06/11/27 14:35:36
『週刊現代』の先週のコラムで高橋源一郎さんが「テレビが消えた」という話を書いていたからである。
半世紀にわたるテレビ視聴を止めて、5年愛用したソニーのテレビを知人に譲り、高橋家はいま
「テレビのない生活」に入っている。
その理由を高橋さんはこう書いている。
「ある日、タカハシさんは、長男と一緒に、ぼんやりとテレビを眺めていた。そして、ちらりと、
テレビの画面を見つめている長男の顔つきを見て、愕然としたのである。
長男は床に猫背になって座り、口を半開きにして、顎を突き出し、ぼんやりと澱んだ瞳で、画面を見つめていた。
タカハシさんは、長男の名前を呼んだ。反応がない。もう一度、呼んだ。まだ反応がない。そして、
三度目、ようやく、長男は、タカハシさんの方を向いた。その瞳には何も映っていないように、タカハシさん
には見えた。まるで魂が抜けてしまった人間の表情だった。」(「おじさんは白馬に乗って」
第23回「テレビが消えた」、週刊現代11月18日号、65頁)