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2016年10月7日05時00分
国際社説担当・箱田哲也
日韓をまたぐ巨大グループ「ロッテ」の周辺が、かまびすしい。在日１世である創業者一家のお家騒動をきっかけに、巨額の不正資金事件へと発展した。
韓国では、前政権まで羽振りが良かった財閥に司直のメスが入ることは茶飯事で、「在日たたき」などと決めつけるのは早計にすぎる。強引な調べが裏目に出て無罪判決が出ることもままある。
いずれにしても法に基づいて裁かれるべきだが、騒動が起きた際、何とも嫌なものを見た気分になった。
創業者の息子の韓国語のつたなさや、親子が日本語で話していることなどが発覚すると大騒ぎになり、「ロッテは韓国企業といえるのか」「本当の韓国人ではない」といった反発が噴き出したのだ。
韓国でのロッテの存在感は日本よりはるかに大きい。背景には財閥ファミリーへのやっかみもあっただろう。
だが、日本で生まれ、民族学校などに通わなかった在日韓国人には祖国の言葉を解さない人も多い。一連の騒動に在日本大韓民国民団の幹部は「我々が最も聞きたくない批判だった」と悔しがった。
同じ民族とわかっていても韓国に住む人々の「在日観」は複雑だ。羨望（せんぼう）や嫉妬、同情、軽蔑など様々な感情が、ないまぜのようにみえる。
朝鮮戦争の特需で急成長した在日企業もあるが、祖国が危機に見舞われるたび、陰になり日なたになって支えてきた献身の方は、正確には伝わっていない。
知識不足から来る無神経さが加わることもある。
日本のスポーツ界で活躍する在日選手は少なくないが、あるシンポジウムで韓国側から「日本の通名を使う選手には、せめて本名を併記できないか」との提案が出た時にはため息が漏れた。
だが、なぜ日本ではそれができないのかと問われると、どうか。事実に基づかぬ「特権」を喧伝（けんでん）して憎悪をあおる行為は論外として、民族や出自で分け隔てる重苦しい澱（おり）のような部分が浮かびあがる。
在日韓国人の法的地位問題は半世紀前の日韓国交締結の際に協定が結ばれ、その後も政府間協議が続いてきたが、他の懸案と比べ、注目度は高いとは言えない。
国交５１年目に入り、両政府は新時代を築くと意気込む。実はよく知らないところもある互いを理解するためにも、日韓を結ぶ身近な存在を、改めて見つめてみてはどうか。
（はこだてつや 国際社説担当）
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