場でへたり込み、立ったまま少女を見下ろす父の顔を見上げる。

「お父さん……お父さん!」

「ロゼ、お前は悪くない、誰も悪くないんだ
悪いのは俺だけだ……これでいい」

「……御免なさい」

「”復讐に意味はない”努々忘れるな」

口から噴き出す鮮血が溢れ男の胸元を濡らす、魔に翻弄され戦い続けた男は
ようやく訪れた安息の眠りを微笑みながら受け入れる、惜しむらくはこんな地獄でも手放したくは無い
護るべき者が出来てしまったことだろう。

息を引き取る直前、男が口をつく言葉は掻き消されついには目覚めることの無い、深い眠りについた。

その瞬間、ロゼの頭に記憶が流れ込んでくる、それは100年以上の長きに渡る戦いの歴史。
様々な戦場で”神剣”は常に戦いの渦中へと身を投じ、無限に生まれる魔と戦い続ける。
戦いに向かうのはいつの時代も持たざる者達であった。

―愛する者あれば命を惜しむ

―守る物あれば命を惜しむ

―誇るものあれば命を惜しむ

”神剣”とは何の見返りも齎されることなく、魔を屠る義によってのみ生かされる”奴隷”なのだ。

少女は息を整え、た母の元へと歩き出し、父の遺体を膝の上に乗せ流す母の涙をみる。
しかし少女は不思議と父の死に涙を零すことはなかった。

父から受け継いだ魂は今、確かにここにあるのだから。


137:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:46:45 r8KZNtSB


【ベアトリス湾 酒場】


数日後の街角、まだ日も落ちぬ頃、雑踏をかき分けるように女が酒場の敷居を跨ぐと
酒瓶に埋もれながらうずくまる、女の元へと近付き顔を覗き込む。虚ろな目に沈む瞳は濁り
あの会戦の時に見た、女の精悍さは見る影も無くなっていた。

「合席しても宜しいかしら、コルネリア」

「ヨハンナ……私に何か用?」

「貴女の耳にも入っているでしょう、西側の管轄する地域を連合へ明け渡す調印に対し。
北部領土委譲に対して反対する西側の抗戦派が兵を出しているわ」

「条約で決まったことでしょう、最も
そう仕向けたのは連合の上層部だけど」

女はそう履き捨てると懐から書簡を取り出しヨハンナに向かって投げ渡した、
そこには東西の代表を中立であるベアトリス島へと召喚し、条約を再締結する日時と場所が書かれている。
重要な文書を易々と明け渡すコルネリアにヨハンナは眉をしかめ問いただす。

「どういうおつもりかしら?」

「あげるわ、もう……どうでもよくなったの
倒すべき敵を目の前にしながら、つまらないいざこざばかり。
うんざりしたわ、人間も亜人も皆同じよ」

「彼を失って、冷静さを欠いているのかしら?
貴女らしくもない……」

「馬鹿な男よ―」


138:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:47:21 r8KZNtSB

女はそういうとなみなみと注いだ酒を呷る、殲滅した筈のベアトリス島にまで及ぶ魔の顕現。
本国では既にあらゆる場所から侵攻を始めた魔物の襲撃により、小さな集落や村は壊滅する危機を迎えていた。

「人は強い者には逆らわず、自分より弱い者にその剣を向ける
その事が分かっていながら、あの人は命を賭けたの……」

「彼に近付いたのにも目的があったのでしょう?」

「そう、私の言う事は何でも聞いてくれるのよ
統一戦争の後、奴隷商から彼の命を買い上げた時から。
あの人の命と引き換えに、私が望むものも手に入れたわ……」

杯を持つ手が震え、俯きながら言葉を放つとコルネリアは相手の目を見据え愚痴をこぼす、
互いに愛情があるわけではなかった、その事は死んだ男も生き残った女自身も理解していた。
”神剣”を手に入れ亜人の下へと繋ぐ、その為の逢瀬だった。

「ふふ、あの人ったら、寝てても私が言うまで手を出さないのよ。
それで、夜までずっとそのまま抱き合って眠るのが好きだった、笑っちゃうでしょう。
初心な娘みたいに、彼が傍に居てくれるだけでだけで安らぐの」

「随分と酔っているみたいですわね」

「……もう用は済んだんでしょう? 帰って頂戴」

女が杯を机の上に叩き付けると、ヨハンナは席を立ち、その場から離れ去っていった。
1人残された女は手元に残った酒を呷る。心に残る邪魔な記憶を消そうと、酒を注ぎ思い出を塗り潰す為。
次々と思い起こされる記憶を誤魔化す為に1人ごちる。

「彼が恨み言の一言でも言ってくれれば、まだ救われたのに……」

女の両の眼から涙が溢れ出す。

「馬鹿な―人」


139:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:47:59 r8KZNtSB


【ベアトリス港 郊外の山林】


数人の子供達が山林の中を探索している、剣術の教練をしているスパルタ教師が
魔物に不覚をとったと言う話を耳にし、大人達の鼻を明かす為に山林の探索に踏みきる事となった。
勇ましく指揮を振るう年長組の少年を先頭に、少年達は周囲を見渡す。

「どうよヒルデ、見つかったか?」

「そう簡単に見つかりっこないって、早く戻ろう……
帰りが遅くなると義母さんが煩いんだ」

「何ビビッてんだよ、聞いた話じゃこの森に出る奴は
小さい方なんだ、俺達なら余裕だって!」

しばらく歩みを進めると開けた林へと抜け、そこに蠢く小さな人影のようなものが蠢いていた、
歪んだ顔に爛々と輝く黄色い眼孔、避けた口が笑うように歪むと、細い体躯を撓るように沈み込ませ
林の木々に飛び移るように跳躍した。

「な、なんだッ! さっきのはどこ行きやがった!?」

「上だよ! 木の上を移動してるんだ!」

1人の少年に圧し掛かるように魔物が飛びつくと地面に押し倒され
錯乱した少年はあらぬ方角へと射出槍を放ち、放たれた槍が仲間の肩を掠める。
悲鳴を上げのたうつ仲間を救うためヒルデは手に持った剣で斬りつけるが、魔物の体を弾くだけに留まった。

「き、斬れないの? なんでッ!?」

「クソッ! 槍だッ……槍を撃てッ!!」

指揮を取る少年が槍を放つように指示をするが、素早く動く魔物に照準が合わせられず
次々と山林の奥へと槍が消えていく、飛び道具を失い負傷者を抱えた少年達が後退るのを見計らったように
魔物の体躯が伸び上がり、ヒルデの顔面へと爪を振るった。


140:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:48:31 r8KZNtSB

次の瞬間、放たれた銃弾が魔物の体を弾き飛ばす、いつぞや出会った少女は銃を懐に戻すと
2本の剣を握り魔物へと迫る、跳躍し視界から消える魔物を追うように少女は跳躍すると
木に足をかけ空中で体勢を反転し、すれ違いざまに魔物を斬りつけた。

「君は、あの時の?」

地面へと着地した少女の髪の中からもこもこした生き物が顔を出す、
ロゼは少年のことを思い出したのか、動けなくなった少年達の顔を見据え話し始める。

「何をしているのこんな所で?」

「そ、その、魔物を退治しに来たんだ……」

ヒルデと少女は互いの顔を見合わせると、少女は目を逸らし足元に転がる魔物の姿を見つめる。
息も絶えだえに動く魔物を取り囲むようにヒルデが仲間に指示を出し、
仕留めるよう伝えると、ロゼが見咎めるように口を挟む。

「止めを刺すだけなら、そこまでする必要はないわ」

少女はヒルデに剣を手渡すと魔物の前に立たせ、止めを刺すように促す。

「貴方が止めを刺したらどう?」

少年は血の泡を吹きながらもだえる魔物の前でしばらく立ち尽くしながら、
思い直したように剣を振り上げる、しかし、体は硬直したように動かず、その剣を振り下ろすことが出来ない。
魔物の目に浮かび上がる絶望の眼が彼自身の脳裏に焼き付く。

「で、出来ないよそんなこと」

「自分の手を汚すことなく戦うのは、卑怯者のやること……」

ロゼの振るう剣が魔物の頭蓋を打ち砕き顔面を潰すと、吐き気を催した少年達が思わず目を逸らす、
少女は返り血を浴びた剣を懐から取り出した布で拭い落とし、ヒルデに手渡した剣を受け取ると
踵を返しその場から歩き出し、姿を消した。

「何だ、あの女おっかねえ、ヒルデの知り合いか?」

「前に港で見かけたんだ」

ふと、少年は自分の手が揺れていることに気付いた、恐怖から来る震えが全身を揺らし、
抑止しようと意識するほど震えはますます大きくなっていく、先ほど魔物が斬れなかったのも
心のどこかで命を奪うことに対する恐怖心を抱いていたからだろう。

