08/01/04 23:14:56 NoKAjHhA
「明日・・・・ あの部屋に行くわ」
ごく静かな言葉に、少年は黙って頷いた。
翌朝、いつも通りの朝食をとった二人は、かつて同じ時を過ごした葛城家へ
と向かった。シンジの手には、アスカに言われて用意した大きなビニールシー
トがあった。それを自分の部屋の床に敷く彼女を、シンジも黙って手伝った。
「さてと、これで準備良しと・・・・ 汚したくないもんね、わたしの大切な
思い出」
あの日から机の上に置かれたままだった拳銃を少年に渡し、アスカは部屋の
真ん中に座る。背後に回ろうとする少年に、アスカははっきりと首を振った。
「一人になるのは嫌・・・・」
「うん・・・・ わかった」
彼女の目前に立って、シンジは手にした拳銃を構えなおした。じっと自分を
見つめている蒼い瞳から、思わず視線を外しそうになる。それでも、今度こそ
少年は逃げることはなかった。
「ほんの少しだけ、先にいって待ってて・・・・ 僕もすぐにいくから・・・・」
そっと頷いたアスカの姿が、不意にぼやけて見える。
「ね、シンジ・・・・」
「・・・・うん・・・・」
彼女の最後の言葉が、少年の鼓膜を微かに震わせた。
「ありがとう・・・・ 素敵な夢を見させてくれて・・・・」
そして、いつしか雨が降り始めた。誰もいなくなった街に、静かな雨音を立
てて・・・・