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ベルダ(6月25日発行)
2008年7月号
【流行流言への一撃】家庭と地域―社会保障の基礎 西部 邁
家庭と地域―社会保障の基礎
「老人漂流」などと題されて、今の医療改革が貧困層に過大な負担をかけることへの批判が高まっている。「後期高齢者に死ねと
いうのか」といった抗議の声までもが挙げられている始末だ。
こうした状況にあっては、「もうじき死ぬはずの年齢層を後期高齢者と呼ぶのだ」「後期高齢者は、自らの誇りにかけて、おのれの
死に方について今から準備しておくべきだ」などと客観的な発言をしてみても始まらぬ。それどころかそんな発言は人非人の所業と
みなされてしまう。
と承知しつつも、かかる結果に至った「平成改革」を主導してきた年齢層は、今、後期高齢者になりつつある人々だ、ということく
らいは確認しておきたい。また、彼らの子供、孫、曾孫は、これから金融危機、食糧危機、エネルギー危機、環境危機によってかつて
ない苦難に落とし入れられるにきまっているのだから、後期高齢者よ、少しは後世のことに思いを致せ、とつけ加えてもおきたい。
もちろん、現下の医療改革が杜撰をきわめていることはあらためて指摘するまでもない。だが、なぜこんな顛末になったのかを冷静に
把握しておかなければ、適正な社会保障体制がこの列島に敷かれるべくもない。これまで繰り返されてきた役人バッシングに、屋上屋
を架してみたとて詮ない話だ。
この新世紀が始まった頃には世界一の水準にあった日本の(医療制度をはじめとする)社会保障体制を破壊したのは、ほかでもない
「小泉改革」であった。それに拍手喝采したのは日本人自身である、というところから議論を起こさなければならない。