もしくは自分の感性とは異なる人種との出会いがそうさせたのか、少年には分からなかった。


141:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:49:06 r8KZNtSB


【ベアトリス港 邸宅】


玄関先で仁王立ちする義母に注意を受け少年は頬をつねられると、家の中へと迎えられる。
浴室で体を洗い流し、浴びていた返り血が溶け出すと少年は何度も体を洗い流した。
食事の席に着き、義母と顔を見合わせ少年は語りかける。

「義母さん、亜人って知ってる?」

「えぇ、東の連合を統括する異種族を総括して
亜人と呼ぶのですわ、我々西大陸とを二分する大国……
近い内に争うことになりますわね」

「争うって? 戦争になるの、嫌だよそんなの」

少年がそう答えるとヨハンナは食事をする手を休め、グラスに注いだ水を口に含み。
彼の顔を見つめる、戦乱の世の中にありベアトリス女王を内へと引き入れた連合の力は
西大陸に匹敵するほどにまで成長することとなった。

「貴方が産まれる前に起きた統一戦争も、西大陸に対する牽制。
連合との密約が元になって起こった騒乱ですわ
半ば彼らにその責任がある……」

「でもそれだと、あの娘と戦うことになるよ」

「あの娘?」

「亜人の女の子に助けてもらったんだ、今日はそれで遅くなって……」

その言葉を聞くなりヨハンナはそれ以上食事に口をつけることなく席を立ち、自室へと向かった。
義母がこうなる時は決まって、とても機嫌が悪いことを知っていた少年は口をつぐみ
自分の部屋へと戻ると、椅子に座り込み剣術の教本を開いた。

「読むのは簡単なのに、上手くいかないなぁ」

眉をしかめ近くにあった木剣を手に取り、部屋の中で剣を振るい始めるが
覚悟を伴わなければ、実戦に活かせることはないと、傍と理解した少年はベッドの上へと身を投げ出した。
表は薄暗く夜の帳が街を包み始めると、少年の自室に義母が現れ、少年の傍へと腰を下ろす。


142:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 13:49:48 r8KZNtSB

「義母さん、さっきはごめんね」

「いいのよヒルデ、貴方はとても優しい子ですもの
争いを好まないのも仕方の無い事ですわ」

「義母さん?」

しなだれる様に少年の肩に女が顔を近付けると、俯く少年の顔に手を添え互いに見つめ合う。
女は強引に唇を重ね合わせると身を退く少年をそのままシーツの上へと押し倒し、顎の根元を押さえ舌を捻じ込む。
唇から唾液の糸を引き女は唇を離すと、震える少年の顔は紅潮し両の腕で顔を隠す。

「可愛い、私のヒルデ」

「何故? 何故こんな……」

「貴方を愛しているから」

彼女はその本心を少年に打ち明ける、憧れを抱いていた彼の母が産んだ最後の忘れ形見、
性格は父親似ではあるものの、その姿かたちは母親の生き写しと見紛うばかりの姿をした少年。
女は羽織った衣類を脱ぎその肌を外気に当てると、今まで抑えてきた黒い欲情を歳の離れた少年の前に曝け出した。

「あ……」

「いいのよヒルデ、全てを私に任せていいの
何の心配もありませんわ」

今まで肉親同然に慕ってきた義母の豹変振りに戸惑う少年は、自らの上に跨る女の体を直視する。
透けるように白く張りのある肌、そして自らを見下すように微笑みかける金色の瞳、
そこにいたのはただ1人の女だった。

「義母さん……」

「今日みたいな事が二度とあっては駄目よ、分かるわねヒルデ?」

少年が体を引き攣らせると抵抗力を失ったのか呆けた表情で頷く、女は満足そうに微笑むと
彼の胸に顔をつけ首元まで舌を這わせる。

―彼の全ては私の物―

その証を刻み込むように女は首筋に強い口付けを交わした。


143:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/02 16:22:00 Mskttzyk
ごめんスレタイ「糞スレ創作」って見えたけど違うスレ開いてるみたい俺バカだなアハハ

144:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/03 04:29:04 JRwu6kJC
また他所に移るのか?

145:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/04 08:40:58 rCBt0lNq
エロ禁止令

146:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/04 08:57:44 iTlHzSDy
まだ容量だいぶ残ってるね

147:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/05 23:12:07 +8SbEkL7


148:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/08 04:11:40 Beh5Oe+j
オレをストーカーするくらいの技能があるなら、
もっと他のことに力・エネルギーを傾けた・使った方が人生賢明だ
そのサイバーの技能だけは大したもんだしな
もっと建設的に使った方がいいというものだ

149:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ
08/11/08 04:24:46 fM/57cCg
何のことでしょう^^
誤爆?

150:創る名無しに見る名無し
08/11/09 23:41:45 RRODlmKp
【急報】

「ヴィジランテ旅団が壊滅しただと!?」

「……は、たった今、レイヴンがもたらした情報です。情報部の面々も見聞し、事実である…・・と」

「国王陛下は、この報をご存じなのであろうな」

「いえ、まず情報部より至急、将軍のもとに報告さしあげろと。作戦内容について、大幅な変更を余儀なくされるであろうからと」

「うぅむ……ご苦労だった。下がり、休息するがよい」

伝令士が退室すると、男は長年執務をともにしてきたオーク材の椅子に体を沈めた。
まるで、へヴィ級の拳闘士が鮮やかな一発をもらい崩れ落ちた。そんな風に。
そして、震える手を机上のベルに伸ばし、力なく左右に振った。
試合終了のゴングの音のように、それは室内に鳴り響いた。

「これより、軍議を招集する。将校らを叩き起こし、軍議の間に集めろ」

執事にそういうと、自身もくまさんパジャマから、ものものしいプレートメイルに着替え始めた。

おりしも、王国歴78年の真冬。
一日中しとしとと降りしきる長雨が、王国最強の騎士団の葬送歌のように鳴り響いていた……。

151:創る名無しに見る名無し
08/11/10 04:44:25 PWw1QnvT

なぜなにヨハンナさんのコーナー

聖堂の派遣員ヨハンナと申します
ちょっくらばかり、補足説明致しますわ
ヴィジランテ旅団は懲役免除を餌に集められた諜報部員
つまり私(わたくし)も犯罪者と言うことになりますわね

・ヒルデガルト
爵位を持った爺に言い寄られて、強姦されそうになった所を
脱走して逃げたのが問題になり、とっ捕まってしまいましたの
家督を継げない娘はこの時代、貢物扱いでしたので仕方ありませんが
頑なに拒んだヒルデに目をつけた諜報官が旅団を率いる団長として抜擢させました
レオニウスとの間に出来た息子である、ヒルデベルトを出産する際に死亡しました

・ヨハンナ
私はリアレス教の司祭で教鞭をとっておりました、この際に読んだ書物のおかげで
人並みには軍略をこなすことが出来ますの、教職は教え子に手を出したのがバレてクビになりましたわ
男は汚らわしくて触れるのも嫌いなので、無論お相手は女生徒ですのよ

・キアラ
ヒルデお付きの従者ですわ、ヒルデベルトが死亡した際に本国へ呼び戻されました
二重スパイと言うやつですわね

・フランチェスカ
壊滅した盗賊団の頭の娘ですわ、手先が器用で口もよく回るので重用されていますの
現在では私に隷属しております

・セリミア
騎士の娘でしたが犯罪に巻き込まれ、喉を潰された挙句に功罪の全てを押し付けられた娘ですわね
ドルバトゥールに切られ落馬した際に足を悪くしましたの、トリガシラとか言う男と所帯を持ったようですわ

と言うわけで騎士団でもなければ、旅団が全滅しても特に問題はありませんの


152:創る名無しに見る名無し
08/11/10 04:47:40 PWw1QnvT
×ヒルデベルトが死亡した際に
○ヒルデガルトが死亡した際に

153:創る名無しに見る名無し
08/11/10 08:00:52 UVScj/O8

バティアトゥス先生の余談講義

元赤銅の盾、参謀バティアトゥスだ
現在ではベアトリスはパルミナとガセルダを隔てた関所を撤去し
ベアトリス港としてまとめ交易をしており
大都市となったベアトリス街で教職についている

・ユリウス
ベアトリス会戦時に受けた傷が元で現役を退き、溜め込んでいた私財を元手に
救貧院を設立、そこで学園長をされている、ちなみに教育水準のレベルは
東連合>ベアトリス>西大陸だ

・トリフォン
ベアトリス会戦時に大砲の直撃を受けたにもかかわらず、腕一本で済んだ悪運の強い男だ
学園に就職した私の推薦で軍事教練の教職についている
副業で自警団にも参加しているようだ、セリミアとか言う女と同居中らしい

・アデニオン
ガセルダ侵攻作戦時に死亡したが死体はまだ見つかっていない
遺体のほとんどが原形を留めていないのが主な原因だ

・バティアトゥス
ベアトリスの学園で講師を務めている
官僚の幾人かが歴史を歪曲する為にベアトリスに残された書物を焚書したが
リオニアから大量の国書が見つかり、ここ数年でベアトリスの教育水準は飛躍的に高まった
失われた技術により、インフラの整備も進んだと言われている


