08/08/21 02:39:22 0
>>118
コラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日本酒マニアには、必ずぶつかる壁があるという。酒のうまさは品評会で口
に含む利き酒と、実際に飲むのとでは相当に違って感じられる。また、
口開け後の吟醸酒は飲み頃で個体差が大きいのに、銘酒を多く揃える居酒屋
では何本もの封が開けられたまま一律に管理され、売り切られるまで数日を
過ごす。だから語られることと飲んだ実感はどうしても違ってくる。
そこでうんちくも前評判も関係なく、練達の管理者が供する銘酒を自分の
舌だけで味わってみたくなる。そんな真の酒好きが味覚を鍛えるために集う
道場のような居酒屋が、「たまねぎや」だ。
店は最寄りの駅が地下鉄神楽坂だが、相当ややこしい場所にある。しかし
足を運んだ日本酒マニアは、のれんをくぐってまず唖然、次に陶然とするだろう。
一般の銘酒居酒屋がもったいつけて出し渋るような、飲み口で最上との評価ある銘柄
ばかりが安価(適価)で勢揃いしているのだ。
どれほど凄さか。この日飲んだものを列挙しておこう。磯自慢純米吟醸中取り
(グラスで800円。以下同様)。十四代純米吟醸(450円)。初亀斗瓶取り
97年もの大吟醸(1380円)。義侠「慶」当たり年の92年もの(1380円)。
初亀三年古酒「亀」97年もの(1380円)。締めは東一純米大吟斗瓶取り「選抜」
97年もの(1380円)。いずれも一滴一滴が宝石ような傑作であり、思わぬ方向に
飲む者の味覚をつれ去ってゆく。酒肴は釣り鯖・生け烏賊・カマ(大)トロの刺し身ほか、
「あんきものソテーうにソースかけ」(1800円)、「わさびの茎の醤油漬け」(600円)など、
ツボを心得た品が完備している。
主人の木下隆義氏は、ワインでは当然とされ数千年の歴史がある流通側による品質管理を
吟醸酒でも実行している先駆者で、斯界では知られた人物。自宅と店にずらり並んだ冷蔵庫で、
蔵元にもなくなった毎年の吟醸酒がどのように熟成してゆくかを日々検証している
。眼光鋭くちょっと見は怖いが、真剣に飲む客を見る目は優しい。日本酒の最前線を発信する名店だ。