08/10/07 02:06:37 s+o4CZNn0
美術館は軽佻浮薄なファッションショーの会場ではありません。
そこが軍服のデザインにこめられた、時代の中の精神・思想のありようを考察する場となってもいいでしょう。
だからジープがコンチネンタルやチシタリアと並んでも構わないし、
むしろあのチョイスにジープを選んだ人の勇気ある見識に敬意を表したいです。
ジープを美しいという表現は語弊があるかも知れませんが、デザインとしてあれほど感心させられるものも珍しい。
他の自動車には小難しい評論がつきまといますが、
ジープは道具としての合目的性をとことん突き詰めた製品として「もう文句の言いようがない」凄みがあります。
オリジナルのバンダムジープから、短期間で姿を変えて出来上がったウイリスMBのスタイルを見ると、
「元々少なかった無駄を、更にここまでそぎ落としたのか」と唸らされます。
その外見に、軍用車両一般にありがちな猛々しさより、むしろ実直な力強さと安定感を感じさせてくれるのも、見事です。
さてデザインを脇に置くと、
頑丈なラダーフレームとリジッドアクスルにトランスファー付きのドライブトレーンと単純な4気筒載せて、
簡易ボディ載っける。これで全輪駆動の万能ミニトラックを作る。
構造が単純ですから、アメリカ式のマスプロダクションシステムがあれば、しのごと言わずに必要な品質満たしてバカスカ作れる。
現に相手のドイツ側が作ったVWのキューベルワーゲンより遙かに多数が生産され、
アイク(アイゼンハウアー)をして「ジープ、ダコタ(C-47=DC-3輸送機型)、バズーカ」をWW2勝利のツールに挙げた製品です。
民生用車両とも違った、身もフタもないまでの現実主義で出来上がった自動車ですが、
あれはあれでアメリカ流の「率直な洗練」ではないかと思います。