09/12/06 09:39:45 dUzZ/Qv3
>>48
暗い陰惨で辛い生活をとほりぬけて来たといふ自信と誇りを、今の子どもは与へられなさすぎる。
「学園」といふ花園みたいな名称も偽善的だが、学校といふところを明るく楽しく、痴呆の天国みたいな
イメージに作り変へたのは、大きな失敗であつた。学校といふものには暗いイメージが多少必要なのである。
学校の建物も質素で汚ならしいことが必要で、何だつてこのごろの学校は、高級アパートみたいな外見を
とりたがるのかわからない。
冷暖房装置などは以てのほかで、少なくとも中学校以上は、暖房装置も撤去すべきである。かじかんだ手で
ノートをとるといふあのストイックな向学心の思ひ出を、これからの子どもはもう持たなくなるのではないか。
…何事にも感覚的享受しかできない少年期には、「精神」に接するにも感覚的実感が要るのだ。
その「精神」の感覚的実感とは、要するに「非物質的感覚」であつて、寒さであり、オンボロ校舎であり、
風の音であり、たよるもののない感じであり、すべて眠たくなるやうな「生活の快適さ」と反対なものである。
三島由紀夫
「生徒を心服させるだけの腕力を―スパルタ教育のおすすめ」より