魔法についての講義

・ベアトリス女王
ベアトリス国は代々女系の女王が戴冠する、血統を示すのは容易であり
受け継いだ強大な魔力の顕現を示すのは大概の場合、女王の血を引いている
元来”魔力持ち”は魔族との混生配合によって産まれるため
ベアトリス女王は魔と人間の中間種ということになる

・魔力
幽離(アストラル)空間から現存世界にエネルギーを転移することで魔法を生み起こすのが魔力だ
体の中に生来備わっている魔人血統としての魔力持ちと、自然世界に漂う魔力を収束できる魔力使いの二つがいる
分かりやすく言えば天才型と努力型がいる、人間と亜人の間にある差別意識はこの思想が根底にある

・亜人
亜人とは文字通り亜種に分類される人類だ、魔人血統を持つものが交配を繰り返し
血が薄まったものだと言われている、魔法を学問として昇華させたエルフ、頑強な肉体を持つドワーフ
精密作業に向いているホビット等が連合に参加している

亜人が長命と言われており120年程度
人間のこの時代の平均寿命は40歳前後である為、充分長命と言えるな


154:創る名無しに見る名無し
08/11/10 08:01:30 UVScj/O8

読んでもつまらない裏設定

・ベアトリス戦争について
ベアトリスは島国であり、島にある4つの領土と植民地である西大陸からの税によって国政が賄われている
官職は軍務・執政の二大権力と行政における複数の大臣によって成り立っており、女王による任命制
軍師であるリュゲルは女王の意思を任意に操作させ、自分の手駒を官職につかせると暴走を始め
傀儡王政と化したベアトリスは各地の領主との税率や政策との行き違いから、疎遠となり
ついにはベアトリス統一戦争を引き起こした

・何故戦乱が起きたか?
小さな島国では資材を賄いきれない為、外国からの輸入に頼ることになる
各地の領主達は貿易による交易でその領土を拡大し、資金を得て女王に納める税と収益を上げていた
しかし、ここでちょっとした問題が起こる、東の連合と結ばれた”同盟条約”
国力をつけ、ベアトリスに匹敵する力を身につけた西大陸の独立を恐れた
先代のベアトリス国王が秘密裏に連合と結んだものだ

・国益の齟齬
抑止力となるべく結ばれたこの同盟条約に危機感を抱いた西大陸の官僚達は
海賊を敢えて無視し、ベアトリス商船に対する略奪と通商破壊活動を推奨して行った
貿易なくして経済が立ち行かない、ベアトリスに対する”脅迫行動”だ、リュゲルは妻子と共に不運にもこの海賊行動に巻き込まれ
この事件が彼の復讐心の一端を担うことになる、この事件から大陸とベアトリスの確執は深まり
修整不能な事態へと転がり落ちていく

・安全保障と三十三稿
ベアトリス領内における三領が官僚の決定を無視し、個別に西大陸との安全保障条約を締結した
この判断を翻意とみなしたベアトリスの官僚達は各地の領主に税率を上げ脅しをかけるものの反発を食らう
疑心暗鬼に陥ったベアトリス領は国内から孤立し、ベアトリス領からの安定した食糧供給を停止
三領を分断するように砦や関所を設けて反抗に備えた

そして西大陸より半ば独立を求める脅しとも取れる”三十三稿”の条約を突きつけられ
武力によるベアトリス統一を宣言”ベアトリス統一戦争”となった


155:創る名無しに見る名無し
08/11/10 15:17:07 gb2D/Aul

天才イフティハルが語る西大陸の興り

ガセルダの若き新領主、イフティハル様による
西大陸の興国の歴史と現在の政況を説明しますよっと
植民地である西大陸は無数の領土により分かれており、小康状態の内紛が続いてるが
それらを取りまとめて西大陸と呼ぶ、一枚岩の大国とは名状しがたい状況な訳だな

・イフティハル
完全無欠の完璧人間、それがイフティハルだ
鍛え抜かれた肉体、美術彫刻を思わせるような優美なルックス
それもその筈、かの英雄”不死身のドレト”の孫にして、ガセルダの新領主である
早く俺もカッコイイ通り名が欲しいぜ

・マルコ
俺の取り巻きにして、家来第一号の文筆家
おふくろ以上に口煩いので会話すると説教になること、請け合いだ

・アル・アフダル
俺の教育係としてつけられた酒臭い爺さんだ
大人の遊びも色々と教えてもらったぜ、特に七並べが最高だな

知らなくてもよかった大陸予備知識

・西大陸の興国
歴史年表を見ての通り、元々人類は東西の大陸に分かれて住んでいた種族
しかしながら、魔族の台頭により生きる場所を失った人間達は、大陸を捨てて逃げちまった
その後、島国ベアトリスで力を蓄えた人々が兵を従え帰郷、大陸に蔓延る魔族を屠り
西大陸を救った、その中でも突出していた人物が”不死身のドレト”だ

・不死身のドレト
不死身のドレトは謎の多い人物であり、通り名の通り戦場では不死身だったとも言われる
魔物から奪い返す土地が、そのまま自らの領土となった時代
彼のような英雄が、より多くの領土を手に入れることは必然であったと言えるな
魔族どもから奪った広大な土地はそのまま中央都市「ゴード」となり
他の領土は中央の衛星都市となった

・中央都市ゴードによる植民支配
ゴードにはベアトリスから流れてきた貴族達が溢れ帰り、専制政治による植民地支配が始まった
王族に任命された大臣が国政を取り仕切り、俺等の英雄を顎でコキ使う
そんな状況を見かねた国民の中で反発が生まれ、タカ派とハト派が内部分裂を起こした

・南北を分けるジャルムとガラム
特に未だに魔族との戦闘が絶えない、北部の辺境都市ガラム
砂しかない南方都市ジャルムは、旨い所だけつまみ食いして持っていった貴族に対し猛反発
現在でも続く内紛の元となった訳だ、北方領土移譲に関する
領土移譲条約などは西大陸に反発するガラムを連合が上手いことノセた形だ

・政局の暴走
貴族連中の増長を見咎めたのは西大陸の一部だけに留まらず
ベアトリス本国もそうだった、特に大量に採掘される金の存在により、経済状況は逆転
大臣を解任すると、貴族達は労働量を減らし希少鉱物の採掘量を制限、本国に脅しをかけ始めた
新しく任命された大臣も即座に金と女の賄賂で骨抜きにされ、実質貴族が国を取り仕切った
洗脳教育により、国内では独立を望む声が高まり、国民の不安は怪しげな宗教で封殺
所得格差による貴族階級が、平民以下を一方的に支配する枠組みが完成された

・ガセルダの立ち位置
ドレトが中央都市ゴードを作り上げたとはいえ、これと言って高い評価を受けた訳じゃない
西大陸で名を馳せた英雄の親族は本国ベアトリスのガセルダへと送られる、要するに”人質”だ


156:創る名無しに見る名無し
08/11/10 15:17:38 gb2D/Aul

ロゼの亜人連合説明コーナー

作者の文章力では分かりにくい点を説明する
鉄装鎧の技術、剣闘士、賞金稼ぎ、神剣使い……etc
次いで東の連合についても補足する

・ロゼ
私です

・カルロ・ロッシ
神剣使いとしてお祖父さんに養われ業を受け継がれた、ロゼのお父さんです
ベアトリスに送られる前は連合の所有下にある奴隷で、地面に打ち込まれた杭に鎖で繋がれ
体から流れる血の臭いに引き寄せられた魔物を斬る、連合北領砦に収容されていた最後の剣奴でした
その後ベアトリス軍に買い付けられ、戦役でも生き残ったのでお母さんに買われました

・コルネリア
神剣の研究者であり、真偽を図る為に神剣使いを死地に送り込んで検査していました
お父さんが戦闘で死ぬように仕向けたのは全て実験であり
神剣が呪いだということには気付いていなかったようです

・神剣使い
魔族を滅ぼす為に賢者によって作り出された剣……と言うのは建前で
その実体は自らを殺害した人間に肉体の身体情報を移し変える、呪いの一種
この呪術自体「かけられた者が戦いの中で死ぬ」ことを前提に作られている
ロゼの体の中にも百数十年に及ぶ戦闘経験が蓄積された
犠牲の数が多いほどより強くなる


細かい設定あれこれ

・剣闘士
見世物で奴隷同士が殺しあう競技、お祖父さんはここ出身

・賞金稼ぎ・用心棒
人に害を与える魔物の駆除や犯罪をして逃げる賞金首を殺してお金を貰う仕事
陸路での交易(トレーダー)を護衛する者や盗賊や魔物から村などを護る用心棒は”ヴィジランテ”と呼ばれる
仲介役となる案内所(ギルド)に書類を出せば誰でもなれる

・鉄装鎧の進歩
3~5mm装甲板が当たり前の時代から、近年では最大装甲厚が10mmの物まで現れた
戦地以外では全身を覆うものよりも軽装の物の方が主流、臙脂石の出力向上と鉄柱(シリンダ)の小型化
限界最大積載量が増大が300㎏を越えても動けるようになった


