08/09/20 13:15:51
目下、日弁連は弁護士過剰問題に悩んでいる。2001年の司法制度改革で司法試験合格者を増やすこと
となり、合格者数はこの6年で2倍に増えた。ところが肝心の採用は増えず、年収300万円以下の極貧弁
護士が続々誕生。日弁連は対応策に汲々としている。消費者庁に大量の弁護士を送り込むことができれ
ば、願ったりかなったりだ。
日弁連にとってのメリットはそれだけではない。消費者庁には地方のオンブズマン組織や消費者支援
団体の協力を得るという構想もある。こうした組織には弁護士が多数かかわっており、たとえば消費者
金融への過払い金返還請求のような「需要創出」にもつながる。
全国的な過払い金返還請求ラッシュによって、それを取り扱う弁護士事務所の懐は大いに潤った。消
費者庁創設によって、第2、第3の過払い問題が起きれば、冒頭の政府関係者の懸念のように、弁護士の
「食い扶持」はさらに増える。消費者庁創設には、中央も地方も弁護士で固めて消費者行政を仕切りた
い日弁連の意図が見え隠れしている。
思い出されるのは、弁護士の中坊公平氏が社長を務めた整理回収機構(RCC)だ。弁護士の牙城と
なったRCCでは、違法な債権回収行為が発覚し、中坊氏はその責任を取って辞任する羽目になった。
消費者保護はもちろん必要な施策だが、安易な議論で消費者庁に強大な権限を持たせれば、いびつな
権力集中が起こりかねない。真に消費者のためか、はたまた弁護士のためか。「消費者庁」の存在意義
が問われている。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 津本朋子 )