09/12/15 12:09:19 YLIGfkOD
しかし、入社1年目には7台しか売れなかった。「田舎じゃ輸入車は売れない。会社をやめようか」とも思った。
そんな気持ちを見透かされたのか、支店長に呼ばれた。「多治見で一花咲かせてみろ。今辞めたら、どこに行っても同じ繰り返しだぞ」。迷いが吹っ切れた。
「とにかく人に会おう」。学生時代の経験を思い出した。運転免許を取りたての大学1年のとき、ガールフレンドを誘って実家の国産ファミリーカーでドライブに出かけた。帰りがけに彼女がぽつりと言った。「将来、BMWに乗れるような男になってね」
その言葉で一念発起。2年間、アルバイト漬けの生活を送り、BMWの中古を買える200万円をためた。車を見にショールームを訪れたが、学生だと分かると、誰も接客に出てこない。「金持ちじゃないと相手にされないんだ」とがっかりした。
高級輸入車という夢のある商品を売る。「夢のためにがんばる人は、どこにでも必ずいる。この人は買わないと決めつけないようにしよう」と自分に言い聞かせた。
陶器工場に勤める男性は、契約書の印鑑を押すとき、「実は10年かけてためたお金なんだ」と話してくれた。就職して半年の20歳の男性は、月々5万円払いの5年ローンで購入した。
不況にもかかわらず、今年の販売台数も100台に近づいた。「成績を落とせないプレッシャーで苦しくなることもある。でも、納車でキーを渡したときのお客さんの笑顔に、元気をもらいます」
(山根祐作)
河田哲也さん「かわだ・てつや」29歳 1980年、愛知県生まれ。名古屋経済大卒。子どものころは野球少年だった。今年、初めての海外旅行で韓国に1泊2日で行った。