157:創る名無しに見る名無し
08/11/10 15:18:11 gb2D/Aul

謎の集団”亜人連合共同体”の解説

・東の連合の実体
亜人は様々な種族に分かれるけど、内向的なために外交的な摩擦や衝突が起きにくいのが特徴
ベアトリスから流れてきた移民は彼らの生活に馴染み、政治に興味を持った各種族は代表を集め共同体を発足
西大陸の中央都市ゴードと同じくして、連合を統括するエルフによりフランティエが誕生する
活発な研究や学問が行われ、研究成果や正否を判断する為に他国との干渉を強めることが多くなった
ベアトリス女王が訪れたことにより王都に指定された

・ベアトリス王女のその後
純粋な魔人としての意味合いを持つ、王女の存在は亜人の発祥を示す
最も興味深い検体であり、フランティエによる最重要の学術研究対象として保護されている
また亜人の人種的優劣を唱える人類学者にも大きな影響を与え、連合内の劣等種(人間)排泄論にも拍車がかかった

・失われた力を求める亜人
選りすぐられた種、前時代の失われた力を取り戻す為の研究が連合では積極的に行われた
”神剣”や”亜人の起源”、”魔法の探求”や”技術開発と兵器転用”に至るまで幅広い分野で研究が行われている
お祖父さんが倒したと言われている”竜”の存在を示す研究、魔物に幽離(アストラル)段階で
人為的に手を加え、自由に生成(召喚)する研究も進められている

・連合の規模拡大と経済成長
豊富な食料・資材と工業力によりめざましい発展を遂げ、ベアトリス戦役による
交易で多大な収益を上げることに成功した、これにより”戦争成金”ともいうべき富豪層が次々と現れ
武器や兵器などを製造する工場が次々と増産、より富を得る為の政策に影響を与えている
その政策とは”他国の争いに火を注ぎ更なる収益を上げる”と言うもの

・北部領土移譲問題
西大陸における北部領土ガラムにて、領土移譲問題に関する取り決めが行われた
西大陸中央の意思決定に逆らうガラムが、北部からの魔物の侵略と中央からの突き上げにより
連合を頼り事実上泣きつく形となった、ここを交易の中心として足がかりにしたい連合と
連合の内陸侵攻を恐れる大陸、更にはガラム反抗軍とゴード中央軍の戦中利益を狙う財閥の思惑により
情勢は混沌の様相を呈してきた……


158:創る名無しに見る名無し
08/11/10 16:50:24 Q6Uh10g6
シャアード・ワードを作ろう!
スレリンク(mitemite板)

こっちも盛り上げてくれ~

159:創る名無しに見る名無し
08/11/10 21:31:33 PANBb08l

 【軍議の間】


「彼奴らめが全滅したというのは真の話なのか?」

「ああ、〈情報部〉のシメオン・スターアイが確認済みだそうだ。
 連中の生首がキレイに7つ、カーラーン城の狭間胸壁に並べられておったそうだ。
 ご丁寧に、女勢のおっぱいを切り取って、口に含ませてな」

「……星の目殿か。これで〈教会〉の連中が騒ぎたておるな。
 なんせ彼奴らめに祝福を与え、”神の代行者なり!”と判子を押したのは
 教皇聖下、御自らなのだからな」

「神の栄光を帯び、矢も剣も通じぬ、魔法さえも跳ね返す。
 そんな無敵の方々をぶっ倒しちまった連中は、どんな神様の祝福を受けていたのやら」
 あんがい、向こうの方が霊験あらたかなのかも知れませんな」

「聞き捨てならんな。つまり、我らが神より連中の神の方が力がある……そう言いたいのか貴校は」

「めっそうもない。ただ、祈り一つで矢をはじく。
 そんな便利な鎧があれば自分もぜひ欲しいと思っていましたところ、
 それがとんだ欠陥品だったことを知り、ガックリと肩を落としているだけのこと。
 ああ、せっかくヘソクリを貯めていたんですがねぇ」

「……連中に、信心が足りなかったのだッ!」

「まあ、そのへんで止めておけ。
 とにかく、今、我々が話すべきはヴァリアンテ騎士団のことではない。
 我々がいかにして、カーラーン城を落とすか、それについてだ」

「うむ、まず現状の再確認について語りたい。オートン」

「はっ」

(机の上に、巨大な地図が広げられる)

160:創る名無しに見る名無し
08/11/11 18:15:41 D7yvmypQ


【中央都市ゴード 錬兵工廟】


中央から広がる高級邸宅に群がるように立ち並ぶ貧民街を隔て、
その合間を縫うように工業地域が広がっている。鉄板を金槌で打ち付け薄く引き延ばし、鋲で止め製作する簡易な製作工程。
ほぼ全ての武器・防具が職人の手作業で作られる製造現場は、よく言えば職人芸であり悪くいえば前時代的である。
イフティハルは頭を掻きながら考え込むと文筆家が彼に声をかける。

「随分と慌しい操業ですね、やはり最近は物入りだからでしょうか?」

「大昔の全身鎧と言えば装甲の厚さが1mmにも満たないものが、ほとんどだが
それよりも薄い上に炭素の焼き付け工程すらもしてねぇな」

「?……鋼じゃないんですか、これ?」

「こんなもん着て戦うくらいなら服の方がマシだねぇ」

男はそばに置いてあった完成した鎧を拳で叩くと、ぽこんと間抜けな音が響いた。
大凡の場合、連合製の2mm装甲板を打ち抜くのに必要な弓の張力は50Kg、それだけの力で弓を引き続け
標的に狙いを合わせ動く敵を撃ち抜くのは至難の業である、結果として戦場では狙うのが容易な機械弓に取って代わられ
最終的には巻き上げの必要もなく動体静止能力(マン・ストッピングパワー)が高い射出槍に取って代わられた。

「下手するとやすりで削れるんじゃない?」

「色んな方面から苦情が来るような発言は慎んでください、
鎧がやすりで削れる筈ないでしょう」

臙脂石を用いた不燃機関の研究が進まず、西大陸は連合との技術開発に遅れを取り、
未だに機械駆動方式を用いた鉄装鎧の自主開発の目処が立たないまま、技術と工業水準は停滞を続けていた。
更には平和と享楽に浸かった国民達の徴兵義務は疎かにされ、ガラムへと向かう兵の多くが
無産市民で構成されており、士気が低いのが現状である。

ここにきて西大陸にある技術力の無さと、軍隊としての錬度の低さが浮き彫りになった形となる。
イフティハルは香草を口にいれもさもさと齧ると、思案に耽りながら工廟を後にした。

「御館様、西大陸は勢力的に一番大きいのに、何故兵が集まらないんでしょう?」

「負けたら死ぬ戦況ならまだしも、大義名分もない貴族連中の領土争いの為に死にたがる奴などいる筈もない、
平和な時代に生きてるのに突然剣を渡され、戦うことを強制されれば誰でも逃げ出すでしょ
尚且つ労働の中心にある男手が死んだら、残された親族は路頭に迷うのがオチ。
死にたくない兵士を戦地に連れて行けば士気も低くなるさね」

「じゃぁ、ベアトリス軍のように傭兵や奴隷で部隊を構成すれば……」

「傭兵や奴隷で兵員の埋め合わせをするのは、正規兵の数があればこその話だ。
例え話、正規兵が100人で奴隷兵が1000人集めたとして奴隷達は言うことを聞くのか?
正規兵の数が補充する数を上回っていなければ、奴隷や傭兵連中の運用は危険だよ」


161:創る名無しに見る名無し
08/11/11 18:16:13 D7yvmypQ

二人が官邸の広場に差し掛かり周囲を見渡すと、こちらへと歩いてくる男の姿が目に入る。
注意深げに辺りを見渡し、二人の前で立ち止まるとイフティハルが書状を突き出し、男は言葉を投げかける。

「これはどうもイフティハル様、ようこそお越しいただきました
この度の戦況、どのように予測されますかな?」

「ガラムの勝ちだな、防衛側で装備も潤沢
条約が再締結されるまでの間、中央軍がどれだけ連中の領土に食い込むか……」

「しかし、それでは中央が許すまいでしょうな」

「連合はベアトリスに一旦、陸揚げした物資をガラムへと輸送している
状況から見てベアトリスがガラムを支援する形だ、統一戦争の王女に対する
待遇がここに来て仇になったねぇ」

海運での交易を保障している西大陸にあって、ガラムへの物資搬入を差し止めることは出来ない。
つまり兵站を断ち切り、篭城を切り崩すのが不可能となっている以上、西大陸の取るべき選択肢は限られてくる。
条約を反故にしベアトリスからの補給路を断つ、下策だが街に篭城する敵を力攻めで落とす、或いは先んじて戦略的要所を押さえ
防衛が困難であれば破壊、譲渡する前に連合の動きを前もって封じる。

