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芦部信喜 『憲法学Ⅰ』 有斐閣
p.259
3 戦争放棄に関する主要な見解
(2) 一項・二項全面放棄説(B説)
九条一項は侵略戦争を放棄し、自衛戦争・制裁戦争を放棄していない(この点はA説と同じ)。
しかし、二項の「前項の目的に達するため」とは、「前項を定めるに至った目的」、すなわち
「日本国民、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という箇所を受けて、戦力
不保持の動機を示すものにすぎず、戦力不保持は無条件に規定されている(この点がA説と
大きく異なる)。さらに交戦権(交戦国としての諸権利)まで否定している。したがって、
「警察力」によって自衛措置を講ずることはできるが、「戦力」を保持しない以上、自衛戦争
を行うことも制裁戦争に参加することも不可能である。
このB説は学説の多数説である。
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p.261
このように考えてくると、B説ないしC説を妥当とすべきである。両者の結論は異ならないが、
長年にわたる国際法上の用例にも配慮したB説が多数説であり、私はその説をとる。
政府もほぼその立場に従っている。ただし、自衛権に基づき一定の実力部隊による自衛行動
をとることは可能とする。これは「自衛権」と「戦力」に関する考え方が、B説ないしC説を
とる学説の多数と大きく異なることに基づく。
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上記にいう
A説とは、限定放棄説、すなわち自衛戦争は憲法上可能とする説
C説とは、一項全面放棄説、すなわち一項ですべての戦争が放棄されているとする説
を指します。