05/05/11 07:43:15 J36m1E4x
「……来れねえんなら、しょうがねえ。俺が行ってやるよ」
そう言ってジャイアンは立ち上がり、座っていた椅子を掴むと、出来杉の横まで行った。
「昨日のことでも、まだわかってねえみたいだな!」
そう言って、持っていた椅子を高々と持ち上げると、そのまま振り下ろし頭をぶん殴っ
た。
「オイ、先生。こいつ寝てますよ?
なんか頭から血ィ出てっけど。下の救急車で、ついでに持ってってもらえば?」
「出来杉ィ!! 大丈夫か!?」
先生はそう言って駆け寄ると、出来杉を背負って教室を出て行った。
「もっかいメシでも食いなおすか―」
晴れ晴れとした声で言うと、ジャイアンは携帯で迎えを呼んだ。
そして、シズカに声をかけた。
「おう、シズカ。メシ食いに行くぞ!」
そしてジャイアンは、抵抗出来ないシズカを連れて出て行った。
982:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:43:53 J36m1E4x
第4話 夏休み課題・読書感想文
「野口英世を読んで」
5-3 剛田 剛
(注:ジャイアンです)
僕は野口英世を読んで、被害妄想の強いただのバカだと思いました。
その理由は三つあります。
一つ目は英世がまだ赤ん坊のとき、囲炉裏に落ちて、手に大火傷を負ったことについて
です。
もし僕が囲炉裏に落ちたのだったら(決して落ちるなんて、のろまなことはしないと思
いますが)、体を捻って回避していたでしょう。
はっきり言って、運動神経が鈍すぎです。誰かが助けてくれるとでも思ったんでしょう
か? 世の中そんなに甘くありません。
そんな事もわから無いようでは、社会に出ていけ無いと思います。
二つ目は学校に入ってからのことです。
983:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:44:31 J36m1E4x
クラスのみんなが貧乏な英世を見て、石を投げたり、テンボウって言ったりして応援し
てくれたのに、英世はイジメられていると勘違いしたことです。ちゃんと素直に、みんな
の応援を受けていれば良かったのに……。
かなりひねくれ者だと思いました。
人間、人の親切は無下にしちゃ行けないと思います。
三つ目は名前についてです。
清作という名前だったのに、他人にちょっと言われたくらいで、親が付けてくれた名前
を捨てるなんてとんでもない。なんて親不幸なんでしょう!
最後に―。
黄熱病の研究をしていたのに、自分がそれに罹(かか)って死んじゃうなんてアホだよ
ね。アハハハ。予防注射くらい打っておけっての!
そうすれば罹らないのに……。
984:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:45:06 J36m1E4x
第5話 夏の日の出来事
夏休み―。
下は幼稚園から上は大学生まで、学生だけの特権とも言うべき長期休みは、小学生であ
るジャイアンにも当然の如くあった。
8月も半ばを過ぎた頃、ジャイアンはいつもの様に空き地の土管の上にふんぞり返って
いた。
土管の下にはスネオが正座をして、照りつける太陽に耐えている。
「オイ! スネ夫。シズカは誰の女だ?」
土管の上からそのままの体制でジャイアンが訊く。
「そりゃもう、ジャイアンの女でしょ。誰が見たって」
「だがな、まだ正式に告白とゆーものをしてねーんだ!」
「でも、ジャイアンの女だよ。どーみたって」
スネ夫が力説する。
「だめだ! どーしたらいいと思う?」
下手なことはいえない。しばらく考えた後、スネ夫が言う。
「そうだ! 出来杉に聞いてみようよ。どーしたらいいか」
「そりゃ、めーあんだ! オイ、スネ夫。今すぐ呼んでこい!」
土管の上から全く動かずスネ夫に命令するジャイアン。
スネ夫はたち上がると、痺れた足を引きずる様に走っていく。
985:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:45:47 J36m1E4x
15分後、スネ夫が出来杉を連れて空き地にやってきた。
しかし、待ちくたびれたジャイアンは服の中に手を突っ込むと、消音装置付きの最新式
銃をぶっ放す。
パンッ―。
「ぎゃっ!」
銃から放たれた弾が、土管の前に来た出来杉の右足を貫通し、悲鳴をあげる出来杉。
「おせーんだよ! てめー、まだわかってねーのか? 俺様を待たせるんじゃねー!」
「ご、ごめん」
苦痛に歪み涙を流しながら謝る出来杉。
「あ? 何だって?」
誤り方が気に食わなかったらしい。もう一発今度は左足を打ちぬく。
「す、すいません」
