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NEWS ポストセブン 10月11日 7時0分配信
昨夏に勃発したロッテグループの経営権争いは、創業家の脱税・裏金騒動に発展し、いまや韓国の国民、メディア、検察が結託した「ロッテ叩き」に拡大した。
全容を知る立場にあったロッテグループ副会長は、全面捜査を前に自死を遂げ、ロッテ会長は横領・背任の疑いで逮捕状を請求されるなど、泥沼の様相を呈している。
その深層には、稀代の在日経営者が育てあげた巨大帝国の「国籍」を巡る問題が根差している。「親日的だ」と言われたり「韓国の富を日本に流出させている」といった批判を韓国国内でされているのだ。
そもそも、ロッテは韓国企業なのか日本企業なのか─そんな問いからジャーナリストの李策氏が考察する。
* * * 個人的には、「在日韓国人が作り育てた企業である」というのが正しいような気がする。ロッテは、武雄氏が日本で創業した企業だ。
1922年、韓国・慶尚南道蔚州郡の谷間の村で生まれ、1941年に18歳の若さで渡日。終戦後の1947年に町工場でチューインガムの製造を始め、翌1948年にロッテを立ち上げた。
ガムのトップ企業だったハリスを打ち負かし、1964年にはチョコレートに参入。明治製菓、森永製菓を猛追して菓子業界のトップに躍り出る一方で、韓国には1965年の日韓国交正常化後に本格進出した。
こうした歴史を踏まえれば、日本に資本があるのはむしろ当たり前のことだ。そして、ロッテは韓国に進出して以降、日本から1千億円単位で投資してきた。しかもその相当部分は、金融がグローバル化する以前に行われている。
「日本との国交正常化後も、韓国は長らく貧しい国だった。とくに、外貨がぜんぜん足りなかった。
今だから言えることですが、韓国に外貨が不足していた時代、民団の団員らは本国で行事がある度にカバンに現金を詰めて運び、投資に回していた。
ロッテだって同じでしょう。こうした投資が、切迫した外貨需要に応えた部分が大きかったのです」
武雄氏をはじめとする在日の企業家が母国へ外貨を運んだのは、愛国心からだけではない。金利の低い日本から金利の高い韓国へ投資することで、有利な勝負ができるという打算もあったろう。
ただし、商売人が損得抜きで動くと考えるのはナンセンスだ。韓国メディアの中に「ロッテの対韓投資は朴正熙・全斗煥の両軍事政権から特別の恩恵を受けて成功した」と非難する向きがあることに、大きな違和感を覚える。
「1988年のソウル五輪に合わせ、蚕室の五輪スタジアム近くに開業したロッテワールドの敷地が、全斗煥大統領との『癒着の賜物』だったと報道されています。ロッテに全大統領から協力要請があったのは事実です。
しかしそれは、五輪終了後に選手村などを速やかに分譲し、使い果たした財政を穴埋めする必要があったから。ロッテが進出するまで、蚕室には生活インフラが何もなかった。そのままでは、誰も分譲を受けたいなんて思いませんよ」
つまり、こういうことだ。韓国経済はロッテの投資から得るべきものを得た。ロッテもまた、韓国で大きく儲けた。
その過程で、ロッテと韓国政界の間に不正な何かが皆無だったとは言わない。しかしビジネスの視点で言えば、韓国経済とロッテは少なくとも、利益を分け合うイーブンな関係で来たと言えるだろう。
【PROFILE】李策●1972年生まれ。朝鮮大学校卒。日本の裏経済、ヤクザ社会に精通。現在は、北朝鮮専門ニュースサイト「デイリーNKジャパン」記者として、朝鮮半島関連の取材を精力的に行っている。
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