「大臣の判断により既に第一陣は出兵を済ませ
ガラムの街へと向かっております……」

「負けた時のこと考えねぇのか、お偉いさん達は……
ガラム要塞はどうなってんの?」

辺境から中央都市へと続く陸路の間にそびえる岩山を切り崩して作られたガラム要塞。
南下する魔物の侵攻を食い止めるために北向きに作られた物だが、南向きに手を加えれば陸路を封じる防衛線となりうる。
ガラムの行動は経済的に抑え込めるにしても、この要塞を先んじて奪取されるのは好ましくない。
連合が中央都市へ侵攻するためのルートを確保されることと同義であるからだ。

「兵は与えられる命令以外では動かぬものです……」

「俺がガセルダから連れてきた兵の内5000は自由に使ってくれ
だが残り2000はこちらで遊軍として別行動させて貰う」

「し、しかしそれでは、こちらとしましては……」

「援軍要請の書状には5000と書いてあったんだ、余りの2000は
俺の指揮下に置くのがスジってもんでしょ? 何か問題でも?」

イフティハルはにやりと笑みを浮かべながら強い語調で男に言い放つと、呆れ顔の行政官を残しその場を立ち去った。


162:創る名無しに見る名無し
08/11/11 20:33:48 yuurGviO

 【カーラーン城攻囲戦(3日前)】

「あ、あの、閣下。陣はどこに設営いたしましょう?」

「まだ早い。それよりも、地勢を検分したい。
 今の季節、ホワイト・リバーは兵馬の渡河は無理だと言ったな」

「ええ……基本的には……まず無理かと思われます」

「お前は、この地のルートウィン家の出身だと聞いたが?」

「はい、我が家はホワイトリバーのクロス王家の旗手諸侯を務めて参りました。
 今もそれは変わっておりません。これからも、永遠に揺るがぬ忠誠を捧げております」

「クロス王は、ホワイトリバーに唯一の橋をかけその地位を築いたという。
 だが、70年前。 橋を挟んで王の双子の兄弟が争いを繰り広げたとき、お前たちルートウィン家の始祖は
 秘密の通路から川を渡り、敵の背後をついて功をあげ、その家名を起こしたと聞く。
 あれは、吟唱詩人のホラ話だというものもいる。
 あの河を渡れるはずがない。ルートウィン家は兄の軍を裏切って、強襲を仕掛けたのだと。
 その証拠に、奴らはミミズ捕りから成りあがったではないか、と」

「根も葉もない、嘘っぱちです!」

「ああ、だからその証拠をオレに見せてくれないかな?」



その夜、夜陰にまぎれ、赤茶けた泥水を跳ね上げながら、わずか300つの騎影が河を渡り始めた。
彼らが陣を敷いたのは、河を渡ってすぐ、カーラーン城の目と鼻の先であった。

「さあ、特等席ができたぞ」

そう言い放つのは、王国最強と謳われるヴィゼリア騎士団団長、ヨゼルダ・ハーラルであった。

163:創る名無しに見る名無し
08/11/12 22:55:36 67TlaL79


【盾、潰える時】


日が水平線へと沈み夜がふける頃、いつ頃から振り出した雨が舗装された石畳を濡らしていく。
降りしきる雨霧がたちまち周囲の空気から熱を奪うと、教練から帰宅する途中
足止めを食らった男が憎々しげに空を仰いだ。

「降り出したな……」

「よぉ参謀、お前も立ち往生か?」

横から現れたバティアに声をかけられたトリフォンは不意に差し出された、雨避けの外套に目をやった。

「どういう風の吹き回しだ?
ひょっとしてお前が呼び込んだ雨じゃねぇだろうな?」

「まぁ、たまにはな……お前は風邪をひく心配など無用だろうが
お前の女房を寒空の下待たせるのは忍びない」

「まだ一緒になった訳じゃねぇよ」

「わざわざ指輪代の為に自警団で危険な思いをしなくとも
副業の一つや二つ紹介してやった物を……」

参謀にそう言葉を返された男は言葉に詰まると、口を尖らせ否定するように目を逸らす。
差し出された外套を手早く奪い取ると、噴き出すのを堪えるように笑う参謀に
手を突き出し。親指を下に向け煽った。

「笑ってんじゃねぇよ……この」

「またな、色男」

「あぁ、またな……こいつは借りにしておくぜ」

背を向けて男が雨の中を歩き出すと、前髪にかかる雨粒が忘れていた記憶を呼び起こしていく、
ベアトリス会戦時、南門で足止めを食らうこととなった赤銅の盾一団は砦に残っていた正規軍と合わせ
打ち破ることの出来ない戦いへと身を投じていた。

あの時も雨が降っていた、泥の中を這いずり回り、城壁へと接近し攻城櫓を誘導する手筈。
しかし敵の放った数発の砲弾が攻城櫓を打ち砕き、そのまま瓦礫の山に飲まれ彼は腕を失ったのだ。
会戦に破れ、仲間と腕を失い、今こうして雨の中自分の帰りを待つ者の元へと帰ってゆく。

「……チッ」

牙を失った男は二度と戦うことは出来ない、自警団の仕事を引き受け、自らに残された可能性に縋る道も断たれ、
自らの無力感に打ちひしがれる。安息の中につかる自分自身の姿と脳裏に焼き付く戦友の死。
トリフォンは胸から下げた紋章を握り締め口を結ぶと、橋の下に佇む不審な影に気付いた。


164:創る名無しに見る名無し
08/11/12 22:56:51 67TlaL79

三人の男に囲まれるように少年は逃げ道を塞がれ、持っていた麻袋を男達の前で振り回す。

「そう興奮するなよ坊主、何も命まで盗ろうって訳じゃない
ちとばかし、俺等と一緒に来て貰えれば済む話なんだよ」

「寄るなっ! 僕は……」

「ヒルデベルト家の御子息様だろ? その点はよぉく存じ上げておりますとも」

「何故それを!? お前ら何者だ?」

男達に囲まれていた少年ヒルデは、懐から木工作業用のナイフを取り出し突き出すと、
敵は軽々とその攻撃を避け、がら空きとなった腹部に向かい膝で蹴り上げた。

「ぐ……あがぁぁっ!!」

「所詮素人だなお坊ちゃん、さて……」

「ヒルデッ! そこ動くなッ!!」

「……先生?」

加勢に現れたトリフォンは外套を脱ぎ捨て川岸を滑り降り、修練用の木剣を片手で構え相手に向け突きつける。
突然現れた予想外の邪魔者に一瞬身動ぎした男達は相手が隻腕だと分かるや否や
口元に笑みを浮かべ、左右から同時に撃ちかかる。

瞬時に敵の得物の判別を終えたトリフォンは、細身の剣と木剣を克ち合わせると、剣は根元から折れ地面へと突き刺さる。
呆気に取られた男の一人は首元に追撃を打ち据えられ地面に倒れ込んだ。

「な、なんだこのカタワ野郎はッ!?」

「そりゃ、こっちの台詞だ……うちの生徒に何の用だ?」

「ひ、ひははは、多少は出来るみてぇだが、テメェは運がないぜ
おい、ゼラー! 仕事だッ……この野郎をブッタ斬れッ!!」

「お……おぁ?」

後ろで待機していた男の前に剣を投げ出され、鎖の擦り合わされる金属音が周囲に響く。
頭から被せられた麻布から除く手足は明らかに手錠で繋がれており、
それだけを見ればゼラーと呼ばれた男が奴隷であることが分かる。

「何もたもたしてんだ、早く拾えッ!」

敵が剣を拾うのを待たずしてトリフォンは前屈みに剣を拾おうとする奴隷へと斬りかかる、
この状況であれば、どのような敵であろうと自らの勝利は揺るがない、彼自身の経験がそう判断したのだ。
赤銅の盾千人長 トリフォン、数多の戦場を駆け戦い続けた男の最大の不運は、
常軌を逸した強敵との交戦経験がないことによる”油断”だった。


165:創る名無しに見る名無し
08/11/12 22:57:25 67TlaL79

「な……何ッ……!?」

「ん……」

トリフォンの腹部から鮮血が滴る、自らの予測した距離よりも遥かに遠い間合い。目まぐるしく動く思考の波に流され、
彼は相手の足元を注視する、奴隷の男は足の指で剣を握り、トリフォンの斬り下ろしの隙に蹴り込むように
突きで合わせたのだ。予想外の出来事、思考に混じる雑念を吹き飛ばし、
トリフォンは木剣を強く握り直すと、敵の追撃に備える。

ゼラーは足の指で握った剣を空中に放り上げ手に取り、両者共に顔を見据えあう。
その刹那、トリフォンは敵の動きを先んじて捉えると先程と同じように剣の腹を横薙ぎに打ち払いにかかる―

「……」

雨は激しさを増し、ベアトリス港の街並みを埋め尽くすように満たしていく、赤い屋根の借家に住む女は
痛む傷を抑え彼の帰りを待ち続けていた。突然降り出した雨に濡れて帰って来るだろう。
そう思い水を拭う為の布を手元に用意して、ただ道の先の向こう側を見つめていた。

