17/03/07 00:39:49.95 CAP_USER.net
重症化すれば「死に至る恐ろしい病」として、古くから知られてきた性感染症「梅毒」。名軍師の黒田官兵衛をはじめ、歴史上の戦国武将のなかにも梅毒にかかって命を落としたとされる例は多い。
この梅毒の感染者が近年、日本国内で急激に増加し、大きな問題になっている。国立感染症研究所は今年1月、昨年1年間の梅毒患者数が4518人に上ったと発表した。梅毒の感染者が4000人を超えたのは、1974年以来42年ぶりのことだという。
なぜ今、梅毒の感染者が急増しているのか。性感染症の臨床分野の権威であり、梅毒の症例について詳しい泌尿器科専門医の尾上泰彦氏は、「現在の梅毒の患者数は、氷山の一角にすぎません」と指摘する。
「東京の若い女性」の梅毒患者は5年で約25倍に
梅毒が最初に流行したのは15世紀末のこと。新大陸を発見したクリストファー・コロンブスが現地の風土病だった梅毒をヨーロッパに持ち帰り、それによって世界中に広まったというのが定説だ。日本でも江戸時代に遊郭が発達したことで広がり、その後、1940年代には感染者が20万人を超えるなど爆発的に流行した。
しかし、第二次世界大戦後の45年に抗生物質のペニシリンが民間に開放されたことで梅毒の患者数は一気に減少。90年代には年間の患者報告数が600人を下回るなど、長らく横ばい状態にあった。ところが、2011年ごろから再び増加傾向に転じると、患者数は年々増加。16年には、ついに4500人を突破してしまったのだ。
「梅毒の初期症状は性器のしこりやリンパ節の腫れが見られ、進行すると体に発疹が現れます。しかし、患部には目立った痛みがなく、見過ごしてしまいやすいのが特徴です。さらに、症状がまったくない『無症候梅毒』のケースも多い。自覚症状のないまま病気が進行してしまう場合もあるため、潜在的な患者数はもっと多いと考えられます」(尾上氏)
なかでも目立つのが、都市部に住む若い女性の感染だ。国立感染症研究所が昨年1月から11月の患者を分析したところ、約3割が女性で、そのうちの約半数が20代だったという。同研究所の15年の集計データを見ても、全国の患者数2690人のうち、20~24歳の女性が240人と約1割を占めている。そして、そのうち約4割の99人が東京都に住む女性なのだ。
10年には東京都に住む20~24歳の女性の患者数はわずか4人だったので、5年間で約25倍に激増したことになる。これは、もはや由々しき事態といってよく、尾上氏は「まさに『パンデミック(広範囲におよぶ流行病)』といえるでしょう」と語る。
実際、事態を重く見た厚生労働省は、若い女性に親しみのある「美少女戦士セーラームーン」をキャラクターに起用して啓発ポスターや特製コンドームを作成。「検査しないとおしおきよ!!」とのキャッチコピーで予防や早期検査を呼びかけている。
梅毒流行は中国人観光客の“夜の爆買い”が原因?
それにしても、なぜ現代の日本で梅毒が再び流行し始めたのだろうか。患者数増加の背景はまだわかっていないが、一説として指摘されているのが、訪日中国人観光客の増加との因果関係だ。
日本政府観光局の統計によると、訪日中国人観光客が初めて100万人を突破したのは08年。彼らによる家電製品や日用品の“爆買い”が話題となり、16年には訪日中国人観光客が初めて600万人を超えた。そして、同時に増えたのが、実は中国人観光客たちの“夜の爆買い”だという。
「昔から、梅毒は夜の世界と切っても切れない関係にある病気です。私は、以前から性感染症ハイリスク群のCSW(コマーシャルセックスワーカー)の患者を多く診察してきました。彼女たちの治療をしていると、訪日中国人観光客の増加に合わせて、数年前から中国人団体客の話を聞くことが非常に多くなったのです」(同)
中国国家衛生・計画出産委員会が作成し、東京大学医科学研究所・アジア感染症研究拠点がホームページで公開している「2015年全国法定伝染病流行状況」によれば、中国の梅毒感染者数は15年で43万3974人、そのうち死亡症例数は58人。法定伝染病で報告発症例がもっとも多いのはウイルス性肝炎で、次が肺結核、これに続くのが梅毒だ。
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