「おう! わかれば良いんだ」
「うう……」
両足を打ち抜かれた痛みで立つ事が出来なくなった出来杉は、その場に座り込む。その
顔は青い。
「オイ! 大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」
「だ、大丈夫です」
「そうか。出来杉、お前を読んだのは他でもない。シズカは誰の女かと言う事だ。誰がど
ーみても俺様の女なんだが、まだ告白とゆーものをしてないんだ。どーすれば良いと思
う?」
ジャイアンの言葉に、出来杉は手帳を開くとシズカについてのデータを言う。
986:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:46:22 J36m1E4x
「僕のデータによると、昭和42年4月2日生まれ。身長は152cm、体重43kg、上か
ら72・50・70。特技はお菓子作り。とても風呂好きで―ここが重要なんだけど、
同じ服を72着持っている。それと映画版の為の服を8~10着。処女である確率は92%。
どう? 満足した? 剛君」
自分の為にストーカー紛いのことまでして、手に入れたデータを得意げに披露する出来
杉。
「ほーなるほどね。全く意味わかんなかったな」
「ジャイアン! 大変だよ」
何かに気がついたスネ夫。
「あん? 何がだ?」
「出来杉は、ストーカーだよ」
「どういうことだ?」
「ジャイアンの女である、シズカをつけまわしてるって事だよ」
「ほー、それは許せねーなー」
ジャイアンの目付きが突然変わる。
「そう言うやつには、お仕置きが必要だな」
そう言うや否や、服の中から銃を取り出し、足に5発。
「オイ、スネ夫! 帰るぞ」
「はい!」
そう言うと、2人は空き地を出て行った。
「……」
空き地には両足から大量の血を流し、うずくまる出来杉の姿があった。
987:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:47:07 J36m1E4x
第6話 ジャイアン燃ゆ in ゲーセン
ある平日の日の、昼下がり。ジャイアンは部屋で横になり、ハナクソをほじり、それを
食しながらBGMに昼のワイドショーをつけ、マンガを読んでいた。
そこに母ちゃんが、掃除機を片手に入ってくる。
「タ、タケシ……掃除したいんだけど、いいかい?」
すっかり毒気を抜かれた母ちゃんは、青ざめながらビクビクと身体を震わし訊ねる。
「あぁーっ?」
母ちゃんの声に、ジャイアンの眼光が鋭く光る。
ジャイアンは目をかっと見開き、母ちゃんをドスを効かせた声を発しながら睨みつける。
「ひっ―!」
その鋭い眼光に、母ちゃんは先日の光景を思い出し、足をもたつかせその場に尻から倒
れ込む。
「ババァどうしたんだよ? そんな所に倒れ込んだりしてよー」
ニヤニヤ不敵な笑みを浮かべながら、床にへたれ込んだ母ちゃんを見下ろす。
「ひ、ひー。ご、ごめんよ~」
「あぁ?」
「ひっ! な、何でもないよ」
ジャイアンの発する言葉に一つ一つに、反応する母ちゃん。以前の面影は全くない。
「まあいいや。どっか行くから、しっかり掃除しとけよ!? 手ー抜いたりしたら……わか
ってんだろうな? ババァ」
最後の言葉にドスを効かせ睨みつけながら、懐に手を突っ込み愛銃をちらつかせる。
「ひっ―! は、はい!」
「わかってんならいいんだよ。じゃあ、ちょっくらでかけてくっからな」
そう言うと意気揚揚と家を出るジャイアン。
家には精魂付き、既に生きる屍と化した母ちゃんが、うつろな表情で笑っていた。
988:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:47:37 J36m1E4x
家を出た所でジャイアンは金を持っていないことに気がついた。
これでは遊ぶにも何も出来ない。
そしてジャイアンが向かった先は―スネ夫の家。
「スネ夫、遊ぶぞーっ!」
スネ夫の家の前に着いたジャイアンは、門を蹴破り庭に侵入すると、部屋に向かって大
声で叫ぶ。
「これから家庭教師が来るからー!」
ジャイアンの声に青ざめた表情のスネ夫が窓越しに叫ぶ。
もちろんジャイアンと遊びたくないが為のスネ夫の言い訳だが、ジャイアンにはそんな
もの通じない。
「ああっ!? テメェふざけた事抜かしてんじゃねーぞ? そんなの、そいつも一緒に遊べ
ばいいんだろ、簡単だ。解決! 早く降りてこいよ!」
スネ夫は泣く泣く、定番のラジコンを持って登場。
しかし、それを奪い取ると、
「こんなのつまんねーんだよ。やっぱ、今はゲーセンだろ、ゲーセン!」
そういって、地面に叩きつけ踏みにじる。
「あ、ああ……」
こなごなに砕け散ったラジコンを手に取り、涙ぐむスネ夫。
