17/03/22 21:07:14.27 CAP_USER.net
日本に観光ビザで入国した中国人について、本国に帰国したことを示す「帰国報告書」の提出が2015年の1年間で約57%にとどまっていることが観光庁などへの取材で分かった。
14年の約72%に比べ大幅に低下した。帰国報告書は不法残留の防止などを目的に旅行客を受け入れた旅行会社に提出が義務づけられているが、制度が形骸化している実態が浮かんだ。
中国から日本への旅行は長年、親類訪問や商用などに限られていた。日中両政府は中国人が帰国したことを証明する帰国報告書制度の導入で合意し、00年に団体観光旅行が解禁された。09年以降解禁した個人旅行でも提出義務がある。
観光庁によると、帰国報告書の提出件数は14年は109万7316件。同年中の観光ビザ発給件数は151万7896件(件数はいずれも期間中複数回来日できる数次ビザ分を除く)で、ビザを取得した全中国人が来日したと仮定して計算すると14年の提出率は約72%。
15年の帰国報告書提出件数は175万8365件で、全観光ビザ発給件数(308万3707件)の約57%に低下した。13年以前は電算化されておらず通年のデータがない。
日中両国の合意によると、中国から日本に観光で入国する場合、団体でも個人でも必ず日本の指定旅行会社が介在し、帰国報告書を観光庁に提出する義務がある。
提出が遅れると罰則があり、一定期間受け入れを禁じられたり、指定を取り消されたりする。提出遅れと旅行者の失踪などが複合した場合に罰則を適用した例はあるが、提出遅れのみを理由にした適用例はない。
日本政府観光局によると、00年に来日した中国人観光客は4万5270人。15年には423万7920人と100倍近くになった。
中国人旅行客の激増が提出率悪化の背景にあり、観光庁外客誘致室の笈田(おいた)雅樹室長は「今の時代に合っているかという問題意識はある。今後どうするべきか協議したい」と話す。
法務省入国管理局によると、国内の中国人の不法残留者数は13年(1月時点)に過去最少の7730人まで減ったが、今年(同)は4年連続増の8846人。
帰国報告書
旅行者の氏名や性別、旅券番号、旅行期間などが記載された書類。日本の旅行会社が、中国人が帰国する際に利用する飛行機や船を運航する会社に押印してもらい作成する。
ポイント制の罰則制度があり、遅れると1通につき1点の減点。15日を超えた遅れは5点の減点。5点減点されると1カ月間、8点なら半年、10点なら1年、受け入れが禁止される。減点が20点に達し、かつ過去1年間に一度に5点の減点があれば指定が取り消される。
旅行会社「正直者がばかをみる制度だ」
「正直者がばかをみる制度だ」。提出率が100%という福岡市に事業所を置く中堅旅行会社の担当者は憤る。この会社は各空港にスタッフを派遣。自社あての封筒を航空会社に渡し、押印して投函(とうかん)するよう要請している。「郵便代も負担している。不公平だ」と担当者は話す。
一方、九州に本社を置く中国系旅行会社の幹部は「罰則が適用されることはないし、コストをかけてまで提出率を上げる意味が分からない」と語った。観光庁への提出は旅行者任せで、提出率は5割程度にとどまる。
早稲田大の戸崎肇教授(観光政策)は「ルールがある以上、罰則を科すべきだ。一方で、中国人観光客の激増を考慮すれば制度が機能しなくなることも理解できる。帰国報告書に旅行の感想を書いてもらうなど、意義のある制度に変えることも重要だ」と指摘した。
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