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関係当局は金融システムの動揺防止に細心の注意を払ってほしい。米証券大手ベアー・スターンズ傘下のヘッジファンドが6月末、
サブプライムローンを組み込んだ商品で損失を被り、投資家の解約に応じられなくなった。他の米英のファンドにも、解約に応じられ
ないところが出ている。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスはサブプライムローンを元にした金融商品を格下げし
、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)も格下げ方向での見直しを発表した。カネ余りの下で融資規律が緩んだことに、問題の根
がある。「忍者ローン」と呼ばれた、安定収入、職業、資産不要の住宅融資が米国では昨年まで横行していた。住宅価格が上がり
続けたことで、バブル期の日本のように「いずれは転売できる」といった甘さがまん延していた。サブプライムローンの半分以上が
住宅ローン担保証券(RMBS)の形で転売された。そのRMBSを元に債務担保証券(CDO)などが組成された。利回りが高かっ
たので、投資家が積極的に購入した。今年1―3月にはサブプライムローンの不良債権比率が8.45%に上昇するなど、元となる融
資の焦げ付きで金融商品の価値も下がりだしたのだ。金融技術でリスクまでなくなったかのように錯覚していた投資家は、改めて
「リスクなければ収益なし」という冷厳な現実に直面しているはずだ。格付け会社が金融商品のリスクを正確に評価していたのか、
という問題も提起されよう。経済実態を離れて上がった米住宅市場の調整は避けられまい。日本の「ゆとりローン」に似た、最初の
数年だけ金利を抑えるローンは、来年当たりから支払金利が高くなるだけに、サブプライム問題は今後も尾を引こう。住宅ローン関
連の金融商品の仕組みは複雑で、広範な投資家が購入している。そこを震源地として金融システム全体が揺らぐ事態は防がなく
てはならない。この点で米当局と金融機関の責任は重大だ。12日の日銀の金融政策決定会合でも米サブプライム問題が議論され
た。金融がグローバル化するなか、日米当局の密接な情報交換は欠かせない。日本の地方金融機関などにもRMBSやCDOに投
資したところがあり、経営者は青くなっている。金融庁も再点検を急ぐべきである。
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