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デマ、ヘイト、不寛容……日本は「世界の酷さ」を先取りしていた?
第1回(全3回)<新春対談2> - 津田 大介/安田 菜津紀
ジャーナリストでありメディア・アクティビストの津田大介さんと、フォト・ジャーナリストの安田菜津紀さんは、今年、世界と日本のどんな動きに注目しているのか?
津田さんは昨年11月の大統領選ではアメリカを取材、安田さんは年末年始にイラクを取材。フットワーク軽く「現場」を見続けるお2人の対談を3回にわたってお届けします。
(構成:岡田仁志 写真:岡村大輔)
■「デマ」は政治目的がなくても世界を動かしてしまう
安田 去年を振り返りながら2017年を語るというお題ですが、私は、中東情勢や震災からの復興の問題、世界に広がる不寛容さ、過労自殺に象徴される若い世代の生きづらさなどが気になっています。
津田 僕にとっても気になる話ばかりですね。とくに過労自殺のような問題は、今年も引き続き日本社会の大きなテーマになるでしょう。もうひとつは、米国大統領選に端を発した虚偽ニュースの問題。
マケドニアの17歳の若者が虚偽ニュースを無料で載せるサイトを140も作って、ヒラリーを攻撃し、トランプ支持の世論づくりに貢献したと言われています。この問題は今後もメディア全体で抱え込むことになりますよ。
安田 では、その話からしましょうか。あれはメチャクチャでしたよね。「ローマ教皇がトランプを支持」とか「ヒラリーのメール疑惑を捜査していたFBI捜査官が自殺した」とか。嘘だと思っていても、ついみんなクリックしてしまう。もちろん、本当だと信じた人もいたかもしれません。
津田 アクセス数さえ増えれば広告料が入りますからね。あれで彼らは700万円ぐらい稼いだそうです。で、本人は「俺のフェイクニュースで誰か死んだか? タバコ業者はいっぱい殺してるのに認められてるだろ」と開き直っている。
なかなか難しい問題です。政治的な目的は一切なしで、単に金儲けだけのために、ああいうことが国境を越えてできてしまう。
安田 米国の大統領選挙に影響を与えたとしたら、それによって世界が変わる可能性もありますからね。たとえば、ブッシュさんがゴアさんに勝っていなかったらイラク戦争はなかったかもしれないし、結果的にイスラム国も生まれなかったかもしれません。そう考えると、単なるデマとしては片づけられないですよね。
津田 だからこそジャーナリズムの役割が重要になるわけですが、世論がある方向に大きく流れると勝つのは難しいんですよ。2003年に米国がイラク戦争を仕掛けたとき、米国では多くの新聞が開戦に反対していましたが、結局止められなかった。
世界最高のジャーナリズムが存在すると言われている米国でイラク戦争は起きるし、トランプ大統領も誕生してしまう。英国のEU離脱もそうでした。
「ガーディアン」やBBCは頑張って離脱派が流すデマを訂正する報道をしていましたが、そういう情報はなかなか広まらない。
安田 日本でも、オスプレイが落ちたときに、ニコルソン中将の発言に関するデマが広まりましたよね。英語のソースが公表されていないのに、沖縄県の副知事に「県民は被害を与えなかったことに感謝すべきだ」と言ったのは「神に感謝すべきだ」の誤訳だ、という話がまことしやかに広まりました。
津田 あれを流した人に政治的意図があったかどうかはわかりませんが、「きっとこういうなことだろう」という誰かの思い込みが、ネットではいつの間にか事実として確定したかのように流通してしまうんですよね。
ただ、あのときは「BuzzFeed」が早い段階でデマを指摘する記事を出していました。そうやってデマを迅速に修正するのは、いまや世界共通の課題になっています。人類がみんなで乗り越えていくべき問題。
そう考えると、逆説的ではあるけど、僕は少し明るい気分にもなるんです。
デマにかぎらず、ヘイトスピーチみたいな不寛容の問題もそうなんだけど、日本だけがとりわけ酷い国ということではないでしょ? 世界全体が同じように酷くなっているわけで、日本はそれを少し先取りしていただけとも考えられる(笑)。
よーし、頑張って乗り越えていこう、みたいな。
安田 あんまり先取りしたくないですけどね(笑)。
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