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BS世界のドキュメンタリー 「イギリス 犬たちの悲鳴 ~ブリーディングが引き起こす遺伝病~」
09年5月29日 金曜深夜[土曜午前] 0:10~1:00 NHK-BS1
イギリスでは、犬の外見上の特徴を強調することが優先されるあまり近親交配が重ねられ、
多くの純血種の犬たちが重い障害や病気を先天的に持って生まれるケースが急激に増えている。
人間による無理な繁殖の結果、犬たちの健康が危機に陥っている現状を描くドキュメンタリー
英国で人気の高い犬種キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの多くが発症しているのが、脊髄空洞症。
七転八倒するほどの頭痛が絶え間なく続き、痛みから解放するために安楽死させるか、頭蓋骨の一部を切りひらく手術をするしかない
この犬種は心臓の疾患にも悩まされており、1950年代か60年代に発生し、
その後、繁殖の過程で多くの犬たちに遺伝してしまったと考えられている。こうした遺伝性疾患はあらゆる犬種で急激に増えている。
原因は、イギリスの「ケンネル・クラブ」の“犬種標準”にある、と王立動物虐待防止協会の首席獣医師マーク・エバンスは主張する。
これは各犬種の大きさや体型、毛の色など、満たさなければならない基準を事細かに規定しているブリーダーたちの“バイブル”だ。
標準に合わない子犬を安楽死させたり、特徴を「定着」させるために近親交配を行ったりしているブリーダーもいるという。
その結果、多様性が失われてしまうだけでなく、近親交配が免疫システムに影響を及ぼし、多くの病気を引き起こしている。
もともと犬は人間によって狩猟や牧羊などそれぞれの役割に適した姿形に改良されてきた。
その後、19世紀の半ばからは改良や繁殖を楽しむ人々が登場し、各地でドッグショーが始まった。
ところが、当時と現代の犬たちを比べるとその姿はかなり異なっている。犬たちの特徴は時代とともに誇張され、
より極端になったあげく、犬の健康そのものに影響を及ぼすようになってしまっていると獣医師たちは指摘する。
イギリスのケンネル・クラブも対策を講じ始めてはいる。
ブリーダーたちに犬の健康に配慮した交配を行うよう通達し、遺伝性疾患を調べるDNA検査の開発資金の提供もしている。
しかし規制を厳しくしすぎると多くのブリーダーが脱退して勝手に繁殖をするようになり、
まったく把握できなくなるという危険性があるため、抜本的な解決まではまだ時間がかかる。
とはいえ、美しさの追求と命の価値について早急に考え直さない限り、犬たちに未来はない。