「テメェ、なんか文句でもあんのかよ? オイ! 言ってみろよ」
「な、ないよ……。うん、そうだね。今はやっぱりゲーセンだよね、ジャイアン」
引きつった笑みを浮かべるスネ夫。
「お、わかってんじゃねーか。行くぞ、スネ夫! もちろん、テメェの金でな」
「わ、わかってるよ」
その言葉に下卑な笑みを浮かべるジャイアン。
ジャイアンとスネ夫は家を出て、ゲーセンへ。
989:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:48:06 J36m1E4x
ゲーセンに入る。入り口付近でゲームをしていた人たちの動作が止まり、次の瞬間誰も
いなくなる。
「お? 空いてんなー。おーし、遊びまくろうぜ」
そういってスネ夫の肩を叩く。
「そ、そうだね」
スネ夫が両替をしに行ってる間に、早速ゲームを始める。
まずはダンスダンスデボリューション。流行りのダンスゲームだ。
「お、お、お……お?」
音楽が流れ矢印に合わせてステップを踏むジャイアン。しかし、全くリズムがあってな
い。すぐにNot Cleardの文字が画面中央にあらわれる。
―刹那。ガン! という音がしたと思うと、筐体から煙が上がっていた。画面は真っ
暗になり何も写していない。ジャイアンが蹴りを加えたのだ。
「おい、店員っ! 壊れてんぞ、これ」
「は、はい。すいません」
「ちゃんと、直しとけよな」
自分で壊しておきながら、そう言い放ち場所を移動するジャイアン。
今度はクレーンゲームに挑戦。
しかし、その動きが鈍いことに腹を立てたジャイアンは、ガラスをぶち破り、中の商品
を奪い取る。
「店員ー。これ危ないから片しておいたほうが良いぜ?」
両手に一杯の商品を抱えながら、またもや場所を変えるジャイアン。
次は何をしようかと、店内を歩いていると両替をすませたスネ夫が百円玉を大量に持っ
て現れる。
「おー、スネ夫。つまんねーよ、こう何かスカッとするようなゲームねえのかよ?」
「え? じゃ、じゃあ格ゲーなんてどうかな?」
「お、面白そうじゃねえか。行くぞ!」
スネ夫の手にあった大量の百円玉を奪い取ると、格ゲーコーナーへ向かうジャイアン。
スネ夫もその後に続く。
990:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:48:46 J36m1E4x
格ゲーコーナーに着くや否やすぐさま乱入。実拳4というゲームだ。
「楽勝!」
といいながら、あっという間に1ラウンドとられるジャイアン。
そして2、3ラウンド目も全く相手にされず、ボコボコにされる。
『You Loss』画面に文字が浮び上がる。
「壊れてんじゃねーのか? これ」
ジャイアンがそう言って、筐体に蹴りを加えようとしたその時。
991:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:49:28 J36m1E4x
「自分が弱いのに、機械のせいにしてんじゃねーよ」
反対側の席、つまり乱入相手からこんな言葉が発せられる。
店員を含めまわりにいた人達の顔が見る見るうちに蒼白になる。スネ夫は這這(ほうほ
う)の体で逃げ物陰に隠れる。
ジャイアンの顔が見る見るうちに怒気を孕んで赤くなる。
そして反対側にいくとそこに座っていた中学生に殴りかかる。
「い、いてーな。何しやがる!」
頬に手を当てながら怒鳴る中学生。どうやらジャイアンを知らないらしい。
「あぁ? テメェふざけんのも大概にしろよ? 俺は実践の方が得意なんだよ!」
そう言い放ちまだ床に倒れ込んだままの中学生を、殴る殴る殴る殴る殴る殴る。
そしてトドメと言わんばかりに、既に動かなくなった中学生の腹をを蹴る。
「うっ―」
鈍い悲鳴を上げ胃の中身を吐き出す中学生。
スネ夫はジャイアンの狂気を見た。
「スッキリしたぜ。おい、帰るぞスネ夫」
「は、はい!」
物陰に潜んでいたスネ夫が飛び跳ねるように、ジャイアンの元へと走る。
「お、そうだ。店員! 救急車呼んだ方が良くないか? 何か具合悪いみたいだぜ、こい
つ」
床に寝そべり全く動く気配のない中学生を指差し言う。
「え!? そ、そうですね……」
急に声を掛けられた店員は、声を裏返らせ応える。
「じゃぁな、また来るぜ!」
そう言い残しジャイアンはゲーセンから出て行った。
ゲーセンから笑い声が消えていた。
ジャイアンの去った後、このゲーセンが閉店したことは後日談である……。
992:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:52:08 AtHCn5Ss
第7話 ジャイアン、メジャーデビュー!?