「……す…まない」

橋の上に体を横たえ、息を吐く度に喉元から空気と血が漏れ出し、雨水の中へと解けていく。
手には仲間達の命を刻んだ紋章を握り締め、ただ心の中で懺悔の言葉を繰り返し、

やがて、男の命の火は雨の中で消えていった。


166:創る名無しに見る名無し
08/11/12 23:59:24 Ql98EHiM
まだあるのかこのスレ
24時間ノンストップオナニーだな

167:創る名無しに見る名無し
08/11/13 00:57:09 L3GhGxT5
シェアードの方が尻切れで終わったんで
こっちはまともに終わらせたい

168:創る名無しに見る名無し
08/11/13 03:15:27 E9loqQtk
何故か自分がストーカーされてると思い込んでる
微妙にキの字入ってる人なんでそっとしておいてあげた方がいいぞ

基本的に淡々とSS投下していくだけの人畜無害だから

169:創る名無しに見る名無し
08/11/13 06:50:39 U1bQ0bBR
シェアード青春で普通の日常書いてたのだろw

170:創る名無しに見る名無し
08/11/15 23:49:52 S+hSR/6r


【王都フランティエ フランティエ宮殿内】


宮殿に朝日が差し込み、庭に咲く色とりどりの緑が光に照らされざわめく、
王宮の一室、けだるい倦怠感の中で女は目覚めると、枕元に備え付けられた水差しを
カップへと注ぐと水を一口含み溜め息をついた。あれから16年の時が経ち少女の面影も無くした女は、
かさつく髪を指で解きほぐすと窓ガラスに映りこむ自らの姿を見る。

ベアトリスから離れた今でも、軟禁生活は終わることはなく彼女に自由が与えられることはなかった。
時折訪れる医者の処方箋や検査により、体調も思わしくなく、無気力な日々を過ごしている。

「ベアトリス様、良い御目覚めでしたか?」

「クロウリィ、今日は気分が優れないの……」

若くしてフランティエ連合を束ねる国家元首であるクロウリィと、廊下で顔を合わせると男は頭を下げる。
短く整えられた黒髪に薄く見開いた目、まるで作り物のような細い手足からは、異様な雰囲気が感じられ、
女は彼と視線を交わすことなく足早に立ち去ろうとする。

「どちらに行かれますので?」

「庭です、この時期になると薔薇が咲くの
こんな窮屈な場所では、他に楽しみなどないものね」

「これは手厳しい御意見です、しかしベアトリス本島に比べれば……」

「その話はもうしないように釘を刺しておいた筈よ、クロウリィ
もう思い出させないで頂戴」

思い起こされる記憶、思えばあの島では何一つとして良い思い出などなかった、
連合により自分自身が魔と人の混血であることを知らされた少女ベアトリスは、あの日全てを知ったのだ。
物心付く幼い時からリオニアに放逐されていたのも、家臣が自らを見つめる冷徹な視線の意味も、
最愛の人が振り返ってくれなかったのも、全て。


171:創る名無しに見る名無し
08/11/15 23:50:25 S+hSR/6r


自分自身に秘められた力を誇りに思えた時期もあった、少女時代、同世代の村の子供たちの憧憬を集め、
ある日王族であることを知らされ、夢のような王宮生活に胸を高鳴らせた純朴な少女。
あの時の自分に今のような落ちぶれた姿など想像しようもなかったことだろう。

「―ドルバトゥール」

不意に流れ出る涙を女は指で拭う、他の男の腕に抱かれても消えることのない記憶。
階上からその様子を窺っていた元首は泣き崩れる女の姿を一瞥し鼻で笑うと、
当初の目的であった執務室に入り、部下である男に語りかける。

「どうだカステル、神剣使いの絞込みは順調か?」

「はい、新たに999人の捕獲した奴隷を”蟲毒”にて選定しましたが
残念ながらそれらしい者の発見には至っておりません」

カステルと呼ばれた頬のこけた男は細かい状況を記した書簡をクロウリィに手渡す。

「忌々しい神剣使い共め……引き続き選定を続けろ、
ガラムに向かわせた兵の動きを西大陸の諜報部に流してやれ」

「しかし、それではこちらにも相応の被害が……」

「劣等種が何人死のうが、こちらには問題無い
炙り出すには丁度良かろう、候補に残った男はまだ生きているのか?」

「”ゼラー”は現在リューゲル家へ向かっております
直に経過報告が寄せられることでしょう」

側近の言葉に耳を傾けていた男は細い目を見開き、口元を歪めると顔を押さえ込むように笑い始める。
甲高い不快な笑い声が執務室に響き渡ると側近の男も口元を釣り上げる。

「”神剣使い”同士の殺し合いか、これは結果報告が見物だな……ハッハッハッ!
カスどもめ、これが力だッ! 矮小な人間が些細な力を身につけた所で
絶対的権力の前では児戯に等しいッ!」

「仰る通りで……」

「西大陸に集められた25000の兵力、これを損耗させ、最後の仕上げを行う
統一戦争と同じく抜かりのないようにな」

そう言い放つ男の形相は邪悪なる者が放つ”魔”の微笑であった。


172:創る名無しに見る名無し
08/11/16 02:13:32 mchPig/t

【最後の希望】

「条件を言え、聞くだけは聞いてやろう」

「早々に旗印を捨て、大手門を開放し呂。
そうすれば、将兵の命は保証する。エモン公に仕えたいものは残ることを許す。
嫌であれば、武装解除と引き換えに好きなところに行ってもよい」

「ほう、なかなか寛大な処遇だな。で、俺はどうなる?」

「黒衣をまとうことを許す。ネッド・スタークの私生児はいまや〈壁〉の総帥だ」

「それもまた、貴様の父親の差し金か? 
亡き姪……ケイトリンはけっしてあの小僧を信用していなかったと記憶する―シオン・グレイジョイを信頼していなかったのと同じように。
どうやらケイトリンの判断は、どちらについても正しかったようだ。やはり、貴様の口車には乗るまい。
せっかくだが、おれは暖かい地で死ぬ。獅子の血で真っ赤にそまった剣を片手にな」

「われらの剣もまた、タリーの血で紅く染まることを忘れるな。
どうあっても城を明け渡さぬというなら、城攻めに踏み切らざるをえぬ。
あたら数百の命を無駄に散らせてよいのか」

「我が勢の討ち死にが数百なら、貴様らは数千だ」

「いまさら抵抗を続けてなんになる。戦は終わった。貴様の主君、〈若き狼〉は死んだのだ」

「歓待の儀礼をことごとく踏みにじり、惨殺しておいて、なにをぬかす」

「それはフレイ家の所業だ。おれの与り知ることではない」

173:創る名無しに見る名無し
08/11/16 02:16:42 mchPig/t

【最後の希望2】

「なんとでも好きに言い訳するがいい。あの謀には、タイウィン・ラニスターの匂いがぷんぷんするぞ、〈王殺し〉よ」

「しかし、父もまた死んだ」

「あの醜い小人にはらわたを刺し貫かれたのだというな。
腸から糞尿をもらしながら、糞の海に血反吐を吐いてくたばったという。
なんとも、悲惨な末路よ」

「・・・もう一度言う。ロブ・スタークはもはやこの世にはおらぬ。
そして、〈若き狼〉とともに、その王国は滅び去った」

「ふん、片手を失ったのみならず、視力までも失ったか。
目をあげて上を見ろ。われらが城壁の上にはためく大狼の旗が見えぬか」

「見えるとも。狼の孤影が哀れでならぬ。ハレンホールは堕ちた。シーガード城もメイドンプールもだ。
ブラッケン家はひざを屈し、タイトス・ブラックウッドを使い鴉の木城館に押し込めている。
パイパー家、ヴァンス家、ムートン家―貴様の旗主らはみな降人となった。
残るはこのリヴァーラン城のみ。
そして、我らが軍勢は、貴公の守兵の20倍の兵力を擁する」

「つまり、20倍の糧秣を必要とするわけだな」

「……」

174: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し
08/11/16 02:26:58 1r4VxTrJ
返し方おかしいwそこで糧秣かw
ムアコックっぽいのかなksks

175:創る名無しに見る名無し
08/11/16 16:11:33 4ZGS8CHy


【ベアトリス港 港湾地区】


走り抜ける皮靴が飛沫をはね、放たれた刺客達が二人の親子の元へと迫る。
大方金で雇ったゴロツキの類であろうと予測していたヨハンナだったが、統率されじわじわと包囲を狭める動きに
追手が連合から放たれた暗殺者であることを確信した。

「養母さん……先生が」

「気をしっかり持つのよ、ヒルデ
恐らく、連中は連合の手の者に違いありませんわ」

「れ、連合がなぜ僕等の命を狙うの?」

ヒルデベルトの問いに答えることなく、女は忍び寄ってくる男達の前に立ち塞がる。
彼女自身狙われる理由は予測も付かないことだったが、何があろうとも彼を護らなくてはならない。
飛び道具を持つ敵が居ないことは彼女にとっても幸いであった。

