06/12/08 21:35:39 BE:499754939-2BP(0)
僕が受話器を持ち上げるまでに、ベルは8回鳴っていた。
誰からだろう、と僕は思った。でも、わからなかった。
「もしもし、日本銀行の者ですけど、ちょっと説明会に
きませんか」と電話の向こうの男は穏やかな口調で言った。
「ちょっと待って」と僕はあわてて言った。「あなたはたぶん電話番号を
間違えていると思う。あなたはどこの大学の人間に電話したんだろう?」
「んーと、待って下さいね」と彼は言って、受話器からメモを取り出すような
音が聞こえた。「えーと、帝京大学のところ・・・」
僕だった。「僕です、それは」と僕は言った。
「じゃあ、間違ってないじゃないですか」
「ちょっと待ってください。確かに僕のところにかかってきた電話です。
でも僕には全然理解できない。あなたはどうして僕ところに電話したんだろう?」
「掛けるように言われたからです」と彼は当然という口調で言った。
「誰に?」
彼は一瞬言葉に詰まり、「君に好意を持っている匿名のレディに。その人が上司に
命令してきたんです。分かるでしょう、どういうことだか?」
あのマダムだ、と僕は思った。これがホストクラブの客の彼女が言っていた
「プレゼント」なのだ。学力が足りないために家庭教師ができなかったのも
すべてはこの出会いのためだったのだと僕は理解した。