「おい、スネ夫! カラオケ行くぞ」
授業が終わるなり、ジャイアンはスネ夫を捕まえると言った。
「え? あ、う、うん……」
スネ夫に拒否する事は出来ない。それはジャイアンの目が物語っている。
「だったら、早くしろっ! テメー、俺を待たすんじゃねーよ」
「で、でも、これからホームルームだし……」
「あぁ? なまいってんじゃねーぞ。んなもんは無視だ、無視」
そう言って強引に連れていくジャイアン。
「ま、待ってよ、ジャイアン」
「あ―!?」
ジャイアンの眼光が鋭く光る。
「ひっ! ご、ごめんよー。でも、カラオケ行くんだったら、大勢の方が良くない?」
「お! それもそうだな。おい、テメーら行くぞ」
そう言って、教室いっぱいに聞こえるデカイ声で、ジャイアンが言う。
クラス中の恨めしそうな視線が、スネ夫をとらえる。
しかし、それを口にする事はできない。ジャイアンの目の前では、それは死を意味して
いた……。
ガタガタ―ッ。
と、音をたて椅子から一斉に立ち上がる。
「……」
無言でランドセルを背負うと、教室から順に出ていく。
と、職員室から教室へと向かう先生の姿が目に入って来た。
993:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:52:40 AtHCn5Ss
オッレッはジャイアーン、ガーキ大将ー♪
天下無敵の、男だぜー♪
ご機嫌なジャイアンの歌声が廊下を通じて、学校全体に響き渡る。
思わず耳を塞ぎたくなるのを堪える、スネ夫他三十数名―。
「おい、こら! 剛田! どこへ行くんだ?」
クラスメート全員を引き連れて、廊下を闊歩するジャイアンを見止めた先生が声をかけ
る。
「あぁ!?」
その言葉にドスを聞かせた声で反応し、鋭い眼光を光らせるジャイアン。
「うっ……」
その眼光に、思わず腰が引け逃げ腰になる先生。
「てめー、学習しねぇやつだな? 俺様に向かって何ほざいてやがんだ?」
そう言うが早いか、ジャイアンの拳がうなる。
ドガッ―!!
その瞬間、先生の身体が宙を舞い、壁へと打ち付けられる。背中を打ちつけたショック
で、肺から息の漏れる音が聞こえる。先生の眼鏡が顔から外れ、廊下へと転がり落ちる。
それをジャイアンは踏みつけると、怯えた目で子猫のように震える先生に向かって留め
の一撃―蹴り―を加えた。
ヒュウという肺から息の抜ける音がした後、先生は涙目のまま白目を向き、頭を垂れた。
994:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:53:06 AtHCn5Ss
「たく、手間取らせやがってっ!」
その姿を一瞥すると、ジャイアンは無慈悲な一言を浴びせる。
「……」
クラスメート達は、青ざめ身体を震わせながら、一言も言葉を発することは出来なかっ
た。その中で、唯一スネ夫だけが、ジャイアンに向かって話し掛ける。
「さ、さすがジャイアン! いつもうるさいと思ってたんだよ。きっと、ジャイアンの歌
を妬んでたんだね」
調子のいいことを言って、ジャイアンに媚びる。
「おう、スネ夫か。そうだな~、俺様の歌はうまいからな~」
その言葉にジャイアンもご機嫌だ。
「んじゃ、気を取り直して、てめーら行くぞっ!」
そして、ジャイアンはまたいつもの歌を歌いながら、カラオケBOXへと向かうのだっ
た……。
995:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:53:38 AtHCn5Ss
学校から町への道中、飽きることなく同じ歌を歌いつづけるジャイアン。
その後方を引きつった笑顔を浮かべながら、金魚の糞のように付き従うクラスメート達。
事情を知らない町の人からすれば、さぞ奇怪な光景に映るだろう。
しかし、それでも誰一人として声をかけないのは、ジャイアンの歌のせいであった。
既にジャイアンの通った後には、歌の餌食になった住民の屍が山のように出来上がって
いた。
「おい、スネ夫! どこにあるんだ、そのカラオケBOXってのは?」
