16/10/02 00:11:00.79 CAP_USER.net
URLリンク(www.sankei.com)
証券取引所のほか、銀行や保険など、世界を代表する金融機関のビル群が林立する上海市内の国際金融センター。中国人民銀行(中央銀行)の幹部はテラスでウイスキーのグラスを傾けながら、「67歳の誕生日にふさわしい日になりそうだな」とつぶやいた。
1949年に毛沢東が北京で「中華人民共和国」成立を宣言して、1日で67年を迎える。中国経済を象徴する通貨「人民元」がこの日、米ドルに並ぶ国際通貨になったことに幹部は深い感慨を抱いていた。ドル、ユーロ、日本円、英ポンドに続く国際通貨基金(IMF)5番目の特別引き出し権(SDR)構成通貨に正式に組み込まれたのだ。
2010年に日本を追い抜き国内総生産(GDP)で米国に次ぐ世界第2位に台頭した中国。国慶節と呼ばれる1日、通貨でも世界の中心に躍り出たとして、「SDR」の3文字が国威発揚につながる文脈で喧伝(けんでん)されることになる。
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そこには深遠な野望も見え隠れしている。「最終目標は中国経済の規模に相当する通貨の地位を得ることだ」。中国人民大学の国際通貨研究所は、「2016年版人民元国際化報告」をまとめ、こんな目標を掲げた。一方で、人民元のSDR組み込みは「一里塚に過ぎない」と戒めた。
人民元のSDR構成通貨入りは、貿易量や通貨の取引自由度などからIMFが人民元に国際通貨との「お墨付き」を与えた形だ。それでも、報告書は、君臨する米ドル経済圏に対抗しうるパワーを人民元が得るまでは気を抜くなと警告したのだ。
中国には「東南アジア諸国連合(ASEAN)や欧州などドル離れを起こす地域と『人民元経済圏』を構築し、いずれ日本もそこに引き込む」(上海の大学教授)との思惑がある。日本を含む米ドル経済圏に、中国が改めて挑戦状を突き付けることになる。
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貿易や金融取引の大半で使われるドルを発行する米国は為替変動の影響が少なく、ドルを世界各国が外貨準備に取り入れることなどで、国際経済の中心的な役割をほぼ独占してきた。
そのドルを追う人民元は急速に力をつけてきた。新興勢力としてまだまだ安定感に欠く面もある。だが、中国の貿易総額に占める人民元建て決済比率は30%になった。その実力は着実についてきている。
ただ、人民元を外貨準備に加えた国はまだ10カ国。貿易で人民元が使える直接取引が可能な国は16カ国。通貨を融通し合うスワップ協定を中国と結んだ国も33カ国に過ぎない。それでも英国やドイツなど欧州諸国の中には、ドルと人民元をてんびんにかける先進国も増えている。
欧州や東南アジア、アフリカなどをチャイナマネーで引き付けながら、白と黒の石が繰り広げる囲碁のような戦いが、ドルと人民元との間の陣取り合戦で火花を散らし始めている。
1998年公開の米ディズニー映画「ムーラン」がいま、上海や香港の金融市場で話題に上っている。
世界銀行が9月2日、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)建て債券を中国で発行し、その愛称が「ムーラン債」と名付けられたからだ。従来も日本円建て債券が「サムライ債」、香港で発行された人民元建て債券が「点心債」と呼ばれ、通貨にかかわる国の歴史や文化のイメージが投影されてきた。
映画は、老病の父に代わって男装して戦いに出た娘の「木蘭(ムーラン)」が異民族を相手に勝利を収めた、という古代中国の物語に基づく。ムーランは「名誉」を映画の中で歌い上げた。SDR入りはいわば人民元が国際通貨として「名誉ある信認」を得るための一歩だ。金融市場ではムーランと印象が重なった。
人民元の10月1日のSDR入りに先行した総額5億SDR(約700億円)の債券は、中国の国有商業銀行や三菱東京UFJ銀行などが争って引き受けた。
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米ドル、ユーロ、日本円と英ポンド。従来のSDR構成4通貨は(1)貿易規模と代金決済で使われる通貨の比率の高さ(2)金融市場で自由に交換や売買ができる-との条件が整っていた。
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