「女、貴様には用はない大人しく
その子供ををこちらに引き渡してもらおうか」

「子供を渡せと脅されて、差し出す母がいると思って?」

「ほざけ、これだけの手勢相手に素手で敵うとでも思っているのか
息子の前で無様な痴態を晒したくはなかろう?」

「下品な脅し文句、育ちが知れますわ……」

雨は止むことなく厚く覆った雲が朝の光すらをも遮っている、男達が間合いを詰め
剣を振るい襲い掛かる剣をヨハンナは半身で避け、腕を掴み大きく円周を描くように投げ飛ばすと
受身を取れずに顔面から石畳に激突した男が悶える。

「二人まとめて御相手して差し上げても宜しいですわよ
……最も、貴方がたの体が持てばのお話ですけど」

「二人同時にかかれッ!!」

男達が狙いを上半身と下半身を別々に薙ぎ払う、逃げ場を失った女は敢えて前へと踏み込み。
剣を掴む腕を握リ動きを受け流すと、その場で振るい投げ二人の男を衝突させる。
身動ぎする男達の前を悠々と歩きながら、ヨハンナは溜め息をつく。

「次はどなた?」

「クッ……ユシエルは何をやってるッ!?
さっさとゼラーを連れて来いッ!」


176:創る名無しに見る名無し
08/11/16 16:12:05 4ZGS8CHy

男がそうがなると、いかにも小者感の漂う貧相な男が従えていた奴隷に指示を出し、
女の前へと歩み出る、虱がわかぬよう短く切られた髪に呆けたような眼差しをした奴隷は
雨を避けるように周囲を飛ぶ羽虫が気になるのか、きょろきょろと目で追っている。

「ゼラー、今度はあの女を斬れ、分かるな!?」

「ゆぁ……ぅ?」

「め、飯は後だ! この仕事が片付きゃ俺達は一気に大金持ちだ
腹いっぱい飯が食えるぜ!」

「えぅ!」

ゼラーがヨハンナと向かい合い剣を向ける。
意識を集中し身構える瞬間、剣を持つ男の腕が視界から消え、危険を察知した
女は身を捩り回避。足元で気絶している男から剣を奪うと次々と襲い掛かる
見えない剣を寸前の所で見切り受け止めていく。

目の前で繰り広げられる常軌を逸した戦いに、双方の陣営には重苦しい沈黙が流れた。
人間の反応速度では到底見切れぬ男の剣速もさることながら、その攻撃をただの女が追従している。

「あ、ありえねぇ、あの女ゼラーの剣を見切ってやがる」

「むぅ……」

業を煮やした男が渾身の力で剣を振るうと、風を裂く音を周囲に轟かせながら
女の体を両断するよう刃が走る。しかしその攻撃すらも直前で見切って返すが、女は息を荒げ、
互角の勝負に思われた戦いも持久力の差によりじわじわと追い詰められていく。
養母の危険を察知したヒルデは、懐から短刀を抜くと養母に駆け寄った。

「ぼ、僕も戦うよ!」

「下がってなさいヒルデッ! 彼等の目的は貴方ではないわ……そうよね?」

「まさか……この女が”神剣使い”か
ユシエル、ゼラーに指示しろッ! 何があろうともこの女を殺せッ!」

女は既にこの時、諦めにも似た覚悟を心に抱いていた。
彼等の狙いが最愛の人ではなかったことを幸運とすら思う。彼の両親の命を奪った
自らが罰せられるべき罪なのだと、既に信仰を捨てた彼女にもその時が来たのだと理解できた。
奴隷の剣がこちらの剣の腹を打ち抜き、刀身が中ほどから割れ、敵の剣が自らの体に食い込む時。

女は静かに目を閉じそれを受け入れた、冷たい石畳に倒れ冷たい雨に打たれると、
ふと頬に当たる暖かさに再び目を開ける。女の体を抱き咽び泣く少年の涙が頬を伝い彼女の顔へと落ちてゆく。
彼の名前を呼ぼうと動く口から血の泡を吹き、ただ女は心に願った。
形ばかりの物ではない、自らの命を神に捧げた祈り……

―この子に神の御加護があらんことを―


177:創る名無しに見る名無し
08/11/16 16:12:39 4ZGS8CHy


【北領の魔窟】


ガラム要塞に辿りついた、イフティハルが目にしたものは、おおよそ信じがたい光景であった。
地を埋め尽くすように蠢く異形の集団、魔の群れがわずかに残されていたガラムの警備隊を食らい、
要塞からは黒煙が上がり完全に破壊されている。わが目を疑う男の前に老兵が歩みでる。

「どうなっとるんじゃあ、これは!?」

装甲騎兵が前に乗り出し岩上を這い回る昆虫型の魔物に向かい射出槍を放つと、
ばらけるように散開し槍を避け、灰色の肌をした魔物達を先頭にこちらへと間合いを詰めてくる。
明らかに統率された動きをみせる集団と間合いを取るよう、馬を引かせた途端、
占拠された要塞の中から火の粉を散らしながら炎が投げ込まれた。

「伝令ッ! ガラムの街へ向かった連中を叩き起こして
こっちに連れて来い、大至急だッ!」

「そ、それが、イフティハル様
ガラムの街へとむかった5000の兵からの先程伝令が……」

「折り返し連絡を入れろ、睨み合ってるだけなら問題ないだろう」

「ガラムの街が陥落しました、川から引いていた
地下用水路の上水道を掘削し潜水兵が侵入、門を開いた街中に兵が流れ込み
双方の被害は甚大です……」

采配を振るいながらも、イフティハルは状況を頭の中で整理する。地下を巡る用水路の位置など
内通者がいなければ知りえない情報、そんな情報を開示し戦わせた所で得る物など何も無いのだ。
このままでは大陸と連合の緩衝を大きく崩し全面会戦の火種となる。

「本気で戦争する気か、状況が見えてないのか?」

「親方様……空を」

見上げた空に浮かび上がるその姿、その場に居合わせた兵士達の心を満たしたのは絶望であった。
煌々と輝く金色の瞳、ささくれ立つ鱗に口元から覗く牙、口伝により伝えられていた竜の姿。
街の城壁ほどもある巨体がイフティハルの2000の軍の中央へと舞い降りると、
吠える声に大気が震えあがり、兵は恐慌状態に陥る。


178:創る名無しに見る名無し
08/11/16 16:14:23 4ZGS8CHy

「引け、撤退だッ!」

退却の合図を出すと兵馬は混乱に陥る、訓練された馬すらも本能により危険を察知し、
馬上の兵士を振り落とし逃げ惑おうとする、撤退の足元が揃わぬ兵を見かねた老兵が殿へと買ってでた。

「若造、先に逃げとれ」

「こんな時に冗談はよせ、爺さん
あれにはどう計算しようが勝てっこねぇ!」

「しっかりと考えておるさ、秘策をな」

立ち止まる老兵の後姿を男は眺めていたが、意を決して彼を残し
その場から撤退を始めた。策を弄してもどうにもならないことをイフティハル自身は理解し、
突きつけられた非情の選択を黙することしか出来ない自らの未熟さを呪った。

「……死ぬなよ爺さん、博打の勝ち逃げは許さんぜ」

そう言い残し去っていく若き領主を老兵は見送ると、竜の目の前に立ち塞がる。
逃げた者達を追おうと翼を広げる竜の体に射出槍を発射するアフダルだったが、肉厚の皮膚に遮られ、
その行動は竜を激昂させるだけの行為で終わった。

「精々粋がるがいい、わしを今ここで喰ろうたところで
必ずやあの若造が貴様の首を取る!」

竜が素早い動きで口を開くと馬上のアフダルごと顎で食い千切る、半身を失いながらも
老兵は驚くほど冷静に射出槍を装填し、竜の口内に掛かる上半身を起こすと、喉の中をめがけ槍を発射した。

「悪食めが……」

遠くから響き渡る竜の悲鳴に馬を止めた若者は足を止め、その場を振り返る。
辛くも生き残った者達は、戦勝で喜びに湧きあがるゴードへと帰還した。


179:創る名無しに見る名無し
08/11/16 19:25:03 1i2ZJNaW


【神剣 フライング・ソード】


※「セイレン家の乙女は、他者の視界を盗み見ることができるという。
   お前は男にしか見えんが、どうやってその技を私に説くと言うのだ?」

#「わたしが陛下にお教えするのは、あのような小手先の技よりももっと大きなものです。
   国全体を司り、世界を動かす・・・まさにそういう大きな力です」

※「ほぅ、そのような力があれば興味深いがな」

#「敵に対し、”我々自身の目で物事を見させ、我々自身の口で語らせる”。
   それが出来れば、敵のあらゆる美点は無へと帰し、かの国の世論は我々の思うがままとなりましょう」
    世論、すなわち情報こそが剣よりも魔法よりも強力な力なのです」

