16/12/20 20:06:43.80 CAP_USER.net
韓国の女性画家、故・千鏡子（チョン・ギョンジャ）氏（1924－2015年）の作品で、25年にわたり真贋（しんがん）がはっきりしなかった「美人図」について、ソウル中央地検刑事6部は19日、「本物」だとする鑑定結果を発表した。所蔵履歴の調査、専門家による鑑定、エックス線・遠赤外線・コンピューター映像・DNA分析、筆跡鑑定などを基に、こうした結論に至ったという。
検察は、千氏の次女のキム・ジョンヒ氏（62）が今年5月「贋作である『美人図』を千鏡子の作品だと主張している」として韓国・国立現代美術館の館長ら前職・現職関係者6人を告訴・告発したことを受け、捜査を進めてきた。検察はこの日、国立現代美術館の元学芸室長を故人に対する名誉毀損の罪で在宅起訴し、残り5人は嫌疑なしとすることを伝えた。
「美人図」をめぐる論争の発端は1991年4月、国立現代美術館が同作品を使って製作したポスターを見た千氏が「自分が産んだ子どもを分からないわけがない。私の絵ではない」と主張したことだった。国立現代美術館と韓国画廊協会の鑑定委員会が千氏の主張を黙殺して「本物」と結論付けると、千氏は絶筆を宣言して渡米した。
しばらく忘れられていたこの事件は99年、「美人図」を描いたという東洋画の贋作者クォン・チュンシク氏が登場したことで、再び注目されるようになった。千氏が昨年他界したことを受け、遺族側が故人の名誉回復のため「美人図」の問題を持ち出し、論争が再燃した。
歳月がたつにつれ、「画家が偽物だと言っているのに、あえて本物だと主張する必要があるのか」というムードが広がった。さらに、検察の発表に先立ち、遺族側の依頼を受けたフランスの鑑定機関リュミエール・テクノロジーが「本物である確率は0.00002％」とする鑑定結果を出したことで、贋作だとの見方が強まっていた。
だが、検察の発表は大方の予想を覆すものだった。検察は、この5カ月にわたり「美人図」と千氏の本物の作品13点を比較した結果、明礬（みょうばん）、膠（にかわ）、胡粉（ごふん）成分で下塗りしてから厚く上塗りしていること、高級顔料の使用、先の尖った筆記具で押し付けるようにしてアウトラインを描いた跡などが共通していると説明。また、赤外線などで撮影したところ、絵の下に隠された別の下絵が見つかったが、これは千氏の作品「青春の門」（1968年作）でも同様に見られると伝えた。
今年初公開された、次女キム・ジョンヒ氏をモデルにしたスケッチ（1976年作）も重要な手掛かりとなった。検察は、77年作の「美人図」と81年作の「バラと女性」はこのスケッチを基に描かれたものと判断した。
フランスの鑑定機関の分析に対しては「鑑定機関が使用した『明るさの分布』などの計算式を本物であることが明らかな作品に代入したところ、本物であるとの確率は4.01％、4.31％と出た。贋作かどうかの判断根拠とするには議論の余地がある」と説明した。さらに、自分が贋作を描いたと主張し、後になって供述をころころ変えたクォン・チュンシク氏が、「美人図」を直接見て「これは自分がまねできないレベルの作品」と述べたことも勘案された。
「美人図」が、かつて朴正熙（パク・チョンヒ）大統領を射殺した金載圭（キム・ジェギュ）元中央情報部長の所蔵品だったことも確認された。77年に千氏が中央情報部の幹部に同作を含めた自分の絵画2点を贈り、この幹部の妻が大学の同窓である金載圭氏の妻に「美人図」をプレゼントした。80年に新軍部戒厳司令部傘下の寄付財産処理委員会が金載圭氏から寄付を受ける形で同作を国立現代美術館に移したことが、検察の調べで明らかになった。遺族側は、同作が金載圭氏の所蔵品だった証拠が不十分で、他の作品とすり替えられた可能性があると主張してきた。
検察の発表に対し、遺族側は「フランスの国際的な科学鑑定専門機関が出した明白な贋作判定を否定した。あらゆる法的措置を取る」と反発している。美術評論家のキム・ジョングン氏も「千氏を二度殺すようなもの。いったいどんな黒幕がいるのか」と言ってため息をついた。
一方、美術評論家のソ・ソンロク氏は「作家の意見は重要な参考事項ではあるが、全面的な贋作の判断基準ではないことが証明された。今回の件を反面教師として、鑑定の先進化に向けた議論を本格化すべきだ」と話している。
朝鮮日報 金美理（キム・ミリ）記者 , パク・サンギ記者
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