08/05/30 14:42:03 dzALgaq7
【流行流言への一撃】有害場が列なす日本列島 西部 邁
有害場が列なす日本列島
インターネットの「出会い系サイト(場所)」とやらで、硫化水素自殺の勧誘が行われているという。しかし、
そんなことは今では陳腐な出来事にすぎない。「ネチズンの時代」ともてはやされてきたこの高度情報社会、
つまりネット情報がとどまることなく氾濫する現代社会において、犯罪サイトや不道徳サイトが広がっている
のは周知の事実だ。それに詐欺すれすれの証券取引サイトも加えれば、ネチズン(ネット上に棲まう市民)が
「反秩序」の性向をもつ精神的「障害」にかかっていることは疑うべくもない。
そこで、かかる「有害サイト」を規制すべく、与党のなかに(高市早苗議員を中心にして)議員立法の動きが
あるという。ところが、この動きに素早く反発して、野党はもちろんのこと与党のなかですら、「言論の自由を
抑圧するな」とか「業界の自主規制に任せよ」といった声が高まっている。「罪」を防止するのは「罪人」の自己
責任というに等しいこれらの反発をみていると、「自由の履き違え」もここまでくると、一つの立派な罪だといい
たくなる。
たしかに、「罪」には宗教的なスィン、法律的なクライム、そして文化的なイムモラリティの別がある。最後の
「不道徳」については、一つに、それを判別するための価値基準を明示するのが難しく、二つに、不道徳を
ひそかに楽しまぬ人間などは稀なのであるから、不道徳にたいする政府規制には重々の配慮が必要である。
そのことは認めてもよい。しかし、道徳という言葉がまだ完全な死語になっていない以上、道徳が何を意味す
るかについて、人々のあいだに大まかな共通見解があるに違いない。また、不道徳に愉悦を覚えるのが人間
の本性なのだとしても、規制の網の目を巧みに潜り抜けてこその愉悦ではないか。