※「すまぬが、意味がわからぬ。貴様、まさか酔っているのではあるまいな?」

#「ホホ、ホ……。酒は10年の昔にとうに断ちました。
   代わりに今、私を酔わせるのは酒よりももっともっと美味く甘美なものです」

※「それは、なんだ?」

#「勝利ですよ、陛下」

※「勝利・・・詳しく語るがよい」

#「その昔、暗愚王の時代。一人の天才鍛冶職人がとてつもなく素晴らしい剣を作り出しました。
   その剣はとてつもなく美しく、それだけでなくどんな伝説に謳われる名剣にも劣らぬ切れ味を誇り、
    そして量産が可能で、安価でした。
     しかし、その力を恐れた私の祖先は、帝国に雇われ工作活動を開始しました。
      すなわち、その剣は柄をひねると簡単に剣が飛ぶ。1年で錆びて使いものにならなくなるとね」

※「馬鹿な。自らの国を勝利に導く発明だぞ。誰も信じまい」

#「信じる? 信じるとは、多くのものが言っていることを、ただ知るというそれだけのこと。
   多くのものが、その剣は飛ぶ、1年で錆つくといえば、それは”そういうこと”になるのです」

※「そして、暗愚王はどうしたのだ?」

#「鍛冶職人を呼び付け、首をはねました。
   彼自身が発明した、まさにその剣でもってね」

※「その後、彼の国は滅びたのだったな……」

#「ええ、その剣がやがて人々の記憶から枯れ果て、忘れられたころ。
   敵国によって正式装備に採用され、鍛冶職人を処刑したその剣でもってまた
    暗愚王も自らの首をはねられたのです」

※「そしてお前は、その逆のことができるというのだな」

#「さすが陛下は暗愚とは程遠い、懸命さであらせられる」

※「クク、知っているか貴公。
   その笑み、王が私でなければ即刻打ち首に処したいほど無気味だぞ」

180:創る名無しに見る名無し
08/11/16 19:46:58 0CZgkYSS
鎧を着てる奴が剣で打ち抜けないから剣型のパイルバンカーになってるんだろw

181:創る名無しに見る名無し
08/11/16 19:56:06 gIKGMRn8
槍や弓ならまだしも、剣で鎧がかまぼこみたいに斬れるとかジョークの域だから

182:創る名無しに見る名無し
08/11/16 20:40:24 pCfqLw3w
誰か、西大陸のカステル大公と東連合のクロウリィ国家元首の演説書いて、
双方が正義を主張して民衆を煽るような文でよろ。

183:創る名無しに見る名無し
08/11/16 21:10:26 927njyK2


【ついに完成! 神剣 フライング・ソード】


※「ついに完成したようだなこれが例の飛んでる剣か」

#「ホホ、ホ……資料を掘り起こし、完璧なかたちでコピーいたしました」

※「どれどれ、うっお――っ!! くっあ――っ!! ざけんな――っ!
  重い、重すぎるわ……何でこんなに重いのだ、これは」

#「当時の平均的な装備の剣で12キロ前後あります」

※「昔の人間は巨人か何かだったのか? 
  こんなものはとてもじゃないが振り回せないぞ」

#「ロストテクノロジーですので、詳しい資料は紛失してしまったのでありません」

※「肝心な所で頼りにならんな、で石突きを抑えて柄を廻せば飛ぶんだったな」

#「臙脂石という代物が我々の技術では精製不可能な為
  火薬で代用いたしました」

※「ポチッとな」

ドコンッ!

#「ああっ、王の腕が曲ってはいけない方向にっ」

※「こんなもの片手で保持しながら撃てるかっ!
  しかも熱いっ、熱すぎるわっ」

#「火薬以外の炸薬でないと駄目なようですねぇ」

※「”ですねぇ”じゃないだろ貴様、処刑するぞ」

#「昔の連中は魔法使いが多かったのでしょう」

※「遺跡からたまに発掘される鉄の機械人形となんか関係があるのやもしれんなぁ」

#「ロボットアニメのように鉄の鎧着込んで斬り合ってたと?」

※「こやつめハハハ、我が国でも開発出来ないロボットがそんな大昔にある筈なかろう」

#「ハハハ、ワロス」

184:創る名無しに見る名無し
08/11/17 13:49:13 geV0fqRh


【抗いの薔薇】


西大陸と東の連合との戦いは混迷を極めた。命を捨てて戦う者達の多くを失い、
不足した兵の数を補う為に子供・女・老人達まで徴兵により戦力として投入され、
その大部分が異形の者達に襲われ命を失った。

こちらの動きを見透かされたように現れる敵に恐怖し、人々は安全を提供する権力に縋り
独立した兵力で抵抗を続けていたガセルダ、アルメンテの両軍も、度重なる兵力の疲弊により
次第に追い詰められていった。

正義の介在しない地獄の到来である。

異形の魔物達にとって人間は食料に過ぎない、人間が家畜を飼うのと同義であり
生存個体を管理調整、場合によっては互いに争わせ遺された死骸に魔物達が群がった。
闘争本能を失った人類は豚に成り下がり、何時襲われるとも知れない恐怖に震え。
何時か現れ、自分達を救ってくれる英雄の到来を待ち侘びた。

「……誰かが命を賭けて救ってくれる、皆そう思っている」

誰かの手を汚し罪を着せるのは容易な事であり、過去の神剣使いの中には
人を救いながらも、あらぬ誤解から処刑され、命を落とした者もあった。少女は剣を手元で返すと眼前の集団を睨みつける、
神剣に込められた想い、人間に対する憎悪、亜人に対する憎悪、魔に対する憎悪。
しかし彼女は復讐の為に剣を振るう訳ではない、ただ前へと進む為に……。

「……私の邪魔をしないで」

襲い掛かる異形の魔物達を次々と斬り、地に伏せていくロゼは、あらかた周囲の敵を片付けると
鉄装鎧に銅柱を差し込み充填させる。眼前にそびえる魔物達の本拠。かつて城塞都市として栄えた、
北領にある始まりの地。瓦礫の山と化した筈の城砦は元の姿へと修復され、禍々しい魔の力が感じられる。


185:創る名無しに見る名無し
08/11/17 13:49:58 geV0fqRh

「これはまた可愛いお客様ですね、今日は随分と来訪者の多い日だ」

「貴方は?」

城壁の上に現れた男が口に手を当てほくそえむと、少女は周囲に散らばる鉄装騎馬の残骸を発見する。
屍が積み上げられた残骸の中に立つ異形の魔物達が少女の姿を見つけると、
剣を振るい上げながら次々と打ち付ける。

「まさかとは思いますが、御一人で来られたのですか?
だとしたら、見くびられた物です。」

周囲から次々と集まる異形が少女へと襲い掛かり、幾度となく斬ろうとも次から次へと増援が現れる。
灰人(オルク)の物量に不覚を取り。振りぬかれた金槌が腹部へと直撃し跳ね飛ばされた。

「ふ……ぁ!」

「ま、こんなものでしょう、御伽噺に現れる勇者気取りですか? 
たった一人で万機の軍勢を相手取るなど甚だ笑止、”神剣使い”とは
どれもこれもおつむの足らない連中ばかりだ……」

「はぁ……は……」

「ゼラーという神剣使いもそうでしたね
友人の男を捕らえ、犠牲になるよう促したら、あっさり死んでくれましたよ。
あんな取るに足らないチンピラの為にね……これだから人間と言うものは面白い」

立ち上がるロゼに遠方から放たれた火弾が飛来し、小さな体を跳ね飛ばす。
足元に転がす男の死体から射出槍を取り上げると灰人を射撃し、返す刀で敵を斬り上げる。

「仕方がない、ベアトリスを持って来い」

男が側近にそう言うと、側近は魔力を開放する為の生ける人形と化したベアトリスを、男に差し出した。
魔王の血を引くベアトリスの力により、この世に彷徨い続ける魔の魂は肉体を得て復活し、その手駒となる。
男が女を城壁で抱え上げると、空に広がる暗雲が渦巻き、周囲を光が包みだす。
勝利を確信したクロウリィは、この世ならざる者に新たな肉体を与えるため、その呪文を口にした。

「彷徨える魂よ、再びこの地に集いその力を示せ」

大地が光に包まれ周囲が魔力の源で包まれ、集められていた魂達は解放され新たな肉体を得る。

「ハッハッハ! 必死扱いて魔を狩ってきた君には申し訳ないがね
彷徨う魔の魂から幾らでも再生可能なのだよ……残念だったなッ! 豚がッ!
魔力の残りカスで出来た、貴様等人間が魔族に逆らうなど許されるとでも思っていたのかッ!」

「……」

「可哀想になぁ、君にも青春があっただろうに、
愛も欲も我慢して、その身を戦いに捧げてきたのにねぇ。
男と愛することも知らず、その身を綺麗に着飾ることも知らずに、醜く朽ちていく気分はどうかな?
意味のない努力、今までご苦労、奴隷は奴隷らしく……絶望の肥溜めの中で死んでいけッ!」

「……よくまわる舌ね」

少女がそう吐き捨て大きく溜め息をつくと、眼下の光景を眺めた魔の笑みが次第に強張る。

一人の少女を追い詰める為に行った、男のその行為は最大の誤算だった。



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