「も、もうすぐのはずだよ。ジャイアン」
「ああ? てめー、さっきもそういってたじゃねーか、あんましふざけた事抜かしいてる
と、殺すぞ?」
特製のランドセルから、愛用のトラレフを取り出しスネ夫の顔面に向ける。
「ひーっ!」
ジャイアンは我慢の限界にきていた。鬼の形相にスネ夫が震え上がる。
「あ、あったよ! ジャイアン!」
救われたとばかりに、飛び跳ねながら目の前の看板を指差すスネ夫。
「いらしゃいませ!」
扉を開けた瞬間、店員のさわやかな声が店内に響き渡る。しかし、次の瞬間店員の顔が
曇る。
「坊や達、保護者の人はいないのかな?」
小学生のみで来たため当然の反応だろう。店員が先頭のジャイアンに向かって坊や呼ば
わりする。
その光景に後に続いたスネ夫達の表情が固まった。
「あぁん? おい、おっさん! てめー誰に向かって物言ってんだ?」
機嫌よく入っていたジャイアンの表情が一変し、鬼の形相と化す。
「お、おっさん? 保護者がいないと君達だけじゃダメだっていってるんだけど?」
ジャイアンの睨みをかわすように、対応する店員。
その態度に気の短いジャイアンが切れた。
「良いから、俺らに歌わせりゃ良いんだよっ!」
そう怒鳴りつけながら、トカレフを抜き出しぶっ放す。
そのうちの一発が店員の頬を掠めた。店員は腰をかがめたままの姿勢で固まり、表情も
変えずに青ざめていた。
996:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:54:13 AtHCn5Ss
「しかたねーな、ちょっと待ってろ! 誰か大人を呼べば委良いんだろ?」
一発ぶっ放したことで満足したのか、そう言うと、携帯をとり出し誰かを呼び出した。
「……」
店員は言葉を発することが出来ず、そのままの格好でただうなずくだけだった。
「おう。ケンか? 今からカラオケにこいや! 今すぐだ、いいな? またせんじゃねー
ぞ」
そういって一方的に電話を切るジャイアン。
それから五分もしないうちにケンはやってきた。
「おせーぞ、ケン! 待たせるなといっただろうが!」
「す、すいません」
全身黒ずくめのヤクザは身をちじこまらせ謝っている。
「ちっ、まーいいや。おぃ、にーちゃん! これで良いんだろ? 早く案内しやがれ。俺
は気が長いほうじゃねーんだ」
そういって、手にしたトカレフで店員の頬を軽く叩く。
「ひっ! こ、こちらへどうぞ!」
それまで固まっていた店員は、飛び跳ねるように背筋を伸ばすと、カウンターの中から
マイクとリモコンを持って一番大きな部屋へと案内した。
「こ、こちらです。ど、どうぞ、ごゆっくり」
それだけ言うと、逃げるように部屋から立ち去る店員。
「おお~、なかなかいい部屋じゃねーか」
その様子を気にすることなく、機嫌よく画面真正面の席を陣取るジャイアン。
そして、しずかちゃんの方を見ると手招きをする。
「おい、しずか。こっちこい!」
ジャイアンの仕草に怯えながら、ジャイアンの隣に座るしずかちゃん。そのまま肩に手
を回すと抱き寄せる。
「おぃ! マイクよこせ。マイク!」
「どうぞ」
既に用意していたケンが、その声に答えマイクをジャイアンに差し出す。
「おう、ケン! 気が利くじゃねーか」
ご機嫌なジャイアン。しかし、それもつかの間の出来事だった。
997:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:55:01 AtHCn5Ss
リモコンを持ちながら、ジャイアンの顔が徐々に赤みを増し、鬼の形相へと変化してい
くのがわかる。
「ふざけんな! 店員読んでこい、店員! なんで俺様の歌が入ってねーんだ?」
当然である……。CDも出ていないジャイアンの歌がカラオケに入っている方がおかし
い。しかし、そんな理屈はジャイアンには通じない。
逆に状況を悪化させるだけである。
「ジャ、ジャイアン。ちょっと待ってて、今パパに頼んでみるから」
このままだとジャイアンが暴れると察したスネ夫が、仲裁に入る。
