17/03/05 19:37:09.97 CAP_USER.net
中国・北京。人民大会堂に集まった約3000人の代表が見守る中、習近平国家主席は柔和な笑みをたたえながら立ち上がり、李克強首相に手を差し出した-。
5日開幕する全国人民代表大会(全人代=国会)の初日に、そんな光景が実現するのか。それとも2人は目も合わさずにひな壇から降りるのか。今、中国ウオッチャーたちはこの点に最大級の関心を寄せている。
全人代では初日に共産党内序列2位の首相が政府活動報告を読み上げた後、1位の国家主席と握手をかわすことが長年の慣例となっている。だが、昨年は席に戻る李氏を、習氏は握手どころか、完全に無視した。
「もはや2人の仲は修復不可能だ」。中国ウオッチャーの間でこうささやかれるようになった原因は、経済分野も主導したい習氏が李氏の経済政策を頻繁に妨害し、そのほとんどを骨抜きにしてきたためだ。
昨年の全人代が2人の関係をさらに悪化させたといわれる。政府活動報告に盛り込まれる経済成長率について、習氏は7%以上の数値を求めたが、李氏は実現可能な低い数値を主張。
結果的に「6.5~7%」と計画経済でありながら幅を持たせる異例の成長目標が掲げられ、2人の関係悪化を印象付けた。
習指導部が国際通貨を目指す人民元がジリジリと下がる中、今年の全人代で注目されるのは、両氏の関係性とともに、中国国内の資本が海外に流出し続ける現状にどう対応するかだ。
世界の金融機関が加盟している国際金融協会(IIF)によると、2016年に中国から海外(香港を含む)に流出した資本額は過去最高の7250億ドル(約82兆円)に上った。
中国経済の不透明感と人民元の先安観から投資家や企業などが資金を海外へ逃避させる動きが広がったためだ。中国への流入資本から差し引いた純流出額では、15年に比べ約500億ドル増加。14年の1600億ドルに比べると、5倍近い規模に膨らんだことになる。
対抗策として、中国人民銀行(中央銀行)は、中国からの送金規制を強める一方、為替相場の安定を目的に外貨準備を取り崩してドル売り元買いの介入を続けた。その結果、外貨準備高は1月末、3兆ドルを約6年ぶりに割り込んだ。
それでも中国にとって今年は人民元の威信を揺るがすことができない事情がある。最高指導部の入れ替えが行われる5年に1度の共産党大会が秋に控え、安定した経済成長の「演出」が欠かせないのだ。
全人代を前に習指導部は2月24日、マクロ経済政策を統括する「国家発展改革委員会」の主任(閣僚)に何立峰副主任、商務相に鍾山次官を昇格させた。
財政畑出身の何氏は福建省で習氏に仕えたほか、鍾氏は習氏が浙江省トップだった際の副省長だ。また、習氏に近い山東省の郭樹清省長が銀行業監督管理委員会の主席に就くなど、経済分野でも習氏の息のかかった人間が多くなりつつある。
中国では長らく首相が経済運営を担ってきたが、習氏は経済低迷などの責任を李氏に負わせる格好で、権限の剥奪を試みているとみられる。習指導部の経済政策ブレーンの一人も「既に昨年、マクロ経済や通貨政策の策定は李氏から習氏に移った」と明かす。
党幹部の子弟らが中心の太子党のトップと目される習氏にとり、前国家主席の胡錦濤氏とともに共産党青年団(共青団)を率いる李氏との権力闘争は、12年11月の総書記就任前から優先度の高い問題だ。
指導部発足直後から習氏は、人民解放軍の掌握に加え、腐敗撲滅を通じて対抗勢力を追い落とし、権力の集中を進めてきた。最後に残された「経済政策」。いよいよ李氏から奪い取るタイミングが訪れたのかもしれない。
5日午前、李氏は政府活動報告として、今年の成長率目標など、さまざまな政策の方向性を示す。
「報告にどこまで李氏自らの考えが盛り込まれるのか。単に報告書を読み上げるだけの操り人形になっていないか。当日の李氏の表情や顔の汗、読み間違えなどを細かく観察すればわかる」。前出の習指導部のブレーンはこう話す。
中国指導部の権力闘争を傍目(はため)に、海外への資本流出など荒れ狂うような動きを見せる通貨「人民元」。その行方を検証する。
産経
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