17/03/02 20:12:46.16 CAP_USER.net
旧正月(2017年は1月27日~30日)が終わり、韓国はまもなく卒業・入学シーズンを迎える。この時期は、旧正月や卒業、入学の贈答品が飛ぶように売れ、デパートやスーパーの小売業界は書き入れ時のはずだが、今年は事情が一変している。
▽旧正月風景が激変
その背景には、昨年3月に成立した「キム・ヨンラン法」という法律の存在がある。キム・ヨンラン法とは公務員や教育、マスコミ関係者、医師、看護師などを対象に金品の贈答や接待を禁ずるもので、受け取りが発覚すると罰金や懲役刑が科せられる。ちなみに法律名に冠せられている「キム・ヨンラン」とは提言者の女性裁判官の名前である。
夫が国立大学の教授である40代の女性は「昨年まで旧盆、旧正月の連休前には宅配ラッシュのようにたくさんの贈答品が届いていました。贈答品の内容も肉のセットや朝鮮ニンジン、洋酒など高価なものばかりでしたが、今回は全くと言ってよいほどなくなりました」と語る。
毎年、旧盆、旧正月の連休明けのゴミ収集所には大量の贈答品の空箱が集まるのがおなじみの光景であるが、今年はその数もめっきり少なくなったとの声があちこちで聞かれる。
キム・ヨンラン法が施行されたことで人々が神経をとがらせていることに加え、昨年秋から続く政界スキャンダルにより国民の士気が下がり、消費の冷え込みにつながっているという見方がされている。
▽缶コーヒー1本も?
キム・ヨンラン法は特に教育現場に波紋を広げている。
前述の大学教授夫人のコメントからも察せられるように、韓国では保護者から教師へ「心付け」の意味合いを込めて贈答品を送ることが頻繁に行われていた。このため、法制化以前からも教育部(日本の文部科学省に相当)や学校長が保護者に贈答品の「自制と自粛」を求める呼びかけを行っていた。
また、パク・クネ大統領のスキャンダルの黒幕であるチェ・スンシル被告が娘の待遇を巡って校長や教師に高価な贈答品や現金を渡していたと報じられたことも記憶に新しい。
キム・ヨンラン法の解釈をめぐり、教職員、学生、保護者からは疑問や戸惑いの声が上がり、卒業シーズンを控え、ネッ卜上では、この法律に関連したキーワードの検索が上位にランクインしたり、質問が相次いでいる。
実際に、小学校教諭の「学校長から保護者宛てに『金品の授受は禁じられ、罰則対象になる』という趣旨を何度も伝えても、半ば強引に自宅宛てに贈ってくる保護者もいて、むげに断るわけにもいかず困る」といった声や、保護者からの「子どもが1年間お世話になったと言う純粋なお礼の気持ちでハンカチなどのちょっとしたものを送るのも法に引っかかるのか?」と言う声も多く聞かれる。
これに対し「先生に缶コーヒー1本を差し入れするのも罰則対象だ」という極端な回答例まであり驚かされた。教育機関については、国公立のみならず私立の教職員にまで罰則の範囲を広げているため混乱が大きいと言える。
▽国会議員は対象外
「汚職を撲滅させる」という目的で発案されたキム・ヨンラン法だが、滑稽とも言うべき矛盾点は、国会議員が対象に含まれていないことである。歴代大統領の多くが金銭絡みのスキャンダルに見舞われていることを見ても、国会議員こそが真っ先に対象となるべきところだ。それが除外されている現状に国民が混乱し、失望するのも当然である。キム・ヨンラン法が今後、どのように浸透していくか注視が必要と言えよう。
共同通信 (釜山在住ジャーナリスト、原美和子=共同通信特約)
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