07/09/05 13:20:36 PrlAa+zH
ヴェデルニコフという巨星の下では、
バックハウスもホロヴィッツもポリーニも、
みなその光を失う。
ヴェデルニコフのベートーヴェンは、
神秘な闇と、青白い炎と、冷たい夜風の支配する静かな湖畔に、
ただ独りでたたずむ君を、遥かな平安へと導く調べなのだ。
その調べに耳を傾けた君は、何のためらいもなく、
目前に広がる悲愁の湖の果てを目指して、小舟を漕ぎ出す。
やがて、ヴェデルニコフのベートーヴェンの調べが
遠い夜空の彼方へと、跡形もなく溶けていったとき、
闇夜に沈む湖には、人影のない小舟が、かすかに揺れていた・・・