おもむろに携帯を取り出すと、話し始めた。
「あ、パパ? お願いがるんだけど。誰かミュージシャンつれてきてくれないかな? テ
レビカメラも一緒だともっと良いんだけど」
「スネ夫~」
テレビカメラという言葉に過敏に反応し、喜びの表情を表すジャイアン。
「え? 無理? そんなこといわないでよヨ! 息子の一大事なんだから、良いから早く
町のカラオケにいるからね!」
そういうなり電話を切るスネ夫。
「……」
横目でジャイアンを見るが、うつむいていていまいち表情が読み取れない。
「スネ夫~! 俺は今、もーれつに感動しているぞ! 心の友よ~!!」
ジャイアンは顔を上げると、そういってスネ夫に抱きついた。
「く、苦しいよ。ジャイアン!」
しかし、スネ夫は首をしめられる格好になり、苦しみ悶えていた……。
「お待たせしました~! スネ夫さんはいらっしゃいますか?」
それから十五分程してテレビ局の人とミュージシャンがカラオケBOXに到着した。
早速、演奏の準備に取り掛かるミュージシャン。
スネ夫が用意していた楽譜を手渡す。
それを見たジャイアンが急に立ち上がった。その瞳は、子供の様に光り輝いていた。
「スネ夫!」
「な、なに?」
いきなり名前を呼ばれ動揺するスネ夫。
「今からステージ衣装に着替えてくるから、待ってろ!」
そう言うと、側に控えていたケンを呼びつけると、ステージ衣装を取りに行かせた。
998:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:55:38 AtHCn5Ss
それから十分もしないうちにケンが戻ってきた。手にはまるで西○秀○のような派手な
衣装が綺麗にたたまれていた。
「剛さん、お待たせしました」
「おう! 待ってたぜ」
ジャイアンは引ったくるように衣装をとると、隣の部屋に行き着替え始めた。
隣の部屋の入り口には何時の間にか、「控え室」の張り紙がしてあった。
ケンがスネ夫に合図をする。
ジャイアンの準備が整った合図だ。
それを見たスネ夫が、テレビ局の人に合図を送る。
「みなさん、こんばんは。今日はここ、カラオケBOXに来ています」
スネ夫の合図で、司会者と思しき人物がカメラに向かってしゃべり始めた。
「なぜ、こんなところにいるかって? 実は、ここに今すごいスターが来ているそうなん
です! これから実況生中継を行いたいと思います」
司会者のテンションが上がっていく。
「それでは、登場していただきましょう! 剛田剛さん! どうぞー!!」
それに合わせミュージシャンがギターやベース、ドラムでジャイアンの登場を演出する。
「今日はありがとう!」
派手な衣装と化粧で身を包んだ、ジャイアンが登場する。手にはマイマイクを持ってい
る。
「早速、聞いてくれー!」
生演奏による、イントロが流れ始める。
そしてその次の瞬間、平和だったお茶の間は地獄絵図と化した……。
999:ドレミファ名無シド
05/05/11 07:56:24 AtHCn5Ss
オッレッはジャイアーン、ガーキ大将ー♪
天下無敵の、男だぜー♪
ジャイアンの歌が公共電波に乗って、全国へと生放送された瞬間だった。
あまりの大音量のためボエ~としか聞こえないその歌は、たちまちお茶の間を駆け巡り、
被害者を増やしつづけた。
と同時に、視聴率八十%という驚異的な数字を叩き出していた。
言うまでも無いと思うが、これはザッピングしジャイアンの歌を聴いた瞬間に倒れ、チ
ャンネルを変更できなくなったために起きた現象である。
しかし、ジャイアンにはそのことは伝えられず、この放送自体が世間的に抹消されたの
は言うまでも無い。
「さんきゅー!」
ジャイアンが歌い終わった後―。
そこには、もがき苦しみ倒れこんだ人の山が散在していた。
ただ一人、ジャイアンを除いて……。
1000:1000ゲトー
05/05/11 08:01:08 r+cOnKzm
と言う夢だったとさ☆
1001:1001
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